(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対象者の腎機能障害の診断、予知、予後予測及び/又はモニタリングを補助するデータを取得する方法であって、該方法の検査段階が、対象者のサンプル中の潜在型トランスフォーミング増殖因子β結合タンパク質2(LTBP2)の量を測定することを含んでなり、測定したLTBP2量が糸球体濾過速度(GFR)値に変換される、方法。
腎機能障害が減少した糸球体濾過速度(GFR)又は推定糸球体濾過速度(eGFR)によって特徴付けられ、正常GFR又はeGFRと減少したGFR又はeGFRとの間の閾値が約50と約70ml/分/1.73m2の間の値に設定され、該閾値を上回る値が正常GFR又はeGFRを示し、該閾値を下回る値が減少したGFR又はeGFRを示す、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
対象者のサンプル中のGFR値が正常腎機能の予知若しくは診断を表すか又は腎機能障害についての良好な予後を表すGFR値参照値と比較して上昇していることが、対象者が、腎機能障害を有しているか若しくは有するリスクにあることを示すか又は対象者の腎機能障害について不良な予後を示す、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
腎機能障害の治療法が、低カリウム及び/又は低リン食、リン低減薬物療法、赤血球産生刺激剤、鉄サプリメント、血圧薬物療法、ビタミンサプリメント、血液透析及び腎移植から選択される請求項7に記載の方法。
対象者が急性腎傷害を発症するリスクにあることが知られているか若しくは予測されるか、又は集中治療室(ICU)患者であるか、又は冠血管若しくは末梢血管造影法を受けているか若しくは受けたことのある請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
対象者が呼吸困難又は急性呼吸困難を呈し、そのことにより、腎機能障害と関連するか腎機能障害によって引き起こされる呼吸困難を、他の病状と関連するか又は他の病状によって引き起こされる呼吸困難から弁別することができる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
対象者が心不全又は急性非代償性心不全(AHF)を有するか又は有するリスクにあり、そのことにより、減少した心拍出量と関連するか若しくは減少した心拍出量によって引き起こされる腎機能の急性悪化を診断することができるか、又はAHFの治療過程中の腎機能をモニターすることができる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
検査段階が、対象者のサンプル中の、それぞれの疾患又は病状の診断、予知及び/又は予後予測に有用な1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定することを更に含んでなる請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
前記他のバイオマーカーがクレアチニン、シスタチンC、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、βトレースタンパク質、腎臓傷害分子1(KIM-1)、インターロイキン-18(IL-18)、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、プロ-B型ナトリウム利尿ペプチド(プロBNP)、アミノ末端プロ-B型ナトリウム利尿ペプチド(NTプロBNP)及びC反応性ペプチド並びにそれらのいずれかのフラグメント又は前駆体からなる群より選択される請求項15又は16に記載の方法。
LTBP2量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量が、それぞれ、LTBP2及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る結合性物質並びに前記1以上の他のバイオマーカーに特異的に結合し得る結合性物質を用いて測定される請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
LTBP2量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量が、イムノアッセイ技術、又は質量分析法、又はクロマトグラフィー法、又は前記方法の組合せを用いて測定される請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
(i)対象者のサンプル中のLTBP2量を測定する手段を含んでなり、(ii)腎機能障害又は正常腎機能の既知の診断、予知及び/又は予後を表すGFR値の参照値、或いは該参照値を確立する手段を更に含んでなる、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法を実施するためのキット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、腎機能障害並びに関連する疾患及び病状のバイオマーカーを同定し、その使用を提供することによって、当該分野における上記のニーズに取り組む。
【0007】
発明の概要
多大な実験及び試験を行った結果、本発明者らは、潜在型トランスフォーミング増殖因子β結合タンパク質2(LTBP2)のレベルが腎臓機能を詳細に暗示することを見出した。詳細には299人の患者からの臨床サンプルにおいて、LTBP2は、腎臓機能に関連する幾つか試験した臨床パラメータ、とりわけ推定糸球体濾過速度(eGFR)、クレアチニンレベル、血液尿素窒素(BUN)レベル、腎臓不全の病歴及びシスタチンCレベルとの有意な関連を示した。
更に、減少したGFR(<60ml/分/1.73m
2)を有する対象者と正常GFRを有する対象者との識別について、メジアンAUC値(ROC曲線下面積;「ROC」は受信者動作特性の略語である)は、LTBP2(0.9)とシスタチンC(0.92)との間で少なくとも匹敵する。AUC値は感度及び特異性の組合せ尺度であり、より高いAUC値(すなわち、1への接近)は一般に当該検査の性能の向上を示す。
したがって、本発明者らは、LTBP2が腎機能の評価に有利な新たなバイオマーカーと気付いた。
【0008】
更に、対象者のサンプル中のLTBP2量を測定することを含んでなる、対象者の腎機能を決定する方法が提供される。特には、対象者のサンプル中のLTBP2レベルを測定することを含んでなる、対象者の腎機能障害を予知、診断、予後予測及び/又はモニターする方法が提供される。本明細書を通じて使用するように、対象者のサンプル中のLTBP2及び/又は他のバイオマーカーのレベルを測定するとは、検査段階が、対象者のサンプル中のLTBP2及び/又は他のバイオマーカーの量を測定することを含んでなることを意味し得る。疾患及び病状の予知、診断、予後及び/又はモニタリングの方法は、一般に、データを対象者から及び/又は対象者について収集する検査段階を含んでなると理解される。
1つの実施形態において、腎機能障害を予知、診断及び/又は予後予測する方法は、以下の工程:(i)対象者のサンプル中のLTBP2量を測定する工程;(ii)(i)で測定したLTBP2量を、腎機能障害又は正常腎機能の既知の予知、診断及び/又は予後を表すLTBP2量参照値と比較する工程;(iii)(i)で測定したLTBP2量の参照値からの逸脱又は逸脱無しを発見する工程;及び(iv)前記逸脱又は逸脱無しの発見を、対象者の腎機能障害又は正常腎機能の特定の予知、診断及び/又は予後に帰する工程を含んでなる。
【0009】
腎機能障害を予知、診断及び/又は予後予測する方法、特に前段落で記載した工程(i)〜(iv)を含んでなる方法は、対象者について2以上の一連の時点で実施し得、そして該一連の時点でのそれぞれの結果を比較し、そのことによって前記一連の時点での腎機能障害の予知、診断及び/又は予後間の変化の有無を決定してもよい。このように、本方法により、対象者の腎機能障害の予知、診断及び/又は予後の経時的変化をモニターすることが可能になる。
1つの実施形態において、腎機能障害をモニターする方法は、次の工程:(i)2以上の一連の時点からの対象者のサンプル中のLTBP2量を測定する工程;(ii)(i)で測定したサンプル間でLTBP2量を比較する工程;(iii)(ii)で比較したサンプル間でLTBP2量の逸脱又は逸脱無しを発見する工程;及び(iv)逸脱又は逸脱無しの発見を、2以上の一連の時点間での対象者の腎機能又は腎機能障害の変化に帰する工程を含んでなる。このように、本方法により、対象者の腎機能障害又は腎機能を経時的にモニターすることが可能になる。
【0010】
本開示を通じて、本明細書に教示される病状又は疾患のいずれかをモニターするに適切な方法により、とりわけ、当該病状又は疾患の発生の予知が可能になるか、或いは該病状若しくは疾患の進行、悪化、軽減若しくは再発、処置に対する応答又は他の外部若しくは内部の因子、状況若しくはストレス因子などに対する応答のモニタリングが可能になる。有利には、本明細書に教示されるモニタリング方法は、対象者の内科療法、好ましくはそのようにモニターされる病状又は疾患の軽減を目的とする内科療法の経過中に適用され得る。このようなモニタリングは、例えば、患者が退院しても良いのか、治療法の変更を必要としているのか又は更なる入院を必要としているかの決定形成に含まれ得る。
同様に、本開示を通じて、本明細書に教示されるいずれかの病状又は疾患を予後予測するに適切な方法により、とりわけ、当該病状又は疾患の発生の予後予測が可能になるか、或いは該病状若しくは疾患の進行、悪化、軽減若しくは再発、処置に対する応答又は他の外部若しくは内部の因子、状況若しくはストレス因子などに対する応答の予後予測が可能になり得る。
【0011】
実験の章で示したように、腎臓機能障害を代表する臨床パラメータ(例えば減少したeGFR及び上昇したシスタチンCレベル)は、上昇したLTBP2レベルに関連する。結果として、腎機能障害の予知若しくは診断又は腎機能障害の不良な予後を、特に、上昇したLTBP2レベルと関連付けることができる。
例としてであって限定されないが、腎機能障害無し(すなわち、正常腎機能)の予知若しくは診断を表す参照値又は腎機能障害についての良好な予後を表す参照値と比較して対象者のサンプル中のLTBP2量が上昇していること(すなわち、逸脱)は、それぞれ、対象者が腎機能障害を有しているか若しくは有するリスクにあること、又は対象者の腎機能障害についての不良な予後(例えば、慢性腎機能障害患者が末期の腎臓病に向かって進行しているという予後)を示す。
【0012】
腎機能障害は、減少したGFR又はeGFRによって特徴付けられ得る。(推定)糸球体濾過速度は、GFR又はeGFRが正常をいくらかでも下回れば、正常と比較して減少していると言い得る。例としてであって限定されないが:正常な腎臓機能を示す正常GFR又はeGFRは、90ml/分/1.73m
2より大きな値をいうことができ;僅かに減損した腎臓機能を示す中間GFR又はeGFRは、60ml/分/1.73m
2と90ml/分/1.73m
2との間の値をいうことができ;深刻に減損した腎臓機能を示す減少したGFR又はeGFRは、60ml/分/1.73m
2より低い値をいうことができる。
例示的であるが非限定的な実験において、LTBP2レベルは、正常GFRと減少したGFRとの間の閾値を60ml/分/1.73m
2に設定すると、正常GFRと減少したGFRとの間の満足できる区別を提供した。よって、実施形態において、正常GFR又はeGFR 対 減少したGFR又はeGFRの閾値は、約50ml/分/1.73m
2と約70ml/分/1.73m
2との間の値、例えば、約55ml/分/1.73m
2と約65ml/分/1.73m
2との間の値、例えば55、56、57、58、59、60、61、62、63、64又は65ml/分/1.73m
2、好ましくは60ml/分/1.73m
2に設定され得、ここで、該閾値を上回る値は正常GFR又はeGFRを反映し、該閾値を下回る値は減少したGFR又はeGFRを反映する。
【0013】
他の実施形態では、正常GFR又はeGFR 対 減少したGFR又はeGFRの閾値は、約80ml/分/1.73m
2と約100ml/分/1.73m
2との間の値、例えば、約85ml/分/1.73m
2と約95ml/分/1.73m
2との間の値、例えば85、86、87、88、89、90、91、92、93、94又は95ml/分/1.73m
2、好ましくは90ml/分/1.73m
2に設定され得、ここで、該閾値を上回る値は正常GFR又はeGFRを反映し、該閾値を下回る値は減少したGFR又はeGFRを反映する。
例示的であるが非限定的な実験において、LTBP2レベルは、正常GFRと中間GFRとの間の閾値を90ml/分/1.73m
2に設定し、中間GFRと減少したGFRとの間の閾値を60ml/分/1.73m
2に設定すると、正常GFRと中間GFRと減少したGFRとの間の満足できる区別を提供した。
よって、更なる他の実施形態では、中間GFR又はeGFR 対 減少したGFR又はeGFRの閾値は、約50ml/分/1.73m
2と約70ml/分/1.73m
2との間の値、例えば、約55ml/分/1.73m
2と約65ml/分/1.73m
2との間の値、例えば55、56、57、58、59、60、61、62、63、64又は65ml/分/1.73m
2、好ましくは60ml/分/1.73m
2に設定され得、ここで、該閾値を上回る値は中間GFR又はeGFRを反映し、該閾値を下回る値は減少したGFR又はeGFRを示す;そして正常GFR又はeGFR 対 中間GFR又はeGFRの更なる閾値は、約80ml/分/1.73m
2と約100ml/分/1.73m
2との間の値、例えば、約85ml/分/1.73m
2と約95ml/分/1.73m
2との間の値、例えば85、86、87、88、89、90、91、92、93、94又は95ml/分/1.73m
2、好ましくは90ml/分/1.73m
2に設定され得、ここで、該閾値を上回る値は正常GFR又はeGFRを反映し、該閾値を下回る値は中間GFR又はeGFRを示す。
【0014】
本明細書中で教示するように、LTBP2レベル、例えば血漿及び/又は尿中LTBP2濃度は、糸球体濾過速度(GFR)に相関する。結果として、測定される対象者のLTBP2量は、GFR値を決定又は推定するために、GFR値に変換することができる。このような目的に適切な変換式には、臨床パラメータ(限定されないが、身長、年齢、性別、人種、筋肉量など)及び/又は臨床変量(例えば、限定されないが、ヘマトクリット、アルブミン濃度、甲状腺ホルモンなどのような血液測定変量)のような追加因子もまた含まれ得る。
結果として、1つの観点は、対象者のサンプル中のLTBP2量を測定し、測定したLTBP2量を対象者のGFRに変換することを含んでなる、対象者の糸球体濾過速度(GFR)を決定する方法を提供する。
測定した対象者のLTBP2量は、本明細書に開示した診断、予知、予後及び/又はモニタリングの方法の一部又は一工程として、GFR値に変換されてもよい。そのように算出されたGFR値は、GFR及び腎臓機能減損の種々のステージを表す既知のGFR値と比較してもよい。このように、LTBP2量を使用して、対象者のGFR減少の程度を決定してもよい。
したがって、本明細書に開示された診断、予知、予後及び/又はモニタリング方法の1つの実施形態において、腎機能障害はGFR減少を包含し得るか、これを意味し得るか又はこれに対応し得る。
【0015】
下記:
(i)対象者のサンプル中のLTBP2量を測定し;
(ii)(i)で測定したLTBP2量を、腎機能障害又は正常腎機能の既知の診断、予知及び/又は予後を表すLTBP2量参照値と比較し;
(iii)(i)で測定したLTBP2量の参照値からの逸脱又は逸脱無しを発見し;
(iv)前記発見から、腎機能障害を処置する治療法の必要性の有無を推論する
ことを含んでなる、対象者が腎機能障害を処置する治療法を必要としているか否か(例えば、依然として必要としているのか又はもはや必要としていないのかなど)を決定する方法もまた開示する。工程(i)〜(iii)によって、対象者が腎機能障害を有しているか若しくは有するリスクにあるか、又は腎機能障害について不良な予後を有するという結論が可能になる場合(例えば、限定されないが、腎機能障害無し(すなわち、正常腎機能)の予知若しくは診断を表す参照値と比較して対象者のサンプル中のLTBP2量が上昇(すなわち、逸脱)している場合)に、特に、治療が指示され得る。限定されないが、腎機能障害を有する患者は、医療センターへの入院に際して又は入院中に、腎機能障害の治療を継続する必要性について本明細書に教示したように試験されてもよく、そして治療はもはや必要とされないか又は或る制限された程度でのみ必要とされるときに退院してもよい。
【0016】
腎機能障害の例示的治療法は、限定されないが、低カリウム及び/又は低リン食、リン低減薬物療法(例えば、炭酸カルシウム、カルシトリオール、セベラマー)、赤血球産生刺激剤(例えば、エリスロポエチン、ダーベポエチン)、鉄サプリメント、血圧薬物療法、ビタミンサプリメント、血液透析及び腎移植を包含する。
幾つかの実施形態において、本明細書で使用する腎機能障害は急性腎不全(急性腎臓傷害)をいってもよい。他の実施形態において、本明細書で使用する腎機能障害は、慢性腎不全(慢性腎臓病)をいってもよい。更なる実施形態において、本明細書で使用する腎機能障害は、特に(限定されないが)慢性腎臓病患者又は心不全患者においては、腎臓組織の線維症(腎線維症)に関連していてもよいし、又は腎臓組織の線維症(腎線維症)により引き起こされてもよい。
特に有利には、本明細書で意図する腎機能障害は、急性腎機能障害又はAKIを含み得る。本発明者らによって証明されたように、LTBP2は、腎機能の急激な変化を検出することができる。AKIは通常、GFRの突然の低下を伴うので、LTBP2の−急激なGFR変化に迅速に反応するマーカーとしての−測定は、AKIの診断、予知、予後予測及び/又はモニタリングに特に適切であり得る。
【0017】
AKIのマーカーとしてのLTBP2の使用は、AKIを発症するリスクにあることが知られているか又は予測される患者において特に有用であり得る。限定されないが、このようなLTBP2検査又はスクリーニングは、集中治療室(ICU)の患者の一般集団において、例えば、手術、より具体的には心臓手術を受けた(急性腎臓傷害の発生率が30〜50%程度に高いことがある)患者で行い得る(すなわち、ICUで対象者を検査する)。これもまた限定されないが、LTBP2検査又はスクリーニングは、冠血管若しくは末梢血管造影法を受けているか又は受けたことのある(造影液誘導ネフロパシーの発生率が5〜10%程度に高くあり得る)患者において用いられ得る。例として、このような状況で、LTBP2は、診断マーカーとして使用されてもよいし(例えば、LTBP2は、手順に従って所与の時間内、例えば24時間以内に測定され得る)、又はAKI発症に感受性であるか又はAKIを発症し易い患者を同定するための予知マーカーとして使用されてもよい。
