(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シート材(F)の裁断加工により、前記両スリット(40,40)間のたぐり代ゾーン(Z)内に、両スリット(40,40)を結ぶ線状ライン(CP)を軸に線対称となるくり抜き孔(44)をさらに形成して、前記裁断布(4)とする請求項1記載のバックパッド用裏面材。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係るバックパッド及びバックパッド用裏面材について詳述する。
図1〜
図10は本発明のバックパッド及びバックパッド用裏面材の一形態で、
図1は裏面材向け裁断布の平面図、
図2は
図1の裁断布を折り畳み、縫合してできた裏面材の平面図、
図3,
図4は
図2の裏面材を中型にセットする様子を示す部分斜視図、
図5は(イ)が
図3に対応する断面図、(ロ)が
図4に対応する断面図、
図6は(イ)がバックパッドの縦断面図、(ロ)が(イ)の部分拡大図、
図7,
図8はバックパッドの発泡成形する様子を示す説明断面図、
図9は(イ)がバックパッドの斜視図、(ロ)が(イ)の縦孔周りの拡大斜視図、(ハ)が(ロ)の平面図、
図10は他態様の裏面材の説明図を示す。尚、各図でスリット40を強調して描き、また
図5(ロ),
図6(イ),
図9(ハ)は、裏面材3を判り易くするため、パッド本体2から少し離して描く。
【0011】
(1)バックパッド用裏面材
バックパッド用裏面材3は、パッド本体上部22に二以上のステー挿着用縦孔20を備える車両座席シートのバックパッドで、パッド本体2の裏面2bに被着一体化される縫製裏面材である。裏面材3は、不織布等の布状シート材Fから裁断,縫合された縫製品とする。
平物のシート材Fから裁断される裁断布4には、各縦孔20の周回長さとほぼ等しい長さのスリット40がそれぞれ直線状にカットされる。該スリット40を有する裁断布4をスリット40線上で折り畳んで、たぐり代41の二重布部5を形成し、さらに、該二重布部5に係る筒部用布部分52aの縫合により、縦孔20の孔壁201にあてがう筒部52が設けられた裏面材3になっている。その裁断布4は、シート材Fの裁断加工で、特開2005-238675号公報のごとく縦孔20の各対応位置に単に円孔を形成し、車両前方側の前面部42と車両後方側の後面部43だけを形成してきた従来の裁断布とは大きく異なる。
【0012】
本裏面材3のシート材F,裁断布4には、前面部42と後面部43に加え、縦孔20の孔壁201にあてがう筒部形成用たぐり代ゾーンZの必要布地面積が確保される。平物からなる布製シート材Fの裁断加工により、前記縦孔20の各対応位置にスリット40を二箇所(複数)、同一線上となるように形成すると共に、スリット40の長さ方向と直交する両外方向に縦孔高さh20に合わせた幅のたぐり代ゾーンZをそれぞれ介在させて、該縦孔20が在る部位よりも車両前方側の前面部42と、該縦孔20が在る部位よりも車両後方側の後面部43と、を形成した裁断布4にする。尚、本発明でいう「車両前方」とは、
図6のごとくバックパッドが車両に設置された状態下の車両前方で、同図の左方を指し、「上方」とは同図の上方を指す。
【0013】
シート材Fにスリット40が形成されるが、該スリット40と直交する一方向にたぐり代ゾーンZの布地ゾーン幅Z1を確保して、その先に前面部42の布地が延在し、また該スリット40と直交する他方向にたぐり代ゾーンZの布地ゾーン幅Z1を確保して、その先に後面部43の布地が延在する。該たぐり代ゾーンZの布地をたぐってスリット40線上で折り重ね、筒部用布部分52aが備わる二重布部5とする。スリット40周りの前面部42,後面部43に対し、たぐり代41の部位を起立状態させれば、縦孔20向けに立体化する筒部用布部分52aが用立てられる。二次元のシート材Fを用いても、たぐり代ゾーンZをたぐり寄せ重ねることにより、筒部用布部分52aで、
図5のように前面部42の上部分42u,後面部43の上部分43uから筒状三次元化した筒部52が延在し起立形成が可能になる。
【0014】
二重布部5に係る筒部用布部分52aには、たぐり代ゾーンZのゾーン幅Z1によって、縦孔高さh20に合わせた高さが確保される。ここではゾーン幅Z1を縦孔高さh20よりも若干小さめとする。本実施形態は、バックパッド1が出来た段階で、
図6,
