(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
加熱処理炉などの温度を制御するために、PID制御機能を実装した温調計が利用されている。温調計では、PIDパラメータなどの多数のパラメータを設定する必要がある。温調計は、PIDパラメータを用いてPID演算を行ない、目標温度に設定された設定値SPに温度計測値PVが一致するように操作量MVを出力する。これにより、温度計測値PV(制御量PV)を目標温度(設定値SP)に近づけることができる。したがって、PIDパラメータなどの設定が必要かつ重要になる。
【0003】
制御結果情報(設定値到達時間やオーバーシュート量など制御応答における特徴量のデータ)は、制御の不具合状態の把握やPIDパラメータなどの調整の際に、実際の制御対象に対する制御結果として有効な情報となる。このため、昇温や降温などの一連の制御動作を実施しながら温調計内部で制御応答の特徴量を算出し、温調計内部に保存しておく機能が実施されている(特許文献1参照)。一方、データロガーのように、測定データを全て収集し記録する機器も実用されている(特許文献2参照)。これら特許文献1、特許文献2に開示されたデータ収集機能により、PID制御の制御応答の特徴量あるいは全ての時系列データを収集し、監視対象、分析対象として処理することが可能になっている。
【0004】
ところで、温度制御においては、1秒間に100℃以上の高速な昇温が可能なハロゲンランプなどのヒータがある。このハロゲンランプは、例えば半導体製造プロセスの前工程の枚葉式アニール炉などで、高速昇温ヒータとして利用されている(特許文献3参照)。
このような高速昇温ヒータでは、操作量MV、温度計測値PV、ヒータに通電される電流値などの各々の変化を時刻同期させて確認する必要がある。特に重要なのは、高速な昇降温が繰り返される場合において、収集すべきデータを1回の昇降温動作毎に個別のデータセットに区分けする際の規則性である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に開示されたデータロガーによる測定データ収集では、個別の機器毎に並列的にデータを収集するので、昇降温動作の繰り返しを継続してデータ収集するのであれば、実現も可能である。しかし、収集すべきデータを1回の昇降温動作毎に個別のデータセットに区分けする場合は、時刻同期が取り難いので実現は難しい。
また、特許文献1に開示された技術では、保存可能な情報が限られるので、データ収集機能としては不十分である。また、高速な昇降温の繰り返しについては、昇降温の繰り返しサイクルの変動に対応する必要があるので、実用への課題が残る。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、制御量の上下動が繰り返される場合において、収集すべきデータを制御量の1回の上下動毎に個別のデータセットに区分けする際の規則性を確保することができる調節計およびデータ収集方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、制御量の上下動の繰り返しサイクルの変動に対応することができる調節計およびデータ収集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の調節計は、設定値SPと制御量PVに基づき操作量MVを制御周期毎に算出して出力する操作量算出手段と、データ収集開始のトリガーとなる設定値SPの変更方向を予め記憶するトリガー登録手段と、データ収集終了の制限時間を予め記憶する制限時間登録手段と、データ収集開始後の継続時間を計測する継続時間測定手段と、設定値SPと制御量PVと操作量MVのうち少なくとも1つを収集すべきデータとして制御周期毎に記録するデータ記録手段と、このデータ記録手段によるデータ収集が停止しているときに、設定値SPの変更を検出し、この設定値SPの変更方向が前記トリガー登録手段に記憶されている設定値SPの変更方向と同方向の場合に、前記データ記録手段を起動してデータ収集を開始させるデータ収集起動手段と、前記データ記録手段によるデータ収集が行われているときに、設定値SPの変更を検出し、この設定値SPの変更方向が前記トリガー登録手段に記憶されている設定値SPの変更方向と逆方向の場合、あるいは前記データ収集開始後の継続時間が前記制限時間登録手段に記憶されているデータ収集終了の制限時間に到達した場合に、前記データ記録手段を停止させてデータ収集を終了させるデータ収集停止手段とを備えることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の調節計の1構成例において、前記データ記録手段は、設定値SPと制御量PVと操作量MVのうちの少なくとも1つに加えて、電流値CTを収集すべきデータとして制御周期毎に記録することを特徴とするものである。
