(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水分散型アクリル系粘着剤組成物が、分子中にカルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する非水溶性架橋剤(C)をさらに含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の表面保護フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の表面保護フィルムについて、本発明の好適な実施形態の一例を挙げて説明する。なお、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。また、図面に記載の実施形態は、本発明を明瞭に説明するために模式化されており、製品として実際に提供される本発明の表面保護フィルムのサイズや縮尺を正確に表したものではない。
【0022】
本明細書中において、「滑り剤」とは、トップコート層に含有されることによって該トップコート層の滑り性を向上させる作用を発揮し得る成分をいう。トップコートの滑り性が向上したことは、例えば、該トップコート層の摩擦係数が低下したことにより把握することができる。また、トップコート層における「バインダ」とは、該トップコート層の成膜に寄与する基本成分をいう。また、「ポリエステル樹脂」とは、ポリエステル(モノマー間のエステル結合により形成された主鎖を有するポリマーをいう。)を主成分(好ましくは50重量%よりも多く含まれる成分)とする樹脂をいう。「アクリル系粘着剤」とは、アクリル系ポリマーをベースポリマー(該アクリル系粘着剤に含まれるポリマー成分のなかの主成分、好ましく50重量%よりも多く含まれる成分)とする粘着剤をいう。「アクリル系ポリマー」とは、1分子中に少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(以下、これを「アクリル系モノマー」と称する場合がある。)を主構成単量体成分(モノマーの主成分、好ましくはアクリル系ポリマーを構成するモノマーの総量のうち50重量%以上を占める成分)とするポリマーを指す。上記「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基およびメタクリロイル基を包括的に指す意味である。同様に、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートを包括的に指す意味である。本明細書中において、「アルキレンオキシド鎖」とは、オキシアルキレン単位(−OR−)およびオキシアルキレン単位が2単位以上連続した部分(すなわち、−(OR)n−で表わされる構造部分。ただしn≧2。ポリアルキレンオキシド鎖としても把握され得る。)を包括的に指す用語である。
【0023】
<表面保護フィルムの構成と使用形態>
本発明の表面保護フィルムの構成の一例及びその使用形態の一例を
図1に示す。表面保護フィルム1は、第一面12Aおよび第二面12Bを有する基材12と、第一面(背面)12A上に設けられたトップコート層14と、第二面(前面)12Bに設けられた粘着剤層20(アクリル系粘着剤層20)とを備える。基材12は、透明な樹脂フィルム(例えばポリエステル樹脂フィルム)であることが好ましい。また、
図1に示すように、第一面12A上にトップコート層14が直接(他の層を介在することなく)設けられていることが好ましい。粘着剤層20は、連続的に形成されることが好ましいが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成されていてもよい。表面保護フィルム1は、被着体(保護対象、例えば偏光板等の光学部品)50の表面に粘着剤層20の表面(粘着面、すなわち被着体への貼付面)20Aを貼り付けて使用される。使用前(すなわち、被着体への貼付前)の表面保護フィルム1は、好ましくは、
図2に示すように、粘着剤層20の表面20Aが剥離ライナー30によって保護された形態であってもよい。剥離ライナー30は、少なくともその粘着剤層20に対向する面が剥離面となっている。
【0024】
被着体50を保護する役目を終えて不要となった表面保護フィルム1は、被着体50の表面から剥がして取り除かれる。被着体50の表面から表面保護フィルム1を除去する操作は、例えば
図3に示すように、表面保護フィルム1の背面1A(トップコート層14の表面)に粘着テープ60を貼り付け、この粘着テープ(ピックアップテープ)60とともに表面保護フィルム1の少なくとも一部(好ましくは、少なくとも外縁の一部)を被着体50の表面から持ち上げる操作を含む態様で好ましく実施することができる。このように、表面保護フィルム1の背面1Aに貼り付けられたピックアップテープ60を引っ張ることにより、背面1Aに対するピックアップテープ60の粘着力を利用して、被着体50から表面保護フィルム1を引き剥がす端緒を得ることができる。かかる態様によると、被着体50から表面保護フィルム1を除去する操作を効率よく行うことができる。例えば、表面保護フィルム1の背面1Aにピックアップテープ60を、
図3に仮想線で示すように、その一端が表面保護フィルム1の外縁からはみ出すように貼り付ける。そして、
図3に実線で示すように、ピックアップテープ60の上記一端を掴んで表面保護フィルム1をその外縁から内側へと折り返す(捲る)ように引っ張るとよい。なお、
図3に示すように被着体50から表面保護フィルム1の外縁が剥がれた後、表面保護フィルム1の残りの部分を被着体50から剥離する操作は、引き続きピックアップテープ60を引っ張ることにより行ってもよく、あるいは表面保護フィルム1のうち既に被着体50から剥がれた部分を直接掴んで引っ張ることにより行ってもよい。
【0025】
<基材>
本発明の表面保護フィルムの基材としては、特に限定されないが、樹脂フィルムが好ましい。かかる樹脂フィルムは、各種の樹脂材料をフィルム形状に成形したものであることが好ましい。上記樹脂材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性等のうち、1または2以上の特性に優れた樹脂フィルムを構成し得るものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース類;ポリカーボネート類;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー類等を主成分(好ましくは、50重量%よりも多く含まれる成分)とする樹脂材料から構成された透明(着色透明を包含する意味である。)な樹脂フィルムが好ましく挙げられる。上記樹脂フィルムを構成する他の樹脂材料としては、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体等のスチレン類;例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン−プロピレン共重合体等のオレフィン類;ポリ塩化ビニル類;ナイロン6、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド等のポリアミド類等を主成分とする樹脂材料が挙げられる。さらに、ポリイミド類、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類、ポリエーテルエーテルケトン類、ポリフェニレンスルフィド類、ポリビニルアルコール類、ポリ塩化ビニリデン類、ポリビニルブチラール類、ポリアリレート類、ポリオキシメチレン類、エポキシ類等を主成分とする樹脂材料が挙げられる。なお、上記樹脂フィルムを構成する樹脂材料は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
上記基材用の樹脂フィルムは、透明性を有し、かつその光学特性(位相差等)の異方性が少ないものが好ましい。一般に、上記異方性は少ないほど好ましい。特に、光学部品用表面保護フィルムの基材に用いられる樹脂フィルムにおいては、該樹脂フィルムの光学的異方性を少なくすることが有意義である。上記樹脂フィルムは、単層構造であってもよく、組成の異なる複数の層が積層された構造であってもよい。通常は、単層構造の樹脂フィルムが好ましい。
【0027】
上記樹脂フィルムの屈折率は、特に限定されないが、外観特性の観点から、1.43〜1.6の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.45〜1.5の範囲である。上記屈折率の値としては、メーカー公証値を採用することができる。公証値のない場合には、JIS K 7142 A法により測定された値を採用することができる。また、上記樹脂フィルムの可視光波長領域における全光線透過率がは、特に限定されないが、透明性の点より、70%以上(例えば70%〜99%)であることが好ましく、より好ましくは80%以上(例えば80%〜99%)、さらに好ましくは85%以上(例えば85%〜99%)である。上記全光線透過率の値としては、メーカー公証値を採用することができる。公証値のない場合には、JIS K 7361−1に準拠して測定された値を採用することができる。
【0028】
本発明の表面保護フィルムでは、上記基材は、ポリエステルを主成分(好ましくは50重量%よりも多く含まれる成分)とする樹脂(ポリエステル樹脂)がフィルム状に成形された樹脂フィルム(ポリエステル樹脂フィルム)であることが好ましい。特に、上記ポリエステルが主としてPETである樹脂フィルム(PETフィルム)、主としてPENである樹脂フィルム(PENフィルム)が好ましい。
【0029】
上記基材を構成する樹脂材料には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止成分、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)等の各種添加剤が配合されていてもよい。基材の第一面(背面、すなわちトップコート層が設けられる側の表面)には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、例えば、基材背面とトップコート層との密着性を高めるための処理であることが好ましい。さらに、基材背面にヒドロキシル基(−OH基)等の極性基が導入されるような表面処理も好ましい。加えて、本発明の表面保護フィルムにおいて、基材の第二面(前面、すなわち粘着剤層が形成される側の表面)には、上記背面と同様の表面処理が施されていてもよい。かかる表面処理は、基材(支持体)と粘着剤層との密着性(粘着剤層の投錨性)を高めるための処理であることが好ましい。
【0030】
また、上記基材の厚みは、表面保護フィルムの用途、目的、使用形態等を考慮して適宜選択することができる。上記基材の厚みは、強度や取扱性等の作業性と、コストや外観検査性等との兼ね合いから、10μm〜200μmが好ましく、より好ましくは15μm〜100μm、さらに好ましくは20μm〜70μmである。
【0031】
<バインダ>
本発明の表面保護フィルムは、上記基材の背面(第一面)にトップコート層を有する。このトップコート層は、バインダとしてのポリエステル樹脂と、滑り剤としてのワックスとを含む。上記ポリエステル樹脂は、ポリエステルを主成分(好ましくは50重量%以上、より好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上を占める成分)として含む樹脂材料である。上記ポリエステルは、1分子中に2個以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸類(好ましくはジカルボン酸類)およびその誘導体(当該多価カルボン酸の無水物、エステル化物、ハロゲン化物等)から選択される1種または2種以上の化合物(多価カルボン酸成分)と、1分子中に2個以上の水酸基を有する多価アルコール類(好ましくはジオール類)から選択される1種または2種以上の化合物(多価アルコール成分)とが縮合した構造を有する。
【0032】
上記多価カルボン酸成分に相当する化合物は、特に限定されないが、例えば、シュウ酸、マロン酸、ジフルオロマロン酸、アルキルマロン酸、コハク酸、テトラフルオロコハク酸、アルキルコハク酸、(±)−リンゴ酸、meso−酒石酸、イタコン酸、マレイン酸、メチルマレイン酸、フマル酸、メチルフマル酸、アセチレンジカルボン酸、グルタル酸、ヘキサフルオログルタル酸、メチルグルタル酸、グルタコン酸、アジピン酸、ジチオアジピン酸、メチルアジピン酸、ジメチルアジピン酸、テトラメチルアジピン酸、メチレンアジピン酸、ムコン酸、ガラクタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、パーフルオロスベリン酸、3,3,6,6−テトラメチルスベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、パーフルオロセバシン酸、ブラシル酸、ドデシルジカルボン酸、トリデシルジカルボン酸、テトラデシルジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸類;シクロアルキルジカルボン酸(例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸)、1,4−(2−ノルボルネン)ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸(ハイミック酸)、アダマンタンジカルボン酸、スピロヘプタンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸類;フタル酸、イソフタル酸、ジチオイソフタル酸、メチルイソフタル酸、ジメチルイソフタル酸、クロロイソフタル酸、ジクロロイソフタル酸、テレフタル酸、メチルテレフタル酸、ジメチルテレフタル酸、クロロテレフタル酸、ブロモテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、オキソフルオレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ビフェニレンジカルボン酸、ジメチルビフェニレンジカルボン酸、4,4”−p−テレフェニレンジカルボン酸、4,4”−p−クワレルフェニルジカルボン酸、ビベンジルジカルボン酸、アゾベンゼンジカルボン酸、ホモフタル酸、フェニレン二酢酸、フェニレンジプロピオン酸、ナフタレンジカルボン酸、ナフタレンジプロピオン酸、ビフェニル二酢酸、ビフェニルジプロピオン酸、3,3'−[4,4’−(メチレンジ−p−ビフェニレン)ジプロピオン酸、4,4’−ビベンジル二酢酸、3,3’(4,4’−ビベンジル)ジプロピオン酸、オキシジ−p−フェニレン二酢酸などの芳香族ジカルボン酸類;上記多価カルボン酸の酸無水物;上記多価カルボン酸のエステル(例えばアルキルエステル、モノエステル、ジエステル等であってもよい。);上記多価カルボン酸に対応する酸ハロゲン化物(例えばジカルボン酸クロリド)等が挙げられる。
【0033】
中でも、上記多価カルボン酸成分に相当する化合物は、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸類およびその酸無水物;アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ハイミック酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸類およびその酸無水物;ならびに上記ジカルボン酸類の低級アルキルエステル(例えば、炭素原子数1〜3のモノアルコールとのエステル)等がより好ましい。
【0034】
一方、上記多価アルコール成分に相当する化合物は、特に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチルペンタンジオール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、キシリレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA等のジオール類が挙げられる。他にも、これらの化合物のアルキレンオキサイド付加物(例えば、エチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物等)が挙げられる。
【0035】
特に、上記ポリエステル樹脂は、水分散性ポリエステルを含むことが好ましい。つまり、水分散性ポリエステルを主成分として含むことが好ましい。かかる水分散性ポリエステルは、例えば、ポリマー中に親水性官能基(例えば、スルホン酸金属塩基、カルボキシル基、エーテル基、リン酸基などの親水性官能基等のうち1種または2種以上)を導入することにより水分散性を高めたポリエステルなどが挙げられる。ポリマー中に親水性官能基を導入する手法としては、親水性官能基を有する化合物を共重合させる方法、ポリエステルまたはその前駆体(例えば、多価カルボン酸成分、多価アルコール成分、それらのオリゴマー等)を変性して親水性官能基を生じさせる方法等の公知の手法が挙げられる。好ましい水分散性ポリエステルとしては、親水性官能基を有する化合物が共重合されたポリエステル(共重合ポリエステル)が挙げられる。
【0036】
本発明の表面保護フィルムにおいて、トップコート層のバインダとして用いられるポリエステル樹脂は、特に限定されないが、飽和ポリエステルを主成分とするものであってもよく、不飽和ポリエステルを主成分とするものであってもよい。中でも、トップコート層のバインダとして用いられるポリエステル樹脂は、上記ポリエステル樹脂の主成分が飽和ポリエステルであるものが好ましい。特に、水分散性が付与された飽和ポリエステル(例えば、飽和共重合ポリエステル)を主成分とするポリエステル樹脂がより好ましい。
