特許第6092036号(P6092036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6092036樹脂組成物、それを用いた捕水剤、バリアフィルム、有機電子デバイス及び有機ELデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092036
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、それを用いた捕水剤、バリアフィルム、有機電子デバイス及び有機ELデバイス
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/00 20060101AFI20170227BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20170227BHJP
   C08G 73/00 20060101ALI20170227BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20170227BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20170227BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   C08L79/00 Z
   C08K5/09
   C08G73/00
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/02
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-161055(P2013-161055)
(22)【出願日】2013年8月2日
(65)【公開番号】特開2014-43573(P2014-43573A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2016年5月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-172364(P2012-172364)
(32)【優先日】2012年8月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006172
【氏名又は名称】三菱樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】230105223
【弁護士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】田畑 大樹
(72)【発明者】
【氏名】根本 友幸
【審査官】 井津 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表平04−505632(JP,A)
【文献】 特開平08−027270(JP,A)
【文献】 特開平08−081545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
C08G 73/00−73/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、カルボン酸無水物とカルボジイミド化合物をそれぞれ1種類以上含有し、全カルボン酸無水物と全カルボジイミド化合物の含有量が以下の(1)〜(3)の関係式を満たし、40℃、90%Rhの環境下での水の捕水量が1重量%以上である樹脂組成物。
(1)A≧α/18
(2)B=Anβ/α(但し、0.25≦n≦2.5)
(3)A+B≦100
(ここで、
A:樹脂組成物中の全カルボン酸無水物の含有量(重量%)
B:樹脂組成物中の全カルボジイミド化合物の含有量(重量%)
α:全カルボン酸無水物の酸無水物当量(g/eq)
β:全カルボジイミド化合物のカルボジイミド当量(g/eq)
を示す。)
【請求項2】
前記カルボン酸無水物が、脂環式カルボン酸無水物である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂組成物を用いた捕水剤。
【請求項4】
請求項3に記載の捕水剤を含む層を有するバリアフィルム。
【請求項5】
請求項3に記載の捕水剤を含む層を有する有機電子デバイス。
【請求項6】
請求項4に記載のバリアフィルムを用いてなる有機電子デバイス。
【請求項7】
請求項3に記載の捕水剤を用いてなる有機EL素子。
【請求項8】