図9のごとく筒部52の上方開口縁521が縦孔20の上開口200よりも縦孔20内に少し奥に引っ込む形になる。
たぐり代ゾーンZで、前記筒部用布部分52aにならない布地部分は、スリット40,前面部42,後面部43の裁断加工時にカット除去される。シート材Fの裁断加工により、両スリット40間のたぐり代ゾーンZ内で、両スリット40を結ぶ線状ラインCPを軸に線対称となるくり抜き孔44を形成し、該くり抜き孔44の部分を含め、筒部用布部分52aから外れる部分がワンショット裁断で除去される(
図1)。シート材Fから裁断布4になると、たぐり代41のうち筒部用布部分52aのみ残る。スリット40は展開した筒部用布部分52a内に切り込まれる。左右二つのスリット40を有する両筒部用布部分52a間にくり抜き孔44が形成され、また両筒部用布部分52aの左右外側で両外方に開放する細長切欠部kが形成される。符号431は後面部の切欠部、符号432は後端縁を示す。
【0015】
前述のごとく、スリット40,筒部用布部分52a,前面部42,後面部43を裁断加工した一枚ものの裁断布4が得られるが、さらに該裁断布4を縫合して裏面材3になる。シート材Fから裁断カットされた裁断布4に係る筒部用布部分52a,前面部42,後面部43の縫合される各部分には、
図4に示すごとくの縫い代52a
9,429,439が確保されている。
該裁断布4をスリット40線上で折り畳んで重なる二重布部5の部位で、スリット両端部40e付近の筒部用布部分52aからたぐり代ゾーンZのゾーン幅Z1をそれぞれ横切る方向で縫合することで、縦孔20をつくるパッド本体2の孔壁201にあてがう筒部52が設けられる(
図6のロ)。
【0016】
より詳しくは、一枚ものの前記裁断布4をスリット40のラインCP上で折り畳んで、前面部42,後面部43が重なる二重布部5の部位で、且つスリット両端部40e近くの二重になった筒部用布部分52aの先端部位52a
1からそれぞれたぐり代ゾーンZのゾーン幅Z1を横切る方向で、筒部用布部分52aの根元部位52a
2まで縫合する。先端部位52a
1は、
図2のように筒部用布部分52aのなかでスリット40側の端縁部位で、根元部位52a
2は筒部用布部分52aのなかでスリット40から遠ざかる方の端縁部位である。二重布部5の筒部用布部分52aで、スリット両端部40e近くから、たぐり代41と前面部42,後面部43との境界域地点まで縫合することで、パッド本体2の縦孔20をつくる孔壁201にあてがう筒部52が設けられる。筒部52ができると、スリット40は縦孔20内の筒部52の上方側開口520になる。
【0017】
シート材Fから裁断布4になる際、筒部用布部分52aが
図1のごとくスリット40側の地点から前面部42,後面部43側に向けて末広がりに広がる形状に裁断される。さらに、スリットラインCP上で折り畳んで二重になった筒部用布部分52aの先端部位52a
1から根元部位52a
2へ向けて、八の字状に広がる筒部52となるよう縫合される。パッド本体2の発泡成形で、発泡型6への裏面材3のセットが容易になるからである(詳細後述)。
上記筒部52を形成する縫合と共に、前面部42と後面部43が重なり合った二重布部5の外周縁51を縫合することで、
図2に示すような所望の裏面材3が得られる。
【0018】
筒部用布部分52aの根元部位52a
2に達した縫合の縫目52Nは、二重布部5の外周縁51を縫合する縫目51Nにつながる(
図2)。こうしてできた裏面材3は、
図6,
図9のごとくパッド本体2に係る車両前方側主部21から上部22を経て後部23に至るそれら全ての裏面2bに当接できる当て部材になっている。
裏面材3の前面部42が、パッド本体2に係る車両前方側主部21の裏面2bと縦孔20が在る部位よりも車両前方側上部22の裏面2bに被着し、後面部43がパッド本体2に係る車両後方側後部23の裏面2bと縦孔20が在る部位よりも車両後方側上部22の裏面2bに被着する部分になる。側部24のパッド本体裏面2bは前面部42が担う。
【0019】
また、
図10に他態様のバックパッド用裏面材3の概略図を示す。
図10(イ)が裏面材3の裁断布4の平面図、(ロ)が(イ)の裁断布4を縫合してなる裏面材3の平面図、(ハ)が(ロ)のX-X線矢視図である。車両後部座席のバックパッド1で、パッド本体2の裏面2bに被着される裏面材3で、縦孔20の孔壁201にあてがう筒部52は三個設けられている。
他の構成は、
図1〜