このようなポリエステル樹脂(水分散液の形態に調製されたものも含む)は、公知の方法により合成することができ、あるいは市販品を容易に入手することができる。
【0037】
上記ポリエステル樹脂の分子量は、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)として、0.5×10
4〜15×10
4(好ましくは1×10
4〜6×10
4)が好ましい。また、上記ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、0℃〜120℃が好ましく、より好ましくは10℃〜80℃である。
【0038】
上記トップコート層は、本発明の表面保護フィルムの性能(例えば、透明性、耐スクラッチ性、耐白化性等の性能)を損なわない範囲で、バインダとして、ポリエステル樹脂以外の樹脂(例えば、アクリル樹脂、アクリル−ウレタン樹脂、アクリル−スチレン樹脂、アクリル−シリコーン樹脂、シリコーン樹脂、ポリシラザン樹脂、ポリウレタン樹脂、フッ素樹脂、ポリオレフィン樹脂等から選択される1種または2種以上の樹脂)をさらに含有していてもよい。特に、本発明の表面保護フィルムにおいて、トップコート層のバインダは、実質的にポリエステル樹脂のみからなることが好ましい。例えば、該バインダに占めるポリエステル樹脂の割合が98重量%〜100重量%であるトップコート層が好ましい。トップコート層全体に占めるバインダの割合は、特に限定されないが、50重量%〜95重量%とすることが好ましく、より好ましくは60重量%〜90重量%である。
【0039】
<滑り剤>
本発明の表面保護フィルムにおけるトップコート層は、滑り剤として、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル(以下「ワックスエステル」ともいう。)を含む。ここで、「高級脂肪酸」とは、炭素原子数が8以上(好ましく10以上、より好ましくは10以上40以下)のカルボン酸(特に一価のカルボン酸)をいう。また、「高級アルコール」とは、炭素原子数が6以上(好ましくは10以上、より好ましくは10以上40以下)のアルコール(特に一価または二価のアルコール、より好ましくは一価のアルコール)をいう。このようなワックスエステルと上記バインダ(ポリエステル樹脂)とを組み合わせて含む組成のトップコート層は、高温多湿条件に保持されても白化しにくい。したがって、かかるトップコート層を有する基材を備えた本発明の表面保護フィルムは、より外観品位の高いものとなる。
【0040】
本発明の表面保護フィルムにおいて、上記構成のトップコート層により優れた耐白化性(例えば、高温多湿条件に保持されても白化しにくい性質)が実現される理由は明らかではないが、以下の理由が推測される。すなわち、従来使用されているシリコーン系滑剤は、トップコート層の表面にブリードすることにより該表面に滑り性を付与する機能を発揮するものと推測される。しかし、これらシリコーン系滑剤は、保存条件(温度、湿度、経時等)の違いによって上記ブリードの程度が変動しやすい。このため、例えば、通常の保存条件(例えば、25℃、50%RH)に保持された場合に表面保護フィルムの製造直後から比較的長期間(例えば約3ヶ月)にわたって適度な滑り性が得られるようにシリコーン系滑剤の使用量を設定すると、この表面保護フィルムが高温多湿条件(例えば、60℃、95%RH)で2週間保存された場合には、滑剤のブリードが過剰に進行してしまう。このように過剰にブリードしたシリコーン系滑剤は、トップコート層(ひいては表面保護フィルム)を白化させる。
本発明の表面保護フィルムでは、滑り剤としてのワックスエステルと、トップコート層のバインダとしてのポリエステル樹脂という特定の組合せを採用されている。かかる滑り剤とバインダとの組合せによると、上記ワックスエステルのトップコート層からのブリードの程度が保存条件の影響を受けにくい。このことによって表面保護フィルムの耐白化性が向上したものと考えられる。
【0041】
上記ワックスエステルは、特に限定されないが、下記一般式(W)で示される化合物であることが好ましい。また、上記ワックスエステルは、下記一般式(W)で示される化合物を1種含むものであってもよいし、2種以上含むものであってもよい。
X−COO−Y (W)
ここで、上記式(W)中のXおよびYは、それぞれ独立に、炭素原子数10〜40(好ましくは10〜35、より好ましくは14〜35、さらに好ましくは20〜32)の炭化水素基である。上記炭素原子数が小さすぎると、トップコート層に滑り性を付与する効果が不足しがちとなる場合がある。上記炭化水素基は、飽和であっても不飽和であってもよいが、飽和炭化水素基であることが好ましい。また、該炭化水素基は、芳香族の環を含む構造であってもよく、かかる芳香環を含まない構造(脂肪族性炭化水素基)であってもよい。また、脂肪族性の環を含む構造の炭化水素基(脂環式炭化水素基)であってもよく、鎖状(直鎖状および分岐鎖状を包含する意味である。)の炭化水素基であってもよい。
【0042】
上記ワックスエステルは、上記式(W)におけるXおよびYが、それぞれ独立に、炭素原子数10〜40の鎖状アルキル基(より好ましくは直鎖状アルキル基)である化合物が好ましい。かかる化合物の具体例としては、セロチン酸ミリシル(CH
3(CH
2)
24COO(CH
2)
29CH
3)、パルミチン酸ミリシル(CH
3(CH
2)
14COO(CH
2)
29CH
3)、パルミチン酸セチル(CH
3(CH
2)
14COO(CH
2)
15CH
3)、ステアリル酸ステアリル(CH
3(CH
2)
16COO(CH
2)
17CH
3)等が挙げられる。
【0043】
上記ワックスエステルの融点は、特に限定されないが、50℃以上であることが好ましく、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上、さらにより好ましくは75℃以上である。かかるワックスエステルによると、より高い耐白化性を得ることができる。また、上記ワックスエステルは、融点が100℃以下であることが好ましい。かかるワックスエステルは、滑り性を付与する効果が高いので、より耐スクラッチ性の高いトップコート層を形成することができる。上記ワックスエステルの融点が100℃以下であると、該ワックスエステルの水分散液を調製しやすくなるので、好ましい。例えば、セロチン酸ミリシルが好ましく挙げられる。
【0044】
上記トップコート層の原料としては、特に限定されないが、上記ワックスエステルを含有する天然ワックスが挙げられる。かかる天然ワックスとしては、不揮発分(NV)基準で、上記ワックスエステルの含有割合(2種以上のワックスエステルを含む場合にはそれらの含有割合の合計)が50重量%以上(好ましくは65重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上)のものが好ましく挙げられる。例えば、カルナバワックス(一般に、セロチン酸ミリシルを60重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上の割合で含む。)、パームワックス等の植物性ワックス;蜜ロウ、鯨ロウ等の動物性ワックス等の天然ワックスを用いることができる。使用する天然ワックスの融点は、特に限定されないが、50℃以上(より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上、さらにより好ましくは75℃以上)であることが好ましい。また、上記トップコート層の原料は、化学的に合成されたワックスエステルであってもよく、天然ワックスを精製して該ワックスエステルの純度を高めたものであってもよい。これらの原料は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0045】
トップコート層全体に占める滑り剤の割合は、特に限定されないが、5重量%〜50重量%であることが好ましく、より好ましくは10重量%〜40重量%である。滑り剤の含有割合が5重量%以上であると、良好な耐スクラッチ性が得やすくなり、好ましい。また、滑り剤の含有割合が50重量%以下であると、耐白化性の向上効果が得やすくなり、好ましい。
【0046】
本発明の表面保護フィルムでは、効果を損なわない範囲で、トップコート層が、上記ワックスエステルに加えて他の滑り剤を含んでいてもよい。このような他の滑り剤としては、特に限定されないが、例えば、石油系ワックス(パラフィンワックス等)、鉱物系ワックス(モンタンワックス等)、高級脂肪酸(セロチン酸等)、中性脂肪(パルミチン酸トリグリセリド等)のような各種ワックスが挙げられる。さらには、上記トップコート層には、上記ワックスエステルに加えて、一般的なシリコーン系滑剤、フッ素系滑剤等を補助的に含有されていてもよい。本発明の表面保護フィルムでは、かかるシリコーン系滑剤、フッ素系滑剤等を実質的に含有しない(これらの合計含有量がトップコート層全体の0.01重量%以下、もしくは検出限界以下であること)ことが好ましい。なお、滑剤とは別の目的で(例えば、後述するトップコート形成用コーティング材の消泡剤として)用いられるシリコーン系化合物の含有を排除するものではない。
【0047】
本発明の表面保護フィルムにおけるトップコート層は、必要に応じて、帯電防止成分、架橋剤、酸化防止剤、着色剤(顔料、染料等)、流動性調整剤(チクソトロピー剤、増粘剤等)、造膜助剤、界面活性剤(消泡剤、分散剤等)、防腐剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0048】
<トップコート層の帯電防止成分>
本発明の表面保護フィルムでは、トップコート層は、帯電防止成分を含有することが好ましい。本発明の表面保護フィルムが帯電防止に優れていると、例えば、液晶セルや半導体装置等のように静電気を嫌う物品の加工や搬送工程等において好ましく用いることができる。
【0049】
上記帯電防止成分は、表面保護フィルムの帯電を防止または抑制する作用を発揮し得る成分である。トップコート層に帯電防止成分を含有させる場合、その帯電防止成分としては、特に限定されないが、例えば、有機または無機の導電性物質、各種の帯電防止剤等が挙げられる。
【0050】
上記有機導電性物質としては、特に限定されないが、4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1アミノ基、第2アミノ基、第3アミノ基等のカチオン性官能基を有するカチオン型帯電防止剤;スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩等のアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤;アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体等の両性イオン型帯電防止剤;アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体等のノニオン型帯電防止剤;上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基(例えば、4級アンモニウム塩基)を有するモノマーを重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体;ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンイミン、アリルアミン系重合体等の導電性ポリマーなどが挙げられる。このような帯電防止剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0051】
また、上記無機導電性物質としては、特に限定されないが、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)等が挙げられる。なお、このような無機導電性物質は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
上記帯電防止剤としては、特に限定されないが、例えば、カチオン型帯電防止剤、アニオン型帯電防止剤、両性イオン型帯電防止剤、ノニオン型帯電防止剤、上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体等が挙げられる。
【0053】
本発明の表面保護フィルムでは、上記トップコート層に用いられる帯電防止成分は、有機導電性物質を含むことが好ましい。上記有機導電性物質としては、特に限定されないが、良好な帯電防止性と高い耐スクラッチ性との両立の点より、各種の導電性ポリマーを好ましく挙げられる。導電性ポリマーとしては、特に限定されないが、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンイミン、アリルアミン系重合体等が好ましく挙げられる。このような導電性ポリマーは、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。また、上記導電性ポリマーなどの有機導電性物質は、他の帯電防止成分(無機導電性物質、帯電防止剤等)と組み合わせて用いられてもよい。上記導電性ポリマーの使用量は、特に限定されないが、トップコート層に含まれるバインダ100重量部に対して、10重量部〜200重量部であることが好ましく、より好ましくは25重量部〜150重量部、さらに好ましくは40重量部〜120重量部である。導電性ポリマーの使用量が10重量部以上であると、良好な帯電防止効果が得やすくなり、好ましい。また、150重量部以下であると、トップコート層における導電性ポリマーの相溶性を十分に得て、トップコート層の良好な外観品位や良好な耐溶剤性が得やすくなり、好ましい。
【0054】
本発明の表面保護フィルムにおいて、好ましい導電性ポリマーとしては、ポリチオフェンおよびポリアニリンが挙げられる。ポリチオフェンとしては、ポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」と表記する。)が40×10
4以下(より好ましくは30×10
4以下)であるものが好ましい。また、ポリアニリンとしては、Mwが50×10
4以下(より好ましくは30×10
4以下)であるものが好ましい。また、これら導電性ポリマーのMwは、0.1×10
4以上(より好ましくは0.5×10
4以上)であることが好ましい。なお、本明細書中においてポリチオフェンとは、無置換または置換チオフェンの重合体をいう。特に、置換チオフェン重合体としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が好ましい。
【0055】
上記トップコート層を形成する方法として、トップコート層形成用のコーティング材を基材に塗布して乾燥または硬化させる方法を採用する場合、該コーティング材の調製に用いる導電性ポリマーは、該導電性ポリマーが水に溶解または分散した形態のもの(導電性ポリマー水溶液)が好ましい。かかる導電性ポリマー水溶液は、例えば、親水性官能基を有する導電性ポリマー(分子内に親水性官能基を有するモノマーを共重合させる等の手法により合成される。)を水に溶解または分散させることにより調製される。上記親水性官能基としては、スルホ基、アミノ基、アミド基、イミノ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、ヒドラジノ基、カルボキシル基、四級アンモニウム基、硫酸エステル基(−O−SO
3H)、リン酸エステル基(例えば−O−PO(OH)
2)などが挙げられる。かかる親水性官能基は塩を形成していてもよい。ポリチオフェン水溶液の市販品としては、ナガセケムテック社製の商品名「デナトロン」シリーズが挙げられる。また、ポリアニリンスルホン酸水溶液の市販品としては、三菱レイヨン社製の商品名「aqua−PASS」が挙げられる。
【0056】
本発明の表面保護フィルムでは、上記コーティング材の調製にポリチオフェン水溶液を使用することが好ましく、ポリスチレンスルホネート(PSS)を含むポリチオフェン水溶液(ポリチオフェンにPSSがドーパントとして添加された形態であってもよい。)の使用がより好ましい。かかる水溶液は、ポリチオフェン:PSSを1:1〜1:10の質量比で含有するものであってもよい。上記水溶液におけるポリチオフェンとPSSとの合計含有量は、特に限定されないが、1重量%〜5重量%であることが好ましい。このようなポリチオフェン水溶液の市販品としては、H.C.Stark社の商品名「ベイトロン(Baytron)」が挙げられる。
なお、上記のようにPSSを含むポリチオフェン水溶液を用いる場合には、ポリチオフェンとPSSとの合計量は、特に限定されないが、バインダ100重量部に対して5重量部〜200重量部であることが好ましく、より好ましくは10重量部〜100重量部、さらに好ましくは25重量部〜70重量部である。
【0057】
上記トップコート層は、必要に応じて、導電性ポリマーと、他の1種または2種以上の帯電防止成分(導電性ポリマー以外の有機導電性物質、無機導電性物質、帯電防止剤など)とを共に含んでもよい。本発明の表面保護フィルムでは、上記トップコート層は、導電性ポリマー以外の帯電防止成分を実質的に含有しないことが特に好ましい。すなわち、上記トップコート層に含まれる帯電防止成分は実質的に導電性ポリマーのみであることが特に好ましい。
【0058】
<架橋剤>