請求項4に記載のバリアフィルムを用いてなる有機EL素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸無水物とカルボジイミド化合物をそれぞれ1種類以上含有し、全カルボン酸無水物と全カルボジイミド化合物の含有量を、特定の量的関係になるように調製した樹脂組成物であって、40℃,90%Rhの環境下での水の化学吸着量が1重量%以上である該樹脂組成物、それを用いた捕水剤、バリアフィルム、有機電子デバイス及び有機ELデバイス及び有機電子デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から有機化合物を用いた電子デバイス(素子)が開発されている。有機電子デバイス、例えば、有機ELデバイス、有機TFTデバイス、有機太陽電池、電子ペーパーは有機材料を用いて、これに電子及び正孔の注入又は取り出しを繰り返すことによって種々の機能を発現するデバイスである。すなわち、その有機材料を繰り返して酸化還元反応を行わせることをデバイス作動機構としている。
【0003】
特に、有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence、以下ELと記す)を利用した有機EL素子は、陽極と陰極との間に有機電荷輸送層や有機発光層を積層させた有機層を設けてなり、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。またこの有機EL素子は、すべての材料を固体で構成することが可能であるため、フレキシブルディスプレーとして期待されている。
【0004】
一方で有機EL素子は、一定期間駆動した場合、発光輝度、発光効率、発光均一性等の発光特性が初期の場合に比べて著しく劣化するという問題がある。このような発光特性の劣化の原因としては、有機EL素子内に侵入した酸素による電極の酸化、駆動時の発熱による有機材料の酸化分解、有機EL素子内に侵入した空気中の水分による電極の酸化、有機物の変性等を挙げることができる。さらに、酸素や水分の影響で構造体の界面が剥離したり、駆動時の発熱や駆動時の環境が高温であったこと等が引き金となって、各構成要素の熱膨張率の違いにより構造体の界面で応力が発生し、界面が剥離する等の構造体の機械的劣化も発光特性の劣化の原因として挙げることができる。
【0005】
このような問題を防止するため、有機EL素子を封止し、水分や酸素との接触を抑制する技術が多数検討されている。例えば、図1に示すように、基板1上に電極3、有機機能層4及び電極5からなる有機EL素子を配列形成してなる画素エリアに対し、乾燥手段として捕水剤6を内壁に貼り付けた封止キャップ2を被せ、内部を窒素ガスで満たし、さらに基板1に接着剤7で固定することにより、有機EL素子への水分の到達を防止する方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。また、捕水剤のかわりに酸素吸収剤を用いることにより酸素の影響を低減する方法も開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
この捕水剤としてさまざまな物質が検討されてきたが、なかでも酸化バリウム(BaO)や酸化カルシウム(CaO)といったアルカリ土類金属酸化物は、シリカゲルやゼオライトのような物理的に水を吸着させる捕水剤とは異なり、水を化学吸着することにより絶乾状態まで確実に乾燥することができ、使用温度域での水の再放出もないため、広く検討されている。
【0007】
しかしながら、これらの捕水剤は水と反応して腐食性の強い水酸化物を生成するため、凹状の封止キャップ2の内壁に、電極3、電極5、及び有機機能層4から離して設置される。これにより、素子が厚くなるといった欠点がある。また、これらの捕水剤粒子は不透明であるため、基板1側から表示光を取り出す、いわゆるボトムエミッション型の表示装置には適用できるものの、基板1と反対側の封止キャップ2側から表示光を取り出す、いわゆるトップエミッション型の表示装置に適用する場合には、捕水剤4によって表示光の透過が妨げられるため、捕水剤4を画素エリアにかからないように配置しなければならず、配置場所を新たに設けなければならないといった制限がある。
【0008】
このようなトップエミッション型の表示装置に捕水剤を適用するためにいくつかの提案がなされている。例えば、ポリビニルアルコールやナイロンといった透明でかつ吸水性を有するポリマーを捕水剤として適用することが従来より提案されているが、これらのポリマーは水を物理吸着する特性を有するものであり、絶乾状態まで乾燥するには不十分である。その他、トップエミッション構造の有機EL素子において、粒子状の捕水剤を光透過性が妨げられない程度に配置すること(特許文献3参照)や、有機EL素子の発光波長よりも小さい粒径を有する捕水剤を分散させたプラスチック基板を用いること(特許文献4参照)が提案されているが、いずれの場合においても有機EL素子内へ配置方法や、透明性に難があり、実用性に乏しい。