また、本発明の調節計の1構成例は、さらに、データ収集開始後の継続時間の実績に基づき前記制限時間を更新する制限時間更新手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の調節計の1構成例において、前記制限時間更新手段は、温度設定値SPの変更に応じてデータ収集を終了したときに、データ収集開始時からデータ収集終了時までの継続時間のA倍(A>1)の値が前記制限時間登録手段に記憶されている制限時間よりも大きい場合に、データ収集開始時からデータ収集終了時までの継続時間のA倍の値を新たな制限時間として、前記制限時間登録手段に記憶されている制限時間の値を更新することを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明のデータ収集方法は、設定値SPと制御量PVに基づき操作量MVを制御周期毎に算出して出力する操作量算出ステップと、データ記録手段によるデータ収集が停止しているときに、設定値SPの変更を検出したとき、データ収集開始のトリガーとなる設定値SPの変更方向を予め記憶するトリガー登録手段を参照して、前記設定値SPの変更方向が前記トリガー登録手段に記憶されている設定値SPの変更方向と同方向の場合に、前記データ記録手段を起動してデータ収集を開始させるデータ収集起動ステップと、前記データ記録手段により設定値SPと制御量PVと操作量MVのうち少なくとも1つを収集すべきデータとして制御周期毎に記録するデータ記録ステップと、データ収集開始後の継続時間を計測する継続時間測定ステップと、前記データ記録手段によるデータ収集が行われているときに、設定値SPの変更を検出し、この設定値SPの変更方向が前記トリガー登録手段に記憶されている設定値SPの変更方向と逆方向の場合、あるいは前記データ収集開始後の継続時間が制限時間登録手段に記憶されているデータ収集終了の制限時間に到達した場合に、前記データ記録手段を停止させてデータ収集を終了させるデータ収集停止ステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御量PVの上下動が繰り返される場合において、収集すべきデータを制御量PVの1回の上下動毎に個別のデータセットに区分けする際の規則性を確保することが可能になる。本発明では、データ収集終了の制限時間よりも短い時間で制御量PVの上下動のサイクルが発生する場合でも、設定値SPの変更に応じてデータ収集を終了するので、データセットの区分けが損なわれることはない。また、本発明では、設定値SPの変更に応じてデータ収集を終了するだけでなく、データ収集開始後の継続時間によってもデータ収集を終了するので、設定値SPの変更が発生しない状態が継続する場合でも、データ収集を概ね適切に終了することができる。また、本発明では、データ収集の終了判断機能をシンプルな判断機能とすることができ、低コストでの実装が可能になる。
【0012】
また、本発明では、データ収集開始後の継続時間の実績に基づき制限時間を更新する制限時間更新手段を設けることにより、制御量PVの上下動の繰り返しサイクルの変動が予め明確に把握できない場合でも、適切な運用が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[発明の原理]
本発明では、収集するデータの例として、設定値SP、制御量PV、操作量MV、ヒータに流れる電流値CTを取り上げる。操作量MVは、調節計(例えば温調計)に設定される設定値SPと、調節計に接続された計測器(センサ)から入力される制御量PVに基づき、調節計内部で算出される。電流値CTは、ヒータ断線検出の目的で調節計に入力される。すなわち、設定値SP、制御量PV、操作量MV、電流値CTは全て調節計に集約されており、ハードウェアとしてはこれを活用する。
【0015】
制御量PV、操作量MVの変化は、設定値SPの変化がトリガーになる。したがって、昇温制御であれば、データ収集の停止中に設定値SPが昇温方向に設定変更されたときをトリガーにして、データ収集を開始すればよい。降温制御であれば、データ収集の停止中に設定値SPが降温方向に設定変更されたときをトリガーにして、データ収集を開始すればよい。設定値SPの変更は、ランプ状の変更であっても、上記トリガーと同方向の設定変更が継続する。したがって、データ収集開始のトリガーとなった設定値SP変更と同方向の設定値SP変更であれば、データ収集を継続すればよい。昇降温が繰り返される場合には、降温方向、すなわちデータ収集開始のトリガーとなった昇温方向の設定値SP変更と逆方向の設定値SP変更をもって、データ収集を停止すればよい。