本発明の表面保護フィルムでは、トップコート層が架橋剤を含有することが好ましい。このような架橋剤としては、特に限定されないが、例えば、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤等が挙げられる。なお、架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。かかる架橋剤によれば、耐スクラッチ性、耐溶剤性、印字密着性、摩擦係数の低下(すなわち、滑り性の向上)のうち少なくとも1つの効果の向上を図ることができる。特に、上記架橋剤は、メラミン系架橋剤であることが好ましい。また、上記トップコート層は、架橋剤として実質的にメラミン系架橋剤のみを含む層、すなわち、メラミン系架橋剤以外の架橋剤を実質的に含有しない層であってもよい。
【0059】
<トップコート層の形成>
上記トップコート層の形成方法は、特に限定されない。上記トップコート層は、上記樹脂成分および必要に応じて使用される添加剤が適当な溶媒に分散または溶解した液状組成物(トップコート層形成用のコーティング組成物)を基材に付与することを含む手法によって形成されることが好ましい。例えば、上記トップコート層の形成方法としては、上記コーティング組成物を基材の第一面に塗布して乾燥させ、必要に応じて硬化処理(熱処理、紫外線処理など)を行う手法が好ましく挙げられる。上記コーティング組成物のNVは、特に限定されないが、5重量%以下(例えば0.05重量%〜5重量%)であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下(例えば0.10重量%〜1重量%)である。厚みの小さいトップコート層を形成する場合には、上記コーティング組成物のNVを、0.05重量%〜0.50重量%(特に0.10重量%〜0.30重量%)とすることが好ましい。このように低NVのコーティング組成物を用いることにより、より均一なトップコート層が形成される。
【0060】
上記トップコート層形成用コーティング組成物を構成する溶媒としては、トップコート層形成成分を安定して溶解または分散し得るものが好ましい。かかる溶媒は、有機溶剤、水、またはこれらの混合溶媒であってもよい。上記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン、アセトン、シクロヘキサノン等のケトン類;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の環状エーテル類;n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族または脂環族炭化水素類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等の脂肪族または脂環族アルコール類;アルキレングリコールモノアルキルエーテル(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル)、ジアルキレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類等が挙げられる。また、上記有機溶剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。中でも、上記トップコート層形成用コーティング組成物を構成する溶媒としては、水または水を主成分とする混合溶媒(例えば、水とエタノールとの混合溶媒)が好ましく挙げられる。
【0061】
<トップコート層の性状>
本発明の表面保護フィルムにおけるトップコート層の厚みは、特に限定されないが、好ましくは3nm〜500nm、より好ましくは4nm〜100nm、さらに好ましくは5nm〜60nmである。トップコート層の厚みが500nm以下であると、表面保護フィルムにおいて良好な透明性(光線透過性)が得やすくなり、好ましい。また、3nm以上であると、トップコート層を均一に形成することが容易となり(例えば、トップコート層の厚みにおいて、場所による厚みのバラツキが小さくなり)、このため表面保護フィルムの外観にムラが生じにくくなり、好ましい。
【0062】
特に、本発明の表面保護フィルムでは、トップコート層の厚みは、特に限定されないが、より外観品位に優れたものを得る点より、3nm以上50nm未満であることが好ましく、より好ましくは3nm以上30nm未満、さらに好ましくは4nm以上20nm未満、最も好ましくは5nm以上11nm未満である。表面保護フィルムの外観品位が優れていると、表面保護フィルム越しに製品(被着体)の外観検査をより精度よく行うことができる。上記トップコート層の厚みが小さいことは、基材の特性(光学特性、寸法安定性等)に及ぼす影響が少ないという観点からも好ましい。
【0063】
上記トップコート層の厚みは、該トップコート層の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察することにより把握することができる。例えば、目的の試料(トップコート層が形成された基材、該基材を備える表面保護フィルム等)について、トップコート層を明瞭にする目的で重金属染色処理を行った後、樹脂包埋を行い、超薄切片法により試料断面のTEM観察を行うことにより、把握することができる。TEMとしては、日立社製のTEM、型式「H−7650」等が挙げられる。後述する実施例では、加速電圧:100kV、倍率:60,000倍の条件で得られた断面画像について、二値化処理を行った後、視野内のサンプル長さでトップコートの断面積を除算することでトップコート層の厚み(視野内の平均厚み)を実測した。
なお、重金属染色を行わなくてもトップコート層を十分明瞭に観察し得る場合には、重金属染色処理を省略してもよい。あるいは、TEMにより把握される厚みと、各種の厚み検出装置(例えば、表面粗さ計、干渉厚み計、赤外分光測定機、各種X線回折装置等)による検出結果との相関につき、検量線を作成して計算を行うことにより、トップコート層の厚みを求めてもよい。
【0064】
本発明の表面保護フィルムでは、トップコート層の表面における表面抵抗率は、特に限定されないが、10
12Ω以下であることが好ましく、より好ましくは10
6Ω〜10
12Ωである。かかる表面抵抗率を示す表面保護フィルムは、例えば、液晶セルや半導体装置等のように静電気を嫌う物品の加工または搬送過程等において使用される表面保護フィルムとして好ましく利用される。特に、表面抵抗率が10
11Ω以下(好ましくは5×10
6Ω〜10
10Ω、より好ましくは10
7Ω〜10
9Ω)の表面保護フィルムがより好ましい。上記表面抵抗率の値は、市販の絶縁抵抗測定装置を用いて、23℃、50%RHの雰囲気下で測定される表面抵抗の値から算出することができる。
【0065】
本発明の表面保護フィルムでは、トップコート層の摩擦係数は、特に限定されないが、0.4以下であることが好ましい。このような摩擦係数の低いトップコート層によると、該トップコート層に荷重(スクラッチ傷を生じさせるような荷重)が加わった場合に、その荷重をトップコート層の表面に沿って受け流し、該荷重による摩擦力を軽減することができる。このことによって、トップコート層の凝集破壊(トップコート層がその内部で破壊する損傷態様)や界面破壊(トップコート層が基材背面から剥がれる損傷態様)が起こりにくくなる。したがって、トップコート層の摩擦係数を小さくすると、表面保護フィルムにスクラッチ傷を生じる事象をよりよく防止することができる。摩擦係数の下限は特に限定されないが、他の特性(外観品位、印字性等)とのバランスを考慮して、摩擦係数を0.1以上(例えば0.1以上0.4以下)とすることが適当であり、0.15以上(例えば0.15以上0.4以下)とすることが好ましい。上記摩擦係数としては、例えば、23℃、50%RHの測定環境下において、トップコート層の表面を垂直荷重40mNで擦過して求められる値を採用することができる。上記ワックスエステル(滑り剤)の使用量は、上記の好ましい摩擦係数が実現されるように設定されることが好ましい。上記摩擦係数の調整には、例えば、架橋剤の添加や成膜条件の調整によりトップコート層の架橋密度を高めることも有効である。
【0066】
本発明の表面保護フィルムは、その背面(トップコート層の表面)が、油性インキにより(例えば、油性マーキングペンを用いて)容易に印字できる性質を有することが好ましい。かかる表面保護フィルムは、該表面保護フィルムを貼り付けた状態で行われる被着体(例えば光学部品)の加工や搬送等の過程において、保護対象たる被着体の識別番号等を上記表面保護フィルムに記載して表示するのに適している。したがって、外観品位に加えて印字性にも優れた表面保護フィルムが好ましい。例えば、溶剤がアルコール系であって顔料を含むタイプの油性インキに対して高い印字性を有することが好ましい。また、印字されたインキが擦れや転着により取れにくい(すなわち、印字密着性に優れる)ことが好ましい。本発明の表面保護フィルムは、また、印字を修正または消去する際に該印字をアルコール(例えばエチルアルコール)で拭き取っても外観に目立った変化を生じない程度の耐溶剤性を有することが好ましい。この耐溶剤性の程度は、例えば、後述する耐溶剤性評価により把握することができる。
本発明の表面保護フィルムにおけるトップコート層は、滑り剤としてのワックスエステルを含有するので、該トップコート層の表面にさらなる剥離処理(例えば、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤等の公知の剥離処理剤を塗布して乾燥させる処理)を施さなくても、十分な滑り性(例えば、上述した好ましい摩擦係数)を得ることができる。このようにトップコート層の表面にさらなる剥離処理が施されていない態様は、剥離処理剤に起因する白化(例えば、加熱加湿条件下に保存されることによる白化)を未然に防止し得る等の点で好ましい。また、耐溶剤性の点からも有利である。
【0067】
<アクリル系粘着剤層>
本発明の表面保護フィルムにおけるアクリル系粘着剤層(粘着剤層)は、アクリルエマルション系重合体(A)及び化合物(B)を必須の成分として含有する水分散型アクリル系粘着剤組成物(水分散型アクリル系粘着剤組成物)(「本発明の粘着剤組成物」と称する場合がある)により形成される。本発明の粘着剤組成物は、さらに、非水溶性架橋剤(C)を含有することが好ましい。
【0068】
<アクリルエマルション系重合体(A)>
本発明の粘着剤組成物におけるアクリルエマルション系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシル基含有不飽和単量体を必須の原料モノマー(原料モノマー成分)として構成された重合体(アクリル系重合体)である。すなわち、アクリルエマルション系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及びカルボキシル基含有不飽和単量体を必須成分とするモノマー混合物より得られる重合体である。アクリルエマルション系重合体(A)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なお、本明細書では、上述と同様であり、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び/又は「メタクリル」(「アクリル」及び「メタクリル」のうち、いずれか一方又は両方)のことをいう。
【0069】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する主たるモノマー成分として用いられ、主に接着性、剥離性などの粘着剤(又は粘着剤層)としての基本特性を発現する役割を担う。中でも、アクリル酸アルキルエステルは粘着剤層(アクリル系粘着剤層)を形成するポリマーに柔軟性を付与し、粘着剤層に密着性、粘着性を発現させる効果を発揮する傾向があり、メタクリル酸アルキルエステルは粘着剤層を形成するポリマーに硬さを与え、粘着剤層の再剥離性を調節する効果を発揮する傾向がある。上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、特に限定されないが、炭素数が1〜16(より好ましくは2〜10、さらに好ましくは4〜8)の、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0070】
中でも、アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数が2〜14(より好ましくは4〜8)のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸イソノニルなどの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステルやアクリル酸イソボルニル等の脂環式のアクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。中でも好ましくは、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソボルニルである。
【0071】
また、メタクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数が1〜16(より好ましくは1〜8)のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチルなどの直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルやメタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸イソボルニル等の脂環式のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。中でも好ましくは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチルである。
【0072】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、目的とする粘着性などに応じて適宜選択することができ、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0073】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量は、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマーの総量(全量)(全原料モノマー)(100重量%)中、70重量%〜99.5重量%であり、より好ましくは85重量%〜99重量%である。上記含有量が99.5重量%以下であると、カルボキシル基含有不飽和単量体の含有量が低下することにより、粘着剤組成物より形成されたアクリル系粘着剤層の投錨性、低汚染性やエマルションの安定性が低下するという問題が起こることがなく、また、上記含有量が70重量%以上であると、アクリル系粘着剤層において良好な接着性及び良好な再剥離性を得ることができる。2種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが用いられている場合には、全ての(メタ)アクリル酸アルキルエステルの合計量(合計含有量)が上記範囲を満たせばよい。なお、(メタ)アクリル酸アルキルエステル中におけるアクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルの含有量比(アクリル酸アルキルエステルの含有量:メタクリル酸アルキルエステルの含有量)は、特に限定されないが、重量比で、100:0〜30:70が好ましく、より好ましくは100:0〜50:50である。
【0074】
上記カルボキシル基含有不飽和単量体は、アクリルエマルション系重合体(A)からなるエマルション粒子表面に保護層を形成し、エマルション粒子の剪断破壊を防ぐ機能を発揮することができる。これはカルボキシル基を塩基で中和することによってさらに向上する。なお、エマルション粒子の剪断破壊に対する安定性は、より一般的には機械的安定性という。また、カルボキシル基と反応する多官能化合物(例えば、多官能性エポキシ化合物)を1種あるいは2種以上組み合わせて用いることで、水除去によるアクリル系粘着剤層の形成段階での架橋点としても作用することができる。さらに多官能化合物を介し、アクリル系粘着剤層と基材との密着性(投錨性)を向上させることもできる。このようなカルボキシル基含有不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(アクリル酸、メタクリル酸)、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレートなどが挙げられる。なお、カルボキシル基含有不飽和単量体には、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有不飽和単量体も含むものとする。これらの中でも、エマルション粒子表面での相対濃度が高く、より高密度な保護層を形成し易いことから、アクリル酸が好ましい。なお、上記カルボキシル基含有不飽和単量体は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0075】
上記カルボキシル基含有不飽和単量体の含有量は、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマーの総量(全原料モノマー)(100重量%)中、0.5重量%〜10重量%であり、好ましくは1重量%〜5重量%、より好ましくは2重量%〜4重量%である。上記含有量が10重量%以下であるので、カルボキシル基含有不飽和単量体(例えば、アクリル酸)は一般的に水溶性であるため、水中で重合して増粘(粘度増加)を引き起こすことが懸念されるが、このようなことが生じにくい。さらには、アクリル系粘着剤層を形成した後、被着体である偏光板表面の官能基との相互作用が増大して、経時で粘着力が増大し、剥離が困難になるという問題が生じにくい。また、上記含有量が0.5重量%以上であるので、エマルション粒子の機械的安定性を十分に得ることができる。また、アクリル系粘着剤層と透明フィルム基材との間の密着性(投錨性)低下が生じにくく、糊残りも生じにくい。
