(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092047
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】ガスタービンのシーケンシャル燃焼式システムにおいて希釈空気を混合するための方法
(51)【国際特許分類】
F23R 3/26 20060101AFI20170227BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20170227BHJP
F23R 3/28 20060101ALI20170227BHJP
F23R 3/48 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
F23R3/26 Z
F02C7/22 C
F23R3/28 D
F23R3/48
【請求項の数】13
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-174435(P2013-174435)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2014-44045(P2014-44045A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2014年1月7日
【審判番号】不服2016-3685(P2016-3685/J1)
【審判請求日】2016年3月9日
(31)【優先権主張番号】12181748.0
(32)【優先日】2012年8月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ ルーベン ボティエン
【合議体】
【審判長】
中村 達之
【審判官】
松下 聡
【審判官】
三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】
特開平7−71759(JP,A)
【文献】
特開平1−203809(JP,A)
【文献】
特開2008−96099(JP,A)
【文献】
米国特許第5163284(US,A)
【文献】
英国特許出願公告第899213(GB,A)
【文献】
特開平6−323160(JP,A)
【文献】
特開平8−114307(JP,A)
【文献】
特開2003−65537(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R3/26
F23R3/28
F23R3/48
F02C7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンのシーケンシャル燃焼式システムにおいて、高温ガスのメインフローと希釈空気とを混合するための方法において、
前記ガスタービンは、少なくとも一つの圧縮機と、該圧縮機の下流側に接続されている第1の燃焼器とを含み、
前記第1の燃焼器の高温ガスを少なくとも一つの中間タービンに流入させるか、又は、直接的若しくは間接的に少なくとも一つの第2の燃焼器に流入させ、
前記第2の燃焼器の高温ガスを別のタービンに流入させるか、又は、直接的若しくは間接的にエネルギ回復部に流入させ、
少なくとも一つの燃焼器を、筒形構造を有する熱燃焼経路の下で運転させ、
希釈空気を少なくとも1回前記第1の燃焼器に注入し、
前記希釈空気の注入により生じる渦フローを、前記第1の燃焼器内の高温ガスの本来の渦フローの方向とは逆方向に方向付けるか、又は同じ方向に方向付けることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1の燃焼器及び前記第2の燃焼器を、筒形構造を有する熱燃焼経路の下で運転させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の燃焼器を、環状構造を有する熱燃焼経路の下で運転させ、且つ、前記第2の燃焼器を、筒形構造を有する熱燃焼経路の下で運転させる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の燃焼器を、筒形構造を有する熱燃焼経路の下で運転させ、且つ、前記第2の燃焼器を、環状構造を有する熱燃焼経路の下で運転させる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも一つの燃焼器を、環状構造を有する熱燃焼経路の下で運転させる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ガスタービンのシーケンシャル燃焼式システムにおいて、高温ガスのメインフローと希釈用空気とを混合するための方法を実施する希釈空気インジェクタにおいて、