【0018】
実施例で証明されるように、LTBP2は、(急性)呼吸困難を示す対象者集団において、腎機能障害を有する対象者を同定することができる。呼吸困難(dyspea又はdyspnoea)(又は息切れ)は、例えば、肺ガン、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、鬱血性又は急性心不全及び腎機能障害のような或る範囲の基礎病理に関係付けられ得る一般的で苦痛な症状である。呼吸困難を顕現する患者を適切に治療するために、基礎となる問題をはっきりさせる必要がある。
したがって、本明細書で教示する腎機能障害の診断、予知、予後予測及び/又はモニタリング方法において、対象者は、呼吸困難を示してもよい(呼吸困難が現れていてもよい)。好ましくは、呼吸困難は急性呼吸困難であり得る。本方法により、特に、腎機能障害と関連するか又はこれにより引き起こされる呼吸困難(を有する対象者)と他の病状(限定されないが、例えばCOPD又は肺炎)と関連するか又はこれにより引き起こされる呼吸困難(を有する対象者)とを区別することが可能になる。
【0019】
実施例で述べるように、LTBP2レベルとシスタチンCレベル又はeGFRとの間の相関は、対象者集団における急性非代償性心不全(AHF)の存在についての補正後でさえ、存続する。よって、LTBP2は、心臓の急性代償機能障害(すなわち、減少した心拍出量)に起因する腎機能(eGFR)の急激な変化を検出することができる。
したがって、本明細書で教示する腎機能障害の診断、予知、予後予測及び/又はモニタリング方法において、対象者は、心不全、好ましくは急性非代償性心不全(AHF)を有していてもよいし、又は有するリスクにあってもよい。このような方法により、とりわけ、減少した心拍出量と関連するか若しくはこれにより引き起こされる腎機能の急性悪化を診断することが可能になり得るか、又はAHFの治療の経過中に腎機能をモニターすることが可能になり得る。
【0020】
実施例でも示すように、本発明者らは、急性呼吸困難が現れている対象者の入院時のLTBP2レベルが、入院後1年以内に死亡した対象者において、1年で生存している対象者と比較して有意に高いことを見出した。この特徴は、患者集団を急性心不全(AHF)の有無に基づいて又はGFRにより測定される腎機能(機能障害)に基づいて分割したときにも観察された。結果として、本発明者らは、呼吸困難、特には急性呼吸困難を有する患者、AHFを有する患者及び/又は腎機能障害、特には慢性腎機能障害を有する患者における死亡率の予知又は予後予測に有利な新たなバイオマーカーとしてのLTBP2に気付いた。
よって、対象者のサンプル中のLTBP2量を測定することを含んでなる、呼吸困難及び/又は急性心不全及び/又は腎機能障害を有する対象者の死亡率を予知又は予後予測する方法もまた提供される。好ましくは、呼吸困難は急性呼吸困難であり得る。好ましくは、腎機能障害は慢性腎機能障害、特には慢性腎臓病であり得る。限定されないが、呼吸困難は、AHF及び/又は腎機能障害と関連してもよいし、これらによって引き起こされてもよく;或いは、呼吸困難は、AHF及び腎機能障害以外の病状と関連してもよいし、それらによって引き起こされてもよく;或いは、対象者は、呼吸困難の症状を伴わずにAHF及び/又は腎機能障害を有していてもよい。
【0021】
1つの実施形態において、呼吸困難及び/又は急性心不全及び/又は腎機能障害を有する対象者の死亡率を予知又は予後予測する方法は、以下の工程:(i)対象者のサンプル中のLTBP2量を測定する工程;(ii)(i)で測定したLTBP2量を、死亡率の既知の予知又は予後を表すLTBP2量参照値と比較する工程;(iii)(i)で測定したLTBP2量の参照値からの逸脱又は逸脱無しを発見する工程;及び(iv)前記逸脱又は逸脱無しの発見を、対象者の死亡率の特定の予知又は予後に帰する工程を含んでなる。
死亡率を予知又は予後予測する本方法は、好ましくは対象者がひとたび呼吸困難及び/又は急性心不全及び/又は腎機能障害を示すか又はこれらであると診断されると、より好ましくは前記疾患及び病状の最初(1回目の)提示又は診断に際して、対象者に対して実施され得る。
実験の章で示したように、呼吸困難及び/又はAHF及び/又は腎不全の対象者集団における増大した死亡率は、上昇したLTBP2レベルと関連する。結果として、増大した死亡率(所定の期間内に死亡するリスク又は見込みの増大)の予知又は予後予測は、特に、上昇したLTBP2レベルに関連付けることができる。
【0022】
限定されないが、例えば、所与の死亡率(すなわち、所定期間内での、所与の(例えば、通常の)死亡リスク又は見込み)の予知又は予後を表す参照値と比較して、対象者のサンプル中のLTBP2の量が上昇(すなわち、逸脱)していることは、対象者は当該期間内に死亡するリスクが相当に大きいことを示す。
限定されないが、死亡率は、予知又は予後予測法の実施時から例えば数ヶ月又は数年の期間内に、例えば、予知又は予後予測法の実施時から約6ヶ月以内或いは約1年以内又は約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9又は約10年以内に、対象者が死亡する見込みとして適切に表し得る。
【0023】
例示的であって非限定的な実験において、生存状態 対 死亡状態を考慮する期間を予知又は予後予測法の実施時から1年に設定したとき、LTBP2レベルは、呼吸困難対象者、AHF対象者及び腎機能障害対象者の正常死亡率と増大した死亡率との間の満足な区別を提供した。よって、幾つかの実施形態において、死亡率は、予知又は予後予測法の実施時から6ヶ月〜2年の期間内に、好ましくは1年以内に対象者が死亡する見込みとして適切に表し得る。
対象者の増大した死亡見込みを知ることで対象者の疾患又は病状を処置するための治療上の決定が導かれることが理解される。
【0024】
本発明者らは更に、LTBP2タンパク質レベルが、胸部大動脈狭窄(TAC)動物の肥大した左心室で、コントロールと比較して増大していることを見出した。したがって、本発明者らは、左心室肥大及び心線維症の評価に有利な新たなバイオマーカーとしてのLTBP2に気付いた。WO 2008/046509は、左心室肥大のDOCAラットモデルにおいて、LTBP2の発現をmRNAレベルで調べているが、結論的な結果はない。
別の観点は、子癇前症(PE)の評価に有利な新たなバイオマーカーとしてのLTBP2を提供する。更なる観点は、妊娠関連蛋白尿(PAP)の評価に有利な新たなバイオマーカーとしてのLTBP2を提供する。
よって、対象者のサンプル中のLTBP2レベルを測定することを含んでなる、対象者の左心室肥大(LVH)、心線維症(CF)、PE又はPAPのいずれかを予知、診断、予後予測及び/又はモニターする方法が提供される。
【0025】
1つの実施形態において、LVH、CF、PE又はPAPのいずれかを予知、診断及び/又は予後予測する方法は、下記の工程:(i)対象者のサンプル中のLTBP2量を測定する工程;(ii)(i)で測定したLTBP2量を、LVH、CF、PE又はPAPの既知の予知、診断及び/又は予後を表すLTBP2量参照値と比較する工程;(iii)(i)で測定したLTBP2量の参照値からの逸脱又は逸脱無しを発見する工程;及び(iv)前記逸脱又は逸脱無しの発見を、対象者のLVH、CF、PE又はPAPの特定の予知、診断及び/又は予後に帰する工程を含んでなる。
LVH、CF、PE又はPAPのいずれかを予知、診断及び/又は予後予測する方法、特に前段落に記載の工程(i)〜(iv)を含んでなる方法は、対象者について、2以上の一連の時点で実施され、該一連の時点でのそれぞれの結果を比較し、そのことにより該一連の時点でLVH、CF、PE又はPAPの予知、診断及び/又は予後間で変化の有無を決定し得る。このように、本方法により、対象者のLVH、CF、PE又はPAPのいずれかの予知、診断及び/又は予後の変化を経時的にモニターすることが可能になる。
【0026】
1つの実施形態において、LVH、CF、PE又はPAPのいずれかをモニターする方法は、次の工程:(i)2以上の一連の時点からの対象者のサンプル中のLTBP2量を測定する工程;(ii)(i)で測定したサンプル間でLTBP2量を比較する工程;(iii)(ii)で比較したサンプル間でLTBP2量の逸脱又は逸脱無しを発見する工程;及び(iv)逸脱又は逸脱無しの発見を、2以上の一連の時点間での対象者のLVH、CF、PE又はPAPの変化に帰する工程を含んでなる。このようにして、本方法により、対象者のLVH、CF、PE又はPAPのいずれかを経時的にモニターすることが可能になる。
LVH、CF、PE若しくはPAPのいずれかの予知若しくは診断又はLVH、CF、PE若しくはPAPの不良な予後は、特には、上昇したLTBP2レベルに関連付けることができる。
例えば、限定されないが、LVH、CF、PE若しくはPAP無し(すなわち、健康状態)の予知若しくは診断を表す参照値又はLVH、CF、PE若しくはPAPについての良好な予後を表す参照値と比較して対象者のサンプル中のLTBP2量が上昇(すなわち、逸脱)していることは、それぞれ、対象者がLVH、CF、PE若しくはPAPを有しているか又は有するリスクにあることを示すか、又は対象者のLVH、CF、PE若しくはPAPについての不良な予後を示す。
【0027】
また、(i)対象者のサンプル中のLTBP2量を測定し;(ii)(i)で測定したLTBP2量を、LVH、CF、PE又はPAPの既知の診断、予知及び/又は予後を表すLTBP2量参照値と比較し;(iii)(i)で測定したLTBP2量の参照値からの逸脱又は逸脱無しを発見し;(iv)前記発見から、腎LVH、CF、PE又はPAPを処置する治療法の必要性の有無を推論することを含んでなる、対象者がLVH、CF、PE又はPAPのいずれかを処置する治療法を必要としているか否か(例えば、依然として必要としているのか又はもはや必要としていないのかなど)を決定する方法も開示される。
工程(i)〜(iii)によって、対象者がLVH、CF、PE若しくはPAPを有しているか若しくは有するリスクにあるか、又はLVH、CF、PE若しくはPAPについて不良な予後を有するという結論が可能になる場合(例えば、限定されないが、LVH、CF、PE又はPAP無し(すなわち、健康状態)の予知又は診断を表す参照値と比較して対象者のサンプル中のLTBP2量が上昇(すなわち、逸脱)している場合)に、特に、治療が指示され得る。限定されないが、LVH、CF、PE又はPAPを有する患者は、医療センターへの入院に際して又は入院中に、LVH、CF、PE又はPAPの治療を継続する必要性について本明細書に教示したように試験されてもよく、そして治療はもはや必要とされないか又は或る制限された程度でのみ必要とされるときに退院してもよい。
【0028】
本明細書中で教示される予知、診断、予後及び/又はモニタリング方法のいずれかにより、好ましくは、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%又は少なくとも80%、例えば≧85%若しくは≧90%若しくは≧95%、例えば80%〜100%又は85%〜95%の感度及び/又は特異性(好ましくは、感度及び特異性)が可能になり得る。
本明細書を通して、「疾患及び/又は病状」への言及は、その引用の文脈と一致する限りにおいて、本明細書に開示した任意の疾患及び病状を包含し、特に(ただし、これらに限定されるものではない)腎機能障害、腎不全と関連するか又はこれにより引き起こされる呼吸困難、呼吸困難及び/又は急性心不全及び/又は腎機能障害を有する対象者の増大した死亡率、左心室肥大、心線維症、PE及びPAPを含む。
疾患又は病状を予知、診断、予後予測及び/又はモニターする本発明の方法は、疾患若しくは病状を有していると未だ診断されていない個体で(例えば予防検診で)、又はそのような疾患若しくは病状を有していると診断された個体で、又はそれらを有していると疑われる個体(例えば、1以上の特徴的な症状を提示する個体)で、又はそれらを発症するリスクにある個体(例えば、遺伝的素因、1以上の発生上、環境上又は行動上のリスクファクターの存在)で使用し得る。この方法はまた、疾患又は病状の進行又は重篤度の種々のステージを検出するために使用されてもよい。この方法はまた、予防的若しくは治療的処置又は他の介入に対する、疾患又は病状の応答を検出するために使用されてもよい。本方法は更に、患者の疾患又は病状の悪化、現状維持、部分回復又は完全回復についての医師の決定(患者の更なる治療若しくは観察又は医療センターからの退院のいずれかに帰結する)を援助するために使用することができる。
【0029】
疾患又は病状を予知、診断、予後予測及び/又はモニターする本明細書に記載の方法のいずれかは、集団検診(例えば、一般集団又は1以上の基準、例えば、年齢、性別、家系、職業、AHFのリスクファクターの有無などに基づいて階層化した集団における検診のような集団検診)に用い得る。いずれかの方法において、対象者は、呼吸困難の症状を示す患者集団の一部を形成し得る。
糖尿病及び高血圧は、腎機能障害、より具体的には(慢性)腎臓不全を発症する主要なリスクファクターの代表である。よって、本発明の診断、予知、予後及び/又はモニタリング方法は、好ましくは、そのような患者及び患者集団において、すなわち糖尿病及び/又は高血圧を有しているか又は有するリスクにある対象者において用い得る(例えば、予防検診で)。
本発明の方法は、医師が患者サンプル中のLTBP2レベルを測定することによって疾患進行をモニターすることを可能にする。例えば、以前(例えば、EDへの収容時)のLTBP2レベルと比較したときのLTBP2レベルの減少は、対象者の疾患又は病状が改善しつつあるか又は改善したことを示す一方、以前(例えば、EDへの収容時)のLTBP2レベルと比較したときのLTBP2レベルの増加は、対象者の疾患又は病状が悪化したか又は悪化しつつあることを示す。このような悪化は、おそらくは、疾患又は病状の再発を生じ得る。
【0030】
本開示に照らせば、
− マーカー(バイオマーカー)としてのLTBP2の使用;
− 本明細書に教示した疾患又は病状のいずれかのマーカー(バイオマーカー)としてのLTBP2の使用;
− 診断、予知、予後及び/又はモニタリングのためのLTBP2の使用;
− 本明細書に教示した疾患又は病状のいずれかの診断、予知、予後及び/又はモニタリングのためのLTBP2の使用
もまた提供される。特には、前記病状又は疾患は、腎機能障害、腎不全に関係するか又はこれにより引き起こされる呼吸困難、呼吸困難及び/又は急性心不全及び/又は腎機能障害を有する対象者の増大した死亡率、左心室肥大、心線維症、PE、及びPAPから選択され得る。
本発明の予知、診断、予後及び/又はモニタリング方法において、LTBP2の測定はまた、それぞれの疾患及び病状に該当する1以上の更なるバイオマーカー又は臨床パラメータの評価と組み合わされ得る。
【0031】
結果として、検査段階が、対象者のサンプル中の1以上のそのような他のマーカーの有無及び/又は量を測定することを更に含んでなる方法もまた本明細書において開示される。この点に関して、任意の既知の又は未知の適切なマーカーが使用され得る。
本明細書を通して、「LTBP2以外の」バイオマーカー又は「他のバイオマーカー」への言及は、一般には、本明細書に開示される疾患及び病状を予知、診断、予後予測及び/又はモニターするに有用である他のバイオマーカーを包含する。例としてであって、限定されないが、腎機能障害の評価に有用なバイオマーカーとしては、クレアチニン(すなわち、血清クレアチニンクリアランス)、シスタチンC及び好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(neutrophil gelatinase-associated lipocalin;NGAL)、βトレースタンパク質(beta-trace protein)、腎臓傷害分子1(KIM-1)、インターロイキン-18(IL-18)が挙げられる。本開示において有用な更なるバイオマーカーとしては、とりわけ、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、プロ-B型ナトリウム利尿ペプチド(プロBNP)、アミノ末端プロ-B型ナトリウム利尿ペプチド(NTプロBNP)及びC反応性ペプチド並びにそれらのいずれかのフラグメント又は前駆体が挙げられる。
【0032】
よって、対象者において、本明細書に教示した疾患又は病状を予知、診断及び/又は予後予測する方法であって、次の工程:(i)対象者のサンプル中のLTBP2量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定する工程;(ii)(i)の測定値を使用して、LTBP2量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての対象者プロフィールを確立する工程;(iii)(ii)の対象者プロフィールを、LTBP2量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての、本発明による病状、症状及び/又はパラメータ値の既知の予知、診断及び/又は予後を表す参照プロフィールと比較する工程;(iv)(ii)の対象者プロフィールの参照プロフィールからの逸脱又は逸脱無しを発見する工程;(v)前記逸脱又は逸脱無しの発見を、対象者のそれぞれの疾患又は病状の特定の予知、診断及び/又は予後に帰する工程、を含んでなる方法が開示される。
2以上の一連の時点でこの方法を適用することにより、記載した疾患又は病状のモニタリングが可能になる。
【0033】
本方法は、他のバイオマーカーについて以前に用いられた公知の手順に従って確立され得るLTBP2量についての参照値を用いてもよい。このような参照値は、本明細書で規定されるように、本発明の方法の内で確立されてもよい(すなわち、本発明の方法の1工程を構成してもよい)し、本発明の方法の外で確立されてもよい(すなわち、本発明の方法の1工程を構成していなくてもよい)。したがって、本明細書中で教示される方法のいずれかは、LTBP2量についての参照値を確立する工程を含んでなり得る。ここで、該参照値は、(a)本明細書で教示される疾患又は病状が存在しないことの予知若しくは診断又はその良好な予後を表すか、或いは(b)本明細書で教示される疾患又は病状の予知若しくは診断又はその不良な予後を表す。
【0034】
更なる観点は、
(a)本明細書で教示される疾患若しくは病状が存在しないことの予知若しくは診断又はその良好な予後、或いは
(b)本明細書で教示される疾患若しくは病状の予知若しくは診断又はその不良な予後
を表す、LTBP2量についての参照値を確立する方法を提供し、該方法は、
(i)
(i a) それぞれの疾患若しくは病状を有していないか若しくは有するリスクにないか又はそれらについて良好な予後を有する1以上の対象者からの1以上のサンプル中、或いは
(i b) それぞれの疾患若しくは病状を有しているか若しくは有するリスクにあるか又はそれらについて不良な予後を有する1以上の対象者からの1以上のサンプル中
のLTBP2量を測定し、
(ii)