【0076】
アクリルエマルション系重合体(A)を構成するモノマー成分(原料モノマー)としては、特定の機能付与を目的として、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルやカルボキシル基含有不飽和単量体以外の他のモノマー成分を併用してもよい。このようなモノマー成分としては、例えば、凝集力向上の目的で、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有モノマーやN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマーを、それぞれ0.1〜10重量%程度添加(使用)してもよい。また、屈折率調整、リワーク性などの目的で、(メタ)アクリル酸フェニル等の(メタ)アクリル酸アリールエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;スチレン等のスチレン系モノマーを、それぞれ15重量%以下の割合で添加(使用)してもよい。さらに、エマルション粒子内架橋および凝集力向上の目的で、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマーやトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能モノマーを、それぞれ5重量%未満の割合で添加(使用)してもよい。さらに、ヒドラジド系架橋剤を併用してヒドラジド架橋を形成し、特に低汚染性を向上させる目的で、ダイアセトンアクリルアミド(DAAM)、アリルアセトアセテート、2−(アセトアセトキシ)エチル(メタ)アクリレート等のケト基含有不飽和単量体を10重量%未満の割合で(好ましくは0.5〜5重量%)添加(使用)してもよい。
【0077】
また、上記他のモノマー成分として、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル等のヒドロキシル基含有不飽和単量体を使用してもよい。ヒドロキシル基含有不飽和単量体は、白化汚染をより低減する観点からは添加量(使用量)は少ない方が好ましい。具体的には、ヒドロキシル基含有不飽和単量体の添加量は、1重量%未満が好ましく、より好ましくは0.1重量%未満、さらに好ましくは実質的に含まない(例えば、0.05重量%未満)ことが好ましい。ただし、水酸基とイソシアネート基の架橋や金属架橋の架橋等の架橋点の導入を目的とする場合には、0.01重量%〜10重量%程度添加(使用)してもよい。
【0078】
なお、上記他のモノマー成分の添加量(使用量)は、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマーの総量(全原料モノマー)(100重量%)中の含有量である。
【0079】
特に、本発明の粘着シートの外観を向上させる観点からは、アクリルエマルション系重合体(A)を構成するモノマー成分(原料モノマー)として、メタクリル酸メチル、イソボルニルアクリレート及び酢酸ビニルからなる群より選ばれた少なくとも1つのモノマーを使用することが好ましい。特に好ましくは、メタクリル酸メチルである。アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマーの総量(全原料モノマー)(100重量%)中の、上記モノマー(メタクリル酸メチル、イソボルニルアクリレート及び酢酸ビニルからなる群より選ばれたモノマー)の含有量は、1重量%〜15重量%が好ましく、より好ましくは2重量%〜10重量%、さらに好ましくは2重量%〜5重量%である。上記含有量が1重量%以上であると、外観向上効果が得やすくなり、好ましい。また、上記含有量が15重量%以下であると、アクリル系粘着剤層が硬くなりすぎて密着性が低下するという問題が生じにくくなり、好ましい。なお、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマー中に、メタクリル酸メチル、イソボルニルアクリレート及び酢酸ビニルからなる群より選ばれた2以上のモノマーが含まれる場合には、メタクリル酸メチル、イソボルニルアクリレート及び酢酸ビニルの含有量の合計量(合計含有量)が上記の範囲を満たせばよい。
【0080】
本発明におけるアクリルエマルション系重合体(A)は、上記の原料モノマー(モノマー混合物)を、乳化剤、重合開始剤によりエマルション重合することによって得られる。
【0081】
上記アクリルエマルション系重合体(A)のエマルション重合に用いる乳化剤は、分子中にラジカル重合性官能基が導入された反応性乳化剤(ラジカル重合性官能基を含む反応性乳化剤)である。すなわち、上記アクリルエマルション系重合体(A)は、分子中にラジカル重合性官能基を含む反応性乳化剤を用いて重合されたアクリルエマルション系重合体である。上記ラジカル重合性反応基を含む反応性乳化剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0082】
上記ラジカル重合性官能基を含む反応性乳化剤(以下、「反応性乳化剤」と称する)は、分子中(1分子中)に少なくとも1つのラジカル重合性官能基を含む乳化剤である。上記反応性乳化剤としては、特に限定されず、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ビニルエーテル基(ビニルオキシ基)、アリルエーテル基(アリルオキシ基)等のラジカル重合性官能基を有する種々の反応性乳化剤から、1種又は2種以上を選択して使用できる。当該反応性乳化剤を用いることにより、乳化剤が重合体中にとりこまれ、乳化剤由来の汚染が低減するため好ましい。
【0083】
上記反応性乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのノニオンアニオン系乳化剤(非イオン性の親水性基を持つアニオン系乳化剤)にプロペニル基やアリルエーテル基等のラジカル重合性官能基(ラジカル反応性基)が導入された形態を有する(又は該形態に相当する)反応性乳化剤が挙げられる。なお、以下では、アニオン系乳化剤にラジカル重合性官能基が導入された形態を有する反応性乳化剤を「アニオン系反応性乳化剤」と称する。また、ノニオンアニオン系乳化剤にラジカル重合性官能基が導入された形態を有する反応性乳化剤を「ノニオンアニオン系反応性乳化剤」と称する。
【0084】
特に、アニオン系反応性乳化剤(中でも、ノニオンアニオン系反応性乳化剤)を使用した場合に、乳化剤が重合体中にとりこまれることにより、低汚染性を向上させることができる。さらに、特に非水溶性架橋剤(C)がエポキシ基を有する多官能性エポキシ系架橋剤である場合には、その触媒作用により架橋剤の反応性を向上させることができる。アニオン系反応性乳化剤を使用しない場合、エージングでは架橋反応が終了せず、経時で、粘着剤層の粘着力が変化する問題が生じる場合がある。さらに、未反応のカルボキシル基により被着体との粘着力が経時で上昇する問題が生じる場合がある。また、当該アニオン系反応性乳化剤は重合体中にとりこまれるため、エポキシ系架橋剤の触媒として一般的に使用される、第4級アンモニウム化合物(例えば、特開2007−31585号公報参照)のように被着体の表面に析出しないため、白化汚染の原因になり得ないため好ましい。
【0085】
このような反応性乳化剤としては、商品名「アデカリアソープSE−10N」(株式会社ADEKA製)、商品名「アクアロンHS−10」(第一工業製薬株式会社製)、商品名「アクアロンHS−05」(第一工業製薬株式会社製)などの市販品を用いることも可能である。
【0086】
また、特に不純物イオンが問題となる場合があるため、不純物イオンを取り除き、SO
42-イオン濃度が100μg/g以下の反応性乳化剤を用いることが望ましい。また、アニオン系乳化剤の場合、アンモニウム塩反応性乳化剤を用いることが望ましい。反応性乳化剤から不純物を取り除く方法としては、イオン交換樹脂法、膜分離法、アルコールを用いた不純物の沈殿ろ過法など適宜な方法を用いることができる。
【0087】
上記反応性乳化剤の配合量(使用量)は、特に限定されないが、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマーの総量(全原料モノマー)100重量部に対して、0.1重量部〜5重量部が好ましく、より好ましくは0.5重量部〜3重量部である。上記配合量が5重量部以下であると、粘着剤(粘着剤層)の凝集力を十分に得て、被着体への汚染を抑制でき、また、乳化剤による汚染も抑制でき、好ましい。一方、配合量が0.1重量部以上であると、安定した乳化を維持することができ、好ましい。
【0088】
上記アクリルエマルション系重合体(A)のエマルション重合に用いる重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系重合開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系重合開始剤;過酸化物と還元剤との組み合わせによるレドックス系開始剤、例えば、過酸化物とアスコルビン酸との組み合わせ(過酸化水素水とアスコルビン酸との組み合わせ等)、過酸化物と鉄(II)塩との組み合わせ(過酸化水素水と鉄(II)塩との組み合わせ等)、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせによるレドックス系重合開始剤などを用いることができる。なお、上記重合開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0089】
上記重合開始剤の配合量(使用量)は、開始剤や原料モノマーの種類などに応じて適宜決定することができ、特に限定されないが、アクリルエマルション系重合体(A)を構成する原料モノマーの総量(全原料モノマー)100重量部に対して、0.01重量部〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.02重量部〜0.5重量部である。
【0090】
上記アクリルエマルション系重合体(A)のエマルション重合は、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合など任意の方法を用いることができ、その方法は特に限定されるものではない。なお、低汚染化の観点からは、一括重合でかつ低温(例えば55℃以下、好ましくは30℃以下)で重合することが望ましい。このような条件で重合を行うと、高分子量体が得られやすく、低分子量体が少なくなるため、汚染が減少するものと推定される。
【0091】
上記アクリルエマルション系重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位及びカルボキシル基含有不飽和単量体に由来する構成単位を必須の構成単位とする重合体である。アクリルエマルション系重合体(A)中の、(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量は、70重量%〜99.5重量%が好ましく、より好ましくは85重量%〜99重量%である。アクリルエマルション系重合体(A)中の、カルボキシル基含有不飽和単量体に由来する構成単位の含有量は、0.5重量%〜10重量%が好ましく、より好ましくは1重量%〜5重量%、さらに好ましくは2重量%〜4重量%である。
【0092】
上記アクリルエマルション系重合体(A)の溶剤不溶分(溶剤不溶成分の割合、「ゲル分率」と称する場合もある)は、特に限定されないが、70%(重量%)以上が好ましく、より好ましくは75重量%以上、更に好ましくは80重量%以上である。溶剤不溶分が70重量%以上であると、アクリルエマルション系重合体(A)中に低分子量体が少なく、架橋により十分に粘着剤層中の低分子量成分を低減でき、低分子量成分等に由来する被着体汚染を抑制でき、好ましい。また、粘着力が高くなりすぎることを抑制でき、好ましい。上記溶剤不溶分は、重合開始剤、反応温度、乳化剤や原料モノマーの種類等により制御できる。上記溶剤不溶分の上限値は、特に限定されないが、例えば、99重量%が好ましい。
【0093】
なお、本発明において、アクリルエマルション系重合体(A)の溶剤不溶分は、以下の「溶剤不溶分の測定方法」により算出される値である。
(溶剤不溶分の測定方法)
アクリルエマルション系重合体(A):約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、アクリルエマルション系重合体(A)(上記で採取したもの)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸の総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
次に、上記のアクリルエマルション系重合体(A)をテトラフルオロエチレンシートにて包み凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて7日間静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。
そして、下記の式から溶剤不溶分を算出する。
溶剤不溶分(重量%)=(X−Y)/(Z−Y)×100 (1)
(式(1)において、Xは浸漬後重量であり、Yは包袋重量であり、Zは浸漬前重量である。)
【0094】
上記アクリルエマルション系重合体の溶剤可溶分(「ゾル分」と称する場合がある)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、4万〜20万が好ましく、より好ましくは5万〜15万、さらに好ましくは6万〜10万である。アクリルエマルション系重合体の溶剤可溶分の重量平均分子量が4万以上であることにより、粘着剤組成物の被着体への濡れ性が向上し、被着体への接着性が向上する。また、アクリルエマルション系重合体の溶剤可溶分の重量平均分子量が20万以下であることにより、被着体への粘着剤組成物の残留量が低減し、低汚染性が向上する。
【0095】
上記アクリルエマルション系重合体の溶剤可溶分の重量平均分子量は、前述のアクリルエマルション系重合体の溶剤不溶分の測定において得られる酢酸エチル処理後の処理液(酢酸エチル溶液)を常温下で風乾して得られるサンプル(アクリルエマルション系重合体の溶剤可溶分)を、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して求めることができる。具体的な測定方法は、以下の方法が挙げられる。
[測定方法]
GPC測定は、東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8220GPC」を用いて行い、ポリスチレン換算値にて分子量を求める。測定条件は下記の通りである。
サンプル濃度:0.2wt%(THF溶液)
サンプル注入量:10μl
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
測定温度:40℃
カラム:サンプルカラム;TSKguardcolumn SuperHZ−H 1本+TSKgel SuperHZM−H 2本
リファレンスカラム;TSKgel SuperH−RC 1本
検出器:示差屈折計
【0096】
本発明の粘着剤組成物中のアクリルエマルション系重合体(A)の含有量は、特に限定されないが、粘着剤組成物の不揮発分100重量%に対して、80重量%以上が好ましく、より好ましくは90〜99重量%である。
【0097】
<化合物(B)>
本発明の粘着剤組成物(水分散型アクリル系粘着剤組成物)における化合物(B)は、下記式(I)で表される化合物である。
R
1O−(PO)
a−(EO)
b−(PO)
c−R
2 (I)
【0098】
上記式(I)中、R
1及びR
2は、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は、水素原子を表す。R
1とR
2は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。上記の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基が好ましく例示される。上記R
1及びR
2は、共に水素原子であることが特に好ましい。
【0099】
上記式(I)中、POはオキシプロピレン基[−CH
2CH(CH
3)O−]を表す。また、a及びcは、それぞれ、正の整数(1以上の整数)であり、1〜100が好ましく、より好ましくは10〜50、さらに好ましくは10〜30である。aとcは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0100】
上記式(I)中、EOはオキシエチレン基[−CH
2CH
2O−]を表す。また、bは、正の整数(1以上の整数)であり、1〜50が好ましく、より好ましくは1〜30、さらに好ましくは1〜15である。
【0101】
上記式(I)において、EOとPOの付加形態(共重合形態)はブロック型である。すなわち、上記化合物(B)は、EOからなるブロック[ポリオキシエチレンブロック、ポリエチレングリコール(PEG)ブロック]の両側にPOからなるブロック[ポリオキシプロピレンブロック、ポリプロピレングリコール(PPG)ブロック]を有するトリブロック共重合体またはその誘導体である。