前記ガスタービンは、少なくとも一つの圧縮機と、該圧縮機の下流側に接続されている第1の燃焼器とを含み、
前記第1の燃焼器の高温ガスは少なくとも一つの中間タービンに流入されるか、又は、直接的若しくは間接的に少なくとも一つの第2の燃焼器に流入され、
前記第2の燃焼器の高温ガスは別のタービンに流入されるか、又は、直接的若しくは間接的にエネルギ回復部に流入され、
少なくとも一つの燃焼器が、筒形構造を有する熱燃焼経路の下で運転され、
前記第1の燃焼器は、該第1の燃焼器内の高温ガスの本来の渦フローの方向とは逆方向に方向付けられているか、又は同じ方向に方向付けられている渦フローを形成する、接線方向における空気入口スロットを含む、ことを特徴とする、希釈空気インジェクタ。
【請求項7】
前記第1の燃焼器は、環状構造を有する熱燃焼経路の下で運転され、且つ、前記第2の燃焼器は、筒形構造を有する熱燃焼経路の下で運転される、請求項6に記載の希釈空気インジェクタ。
【請求項8】
前記第1の燃焼器は、筒形構造を有する熱燃焼経路の下で運転され、且つ、前記第2の燃焼器は、環状構造を有する熱燃焼経路の下で運転される、請求項6に記載の希釈空気インジェクタ。
【請求項9】
少なくとも一つの燃焼器は、環状構造を有する熱燃焼経路の下で運転される、請求項6に記載の希釈空気インジェクタ。
【請求項10】
前記第1の燃焼器は少なくとも一つのインジェクタを含み、第1の燃焼室に沿って注入される空気の方向及び/又は強さが制御される、請求項6乃至9のいずれか一項に記載の希釈空気インジェクタ。
【請求項11】
前記インジェクタは、選択された希釈空気注入の強さを制御する手段か、又は、希釈空気を付加的に支援する手段を含む、請求項6乃至10のいずれか一項に記載の希釈空気インジェクタ。
【請求項12】
請求項6乃至11のいずれか一項に記載の希釈空気インジェクタを有する燃焼器であって、
少なくとも一つの燃焼器が、接線方向の空気入口スロット並びに気体及び液体の燃料用の供給チャネルを有する、完全なボディの一部を成す中空の部分円錐体から構成されているバーナを含み、
前記中空の部分円錐体の中心軸は、フローの方向において大きくなる円錐角を有し、且つ、縦方向において相互にずらされて延びており、
燃料注入部が前記部分円錐体の相互にずらされた中心軸の接続線の中間に位置している燃料ノズルは、前記部分円錐体によって形成される円錐内部においてバーナヘッドに配置されている、燃焼器。
【請求項13】
請求項6乃至11のいずれか一項に記載の希釈空気インジェクタを有する燃焼器であって、
少なくとも一つの燃焼器が、燃焼空気フローのためのバーナと、渦発生器を有する燃料注入手段と含み、前記バーナは、接線方向の空気入口スロット並びに気体及び液体の燃料用の供給チャネルを有する、完全なボディの一部を成す中空の部分円錐体を備えており、
前記中空の部分円錐体の中心軸は、フローの方向において大きくなる円錐角を有し、且つ、縦方向において相互にずらされて延びており、
燃料注入部が前記部分円錐体の相互にずらされた中心軸の接続線の中間に位置している燃料ノズルは、前記部分円錐体によって形成される円錐内部においてバーナヘッドに配置されており、
前記燃焼器は、更に、前記渦発生器の下流側に設けられている混合経路を含み、該混合経路は移行管を含み、該移行管は、前記渦発生器において形成されたフローを、前記移行管の下流側に接続される前記混合経路のフローのクロスセクションへと伝達するために、フロー方向において経路の第1の部分内に延在している、燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンのシーケンシャル燃焼式システムにおいて希釈空気を混合するための方法に関する。また本発明は、上述の方法を実施するための希釈空気インジェクタに関する。更に本発明は、筒形燃焼器並びに環状燃焼器の設計に関する、ガスタービン又は「CPSC(Constant Pressure Sequential Combustion)」における、信頼性が高い一様なやり方での高温のメインフローと希釈空気の混合に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明がより良く理解されるよう、先ず幾つかの一般的な問題を説明する。
【0003】
環境保護を目的として、ガスタービン機関のCOエミッションを削減することが必要とされる。そのようなCOエミッションは、燃焼室においてCOのCO
2への酸化を保証するには十分な時間がないとき、及び/又は、燃焼室内の冷たい領域との接触に起因してこの酸化処理が局所的に急冷されるときに発生することが知られている。入口温度は部分負荷条件下では低くなり、またCOからCO
