(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対をなすエレメント列103b、104bに、該エレメント列103b、104bの延びる方向に沿って摺動する一対のスライダー101、102を、それぞれの後口側端部101a、102aが互いに対向する向きで配置したスライドファスナー100の、一方のスライダー101に装着され、一対のスライダー101、102相互の位置合わせに供されるスライダー固定部品1であって、
一方のスライダー101への装着姿勢で、一方のスライダー101の後口側端部101aより突出して、他方のスライダー102側に延びる迫出し部分2、32を有し、該迫出し部分2、32の、他方のスライダー102に対向する箇所に、他方のスライダー102の一部が嵌め合わされる嵌合凹部3、33が形成されており、
前記一対のスライダー101、102がともに、上翼板107および下翼板108を連結柱109により互いに離隔した位置で連結するとともに上翼板107および下翼板108の相互間にエレメント通路113を設けたスライダー胴体110と、前記上翼板107の上面から隆起する引手取付部111に取り付けられて、使用者に把持される引手とを有するものであって、
一対のスライダー101、102の各後口側端部101a、102aの、相互の突合せ状態で、前記迫出し部分2、32が、他方のスライダー102の上翼板107上に被さって位置するものとし、前記嵌合凹部3、33を、他方のスライダー102の引手取付部111の後口側端部を左右両側から挟んで当該引手取付部111の後口側端部を保持する形状としてなる、スライダー固定部品。
一方のスライダー101への装着姿勢で、該スライダー101の上翼板107の周囲を取り囲んで配置されて、当該上翼板107の、前記引手取付部111を含む上面を露出させる貫通孔4aを設けた上側構成部材4と、上側構成部材4から離隔させて該スライダー101の下翼板108側に配置される下側構成部材5と、上側構成部材4及び下側構成部材5の相互を連結する連結部分6とで構成し、前記上側構成部材4及び下側構成部材5の相互間に該スライダー101のスライダー胴体110が挟み込まれるものとしてなる、請求項1に記載のスライダー固定部品。
上側構成部材4と下側構成部材5との前記連結部分6を、上側構成部材4及び下側構成部材5の前方側領域に配置し、該連結部分6が、一方のスライダー101への装着姿勢で、該スライダー101の連結柱109の前方側に隣接して位置するものとしてなる、請求項3に記載のスライダー固定部品。
前記下側構成部材5に、上側構成部材4との連結部分6の左右両側の少なくとも一方側に拡がって延びる板状に形成され、一方のスライダー101の肩口113aの前方側に配置されるプレート状部分7を設け、下側構成部材5の前記プレート状部分7及び上側構成部材4により、エレメント列103bの一端部を前記エレメント通路113へ誘導するガイド通路8を区画してなる、請求項4に記載のスライダー固定部品。
前記連結部分6の左右両側に拡がる前記プレート状部分7のそれぞれの、上側構成部材4側を向く各表面を、前方側に向かうに従い、上側構成部材4から次第に離れる下り傾斜面としてなる、請求項5に記載のスライダー固定部品。
前記上側構成部材4の左右両側部のそれぞれに、該側部から下翼板108側に延びて上翼板107の側面を覆って配置され、上翼板107を把持するカバーフランジ9を設けてなる、請求項3〜6のいずれか一項に記載のスライダー固定部品。
一対のファスナーテープ103a、104aと、一対のファスナーテープ103a、104aの、互いに対向するテープ側縁部のそれぞれに取り付けられて、複数のエレメントをテープ側縁部に沿って並べて配置してなるエレメント列103b、104bと、エレメント列103b、104bに、それぞれの後口側端部101a、102aが互いに対向する向きで配置されて、エレメント列103b、104bの延びる方向に沿って摺動して一対のエレメント列103b、104bを相互に噛合ないし分離する一対のスライダー101、102とを備えるスライドファスナー100であって、