【0009】
これらの問題を解決する手段として、可視光吸収の少ない捕水膜を用いることが開示されている(特許文献5参照)。この捕水膜は、特殊な湿気反応性の有機金属化合物を溶剤コーティングすることにより形成することができ、十分な透明性を持っている。しかしながら、この捕水膜をフレキシブル基板に適用しようとした場合には、低分子化合物から構成されているため柔軟性に欠け、吸湿後の化合物はさらにもろいという課題があった。また、特許文献5に開示されている捕水剤は、有機金属化合物の加水分解によって水を化学的に捕捉する機構を有するため、水と反応することでアルコールが生成し、このアルコールが有機EL素子の起動中の局所的な発熱によって発泡したり、また、蒸発した化合物が素子上に凝集し、パッシベーション膜等が設けられていない場合には、有機化合物を溶解したり、有機化合物と電極の界面に浸透し、素子を侵すなどの課題があった。
【0010】
一方、有機EL素子の封止プロセスは、水分の浸入を防ぐためにきわめて乾燥したグローブボックス内で行われるが、この点を考慮すると安全性、設備保全面から溶剤を用いない無溶剤型を用いることが好ましい。しかしながら上記のように従来の捕水膜は溶剤塗布型であり、無溶剤型が望まれている。
【0011】
無溶剤型で且つ柔軟性を有する捕水膜としては、加水分解性金属アルコキシド、(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有重合性モノマー、光重合開始剤からなり、光硬化させることにより形成された捕水フィルムが開示され、生成するアルコールの沸点を160℃以上にすることが提案されている(特許文献6参照)。しかしながら、低分子量のアルコールが生成することには変わり無く、上記のアルコールが原因とされる不具合を完全には防止できないという課題があった。
【0012】
このように、透明な捕水剤に関する公知技術では、有機金属化合物の加水分解等を利用したものがほとんどであり、低分子量化による物性低下や、副生アルコールによる素子の不具合を根本的に解決した、透明な捕水剤を得ることは出来ないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−148066号公報
【特許文献2】特開平7−169567号公報
【特許文献3】特開2001−357973号公報
【特許文献4】特開2002−56970号公報
【特許文献5】特開2003−142256号公報
【特許文献6】特開2007−191511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、その課題とするところは、有機EL素子等の水分や酸素の影響を受けやすい素子の捕水剤として用いることができ、透明であり光をさえぎることなく発光面側に設置することができ、無溶剤プロセスで製造でき、アルコールの副生や分子量低下による不具合が少なく、さらに柔軟性でフレキシブル基板にも適用することができる組成物を提供すること、及び長期にわたって発光特性を維持する有機EL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、有機金属化合物の加水分解に依ることなく、水との化学反応によってガスや低分子量物を新たに生成しない捕水機構を鋭意検討した結果、カルボン酸無水物とカルボジイミド化合物を併用した樹脂組成物が、透明な捕水剤として有効であり、無溶剤プロセスで膜形成可能であることを見出した。さらに、カルボン酸無水物とカルボジイミド化合物の存在量を、特定の範囲内とすることで、捕水剤としての機能を高められることを見出した。また、本発明の樹脂組成物は有機電子デバイス、特に有機EL素子の発光特性を維持するのに十分な能力を有していることを確認した。
【0016】
すなわち、本発明の要旨は、
[1]少なくとも、カルボン酸無水物とカルボジイミド化合物をそれぞれ1種類以上含有し、全カルボン酸無水物と全カルボジイミド化合物の含有量が以下の(1)〜(3)の関係式を満たし、40℃、90%Rhの環境下での捕水量が1重量%以上である樹脂組成物。
(1)A≧α/18
(2)B=Anβ/α(但し、0.25≦n≦2.5)
(3)A+B≦100
(ここで、
A:樹脂組成物中の全カルボン酸無水物の含有量(重量%)
B:樹脂組成物中の全カルボジイミド化合物の含有量(重量%)
α:全カルボン酸無水物の酸無水物当量(g/eq)
β:全カルボジイミド化合物のカルボジイミド当量(g/eq)
を示す。)
[2]前記カルボン酸無水物が、脂環式カルボン酸無水物である[1]に記載の樹脂組成物。
[3][1]又は[2]に記載の樹脂組成物を用いた捕水剤。
[4][3]に記載の捕水剤を含む層を有するバリアフィルム。
[5][3]に記載の捕水剤を含む層を有する有機電子デバイス。