2への酸化が緩慢になるので、従って通常の場合は、それらの条件下ではCOエミッションが増加する傾向にある。
【0004】
COエミッションを削減するために、ガスタービンの待機点(parking point)におけるガスタービン負荷を低減することが試みられる。これにより、CO
2エミッションも削減されることから環境への影響も低減され、また機関待機中の燃料消費量も低下することから全体的な電気コストも低下する。最終的に、COエミッションの削減によりCO触媒が節約されるので、それにより原価も下がる。この場合、CO触媒を設けることを回避できる可能性もある(若しくは、少なくとも低減することができる)。それと同時に、触媒に起因して発生する損失も解消されることになり(若しくは、少なくとも低減されることになり)、それによって発電所の全体の効率が向上する。
【0005】
US 2012/0017601 A1によれば、この技術水準の基礎は、第2の燃焼器の作動中のバーナの空気比λを部分負荷運転中の最大空気比λ
max以下に維持する、ガスタービンの運転方法である。この方法は、本質的に三つの新規な要素、即ち個々に又は組み合わせて実施することができる補足的な手段を特徴としている。
【0006】
ここで最大空気比λ
maxは、考察すべきCOエミッション制限、バーナ及び燃焼器の設計、並びに、動作条件、即ち、特にバーナ内部温度に依存する。
【0007】
第1の要素は、調節可能な圧縮機案内羽根列の運転形式における変更であり、この変更によって、第2の燃焼器をより高い部分負荷の場合に初めて運転することが可能となる。アイドリング運転から出発して、単に第1の燃焼器だけが運転されている間に、調節可能な圧縮機案内羽根列が既に開放される。これによって、第2の燃焼器を運転することが必要となる前に、より高い相対的な負荷への負荷増加が可能となる。調節可能な圧縮機案内羽根列が開放されていて、高圧タービンの高温ガス温度又はタービン入口温度が限界値に達した場合に、第2の燃焼器に燃料が供給される。
【0008】
引き続き、調節可能な圧縮機案内羽根列が迅速に閉鎖される。この調節可能な圧縮機案内羽根列が高圧タービンのコンスタントなタービン入口温度TITのまま閉鎖されることは、対抗策がないと、相対的な出力の著しい低下に繋がる恐れがある。
【0009】
この出力低下を回避するためには、第2の燃焼器内に導入される燃料質量流量が増加させられるようになっている。これによって、第2の燃焼器を運転する場合の最小の負荷と、第2の燃焼器内への最小の燃料流量とが著しく増加させられる。
【0010】
これによって、第2の燃焼器の最小の高温ガス温度が上昇させられ、空気比λが減少させられ、ひいては、COエミッションが削減される。
【0011】
空気比λを減少させるための第2の要素は、部分負荷運転中の高圧タービンのタービン出口温度TAT1及び/又は低圧タービンのタービン出口温度TAT2の上昇による運転形式における変更である。この上昇によって、調節可能な圧縮機案内羽根列の開放をより高い負荷点にシフトすることが可能となる。
【0012】
従来、第2のタービンの最大のタービン出口温度は全負荷に対して規定されており、この温度に相応して、ガスタービンと、場合により、後置された排熱回収ボイラとが設計されている。これによって、閉鎖された調節可能な圧縮機案内羽根列での部分負荷運転時には、第2のタービンの最大の高温ガス温度が、第2のタービンのタービン入口温度TIT2によって制限されるのではなく、第2のタービンのタービン出口温度TAT2によって制限されている。閉鎖された少なくとも1つの調節可能な圧縮機案内羽根列での部分負荷時には、タービンに関する質量流量ひいては圧力比が減少させられるので、タービン出口温度に対するタービン入口温度の比も減少させられる。
【0013】
相応して、コンスタントなタービン出口温度TAT2においてタービン入口温度TIT2も低下させられ、たいてい全負荷値を著しく下回っている。全負荷限界値を超える、典型的には、10℃〜30℃のオーダ内でのタービン出口温度TAT2の提案された僅かな上昇は、確かに、タービン入口温度TIT2の上昇に繋がるものの、この上昇は全負荷値未満に保たれ、実際には寿命損失なしに又は著しい寿命損失なしに実現することができる。設計又は材料選択における適合は不要となるか、又は、典型的には、排ガス側に制限することができる。タービン入口温度TIT2を上昇させるためには、高温ガス温度が上昇させられる。このことは、燃料質量流量の増加と、これに相俟った空気比λの減少とによって実現される。相応して、COエミッションが削減される。
【0014】
運転中のバーナの空気比λを減少させるための更なる可能性は、コンスタントなタービン入口温度TIT2での個々のバーナの停止および燃料の分配変更である。