(ii a) (i a)で測定したLTBP2量を、それぞれの疾患若しくは病状が存在しないことの予知若しくは診断を表すか又はそれらについての良好な予後を表す参照値として保存するか、或いは
(ii b) (i b)で測定したLTBP2量を、それぞれの疾患若しくは病状の予知若しくは診断を表すか又はそれらについての不良な予後を表す参照値として保存する
ことを含んでなる。
【0035】
そうでなければ、本方法は、LTBP2量並びに(他のバイオマーカーについて以前に用いられた公知の方法に従って確立され得る)1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての参照プロフィールを用い得る。このような参照プロフィールは、本発明の方法の内で確立されてもよい(すなわち、本発明の方法の1工程を構成してもよい)し、本発明の方法の外で確立されてもよい(すなわち、本発明の方法の1工程を構成していなくてもよい)。したがって、本明細書中で教示される方法は、LTBP2量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての参照プロフィールを確立する工程を含んでなり得る。ここで、該参照プロフィールは、(a)本明細書で教示される疾患若しくは病状が存在しないことの予知若しくは診断又はそれらについての良好な予後を表すか、或いは(b)本明細書で教示される疾患若しくは病状の予知若しくは診断又はそれらについての不良な予後を表す。
【0036】
更なる観点は、LTBP2量並びに本明細書で教示される疾患又は病状を予知、診断、予後予測及び/又はモニターするに有用な1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての、
(a)それぞれの疾患若しくは病状が存在しないことの予知若しくは診断又はそれらについての良好な予後、或いは
(b)それぞれの疾患若しくは病状の予知若しくは診断又はそれらについての不良な予後
を表す参照プロフィールを確立する方法を提供し、該方法は、
(i)
(i a) それぞれの疾患若しくは病状を有していないか若しくは有するリスクにないか又はそれらについて良好な予後を有する1以上の対象者からの1以上のサンプル中、或いは
(i b) それぞれの疾患若しくは病状を有しているか若しくは有するリスクにあるか又はそれらについて不良な予後を有する1以上の対象者からの1以上のサンプル中
のLTBP2量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定し、
(ii)
(ii a) (i a)の測定値を使用して、LTBP2量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量のプロフィールを作成するか、或いは
(ii b) (i b)の測定値を使用して、LTBP2量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量のプロフィールを作成し、
(iii)
(iii a) (ii a)のプロフィールを、それぞれの疾患若しくは病状が存在しないことの予知若しくは診断を表すか又はそれらについての良好な予後を表す参照プロフィールとして保存するか、或いは
(iii b) (ii b)のプロフィールを、それぞれの疾患若しくは病状の予知若しくは診断を表すか又はそれらについての不良な予後を表す参照プロフィールとして保存する
ことを含んでなる。
【0037】
更に、以下:(i)本明細書で教示される疾患にも病状にも罹患していない種々の時点で対象者のサンプル中のLTBP2量を測定し、(ii)対象者の範囲又は平均値(これが対象者についてのLTBP2のベースライン又は参照値である)を算出することを含んでなる、対象者のLTBP2ベースライン又は参照値を確立する方法が提供される。
好ましくは、本方法のいずれかで意図される対象者はヒトであり得る。
LTBP2量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量は、任意の適切な技術、例えば当該分野で公知であり得る技術により測定し得る。例えば、LTBP2量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量は、それぞれ、LTBP2及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る結合性物質並びに前記1以上の他のバイオマーカーに特異的に結合し得る結合性物質を用いて測定し得る。例えば、結合性物質は、抗体、アプタマー、ホトアプタマー、タンパク質、ペプチド、ペプチド類似体又は小分子であり得る。例えば、LTBP2量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量は、イムノアッセイ技術若しくは質量分析法若しくはクロマトグラフィー法、又は前記方法の組合せを使用して測定する。
【0038】
更に、対象者の本明細書で教示される疾患又は病状の予知、診断、予後予測及び/又はモニタリングのためのキットが開示され、該キットは以下:(i)対象者のサンプル中のLTBP2量を測定する手段;及び任意にそして好ましくは(ii)それぞれの疾患又は病状の既知の予知、診断及び/又は予後を表すLTBP2量の参照値、又は該参照値を確立する手段を含んでなる。よって、このキットは、手段(i)により、対象者のサンプル中のLTBP2量を測定し;手段(i)により測定したLTBP2量を、(ii)の参照値又は手段(ii)により確立した参照値と比較し;手段(i)により測定したLTBP2量の、(ii)の参照値からの逸脱又は逸脱無しを発見し;そしてその結果として、前記逸脱又は逸脱無しの発見を、対象者のそれぞれの疾患又は病状の特定の予知、診断及び/又は予後に帰することを可能にする。
【0039】
更なる実施形態は、対象者の本明細書で教示される疾患又は病状を予知、診断、予後予測及び/又はモニターするためのキットを提供し、ここで該キットは、(i)対象者のサンプル中のLTBP2量を測定する手段と、(ii)対象者のサンプル中の1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定する手段と、任意であって好ましくは(iii)LTBP2量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての対象者プロフィールを確立する手段と、任意であって好ましくは(iv)LTBP2量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての、本発明による病状、症状及び/又はパラメータ値の既知の予知、診断及び/又は予後を表す参照プロフィール、又は該参照プロフィールを確立する手段とを含んでなる。よって、このようなキットは、以下:それぞれ手段(i)及び(ii)により、対象者のサンプル中のLTBP2量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定し;前記測定値に基づいて、LTBP2量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての対象者プロフィールを(例えば、キットに含まれる手段又は適切な外部手段を用いて)確立し;該対象者プロフィールを、(iv)の参照プロフィール又は手段(iv)により確立した参照プロフィールと比較し;前記参照プロフィールからの対象者プロフィールの逸脱又は逸脱無しを発見し;そしてその結果として、前記逸脱又は逸脱無しの発見を、対象者のそれぞれの疾患又は病状の特定の予知、診断及び/又は予後に帰することを可能にする。
【0040】
本キット中の、LTBP2量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定する手段は、それぞれ、LTBP2及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る1以上の結合性物質並びに前記1以上の他のバイオマーカーに特異的に結合し得る1以上の結合性物質を含み得る。例えば、前記1以上の結合性物質のいずれかは、抗体、アプタマー、ホトアプタマー、タンパク質、ペプチド、ペプチド類似体又は小分子であり得る。例えば、前記1以上の結合性物質のいずれかは、有利には、固相又は支持体に固定され得る。本キット中の、LTBP2量並びに/或いは1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量を測定する手段は、イムノアッセイ技術若しくは質量分析技術若しくはクロマトグラフィー技術、又は前記技術の組合せを用いてもよい。
よって、(a)LTBP2及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る1以上の結合性物質;(b)好ましくは、既知量又は既知濃度のLTBP2及び/又はそのフラグメント(例えば、コントロール、標準物質及び/又は較正物質として使用するため);(c)好ましくは、LTBP2量の参照値又は該参照値を確立する手段を含んでなる、本明細書で教示される疾患又は病状を予知、診断、予後予測及び/又はモニターするためのキットもまた開示される。前記成分(a)及び/又は(c)は、本明細書中他の箇所で教示されるように、適切に標識化され得る。
【0041】
(a)LTBP2及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る1以上の結合性物質;(b)1以上の他のバイオマーカーに特異的に結合し得る1以上の結合性物質;(c)好ましくは、既知量又は既知濃度のLTBP2及び/又はそのフラグメント並びに既知量又は既知濃度の前記1以上の他のバイオマーカー(例えば、コントロール、標準物質及び/又は較正物質として使用するため);(d)好ましくは、LTBP2量並びに前記1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量についての参照プロフィール、或いは該参照プロフィールを確立する手段を含んでなる、本明細書で教示される疾患又は病状を予知、診断及び/又は予後予測するためのキットもまた開示される。前記成分(a)、(b)及び/又は(c)は、本明細書中他の箇所で教示されるように、適切に標識化され得る。
更に、本明細書で教示される疾患又は病状を診断、予知、予後予測及び/又はモニターするための、本明細書に記載されるキットの使用が開示される。
【0042】
LTBP2及び任意に本発明に係る1以上の他のバイオマーカーを測定するに有用な試剤及びツールもまた開示される。
よって、(a)LTBP2及び/又はそのフラグメント、好ましくは既知量又は既知濃度の前記LTBP2及び/又はそのフラグメントと、(b)任意であって好ましくは、1以上の他のバイオマーカー、好ましくは既知量又は既知濃度の前記1以上の他のバイオマーカーとを含んでなる、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドのアレイ又はマイクロアレイが開示される。
また、(a)LTBP2及び/又はそのフラグメントに特異的に結合し得る1以上の結合性物質、好ましくは既知量又は既知濃度の前記結合性物質と、(b)任意であって好ましくは、1以上の他のバイオマーカーに特異的に結合し得る1以上の結合性物質、好ましくは既知量又は既知濃度の前記結合性物質とを含んでなる結合性物質のアレイ又はマイクロアレイが開示される。
【0043】
また、自宅又は臨床設定での使用のためのポータブルデバイス(例えば、ベッドサイドデバイス)として構成された、上記で教示されるキットもまた開示される。
よって、関連する1つの観点は、(i)対象者からサンプルを取得する手段、(ii)前記サンプル中のLTBP2量を測定する手段、及び(iii)サンプル中で測定したLTBP2量を視覚化する手段を含んでなる、対象者のサンプル中のLTBP2量を測定し得るポータブル検査デバイスを提供する。
1つの実施形態において、(ii)及び(iii)の手段は同じであり得、よって(i)対象者からサンプルを取得する手段;及び(ii)前記サンプル中のLTBP2量を測定し、サンプル中で測定したLTBP2量を視覚化する手段を含んでなる、対象者のサンプル中のLTBP2量を測定し得るポータブル検査デバイスを提供する。
【0044】
1つの実施形態において、前記視覚化手段は、サンプル中のLTBP2量が或る閾値レベルを上回っているのか若しくは下回っているのか、及び/又はサンプル中のLTBP2量が(本明細書で教示される疾患又は病状の既知の予知、診断及び/又は予後を表す)LTBP2量の参照値から逸脱しているのか否かを表示することができる。よって、このポータブル検査デバイスは、適切には、前記参照値又は該参照値を確立する手段もまた含んでなり得る。
1つの実施形態において、閾値レベルは、該閾値レベルを上回るサンプル中のLTBP2量が、対象者がそれぞれの疾患若しくは病状を有しているか若しくは有するリスクにあることを示すか又はそれらについての対象者の不良な予後を示し、前記閾値レベルを下回るサンプル中のLTBP2量が、対象者が本明細書で教示される疾患も病状も有していないか若しくは有するリスクにないことを示すか又はそれらについての対象者の良好な予後を示すように、選択される。
【0045】
1つの実施形態において、ポータブル検査デバイスは、本明細書で教示される疾患若しくは病状が存在しないことの予知若しくは診断を表すか又はそれらについての良好な予後を表す参照値を含んでなるか、或いは該参照値を確立する手段を含んでなり、対象者のサンプル中のLTBP2量が前記参照値と比較して上昇していることは、対象者がそれぞれの疾患若しくは病状を有しているか若しくは有するリスクにあることを示すか又はそれらについての対象者の不良な予後を示す。別の1つの実施形態において、ポータブル検査デバイスは、本明細書で教示される疾患若しくは病状の予知若しくは診断を表すか又はそれらについての不良な予後を表す参照値を含んでなるか、或いは該参照値を確立する手段を含んでなり、対象者のサンプル中のLTBP2量が前記参照値に匹敵していることは、対象者がそれぞれの疾患又は病状を有しているか若しくは有するリスクにあることを示すか又はそれらについての対象者の不良な予後を示す。
1つの更なる実施形態において、ポータブル検査デバイスの測定(場合によっては、及び視覚化)手段は、近位端及び遠位端を有する固体支持体を含んでなり得、該固体支持体は、適用ゾーンに適用された流体サンプルの近位端から遠位端への向きのフローを導くキャピラリ特性を有するように、− 近位端近傍のサンプル適用ゾーン;− サンプル適用ゾーンに対して遠位の反応ゾーン;及び−反応ゾーンに対して遠位の検出ゾーン;− 任意に、LTBP2タンパク質又はペプチドフラグメントを含んでなるコントロール標準;及び− 任意に、より粘性のサンプルのキャピラリフローを向上させる流体供給源を含んでなる。
【0046】
反応ゾーンは、検出剤に接合したLTBP2-特異的結合性分子の1以上のバンドを含んでなり得、このLTBP2-特異的結合性分子接合体は、流体のキャピラリフローと共に移動することができるように、固体支持体上に配置される;検出ゾーンは、固体支持体上に固定されたLTBP2-特異的分子の集合を含んでなる1以上の捕捉バンドを含んでなる。
反応ゾーンは、閾値量のLTBP2-特異的結合性分子接合体が検出ゾーンに移動することを防止するに十分な量で、1以上のLTBP2-特異的結合性分子捕捉バンドを追加的に含んでなり得る。或いは、前記デバイスは、捕捉したLTBP2-特異的結合性分子接合体の量を閾値の値と比較する手段を追加的に含んでなる。
他の観点は、LTBP2が、特に(限定されないが)腎機能障害、腎不全に関連するか又はこれにより引き起こされる呼吸困難、呼吸困難及び/又は急性心不全及び/又は腎機能障害を有する対象者の増大した死亡率、左心室肥大、心線維症、PE、及びPAPを含む本明細書で教示される疾患及び病状における治療的及び/又は予防的介入の価値のある標的であり得ることに気付いたことに関連する。
【0047】
よって、また、下記のいずれもが本明細書中で開示される:
(1)医薬、好ましくは本明細書で教示される疾患又は病状のいずれかの治療に用いる医薬として使用するための、LTBP2のレベル及び/又は活性を変調することができる物質
(2)本明細書で教示される疾患又は病状のいずれかの治療用医薬の製造のための、LTBP2のレベル及び/又は活性を変調することができる物質の使用;又は本明細書で教示される疾患又は病状のいずれかの治療のための、LTBP2のレベル及び/又は活性を変調することができる物質の使用;
(3)治療又は予防有効量の、LTBP2のレベル及び/又は活性を変調することができる物質を対象者に投与することを含んでなる、本明細書で教示される疾患又は病状のいずれかの治療を必要とする対象者において該疾患又は病状を治療する方法;
(4)前記物質がLTBP2のレベル及び/又は活性を減少又は増大、好ましくはLTBP2のレベル及び/又は活性を減少させることができる、上記(1)〜(3)のいずれか1つに記載の主題;
(5)前記物質がLTBP2に特異的に結合することができる、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の主題;
(6)前記物質が抗体又はそのフラグメント若しくは誘導体;ポリペプチド;ペプチド;ペプチド類似体;アプタマー;ホトアプタマー;又は化学物質、好ましくは有機分子、より好ましくは有機小分子である、上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載の主題;
(7)前記物質がLTBP2の発現を減少又は阻害することができ、好ましくは前記物質がアンチセンス剤、リボザイム;又はRNA干渉を引き起こすことができる物質である、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の主題;
【0048】
(8)前記物質が、LTBP2のレベル及び/又は活性を減少又は阻害することができ、好ましくは前記物質が天然型LTBP2より優勢なネガティブ活性を有するLTBP2ポリペプチドの組換え又は単離された欠失構築物である、上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の主題;
(9)試験物質の群から、本明細書で教示される疾患又は病状のいずれかの治療に有用である可能性がある候補物質を選択するためのアッセイであって、試験される物質が、LTBP2のレベル及び/又は活性を変調、例えば増大又は減少、好ましくは減少させることができるかどうかを決定することを含んでなるアッセイ;
(10)選択された候補物質を、本明細書で教示される疾患又は病状のいずれかの非ヒト動物モデル(好ましくは非ヒト哺乳動物モデル)への投与用組成物の製造及び該動物モデルにおけるその予防的及び/又は治療的効果のモニタリングに使用することを更に含んでなる、上記(9)に記載のアッセイ;
(11)上記(10)に記載されたアッセイによって単離された物質;
(12)予防及び/又は治療有効量の上記(1)〜(8)又は(10)のいずれかに記載の物質又は医薬的に受容可能なN-オキシド形態、付加塩、プロドラッグ又はその溶媒和物の1以上を含んでなり、1以上の医薬的に受容可能なキャリアを更に含んでなる医薬組成物又は製剤;