[6][4]に記載のバリアフィルムを用いてなる有機電子デバイス。
[7][3]に記載の捕水剤を用いてなる有機EL素子。
[8][4]に記載のバリアフィルムを用いてなる有機EL素子。
に存するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の樹脂組成物は、透明で大きな捕水量を有し、水との化学反応によってガスや低分子量物を生成せず、無溶剤プロセスで膜形成可能であり、トップエミッション型の表示装置に好適に適用することができ、有機EL素子に代表される有機電子デバイスの長寿命化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明及び従来の有機EL素子の構造を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の有機EL素子の構造を模式的に示す断面図である。
図3】本発明の有機EL素子の構造を模式的に示す断面図である。
図4】実施例2の樹脂組成物と水との反応前後の赤外吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態の例について説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明においてカルボン酸無水物、及びカルボジイミド化合物は、それぞれ2種類以上であっても良い。
【0021】
<カルボン酸無水物>
本発明においてカルボン酸無水物は、樹脂組成物中で水分と反応することが可能である。水と反応したカルボン酸無水物はカルボン酸となり、後述するカルボジイミド化合物に付加反応する。つまり、カルボン酸のカルボキシル基がカルボジイミド基と反応してアシルウレアを生成する。これら一連の反応において、ガスや低分子量化合物の副生は無く、分子量が著しく低下することもないので、従来の有機金属系の捕水剤と比べると、アウトガスが少なく、柔軟で機械物性の低下が少ない捕水剤が得られる。
【0022】
本発明におけるカルボン酸無水物としては、例えば無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブチテニルテトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサントリカルボン酸無水物、スチレン―無水マレイン酸共重合体、オレフィン―無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル―無水マレイン酸共重合体、各種脂肪酸無水物が挙げられる。
【0023】
中でも特に環状のカルボン酸無水物とすることで、水架橋性の樹脂組成物とすることが可能である。つまり、環状カルボン酸無水物が水との反応で開環すると、テレケリックなジカルボン酸を生成するため、カルボジイミド化合物の架橋剤として機能する。このような環状のカルボン酸無水物としては、無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセロールトリストリメリテート、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブチテニルテトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサントリカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0024】
また、本発明においては、カルボン酸無水物として脂肪族及び/又は脂環族のカルボン酸無水物を用いることで、着色の少ない樹脂組成物とすることが可能である。脂肪族及び/又は脂環族のカルボン酸無水物としては、無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、メチルシクロヘキセンジカルボン酸無水物、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルブチテニルテトラヒドロ無水フタル酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、シクロヘキサントリカルボン酸無水物、各種脂肪酸無水物が挙げられる。
【0025】
カルボン酸無水物の酸無水物当量(g/eq)は、値が小さいほど重量当りの水分を捕捉できる量は大きくなる。よって、捕水量を増やす観点から、酸無水物当量は小さい方が好ましい。一方で、樹脂組成物中における相溶性を高める観点から、酸無水物当量の大きい、つまり分子量の大きいカルボン酸無水物を用いることが好ましい。本発明における酸無水物当量の範囲としては100〜2000g/eqが好ましく、120〜1000g/eqがより好ましい。
【0026】
<カルボジイミド化合物>