一方の前記スライダー101に、請求項1〜8のいずれか一項に記載のスライダー固定部品1、31を装着してなる、スライドファスナー。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した逆開きタイプのスライドファスナーでは、一方のエレメント列の一端部に設けた蝶棒を、他方のエレメント列だけに保持されたスライダーのエレメント通路に挿入するべく、スライダーの相互を後口側端部で突き合わせて配置した際に、それらのエレメント通路の相互が少しでも左右ないし上下にずれていると、一方のエレメント列の蝶棒が、エレメント通路内で引っ掛かる等して、一方のエレメント列の一端部をエレメント通路に挿入することが困難になる。
この問題に対しては、一対のスライダーのそれぞれの形状を、後口側端部の突合せ状態で互いに係合可能な特殊なものに変更することや、箱棒に係止構造を設けること等によって対処することができるとも考えられるが、それらの対策は、一般的な形状で既に製造された既存のスライドファスナーには適用できず、それらの操作性の向上をもたらすことはできなかった。
【0006】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、既存のスライドファスナーであっても、エレメント列の一端部の、スライダーのエレメント通路への挿入を容易に行い得るものとして、操作性を有効に向上させることのできるスライダー固定部品及び、それを備えるスライドファスナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のスライダー固定部品は、対をなすエレメント列に、該エレメント列の延びる方向に沿って摺動する一対のスライダーを、それぞれの後口側端部が互いに対向する向きで配置したスライドファスナーの、一方のスライダーに装着され、一対のスライダー相互の位置合わせに供されるものであって、一方のスライダーへの装着姿勢で、一方のスライダーの後口側端部より突出して、他方のスライダー側に延びる迫出し部分を有し、該迫出し部分の、他方のスライダーに対向する箇所に、他方のスライダーの一部が嵌め合わされる嵌合凹部が形成されて
おり、一対のスライダー
がともに、上翼板および下翼板を連結柱により互いに離隔した位置で連結するとともに上翼板および下翼板の相互間にエレメント通路を設けたスライダー胴体と、前記上翼板の上面から隆起する引手取付部に取り付けられて、使用者に把持される引手とを有するもの
であって、一対のスライダーの各後口側端部の、相互の突合せ状態で、前記迫出し部分が、他方のスライダーの上翼板上に被さって位置するものとし、前記嵌合凹部を、他方のスライダーの引手取付部の後口側端部を左右両側から挟んで当該引手取付部の後口側端部を保持する形状としてなるものである。
【0009】
なおこのスライダー固定部品は、一方のスライダーのスライダー胴体の上翼板上面の後口側端部に取り付けられる本体部分と、該本体部分から他方のスライダー側に延びる前記迫出し部分とで構成して、スライダー胴体の後口側端部に装着される部品とすることができる。
【0010】
また、上記のスライダー固定部品は、一方のスライダーへの装着姿勢で、該スライダーの上翼板の周囲を取り囲んで配置されて、当該上翼板の、前記引手取付部を含む上面を露出させる貫通孔を設けた上側構成部材と、上側構成部材から離隔させて該スライダーの下翼板側に配置される下側構成部材と、上側構成部材及び下側構成部材の相互を連結する連結部分とで構成し、前記上側構成部材及び下側構成部材の相互間に、該スライダーのスライダー胴体を挟み込むものとして、スライダー胴体の全体に装着される部品とすることもできる。
【0011】
このような、スライダー胴体の全体に装着される部品とした場合は、上側構成部材と下側構成部材との前記連結部分を、上側構成部材及び下側構成部材の前方側領域に配置し、該連結部分が、一方のスライダーへの装着姿勢で、該スライダーの連結柱の前方側に隣接して位置するものとすることが好ましい。
【0012】
またこの場合、前記下側構成部材に、上側構成部材との連結部分の左右両側の少なくとも一方側に拡がって延びる板状に形成され、一方のスライダーの肩口の前方側に配置されるプレート状部分を設け、下側構成部材の前記プレート状部分及び上側構成部材により、エレメント列の一端部を前記エレメント通路へ誘導するガイド通路を区画することが好ましい。
ここでは、前記連結部分の左右両側に拡がる前記プレート状部分のそれぞれの、上側構成部材側を向く各表面を、前方側に向かうに従い、上側構成部材から次第に離れる下り傾斜面とすることがそれぞれ好ましい。