【0102】
上記化合物(B)を粘着剤組成物中に配合することで、その消泡性により、気泡由来の欠点をなくすことが可能となる。
【0103】
上記化合物(B)は、ポリオキシエチレンブロックが分子の中央部に位置するブロック型の構造であり、分子の両端部に疎水基であるPOからなるブロックが存在する構造であるため、気−液界面に均一に並びにくく、消泡性を発揮できる。ポリオキシエチレンブロックを分子の両端部に有するPEG−PPG−PEGトリブロック共重合体やポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのジブロック共重合体は、PPG−PEG−PPGトリブロック共重合体に比べて気−液界面に均一に並びやすいため、泡沫を安定させる作用を有する。
【0104】
さらに、上記化合物(B)は、疎水性が高いため、高湿度環境下で被着体上に生じる白化汚染の原因となりにくく、低汚染性が向上する。親水性の高い化合物(特に水溶性の化合物)の場合には、高湿度環境下では、化合物が水分に溶けて被着体に転写しやすくなったり、被着体にブリードした化合物が膨潤して白化しやすくなったりするため、白化汚染を引き起こしやすい。
また、上記化合物(B)を用いることにより、本発明の粘着剤組成物より形成された粘着剤層(アクリル系粘着剤層)は加湿保存下でも白化(吸湿白化)しにくい。粘着シートを光学部材用の表面保護フィルムに用いる場合には、粘着剤層が白化(すなわち、粘着シートが白化)すると光学部材の検査工程に支障が生じる場合がある。
【0105】
上記化合物(B)の、「化合物(B)の総重量」に対する「EOの総重量」の割合[(EOの総重量)/(化合物(B)の総重量)×100](単位:重量%(%))は、特に限定されないが、50重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%〜50重量%、さらに好ましくは10重量%〜30重量%である。上記割合(EO含有率)が50重量%を超えると、化合物(B)の親水性が高くなり、消泡性が失われる場合がある。また、上記割合が5重量%未満では、化合物(B)の疎水性が高くなりすぎ、ハジキの原因となる場合がある。上記の「化合物(B)の総重量」とは、「本発明の粘着剤組成物中の全ての化合物(B)の重量の合計量」であり、「EOの総重量」とは、「本発明の粘着剤組成物中の全ての化合物(B)に含まれるEOの重量の合計量」である。なお、上記の「化合物(B)の総重量」に対する「EOの総重量」の割合を、「EO含有率」と称する場合がある。EO含有率の測定方法は、例えば、NMR、クロマト法(クロマトグラフィー)またはTOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)が挙げられる。
【0106】
本発明の粘着剤組成物中の、上記化合物(B)の数平均分子量は、1500〜4000が好ましい。数平均分子量が1500以上であると、化合物(B)の、系(粘着剤組成物の系)への相溶性が高くなりすぎることを抑制して、十分な消泡効果が得やすくなり、好ましい。また、数平均分子量が4000以下であると、系への非相溶性が高くなりすぎて、消泡性は高くなるもの、粘着剤組成物を基材等に塗布する際のハジキの原因となることが生じにくくなり、好ましい。
【0107】
上記化合物(B)は市販品を用いることも可能であり、具体的には、例えば、株式会社ADEKA製、商品名「アデカプルロニック 25R−1」、「アデカプルロニック 25R−2」、「アデカプルロニック 17R−2」、「アデカプルロニック 17R−3」;BASFジャパン株式会社製、「プルロニックRPEシリーズ」などが挙げられる。
【0108】
上記化合物(B)は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0109】
本発明の粘着剤組成物の作製時に上記化合物(B)を配合する際には、溶媒を用いず化合物(B)のみを配合することが好ましいが、配合作業性を向上させる等の観点から、各種溶媒に化合物(B)を分散または溶解させたものを用いてもよい。上記溶媒としては、2−エチルヘキサノール、ブチルセルソルブ、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロパノールなどが挙げられる。
【0110】
上記化合物(B)の配合量(本発明の粘着剤組成物中の含有量)は、特に限定されないが、アクリルエマルション系重合体(A)100重量部に対して、0.01重量部〜2.5重量部が好ましく、より好ましくは0.02重量部〜1.5重量部、さらに好ましくは0.05重量部〜1.0重量部、最も好ましくは0.1重量部〜0.5重量部である。上記配合量が0.01重量部以上であると、十分な消泡性を得ることができ、好ましい。また、上記配合量が2.5重量部以下であると、汚染を抑制しやすくなり、好ましい。
【0111】
[非水溶性架橋剤(C)]
本発明の粘着剤組成物に使用する架橋剤は、特に限定されないが、低汚染で粘着力の上昇を妨げることが可能である観点から、非水溶性架橋剤が好ましい。さらに、分子中(1分子中)にカルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する非水溶性架橋剤(C)が好ましい。本明細書においては、上記の「分子中にカルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上有する非水溶性架橋剤(C)」を単に「非水溶性架橋剤(C)」と称する場合がある。すなわち、本発明の粘着剤組成物は、非水溶性架橋剤(C)をさらに含むことが好ましい。
【0112】
上記の非水溶性架橋剤(C)は、非水溶性の化合物であり、分子中(1分子中)にカルボキシル基と反応し得る官能基を2個以上(例えば、2個〜6個)有する化合物である。1分子中のカルボキシル基と反応し得る官能基の個数は、特に限定されないが、3個〜5個が好ましい。1分子中のカルボキシル基と反応し得る官能基の個数が多くなるほど、粘着剤組成物が密に架橋する(すなわち、アクリル系粘着剤層を形成するポリマーの架橋構造が密になる)。このため、アクリル系粘着剤層形成後の該粘着剤層のぬれ広がりを防ぐことが可能となる。また、アクリル系粘着剤層を形成するポリマーが拘束されるため、アクリル系粘着剤層中の官能基(カルボキシル基)が被着体面に偏析して、アクリル系粘着剤層と被着体との粘着力が経時で上昇することを防ぐことが可能となる。一方、1分子中のカルボキシル基と反応し得る官能基の個数が6個を超えて多すぎる場合には、ゲル化物が生じる場合がある。
【0113】
上記非水溶性架橋剤(C)におけるカルボキシル基と反応し得る官能基としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、カルボジイミド基などが挙げられる。中でも、反応性の観点からエポキシ基が好ましい。さらに、反応性が高いため、架橋反応における未反応物が残りにくく低汚染性に有利であり、アクリル系粘着剤層中の未反応のカルボキシル基により被着体との粘着力が経時で上昇することを防止できるという観点から、グリシジルアミノ基が好ましい。すなわち、非水溶性架橋剤(C)としては、エポキシ基を有するエポキシ系架橋剤が好ましく、中でも、グリシジルアミノ基を有する架橋剤(グリシジルアミノ系架橋剤)が好ましい。なお、非水溶性架橋剤(C)がエポキシ系架橋剤(特にグリシジルアミノ系架橋剤)である場合には、1分子中のエポキシ基(特にグリシジルアミノ基)の個数は2個以上(例えば、2〜6個)であることが好ましく、より好ましくは3〜5個である。
【0114】
上記非水溶性架橋剤(C)は、非水溶性の化合物である。なお、「非水溶性」とは、25℃における水100重量部に対する溶解度(水100重量部に溶解し得る化合物(架橋剤)の重量)が5重量部以下であることをいい、好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは2重量部以下である。非水溶性の架橋剤を使用することにより、架橋せずに残存した架橋剤が、高湿度環境下(加湿下)で被着体上に生じる白化汚染の原因となりにくく、低汚染性が向上する。水溶性の架橋剤の場合には、高湿度環境下(加湿下)では、残存した架橋剤が水分に溶けて被着体に転写しやすくなるため、白化汚染を引き起こしやすい。また、非水溶性架橋剤は、水溶性架橋剤と比較して、架橋反応(カルボキシル基との反応)への寄与が高く、粘着力の経時上昇防止効果が高い。さらに、非水溶性架橋剤は架橋反応の反応性が高いため、エージングで速やかに架橋反応が進行し、粘着剤層中の未反応のカルボキシル基により被着体との粘着力が経時で上昇することを防止できる。
【0115】
なお、上記の架橋剤の水に対する溶解度は、例えば、以下のようにして測定し得る。
(水に対する溶解度の測定方法)
同重量の水(25℃)と架橋剤を、攪拌機を用いて回転数300rpm、10分の条件で混合し、遠心分離により水相と油相に分ける。次いで、水相を採取し120℃で1時間乾燥して、乾燥減量から水相中の不揮発分(水100重量部に対する不揮発成分の重量部)を求める。
【0116】
具体的には、非水溶性架橋剤(C)としては、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(例えば、三菱ガス化学株式会社製、商品名「TETRAD−C」等)[25℃における水100重量部に対する溶解度2重量部以下]、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン(例えば、三菱ガス化学株式会社製、商品名「TETRAD−X」等)[25℃における水100重量部に対する溶解度2重量部以下]等のグリシジルアミノ系架橋剤;Tris(2,3−epoxypropyl)isocyanurate(例えば、日産化学工業株式会社製、商品名「TEPIC−G」等)[25℃における水100重量部に対する溶解度2重量部以下]等のその他のエポキシ系架橋剤などが例示される。なお、上記非水溶性架橋剤(C)は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0117】
本発明の粘着剤組成物の作製時に上記非水溶性架橋剤(C)を配合する際には、非水溶性架橋剤(C)は、液状の非水溶性架橋剤(C)をそのまま添加(配合)してもよいし、有機溶剤で溶解及び/又は希釈して添加してもよい(但し、有機溶剤の使用量はなるべく少ない方が好ましい)。なお、非水溶性架橋剤(C)を乳化剤により乳化して添加する方法は、乳化剤がブリードして、汚染(特に白化汚染)を引き起こしやすく好ましくない。
【0118】
上記非水溶性架橋剤(C)の配合量(本発明の粘着剤組成物中の含有量)は、アクリルエマルション系重合体(A)の原料モノマーとして用いられるカルボキシル基含有不飽和単量体のカルボキシル基1モルに対する、非水溶性架橋剤(C)のカルボキシル基と反応し得る官能基のモル数が0.3〜1.3モルとなる配合量とすることが好ましい。すなわち、「アクリルエマルション系重合体(A)の原料モノマーとして用いられる全てのカルボキシル基含有不飽和単量体のカルボキシル基の総モル数」に対する、「全ての非水溶性架橋剤(C)のカルボキシル基と反応し得る官能基の総モル数」の割合[カルボキシル基と反応し得る官能基/カルボキシル基](モル比)が0.3〜1.3であることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.1、さらに好ましくは0.5〜1.0である。[カルボキシル基と反応し得る官能基/カルボキシル基]が0.3以上であると、アクリル系粘着剤層中に未反応のカルボキシル基が多く存在することを抑制でき、カルボキシル基と被着体との相互作用による経時の粘着力上昇を生じにくくすることができ、好ましい。また、[カルボキシル基と反応し得る官能基/カルボキシル基]が1.3以下であると、アクリル系粘着剤層中に未反応の非水溶性架橋剤(C)が多く存在することを抑制して、良好な外観特性が得やすくなり、好ましい。
【0119】
特に、非水溶性架橋剤(C)がエポキシ系架橋剤である場合には、[エポキシ基/カルボキシル基](モル比)が0.3〜1.3であることが好ましく、より好ましく0.4〜1.1、さらに好ましくは0.5〜1.0である。さらに、非水溶性架橋剤(C)がグリシジルアミノ系架橋剤である場合には、[グリシジルアミノ基/カルボキシル基](モル比)が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0120】
なお、例えば、粘着剤組成物中に、カルボキシル基と反応し得る官能基の官能基当量が110(g/eq)の非水溶性架橋剤(C)を4g添加(配合)する場合、非水溶性架橋剤(C)の有するカルボキシル基と反応し得る官能基のモル数は、例えば、以下のように算出できる。
非水溶性架橋剤(C)の有するカルボキシル基と反応し得る官能基のモル数 = [非水溶性架橋剤(C)の配合量(添加量)]/[官能基当量] = 4/110
例えば、非水溶性架橋剤(C)として、エポキシ当量が110(g/eq)のエポキシ系架橋剤を4g添加(配合)する場合、エポキシ系架橋剤の有するエポキシ基のモル数は、例えば、以下のように算出できる。
エポキシ系架橋剤の有するエポキシ基のモル数 = [エポキシ系架橋剤の配合量(添加量)]/[エポキシ当量] = 4/110
【0121】
本発明の粘着剤組成物は、水分散型の粘着剤組成物である。なお、「水分散型」とは、水性媒体に分散可能なことをいい、すなわち、本発明の粘着剤組成物は水性媒体に分散可能な粘着剤組成物である。上記水性媒体は、水を必須成分とする媒体(分散媒)であり、水単独のほかに、水と水溶性有機溶剤との混合物であっても良い。なお、本発明の粘着剤組成物は上記水性媒体等を用いた分散液であってもよい。
【0122】
本発明の粘着剤組成物は、上記非水溶性架橋剤(C)以外のその他の架橋剤として、多官能性ヒドラジド系架橋剤を含有していてもよい。多官能性ヒドラジド系架橋剤を用いることで、粘着剤組成物より形成されるアクリル系粘着剤層の再剥離性、接着性及び基材との投錨性を向上させることができる。多官能性ヒドラジド系架橋剤(単に「ヒドラジド系架橋剤」と称する場合がある)は、分子中(1分子中)にヒドラジド基を少なくとも2個有する化合物である。1分子中のヒドラジド基の個数は、2または3個が好ましく、より好ましくは2個である。このようなヒドラジド系架橋剤として用いられる化合物としては、特に限定されないが、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジヒドラジド、ナフタル酸ジヒドラジド、アセトンジカルボン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、トリメリット酸ジヒドラジド、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸ジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジド、アコニット酸ジヒドラジドなどのジヒドラジド化合物が好ましく挙げられる。中でも、特に好ましくは、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジドである。なお、多官能性ヒドラジド系架橋剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0123】
上記ヒドラジド系架橋剤は、市販品を用いてもよく、例えば、東京化成工業株式会社製「アジピン酸ジヒドラジド(試薬)」、和光純薬工業株式会社製「アジポイルジヒドラジド(試薬)」等が挙げられる。
【0124】
上記ヒドラジド系架橋剤の配合量(本発明の粘着剤組成物中の含有量)は、特に限定されないが、アクリルエマルション系重合体(A)の原料モノマーとして用いられるケト基含有不飽和単量体のケト基1モルに対して、0.025モル〜2.5モルが好ましく、より好ましくは0.1モル〜2モル、さらに好ましくは0.2モル〜1.5モルである。上記配合量が0.025モル以上であると、架橋剤添加の効果を十分に得ることができ、アクリル系粘着剤層又は粘着シートの重剥離化を抑制するとともに、アクリル系粘着剤層を形成するポリマーへの低分子量成分の残存を抑制して、被着体の白化汚染が抑制でき、好ましい。また、上記配合量が2.5モル以下であると、未反応架橋剤成分による汚染を抑制でき、好ましい。
【0125】
本発明の粘着剤組成物には、低汚染性の観点から、第4級アンモニウム塩を添加しないことが好ましく、さらに第4級アンモニウム化合物を添加しないことが好ましい。従って、本発明の粘着剤組成物は、第4級アンモニウム塩を実質的に含まないことが好ましく、さらに第4級アンモニウム化合物を実質的に含まないことが好ましい。これらの化合物は、エポキシ系架橋剤の反応性を向上させるための触媒等として一般的に使用される。しかし、これらの化合物は、粘着剤層を形成する重合体中に組み込まれず粘着剤層中を自由に移動できるため、被着体表面に析出しやすく、粘着剤組成物中にこれらの化合物が含まれる場合には、白化汚染が引き起こされやすく、低汚染性が達成できない場合がある。具体的には、本発明の粘着剤組成物中の第4級アンモニウム塩の含有量は、粘着剤組成物(不揮発分)100重量%に対して、0.1重量%未満が好ましく、より好ましくは0.01重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満である。さらに、第4級アンモニウム化合物の含有量が上記範囲を満たすことが好ましい。
【0126】
なお、第4級アンモニウム塩は、特に限定されないが、具体的には、例えば、下記式で表される化合物である。
【0128】
上記式において、R
3、R
4、R