本発明におけるカルボジイミド化合物としては、特に限定されないが、国際公開第2010/071211号パンフレットに記載されている環状カルボジイミド化合物や、高分子量で比較的毒性の低いポリカルボジイミドが好ましい。市販のポリカルボジイミドとしては、ラインケミー社製のスタバクゾール(商品名)、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(商品名)が挙げられる。中でも、構造に芳香族を含まず、着色が少ないものが好ましく、イソシアネート基の含有量が少なく、水と反応して二酸化炭素を発生する懸念の少ないポリカルボジイミドが好ましい。このようなポリカルボジイミドとしては、カルボジライトHMV−15CA、HMV−8CA、V−02−L2B、V−04K、V−09,V−02B等が挙げられる。
【0027】
また、親水性の構造を導入したポリカルボジイミドを使用することで、樹脂組成物への水蒸気の吸着と、樹脂組成物の内部における水蒸気拡散を向上することができ、結果として水の捕捉効率を高めることができる。このような親水性の構造を導入したポリカルボジイミドとしては、カルボジライトV−02B、V−02−L2B、V−04Kが市販されている。
【0028】
カルボジイミド化合物のカルボジイミド当量(g/eq)は、値が小さいほど重量当りのカルボン酸を捕捉できる量は大きくなる。よって、捕捉量を増やす観点から、カルボジイミド当量は小さい方が好ましい。一方で、樹脂組成物中における相溶性の向上や、親水化などの機能付与の観点から、カルボジイミド当量の大きいカルボジイミド化合物を用いることが好ましい。カルボジイミド当量の範囲としては150〜2000g/eqが好ましく、200〜1000g/eqがより好ましい。
【0029】
<カルボン酸無水物、及びカルボジイミド化合物の含有量とその関係>
本発明の樹脂組成物は、カルボン酸無水物とカルボジイミド化合物を共に含有することで、カルボン酸無水物だけの時よりも有益な効果を期待できる。例えば、水とカルボン酸無水物の反応生成物であるカルボン酸を、カルボジイミド基が付加反応により除去するため、カルボン酸無水物を単独で用いた系よりも、反応が促進され、水の再放出も起こり難い傾向にある。また、カルボン酸無水物の種類によっては、水との反応後にカルボン酸の結晶を生成するものがあるが、カルボン酸の結晶生成及び/又は結晶成長を防止し、水捕捉後も透明性を維持することが出来る。
【0030】
これらの効果を得るためには、全カルボン酸無水物と全カルボジイミド化合物の含有量が以下の(1)〜(3)の関係式を満たすことが好ましい。
(1)A≧α/18
(2)B=Anβ/α (但し、0.25≦n≦2.5)
(3)A+B≦100
(ここで、
A:樹脂組成物中の全カルボン酸無水物の含有量(重量%)
B:樹脂組成物中の全カルボジイミド化合物の含有量(重量%)
α:全カルボン酸無水物の酸無水物当量(g/eq)
β:全カルボジイミド化合物のカルボジイミド当量(g/eq)
を示す。)
【0031】
つまり、樹脂組成物における全カルボン酸無水物の含有量(重量%)は、少なくともその酸無水物当量(g/eq)を、水の分子量である18で除した量が必要である。また、樹脂組成物において、全カルボジイミド化合物の含有量(重量%)は、そのカルボジイミド基が、酸無水物基に対してn倍、つまり0.25〜2.5倍の間になるように、含有量を調整するのが好ましい。そして、カルボン酸無水物とカルボジイミド化合物は、それ以外の成分も考慮して配合量を調整する必要がある。上記のように0.25≦n≦2.5が好ましいが、0.4≦n≦2.0がより好ましく、0.5≦n≦1.8がさらに好ましい。
【0032】
<第3成分>
本発明の樹脂組成物は、樹脂組成物の捕水量が1重量%以上維持される範囲内で、上記化合物(カルボン酸無水物及びカルボジイミド化合物)に加え、他の第3成分を含んでいてもよい。この第3成分としては、上記化合物以外の樹脂や、触媒、無機化合物等が挙げられる。樹脂組成物の捕水機能を維持する観点から、第3成分は、活性水素基(例えばアミノ基、イミノ基、イソシアネート基、水酸基)を含まないものが好ましいが、樹脂組成物の捕水量が1重量%以上維持される範囲内であれば、活性水素基を含む成分も添加することができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物に好ましく含まれる樹脂としては、熱可塑性樹脂でも、熱及び/又はエネルギー線硬化性の樹脂でもよく、(メタ)アクリレートとその硬化物、ウレタン(メタ)アクリレートとその硬化物、エポキシ樹脂硬化物、ポリビニルエステル及びその共重合体、ポリオレフィン及びその共重合体、ポリエステル及びその共重合体が挙げられる。(メタ)アクリレートはモノマー又はオリゴマーでもよく、光重合開始剤との併用で、UV硬化性を付与することが出来る。これら樹脂の樹脂組成物中に占める含有量としては、60重量%以下が好ましい。60重量%以下であれば、カルボン酸無水物の含有量が相対的に少なくなることがなく、十分な捕水機能が期待できる。