(13)前記1以上の物質と前記1以上の医薬的に受容可能なキャリアとを混合することを含んでなる、上記(12)に記載の医薬組成物又は製剤を製造する方法。
【0049】
上記(1)〜(13)のいずれか1つに記載の病状又は疾患は、特に、腎機能障害、腎不全に関連するか又はこれにより引き起こされる呼吸困難、呼吸困難及び/又は急性心不全及び/又は腎機能障害を有する対象者の増大した死亡率、左心室肥大、心線維症、PE、及びPAPから選択され得る。
よって、(a)1以上、好ましくは複数の試験LTBP2-結合性物質を提供し;(b)(a)の試験LTBP2-結合性物質からLTBP2に結合するものを選択し;そして(c)(b)で選択した試験LTBP2-結合性物質から、1以上の任意の他の意図していないか又は望んでいない標的に結合するものを対抗選択する(すなわち、除去する)ことを含んでなる、LTBP2(例えば、遺伝子又はタンパク質)に特異的に結合し得る物質を選択する方法(スクリーニングアッセイ)もまた企図される。
試験LTBP2-結合性物質とLTBP2との間の結合は、有利には、LTBP2を試験LTBP2-結合性物質と、そのような結合を導くに一般的な条件下に接触させる(すなわち、組み合わせるか、曝露するか、又はインキュベートする)ことによって試験され得る。例えば(限定されないが)、試験LTBP2-結合性物質とLTBP2との結合は、適切にはインビトロで試験され得;又はLTBP2を含み、試験LTBP2-結合性物質に曝されるか又は試験LTBP2-結合性物質を発現するように構成された宿主細胞又は宿主生物中で試験され得る。
【0050】
限定されないが、LTPB2-結合性物質又はLTBP2-変調性物質は、インビトロ、細胞中、器官中及び/又は生物中で、LTBP2と結合するか又はLTBP2の活性及び/又はレベルを変調することができてもよい。
上記(9)及び(10)のいずれかに記載のスクリーニングアッセイにおいて、試験LTBP2-変調性物質によるLTBP2の活性及び/又はレベルの変調は、有利には、LTBP2(例えば、遺伝子又はタンパク質)を当該試験LTBP2-変調性物質と、そのような変調を導くに一般的な条件下に接触させる(すなわち、組み合わせるか、曝露するか、又はインキュベートする)ことによって試験され得る。例示であって、限定されないが、LTBP2の活性及び/又はレベルの変調が、LTBP2への試験LTBP2-変調性物質の結合に起因する場合、前記条件は、そのような結合を導くに一般的な条件であり得る。例えば(限定されないが)、試験LTBP2-変調性物質によるLTBP2の活性及び/又はレベルの変調は、適切にはインビトロで試験され得;又はLTBP2を含み、試験LTBP2-変調性物質に曝されるか又は試験LTBP2-変調性物質を発現するように構成された宿主細胞又は宿主生物中で試験され得る。
【0051】
また、以下も企図される:
− 医薬、好ましくは本明細書で教示される疾患又は病状のいずれかの治療に用いる医薬として使用するためのLTBP2;
− 本明細書で教示される疾患又は病状のいずれかの治療用医薬の製造のためのLTBP2の使用;
− 本明細書で教示される疾患又は病状のいずれかを治療するためのLTBP2の使用;
− 治療又は予防有効量のLTBP2を対象者に投与することを含んでなる、本明細書で教示される疾患又は病状のいずれかの治療を必要とする対象者において該疾患又は病状を治療する方法;
ここで、特には、前記病状又は疾患は、腎機能障害、腎不全に関連するか又はこれにより引き起こされる呼吸困難、呼吸困難及び/又は急性心不全及び/又は腎機能障害を有する対象者の増大した死亡率、左心室肥大、心線維症、PE、及びPAPから選択され得る。
これら及び更なる観点並びに好適な実施形態は、以下の章及び添付の特許請求の範囲に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の詳細な説明
本明細書中で使用する場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈がそうでないことを明示していなければ、単数及び複数の両方の指示対象を含む。
本明細書で使用する場合、用語「含んでなる」及び「から構成される」は、「含む」又は「含有する」と同義であり、非排他的(inclusive)又は非限定的(open-ended)であって、追加の、言及していない部材、要素又は方法工程を排除しない。
【0054】
端点による数値範囲への言及は、それぞれの範囲内に含まれる全ての数及び端数(fractions)並びに記載された端点を含む。
本明細書中で使用する用語「約」は、パラメータ、量、期間などのような測定可能な値に言及する場合、そのばらつき/変動が開示発明における実施に適切である限りにおいて、特定値のばらつき及び特定値からの変動、詳細には±10%以下、好ましくは±5%以下、より好ましくは±1%以下、なおより好ましくは±0.1%以下の特定値のばらつき及び特定値からの変動を包含することを意味する。修飾語「約」が言及する値はまた、それ自体具体的に開示され、好ましいものとしても開示されていると理解すべきである。
【0055】
本明細書中で引用した全ての文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
特に明記しない限り、本発明の開示に使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味を有する。更なるガイダンスのために、本発明の教示をより良く理解するための用語の定義が含まれ得る。
【0056】
本発明者らは、特に腎機能(障害)並びに呼吸困難及び/又は急性心不全及び/又は腎機能障害を有する対象者の死亡率についての、更には左心室肥大、心線維症、子癇前症(PE)及び妊娠関連蛋白尿(PAP)についての価値あるバイオマーカーとしてのLTBP2に気付いた。
用語「バイオマーカー」は、当該分野において広く知られており、対象者におけるその定性的及び/又は定量的評価が対象者の表現型及び/又は遺伝子型の1以上の観点に関して、例えば、所与の疾患又は病状についての対象者の状況に関して、予見的であるか又は情報を提供する(例えば、予知的、診断的及び/又は予後的である)生体分子及び/又はその検出可能部分を広く指称し得る。
【0057】
本明細書中での「本明細書に教示される疾患及び/又は病状」への言及又は類似の言及は、当該記載の文脈と一致する限りにおいて、本明細書中に開示された任意の疾患及び病状を包含し、特に(限定されないが)、腎機能障害、腎不全に関連するか又はこれにより引き起こされる呼吸困難、呼吸困難及び/又は急性心不全及び/又は腎機能障害を有する対象者の増大した死亡率、左心室肥大、心線維症、PE及びPAPを含む。
腎機能障害又は腎臓機能障害(互換的に腎(機能)不全又は腎臓(機能)不全としても知られ得る)は、一般に、腎組織の機能が不適当である(特に、腎臓排泄機能が損なわれている)状態、疾患及び病状を包含する。
【0058】
腎機能障害の徴候及び症状には、限定されないが、血中尿及び/又は窒素レベルの上昇;正常レベルより低いクレアチニンクリアランス及び正常レベルより高い血中クレアチニンレベル;正常レベルより低い自由水クリアランス;容量過負荷及び膨張;異常な酸レベル;正常レベルより高い血中カリウム、カルシウム及び/又はリン酸塩レベル;排尿の変化(例えば、量、浸透圧);ミクロアルブミン尿又はマクロアルブミン尿(macroalbuminuria);腎臓酵素(例えば、ガンマグルタミルシンセターゼ)の活性変化;疲労;皮膚発疹又は掻痒;悪心;呼吸困難;減少した腎臓サイズ;血尿及び貧血の任意の1以上が含まれる。
従来、腎機能障害は、急性の腎若しくは腎臓不全(急性の腎又は腎臓の疾患又は傷害、例えば、急性腎臓傷害又は「AKI」)又は慢性の腎若しくは腎臓不全(慢性の腎又は腎臓の疾患)を意味する主要クラスを含んでなるとみなされる。急性腎不全において進行は代表的に速い(例えば、数日〜数週間)一方、腎不全は、伝統的には、少なくとも3ヶ月間持続すれば、慢性としてみなされ得、その進行には数年かかり得る。
【0059】
急性腎機能障害又は不全は、本明細書中、下記に示すような(Lameireら,2005, Lancet 365:417-430に基づく)「RIFLE」(リスク、傷害、不全、喪失、末期腎疾患)ステージ分け体系を用いて、5つの別個のステージにステージ決定(分類、等級分け)され得る:
ステージ GFR(血清クレアチニンに基づく)基準 尿量基準
GFR=糸球体濾過速度
「リスク」 血清クレアチニンの1.5倍増加 <0.5mL/kg/hの6時間持続
「傷害」 血清クレアチニンの2.0倍増加 <0.5mL/kg/hの12時間持続
「不全」 血清クレアチニンの3.0倍増加 <0.3mL/kg/hの24時間持続
又は>44mM/Lの急性上昇があったときには 又は12時間の無尿
クレアチニン>355mM/L
「喪失」 持続性急性腎不全>4週間
「末期」 末期腎疾患>3ヶ月
【0060】
慢性腎機能障害又は不全は、本明細書中、下記に示すように(Leveyら,2005, Kidney Int 67:2089-2100に基づく)、GFRに基づいてステージ決定(分類、等級分け)され得る:
ステージ1:GFR>90ml/分(正常又は上昇したGFR)
ステージ2:GFR=60〜89mL/分(軽度のGFR減少)
ステージ3:GFR=30〜59mL/分(中程度のGFR減少)
ステージ4:GFR=15〜29mL/分(重度のGFR減少)
ステージ5:GFR<15mL/分(腎不全)
【0061】
腎不全の異なるステージの類似の又は匹敵する分類が得られるその他の腎不全ステージ分け法が本明細書中で使用され得る。
本発明の診断、予知、予後及び/又はモニタリング方法により、対象者が急性又は慢性腎不全を有しているか又は有するリスクにあることを決定すること、例えば、特に、対象者における上記の又は匹敵するステージの急性又は慢性腎不全のいずれかを決定することが可能になり得、及び/又は対象者におけるステージ間の弁別が可能になり得る。
【0062】
急性腎悪化の原因は腎前(pre-renal)、腎後(post-renal)及び/又は腎内(intra-renal)であり得る。腎前の原因としては、腎臓への十分な血液供給の欠如(すなわち、腎低灌流)(これは、とりわけ、出血、大量血液喪失、鬱血性心不全、非代償性肝硬変(出血、腹水症のような合併症を伴う肝硬変)、腎臓血管の損傷、感染に起因する敗血症又は全身性炎症により引き起こされ得る)が挙げられる。腎後の原因としては、蓄尿系又は腎外排路の閉塞(すなわち、閉塞性尿路疾患)(これは、次いで、とりわけ、正常な排尿、前立腺疾患、腎臓結石、腹部悪性腫瘍(例えば、卵巣ガン又は結腸直腸ガン)に干渉する内科療法によって引き起こされ得るか、又は尿カテーテルによって閉塞され得る)が挙げられる。腎内の原因としては、腎組織破壊性の病状、例えば脈管炎、悪性高血圧、急性糸球体腎炎、急性間質性腎炎及び急性尿細管壊死が挙げられる。これらは、限定されないが、虚血性事象(例えば、ヘモグロビン尿症、ミオグロビン尿症及びミエローマ)又は腎毒性物質(例えば、抗生物質、放射線造影剤、尿酸、オキサレート、及び薬物誘導性腎毒性)によって引き起こされることがある。上記の状態、病状又は疾患を有しているか又は有するリスクにある対象者は、急性腎不全を有していてもよいし、急性腎不全を発症するリスクにあってもよい。よって、本発明の診断、予知、予後及び/又はモニタリング方法は、好ましくは、このような患者において用い得る。
【0063】
慢性腎悪化の原因としては、とりわけ、血管疾患、例えば、両側性腎動脈狭窄、虚血性ネフロパシー、溶血性尿毒症症候群及び脈管炎、更には巣状分節性腎硬化症、糸球体硬化症、糸球体腎炎、IgA腎炎、糖尿病性ネフロパシー、ループス腎炎、多嚢腎臓病、慢性尿細管間質性腎炎(例えば、薬剤及び/又は毒素誘発性)、腎線維症、ネフロン癆、腎臓結石及び前立腺疾患を挙げ得る。上記状態、病状又は疾患を有しているか又は有するリスクにある対象者は、慢性腎不全を有していてもよいし、慢性腎不全を発症するリスクにあってもよい。よって、本発明の診断、予知、予後及び/又はモニタリング方法は、好ましくは、このような患者において用い得る。
呼吸困難(又は息切れ)はそれ自体公知であり、対象者が不愉快又は心地の悪い呼吸感覚として経験する共通で悲惨な症状を言い得、これは、より具体的には、「強度が変化する定性的に異なる感覚からなる呼吸の不快感の主体的体験」と定義し得る。呼吸困難は、或る範囲の基礎病理に関連があり得る。
【0064】
本明細書中で使用する用語「心不全」、「急性心不全」及び「慢性心不全」は、それぞれの分野で確立された意味を有する。更なるガイダンスのために、本明細書中で使用する用語「心不全」とは、拡張期又は収縮期の血流速度の障害、したがって心室から末梢器官への不十分な血流によって特徴付けられる病状を広く言う。
「急性心不全」又は「急性非代償性心不全」は、緊急治療の必要性をもたらす、異常な心機能に続発性の症状及び徴候の迅速な発生として定義され得る。AHFは、新規に(心機能不全が以前に知られていない患者における急性心不全の新たな発生)又はCHFの急性代償不全として急性に起こり得る。
【0065】
心機能不全は収縮期又は拡張期の機能不全、心リズムの異常又は前負荷及び後負荷のミスマッチに関連し得る。これは、しばしば、命にかかわり、緊急処置を必要とする。確立された分類によれば、AHFは、症候性患者の幾つかの異なる臨床状態を含む:(I)急性非代償性鬱血性心不全、(II)高血圧/高血圧性クリーゼを伴うAHF、(III)肺浮腫を伴うAHF、(IVa)心臓性ショック/低心拍出量症候群、(IVb)重篤な心臓性ショック、(V)高心拍出量性心不全、及び(VI)右急性心不全。詳細な臨床的説明、AHFの分類及び診断、並びに更なるAHF分類体系(Killip分類、Forrester分類及び「臨床重篤度」分類を含む)の概要については、とりわけ、Nieminenら,2005(「Executive summary of the guidelines on the diagnosis and treatment of acute heart failure: the Task Force on Acute Heart Failure of the European Society of Cardiology」Eur Heart J 26: 384-416)及びその中の文献を参照。
用語「慢性心不全」(CHF)とは、一般に、非常にゆっくりと進行するので、種々の代償機構が当該疾患を平衡化するように機能する心不全の症例をいう。CHFの共通の臨床症状には、とりわけ、息切れ、運動能力の減退、疲労、嗜眠及び末梢浮腫の任意の1以上が含まれる。他のより共通性が少ない症状としては、動悸、記憶又は睡眠障害及び錯乱の任意の1以上が挙げられ、これは、通常、上記共通症状の1以上と同時に起こる。
【0066】
左心室肥大(LVH)は、一般に、心臓の左心室の心筋の肥厚を包含する。LVHは、後負荷を増大させる心血管疾患(例えば、大動脈狭窄又は大動脈弁閉鎖不全)又は高血圧に対する病理学的反応を表し得る。LVHはまた、原発性肥大性心筋症を表し得る。LVH診断は、とりわけ、それ自体公知の基準、例えばSokolow-Lyon指標、Cornell電位基準、Romhilt-Estesポイントスコアシステム又は他の電位ベースの基準を用いる心エコー検査法を使用してなされ得る。
心線維症は、一般に、心臓線維芽細胞の不適切な増殖及び随伴性のマトリクスタンパク質過剰産生に起因する心臓弁の異常肥厚を包含する。
【0067】
「子癇前症」(PE)は、妊娠又は最近の妊娠の影響に起因する、蛋白尿若しくは浮腫又はその両方、糸球体機能障害、脳浮腫、肝臓浮腫、又は凝血異常を伴う高血圧によって特徴付けられる多系障害及び該障害に関連する全ての合併症を意味する。子癇前症は、一般に、妊娠20週後に生じる。子癇前症は、一般には、下記の症状の幾つかの組合せとして定義される:
(1)妊娠20週後の収縮期血圧(BP)>140mmHg及び拡張期BP>90mmHg(一般には、4〜168時間離して2回測定)
(2)新たな蛋白尿の発生(尿検査時にディップスティックにより1+、24時間尿中タンパク質>300mg、又はタンパク質/クレアチニン比>0.3を有する1つのランダム尿サンプル)、及び
(3)分娩後12週までの高血圧及び蛋白尿の回復
【0068】
重篤な子癇前症は、一般には、(1)拡張期BP>110mmHg(一般には、4〜168時間離して2回測定)、又は(2)24時間尿中の3.5g以上のタンパク質の測定若しくはディップスティックにより少なくとも3+タンパク質を有する2つのランダム尿標本により特徴付けられる蛋白尿として定義される。子癇前症において、高血圧及び蛋白尿は、一般に、互いに7日以内に生じる。重篤な子癇前症では、重篤な高血圧、重篤な蛋白尿及びHELLP症候群(溶血、上昇した肝酵素、低血小板)又は子癇が同時に、又は一時には1つの症状だけ生じることがある。場合によっては、重篤な子癇前症は、発作の発症に至ることがある。この重篤な形態の症候群は「子癇」と呼ばれる。子癇はまた、幾つかの器官又は組織、例えば肝臓(例えば、肝細胞損傷、門脈周囲壊死)及び中枢神経系(例えば、大脳浮腫及び大脳出血)に対する機能障害又は損傷を含むことがある。発作の病原は、大脳浮腫及び腎臓における小血管の局所痙攣の発症に続発性であると考えられている。子癇前症は、胎児性の合併症(例えば、子宮内発育遅延(IUGR)及び在胎齢に対して小さい児(SGA))を伴う。「在胎齢に対して小さい児(SGA)」は、世界保健機関(WHO)(Zhang及びBowes 1995, Obstet Gynecol 86:200-208)によって定義されるように、出生時体重が2,500gm未満の体重、又は米国の、人種、経産回数、及び乳児の性別による在胎齢に関する出生時体重表に従って、在胎齢に対する百分位値の10番目を下回る体重である胎児を意味する。
【0069】
用語「予知」、「診断」及び「予後予測」又は「予後」は、医療及び臨床の実務において一般的な表現であり、十分に理解されている。
句 所与の疾患又は病状を「予知、診断及び/又は予後予測する方法」はまた、前記疾患又は病状の「予知、診断及び/又は予後方法」、又は前記疾患又は病状の「予知、診断及び/又は予後をなす(又は決定する又は確立する)方法」などのような句と互換であり得ると理解されるべきである。
更なる説明のために、限定されることなく、「予知」とは、一般に、(未だ)疾患又は病状を有していない対象者における当該疾患又は病状の事前の宣言、指摘又は予告をいう。例えば、対象者の疾患又は病状の予知は、対象者が例えば或る期間内に又は或る年齢までに前記疾患又は病状を発症する確率、見込み又はリスクを示し得る。前記確率、見込み又はリスクは、とりわけ、絶対値、範囲又は統計量として示されてもよいし、適切なコントロール対象者又は対象者集団(例えば、一般的な正常又は健常対象者又は対象者集団)に関して相対的に示されてもよい。よって、対象者が疾患又は病状を発症する確率、見込み又はリスクは、有利には、適切なコントロール対象者又は対象者集団に関して、増減として又は何倍増若しくは減として示されてもよい。本明細書中で使用する場合、用語 対象者の本明細書に教示される病状又は疾患の「予知」はまた、特に、対象者が当該病状又は疾患について「陽性の」予知を有すること、すなわち、対象者が当該病状又は疾患を有するリスクにある(例えば、リスクが、コントロール対象者又は対象者集団に関して有意に増加している)ことを意味し得る。用語 対象者の本明細書で教示される疾患又は病状無しの「予知」は、特に、対象者が当該疾患又は病状について「陰性の」予知を有すること、すなわち、対象者の当該疾患又は病状を有するリスクは、コントロール対象者又は対象者集団に関して有意には増加していないことを意味し得る。