5、R
6は、水素原子を除き、アルキル基、アリール基又はそれらから誘導された基(例えば、置換基を有するアルキル基やアリール基等)を表す。また、X
-は対イオンを表す。
【0129】
上記の第4級アンモニウム塩や第4級アンモニウム化合物は、特に限定されないが、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化アルキルアンモニウムやその塩類、水酸化テトラフェニルアンモニウム等の水酸化アリールアンモニウムやその塩類、トリラウリルメチルアンモニウムイオン、ジデシルジメチルアンモニウムイオン、ジココイルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオン、ジオレイルジメチルアンモニウムイオン、セチルトリメチルアンモニウムイオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン、ベヘニルトリメチルアンモニウムイオン、ココイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオン、ポリオキシエチレン(15)ココステアリルメチルアンモニウムイオン、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオン、ココベンジルジメチルアンモニウムイオン、ラウリルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオン、デシルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムイオンを陽イオンとする塩基やその塩類などが挙げられる。
【0130】
さらに、本発明の粘着剤組成物には、低汚染性の観点から、上記の第4級アンモニウム塩(又は第4級アンモニウム化合物)と同様に、エポキシ系架橋剤の反応性を向上させるための触媒等として一般的に使用される第3級アミン及びイミダゾール化合物を添加しないことが好ましい。従って、本発明の粘着剤組成物は第3級アミン及びイミダゾール化合物を実質的に含まないことが好ましい。具体的には、本発明の粘着剤組成物中の、第3級アミン及びイミダゾール化合物の含有量(第3級アミン及びイミダゾール化合物の合計の含有量)は、特に限定されないが、粘着剤組成物(不揮発分)100重量%に対して、0.1重量%未満が好ましく、より好ましくは0.01重量%未満、さらに好ましくは0.005重量%未満である。
【0131】
上記の第3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン及びα−メチルベンジル−ジメチルアミンなどの第三級アミン系化合物が挙げられる。上記のイミダゾール化合物としては、例えば、2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、4−エチルイミダゾール、4−ドデシルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−エチル−4−ヒドロキシメチルイミダゾール、1−シアノエチル−4−メチルイミダゾール及び2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾールなどが挙げられる。
【0132】
なお、本発明の粘着剤組成物は、汚染性に影響を与えない範囲で、上記以外の各種添加剤を含有してもよい。各種添加剤としては、例えば、顔料、充填剤、レベリング剤、分散剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、老化防止剤、防腐剤などが挙げられる。
【0133】
上記レベリング剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレンジオール系化合物(分子内にアセチレン結合を有するジオール化合物)、フルオロカーボン変性ポリアクリレート等が挙げられる。レベリング剤の配合量(本発明の粘着剤組成物中の含有量)は、特に限定されないが、アクリルエマルション系重合体(A)100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜5重量部である。なお、上記レベリング剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0134】
本発明の粘着剤組成物は、上記アクリルエマルション系重合体(A)及び上記化合物(B)を混合することにより作製できる。必要に応じて、他にも、上記非水溶性架橋剤(C)やその他の架橋剤、各種添加剤を混合してもよい。なお、上記混合方法は、公知慣用のエマルションの混合方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、攪拌機を用いた攪拌が好ましい。攪拌条件は、特に限定されないが、例えば、温度は10℃〜50℃が好ましく、より好ましくは20℃〜35℃である。攪拌時間は5分〜30分が好ましく、より好ましくは10分〜20分である。攪拌回転数は、10rpm〜2000rpmが好ましく、より好ましくは30rpm〜1000rpmである。
【0135】
上記混合において、化合物(B)を加えるタイミングは特に限定されず、アクリルエマルション系重合体(A)の重合中に化合物(B)を加えてもよいし、重合後のアクリルエマルション系重合体(A)と化合物(B)を混合してもよい。非水溶性架橋剤(C)を加えるタイミングも特に限定されないが、ポットライフの観点から、粘着剤組成物の塗布直前が好ましい。
【0136】
<アクリル系粘着剤層の形成方法>
本発明の表面保護フィルムにおけるアクリル系粘着剤層は、例えば、上記の本発明の粘着剤組成物を基材フィルムの第二面に直接付与して乾燥または硬化させる方法(直接法)により形成することができる。また、上記の本発明の粘着剤組成物を剥離ライナーの表面(剥離面)に付与して乾燥または硬化させることで該表面上にアクリル系粘着剤層を形成し、このアクリル系粘着剤層を基材フィルムに貼り合わせて該アクリル系粘着剤層を転写する方法(転写法)により形成することができる。アクリル系粘着剤層の投錨性の観点から、通常は上記直接法が好ましい。本発明の粘着剤組成物の塗布する際には、ロールコート法、グラビアコート法、リバースコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、ダイコーターによるコート法等の、表面保護フィルムの分野において従来公知の各種方法が用いられてもよい。本発明の粘着剤組成物の乾燥は、必要に応じて加熱下で行うことができる。例えば、60℃〜150℃に加熱することにより行うことができる。他にも、本発明の粘着剤組成物を硬化させる手段としては、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、X線、電子線等の活性エネルギー線を照射することが挙げられる。
【0137】
本発明の表面保護フィルムにおけるアクリル系粘着剤層の厚みは、特に限定されないが、1μm〜50μmが好ましく、より好ましくは1μm〜35μm、さらに好ましくは3μm〜25μmである。
【0138】
本発明の表面保護フィルムにおけるアクリル系粘着剤層の溶剤不溶分は、特に限定されないが、90重量%以上が好ましく、より好ましくは95重量%以上である。上記溶剤不溶分が90重量%以上であると、被着体への汚染物の転写を抑制して、白化汚染の発生を抑制でき、また、重剥離化を抑制して、良好な再剥離性が得やすくなり、好ましい。上記アクリル系粘着剤層の溶剤不溶分の上限値は、特に限定されないが、例えば、99重量%が好ましい。
なお、上記アクリル系粘着剤層(架橋後)の溶剤不溶分は、上述のアクリルエマルション系重合体の溶剤不溶分の測定方法と同様の方法で測定することができる。具体的には、上述の「溶剤不溶分の測定方法」において、「アクリルエマルション系重合体」を「アクリル系粘着剤層(架橋後)」に読み替えた方法で測定することができる。
【0139】
また、本発明の表面保護フィルムにおけるアクリル系粘着剤層のベースポリマーであるアクリルポリマーのガラス転移温度は、特に限定されないが、−70℃〜−10℃が好ましく、より好ましくは−70℃〜−20℃、さらに好ましくは−70℃〜−40℃、最も好ましくは−70℃〜−60℃である。上記ガラス転移温度が−10℃以下であると、良好な粘着力を得て、加工時などにおける浮きや剥がれを抑制しやすくなり、好ましい。また、−70℃以上であると、高速の剥離速度(引張速度)領域であっても、重剥離化を抑制でき、良好な作業効率が得やすくなり、好ましい。このアクリル系粘着剤層を形成するアクリルポリマーのガラス転移温度は、例えば、アクリルエマルション系重合体(A)を調製する際のモノマー組成によっても調整できる。
【0140】
本発明の表面保護フィルムは、必要に応じて、粘着面(粘着剤層のうち被着体に貼り付けられる側の面)を保護する目的で、該粘着面に剥離ライナーを貼り合わせた形態(剥離ライナー付き表面保護フィルムの形態)であってもよい。剥離ライナーを構成する基材としては、特に限定されないが、例えば、紙、合成樹脂フィルム等が挙げられる。中でも、表面平滑性に優れる点より、合成樹脂フィルムが好ましい。例えば、剥離ライナーの基材としては、特に限定さないが、各種の樹脂フィルム(特にポリエステルフィルム)が好ましく挙げられる。剥離ライナーの厚みは、特に限定されないが、5μm〜200μmであることが好ましく、より好ましくは10μm〜100μmである。剥離ライナーのうち粘着剤層に貼り合わされる面には、従来公知の離型剤(例えば、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系、脂肪酸アミド系等)あるいはシリカ粉等を用いて、離型または防汚処理が施されていてもよい。
【0141】
<表面保護フィルムの性能>
本発明の表面保護フィルムは、23℃、50%RHの測定環境下において測定される剥離帯電圧が、被着体(偏光板)側、表面保護フィルム側ともに±1kV以内(より好ましくは±0.8kV以内、さらに好ましくは±0.7kV以内)となる帯電防止性能を示すことが好ましい。特に、23℃、25%RHの測定環境(低湿度環境)下において測定される剥離帯電圧が、被着体側、表面保護フィルム側ともに±1kV以内(より好ましくは±0.8kV以内、さらに好ましくは±0.7kV以内)となる帯電防止性能を示す事が好ましい。少なくとも表面保護フィルム側の剥離帯電圧が、50%RHの測定条件、25%RHの測定条件のいずれの場合にも±0.1kV以内である表面保護フィルムが好ましい。
【0142】
本発明の表面保護フィルムは、基材、トップコート層およびアクリル系粘着剤層に加えて、さらに他の層を含んでいてもよい。かかる「他の層」の配置としては、基材の第一面(背面)とトップコート層との間、基材の第二面(前面)とアクリル系粘着剤層との間等が挙げられる。基材背面とトップコート層との間に配置される層は、例えば、帯電防止成分を含む層(帯電防止層)であってもよい。基材前面とアクリル系粘着剤層との間に配置される層は、例えば、上記第二面に対するアクリル系粘着剤層の投錨性を高める下塗り層(アンカー層)、帯電防止層等であってもよい。基材前面に帯電防止層が配置され、該帯電防止層の上にアンカー層が配置され、その上にアクリル系粘着剤層が配置された構成の表面保護フィルムであってもよい。
【0143】
本発明の表面保護フィルムでは、例えば
図1に示すように、基材12の背面12Aにトップコート層14が直接設けられていることが好ましい。すなわち、基材背面12Aとトップコート層14との間に他の層(例えば帯電防止層)が介在しないことが好ましい。かかる構成によると、基材背面12Aとトップコート層14との間に他の層を介在した構成に比べて、基材背面12Aとトップコート層14との密着性を高めることができる。したがって、より耐スクラッチ性に優れた表面保護フィルムが得やすくなる。
【0144】
また、本発明の表面保護フィルムは、例えば
図3に示すように、被着体50に貼り付けられた表面保護フィルム1の背面(トップコート層14の表面)1Aに粘着テープ60を貼り付け、その粘着テープ(ピックアップテープ)60を引っ張って被着体50から表面保護フィルム1の少なくとも一部を持ち上げる操作(ピックアップ操作)により、被着体表面から剥離されてもよい。ピックアップテープ60としては、特に限定されないが、基材(好ましくは樹脂フィルム)64と、その片面に設けられた粘着剤層62とを備える片面粘着テープが好ましい。粘着剤層62を構成する粘着剤の種類は、特に限定されないが、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ポリエーテル系、ゴム系、シリコーン系、ポリアミド系、フッ素系などの各種粘着剤が挙げられる。なお、このような各種粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。粘着剤層62の厚みは、特に限定されないが、3μm〜100μmが好ましく、より好ましくは5μm〜50μm、さらに好ましくは10μm〜30μmである。
【0145】
ここで、表面保護フィルム1の背面1Aに対するピックアップテープ60の粘着力(以下、「背面剥離強度」と称する場合がある。)が、その粘着剤層62を構成する粘着剤の種類によって大きく異なると、使用するピックアップテープ60の選択自由度が低くなることがある。また、かかる背面剥離強度の相違は、ピックアップテープ60を用いて表面保護フィルム1を被着体50から除去する作業者を戸惑わせ、作業効率の低下や作業負荷の増大を招くおそれがある。一方、一般的なピックアップテープは、入手容易性やコストの観点から、アクリル系粘着剤からなる粘着剤層(アクリル系粘着剤層)を備えるアクリル系ピックアップテープ、ゴム系粘着剤からなる粘着剤層(ゴム系粘着剤層)を備えるゴム系ピックアップテープが多い。したがって、これら代表的な2種類のピックアップテープが比較的近い背面剥離強度を示す表面保護フィルムが好ましい。
本発明の表面保護フィルムに係るトップコート層は、滑り剤としてワックスエステルを含有する。かかる組成のトップコート層は、例えば上記ワックスエステルの代わりにシリコーン系滑剤を含む組成のトップコート層に比べて、ピックアップテープの粘着剤層の種類による背面剥離強度の違いが小さい(すなわち、背面剥離強度のピックアップテープ粘着剤依存性が小さい)傾向にあるので好ましい。
【0146】
上記ピックアップテープの基材は、上記ピックアップ操作を行い得る強度および柔軟性を有するものであればよく、特に限定されない。例えば、表面保護フィルムの基材と同様の樹脂フィルムが好ましく挙げられる。他にも、天然ゴム、ブチルゴム等からなるゴムシート;ポリウレタン、ポリクロロプレンゴム、ポリエチレン等を発泡させてなる発泡体シート;クラフト紙、クレープ紙、和紙等の紙;綿布、スフ布等の布;セルロース系不織布、ポリエステル不織布、ビニロン不織布等の不織布;アルミニウム箔、銅箔等の金属箔;これらの複合体等が挙げられる。上記ピックアップシートの基材の厚みは、目的に応じて適宜選択できるが、10μm〜500μmが好ましく、より好ましくは10μm〜200μmである。
【0147】
本発明の表面保護フィルムにおいて、引張速度30m/分における偏光板(トリアセチルセルロース(TAC)板)に対する粘着力(180°剥離試験)(偏光板に貼付した表面保護フィルムを剥離する際の剥離力)は、特に限定されないが、0.05N/25mm〜2.0N/25mmであることが好ましく、より好ましくは0.1N/25mm〜2.0N/25mm、さらに好ましくは0.2N/25mm〜1.5N/25mm、さらにより好ましくは0.3N/25mm〜1.1N/25mm、最も好ましくは0.3N/25mm〜0.6N/25mmである。上記粘着力が2.0N/25mm以下であると、偏光板や液晶表示装置の製造工程で表面保護フィルムが剥離しにくくなって、生産性、取り扱い性が低下するという問題の発生を抑制でき、好ましい。また、0.05N/25mm以上であると、製造工程で表面保護フィルムの浮きや剥がれが生じにくくなり、表面保護フィルムとして良好な保護機能が得やすくなり、好ましい。
【0148】
本発明の表面保護フィルムの可視光波長領域における全光線透過率(JIS K7361−1に準ずる)は、特に限定されないが、80%〜97%が好ましく、より好ましくは85%〜95%である。また、本発明の本発明の表面保護フィルムのヘイズ(JIS K7136に準ずる)は、特に限定されないが、0.5%〜3.5%が好ましく、より好ましくは2.0%〜3.2%である。
【0149】
このように、本発明の表面保護フィルムは、滑り剤として特定のワックス(すなわち、高級脂肪酸と高級アルコールとのエステル)を含有し、そのバインダとしてポリエステル樹脂を含有するトップコート層を有するので、高温多湿条件下においてもトップコート層の白化を効果的に抑制することができる。また、トップコート層は滑り剤を含有するので、耐スクラッチ性が良く、しかも耐白化性に優れる。このため、本発明の表面保護フィルムは、より外観品位の高いものとなる。
【0150】
また、本発明は、本発明の粘着剤組成物により形成されたアクリル系粘着剤層を有するので、接着性、経時による粘着力上昇防止性に優れ、再剥離性に優れる。また、凹みや気泡欠点などの粘着剤層の外観不良が低減されており、且つ、白っぽく見えにくい。このため、外観特性にも優れる。
【0151】
本発明の表面保護フィルムは、該フィルム越しに製品の外観検査を精度よく行うことができるので、特に、光学部品(例えば、偏光板、波長板等の液晶ディスプレイパネル構成要素として用いられる光学部品、ITOフィルム、ITOガラス等のタッチパネル構成要素として用いられる導電性光学部品)に貼り付けられて該光学部品の加工時や搬送時にその表面を保護する表面保護フィルム(光学部品用表面保護フィルム)として好ましく用いられる。