【0016】
このようにすれば、データ収集開始時点から実際に制御量PV、操作量MVの変化が開始されるまでの所要時間が規則性として統一され、かつ確実にデータを1回の昇降温動作に対応する個別のデータセットに区分けすることが可能になる。また、昇降温の繰り返しサイクルの変動が起こっても、問題は生じない。ただし、データ収集中に設定値SPが一定値に維持される状態が長時間継続する事態も考慮しなければならないので、データ収集制限時間によるデータ収集の停止も併用することが必須になる。
【0017】
データ収集制限時間は予め設定してもよいが、昇降温の繰り返しサイクルの変動を前提にするならば、データ収集開始時と逆方向の設定値SP変更でデータ収集を停止したときに測定される、データ収集開始時からデータ収集終了時までの継続時間の実績に基づき、制限時間を自動決定するのが好ましい。例えばデータ収集開始時からデータ収集終了時までの継続時間の1.5〜2倍程度の値を新たな制限時間とすればよい。
【0018】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は本発明の第1の実施の形態に係る調節計の構成を示すブロック図である。調節計は、従来から調節計に設けられている一般的構成である調節計制御機能部1と、本実施の形態の特徴的構成であるデータ収集機能部2とを備えている。
【0019】
調節計制御機能部1は、設定値SPを調節計外部から入力する設定値入力部10と、制御量PVを計測器から入力する制御量入力部11と、設定値SPと制御量PVに基づき操作量MVを算出する操作量算出部12と、操作量MVを調節計外部に出力する操作量出力部13とを備えている。
【0020】
データ収集機能部2は、データ収集開始のトリガーとなる設定値SPの変更方向を予め記憶するトリガー登録部20と、データ収集終了の制限時間を予め記憶する制限時間登録部21と、データ収集開始を判断しデータ収集を起動するデータ収集起動部22と、データ収集終了を判断しデータ収集を停止するデータ収集停止部23と、設定値SPと制御量PVと操作量MVのうち少なくとも1つを収集すべきデータとして制御周期毎に記録するデータ記録部24と、データ収集開始後の継続時間を計測する継続時間測定部25とを備えている。
【0021】
次に、本実施の形態の調節計の動作を
図2を参照して説明する。設定値SPは、オペレータなどによって設定され、設定値入力部10を介して操作量算出部12に入力される(
図2ステップS100)。
制御量PVは、図示しない計測器によって計測され、制御量入力部11を介して操作量算出部12に入力される(
図2ステップS101)。
【0022】
操作量算出部12は、周知の制御演算アルゴリズムに従って、設定値SPと制御量PVとが一致するように操作量MVを算出する(
図2ステップS102)。制御演算アルゴリズムとしては、例えばPIDがある。
操作量出力部13は、操作量算出部12によって算出された操作量MVを制御対象に出力する(
図2ステップS103)。制御対象が例えば加熱処理炉の場合、加熱処理炉のヒータに電力を供給する電力調整器が、操作量MVの実際の出力先となる。
【0023】
次に、データ収集起動部22は、データ記録部24によるデータ収集が停止しているときに(
図2ステップS104においてYES)、設定値入力部10から入力された設定値SPの変更を検出し(
図2ステップS105においてYES)、この設定値SPの変更方向がトリガー登録部20に予め登録されている設定値SPの変更方向と同方向の場合(
図2ステップS106においてYES)、データ記録部24を起動してデータ収集を開始させる(
図2ステップS107)。データ収集起動部22は、設定値入力部10から入力された設定値SPが直前の制御周期の設定値SPと異なるときに、設定値SPが変更されたと判断する。
【0024】
例えば昇温制御中のデータを収集して記録したいのであれば、データ収集開始のトリガーとなる設定値SP変更方向として「上昇方向」をトリガー登録部20に登録しておけばよい。これにより、設定値SPが上昇する方向に変更されたときに、データ収集が開始される。また、降温制御中のデータを収集して記録したいのであれば、データ収集開始のトリガーとなる設定値SP変更方向として「下降方向」をトリガー登録部20に登録しておけばよい。
【0025】