【0070】
用語「診断」とは、一般に、症状及び徴候に基づいて及び/又は種々の診断手順の結果から(例えば、診断する疾患又は病状に特徴的な1以上のバイオマーカーの存否及び/又は量を知ることから)対象者の疾患又は病状を認識、決定又は結論付けるプロセス又は行為をいう。本明細書中で使用する場合、対象者の本明細書で教示される疾患又は病状の「診断」は、特に、対象者が当該疾患又は病状を有していること、よって対象者が当該疾患又は病状を有していると診断されることを意味し得る。対象者の本明細書で教示される疾患又は病状「無しの診断」は、特に、対象者が当該疾患又は病状を有していないこと、よって対象者が当該疾患又は病状を有していないと診断されることを意味し得る。対象者は、当該疾患又は病状を連想させる1以上の従来の症状又は徴候を示すにも関わらず、当該疾患又は病状を有していないと診断され得る。
【0071】
用語「予後予測」又は「予後」とは、一般に、疾患又は病状の進行及び回復の見通し(例えば、確率、期間及び/又は程度)についての予見をいう。
本明細書に教示の疾患又は病状の良好な予後は、一般に、好ましくは受容可能な期間内での、当該疾患又は病状からの満足のいく部分的な又は完全な回復の予見を包含し得る。当該疾患又は病状の良好な予後は、より通常には、好ましくは所定の期間内での、当該疾患又は病状が更に悪化(worsening又はaggravating)しないとの予見を包含し得る。
本明細書で教示される疾患又は病状の不良な予後は、一般に、低水準の回復及び/又は不満足に遅い回復の予見を包含し得、当該疾患又は病状の回復が実質的にないことや当該疾患又は病状の更なる悪化の予見さえも包含し得る。
【0072】
本明細書中で使用する用語「対象者」又は「患者」は、代表的には、ヒトを指称するが、非-ヒト動物、好ましくは温血動物、より好ましくは哺乳動物、例えば非-ヒト霊長類、げっ歯類、イヌ科動物、ネコ科動物、ウマ科動物、ヒツジ科動物、ブタ科動物などへの言及も包含し得る。
【0073】
本明細書中で使用する用語「サンプル」又は「生物学的サンプル」には、対象者から得られた任意の生物学的標本が含まれる。サンプルには、全血、血漿、血清、赤血球、白血球(例えば、末梢血単核細胞)、唾液、尿、糞便(すなわち、大便)、涙、汗、皮脂、乳頭吸引液、管洗浄液、腫瘍滲出物、滑液、脳脊髄液、リンパ、細針吸引液、羊水、任意の他の体液、細胞溶解物、細胞分泌物、炎症液(inflammation fluid)、精液及び膣分泌物が含まれるが、これらに限定されない。好適なサンプルとしては、LTBP2タンパク質を検出可能な量で含んでなるものが挙げられ得る。好適な実施形態において、サンプルは、全血若しくはその分画成分(例えば、血漿、血清、又は細胞ペレット)であり得る。好ましくは、サンプルは、対象者からサンプルを取り出すか又は単離することを可能にする最小限の侵襲法により容易に取得できる。また、サンプルとしては、組織サンプル及び生検、組織ホモジネートなどが挙げられ得る。好ましくは、LTBP2レベルを検出するために使用するサンプルは血漿である。また、好ましくは、LTBP2レベルを検出するために使用するサンプルは尿である。用語「血漿」は、細胞を含有しないが、栄養素、糖類、タンパク質、ミネラル、酵素などを含有する、血球(赤血球、白血球、血小板など)がその中に懸濁される血液の無色の水状液を規定する。
【0074】
分子若しくは分析物(例えば、タンパク質、ポリペプチド又はペプチド)又は2以上の分子又は分析物(例えば、2種以上のタンパク質、ポリペプチド又はペプチド)の群は、該分子若しくは分析物又は該分子若しくは分析物の群の有無及び/又は量が、好ましくは他の分子及び分析物を実質的に排除して、サンプル中で検出又は決定されるとき、サンプル中で「測定される」。
用語「量(quantity又はamount)」及び「レベル」は、同義であり、当該分野において広く十分に理解される。本明細書中で使用するこの用語は、特に、サンプル中の分子若しくは分析物の絶対的な定量又はサンプル中の分子若しくは分析物の相対的な定量、すなわち、別の値(例えば、本明細書中で教示される参照値)に対するか若しくはバイオマーカーのベースライン発現を示す値の範囲に対する相対的な定量をいい得る。これらの値又は範囲は、1人の患者又は1つの患者群から取得することができる。
【0075】
サンプル中の分子又は分析物の絶対量は、有利には、重量若しくはモル量として表わし得るか、又はより一般には濃度として、例えば重量/体積若しくはモル/体積として表し得る。
サンプル中の分子又は分析物の相対量は、有利には、前記別の値(例えば本明細書中で教示する参照値)に対する増減として表し得るか又は何倍増若しくは何倍減として表し得る。第1及び第2のパラメータ(例えば、第1及び第2の量)の間の相対的比較の実施は、先ず、前記第1及び第2のパラメータの絶対値を決定してもよいが、そうしないでも済む。例えば、或る測定法は、前記第1及び第2のパラメータについて定量可能な読取値(例えば、シグナル強度)を生成することができるが、前記読取値は前記パラメータの値の関数であり、該読取値を直接比較して第1のパラメータ 対 第2のパラメータについての相対値を生成することができ、実際、読取値を先ずそれぞれのパラメータの絶対値に変換する必要はない。
【0076】
本明細書中で使用する場合、用語「LTBP2」は、潜在型トランスフォーミング増殖因子β結合タンパク質2(LTBP2)として一般に知られ、またGLC3D、LTBP3、MSTP031、C14orf141としても知られるタンパク質、すなわち当該分野においてこの呼称で通常知られるタンパク質及びポリペプチドに相当する。この用語は、それが見出される任意の生物、特に動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物(ヒト及び非-ヒト哺乳動物を含む)、更により好ましくはヒトの前記タンパク質及びポリペプチドを包含する。この用語は、特に、天然型配列を有する前記タンパク質及びポリペプチド、すなわち、その一次配列が天然に見出されるか又は天然に由来するLTBP2のものと同じである前記タンパク質及びポリペプチドを包含する。当業者は、異なる種間での遺伝的分岐(genetic divergence)に起因して、当該種間でLTBP2の天然型配列が異なり得ることを理解する。更に、LTBP2の天然型配列は、所定の種内での通常の遺伝的多様性(バラツキ)に起因して、同種の異なる個体間で又は異なる個体内で異なり得る。また、LTBP2の天然型配列は、転写後又は翻訳後修飾に起因して、同種の異なる個体間で又は異なる個体内でさえ異なり得る。したがって、天然に見出されるか又は天然に由来する全てのLTBP2配列を「天然型」とみなす。この用語は、生物、器官、組織又は細胞の一部を形成するとき、生物学的サンプルの一部を形成するとき及びこの様な供給源から少なくとも部分的に単離されたときのLTBP2タンパク質及びポリペプチドを包含する。この用語はまた、組換え又は合成手段により製造されたときのタンパク質及びポリペプチドも包含する。
【0077】
例示のLTBP2としては、
図1に再掲した、NCBI Genbank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)アクセッション番号NP_000419(sequence version 1)で記載される一次アミノ酸配列(配列番号1)を有するヒトLTBP2が挙げられるが、これに限定されない。当業者はまた、前記配列がLTBP2の前駆体のものであり、プロセッシングされて成熟LTBP2から切り離される部分を含み得ることも理解する。例えば、
図1において、LTBP2シグナルペプチドは、前記アミノ酸配列において小文字で示されている。
1つの実施形態において、循環性LTBP2、例えば血漿中を循環する分泌形態が、細胞結合型又は細胞限定型LTBP2タンパク質と対立するものとして、検出されてもよい。
【0078】
本明細書中におけるLTBP2への言及はまた、LTBP2のフラグメントを包含し得る。よって、本明細書中でのLTBP2の測定又はLTBP2量の測定への言及は、LTBP2タンパク質又はポリペプチドの測定、例えば、成熟及び/又はプロセッシングされた可溶/分泌形態(例えば、血漿循環形態)のLTBP2の測定並びに/或いはその1以上のフラグメントの測定を包含し得る。例えば、LTBP2及び/又はその1以上のフラグメントは、測定量が一纏めに測定した種の合計量に対応するように、一纏りで測定され得る。別の例では、LTBP2及び/又はその1以上のフラグメントは、各個に測定され得る。好ましくは、前記LTBP2のフラグメントは、血漿循環形態のLTBP2である。表現「血漿循環形態のLTBP2」又は短く「循環形態」は、血漿中を循環する、すなわち細胞結合型でも膜結合型でもない全てのLTBP2タンパク質又はそのフラグメントを包含する。如何なる理論によっても拘束されることを望まないが、このような循環形態は、天然のプロセシングにより全長LTBP2タンパク質から誘導され得るか、又はサンプル中に生じる既知の分解プロセスに起因し得る。或る状況では、循環形態はまた、血漿中を循環していることが見出されている全長LTBP2タンパク質であり得る。よって、この「循環形態」は、サンプル中を循環している、すなわち該サンプルの細胞画分にも膜画分にも結合していない任意のLTBP2タンパク質若しくは任意のプロセシングを受けた可溶形態のLTBP2又は前記いずれかのフラグメントであり得る。
【0079】
本明細書中で使用する場合、用語「プロ-B型ナトリウム利尿ペプチド」(「プロBNP」と略される)及び「アミノ末端プロ-B型ナトリウム利尿ペプチド」(「NTプロBNP」と略される)及び「B型ナトリウム利尿ペプチド」(「BNP」と略される)とは、当該分野においてこれらの呼称で通常知られているペプチドをいう。更なる説明としてであって限定ではないが、インビボで、プロBNP、NTプロBNP及びBNPは、ナトリウム利尿ペプチド前駆体Bプレプロタンパク質(プレプロBNP)に由来する。詳細には、プロBNPペプチドは、プレプロBNPからN-末端分泌シグナル(リーダー)配列が除去された後のプレプロBNPの部分に相当する。BNPは、プロBNPのアミノ酸76のC末端側での切断後の該プロBNPのC末端部分に相当し、NTプロBNPはN末端部分に相当する。
【0080】
用語「シスタチンC」は、ARMD11;MGC117328、シスタチン-3(CST3)としても知られ、Genbankアクセッション番号NP_000090(sequence version 1)で例示されるような、当該分野においてこれらの呼称で一般に知られるペプチドをいう。
本明細書で使用する場合、「好中球ゼラチナーゼ-関連リポカリン」又は「NGAL」は、腫瘍発生性リポカリン24P3、ウテロカリン又はリポカリン2(LCN2)としても知られ、Genbankアクセッション番号NP_005555(sequence version 2)で例示されるような、当該分野においてこれらの呼称で一般に知られるペプチドをいう。
用語「C反応性タンパク質」は、CRP又はPTX1としても知られ、Genbankアクセッション番号NP_000558(sequence version 2)で例示されるような、当該分野においてこれらの呼称で一般に知られるペプチドをいう。
【0081】
用語「βトレースタンパク質」は、とりわけプロスタグランジン-H2 D-イソメラーゼ、プロスタグランジン-D2シンターゼ、セレブリン-28及びPTGDSとしても知られ、Genbankアクセッション番号NP_000945(sequence version 3)で例示されるような、当該分野においてこれらの呼称で一般に知られるペプチドをいう。
用語「腎臓傷害分子1」又はKIM-1は、Ichimuraら,2004(Am J Physiol Renal Physiol 286(3):F552-63)及びIchimuraら,1998(J Biol Chem 273:4135-4142)に例示的に開示されるような、当該分野においてこれらの呼称で一般に知られるペプチドをいう。
用語「インターロイキン-18」とは、Genbankアクセッション番号NP_001553(sequence version 1)で例示されるような、当該分野においてこの呼称で一般に知られているペプチドをいう。
【0082】
文脈からそうでないことが明らかでなければ、本明細書中での任意のタンパク質、ポリペプチド又はペプチドへの言及は、それが見出される任意の生物、特に好ましくは動物、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物(ヒト及び非ヒト哺乳動物を含む)、更により好ましくはヒトに由来するものを包含する。
更に、文脈からそうでないことが明らかでなければ、本明細書中での任意のタンパク質、ポリペプチド又はペプチド及びそのフラグメントへの言及は、一般に、前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチド及びフラグメントの改変形態、例えば発現後修飾(例えば、リン酸化、グリコシル化、脂質化、メチル化、システイン化、スルホン化、グルタチオン化、アセチル化、メチオニンからメチオニンスルホキシド又はメチオニンスルホンへの酸化などを含む)を有する形態もまた包含し得る。
【0083】
1つの実施形態において、LTBP2及びそのフラグメント、又は本明細書中で使用する他のバイオマーカー及びそのフラグメントは、ヒトであり得る。すなわち、その一次配列は、天然に存在するヒトペプチド、ポリペプチド又はタンパク質の対応する一次配列又はそれらの中に存在する対応する一次配列と同じであり得る。よって、この関係で限定詞「ヒト」は、起源又は供給源よりむしろ、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、ペプチド又はフラグメントの一次配列に関する。例えば、このようなタンパク質、ポリペプチド、ペプチド又はフラグメントは、ヒト対象者のサンプル中に存在していてもよいし、該サンプルから単離されていてもよく、又は他の手段(例えば、組換え発現、無細胞翻訳又は非生物学的ペプチド合成)により取得してもよい。
用語 タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの「フラグメント」は、一般に、N-末端及び/又はC-末端が欠失又は短縮化された形態の前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをいう。この用語は、任意の機序、限定されないが、前記タンパク質又はポリペプチドの、例えばオルタナティブ翻訳、エキソ-及び/又はエンド-タンパク質分解並びに/或いは分解(例えばインビボ又はインビトロでの、例えば物理的、化学的及び/又は酵素的タンパク質分解による)によって生じるフラグメントを包含する。限定されないが、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドのフラグメントは、前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチドのアミノ酸配列の少なくとも約5%、又は少なくとも約10%、例えば≧20%、≧30%又は≧40%、例えば≧50%、例えば≧60%、≧70%又は≧80%、更には≧90%又は≧95%を表し得る。
【0084】
例えば、フラグメントには、対応する全長タンパク質の≧5連続アミノ酸、又は≧10連続アミノ酸、又は≧20連続アミノ酸、又は≧30連続アミノ酸、例えば≧40連続アミノ酸、例えば≧50連続アミノ酸、例えば≧60、≧70、≧80、≧90、≧100、≧200、≧300、≧400、≧500又は≧600連続アミノ酸の配列が含まれ得る。
1つの実施形態において、フラグメントは、対応する成熟全長タンパク質又はその可溶形態若しくは血漿循環形態と比較して、N-末端及び/又はC-末端が1〜約20アミノ酸、例えば、1〜約15アミノ酸、又は1〜約10アミノ酸、又は1〜約5アミノ酸だけ短縮化されていてもよい。
例示として、バイオマーカーとして有用なプロBNP、NTプロBNP及びBNPフラグメントは、WO 2004/094460に開示されている。
【0085】
1つの実施形態において、所与のタンパク質、ポリペプチド又はペプチドのフラグメントは、有利にはサンプルからの検出可能なペプチドを取得するような、前記タンパク質、ポリペプチド又はペプチドのインビトロタンパク質分解により獲得されてもよい。例えば、このようなタンパク質分解は、適切な物理的、化学的及び/又は酵素的因子により、例えば、プロテイナーゼ、好ましくはエンドプロテイナーゼにより、すなわちタンパク質、ポリペプチド又はペプチド鎖で内部切断するプロテアーゼにより行なわれてもよい。適切なエンドプロテイナーゼの非限定的なリストには、セリンプロテイナーゼ(EC 3.4.21)、スレオニンプロテイナーゼ(EC 3.4.25)、システインプロテイナーゼ(EC 3.4.22)、アスパラギン酸プロテイナーゼ(EC 3.4.23)、メタロプロテイナーゼ(EC 3.4.24)及びグルタミン酸プロテイナーゼが含まれる。例示の非限定的エンドプロテイナーゼとしては、トリプシン、キモトリプシン、エラスターゼ、Lysobacter enzymogenesエンドプロテアーゼLys-C、Staphylococcus aureusエンドプロテアーゼGlu-C(エンドペプチダーゼV8)又はClostridium histolyticumエンドプロテイナーゼArg-C(クロストリパイン)が挙げられる。更なる公知の酵素又は未同定の酵素も使用し得る;当業者は、所望のペプチド形態を獲得するために、切断特異性及び頻度に基づいて、適切なプロテアーゼを選択することができる。好ましくは、タンパク質分解は、トリプシン型のエンドペプチダーゼ(EC 3.4.21.4)、好ましくはトリプシン、例えば(限定されないが)ウシ膵臓、ヒト膵臓、ブタ膵臓からのトリプシン調製物、組換えトリプシン、Lys-アセチル化トリプシン、溶液状のトリプシン、固体支持体に固定化したトリプシンなどにより行い得る。トリプシンは、とりわけ高い切断特異性及び効率に起因して特に有用である。本発明はまた、任意のトリプシン-様プロテアーゼ、すなわち、トリプシンのものに類似する特異性を有するプロテアーゼの使用を企図する。他に、化学試剤をタンパク質分解に使用してもよい。例えば、CNBrはMetで切断することができ;BNPS-skatoleはTrpで切断することができる。処理条件、例えば、タンパク質濃度、酵素又は化学試剤濃度、pH、緩衝液、温度、時間は、用いる酵素又は化学試剤に依存して、当業者が決定することができる。