【0015】
タービン入口温度TIT2を平均的にコンスタントに保つためには、運転中のバーナが、停止されたバーナの個数に相応して、より高温で運転されなければならない。このためには、燃料供給が増加させられ、ひいては、局所的な空気比λが減少させられる。
【0016】
COエミッションに対して最適化された運転のためには、分離線を備えたガスタービンにおいて、典型的には、まず、分離線に隣接した(例えば第2の燃焼器のための)バーナが停止される。なお分離線とは、典型的には、ハウジングを上側の半部と下側の半部とに分割する平面のことである。各ハウジング半部は分離線において、例えばフランジで結合されている。
【0017】
その結果、この隣接する複数のバーナが停止されるか、又は燃焼器の反対の側で分離平面に隣接した1つのバーナが停止され、それにより、分離平面から出発して燃焼器の両側で隣接する複数のバーナが常に交互に順次停止される。
【0018】
ガスタービンの分離線は、典型的には、絶対的に密でなく、たいてい、漏れ流によって、燃焼ガスの僅かな冷却及び希釈(下記を参照されたい)、ひいては局所的に高まったCOエミッションが生じるので、有利には、まず、分離線に隣接した1つのバーナが停止される。分離平面に隣接したバーナの停止によって、局所的なCOエミッションが回避される。
【0019】
ステージングによって回避したい燃焼不安定性は、通常、低い負荷時にはもはや生じないか、又は無視することができるほど小さいか、又は部分負荷時には生じない。従って、一つの実施例では、制限を、不動のオリフィス絞りによって実施するのではなく、少なくとも一つの調整弁によって実施することが提案される。この少なくとも1つの調整弁は、低い負荷の場合、運転中の全てのバーナを、いわば均質に低い空気比λで運転することができるように開放される。高い負荷の場合には、少なくとも一つの調整弁が絞られ、これによって、ステージングが実現される。
【0020】
COエミッションに対して最適化された運転のための上述の態様を参照すると、また、現行の措置との関連において、再熱燃焼器からの冷却空気及び予混合燃焼器からの他の残余空気、又はプレナムからの新鮮な空気が希釈空気としてメインの高温ガスフローに供給される。
【0021】
それらの問題を解決するための既存の解決手段では、副次的な媒体が渦を伴わずに注入されている。バーナは付加的に、メインフローの渦を最小にするために、逆向きの渦を発生させる。
【0022】
従って技術的な問題は、高温ガス生成物と新鮮な希釈空気とを高速且つ良好に混合し、再加熱バーナの上流側の均一な入口温度及びフローフィールドを得ることである。また、メインフローの渦の制御は必須である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】US 2012/0017601 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明が基礎とする課題は、希釈空気を渦状に注入することにより、希釈空気と第1段燃焼器の高温燃焼生成物との混合を改善するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
既存の渦フローを拡大するために、メイン渦フローの方向への注入を行うことによって、又はそれとは反対に、既存の渦フローの積分を抑制するために、若しくは、種々のステージ又はレベルにおいて既存の渦フローを抑制するために、メイン渦フローの方向とは反対方向への注入を行うことによって、既存のメイン渦フローが制御される。
【0026】
更に本発明は、例えば、定圧シーケンシャル燃焼式システムのコンセプトを基礎としている。このコンセプトにおいては、予混合燃焼器に由来する高圧燃焼生成物が、希釈空気の導入によって冷却され、またそれに続いて再熱燃焼器へと流入する。
【0027】
希釈空気によって、予混合及び再熱冷却空気と、予混合燃焼器に由来する高温燃焼生成物とが混合される。その種の希釈空気の主たる要求は、再熱バーナの入口における均一な温度分布、並びに性能的な理由による低い圧力損失である。
【0028】
従って、上記において述べたガスタービン燃焼器においては、メインフローが通常の場合、渦状のフローパターンを示す。環状燃焼室においては、これは全てのバーナが同一方向に渦状フローを発生させることに起因していると考えられる。筒形燃焼器においては、通常の場合、燃料を注入するため、また空気を燃焼室内に供給するために、二つ以上のバーナノズルが使用される。これによってもやはり平均流量のメイン渦フローが生じる。
【0029】