【0034】
また、本発明の樹脂組成物に好ましく含まれる第3成分としては、捕水剤として知られている有機金属化合物を挙げることが出来る。このような有機金属化合物としては、下記の式(1)、(2)、(3)、(4)に示される化合物が好ましい。これら有機金属化合物の樹脂組成物中に占める含有量としては、30重量%以下が好ましい。30重量%以下であれば捕水後の樹脂組成物の柔軟性が良好であり、クラック等の欠陥が発生することを防止できる。
【化1】
(式中、R1〜Rnは、各々独立に、炭素数1個以上のアルキル基,アリール基,シクロアルキル基,複素環基,アシル基を含む有機基であり、M は3価または4価の金属原子を示す。)
【化2】
(式中、R〜Rは、各々独立に、炭素数1個以上のアルキル基,アリール基,シクロアルキル基,複素環基,アシル基を含む有機基を示し、Mは3価の金属原子を示す。)
【化3】
(式中、R〜R、Rは、各々独立に、炭素数1個以上のアルキル基,アリール基,シクロアルキル基,複素環基,アシル基を含む有機基を示し、Mは3価の金属原子を示す。)
【化4】
(式中、R、R、Rは、各々独立に、炭素数1個以上のアルキル基,アリール基,シクロアルキル基,複素環基,アシル基を含む有機基を示し、Mは4価の金属原子を示す。)
【0035】
さらに、本発明の樹脂組成物に好ましく含まれる無機化合物として、粒子径が100nm以下の高屈折粒子が挙げられる。樹脂組成物中に粒子径が100nm以下の高屈折粒子を分散させることで、透明性を損なわず、樹脂組成物の屈折率を高めることが可能である。樹脂組成物の屈折率を高めることで、光取り出し性を改良することが出来る。このような高屈折粒子としては酸化ジルコニウムや酸化スズが挙げられ、これらを有機溶媒に分散させたオルガノゾルが市販されている。
【0036】
本発明の樹脂組成物は液体、固体の何れでもよく、固体の場合は、粒子状に成形されていても良い。その粒径は透明性を損なわない限り任意に選択することができ、一般に1〜1000nmである。
【0037】
また、本発明の樹脂組成物に好ましく含まれる第3の成分として、触媒を挙げることができる。触媒を添加することにより、カルボン酸無水物と水との反応を促進することができる。本発明の樹脂組成物に好ましく用いられる触媒としては、例えば、4級ホスホニウム塩、4級アンモニウム塩、3級アミン、DMAP(N,N−ジメチル−4−アミノピリジン)などのピリジン類、DBU(1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデカ−7−エン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノナ−5−エン)などのアミジン類とその誘導体、イミダゾール類、トリアゾール類、テトラゾール類、ピラゾール類が挙げられる。しかしながら、触媒活性があり、着色がないものであれば、これらに限定されない。
特に、DMAP、DBN、DBUとこれらの誘導体及び塩は、少量の添加量でも高い触媒活性を示すのでより好ましい。中でも、DBU塩及びDBU誘導体塩は、サンアプロ株式会社よりU−CATシリーズとして販売されており、容易に入手可能である。
本発明において、上記の触媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0038】
本発明の樹脂組成物は、40℃、90%Rhの環境下での水の捕水量が1重量%以上であることを特徴とする。ここで、捕水量の測定は、例えば、次の方法で行なうことができる。アルミ板などに樹脂組成物を塗布して、重量を測定して、アルミ板に塗布された樹脂組成物の正確な重量(A)を求め、次に、重量変化が無くなるまで40℃、90%Rhの恒温恒湿槽に放置することで、水と十分に反応させて、恒温恒湿槽に放置する前後で増加した重量(B)を求め、すぐに、乾燥空気により重量変化が無くなるまで乾燥を行い、乾燥前後の重量変化から物理吸着していた水の重量(C)を求める。そして、捕水量(反応により捕捉した水量)を以下の式により求める。
捕水量=((B)−(C))/(A)×100(重量%)
【0039】
<形態>
本発明の樹脂組成物は、液状、粒子状、シート状、板状の何れの形態でもよく、シート状や板状の場合は、他の透明材料と積層されていても良い。粒子状の場合は透明性を損なわない限り任意に選択することができ、一般に1〜1000nmが好ましい。
本発明の樹脂組成物を厚み100μmに成形した時の全光線透過率は、好ましくは80%以上である。
【0040】
<利用方法>