【0086】
よって、上記のLTBP2の単離フラグメントもまた提供される。このようなフラグメントは、生物学的サンプル中のLTBP2の存在及び量についての有用な情報をもたらし得る。このことにより、前記フラグメントの検出が関心事になる。よって、本明細書中に開示されるLTBP2フラグメントは有用なバイオマーカーである。好適なLTBP2フラグメントは、配列番号2に記載の配列を含んでなってもよいし、該配列から本質的になってもよいし、又は該配列からなってもよい。
特定の成分(例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド又はそのフラグメント)に言及するときの用語「単離(された)」は、一般に、その成分が、その天然環境の1以上の他の成分から分離して存在していること−例えば、該他の成分から分離されているか又は該他の成分から分離して調製されていること−をいう。例えば、単離されたヒト又は動物タンパク質、ポリペプチド、ペプチド又はフラグメントは、それが天然に存在するヒト又は動物の身体から分離して存在する。
【0087】
本明細書中で使用する用語「単離(された)」は、好ましくは、修飾語「精製(された)」も包含し得る。本明細書中で使用する場合、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド及び/又はそのフラグメントに言及する場合の用語「精製(された)」は、絶対的な純粋性を要求しない。代わりに、この用語は、そのタンパク質、ポリペプチド、ペプチド及び/又はフラグメントが、他のタンパク質との比較での豊富さ(簡便には、質量若しくは重量又は濃度で表現される)が生物学的サンプル中より大きい独特の環境にあることをいう。独特の環境は、単一の媒体、例えば単一の溶液、ゲル、沈殿物、凍結乾燥物などをいう。精製されたペプチド、ポリペプチド又はフラグメントは、例えば、実験室又は組換えの合成、クロマトグラフィー、調製用電気泳動、遠心分離、沈澱、アフィニティー精製などを含む公知の方法により取得してもよい。
【0088】
精製されたタンパク質、ポリペプチド、ペプチド及び/又はフラグメントは、独特の環境のタンパク質含量の、好ましくは≧10重量%、より好ましくは≧50重量%、例えば≧60重量%、尚より好ましくは≧70重量%、例えば≧80重量%、更により好ましくは≧90重量%、例えば≧95重量%、≧96重量%、≧97重量%、≧98重量%、≧99重量%を構成し得、100重量%を構成しさえしてもよい。タンパク質含量は、例えば、Lowry法(Lowryら,1951. J Biol Chem 193: 265)により、任意にHartree 1972(Anal Biochem 48: 422-427)により記載された方法により決定してもよい。また、ペプチド又はポリペプチドの純度は、クーマシーブルー染色又は好ましくは銀染色を使用して、還元又は非還元条件下でSDS-PAGEにより決定してもよい。
【0089】
更に、検出可能な標識を含んでなる、単離されたLTBP2又は本明細書中で教示される単離されたLTBP2フラグメントが開示される。これは、そのようなフラグメントの素早い検出を容易にする。本明細書を通して使用される用語「標識」は、検出可能で好ましくは定量可能な読取値又は特性を提供するために使用することができ、興味対象の実体、例えばペプチド若しくはポリペプチド又は特異的結合性物質に付着することができるか又はこれらの一部となることができる任意の原子、分子、成分又は生体分子をいう。標識は、質量分析的、分光学的、光学的、比色定量的、磁気的、光化学的、生化学的、免疫化学的又は化学的手段により適切に検出可能であり得る。標識としては(限定されないが)、染料;放射性標識、例えば
32P、
33P、
35S、
125I、
131I;高電子密度試剤;酵素(例えば、イムノアッセイで通常使用される西洋ワサビペルオキシダーゼ又はアルカリホスファターゼ);結合性成分、例えばビオチン-ストレプトアビジン;ハプテン、例えばジゴキシゲニン;発光性、リン光性又は蛍光性成分;質量タグ(mass tag);及び単独又は蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)により発光スペクトルを抑制若しくはシフトさせることができる成分との組合せでの蛍光染料が挙げられる。
【0090】
例えば、標識は質量改変標識であり得る。好ましくは、質量改変標識には、ペプチドの1以上のアミノ酸における、対応する非標識ペプチドに関して明確に区別できる安定アイソトープの存在が含まれ得る。質量-標識ペプチドは、質量分析適用において、陽性コントロール、標準物質及び較正物質として特に有用である。具体的には、1以上の明確に区別できるアイソトープを含むペプチドは、化学的にはそっくりであり、クロマトグラフィー及び電気泳動で同様に分離し、また同様にイオン化及びフラグメント化する。しかし、適切な質量分析機では、このペプチド及び任意に、選択されたそのフラグメント化イオンは、識別可能なm/z比を示し、このため識別することができる。識別可能な安定アイソトープ対の例としては、HとD、
12Cと
13C、
14Nと
15N、又は
16Oと
18Oが挙げられる。通常、本発明において分析する生物学的サンプルのペプチド及びタンパク質は、実質的に、自然界で高い普及率(prevalence)を有する一般的なアイソトープ、例えばH、
12C、
14N及び
16Oのみを含有し得る。この場合、質量-標識ペプチドは、天然での普及率が低い1以上の一般的でないアイソトープ、例えば、D、
13C、
15N及び/又は
18Oで標識されてもよい。生物学的サンプルのペプチド又はタンパク質が1以上の一般的でないアイソトープを含む場合には、質量-標識ペプチドがそれぞれの一般的なアイソトープを含んでなり得ることも考えられる。
【0091】
アイソトープ標識した合成ペプチドは、とりわけ、1以上のアイソトープ標識アミノ酸基質を使用して該ペプチドを合成若しくは組換え産生することにより、又は非標識ペプチドを化学的若しくは酵素的に修飾して1以上の明確に識別可能なアイソトープを導入することによって取得してもよい。例示として、D-標識ペプチドは、市販の重水素化L-メチオニンCH
3-S-CD
2CD
2-CH(NH
2)-COOH又は重水素化アルギニンH
2NC(=NH)-NH-(CD
2)
3-CD(NH
2)-COOHの存在下で合成又は組換え産生されてもよいが、これに限定されない。標識ペプチドの合成又は組換え産生のために、重水素化形態又は
15N-若しくは
13C-含有形態が存在する任意のアミノ酸が考えられ得ることが理解される。別の1つの非限定例において、ペプチドは、H
216O又はH
218O中でトリプシンで処理されてもよく、これは前記ペプチドのCOOH-末端への2つの酸素(それぞれ
16O又は
18O)の組込みを導く(例えば、US 2006/105415)。
したがって、検出可能な標識を任意に含んでなるLTBP2及び本明細書中に教示される単離されたLTBP2フラグメントの、LTBP2の定性的又は定量的検出アッセイ(測定方法)における、特に対象者の本明細書で教示される疾患又は病状を予知、診断、予後予測及び/又はモニターする方法における、(陽性)コントロール、標準物質又は較正物質としての使用もまた企図される。タンパク質、ポリペプチド又はペプチドは、任意の形態で、とりわけ沈殿物、真空乾燥物、凍結乾燥物として、液体若しくは凍結物として溶液で、又は固相上、例えば固相クロマトグラフィーマトリクス若しくはガラス若しくはプラスチック若しくは他の適切な表面上に共有結合的若しくは非共有結合的に固定されて(例えば、ペプチドのアレイ及びマイクロアレイの一部として)供給され得る。ペプチドは容易に調製され得、例えば、天然の供給源から単離されてもよいし、組換え的又は合成的に製造されてもよい。
【0092】
更に、本明細書中に教示される単離されたLTBP2フラグメントの任意の1以上に特異的に結合し得る結合性物質が開示される。また、本明細書中に教示される単離されたLTBP2フラグメントの1つのみに特異的に結合し得る結合性物質も開示される。本明細書を通じて意図される結合性物質としては、とりわけ、抗体、アプタマー、ホトアプタマー、タンパク質、ペプチド、ペプチド類似体又は小分子を挙げることができる。
結合性物質は血漿循環形態及び細胞結合型又は細胞保持型の両方のLTBP2に結合することができてもよい。好ましくは、結合性物質は、血漿循環形態のLTBP2に特異的に結合するか又はこれを特異的に検出することができてもよい。
本明細書を通して使用される用語「特異的に結合する」は、物質(本明細書中で「特異的-結合性物質」とも指称される)が、ランダムな若しくは無関係な他の分子を実質的に排除し、任意に構造的に関連する他の分子をも実質的に排除して、1以上の所望の分子又は分析物に、例えば1以上の興味対象のタンパク質、ポリペプチド若しくはペプチド又はそのフラグメントに結合することを意味する。用語「特異的に結合する」は、物質がその意図する標的に排他的に結合することを必ずしも要求しない。例えば、物質は、結合条件下での当該意図する標的についての親和性が、非標的分子についての親和性より少なくとも約2倍大きい、好ましくは少なくとも約5倍大きい、より好ましくは少なくとも約10倍大きい、尚より好ましくは少なくとも約25倍大きい、更により好ましくは少なくとも約50倍大きい、尚更により好ましくは少なくとも約100倍又はそれ以上に大きい場合に、興味対象のタンパク質、ポリペプチド、ペプチド及び/又はそのフラグメントに特異的に結合するといってもよい。
【0093】
好ましくは、物質は、意図する標的に、K
A≧1×10
6M
-1、より好ましくはK
A≧1×10
7M
-1、尚より好ましくはK
A≧1×10
8M
-1、更により好ましくはK
A≧1×10
9M
-1、尚更により好ましくはK
A≧1×10
10M
-1又はK
A≧1×10
11M
-1(ここで、K
A=[SBA_T]/[SBA][T]、SBAは特異的結合性物質を示し、Tは意図する標的を示す)の結合親和定数(K
A)で結合し得る。K
Aの決定は、当該分野で公知の方法により、例えば、平衡透析及びScatchardプロット分析を用いて行うことができる。
本明細書を通して使用する特異的-結合性物質は、とりわけ、抗体、アプタマー、ホトアプタマー、タンパク質、ペプチド、ペプチド類似体又は小分子を含み得る。
本明細書中で使用する場合、用語「抗体」はその最も広義の意味で使用され、一般には任意の免疫学的結合性物質をいう。この用語は、具体的には、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多価(例えば、二価、三価又はそれ以上の価)及び/又は多特異性抗体(例えば、二特異性又はそれ以上の特異性の抗体)、並びに所望の生物学的活性(特に、興味対象の抗原に特異的に結合する能力)を示す限りにおいて抗体フラグメント及びそのようなフラグメントの多価及び/又は多特異性複合物を包含する。用語「抗体」は、免疫化を含んでなる方法により生成される抗体を含むのみならず、興味対象の抗原上のエピトープに特異的に結合し得る少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)を含んで作製される任意のポリペプチド、例えば組換え発現ポリペプチドもまた含む。よって、この用語は、インビトロで作製されるかインビボで産生されるかに関わらず、前記のような分子に適用される。
【0094】
抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMクラスのいずれかであり得、好ましくはIgGクラス抗体であり得る。抗体は、ポリクローナル抗体、例えば抗血清又はそれから精製された(例えばアフィニティー精製された)免疫グロブリンであり得る。抗体は、モノクローナル抗体又はモノクローナル抗体の混合物であり得る。モノクローナル抗体は、特定の抗原又は抗原内の特定のエピトープをより高い選択性及び再現性で標的することができる。例として、モノクローナル抗体は、Kohlerら,1975(Nature 256: 495)により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製してもよく、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号のような)により作製してもよいが、これらに限定されない。モノクローナル抗体はまた、ファージ抗体ライブラリから、例えばClacksonら,1991(Nature 352: 624-628)及びMarksら,1991(J Mol Biol 222: 581-597)により記載される技術を用いて単離されてもよい。
抗体結合性物質は抗体フラグメントであり得る。「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の、抗原-結合性領域又は可変領域を含有する部分を含んでなる。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab'、F(ab')
2、Fv及びscFvフラグメント;ダイアボディ;リニア抗体;単鎖抗体分子;及び抗体フラグメントから形成された多価及び/又は多特異性抗体、例えばダイボディ、トリボディ及びマルチボディが挙げられる。上記呼称Fab、Fab'、F(ab')
2、Fv、scFvなどは、当該分野において確立された意味を有するものとする。
【0095】
用語 抗体は、任意の動物種、好ましくは脊椎動物種(例えば、トリ及び哺乳動物を含む)を起源とする抗体又は該動物種に由来する1以上の部分を含んでなる抗体を包含する。限定されないが、抗体はニワトリ、シチメンチョウ、ガン若しくはガチョウ、アヒル若しくはカモ、ホロホロ鳥、ウズラ又はキジであり得る。限定されないが、抗体はまた、ヒト、ネズミ(例えば、マウス、ラットなど)、ロバ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ラクダ(例えば、Camelus bactrianus及びCamelus dromaderius)、ラマ(例えば、Lama paccos、Lama glama又はLama vicugna)又はウマであり得る。
当業者は、抗体が1以上のアミノ酸の欠失、付加及び/又は置換(例えば、保存的置換)を、その変更がそれぞれの抗原の結合を保存する限り、含み得ることを理解する。抗体はまた、その構成要素たるアミノ酸残基の1以上の天然又は人工的改変(例えば、グリコシル化など)を含み得る。
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体並びにそれらのフラグメントの製造方法は当該分野で周知であり、組換え抗体又はそのフラグメントの製造方法も同様である(例えば、Harlow及びLane,「Antibodies: A Laboratory Manual」,Cold Spring Harbour Laboratory, New York, 1988;Harlow及びLane,「Using Antibodies: A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbour Laboratory, New York, 1999, ISBN 0879695447;「Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques」,Zola編, CRC Press 1987, ISBN 0849364760;「Monoclonal Antibodies: A Practical Approach」,Dean & Shepherd編, Oxford University Press 2000, ISBN 0199637229;Methods in Molecular Biology, vol. 248: 「Antibody Engineering: Methods and Protocols」, Lo編, humana Press 2004, ISBN 1588290921を参照)。
【0096】
用語「アプタマー」とは、標的分子(例えば、ペプチド)に特異的に結合することができる、一本鎖又は二本鎖のオリゴ-DNA、オリゴ-RNA又はオリゴ-DNA/RNA或いはそれらの任意のアナログをいう。有利には、アプタマーは、その標的に関して、かなり高い特異性及び親和性を提示することができる(例えば、1×10
9M
-1オーダーのK
A)。アプタマーの作製は、とりわけ、米国特許第5,270,163号;Ellington & Szostak 1990(Nature 346: 818-822);Tuerk & Gold 1990(Science 249: 505-510);又は「The Aptamer Handbook: Functional Oligonucleotides and Their Applications」,Klussmann編, Wiley-VCH 2006, ISBN 3527310592(参照により本明細書中に組み込む)に記載されている。用語「ホトアプタマー」とは、標的分子と共有結合又は架橋することができる1以上の光反応性官能基を含有するアプタマーをいう。用語「ペプチド類似体」とは、対応するペプチドのトポロジーアナログ(topological analogue)である非-ペプチド物質をいう。ペプチドのペプチド類似体を合理的に設計する方法は、当該分野で公知である。例えば、硫酸化8-マーペプチドCCK26-33に基づく3つのペプチド類似体及び11-マーペプチドであるサブスタンスPに基づく2つのペプチド類似体の合理的設計並びに関連するペプチド類似体の設計原理は、Horwell 1995(Trends Biotechnol 13: 132-134)に記載されている。
【0097】
用語「小分子」とは、医薬に一般的に使用される有機分子に匹敵するサイズを有する化合物、好ましくは有機化合物をいう。この用語は、生物学的巨大分子(例えば、タンパク質、核酸など)を包含しない。好適な小有機分子は、サイズが約5000Daまで、例えば、約4000Daまで、好ましくは3000Daまで、より好ましくは2000Daまで、更により好ましくは約1000Daまで、例えば、約900、800、700、600まで又は約500Daまでの範囲である。
よって、(任意に提示キャリアに付着されていてもよい)本明細書中に教示されるLTBP2フラグメントを用いて(すなわち、免疫抗原として用いて)、動物、例えば非-ヒト動物(例えば、実験動物又は家禽)を免疫する方法も開示される。免疫及び免疫血清からの抗体試剤の調製は、それ自体周知であり、本明細書の他の箇所で言及した文献に記載されている。免疫する動物には、任意の動物種、好ましくは温血種、より好ましくは脊椎動物種(例えば、トリ及び哺乳動物を含む)が包含され得る。限定されないが、抗体はニワトリ、シチメンチョウ、ガン若しくはガチョウ、アヒル若しくはカモ、ホロホロ鳥、ウズラ又はキジであり得る。限定されないが、抗体はまた、ヒト、ネズミ(例えば、マウス、ラットなど)、ロバ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、モルモット、ラクダ、ラマ又はウマであり得る。用語「提示キャリア」又は「キャリア」は、一般に、第2の分子に結合されると、通常は追加のT細胞エピトープの提示を通して、該第2の分子に対する免疫応答を増強する免疫原性分子を指称する。提示キャリアは、(ポリ)ペプチド性構造であってもよいし、非-ペプチド性構造、例えば、とりわけグリカン、ポリエチレングリコール、ペプチド模擬体、合成ポリマーなどであってもよい。例示の非限定的キャリアには、ヒトB型肝炎ウイルスコアタンパク質、多重C3dドメイン、破傷風毒素フラグメントC又は酵母Ty粒子が含まれる。