【0013】
そしてまた、前記上側構成部材の左右両側部のそれぞれには、該側部から下翼板側に向けて延びて上翼板の側面を覆って配置され、上翼板を把持するカバーフランジを設けることが好ましい。
なお、前記下側構成部材の、上側構成部材側を向く内面には、一方のスライダー101の下翼板108の前端面形状に整合する段差部を設けることが好ましい。
【0014】
またこの発明のスライドファスナーは、一対のファスナーテープと、一対のファスナーテープの、互いに対向するテープ側縁部のそれぞれに取り付けられて、複数のエレメントをテープ側縁部に沿って並べて配置してなるエレメント列と、エレメント列に、それぞれの後口側端部が互いに対向する向きで配置されて、エレメント列の延びる方向に沿って摺動して一対のエレメント列を相互に噛合ないし分離する一対のスライダーとを備えるものであって、一方の前記スライダーに、上記のいずれかのスライダー固定部品を装着してなるものである。
【0015】
なお、上述したところにおいて、スライダーの「前方」とは、エレメント列の延びる方向のうち、エレメント列を噛合させる向きのスライダー摺動方向をいい、この一方で、「後方」とは、エレメント列を分離させる向きのスライダー摺動方向をいう。つまり、スライダーの前方側には肩口を備えており、スライダーの後方側には後口を備える。
また、スライダーの「左右」方向とは、ファスナーテープの平面上で、エレメント列の延びる方向に直交する方向をいう。そしてまた、スライダーの「上側」とは、ファスナーテープの平面に対し、使用者が把持する引手が存在する側であるファスナーテープ表面側をいい、また「下側」とは、その逆側であるファスナーテープ裏面側をいう。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、一方のスライダーへの装着姿勢で、スライダー固定部品の有する迫出し部分の、他方のスライダーに対向する箇所に、他方のスライダーの一部が嵌め合わされる嵌合凹部を形成したことにより、一対のスライダーの各後口側端部を互いに突き合わせた状態では、他方のスライダーの一部が上記の嵌合凹部に嵌り込んで、それらのスライダー相互の位置合わせが行われることになる。それにより、それぞれのスライダーに設けられる各エレメント通路が、位置ずれなしに整合して連結されて、そこにエレメント列の蝶棒を挿入させることが容易になるので、スライドファスナーの操作性を大きく向上させることができる。
しかもここでは、既存のスライドファスナーに対して後付け可能な部品としたことにより、スライドファスナー自体の形状等の設計変更を要せずして、上記の操作性の向上を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に図面に示すところに基いて、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1に示すスライダー固定部品1は、スライドファスナー100が有する一対のスライダー101、102のうちの、いずれかのスライダー101もしくは102、ここでは図の上方側に位置する一方のスライダー101に装着されて使用されるものである。
【0019】
なおここで、スライダー固定部品1が用いられるスライドファスナー100は、
図1に例示するように、図の左右方向に互いに隣り合わせに配置された一対のファスナーテープ103a、104aと、それらのファスナーテープ103a、104aのそれぞれの、互いに対向するテープ側縁部のそれぞれに取り付けられて、複数のエレメントをテープ側縁部に沿って並べて配置してなる各エレメント列103b、104bとで構成される一対のファスナーストリンガー103、104、及び、エレメント列103b、104bに、それぞれの後口側端部101a、102aが互いに対向する向きで配置されて、エレメント列103b、104bの延びる方向(
図1では上下方向)に沿って摺動して一対のエレメント列103b、104bを相互に噛合ないし分離する一対のスライダー101、102を備えてなる。上記の一対のファスナーストリンガー103、104を互いに噛合させてなるものを、スライドファスナーチェーンという。
【0020】