図9の裏面材3と同様で、その説明を省く。
図1〜
図9と同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0020】
(2)バックパッド
バックパッド1は、パッド本体上部22に二以上のステー挿着用縦孔20を備える車両座席シートのバックパッドである。本バックパッド1は、
図2〜
図6に示した前記裏面材3と、該裏面材3の筒部52を前記孔壁201に被着させ、且つ該裏面材3の前面部42と後面部43を裏面2bに被着させて一体発泡成形されるパッド本体2と、を具備する。
【0021】
裏面材3は前述した縫製品である。シート材Fの裁断加工により、縦孔20の対応箇所にスリット40を形成し、且つスリット40の長さ方向と直交する両外方向に縦孔高さh20に合わせた幅のたぐり代ゾーンZをそれぞれ介在させて、該縦孔20が在る部位から、車両前方側の前面部42と車両後方側の後面部43とを形成した裁断布4とし、これを縫合することによって裏面材3が得られる。裁断布4をスリットラインCP上で折り重ねた二重布部5の部位で、該スリット40の両端部40e付近からたぐり代ゾーンZのゾーン幅Z1をそれぞれ横切る方向で縫合することにより、縦孔20をつくる孔壁201にあてがう筒部52が設けられた裏面材3とする。具体的には、スリット両端部40e付近の二重布部5に係る筒部用布部分52aの先端部位52a
1からゾーン幅Z1を横切るようにして縫合することにより筒部52が設けられた裏面材3にする。
【0022】
パッド本体2は、ポリウレタン材料等の発泡樹脂原料を用いて、運転席用バックパッド1の背もたれ部形状に成形された発泡成形品である(
図6,
図9)。パッド本体2は、
図6のごとく乗員の背もたれ部分の役目を果たす前方側主部21からヘッドレスト8が装着される上部22へと延びた後、その先で下方に曲がり、凹所uをつくるように後方側後部23が垂下する。前方側主部21の側縁部分はその上半部が、
図9のごとく車両後方に張り出した後、内向きに曲がって後部23とつながって凹所uを形成する。該凹所uに車体側パイプフレームを装着してパッド本体2が安定支持される。
【0023】
そして、パッド本体2の上部22にはステー装着用の縦孔20が、その発泡成形で貫通形成される。該発泡成形で、インサートされた裏面材3がパッド本体裏面2bに被着するが、スリット40が縦孔20内に在る筒部52の上方側開口520となるようにして、筒部52が縦孔20の孔壁201に被着し、パッド本体2が該裏面材3と一体発泡成形される(
図6)。
ここでの縦孔20は
図9のような四角孔であり、これに合わせて、裏面材3の筒部52も四角筒になる。
図9(ハ)のごとく、同図上側に位置する前面部42側の筒部用布部分52aをコ字形に曲げると共に、同図下側に位置する後面部43側の筒部用布部分52aをコ字形に曲げることで、パッド本体上部22の裏面2bに被着された前面部42の上部分42u,後面部43の上部分43u上に、筒部52を立設させることができる。尚、
図9(ハ)で、縦孔20の四角孔がその中心を軸に45°回転させた状態で設けられておれば、前面部42側の筒部用布部分52a,後面部43側の筒部用布部分52aをくの字状に曲げるだけで済み、より簡単に筒部52を立設できることになる。
【0024】
筒部52が、文字通り筒状体に仕上がっていることから、
図6,
図9のごとく縦孔20をつくるパッド本体2に係る孔壁201を360°周回する形で覆う。スリット40の長さ方向と直交する両外方向に縦孔高さh20に合わせたたぐり代ゾーンの幅Z1を設けて、筒部用布部分52aが形成されるので、縦孔20の高さ方向の孔壁201の略全域に筒部52があてがわれる。
【0025】
ここで、本発明者等は、本発明に到達する前に、
図11(イ)に示す裁断布4を縫合してなる
図11(ロ)の改良裏面材RNを発明した。縦孔20に対応する位置にH形スリットSLを設けた裁断布CLの外周縁を縫合し、改良裏面材RNとした。
図7,
図8の発泡型6を用いて、突出部631を該H形スリットSLに通すようにして、該裁断布CLを中型63にセットし、パッド本体2を発泡成形したが、異音対策が不十分であった。パッド本体裏面2bに
図11(ロ)の裏面材RNを被着一体化させた場合、スリットSLに囲まれた二つの舌片部THが、四方に孔壁があるうちの二箇所の壁面に当てるにとどまった。特許文献2のごとく四方に孔壁があるうちの一壁面に舌片部分をあてるしかないものに比べれば、異音対策が向上するものの、残り二つの壁面はパッド本体そのものが露出し、この部分の異音発生を抑えることができなかった。