【0152】
本発明の表面保護フィルムは、接着性と再剥離性(易剥離性)に優れ、再剥離が可能であるため再剥離される用途(再剥離用)に好ましく用いられる。すなわち、本発明の表面保護フィルムは、再剥離される用途[例えば、建築養生用マスキングテープ、自動車塗装用マスキングテープ、電子部品(リードフレーム、プリント基板等)用マスキングテープ、サンドブラスト用マスキングテープなどのマスキングテープ類、アルミサッシ用表面保護フィルム、光学プラスチック用表面保護フィルム、光学ガラス用表面保護フィルム、自動車保護用表面保護フィルム、金属板用表面保護フィルムなどの表面保護フィルム類、バックグラインドテープ、ペリクル固定用テープ、ダイシング用テープ、リードフレーム固定用テープ、クリーニングテープ、除塵用テープ、キャリアテープ、カバーテープなどの半導体・電子部品製造工程用粘着テープ類、電子機器や電子部品の梱包用テープ類、輸送時の仮止めテープ類、結束用テープ類、ラベル類]等に好ましく用いられる。
【0153】
さらに、本発明の表面保護フィルムは、凹みや気泡欠点などの粘着剤層の外観不良が低減されており、かつトップコート層を有するにもかかわらず白っぽく見えにくいため、優れた外観特性を有する。また、本発明の表面保護フィルムは、上記トップコート層を有することによって、優れた耐スクラッチ性を発揮できる。このため、本発明の粘着シートは、特に優れた外観特性、耐スクラッチ性などが要求される、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)、フィールドエミッションディスプレイ、タッチパネルディスプレイなどのパネルを構成する偏光板、位相差板、反射防止板、波長板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導電性フィルムなど光学部材(光学プラスチック、光学ガラス、光学フィルム等)の表面保護用途(光学部材用の表面保護フィルム等)として好ましく用いられる。ただし、用途はこれに限定されるものではなく、半導体、回路、各種プリント基板、各種マスク、リードフレームなどの微細加工部品の製造の際の表面保護や破損防止、あるいは異物等の除去、マスキング等にも使用することができる。
【0154】
<光学部材>
本発明の光学部材は、上記表面保護フィルムが貼り合わされてなる光学部材である。つまり、本発明の光学部材は、光学部材上に上記表面保護フィルムが設けられている構造を有することが好ましい。なお、光学部材としては、上述の光学部材が好ましく挙げられる。
【0155】
本発明の光学部材は、その表面が上記表面保護フィルムにより保護されている構造を有するので、意図せず衝撃を受けた場合であっても、光学部材の破損等を防止できる。また、本発明の光学部材は、上記表面保護フィルム越しであっても、外観検査を精度よく行うことができる。さらに、本発明の光学部材では、上記表面保護フィルムは再剥離性に優れるので、表面保護フィルムを剥がしたときに、光学部材の破損等を生じることはない。
【実施例】
【0156】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。また、以下の説明中の各特性は、それぞれ次のようにして測定または評価した。
【0157】
[トップコート層の厚み測定]
表面保護フィルムにつき、重金属染色処理を行った後に樹脂包埋を行い、超薄切片法により、透過型電子顕微鏡(装置名「H−7650」、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて、加速電圧:100kV、倍率:60,000倍の条件で断面画像を得た。この断面画像の二値化処理を行った後、視野内のサンプル長さでトップコートの断面積を除算することにより、トップコート層の厚み(視野内の平均厚み)を実測した。
【0158】
[耐白化性評価]
表面保護フィルムの背面(トップコート層の表面)を、手袋をはめた試験者が厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで1回強く擦り、その擦られた部分(擦過部)が周囲(非擦過部)と比べて透明に抜けるか否かを目視にて観察した。その結果、非擦過部と擦過部との透明性の違いが目視で確認できた場合には、白化が認められたと判定した。白化が顕著になると、透明な擦過部とその周囲(白化した非擦過部)とのコントラストが、よりはっきりする現象がみられる。
上記目視観察は、以下のとおり、暗室(反射法、透過法)および明室において行った。
(a)暗室での反射法による観察:外光を遮った室内(暗室)にて、各例に係る表面保護フィルムの背面(トップコート層の表面)から100cmの位置に100Wの蛍光灯(三菱電機株式会社製、商品名「ルピカライン」)を配置し、視点を変えながらサンプルの背面を目視観察した。
(b)暗室での透過法による観察:上記暗室にて、表面保護フィルムの前面(トップコートが設けられた側とは反対側の表面)から10cmの位置に上記蛍光灯を配置し、視点を変えながらサンプルの背面を目視観察した。
(c)明室での観察:外光の入る窓を有する室内(明室)にて、晴天の日中に、直射日光の当たらない窓際にてサンプルの背面を目視観察した。
これら3種類の条件下における観察結果を、以下の5段階で表記した。
0:いずれの観察条件においても白化(擦過部と非擦過部とのが透明に)は認められ
なかった。
1:暗室での反射法による観察において僅かな白化が認められた。
2:暗室での透過法による観察において僅かな白化が認められた。
3:明室での観察において僅かな白化が認められた。
4:明室での観察において明らかな白化が認められた。
上記の耐白化性評価を、初期(作製後、50℃、15%RHの条件下に3日間保持したもの)および加温加湿後(作製後、50℃、15%RHの条件下に3日間保持し、さらに60℃、95%RHという高温多湿条件下に2週間保持したもの)の表面保護フィルムについて行った。
【0159】
[外観特性評価]
表面保護フィルム作製前に、表面保護フィルムに用いるトップコート付き基材について、外光の入る窓を有する室内(明室)にて、晴天の日中に、直射日光の当たらない窓際にて、背面(トップコート層側の表面)を目視観察した。そして、ムラやスジが確認されなかったものをトップコート付き基材の外観特性が良好と評価し、ムラやスジが確認されたものをトップコート付き基材の外観特性が不良と評価した。
次に、表面保護フィルム作製後、表面保護フィルムの粘着剤層表面の状態を目視で観察し、縦10cm、横10cmの観察範囲内の欠点(凹み及び気泡)の個数を測定した。そして、外見欠点の個数が0〜100個である場合、粘着剤層の外観特性が良好と評価し、外観欠点の個数が101個以上である場合、粘着剤層の外観特性が不良と評価した。
そして、トップコート付き基材の外観特性及び粘着剤層の外観特性の両方が良好と評価できる場合、表面保護フィルムの外観特性を良好と評価した。一方、トップコート付き基材の外観特性及び粘着剤層の外観特性の両方が不良と評価できる場合、トップコート付き基材の外観特性が良好と評価でき、粘着剤層の外観特性が不良と評価できる場合、及び、トップコート付き基材の外観特性が不良と評価でき、粘着剤層の外観特性が良好と評価できる場合、表面保護フィルムの外観特性を不良と評価した。
【0160】
[耐溶剤性評価]
上記暗室において、表面保護フィルムの背面(すなわち、トップコート層の表面)をエチルアルコールを染み込ませたウェス(布)で5回拭き、その背面の外観を目視観察した。その結果、エチルアルコールで拭いた部分と他の部分との間に外観上の相違が確認されなかった場合(エチルアルコールで拭いたことによる外観変化がみられなかった場合)には耐溶剤性「良好」、拭きムラが確認された場合には耐溶剤性「不良」と評価した。
【0161】
[背面剥離強度測定]
図4に示すように、表面保護フィルム1を幅70mm、長さ100mmのサイズにカットし、この表面保護フィルム1の粘着面(粘着剤層が設けられた側)20Aを、両面粘着テープ130を用いてSUS304ステンレス板132上に固定した。
セロハンフィルム(基材)上に天然ゴム系粘着剤を有する片面粘着テープ(ニチバン社製、商品名「セロテープ(登録商標)」、幅24mm)を100mmの長さにカットした。この粘着テープ160の粘着面162Aを、表面保護フィルム1の背面(すなわち、トップコート層14の表面)1Aに、0.25MPaの圧力、0.3m/分の速度で圧着した。これを23℃、50%RHの条件下に30分間放置した。その後、万能引張試験機を用いて、表面保護フィルム1の背面1Aから粘着テープ160を、剥離速度0.3m/分、剥離角度180°の条件で剥離し、このときの剥離強度[N/24mm]を測定した。
なお、両面粘着テープ130は、上記背面剥離強度をより的確に測定するために、表面保護フィルム1の背面Aから粘着テープ160を剥離する際に該表面保護フィルム1が粘着テープ160に引っ張られてステンレス板132から浮き上がることを防止する目的で用いられるものであって、かかる目的に合うものを適宜選択して使用することができる。ここでは、両面粘着テープ(商品名「No.500A」、日東電工株式会社製)を使用した。
【0162】
[表面保護フィルムの剥離強度測定]
被着体として、幅70mm、長さ100mmのプレーン偏光板(日東電工社製のTAC偏光板、SEG1425DU)を用意した。表面保護フィルムを幅25mm、長さ100mmのサイズにカットし、その粘着面を上記偏光板に、0.25MPaの圧力、0.3m/分の速度で圧着した。これを23℃、50%RHの環境下に30分間放置した後、同環境下で万能引張試験機を用いて剥離速度30m/分、剥離角度180°の条件で上記偏光板から表面保護フィルムを剥離し、このときの剥離強度(対偏光板剥離強度)[N/25mm]を測定した。
上記の表面保護フィルムの剥離強度測定は、初期のもの(作製直後のもの)、及び、40℃雰囲気下で1週間保管したもの(40℃×1週間保管後のもの)について行った。
【0163】
[粘着力上昇防止性の評価]
上記表面保護フィルムの剥離強度測定における「初期の表面保護フィルムの剥離強度(初期剥離強度)」と「40℃×1週間保管後の表面保護フィルムの剥離強度(40℃×1週間の剥離強度)」との差を求め、下記基準で評価した。
良好(○):差が0.2N/25mm以下である場合
不良(×):差が0.2N/25mmを超える場合
【0164】
[ピックアップ特性評価](再剥離性評価)
上記表面保護フィルムの「背面剥離強度」と「40℃×1週間保管後の表面保護フィルムの剥離強度(40℃×1週間の剥離強度)」との比[(背面剥離強度)/(40℃×1週間の剥離強度)]を求め、下記基準で評価した。
より良好(◎):上記粘着力上昇防止性が良好と評価でき、上記の比が3.8以上である場合
良好(○):上記粘着力上昇防止性が良好と評価でき、上記の比が2.0以上である場合
不良(×):上記粘着力上昇防止性が良好と評価でき、上記の比が2.0未満である場合
【0165】
[表面抵抗率評価]
JIS K6911に準拠し、絶縁抵抗計(三菱化学アナリテック社製、商品名「Hiresta−up MCP−HT450」)を用いて、23℃、相対湿度55%の雰囲気下において、各例に係る表面保護フィルムサンプルの背面の表面抵抗Rsを測定した。印加電圧は100Vとし、表面抵抗Rsの読み取りは測定開始から60秒後に行った。その結果から、次の式にしたがって表面抵抗率を算出した。
ρs=Rs×E/V×π(D+d)/(D−d)
ここで、上記式中のρsは表面抵抗率(Ω)、Rsは表面抵抗(Ω)、Eは印加電圧(V)、Vは測定電圧(V)、Dは表面の環状電極の内径(cm)、dは表面電極の内円の外径(cm)をそれぞれ表す。
【0166】
(水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例1)(粘着剤1)
容器に、水90重量部、及び、表1に示すように、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)96重量部、アクリル酸(AA)4重量部、ノニオンアニオン系反応性乳化剤(商品名「アクアロンHS−10」、第一工業製薬株式会社製)3重量部を配合した後、ホモミキサーにより攪拌混合し、モノマーエマルションを調製した。
次いで、冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、水50重量部、重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.01重量部、及び、上記で調製したモノマーエマルションのうち10重量%にあたる量を添加し、攪拌しながら、75℃で1時間乳化重合した。その後、さらに重合開始剤(過硫酸アンモニウム)0.05重量部を添加し、次いで、攪拌しながら、残りのモノマーエマルションの全て(90重量%にあたる量)を3時間かけて添加して、その後、75℃で3時間反応させた。次いで、これを30℃に冷却して、濃度10重量%のアンモニア水を加えてpH8に調整して、アクリルエマルション系重合体の水分散液を調製した。
上記で得られたアクリルエマルション系重合体の水分散液に、アクリルエマルション系重合体(固形分)100重量部に対して、化合物(B)である「アデカプルロニック25R−1」を1.0重量部、レベリング剤として「EFKA−3570」を0.2重量部、非水溶性架橋剤であるエポキシ系架橋剤[三菱ガス化学株式会社製、商品名「テトラッド−C」、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量:110、官能基数:4]3重量部を、攪拌機を用いて、23℃、300rpm、10分の攪拌条件で攪拌混合し、水分散型アクリル系粘着剤組成物(「粘着剤1」と称する場合がある)を調製した。
【0167】
(水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例2)(粘着剤2)
表1に示すように、反応性乳化剤として、「アクアロンHS−10」の代わりに、「アデカリアソープSE−10N」3重量部を使用した以外は、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例1と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物(「粘着剤2」と称する場合がある)を調製した。
【0168】
(水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例3)(粘着剤3)
表1に示すように、アクリルエマルション系重合体のモノマー原料を、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)92重量部、メタクリル酸メチル(MMA)4重量部、アクリル酸(AA)4重量部に変更した以外は、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例1と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物(「粘着剤3」と称する場合がある)を調製した。
【0169】
(水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例4)(粘着剤4)
表1に示すように、化合物(B)として、「アデカプルロニック25R−1」の代わりに、「アデカプルロニック17R−3」0.5重量部を使用した以外は、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例2と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物(「粘着剤4」と称する場合がある)を調製した。
【0170】
(水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例5)(粘着剤5)
表1に示すように、化合物(B)として、「アデカプルロニック25R−1」の代わりに、「PPO−PEO−PPO」0.5重量部を使用し、非水溶性架橋剤(C)として、「テトラッド−C」の代わりに、「テトラッド−X」3重量部を使用した以外は、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例1と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物(「粘着剤5」と称する場合がある)を調製した。
【0171】
(水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例6)(粘着剤6)
表1に示すように、非水溶性架橋剤であるエポキシ系架橋剤[三菱ガス化学株式会社製、商品名「テトラッド−C」、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量:110、官能基数:4]2重量部使用した以外は、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例1と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物(「粘着剤6」と称する場合がある)を調製した。
【0172】
(水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例7)(粘着剤7)
表1に示すように、化合物(B)である共重合体を用いなかったこと以外は、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例1と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物(「粘着剤7」と称する場合がある)を調製した。