【0098】
本明細書中で教示した免疫により取得されたか又は取得され得る免疫血清は、本明細書中に開示されたLTBP2フラグメントの1以上に特異的に結合する抗体試剤を生じさせるに特に有用であり得る。
更に、(a)本明細書中で教示される1以上のLTBP2フラグメントに結合するが、(b)LTBP2及び/又は他のフラグメントには実質的に結合しない、特異的結合性物質を選択する方法が開示される。好都合には、この方法は、(b)の下で所望でないLTBP2分子と交差反応又は交差結合する結合性物質を抜き取るか又は除去することに基づき得る。このような抜き取りは、種々の親和性分離法(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、親和性固相抽出、親和性磁性抽出など)によって、当該分野で公知のように容易に実施し得る。
サンプルにおけるLTBP2及び/又はそのフラグメント並びに任意に1以上のバイオマーカー又はそのフラグメントの有無(例えば、読取値が存在 対 存在しない であるか;又は、検出可能な量 対 検出不可能な量 である)及び/又は量(例えば、読取値は絶対量又は相対量、例えば、絶対濃度又は相対濃度 である)を測定するために、任意の既存、利用可能又は従来の分離法、検出法及び定量法を本明細書中で使用することができる(サンプル中でこのように測定されるべき任意の興味対象の分子又は分析物(LTBP2及びそのフラグメントを含む)を、下記でまとめてバイオマーカーと呼ぶこともある)。
【0099】
例えば、このような方法には、イムノアッセイ法、質量分析法若しくはクロマトグラフィー法又はそれらの組合せが含まれ得る。
用語「イムノアッセイ」とは、一般に、サンプル中の1以上の興味対象の分子又は分析物を検出するためのものとして公知である方法をいう。ここで、興味対象の分子又は分析物に関するイムノアッセイの特異性は、特異的結合性物質(一般には抗体)と興味対象の分子又は分析物との間の特異的結合により与えられる。イムノアッセイ技術には、直接ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、間接ELISA、サンドウィッチELISA、競合ELISA、マルチプレックスELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ELISPOT技術及び当該分野で公知の他の類似技術が含まれるが、これらに限定されない。これらイムノアッセイ法の原理は、当該分野で公知である(例えばJohn R. Crowther,「The ELISA Guidebook」,第1版,Humana Press 2000, ISBN 0896037282)。
【0100】
更なる説明として、直接ELISAは、サンプル中の標的抗原に結合しそのことにより該標的抗原を定量する、マイクロウェルプレートのような固体支持体に固定化された標識一次抗体を利用するが、これに限定されない。間接ELISAは、標的抗原に結合する非標識一次抗体と、抗原に結合した一次抗体を認識し、該抗体の定量を可能にする二次標識抗体とを使用する。サンドウィッチELISAでは、標的抗原は、抗原内の1つの抗原性部位に結合する固定化「捕捉」抗体を用いてサンプルから捕捉され、こうして捕捉された抗原が、非結合分析物の除去後に、前記抗原内の別の抗原性部位に結合する「検出」抗体を用いて検出される。ここで、検出抗体は、上記のように、直接標識されていてもよいし、間接的に検出可能であってもよい。競合ELISAは、一次抗体又は標的抗原のいずれかであり得る標識「競合物質」を使用する。一例では、固定された非標識一次抗体をサンプルとインキュベートし、この反応を平衡に到達させた後、標識標的抗原を加える。標識標的抗原は、一次抗体の結合性部位がサンプルの非標識標的抗原によって未だ占められていない限り、該一次抗体に結合する。よって、結合した標識抗原の検出量は、サンプル中の非標識抗原の量と逆相関する。マルチプレックスELISAは、単一区画(例えば、マイクロプレートウェル)内で、通常、複数のアレイアドレスで、2以上の分析物の同時検出を可能にする(更なるガイダンスについては、例えば、Nielsen & Geierstanger 2004. J Immunol Methods 290: 107-20及びLingら,2007. Expert Rev Mol Diagn 7: 87-98を参照)。理解されるように、ELISA技術における標識は、通常、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)接合により、エンドポイントは、代表的には、比色、化学発光又は蛍光、磁気、圧電、焦電などである。
【0101】
ラジオイムノアッセイ(RIA)は競合-ベースの技術であり、既知量の放射活性標識(例えば、
125I-又は
131I-標識)標的抗原と該抗原に対する抗体との混合、次いでサンプル由来の非標識又は「非放射性(cold)」抗原の添加、及び置き換わった標識抗原の量の測定を含む(ガイダンスのために、例えば「An Introduction to Radioimmunoassay and Related Techniques」,Chard T編, Elsevier Science 1995, ISBN 0444821198を参照)。
一般に、ペプチドの質量、好ましくは選択したペプチドの断片化及び/又は(部分的)アミノ酸配列に関する正確な情報を取得することができる任意の質量分析(MS)技術(例えば、タンデム質量分析ではMS/MS;又はポストソース分解ではTOF MS)が本明細書中で有用である。適切なペプチドMS及びMS/MS技術及びシステムは、それ自体周知であり(例えば、Methods in Molecular Biology, vol. 146:「Mass Spectrometry of Proteins and Peptides」,Chapman編, Humana Press 2000, ISBN 089603609x;Biemann 1990. Methods Enzymol 193: 455-79;又はMethods in Enzymology, vol. 402:「Biological Mass Spectrometry」,Burlingame編, Academic Press 2005, ISBN 9780121828073を参照)、本明細書中で使用し得る。バイオマーカーペプチド分析に適切なMSアレンジメント、装置及びシステムとしては、限定されないが、マトリクス-支援レーザ脱離/イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)MS;MALDI-TOFポストソース分解(PSD);MALDI-TOF/TOF;表面増強レーザ脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF)MS;エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS);ESI-MS/MS;ESI-MS/(MS)
n(nは0より大きい整数);ESI 3D又はリニア(2D)イオントラップMS;ESIトリプル四重極MS;ESI四重極直交TOF(Q-TOF);ESIフーリエ変換MSシステム;シリコン上での脱離/イオン化(desorption/ionization on silicon;DIOS);二次イオン質量分析(SIMS);大気圧化学イオン化質量分析(APCI-MS);APCI-MS/MS;APCI-(MS)
n;大気圧光イオン化質量分析(APPI-MS);APPI-MS/MS;及びAPPI-(MS)
nが挙げられ得る。タンデムMS(MS/MS)アレンジメントでのペプチドイオン断片化は、例えば衝突誘起脱離(CID)のような当該分野において確立された様式を用いて達成され得る。質量分析によるバイオマーカーの検出及び定量には、多重反応モニタリング(MRM)、例えば、とりわけKuhnら,2004(Proteomics 4: 1175-86)により記載されたものが含まれ得る。MSペプチド分析法は、有利には、例えば下記に記載されるクロマトグラフィー法その他の方法のような、上流のペプチド又はタンパク質の分離法又は断片化法と組み合わされ得る。
【0102】
クロマトグラフィーもまた、バイオマーカーの測定に使用することができる。本明細書中で使用する場合、用語「クロマトグラフィー」は、当該分野においてそう呼ばれ、広範に利用可能である、化学物質を分離するための方法を包含する。好適なアプローチにおいて、クロマトグラフィーとは、液体又は気体の移動している流れ(「移動相」)により運ばれる化学物質(分析物)の混合物が、静止した液相又は固相(「静止相」)の周囲又は上部を流れるにつれ、該分析物が前記移動相と前記静止相との間で分別分布(differential distribution)する結果、成分に分離されるプロセスをいう。静止相は、通常、微粉化固体、フィルター材料のシート、固体表面上の液体の薄膜などであり得る。クロマトグラフィーはまた、例えば、アミノ酸、タンパク質、タンパク質のフラグメント又はペプチドなどのような、生物学的起源の化学化合物の分離に広く適用可能である。
本明細書中で使用するクロマトグラフィーは、好ましくはカラムクロマトグラフィー(すなわち、静止相がカラム中に堆積又は詰められている)、好ましくは液体クロマトグラフィー、より好ましくはHPLCであり得る。クロマトグラフィーの詳細は当該分野で周知であるが、更なるガイダンスのためには、例えばMeyer M., 1998, ISBN: 047198373X及び「Practical HPLC Methodology and Applications」, Bidlingmeyer, B. A., John Wiley & Sons Inc., 1993を参照。例示のクロマトグラフィータイプとしては、限定されないが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、順相HPLC(NP-HPLC)、逆相HPLC(RP-HPLC)、イオン交換クロマトグラフィー(IEC)、例えばカチオン又はアニオン交換クロマトグラフィー、親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(ゲル濾過クロマトグラフィー又はゲル透過クロマトグラフィーを含む)、等電点電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、例えばイムノ-アフィニティー、固定化金属アフィニティークロマトグラフィーなどが挙げられる。
【0103】
クロマトグラフィー(一次元、二次元又はそれ以上の次元のクロマトグラフィーを含む)は、更なるペプチド分析法、例えば本明細書中の他の箇所に記載されるような下流の質量分析との組合せで、ペプチド断片化法として使用し得る。
本開示においてバイオマーカーの測定のために、上記の分析方法のいずれかと任意に組み合せて、更なるペプチド又はポリペプチドの分離法、同定法又は定量法を使用し得る。このような方法としては、限定されないが、化学抽出分配、等電点電気泳動(IEF)(キャピラリ等電点電気泳動(CIEF)、キャピラリ等速電気泳動(CITP)、キャピラリ通電クロマトグラフィー(CEC)などを含む)、一次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D-PAGE)、キャピラリゲル電気泳動(CGE)、キャピラリゾーン電気泳動(CZE)、ミセル動電クロマトグラフィー(MEKC)、フリーフロー電気泳動(FFE)などが挙げられる。
【0104】
本明細書中で教示される種々の観点及び実施形態は、更に、サンプル中で測定されたLTBP2量とLTBP2量の参照値との比較に基づき得る。ここで、前記参照値は本明細書で教示される疾患又は病状の既知の予知、診断及び/又は予後を表す。
例えば、独特な参照値は、本明細書で教示される所与の疾患又は病状を有するリスク(例えば、異常に上昇したリスク)の予知 対 前記疾患又は病状を有するリスク無し又は通常のリスクの予知を表し得る。別の1つの例では、独特な参照値は、前記疾患又は病状を有する異なる程度のリスクの予知を表し得る。
更なる1つの例では、独特な参照値は、本明細書で教示される所与の疾患又は病状の診断 対 前記疾患又は病状無しの診断(例えば、健常の又は前記疾患若しくは病状から回復したことの診断など)を表すことがある。別の1つの例では、独特な参照値は、種々の重篤度の前記疾患又は病状の診断を表し得る。
更に別の1つの例では、独特な参照値は、本明細書で教示される所与の疾患又は病状についての良好な予後 対 前記疾患又は病状についての不良な予後を表し得る。更なる1つの例では、独特な参照値は、前記疾患又は病状について様々に(varyingly)好ましい又は好ましくない予後を表し得る。
【0105】
このような比較には、一般に、比較する値又はプロフィール間の少なくとも1つの差異の有無及び任意に該差異のサイズを決定する任意の手段が含まれ得る。比較には、測定値の目視検査、算術又は統計学的比較が含まれ得る。このような統計学的比較には、ルールの適用が含まれるがこれに限定されない。値又はバイオマーカープロフィールが少なくとも1つの標準を含むとき、当該値又はバイオマーカープロフィールにおける差異を決定するための比較はまた、バイオマーカーの測定値が内部標準物質の測定値と相関するように、これら標準物質の測定値を含み得る。
LTBP2量についての参照値は、他のバイオマーカーについて以前に使用された公知の手順に従って確立され得る。
例えば、本明細書で教示される所与の疾患又は病状の特定の予知、診断及び/又は予後についてのLTBP2量の参照値は、前記疾患又は病状の前記特定の予知、診断及び/又は予後により特徴付けられる(すなわち、腎機能障害の前記予知、診断及び/又は予後が当てはまる)一個体又は個体集団からのサンプル中のLTBP2量を決定することによって確立され得る。このような集団は、限定されないが、≧2、≧10、≧100、又は数百以上でさえある個体を含んでなり得る。
【0106】
よって、例示として、本明細書で教示される所与の疾患又は病状の診断 対 該疾患又は病状無しの診断についてのLTBP2量の参照値は、それぞれ前記疾患若しくは病状を有していると又は有していないと(例えば、臨床的徴候及び症状、イメージング、ECGなどのような他の適切な確定的手段に基づいて)診断された一個体又は個体集団からのサンプル中のLTBP2量を決定することによって確立され得る。
1つの実施形態において、本明細書中で意図されるような参照値は、LTBP2の絶対量を伝え得る。別の1つの実施形態において、検査した対象者のサンプル中のLTBP2量は、参照値との直接比較で(例えば、増減又は何倍増若しくは減に関して)決定され得る。有利には、このことにより、LTBP2のそれぞれの絶対量を先ず決定する必要なく、対象者のサンプル中のLTBP2量と参照値との比較(換言すれば、参照値に関する、対象者のサンプル中のLTBP2の相対量の測定)が可能になり得る。
患者サンプルにおけるバイオマーカーの発現レベル又は存在は、時に、症状の変化(症状のの出現、悪化又は改善)無しに変動、すなわち、顕著に増減し得る。そのような事象において、マーカー変化は、症状の変化に先行し、症状変化より高感度の尺度になる。治療的介入をより早く開始することができ、症状の悪化を待っているより効果的であり得る。より良性の状態での早期介入は自宅で安全に実施され得る。このことは、緊急治療室での重度に悪化した患者の治療からの大幅な改善である。
【0107】
よって、このような場合において、種々の時点で同じ患者のLTBP2レベルを測定することにより、該患者の状態の連続モニタリングが可能になり、本明細書で教示される所与の疾患又は病状に関する患者の病状の悪化又は改善の予知が導かれ得る。本明細書に示されるような自宅又は臨床検査キット又はデバイスは、この連続モニタリングに使用することができる。このような検査のための或る疾患状態(例えば腎機能障害又は腎機能障害無し)に関連するLTBP2レベルの1以上の参照値又は範囲は、例えば、当該患者において、事前に又はモニタリングプロセスの間に或る期間にわたって決定することができる。或いは、これら参照値又は範囲は、高度に類似する疾患表現型を有する幾人かの患者(例えば、健常対象者又は興味対象の疾患又は病状を有していない対象者)のデータセットより確立することができる。LTBP2レベルの前記参照値又は範囲からの突然の逸脱は、(しばしば重篤な)症状を現実に感じるか又は観察する前に、(例えば自宅又は病院で)患者の病状の悪化を予知することができる。
したがって、或る患者におけるLTBP2マーカーレベルの有意な変化(臨床状態の変化(悪化又は改善)を示す)を決定する方法又はアルゴリズムもまた開示する。加えて、本発明は、対象者が本明細書で教示される所与の疾患又は病状から回復中であるか又は既に回復したという診断の確立を可能にする。
1つの実施形態において、本方法は、そのような参照値を確立する工程を含み得る。1つの実施形態において、本キット及びデバイスは、本明細書で教示される所与の疾患又は病状の特定の予知、診断及び/又は予後についてのLTBP2量の参照値を確立する手段を含み得る。この手段は、例えば、前記疾患又は病状の前記特定の予知、診断及び/又は予後により特徴付けられる1以上の個体からの1以上のサンプル(例えば、別個の又はプールしたサンプル)を含んでなり得る。
【0108】
本明細書中で教示される種々の観点及び実施形態は、更に、対象者のサンプル中で測定されるLTBP2量と所与の参照値との間の逸脱又は逸脱無しの発見を必要とする。
第1の値の第2の値からの「逸脱(deviation)」は、一般に、いずれの方向(例えば、増加:第1の値>第2の値;又は減少:第1の値<第2の値)も、いずれの程度の変化も包含し得る。
例えば、逸脱は、限定されないが、比較がなされる第2の値に対し、第1の値の少なくとも約10%(約0.9倍以下)又は少なくとも約20%(約0.8倍以下)又は少なくとも約30%(約0.7倍以下)又は少なくとも約40%(約0.6倍以下)又は少なくとも約50%(約0.5倍以下)又は少なくとも約60%(約0.4倍以下)又は少なくとも約70%(約0.3倍以下)又は少なくとも約80%(約0.2倍以下)又は少なくとも約90%(約0.1倍以下)の減少を包含し得る。