この渦状フローの下流側において、空気又は燃料が注入され、更には希釈空気も注入される場合、この難題は、高温ガスとの可能な限り高速で良好な混合を達成することを本質とする。このことは、再熱バーナの入口における均一な温度及びフロープロフィールを達成するためには非常に重要である。
【0030】
その意味において本発明は、筒形燃焼器並びに環状燃焼器の設計に関する、信頼性が高い一様なやり方での、定圧シーケンシャル燃焼式システムにおける高温メインフローと希釈空気の混合に関する。
【0031】
下記においては、付加的に、希釈空気を渦状に注入することによる、第1の燃焼器の内部における希釈空気と高温燃焼生成物との混合に関するプロシージャと、更には、メイン渦フローの方向における注入による既存のメイン渦フローの制御、また最終的には、既存のメイン渦フローの種々のステージでの拡大又は抑制を詳細に説明する。
【0032】
その種のガスタービンの一般的な略図が
図1から
図3、特に
図1に示されている。
【0033】
それらの図においては、圧縮機の後段に、複数の筒から構成することができる燃焼器セクションが設けられている。それら複数の筒の内部において、第1の燃焼器の後段に第2の燃焼器が設けられている。それら二つの燃焼器の間において、又はそれら二つの燃焼器の中間において、希釈空気を注入し、第2の燃焼器の入口温度、従って、第2の燃焼器に注入される燃料の自然点火時間を制御することができる。最終的に、高温燃焼ガスがタービンに供給される。
【0034】
環状の第1の燃焼室及び/又は環状の第2の燃焼室が、フロー方向における各バーナに対して、隣接する燃焼領域又はバーナから相互に壁によって離隔されている独立した筒又は別個のフロー燃焼領域を有しているか、又は含んでいる場合には、筒形構造も得られる。
【0035】
本発明の基本的な着想は以下の二つの基本的なコンセプトを基礎としている:
1.ガスタービンは、メイン渦フローの方向とは逆方向に希釈空気が注入される、直列の二つの燃焼器を備えている。
2.ガスタービンは、メイン渦フローの方向に希釈空気が注入される、直列の二つの燃焼器を備えている。
【0036】
希釈空気を所期のように渦状に注入することによって、以下の目的を達成することができる:
1.希釈空気と第1のバーナに由来する高温ガスの混合の向上。
2.メイン渦フロー方向とは逆方向における希釈空気の注入によるメインフローの渦の積分の抑制、又は部分的な抑制。
3.メイン渦フローの方向における希釈空気の注入によるメインフローの渦の拡大。
【0037】
本発明に関する利点は以下の通りである:
−第1の燃焼器に由来する高温ガスと希釈空気のより良好でより高速な混合。
−再熱燃焼器の吸気プロフィールと関連させたメインフローの渦の制御。
−メインフローに対する特徴的な渦の発生、及び、第1のバーナの下流側への空気の注入を含む、あらゆるコンセプトのガスタービンへの実行可能な適用。
【0038】
この最後の目的を保証するために、ガスタービンの種々のコンポーネントの幾何学形状及び/又はフローレートが測定され、高いフローレートを有するコンポーネント及び低いフローレートを有するコンポーネントが筒形燃焼室又は環状燃焼室の内部において組み合わされる。
【0039】
ガスタービンは実質的に、少なくとも一つの圧縮機と、この圧縮機の下流側に接続されている第1の燃焼器とを含んでいる。第1の燃焼器の高温ガスは少なくとも中間タービンに流入するか、又は、直接的若しくは間接的に第2の燃焼器に流入する。第2の燃焼器の高温ガスは別のタービンに流入するか、又は、直接的若しくは間接的に、エネルギ回復ジェネレータ、例えばスチームジェネレータに流入する。
【0040】
本発明に関する更なる利点は以下の通りである:
−燃焼器圧力の総損失の低下。従って、熱力学的効率が向上する。
−希釈空気の注入部の簡潔な設計。
−再熱バーナ入口における画一的な温度分布。従って、均一な燃焼プロセスは燃焼器内の脈動に影響を及ぼすことができ、また、再熱バーナのCO生成の過比例的な増加に影響を及ぼすことができる。
−局所的な逆流又は過熱が生じない、信頼性の高い運転。
【0041】
この結果、本発明のコンセプトは、筒形構造における(高圧タービンを用いる、又は用いない)シーケンシャル式燃焼のもとで動作する機関に関して(但し、この用途に限定されるものではない)機能することが期待される。
【0042】
シーケンシャル式燃焼に関して、燃焼器における燃焼を以下のように処理することができる:
−少なくとも一つの燃焼器が、運転している少なくとも一つのタービンを有する、筒形構造として形成されている。
−第1の燃焼器及び第2の燃焼器の両燃焼器が、運転している少なくとも一つのタービンを有する、シーケンシャルな筒−筒形構造として形成されている。