本発明の樹脂組成物は捕水剤として好適に使用することができ、本発明の捕水剤は有機EL素子等の水分の影響を受けやすい素子に適用することができる。本発明の捕水剤は透明であるため、光をさえぎることなく素子の発光面、受光面側に配置することができる。また、本発明の捕水剤はパッシブ型の水蒸気バリアフィルムを表裏に配置した積層フィルム(つまり、パッシブバリア/アクティブバリア/パッシブバリア構成)とすることで、そのフィルムの水蒸気透過のブレークスルータイムを大きくする事ができる。
【0041】
本発明の樹脂組成物より形成したフィルムは透明であるため、積層体として各種の光学素子等に用いることができる。すなわち、本発明の第二の態様は、この組成物より形成されたフィルム状基材を含む積層体である。上記のようにこの樹脂組成物は水分を捕捉することができ、従ってこの積層体も吸湿性を示す。
【0042】
また、本発明の第三の態様は、この組成物を乾燥手段として内部に配置した有機EL素子である。この有機EL素子の構成は、図1に示す従来の有機EL素子と同様の構成をとることができ、すなわち有機材料からなる有機機能層4が互いに対向する一対の電極3及び5間に挟持されてなる積層体と、この積層体を収納して外気を遮断する気密性容器などの封止キャップ2と、この気密性容器内に配置された乾燥手段6とを有し、この乾燥手段が上記組成物より形成されている。この組成物は透明であるため、乾燥手段6を配置する位置には制限がないことから、水蒸気遮断性のあるプラスチックフィルム等に当該組成物を塗布した皮膜を乾燥手段として用い、図2に示すように、当該皮膜を電極5を覆うようにして直接貼り付けてもよい。図2では、封止キャップ2がプラスチックフィルムであり、乾燥手段6として捕水剤を塗布した態様を示している。あるいは、図3に示すように、基板1上の電極3及び5並びに有機機能層4の全体を覆うようにしてこの乾燥手段6を配置し、さらにその上を封止接着剤7で覆ってもよい。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0044】
<実施例1>
窒素雰囲気下にて、5.18gのリカシッドMH−700(新日本理化(株)商品名、4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸/ヘキサヒドロ無水フタル酸=70/30混合物、酸無水物当量161g/eq)を、4.82gのカルボジライトV−02B(日清紡ケミカル(株)商品名、親水性ポリカルボジイミド、カルボジイミド当量600g/eq)に混合し、透明な樹脂組成物を得た。各材料の含有量は(1)〜(3)の関係式を満たしており、n=0.25である。
【0045】
<実施例2>
窒素雰囲気下にて、3.492gのリカシッドMH−700を、6.508gのカルボジライトV−02B(日清紡ケミカル(株)商品名、親水性ポリカルボジイミド、カルボジイミド当量600g/eq)に混合し、透明な樹脂組成物を得た。各材料の含有量は(1)〜(3)の関係式を満たしており、n=0.5である。
【0046】
<実施例3>
窒素雰囲気下にて、3.750gのリカシッドHNA−100(新日本理化(株)商品名、メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物/ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボン酸無水物、酸無水物当量180g/eq)を、6.250gのカルボジライトV−02Bに混合し、透明な樹脂組成物を得た。各材料の含有量は(1)〜(3)の関係式を全て満たしており、n=0.5である。
【0047】
<実施例4>
窒素雰囲気下にて、1.812gのリカシッドMH−700と、1.812gのリカシッドHNA−100を、6.376gのカルボジライトV−02Bに混合し、透明な樹脂組成物を得た。各材料の含有量は(1)〜(3)の関係式を全て満たしており、n=0.5である。
【0048】
<実施例5>
窒素雰囲気下にて、2.116gのリカシッドMH−700を、7.884gのカルボジライトV−02Bに混合し、透明な樹脂組成物を得た。各材料の含有量は(1)〜(3)の関係式を全て満たしており、n=1.0である。
【0049】
<実施例6>
窒素雰囲気下にて、1.183gのリカシッドMH−700を、8.817gのカルボジライトV−02Bに混合し、透明な樹脂組成物を得た。各材料の含有量は(1)〜(3)の関係式を全て満たしており、n=2.0である。
【0050】
<比較例1>
窒素雰囲気下にて、7.29gのリカシッドMH−700を、2.71gのカルボジライトV−02Bに混合し、透明な樹脂組成物を得た。n=0.1であり、各材料の含有量は(1)〜(3)の関係式を全て満たしていない。
【0051】
<比較例2>