次に、起動したデータ記録部24は、設定値入力部10から入力された設定値SPと制御量入力部11から入力された制御量PVと操作量算出部12によって算出された操作量MVとを記録する(
図2ステップS108)。
継続時間測定部25は、データ収集開始後の継続時間を計測する(
図2ステップS109)。
【0026】
データ収集停止部23は、データ記録部24によるデータ収集が行われているときに、設定値入力部10から入力された設定値SPの変更を検出し(
図2ステップS110においてYES)、この設定値SPの変更方向がトリガー登録部20に予め登録されている設定値SPの変更方向と逆方向の場合(
図2ステップS111においてYES)、あるいはデータ収集開始後の継続時間が制限時間登録部21に登録されているデータ収集終了の制限時間に到達した場合(
図2ステップS112においてYES)、データ記録部24を停止させてデータ収集を終了させる(
図2ステップS113)。
【0027】
以上のようなステップS100〜S113の処理が、例えばオペレータからの指令によって制御が終了するまで(
図2ステップS114においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。
【0028】
図3(A)、
図3(B)は本実施の形態の調節計の動作を説明する図であり、
図3(A)は設定値SPの変更によってデータ収集が終了する場合、
図3(B)は制限時間によってデータ収集が終了する場合を示している。
図3(A)、
図3(B)の横軸は時間、縦軸は制御量PVである。ここでは、設定値SPを温度設定値、制御量PVを温度計測値とし、例えば加熱処理炉の昇温制御中のデータを収集する場合について説明する。
【0029】
図3(A)の例では、設定値SPが150℃から300℃に変更された時点でデータ収集を開始し、設定値SPが300℃から150℃に変更された時点でデータ収集を終了している。以後、同様の昇降温動作が行われる度に、データ収集が行われる。
図3(B)の例では、
図3(A)と同様にデータ収集を開始した後、設定値SPが300℃から150℃に変更される前に、データ収集開始後の継続時間がデータ収集終了の制限時間に到達したために、データ収集を終了している。
【0030】
以上のように、本実施の形態では、制御量PVの上下動が繰り返される場合において、収集すべきデータを制御量PVの1回の上下動毎に個別のデータセットに区分けする際の規則性を確保することが可能になる。規則性について具体的に言えば、データセットの先頭が設定値SPの変更時点となり、操作量MVや制御量PVの変化が制御動作として始まるタイミングが規則正しくなる。
【0031】
本実施の形態では、データ収集終了の制限時間よりも短い時間で制御量PVの上下動のサイクルが発生する場合でも、設定値SPの変更に応じてデータ収集を終了するので、データセットの区分けが損なわれることはない。また、制限時間以外のデータ収集の終了条件を、設定値SPの変更方向がトリガー登録部20に登録されている設定値SPの変更方向と逆方向になることとしているので、データ収集の終了判断機能をシンプルな判断機能とすることができ、低コストでの実装が可能になる。
【0032】
また、本実施の形態では、設定値SPの変更に応じてデータ収集を終了するだけでなく、データ収集開始後の継続時間によってもデータ収集を終了するので、設定値SPの変更が何らかのトラブルなどの理由により発生しない状態が継続する場合でも、データ収集を概ね適切に終了することができる。すなわち、データセットの区分けが損なわれることはない。
なお、本実施の形態では、設定値SPと制御量PVと操作量MVの3つを収集しているが、これに限るものではなく、これら3つのうち少なくとも1つを収集すればよい。
【0033】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
図4は本発明の第2の実施の形態に係る調節計の構成を示すブロック図であり、
図1と同一の構成には同一の符号を付してある。本実施の形態の調節計は、調節計制御機能部1aと、データ収集機能部2aとを備えている。
【0034】
調節計制御機能部1aは、設定値入力部10と、制御量入力部11と、操作量算出部12と、操作量出力部13と、ハロゲンランプ(高速昇温ヒータ)に流れる電流値CTを入力する電流値入力部14とを備えている。
【0035】
データ収集機能部2aは、トリガー登録部20と、制限時間登録部21と、データ収集起動部22と、データ収集停止部23と、設定値SPと制御量PVと操作量MVのうちの少なくとも1つに加えて、電流値CTを収集すべきデータとして制御周期毎に記録するデータ記録部24aと、継続時間測定部25と、データ収集開始後の継続時間の実績に基づきデータ収集終了の制限時間を更新する制限時間更新部26とを備えている。