【0026】
これに対し、本発明の裏面材3は、四角柱形の孔壁201の四壁面全てに筒部52をあて、パッド本体2の縦孔20を覆う(
図9)。縦孔20内で、縦孔20の上開口200の近傍以外にパッド本体2が露出する部分はない。本実施形態は、
図6,
図9のごとく筒部52の上方開口縁521が縦孔20の上開口200よりも縦孔20内に若干引っ込む形にしているが、パッド本体2の露出がごく僅かの範囲にとどまっており、全く問題ない。また、実際のパッド本体2は、筒部52の上方開口縁521から縦孔20の上開口200に向けて、縦孔20の口がアールをつけて広がっているので、ヘッドレストステー82,ステーホルダーHLが該パッド本体2へ直かに接触することがなく、異音対策は万全になる。符号25はパッド本体上部22に隆起形成した縦孔用隆起部分を示す。
【0027】
次に、本バックパッド1の一製造方法について述べる。
バックパッド1の製造に先立ち、
図2,
図3のような筒部52付き裏面材3を準備する。バックパッド1の製造に用いる発泡型6は、
図7,
図8ごとくの発泡型で、下型61と上型62と中型63とを備える。ヒンジ69を支点にして
図7から
図8のごとく型閉じすると、全体的に凹み度合いが大きな下型61の型面610と、中型63の型面630と,上型62との型面620とで、パッド本体2に裏面材3が一体化するバックパッド1のキャビティCをつくる。本製法では、下型61の型面610,上型62の型面620でバックパッド1の表面2a側が成形され、中型63の型面630でバックパッド1の裏面2b側が成形される。
【0028】
前記発泡型6,裏面材3を用いて、バックパッド1が例えば以下のように製造される。まず、発泡型6を型開状態とする(
図7)。次いで、この型開状態下、中型63に裏面材3をセットする。
中型63には縦孔20の形をした軸状突出部631が主部から突出するように設けられている。セータを着る時、手をセータの腕の部分に通すように、該突出部631を
図5(イ)のように筒部52に通して、
図5(ロ)のごとく中型63に裏面材3をセットする。突出部631は四角柱状にして、その根元部分が筒部52に合わせて広がる。
図7の型開状態下、
図3の状態から
図4の状態にし、裏面材3を中型63にセットする。縫製され畳まれた筒部52であっても、該筒部52は根元部位52a
2に向けて八の字状に広がる筒口になっているので、根元部位52a
2側の大きな口へ突出部631が難なく入り込む。筒部52は突出部631を覆って取巻く四角筒状になる。
図4の円内拡大図のごとく、突出部631が筒部52の上方側開口縁521よりも僅かに突き出る。
尚、図示を省略するが、裏面材3の適宜箇所にフェライト製テープ片を貼着すると共に、該テープ片に対応する中型63の型面630に永久磁石を露出させて、その磁力吸着で、裏面材3を中型63の型面630に確実にセットする。
【0029】
次いで、型開状態のまま発泡原料gを所定量注入し(
図7)、その後、型閉じする。上型62,下型61,中型63の型閉じで、裏面材3がインサートされたバックパッド1のキャビティCができる(
図8)。と同時に、突出部631の先端が下型61の隆起部分611に当接し、縦孔20を形成する準備を整える。図中、符合619,629,639は型合せ面、符号67は支持バー、符号68はアーム,符号68aはフックを示す。
【0030】
前記型閉じの後、パッド本体2の発泡成形に移る。型閉じ状態を所定時間維持し、
図6,
図9ごとくのパッド本体2を、その裏面2b側に裏面材3が被着一体化するように発泡成形する。かくして、該パッド本体2と裏面材3が一体のバックパッド1が造られる。
四角柱状の突出部631を筒部52が取巻くようにして、裏面材3を中型63にセットしているので、縦孔20をつくるパッド本体孔壁201を周回する全ての壁面に、筒状形成された筒部52が被着一体化した所望のバックパッド1が出来上がる。
該バックパッド1に図示しない表皮を被せると、車両用座席シートの背もたれ用バックレストになる。
【0031】
(3)効果
このように構成したバックパッド及びバックパッド用裏面材3は、特許文献1のような成形フェルト等の成形補強布の熱成形に頼らずに、二次元形状のシート材Fを裁断,縫製してできた裏面材とするので、特に、立体形状が比較的単純なバックパッド1において、低コスト生産でき、極めて有益である。