【0173】
(水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例8)(粘着剤8)
表1に示すように、化合物(B)である共重合体の代わりに、化合物(B)以外の化合物(「POLYRan(EO−PO)」0.5重量部)を用いたこと以外は、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例1と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物(「粘着剤8」と称する場合がある)を調製した。
【0174】
(水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例9)(粘着剤9)
表1に示すように、化合物(B)である共重合体の代わりに、化合物(B)以外の化合物(「PEO−PPO−PEO」3.0重量部)を用いたこと以外は、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例1と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物(「粘着剤9」と称する場合がある)を調製した。
【0175】
(水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例10)(粘着剤10)
表1に示すように、アクリルエマルション系重合体のモノマー原料を、アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)99.6重量部、アクリル酸(AA)0.4重量部に変更し、さらに、非水溶性架橋剤(C)として、「テトラッド−C」の配合量を0.3重量部とした以外は、上記水分散型アクリル系粘着剤組成物の製造例4と同様にして、水分散型アクリル系粘着剤組成物(「粘着剤10」と称する場合がある)を調製した。
【0176】
【表1】
【0177】
表1において、下記の表現は、下記の意味である。
なお、以下では、「化合物(B)の総重量」に対する「EOの総重量」の割合を、「EO含有率」と表記した。
[原料モノマー]
2EHA : 2−エチルヘキシルアクリレート
MMA : メチルメタクリレート
AA : アクリル酸
[乳化剤]
HS−10 : 第一工業製薬株式会社製、商品名「アクアロンHS−10」(ノニオンアニオン系反応性乳化剤)
SE−10N : 株式会社ADEKA製、商品名「アデカリアソープSE−10N」(ノニオンアニオン系反応性乳化剤)
[架橋剤]
テトラッドC : 三菱ガス化学株式会社製、商品名「TETRAD−C(テトラッド−C)」(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、エポキシ当量:110、官能基数:4)
テトラッドX : 三菱ガス化学株式会社製、商品名「TETRAD−X(テトラッド−X)」(1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)ベンゼン、エポキシ当量:100、官能基数:4)
[化合物(B)]
アデカプルロニック25R−1 : 株式会社ADEKA製、商品名「アデカプルロニック25R−1」(数平均分子量2800、EO含有率10重量%、有効成分100重量%)
アデカプルロニック17R−3 : 株式会社ADEKA製、商品名「アデカプルロニック17R−3」(数平均分子量2000、EO含有率30重量%、有効成分100重量%)
PPO−PEO−PPO : SIGMA−ALDRICH(シグマ−アルドリッチ)社製、ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)(数平均分子量2000、EO含有率50重量%、有効成分100重量%)
[化合物(B)以外の化合物]
POLYRan(EO−PO) : SIGMA−ALDRICH(シグマ−アルドリッチ)社製、ポリ(エチレングリコール−ran−プロピレングリコール)(数平均分子量2500、EO含有率75重量%、有効成分100重量%)
PEO−PPO−PEO : SIGMA−ALDRICH(シグマ−アルドリッチ)社製、ポリ(エチレングリコール)−block−ポリ(プロピレングリコール)−block−ポリ(エチレングリコール)(数平均分子量1900、EO含有率50重量%、有効成分100重量%)
【0178】
<実施例1>
(コーティング材の調製)
バインダとしてのポリエステル樹脂を25%含む分散液(バインダ分散液)(商品名「バイナロールMD−1480」東洋紡株式会社製、飽和共重合ポリエステル樹脂の水分散液)を用意した。また、滑り剤としてのカルナバワックスの水分散液(滑り剤分散液)を用意した。さらに、導電性ポリマーとしてのポリ(3,4−ジオキシチオフェン)(PEDOT)0.5%およびポリスチレンスルホネート(数平均分子量15万)(PSS)0.8%を含む水溶液(導電性ポリマー水溶液)(商品名「Baytron P」H.C.Stark社製)を用意した。
水とエタノールとの混合溶媒に、上記バインダ分散液を固形分量で100重量部と、上記滑り剤分散液を固形分量で30重量部と、上記導電性ポリマー水溶液を固形分量で50重量部と、メラミン系架橋剤とを加え、約20分間攪拌して十分に混合した。このようにして、NV約0.15%のコーティング材を調製した。
【0179】
(トップコート層の形成)
一方の面(第一面)にコロナ処理が施された厚み38μm、幅30cm、長さ40cmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。このPETフィルムのコロナ処理面に上記コーティング材をバーコーターで塗布し、130℃に2分間加熱して乾燥させた。このようにして、PETフィルムの第一面に厚み10nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)を作製した。
【0180】
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された離型シートを用意した。この離型シートの剥離面(上記剥離処理が施された面)上に上記粘着剤1(水分散型アクリル系粘着剤組成物)を塗布し、乾燥させて、厚み15μmのアクリル系粘着剤層を形成した。その粘着剤層を上記トップコート付き基材の他方の面(第二面、すなわち上記トップコート層が設けられていない面)に貼り合わせた後、50℃、15%RHの環境下で3日間養生(エージング)して、表面保護フィルムを得た。
【0181】
<実施例2>
(コーティング材の調製)
実施例1と同様にして、NV約0.3%のコーティング材を調製した。
【0182】
(トップコート層の形成)
実施例1と同様にして、PETフィルムの第一面に厚み50nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)を作製した。
【0183】
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された離型シートを用意した。この離型シートの剥離面(上記剥離処理が施された面)上に上記粘着剤2(水分散型アクリル系粘着剤組成物)を塗布し、乾燥させて、厚み15μmのアクリル系粘着剤層を形成した。その粘着剤層を上記トップコート付き基材の他方の面(第二面、すなわち上記トップコート層が設けられていない面)に貼り合わせた後、50℃、15%RHの環境下で3日間養生(エージング)して、表面保護フィルムを得た。
【0184】
<実施例3>
(コーティング材の調製)
実施例1と同様にして、NV約0.3%のコーティング材を調製した。
【0185】
(トップコート層の形成)
実施例1と同様にして、PETフィルムの第一面に厚み50nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)を作製した。
【0186】
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された離型シートを用意した。この離型シートの剥離面(上記剥離処理が施された面)上に上記粘着剤3(水分散型アクリル系粘着剤組成物)を塗布し、乾燥させて、厚み15μmのアクリル系粘着剤層を形成した。その粘着剤層を上記トップコート付き基材の他方の面(第二面、すなわち上記トップコート層が設けられていない面)に貼り合わせた後、50℃、15%RHの環境下で3日間養生(エージング)して、表面保護フィルムを得た。
【0187】
<実施例4>
(コーティング材の調製)
実施例1と同様にして、NV約0.3%のコーティング材を調製した。
【0188】
(トップコート層の形成)
実施例1と同様にして、PETフィルムの第一面に厚み50nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)を作製した。
【0189】
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された離型シートを用意した。この離型シートの剥離面(上記剥離処理が施された面)上に上記粘着剤4(水分散型アクリル系粘着剤組成物)を塗布し、乾燥させて、厚み15μmのアクリル系粘着剤層を形成した。その粘着剤層を上記トップコート付き基材の他方の面(第二面、すなわち上記トップコート層が設けられていない面)に貼り合わせた後、50℃、15%RHの環境下で3日間養生(エージング)して、表面保護フィルムを得た。
【0190】
<実施例5>
(コーティング材の調製)
実施例1と同様にして、NV約0.3%のコーティング材を調製した。
【0191】
(トップコート層の形成)
実施例1と同様にして、PETフィルムの第一面に厚み50nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)を作製した。
【0192】
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された離型シートを用意した。この離型シートの剥離面(上記剥離処理が施された面)上に上記粘着剤5(水分散型アクリル系粘着剤組成物)を塗布し、乾燥させて、厚み15μmのアクリル系粘着剤層を形成した。その粘着剤層を上記トップコート付き基材の他方の面(第二面、すなわち上記トップコート層が設けられていない面)に貼り合わせた後、50℃、15%RHの環境下で3日間養生(エージング)して、表面保護フィルムを得た。
【0193】
<実施例6>
(コーティング材の調製)
実施例1と同様にして、NV約0.3%のコーティング材を調製した。
【0194】
(トップコート層の形成)
実施例1と同様にして、PETフィルムの第一面に厚み50nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)を作製した。
【0195】
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された離型シートを用意した。この離型シートの剥離面(上記剥離処理が施された面)上に上記粘着剤6(水分散型アクリル系粘着剤組成物)を塗布し、乾燥させて、厚み15μmのアクリル系粘着剤層を形成した。その粘着剤層を上記トップコート付き基材の他方の面(第二面、すなわち上記トップコート層が設けられていない面)に貼り合わせた後、50℃、15%RHの環境下で3日間養生(エージング)して、表面保護フィルムを得た。
【0196】
<比較例1>
(コーティング材の調製)
実施例1と同様にして、NV約0.3%のコーティング材を調製した。
【0197】
(トップコート層の形成)
実施例1と同様にして、PETフィルムの第一面に厚み50nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)を作製した。
【0198】
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された離型シートを用意した。この離型シートの剥離面(上記剥離処理が施された面)上に上記粘着剤7(水分散型アクリル系粘着剤組成物)を塗布し、乾燥させて、厚み15μmのアクリル系粘着剤層を形成した。その粘着剤層を上記トップコート付き基材の他方の面(第二面、すなわち上記トップコート層が設けられていない面)に貼り合わせた後、50℃、15%RHの環境下で3日間養生(エージング)して、表面保護フィルムを得た。
【0199】
<比較例2>
(コーティング材の調製)
実施例1と同様にして、NV約0.3%のコーティング材を調製した。
【0200】
(トップコート層の形成)
実施例1と同様にして、PETフィルムの第一面に厚み50nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)を作製した。
【0201】
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された離型シートを用意した。この離型シートの剥離面(上記剥離処理が施された面)上に上記粘着剤8(水分散型アクリル系粘着剤組成物)を塗布し、乾燥させて、厚み15μmのアクリル系粘着剤層を形成した。その粘着剤層を上記トップコート付き基材の他方の面(第二面、すなわち上記トップコート層が設けられていない面)に貼り合わせた後、50℃、15%RHの環境下で3日間養生(エージング)して、表面保護フィルムを得た。
【0202】
<比較例3>
(コーティング材の調製)
実施例1と同様にして、NV約0.3%のコーティング材を調製した。
【0203】
(トップコート層の形成)
実施例1と同様にして、PETフィルムの第一面に厚み50nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)を作製した。
【0204】
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された離型シートを用意した。この離型シートの剥離面(上記剥離処理が施された面)上に上記粘着剤9(水分散型アクリル系粘着剤組成物)を塗布し、乾燥させて、厚み15μmのアクリル系粘着剤層を形成した。その粘着剤層を上記トップコート付き基材の他方の面(第二面、すなわち上記トップコート層が設けられていない面)に貼り合わせた後、50℃、15%RHの環境下で3日間養生(エージング)して、表面保護フィルムを得た。
【0205】
<比較例4>
(コーティング材の調製)
実施例1と同様にして、NV約0.3%のコーティング材を調製した。
【0206】
(トップコート層の形成)
実施例1と同様にして、PETフィルムの第一面に厚み50nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)を作製した。
【0207】
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された離型シートを用意した。この離型シートの剥離面(上記剥離処理が施された面)上に上記粘着剤10(水分散型アクリル系粘着剤組成物)を塗布し、乾燥させて、厚み15μmのアクリル系粘着剤層を形成した。その粘着剤層を上記トップコート付き基材の他方の面(第二面、すなわち上記トップコート層が設けられていない面)に貼り合わせた後、50℃、15%RHの環境下で3日間養生(エージング)して、表面保護フィルムを得た。
【0208】
<比較例5>
(コーティング材の調製)
水−アルコール溶媒中に、カチオン性高分子からなる帯電防止剤(コニシ株式会社製、商品名「ボンディップ−P主剤」)と、硬化剤としてのエポキシ樹脂(コニシ株式会社製、商品名「ボンディップ−P硬化剤」)とを、NV基準で100:46.7の質量比で含む溶液を用意した。
【0209】
(トップコート層の形成)
一方の面(第一面)にコロナ処理が施された厚み38μm、幅30cm、長さ40cmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。このPETフィルムのコロナ処理面に上記コーティング材をバーコーターで塗布し、130℃に2分間加熱して乾燥させた。このようにして、PETフィルムの第一面に厚み80nmの透明なトップコート層を得た。
次いで、上記トップコート層の表面に、長鎖アルキルカルバメート系の剥離処理剤(商品名「ピーロイル1010」一方社油脂工業株式会社製)をNV基準で0.02g/m
2となるように塗布して乾燥させることにより、トップコート層に滑り性を付与した。
このようにして、PETフィルムの第一面に厚み80nmの透明なトップコート層を有する基材(トップコート付き基材)を作製した。
【0210】
(表面保護フィルムの作製)
PETフィルムの片面にシリコーン系剥離処理剤による剥離処理が施された離型シートを用意した。この離型シートの剥離面(上記剥離処理が施された面)上に上記粘着剤6(水分散型アクリル系粘着剤組成物)を塗布し、乾燥させて、厚み15μmのアクリル系粘着剤層を形成した。その粘着剤層を上記トップコート付き基材の他方の面(第二面、すなわち上記トップコート層が設けられていない面)に貼り合わせた後、50℃、15%RHの環境下で3日間養生(エージング)して、表面保護フィルムを得た。
【0211】
実施例及び比較例に係る表面保護フィルムの概略構成と、これらを上述の方法により測定または評価した結果とを、表2に示す。
【0212】
【表2】
【0213】
なお、上記ピックアップ特性が「より良好」(つまり、[(背面剥離強度)/(40℃×1週間の剥離強度)]が3.8以上)であると、高速でのピックアップ性能がより優れる。このため、作業者が、より速く、より効率よくピックアップすることができ、作業性に優れる。