【0036】
次に、本実施の形態の調節計の動作を
図5を参照して説明する。
図5のステップS200〜S203の処理は、それぞれ
図2のステップS100〜S103と同じなので、説明は省略する。本実施の形態では、ハロゲンランプ(高速昇温ヒータ)を備えた加熱処理炉を制御対象としており、ハロゲンランプに電力を供給する電力調整器が、操作量MVの実際の出力先となる。この場合、設定値SPは温度設定値、制御量PVは加熱処理炉の計測器(センサ)によって計測される温度計測値となる。
【0037】
電流値入力部14は、ハロゲンランプ(高速昇温ヒータ)に流れる電流値CTを計測する電流値計測手段(不図示)から電流値CTを取得する(
図5ステップS204)。
データ収集起動部22は、データ記録部24aによるデータ収集が停止しているときに(
図5ステップS205においてYES)、設定値入力部10から入力された設定値SPの変更を検出し(
図5ステップS206においてYES)、この設定値SPの変更方向がトリガー登録部20に予め登録されている設定値SPの変更方向と同方向の場合(
図5ステップS207においてYES)、データ記録部24aを起動してデータ収集を開始させる(
図5ステップS208)。
【0038】
本実施の形態では、加熱処理炉の昇温制御中のデータを収集して記録するので、データ収集開始のトリガーとなる設定値SP変更方向として「上昇方向」(昇温方向)がトリガー登録部20に予め登録されている。したがって、設定値SPが上昇する方向に変更されたときに、データ収集が開始される。
【0039】
次に、起動したデータ記録部24aは、設定値入力部10から入力された設定値SP(温度設定値)と制御量入力部11から入力された制御量PV(温度計測値)と操作量算出部12によって算出された操作量MV(ヒータ操作量)と電流値入力部14から入力された電流値CTとを記録する(
図5ステップS209)。
継続時間測定部25は、データ収集開始後の継続時間を計測する(
図5ステップS210)。
【0040】
データ収集停止部23は、データ記録部24aによるデータ収集が行われているときに、設定値入力部10から入力された設定値SPの変更を検出し(
図5ステップS211においてYES)、この設定値SPの変更方向がトリガー登録部20に予め登録されている設定値SPの変更方向と逆方向の場合(
図5ステップS212においてYES)、あるいはデータ収集開始後の継続時間が制限時間登録部21に登録されているデータ収集終了の制限時間に到達した場合(
図5ステップS213においてYES)、データ記録部24aを停止させてデータ収集を終了させる(
図5ステップS214)。本実施の形態の例では、設定値SPが下降する方向に変更されたときに、データ収集を終了する。
【0041】
制限時間更新部26は、温度設定値SPの変更に応じてデータ収集を終了したときに、データ収集開始時からデータ収集終了時までの継続時間のA倍(A>1で、例えばA=1.5〜2.0)の値が制限時間登録部21に登録されている制限時間よりも大きい場合に、データ収集開始時からデータ収集終了時までの継続時間のA倍の値を新たな制限時間として、制限時間登録部21に登録されている制限時間を更新する(
図5ステップS215)。
【0042】
以上のようなステップS200〜S215の処理が、例えばオペレータからの指令によって制御が終了するまで(
図5ステップS216においてYES)、制御周期毎に繰り返し実行される。
【0043】
こうして、本実施の形態では、温度設定値SPの変更方向に基づく現実的なデータ収集時間を参照してデータ収集終了の制限時間を自動決定するので、制御量PVの上下動の繰り返しサイクルの変動が予め明確に把握できない場合でも、適切な運用が可能になる。
電流値CTは特に時刻同期の取り難い高速な変化をする状態量であるが、データ品質としては、制御動作(温度計測値PV、ヒータ操作量MV)との時刻同期が最も重要であるため、調節計機能と一体化されたデータ収集になることが好ましい。
【0044】
なお、第1、第2の実施の形態で説明した調節計は、CPU、記憶装置及びインタフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。CPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って第1、第2の実施の形態で説明した処理を実行する。