そして、縫製裏面材3といっても、特許文献2の裏面材3と違って、縦孔20に係る孔壁201を360°周回する形で裏面材3の筒部52が覆い、且つ筒部52が孔壁201に被着する格好で、パッド本体2に裏面材3が一体化したバックパッド1が出来上がるので、異音発生を確実に抑えることができる。
特許文献2のコ字状に切り抜いた舌片部分が孔壁の四方あるうちの一壁面しか当てがわれなかったり、
図11の裏面材3のごとく孔壁の四方あるうちの二壁面しかあてがわれなかったりするケースと違って、本裏面材3は筒部52で孔壁201の四方あるうちの四方の周壁面全てをあてがい、覆い尽くすので、異音対策が磐石となる。車両走行や乗員の動きに伴って縦孔20周りで発生していた擦れ音を完全防止できる。
【0032】
また、シート材Fの裁断加工により、縦孔20の各対応位置にスリット40を形成すると共に、スリット40の長さ方向と直交する両外方向に、縦孔高さh20に合わせた幅をもつたぐり代ゾーンZをそれぞれ介在させて、該縦孔20が在る部位よりも車両前方側の前面部42と、該縦孔20が在る部位よりも車両後方側の後面部43と、を形成した一枚ものの裁断布4を縫合して裏面材3が仕上がるので、複数の裁断片を縫合する場合と違って、縫合作業もいたって容易になる。複数ある裁断片を裁断し、さらに各裁断片から縫合する個々の裁断片を選び取ったり、それら裁断片同士の向きを合わせ、調整したりする作業負担がない。複数ある裁断片のそれぞれの在庫管理の労力負担からも免れる。
このように、本裏面材3は一枚ものの裁断布4を縫製したもので、一層の低コスト化が図られ、且つ縫製作業も円滑に進む。また、裁断布4の両スリット40間のたぐり代ゾーンZ内に、両スリット40を結ぶ線状ラインCPを軸に線対称となるくり抜き孔44が形成されると、筒部用布部分52aの裁断に合わせ、両スリット40間に在る裏面材3の外周縁形状をパッド本体裏面2bの対応箇所に適合させて、一回の裁断加工で同時加工できるようになり、労力負担軽減にもつながる。
【0033】
さらに、二次元形状のシート材Fを用いることから、縦孔20の孔壁周囲を覆う立体的な筒部52を一枚の裁断布4からなる裏面材3で簡便形成するのは、従来困難視されてきたが、スリット長さ方向と直交する両外方向に、たぐり代ゾーンZをそれぞれ介在させて、前面部42と後面部43とを形成し、このたぐり代ゾーンZに筒部用布部分52aを確保することで、これを難なく解決する。
二次元シート材Fを用いても、たぐり代ゾーンZの布地をたぐってスリット40線上で折り重ね、二重布部5とすれば筒部用布部分52aが備わり、該筒部用布部分52aで、前面部42の上部分42u,後面部43の上部分43u上に、異音防止に威力を発揮する筒状三次元化した筒部52を延在させ、且つこれを容易に起立形成できる。
【0034】
しかも、裏面材3に筒部52を形成するにあたって、裁断布4をスリットラインCP上で折り畳めば、二重布部5の部位で筒部用布部分52aが即用意される。スリット40のライン上で折り畳み、後は、その状態のまま、筒部52の形状になるよう筒部用布部分52aを縫合すれば、縦孔20をつくる孔壁201にあてがう筒部52が在る裏面材3に仕上がる。加えて、裁断布4をスリットラインCP上で折り畳めば、スリット40がそのまま縦孔20の上方側開口になるので、これが目安になって、筒部52の縫合形成も非常に楽になる。
【0035】
さらにいえば、スリット40のライン上で折り畳んだ二重布部5の部分で、二重になった筒部用布部分52aの先端部位52a
1から根元部位52a
2へ向けて縫合して、八の字状に広がる筒部52にすると、発泡型6への裏面材3のセットが容易になる。筒部52のラッパ状に広がる筒部52の根元部分の口へ中型63の突出部631を円滑挿入させることができる。また、縫合して八の字状に広がる筒部52にすると、筒部52周りの前面部42,後面部43に対し、該筒部52を起立させ易くなるなど、数々の優れた効果を発揮する。
【0036】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。バックパッド1,パッド本体2,縦孔20,裏面材3,裁断布4,二重布部5等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。