また、エレメント列103b、104bの両端は通常、スライダー101、102がエレメント列103b、104bからはずれてしまわないように、抜け止め部が備えられている。この発明の実施の形態では、抜け止め部として、エレメント列103b、104bの一端側(
図1の下端側)には開離嵌挿具105が、また、他端側(
図1の上端側)には上止106が備え付けられている。
開離嵌挿具105は、一方のエレメント列103bに蝶棒103c、他方のエレメント列104bに箱棒104cを備えている。
逆開きタイプのスライダーに適用される開離嵌挿具105は、一対のスライダー101、102を開離嵌挿具105側まで移動させた状態で、箱棒104cを備えるファスナーストリンガー104に対して、蝶棒103cを備えるファスナーストリンガー103を抜き差しすることができる。
この操作によって、一対のファスナーストリンガー103、104を完全に分離、あるいは噛合わせのためのファスナーストリンガー103、104同士の位置決めを行うことができる。
【0021】
上記の一対のスライダー101および102は、ともに金属材料もしくは合成樹脂材料その他の剛性材料にて形成することができ、また、互いに同じ構造を有するものとすることができる。
ここでは、スライダー101、102はいずれも、たとえば、
図2に、スライドファスナーチェーンから取り外して示すように、ファスナーテープ103a、104aの表面側に位置する上翼板107と、裏面側に位置する下翼板108との相互を、連結柱109により、たとえばスライダー101、102の前方側で連結してなるスライダー胴体110と、スライダー胴体110の上翼板107の上面から隆起させて設けた逆U字状の引手取付部111に取り付けた引手112とを有するものとしている。
【0022】
これらのスライダー101、102では、スライダー胴体110の上翼板107の左右両側部のそれぞれに、該側部に沿って延びて下翼板108側に突出する下向きフランジ107aを設けるとともに、下翼板108の左右両側部のそれぞれに、該側部に沿って延びて上翼板107側に突出する上向きフランジ108aを設けている。
それにより、当該スライダー101、102ではスライダー胴体110の内側に、後口側端部から肩口側端部に向かう途中で二叉に分岐する略Y字状のエレメント通路113が区画形成されることになる。なお、このエレメント通路113では、前方側に、エレメント通路113の分岐点で分離された各エレメント列103b、104bの、スライダー内外への出入り口となるそれぞれの肩口113aが形成され、また、後方側に、噛合したエレメント列103b、104bの出入り口となる後口113bが形成される。
【0023】
このような、いわゆる逆開きタイプのスライドファスナー100によれば、引手112を把持した使用者が、エレメント列103b、104b上で、一方のスライダー101を他方のスライダー102に向けて摺動させることで、その一方のスライダー101の後方側で、一対のエレメント列103b、104bの噛合状態を解除して、それらのエレメント列103b、104bを分離させて開くことができ、また、他方のスライダー102を一方のスライダー101に向けて摺動させることで、その他方のスライダー102の後方側で、エレメント列103b、104bを分離させて開くことができる。
【0024】
ところで、上述した逆開きタイプのスライドファスナー100で、一方のエレメント列103bを他方のエレメント列104bから完全に分離させるには、たとえば、一方および他方のスライダー101、102をいずれも、後口側端部101a、102aの相互の突合せ状態で、エレメント列103b、104bの、離開嵌挿具105を備える端部に位置させ、その後、蝶棒103cを、それぞれのスライダー101、102の各エレメント通路113及び箱棒104cから引き抜くことにより行うことができる。
【0025】
そして、このように、一方のエレメント列103bを完全に分離した状態から、一方及び他方のエレメント列103b、104bを相互に噛合させるには、
図3(a)に示すように、スライダー101、102を保持している箱棒104cを備えるエレメント列104bの一端部に、一対のスライダー101、102を、後口側端部101a、102aの突合せ状態で位置させ、次いで、完全に分離された蝶棒103cを備えるエレメント列103bを、その蝶棒103cから、
図3(a)に矢印で示すように、上記のスライダー101、102の各エレメント通路113に挿入して、