−第1の燃焼器が環状燃焼室として形成されており、また第2の燃焼器が、運転している少なくとも一つのタービンを有する、筒形構造として形成されている。
−第1の燃焼器が筒形構造として形成されており、第2の燃焼器が、運転している少なくとも一つのタービンを有する、環状燃焼室として形成されている。
−第1の燃焼器及び第2の燃焼器の両燃焼器が、運転している少なくとも一つのタービンを有する、環状燃焼室として形成されている。
−第1の燃焼器及び第2の燃焼器の両燃焼器が、運転している中間タービンを有する、環状燃焼室として形成されている。
【0043】
従って、筒形構造に対する渦フローを用いる希釈空気の注入に関して、個々の筒間の相互作用は最小になるか、又はその種の相互作用はそもそも存在しない。つまり、筒形の変形形態に関して、上述のコンセプトは環状機関構造に比べてより効果的に機能する。
【0044】
上記の方法以外に、この方法を実施するためのガスタービンも本発明の対象である。希釈空気を注入するというコンセプトに応じて、局所的な燃焼器圧力損失を低減するために使用される希釈空気に依存する実現可能性が保証されるよう、ガスタービンの設計が適合されなければならない、及び/又は、燃料分配システム及び/又は空冷システムが適合されなければならない。ガスタービンの上記の全てのコンセプトは許容公差範囲内にある。それらの公差により、各コンポーネントに関して、また希釈空気の注入に使用されるコンセプトに関して、幾何学形状及び特性の僅かな差異が発生する。
【0045】
これにより特に、運転中に種々の圧力損失及びフローレートが生じる。この公差は、通常運転中、特に高部分負荷及び全負荷時に、運転挙動に依存する影響を受けないように選択される。このために、希釈空気の種々の注入の幾何学形状及び/又はフローレートが、動作希釈空気渦と関連させて測定される。
【0046】
本発明に関する更なる利点は以下の通りである:
COエミッションが特に比較的低い部分負荷条件において削減される。従って、ガスタービンをそのような期間中に比較的低い値に維持することができる。
−これによって、発電所のオペレータは燃料を節約し、従って、全体的な電気コストを削減することができる。
−削減されたCOエミッション、より低い待機点(従って、より少ない燃料消費量及びCO
2生成)、又は、それら両利点の組み合わせによる環境的な利点が得られる。
−高価なCO触媒を不要にすることができる。従って、原価が下がる。
【0047】
運転している後続の燃焼器間の希釈空気渦を含むセットアップが使用される場合には、更なる利点が得られる:
−第1の燃焼器内の種を用いるCO酸化に関して増大した体積に起因する、上述の全ての利点を伴う、COの更なる削減。
−種々の筒形燃焼器間の周囲温度勾配の低下。従って、タービン入口プロフィールは改善され、またタービン部品の寿命も改善される。
【0048】
本発明の複数の実施例を、
図1から
図3(1,2,2a,2b,3,3a,3b)に概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】シーケンシャル式燃焼部を形成する、直列に接続された二つの燃焼器を備えているガスタービンを示す。
【
図2】直列に接続された二つの燃焼器と、希釈空気注入部を備えているガスタービンを示す。
【
図3】直列に接続された二つの燃焼器と、希釈空気注入部を備えているガスタービンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1,
図2及び
図3には、ガスタービン群100,200,300の一部、即ち、「CPSC(Constant Pressure Sequential Combustion)」システムと称されるシーケンシャル式燃焼部を含む部分が示されている。
【0051】
圧縮空気が、圧縮器システム(図示せず)から予混合バーナ101へと流入する。この予混合バーナ101は燃料によって運転される。高温ガスの初期生成は、筒形燃焼室(
図1a,2a,3aを参照されたい)又は環状燃焼室(
図1b,2b,3bを参照されたい)として設計されている第1の燃焼室102において行われる。高温ガスの後続の生成は、筒形燃焼室(
図1a,2a,3aを参照されたい)又は環状燃焼室(
図1b,2b,3bを参照されたい)として設計されている第2の燃焼室104において行われる。典型的には、ガスタービンシステムはジェネレータ(図示せず)を含み、このジェネレータはガスタービンのコールドエンド、即ち圧縮機において、ガスタービン軸と接続されている。
【0052】
従って、
図1,
図2,及び