窒素雰囲気下にて、0.821gのリカシッドMH−700を、9.179gのカルボジライトV−02Bに混合し、透明な樹脂組成物を得た。n=3.0であり、各材料の含有量は(1)〜(3)の関係式を全て満たしていない。
【0052】
<比較例3>
リカシッドMH−700のみを樹脂組成物として評価を行った。
【0053】
<比較例4>
カルボジライトV−02Bのみを樹脂組成物として評価を行った。
【0054】
<比較例5>
有機金属系の捕水剤として知られている、アルミニウムオキサイドオクチレートの48%溶液(ホープ製薬社製、液状オリープAOO)を窒素雰囲気下で乾燥させ、透明捕水剤を得た。
【0055】
上記、実施例及び比較例における、カルボン酸無水物及びカルボジイミド化合物の含有量を表1に示した。
【表1】
【0056】
<捕水量の測定>
上記の溶液組成物を厚み0.1mm、50mm×50mmのアルミ板(重量既知)の片面に約1g塗布し、重量を測定することで、アルミ板に塗布された樹脂組成物の正確な重量(A)を求めた。次に、重量変化が無くなるまで40℃、90%Rhの恒温恒湿槽に放置することで、水と十分に反応させた。反応の確認はFT−IRにて行い、樹脂組成物の酸無水物基の赤外吸収ピーク(1785cm−1、及び1862cm−1)が消失するまで反応させた。参考として、実施例2の樹脂組成物の反応前後の赤外吸収ピークを図4に示す。
水との反応を確認した後、恒温恒湿槽に放置する前後で増加した重量(B)を求め、すぐに、乾燥空気により重量変化が無くなるまで乾燥を行い、乾燥前後の重量変化から物理吸着していた水の重量(C)を求めた。捕水量(反応により捕捉した水量)を以下の式により求めた。
捕水量=((B)−(C))/(A)×100(重量%)
捕水量は以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
(評価基準)
○:捕水量が1重量%以上
×:捕水量が1重量%未満
【0057】
<透過性の測定>
上記の樹脂組成物を市販の厚さ1mmの顕微鏡観察用スライドガラスの片面に窒素雰囲気で塗布し、膜厚が100μmになるように調整した。得られた試料を40℃、90%Rhの恒温恒湿槽に2日間放置し、その後、デシケーター内に2日間放置することで、吸着水を乾燥させてから測定を行った。解析ではスライドガラスをベースラインとした。波長域400nm〜800nmの範囲の最低透過率を求め、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
(評価基準)
○:波長400nm〜800nmの範囲の最低透過率が90%以上
×:波長400nm〜800nmの範囲の最低透過率が90%未満
【0058】
<可撓性の測定>
上記の樹脂組成物を市販の厚さ100μmのPETフィルムの片面に窒素雰囲気で塗布し、膜厚が100μmになるように調整した。40℃、90%Rhの恒温恒湿槽に2日間放置した後、PET面を円筒マンドレル(R=10mm)に沿わせて曲げ、塗膜の状態を目視により観察し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
(評価基準)
○:クラック又は脱落が発生しない
×:クラック又は脱落が発生する
【0059】
【表2】
【0060】
<VOCの測定>
実施例2と比較例5の樹脂組成物を100μmのアルミプレートに膜厚が100μmになるように塗布し、窒素雰囲気下で120℃,1時間の乾燥をおこなった。パージ&トラップ‐GC/MSにて120℃、15分間のVOC測定を行い、以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
(VOC評価基準)
○:VOCの合計が2,000ppm未満
△:VOCの合計が2,000ppm以上、10,000ppm未満
×:10,000ppm以上
【0061】
【表3】
【0062】
実施例1〜5において、捕水量、光透過性、可撓性、VOCは良好であった。一方で、n=0.1である比較例1と、カルボン酸無水物のみ用いた比較例3では、水との反応で生成したジカルボン酸が結晶化し、透過性が著しく低下した。また、n=3.0である比較例2と、カルボジイミド化合物のみ用いた比較例4では、十分な捕水量を発現しないことがわかった。また、比較例5のアルミニウムオキサイドオクチレートでは可撓性に乏しく、クラックが発生し、VOCも多かった。以上のことから、本発明では従来の有機金属系の捕水剤よりもVOCが少なく良好な捕水剤を得る事ができる。また、カルボン酸無水物とカルボジイミド化合物を併用し、(1)〜(3)の関係式を全て満たすことで、捕水量、透過性、可撓性を両立できることがわかる。
【符号の説明】
【0063】
1 基板
2 封止キャップ(プラスチックフィルム)
3 電極
4 有機機能層
5 電極
6 乾燥手段
7 封止接着剤
図1
図2
図3
図4