図3(b)に示す状態とした後、一方のスライダー101を他方のスライダー102から離隔する向きに摺動させる。
【0026】
ここにおいて、蝶棒103cを備えるエレメント列103bをスライダー101、102のエレメント通路113に挿入するに際し、一対のスライダー101、102の後口側端部101a、102aを相互に突き合わせた状態で、それらの内側に延びるエレメント通路113が互いにずれていると、蝶棒103cの挿入が困難となる場合がある。
【0027】
このことに対処するため、この発明では、スライダー101及び102のそれぞれの後口側端部101a、102aを相互に突き合わせた状態で、スライダー101及び102の相互の位置合わせをするべく機能するスライダー固定部品1を、たとえば一方のスライダー101に装着して用いる。
エラストマー製もしくは合成樹脂製等のこのスライダー固定部品1は、一方のスライダー101に装着された姿勢で、そのスライダー101の後口側端部101a近傍から他方のスライダー102側に突出して延びる迫出し部分2を有するものであり、この迫出し部分2の、他方のスライダー102への対向箇所に、他方のスライダー102の一部が嵌合可能な嵌合凹部3を設けたものである。
【0028】
このことによれば、
図3に示すように、スライダー固定部品1を装着した一方のスライダー101を他方のスライダー102に接近させ、それぞれの後口側端部101a、102aを互いに突き合わせた図示の状態では、スライダー固定部品1の迫出し部分2の、他方のスライダー102と向き合う箇所に設けた嵌合凹部3に、他方のスライダー102の一部(たとえば後口側端部102a)が嵌まり込んで受容されるので、それらのエレメント通路113が互いに整合して連結されることになる。その結果として、それらのエレメント通路113への、エレメント列103bの一端部に設けた蝶棒103cの挿入が容易となり、操作性の向上を実現することができる。
【0029】
しかもここでは、スライダー固定部品1を、スライダー101、102の一部ではなく、スライダー101、102とは別個独立した部品としたことにより、既存のスライドファスナー100のスライダー101、102に、後付けで取り付けることができるので、汎用性に優れるとともに、スライダー101、102それ自体の形状変更は不要である。
【0030】
なお、嵌合凹部3のサイズは、スライダー相互の上下、左右方向等の位置ずれを防止可能な大きさとする。従って、嵌合凹部3は、他方のスライダー102の一部が嵌り込んだ際に、その他方のスライダー102の一部が嵌合凹部3の内面に摩擦係合する程度に小さなものとしたり、あるいは、他方スライダー102の一部が、嵌合凹部3の内面への非接触状態で嵌合凹部3に緩く嵌り込む程度に大きなものとしたりすることができる。
また、他方のスライダー102の一部がスライダー固定部品1の嵌合凹部3に直接的に嵌り込む場合の他、図示は省略するが、他方のスライダー102にも、スライダー固定部品1と対応する部品を装着し、他方のスライダー102の一部が、当該対応部品を介して間接的に、スライダー固定部品1の嵌合凹部3に嵌り込むものとすることも可能である。
【0031】
ここで、スライダー固定部品1は、スライダー後口側端部101a、102aの突合せ状態で、スライダー101及び102の相互を適正な位置で保持できればよいので、迫出し部分2に設ける嵌合凹部3は、他方のスライダー102のいずれかの部分が嵌まり込むものであればよい。従って、他方のスライダー102の、嵌合凹部3に嵌り込む部分としては、たとえば、上翼板、下翼板等が考えられる。
但し、スライダー101、102の相互を、エレメント列103b、104bの延びる方向に直交する左右方向及び、ファスナーテープ103a、104aの平面に直交する上下方向のいずれの方向に対しても位置ずれなしに確実に固定するとの観点からは、嵌合凹部3は、図示の実施形態のように、他方のスライダー102の上翼板107に設けた引手取付部111の後口側端
部が嵌り込む態様とすることが好ましい。
【0032】
すなわち、この発明のスライダー固定部品1では、
図4に、スライダー後口側端部101a、102aの突合せ状態で示すように、上記の迫出し部分2が、他方のスライダー102の有する上翼板107の上面の後口側端部102aに被さって位置するものとし、そして、その迫出し部分2の嵌合凹部3を、上翼板107の上面に設けた引手取付部111の後口側端