図3には、本発明による方法を実施するためのシーケンシャル式燃焼部を備えているガスタービンシステムが示されている。ガスタービンシステムは、圧縮機(図示せず)と、第1の燃焼器102と、再熱バーナを備えている第2の燃焼器104と、第2の燃焼器104の下流側に設けられているタービン(106、図示せず)とを含む。
【0053】
図1には、例えばEP 0 321 809 A1又はEP 0 704 657 A1に開示されているような、予混合バーナ101を有する第1の燃焼室102が示されている。これらの刊行物は本発明の必須部分を成すものである。筒形燃焼室又は環状燃焼室として設計されている第1の燃焼室102において生成された高温ガス103は第2の燃焼室104へと流れる。第2の燃焼室104は実質的に筒形(
図1aを参照されたい)又は環状(
図1bを参照されたい)の管路の形態を有しており、この管路を通ってフローが発生し、また有利にはこの管路に気体燃料(図示せず)が注入される。注入された燃料の自然点火は、少なくとも850℃の第1の燃焼室102から到来する排気ガスの温度で開始される。
【0054】
第2の燃焼室104は、例えばEP 0 620 362 A1に開示されているようなバーナ105と、予混合ゾーンの端部におおよそ設けられている複数の燃料ランスとを有している。それらの燃料ランスは周縁にわたり分散されて配置されており、また燃料を注入する機能を担う。ジェネレータを含むガスタービン群の全体の構成は、単一の共通ロータ軸に設けられている。
【0055】
筒形構造は、タービン軸(
図1aを参照されたい)の円周まわりに環状アレイに配置されている複数の筒を含み、これにより、各筒の独立した燃焼運転が実現され、また、燃焼プロセス中の個々の筒相互間の有害な相互作用は発生しなくなる。
【0056】
筒形の燃焼コンセプト又は環状の燃焼コンセプトのために複数の予混合バーナ101が設けられている場合、それらの予混合バーナは有利には、刊行物EP 0 321 809 A1及び/又はEP 0 704 657 A2に開示されている燃焼プロセス及び対象によって形成されることが望ましい。これらの刊行物は本発明の必須部分を成すものである。
【0057】
特に、前述の予混合バーナ101を、あらゆる種類の液体燃料及び/又は気体燃料でもって運転させることができる。従って、個々の筒内に異なる燃料を供給することも簡単に実現できる。
【0058】
このことは、予混合バーナを同時に異なる燃料で運転できることも意味している。
【0059】
第2の又は後続の筒形燃焼器若しくは環状燃焼器は有利には、EP 0 620 362 A1又はDE 103 12 971 A1に応じて実施される。それらの刊行物は本発明の必須部分を成すものである。
【0060】
更に、以下に挙げる刊行物も本発明の必須部分を成すものである。
【0061】
−EP 0 321 809 A1及びB1は、接線方向の空気入口スロット並びに気体及び液体の燃料用の供給チャネルを有している、完全なボディの一部を成す中空の部分円錐体から成るバーナに関する。中空の部分円錐体の中心軸は、フローの方向において大きくなる円錐角を有しており、また縦方向において相互にずらされて延びている。部分円錐体の相互にずらされた中心軸の接続線の中間に位置する燃料ノズルは、部分円錐体によって形成される円錐内部においてバーナヘッドに配置される。
【0062】
−EP 0 704 657 A2及びB1は、燃焼空気フローのための渦発生器から実質的に構成されており、また実質的にEP 0 321 809 A1及びBに開示されている、熱発生器のためのバーナ装置及び燃料の注入手段、並びに、渦発生器の下流側に設けられている混合経路に関する。前述の混合経路は移行管を含み、この移行管は、前述の渦発生器において形成されたフローを、伝達管の下流側に接続される混合経路のフローのクロスセクションへと伝達するために、フロー方向において経路の第1の部分内に延在している。
【0063】
更には、所定の滞留時間にわたり燃料空気混合を改善するために、燃料の自然点火を利用する、ガスタービン再熱燃焼器に使用される燃料インジェクタが提案される。このインジェクタの複数の特別な実施の形態が考えられる:
−振動気体燃料が、クロスフロー構成の意味において、酸化体のフローに垂直に注入される。
−振動気体燃料が、インライン構成の意味において、酸化体のフローに平行に注入される。
−振動気体燃料が、酸化体のフローに対して0°から90°の間の角度で斜め注入される。
【0064】
−EP 0 646 705 A1及びB1は、シーケンシャル式燃焼部を備えているガスタービン群における部分負荷運転を確立する方法に関する。
【0065】
−EP 0 646 704 A1及びB1は、二つの燃焼室が設けられている、ガスタービンプラントを制御するための方法に関する。
【0066】