部を左右両側から挟んで保持する形状とすることが好適である。
それにより、後口側端部同士の突合せ状態で、他方のスライダー102の上翼板107上に位置する平板状の迫出し部分2が、当該上翼板107を下方に押し付けて、スライダー相互間の上下方向の位置ずれを防止するとともに、引手取付部111の後口側端
部を左右両側から挟む嵌合凹部3が、左右方向の位置ずれを防止するので、スライダー101、102の相互が強固に固定されることになる。
【0033】
ところで、スライダー固定部品は、後述する他の実施形態のように、スライダー胴体110の上翼板107上面の後口側端部102aだけに装着されるものとすることも可能であるが、スライダー胴体110の全体を覆って装着される部品とすることができる。
より詳細には、この実施形態は、
図2に分解斜視図で示すところから明らかなように、一方のスライダー101の上翼板107の周囲を取り囲んで配置されて、上翼板107の、引手取付部111を含む上面を露出させる貫通穴4aを設けた上側構成部材4と、上側構成部材4から離隔させて配置される下側構成部材5と、それらの上側構成部材4及び下側構成部材5の相互を連結する連結部分6とで構成している。そして、このスライダー固定部品1は、
図5及び6に断面図で示すように、上側構成部材4及び下側構成部材5の相互間に、一方のスライダー101を挟み込むことで、スライダー胴体110の全体を覆って、スライダー101に装着される。
【0034】
なお、スライダー胴体110の全体を覆うこのスライダー固定部品1の装着により、たとえば衣類等の、スライダー101の周囲に存在する生地の、スライダー101への噛み込みを防止することができる他、スライダー101が使用者等の肌に直接触れることを抑制して、使用者が感じる冷感を軽減することができる。
【0035】
ここで、スライダー胴体110を覆うスライダー固定部品1では、一方のスライダー101に装着した状態で、その前方側及び後方側のそれぞれから、スライダー101のエレメント通路113に挿通されたエレメント列103b、104bが延在することになるので、上側構成部材4と下側構成部材5との連結部分6は、スライダー101の、エレメント列103b、104bを分岐させる連結柱109の前方側に隣接させて位置させることが、配置スペース上の観点から好ましい。
【0036】
なお、このスライダー固定部品1の上側構成部材4では、平面視で、中央に位置する貫通穴4aの前方の前端側領域に、前方側に突出する前記連結部分6を配置し、そして、貫通穴4aの左右両側には、翼状に拡がる左右翼部4aを、また、貫通穴4aの後端側には、先述の嵌合凹部3を設けた迫出し部分2を設けている。
【0037】
このスライダー固定部品1は2部材により構成されており、上側構成部材4及び下側構成部材5が連結部分6の略中央で分割した第1部材と第2部材とから構成される。
そして、
図5、6に示すように、スライダー固定部品1の前端側で、上側構成部材4に設けた下方への突起部6aと、下側構成部材5に設けた突起受容孔部6bとで構成することができる。
つまり、この実施形態では、上側構成部材4の、略円筒形状を有する突起部6aを、下側構成部材5に設けた円筒部分の内側の、全体として突起部6aの外径よりも大きい突起受容孔部6bに挿入し、突起部6aの外周面に設けた環状溝部に、突起受容孔部6bに設けた環状突出箇所を嵌め合わせて、それらを係合させることにより、連結部分6を構成している。
【0038】
またここで、この実施形態では、下側構成部材5に、上側構成部材4との連結部分6の左右両側に拡がって延びる板状のプレート状部分7を設けることが好ましい。それらのプレート状部分7のそれぞれは、スライダー固定部品1を一方のスライダー101に装着した姿勢で、
図4に示すように、そのスライダー101の肩口113aの前方側に配置されて、一方のエレメント列端部に設けた蝶棒103cをエレメント通路113に挿入する際に、当該エレメント列103bをエレメント通路113へ誘導するガイド通路8の区画に寄与する。
その結果として、一方のエレメント列103bの蝶棒103cの、エレメント通路113への挿入をさらに容易に行うことが可能になる。
【0039】