−EP 0 718 470 A2及びB1は、部分負荷運転時の、二つの燃焼室が設けられているガスタービン群の運転方法に関する。
【0067】
上記刊行物の内の一つ又は複数の改善形態を含む他の関連刊行物も本発明の必須部分を成すものである。
【0068】
シーケンシャル式燃焼部に関しては、燃焼器の燃焼を以下のように処理することができる:
少なくとも一つの燃焼器は、運転している少なくとも一つのタービンを有する、筒形構造として形成されている。
−第1の燃焼器及び第2の燃焼器の両燃焼器が、運転している少なくとも一つのタービンを有する、シーケンシャルな筒−筒形構造として構成されている。
−第1の燃焼器が環状燃焼室として形成されており、また第2の燃焼器が、運転している少なくとも一つのタービンを有する、筒形構造として形成されている。
−第1の燃焼器が筒形構造として形成されており、第2の燃焼器が、運転している少なくとも一つのタービンを有する、環状燃焼室として形成されている。
−第1の燃焼器及び第2の燃焼器の両燃焼器が、運転している少なくとも一つのタービンを有する、環状燃焼室として形成されている。
−第1の燃焼器及び第2の燃焼器の両燃焼器が、運転している中間タービンを有する、環状燃焼室として形成されている。
【0069】
筒形燃焼室120又は環状燃焼室130に関するいずれの場合も、方位角方向のメインフロー121,131は各システムにおいて一体的である。
【0070】
図2には、
図1のガスタービンに対応するガスタービンが示されており、このガスタービンは、第1のバーナシステム101の下流側且つ第2のバーナシステム105の上流側の適切な箇所に設けられている、少なくとも一つの希釈空気注入部201を備えている第1の燃焼室102と、第2のバーナシステム105の下流側に設けられている第2の燃焼室104とを有している。第1の燃焼室102に沿った種々の箇所において、希釈空気を更に注入することも可能である。更には、第1の燃焼室102に沿った単一の箇所において注入される空気の方向及び強さを制御することもできる。
【0071】
図2aには、第1のバーナ101の運転に由来する本来のメイン渦フロー221の所定の方向とは逆方向の渦フロー223を形成する、接線方向における入口スロット222を有している筒形燃焼器220が示されている。この入口スロット222に由来する空気の衝撃に基づき、第1のバーナに由来する既存の渦フローの強さを、選択された希釈空気注入222の強さに応じて低減することができるか、又は完全に抑制することができる。
図2aには、強さの低減された、合成メイン渦フロー224が示されている。
【0072】
図2bには、第1のバーナ101の運転に由来する本来のメイン渦フロー231の所定の方向とは逆方向の渦フロー233を形成する、接線方向における入口スロット232を有している環状燃焼器230が示されている。この入口スロット232に由来する空気の衝撃に基づき、第1のバーナに由来する既存の渦フローの強さを、選択された希釈空気注入232の強さに応じて低減することができるか、又は完全に抑制することができる。
図2bには、強さの低減された、合成メイン渦フロー234が示されている。
【0073】
図3には、
図2のガスタービンに対応するガスタービンが示されており、このガスタービンは、第1のバーナシステム101の下流側且つ第2のバーナシステム105の上流側の適切な箇所に設けられている、希釈空気注入部301を備えている第1の燃焼室102と、第2のバーナシステム105の下流側に設けられている第2の燃焼室104とを有している。第1の燃焼室102に沿った種々の箇所において、希釈空気を更に注入することも可能である。更には、第1の燃焼室102に沿った単一の箇所において注入される空気の方向及び強さを制御することもできる。
【0074】
図3aには、第1のバーナ101の運転に由来する本来のメイン渦フロー321の方向における渦フロー323を形成する、接線方向における入口スロット322を有している筒形燃焼器320が示されている。この入口スロット322に由来する空気の衝撃に基づき、第1のバーナに由来する既存の渦フローの強さを、選択された希釈空気注入322の強さに応じて拡大することができる。
図3aには、拡大された、合成メイン渦フロー324が示されている。
【0075】
図3bには、第1のバーナ101の運転に由来する本来の渦フロー331の所定の方向とは逆方向の渦フロー333を形成する、接線方向における入口スロット332を有している環状燃焼器330が示されている。この入口スロット332に由来する空気の衝撃に基づき、第1のバーナに由来する既存の渦フローの強さを、選択された希釈空気注入332の強さに応じて拡大することができる。
図3bには、拡大された、合成メイン渦フロー334が示されている。