なお、プレート状部分7は、下側構成部材5の、上側構成部材4との連結部分6の左右両側のうち、少なくとも、蝶棒103cを設けたエレメント列103bが挿通する側に一枚設けることで、上記の効果を発揮することができるので、必ずしも、連結部分6の左右両側に二枚設けることを要しない。
【0040】
この場合において、プレート状部分7のそれぞれの、上側構成部材4側を向く各表面は、前方側に向かうに従い、上側構成部材4の、前方側への仮想延長部分から次第に離れる、平坦面状もしくは曲面状の下り傾斜面とすることが好ましい。それにより、ガイド通路8の入り口側が広くなって、さらにエレメント列103bの挿入が容易になる。
【0041】
この一方で、上記のプレート状部分7を設けないことも可能であり、この場合、下側構成部材25は、
図7に例示するように、平面視で略ホームベース状をなすものとすることができる。
【0042】
ところで、スライダー固定部品1を一方のスライダー101へより強固かつ確実に装着して、スライダー101からのスライダー固定部品1の、意図しない外れを防止するため、上側構成部材4の左右両側部のそれぞれには、その側部から下翼板108側に延びて上翼板107の側面を覆って配置されるカバーフランジ9を設けることが好ましい。それらのカバーフランジ9により、上翼板107を左右両側から囲んで把持することができ、しかも、スライダー101の上翼板107の側面の、肌への接触に起因する冷感を軽減することができるからである。
またここでは、カバーフランジ9を、上翼板107の下向きフランジ107aの下端縁よりも下方に突出させて設けることが好適であり、この場合、カバーフランジ9により、上翼板107の下向きフランジ107aと下翼板108の上向きフランジ108aとの間への生地の噛み込みを抑制することができる。
【0043】
また、スライダー固定部品1の、スライダー101への装着性を高めるため、下側構成部材5の、上側構成部材4側を向く内面には、一方のスライダー101の下翼板108の、例えば曲面状の前端面形状に一致して、これに整合する段差部10を設け、そして、スライダー101への装着姿勢で、スライダー101の下翼板前端面を、当該段差部10に当接させるとともに、下翼板108を、その段差部10による段下がり領域に配置することが好ましい。
なお図示は省略するが、上記の段差部10の配設に加えて、下側構成部材5の内面には、下翼板108の後口側端部101aに当接して、前記段差部10との間で下翼板108を前後方向の両側から挟み込む壁部を設けることもできる。
【0044】
なおここで、このスライダー固定部品1では、下側構成部材5の下面に、
図6に示すように、複数の曲面状の突出部分11を設けている。下側構成部材5の下面と、使用者の肌との間に存在することになる突出部分11は、下側構成部材5の下面の、使用者の肌との接触面積を大きく低減させるとともに、それらの間に空気層を形成することから、金属製等のスライダー101による冷感の軽減に大きく寄与する。
但し、このような突出部分11の形成は必須の構成ではない。
【0045】
図8及び9に示す他の実施形態のスライダー固定部品31は、一方のスライダー101への装着姿勢で、一方のスライダー101の後口側端部101aの周囲から突出して他方のスライダー102側に延びる迫出し部分32と、迫出し部分32に連続して形成されて、一方のスライダー101が有するスライダー胴体の上翼板107上面の後口側端部101aに取り付けられる本体部分34とで構成したものである。
このような他の実施形態でも、一対のスライダー101、102の後口側端部101a、102aの、相互の突合せ状態で、迫出し部分32が、他方のスライダー102の上翼板107上に被さって位置するものとし、迫出し部分32に設けた嵌合凹部33を、他方のスライダー102の引手取付部111の後口側端
部を左右両側から挟んで当該引手取付部111の後口側端
部を保持する形状とすることが好ましい。それにより、
図8に示すところでは、スライダー固定部品31は、平面視で全体としてH字状をなす。
【0046】
以上に述べたスライダー固定部品によれば、逆開き可能なスライドファスナーのいずれかのスライダーに装着することにより、一対のスライダーの各後口側端部を突き合わせた状態での、エレメント列の一端部の、スライダーのエレメント通路への挿入を容易に行うことができるので、スライドファスナーの操作性を効果的に向上させることができる。