例えば、逸脱は、限定されないが、比較がなされる第2の値に対し、第1の値の少なくとも約10%(約1.1倍以上)又は少なくとも約20%(約1.2倍以上)又は少なくとも約30%(約1.3倍以上)又は少なくとも約40%(約1.4倍以上)又は少なくとも約50%(約1.5倍以上)又は少なくとも約60%(約1.6倍以上)又は少なくとも約70%(約1.7倍以上)又は少なくとも約80%(約1.8倍以上)又は少なくとも約90%(約1.9倍以上)又は少なくとも約100%(約2倍以上)又は少なくとも約150%(約2.5倍以上)又は少なくとも約200%(約3倍以上)又は少なくとも約500%(約6倍以上)又は少なくとも約700%(約8倍以上)などの増加を包含し得る。
【0109】
好ましくは、逸脱とは、統計学的に有意な観察された変化をいい得る。例えば、逸脱とは、所与の集団における参照値の許容誤差範囲(例えば、標準偏差若しくは標準誤差、或いはそれらの所定倍、例えば±1×SD若しくは±2×SD又は±1×SE若しくは±2×SEで表される)から外れる観察された変化をいい得る。逸脱とはまた、所与の集団における値により規定される参照範囲から外れる(例えば、当該集団における値の≧40%、≧50%、≧60%、≧70%、≧75%若しくは≧80%若しくは≧85%若しくは≧90%若しくは≧95%又は≧100%さえを含んでなる範囲から外れる)値をいい得る。
1つの更なる実施形態において、観察された変化が所与の閾値又はカットオフを超える場合、逸脱と結論付けられ得る。このような閾値又はカットオフは、予知法、診断法及び/又は予後法の選択された感度及び/又は特異性、例えば、少なくとも50%又は少なくとも60%又は少なくとも70%又は少なくとも80%又は少なくとも85%又は少なくとも90%又は少なくとも95%の感度及び/又は特異性を提供するように、当該分野で周知のように選択し得る。
【0110】
例えば、1つの実施形態において、本明細書で教示される所与の疾患若しくは病状無しの予知若しくは診断を表すか又は前記疾患若しくは病状についての良好な予後を表す参照値と比べて、対象者のサンプル中のLTBP2量の上昇−好ましくは少なくとも約1.1倍又は少なくとも約1.2倍、より好ましくは少なくとも約1.3倍、更により好ましくは少なくとも約1.4倍、なおより好ましくは少なくとも約1.5倍の上昇、例えば約1.1倍〜3倍の上昇又は約1.5倍〜2倍の上昇−は、対象者が前記疾患若しくは病状を有しているか若しくは有するリスクにあることを示すか、又は前記疾患若しくは病状についての対象者の不良な予後を示す。
対象者のサンプル中のLTBP2量と本明細書で教示される所与の疾患又は病状の或る予知、診断及び/又は予後を表す参照値との間に逸脱を発見したとき、逸脱は、対象者の前記疾患又は病状の予知、診断及び/又は予後が該参照値によって表されるものとは異なるとの結論を示すか又は該結論に帰され得る。
対象者のサンプル中のLTBP2量と本明細書で教示される所与の疾患又は病状の或る予知、診断及び/又は予後を表す参照値との間に逸脱を発見しないとき、逸脱が無いことは、対象者の前記疾患又は病状の予知、診断及び/又は予後が該参照値によって表されるものと実質的に同じであるという結論を示すか又は該結論に帰され得る。
上記の考察は、バイオマーカープロフィールに同様に適用される。
【0111】
2以上の異なるバイオマーカーが対象者において決定されるとき、それぞれの有無及び/又は量は、測定された各バイオマーカーについての値がその一部をなすバイオマーカープロフィールとして一緒に表され得る。本明細書中で使用する場合、用語「プロフィール」は、興味対象の病状と、例えば本明細書で教示される所与の疾患又は病状の特定の予知、診断及び/又は予後と関係する独特な特徴又は特性を表す任意のデータセットを含む。この用語は、一般に、とりわけ核酸プロフィール、例えば遺伝子型プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上の遺伝子の遺伝子型を表す遺伝子型データセット)、遺伝子コピー数プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上の遺伝子の増幅又は欠失を表す遺伝子コピー数データのセット)、遺伝子発現プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上の遺伝子のmRNAレベルを表す遺伝子発現データのセット)、DNAメチル化プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上の遺伝子のDNAメチル化レベルを表すメチル化データのセット)、並びにタンパク質、ポリペプチド又はペプチドプロフィール、例えばタンパク質発現プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上のタンパク質のレベルを表すタンパク質発現データのセット)、タンパク質活性化プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上のタンパク質の活性化又は不活化を表すデータのセット)、タンパク質修飾プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上のタンパク質の修飾を表すデータのセット)、タンパク質切断プロフィール(興味対象の病状と関係する1以上のタンパク質のタンパク質分解性切断を表すデータのセット)、並びにこれらの任意の組合せを包含する。
【0112】
バイオマーカープロフィールは、多くの方法で作成され得、比のような方法又は他のより複雑な関係付け方法若しくはアルゴリズム(例えば、ルール-ベースの方法)を用いて測定可能なバイオマーカー又はバイオマーカーの性状の組合せであり得る。バイオマーカープロフィールは、少なくとも2つの測定値を含んでなる。ここで、測定値は、同じ又は異なるバイオマーカーに対応させることができる。バイオマーカープロフィールはまた、少なくとも3、4、5、10、20、30又はそれより多い測定値を含んでなり得る。1つの実施形態において、バイオマーカープロフィールは、数百又は数千さえの測定値を含んでなる。
よって、例えば、独特な参照プロフィールは、所与の疾患又は病状を有するリスク(例えば、異常に上昇したリスク)の予知 対 前記疾患又は病状を有する通常のリスク又はリスク無しの予知を表し得る。別の1つの例では、独特な参照プロフィールは、前記疾患又は病状を有するリスクの種々の程度の予知を表し得る。
更なる1つの例では、独特な参照プロフィールは、本明細書で教示される所与の疾患又は病状の診断 対 前記疾患又は病状無しの診断(例えば、健常の又は前記疾患若しくは病状から回復したことの診断など)を表すことができる。別の1つの例では、独特な参照プロフィールは、種々の重症度の前記疾患又は病状の診断を表し得る。
更に別の1つの例では、独特な参照プロフィールは、本明細書で教示される疾患又は病状についての良好な予後 対 前記疾患又は病状についての不良な予後を表し得る。更なる1つの例では、独特な参照プロフィールは、前記疾患又は病状についての様々に好ましいか又は好ましくない予後を表し得る。
【0113】
本明細書中で使用する参照プロフィールは、他のバイオマーカーについて以前に使用された公知の手順に従って確立され得る。
例えば、本明細書で教示される所与の疾患又は病状の特定の予知、診断及び/又は予後についてのLTBP2量並びに1以上の他のバイオマーカーの有無及び/又は量の参照プロフィールは、前記疾患又は病状の前記特定の予知、診断及び/又は予後によって特徴付けられる(すなわち、前記疾患又は病状の前記予知、診断及び/又は予後が当てはまる)一個体又は個体集団からのサンプル中でプロフィールを決定することにより確立し得る。このような集団は、限定されないが、≧2、≧10、≧100又は数百以上の個体さえ含んでなり得る。
よって、例示として、本明細書で教示される所与の疾患又は病状の診断 対 該疾患又は病状無しの診断についての参照プロフィールは、それぞれ前記疾患又は病状を有していると診断されたか又は有していないと診断された一個体又は個体集団からのサンプル中でバイオマーカープロフィールを決定することによって確立し得る。
1つの実施形態において、本方法は、そのような参照プロフィールを確立する工程を含み得る。1つの実施形態において、本キット及びデバイスは、本明細書で教示される所与の疾患又は病状の特定の予知、診断及び/又は予後についての参照プロフィールを確立する手段を含み得る。このような手段は、例えば、前記疾患又は病状の特定の予知、診断及び/又は予後によって特徴付けられる1以上の個体からの1以上のサンプル(例えば、別個の又はプールされたサンプル)を含んでなり得る。
【0114】
更に、当該分野で公知の多パラメータ分析を、必要な変更を加えて用いて、値及びそれから作成されるプロフィールの群間(例えば、サンプルプロフィールと参照バイオマーカープロフィールとの間)の逸脱を決定し得る。
サンプルプロフィールと本明細書で教示される所与の疾患又は病状の或る予知、診断及び/又は予後を表す参照プロフィールとの間に逸脱を発見すると、逸脱は、対象者の前記疾患又は病状の予知、診断及び/又は予後が参照プロフィールによって表されるものとは異なるとの結論を示しているか又は該結論に帰され得る。
サンプルプロフィールと本明細書で教示される所与の疾患又は病状の或る予知、診断及び/又は予後を表す参照プロフィールとの間に逸脱を発見しないとき、逸脱が無いことは、対象者の前記疾患又は病状の予知、診断及び/又は予後が参照プロフィールによって表されるものと実質的に同じであるとの結論を示しているか又は該結論に帰され得る。
【0115】
本発明は更に、患者サンプル中のLTBP2マーカーのレベルを検出する手段を含んでなる、本明細書で教示される疾患又は病状のいずれかの診断、予知、予後予測及び/又はモニタリング用キット又はデバイスを提供する。より好適な実施形態において、本発明のキットは、臨床セッティング又は家庭で使用することができる。本発明によるキットは、前記疾患若しくは病状の診断に、前記疾患若しくは病状に罹患した対象者の或る薬剤での処置の有効性のモニタリングに又は前記疾患若しくは病状の発生についての対象者の予防検診に使用することができる。
キット又はデバイスは、臨床セッティングにおいてはベッドサイドデバイスの形態であり得、或いは緊急救命チームのセッティングにおいては、例えば救急車その他の救急救命移動手段の装備若しくはチーム装備の一部として又は応急処置キットの一部としてであり得る。診断キット又はデバイスは、医師、応急救助者(first-aid helper)又は看護士を補助して、観察下の患者が急性心不全を発症しているかどうかを決定することができ、その後、適切な行為又は処置を行うことができる。
家庭用検査キットにより、患者は、医師、応急救助者又は病院の救急救命部に連絡することができる読取り値を得られ、その後適切に行動することができる。このような家庭用検査デバイスは、本明細書で教示される疾患若しくは病状のいずれかの病歴を有するか若しくは該疾患若しくは病状に罹患するリスクにあるか、又は呼吸困難の病歴を有するか若しくは呼吸困難に罹患するリスクにある人々に特に重要である。本明細書で教示される疾患又は病状について高いリスクを有するか又は呼吸困難の病歴を有する対象者は、確かに、本発明による家庭用検査デバイス又はキットを家庭に有することの恩恵を受け得る。なぜならば、彼らは、とりわけ、腎機能障害事象と呼吸困難を引き起こす別の事象とを容易に区別することができ、問題解決のためにとるべき行動を決定する容易な方法がもたらされるからである。
【0116】
本発明による代表的なキット又はデバイスは以下のエレメント:
a)対象者からサンプルを取得する手段
b)サンプル中のLTBP2マーカー量を測定し、サンプル中のLTBP2マーカー量が或る閾値のレベル又は値を下回っているのか又は上回っているのか(これは、対象者が本明細書で教示される所与の疾患又は病状に罹患しているのか否かを示す)を視覚化する手段又はデバイス
を含んでなる。
本発明の実施形態のいずれかにおいて、キット又はデバイスは、c)医師、病院の救急救命部又は応急処置所と直接連絡し、対象者が前記疾患又は病状に罹患しているのか否かを示す手段を追加的に含んでなることができる。
用語「閾値のレベル又は値」又は「参照値」は、同義語として互換的に使用され、本明細書で定義されるとおりである。この用語はまた、高度に類似する疾患状態を有する個々の患者又は患者群において決定される或る範囲のベースライン(例えば「乾燥重量」)値であり得る。
【0117】
本発明の実施形態のいずれかにおいて、本発明のデバイス又はキットは、患者サンプルにおいて更なるマーカーのレベルを検出する手段を追加的に含んでなることができる。更なるマーカーは、例えば、クレアチニン、シスタチンC、NGAL、βトレースタンパク質、腎臓傷害分子1(KIM-1)、インターロイキン-18(IL-18)、BNP、プロBNP、NTプロBNP及びCRP並びにそれらのいずれかのフラグメント又は前駆体であり得る。
本明細書で規定されるキットはいずれも、対象者自身又は医師による使用のために、ベッドサイドデバイスとして使用することができる。
本発明のキットにおいて、対象者からサンプルを取得する手段(a)は、当該分野で公知の対象者からサンプルを取得する任意の手段であり得る。例えば血液サンプルを取得するための例は当該分野で公知であり、任意の種類の指又は皮膚プリック又はランセットベースのデバイスであり得る。これらは、基本的には、皮膚に穴を開け、皮膚から血液小滴を放出させる。尿サンプルを使用するとき、対象者からサンプルを取得する手段は、当該分野で公知の家庭用妊娠検査で使用されるもののような吸収ストリップの形態であり得る。同様に、唾液サンプルは、当該分野で公知の綿球(mount swab)を用いて取得し得る。採血デバイス又は他の採取デバイスの例は、例えば、米国特許第4,802,493号、同4,966,159号、同第5,099,857号、同6,095,988号、同5,944,671号、同4,553,541号、同3,760,809号、同5,395,388号、同5,212,879号、同5,630,828号、同5,133,730号、同4,653,513号、同5,368,047号、同5,569,287号、同4,360,016号、同5,413,006号及び米国出願公開2002/111565、同2004/0096959、同2005/143713、同2005/137525、同2003/0153900、同2003/0088191、WO9955232、WO2005/049107、WO2004/060163、WO02/056751、WO02/100254、WO2003/022330、WO2004/066822、WO97/46157、WO2004/039429又はEP0364621、EP0078724、EP1212138、EP0081975又はEP0292928に示されている。サンプルを提供又は取得する方法は、限定されない。
【0118】
本発明のキットにおいて、サンプル中のLTBP2マーカー量を測定する手段又はデバイス(b)は、サンプル中のLTBP2タンパク質の量を特異的に検出することができる任意の手段又はデバイスであることができる。例は、固相、例えば当該分野で周知の側方流動ストリップ又はディップスティックデバイスなどに付着させたLTBP2-特異的結合性分子を含んでなるシステムである。生化学的アッセイを実施するための1つの非限定的例は、膜の洗浄を必要としない組合せである検査-ストリップ及び標識抗体を使用することである。検査ストリップは、例えば妊娠検査キット(該キットでは、抗-hCG抗体が支持体上に存在し、hCGと複合体化して、尿のフローにより固定された第2抗体上へ運ばれて、視覚化される)の分野で周知である。このような家庭用検査デバイス、システム又はキットの他の非限定的例は、例えば以下のものに見出すことができる:米国特許第6,107,045号、同6,974,706号、同5,108,889号、同6,027,944号、同6,482,156号、同6,511,814号、同5,824,268号、同5,726,010号、同6,001,658号又は米国出願公開2008/0090305又は2003/0109067。
【0119】
1つの好適な実施形態において、本発明は側方流動デバイス又はディップスティックを提供する。このようなディプスティックは、一方の端部(ここにサンプルが適用される)から他方の端部(ここでサンプル中の分析物の存在を測定する)へのキャピラリフローによるサンプルの移動を可能にする検査ストリップを含んでなる。
別の1つの実施形態において、本発明は試剤ストリップを含んでなるデバイスを提供する。このような試剤ストリップは、サンプルで湿らせたとき分析物の存在下で色変化を生じ及び/又はサンプル中のタンパク質の濃度を示す1以上の検査パッドを含んでなる。
本発明のキットの1つの好適な実施形態において、サンプル(b)中のタンパク質の量を測定する手段又はデバイス(1)は固体支持体(7)であり、該固体支持体は近位端(2)及び遠位端(3)を有し、以下:
− 近位端近傍のサンプル適用ゾーン(4)、
− サンプル適用ゾーン(4)に対して遠位の反応ゾーン(5)、及び
− 反応ゾーン(5)に対して遠位の検出ゾーン(6)
を含んでなり、該支持体は、適用ゾーンに適用された流体サンプルの近位端から遠位端への向きのフローを導くキャピラリ特性を有し、
− 任意に、前記手段又はデバイスは、例えばコンテナ、点滴ピペット又はバイアル中に、粘性サンプルがストリップを通ってより容易に流動することを可能にする流体の供給源も含んでなる。
【0120】
反応ゾーン(5)は、検出剤(例えばコロイド金)に接合したLTBP2結合性分子の1以上のバンド(10)を含んでなる。ここで、LTBP2結合性分子接合体は、流体のキャピラリフローと共に移動することができるように、固体支持体上に配置する(すなわち、固定されていない)。検出ゾーン(6)は、固体支持体に固定されたLTBP2結合性分子の集団を含んでなる1以上の捕捉バンド(11)を含んでなる。
サンプルは、サンプル適用ゾーン(4)に適用されると、キャピラリフローにより反応ゾーン(5)へ向かって移動する。サンプル中に存在するLTBP2が標識LTBP2結合性分子接合体と反応し、そうして形成された複合体がキャピラリフローにより検出ゾーン(6)へ運ばれる。検出ゾーン(6)は、その上にLTBP2結合性分子が不可逆的に固定されており、複合体を捕捉し固定化する。これにより、接合体の局所的な濃縮を生じ、視覚化が可能になる。
本明細書に記載されるような2つのゾーン(5及び6)(一方のゾーンは非固定接合体を有し、他方のゾーンは固定された捕捉抗体を有する)は、一般に、重ならない。それらは、固体支持体の(バンドの無い)介在ギャップ有り又は無しで、隣接して配置され得る。バンドは、固体支持体上に、試剤が固定される必要があるかないかに依存して、任意の手段、例えば吸収、吸着、被覆、共有結合又は乾燥により配置され得る。
【0121】
サンプル中のLTBP2タンパク質レベルが或る所定の閾値レベル又は値より高くなったときのみシグナルを生成する半定量検査ストリップを得るためには、固定されていない接合体化LTBP2結合性分子を含んでなる反応ゾーン(5)はまた、所定量の固定されたLTBP2捕捉抗体を含んでなり得る。これにより、サンプル中に存在する或る量(事前に決定した閾値レベル又は値に対応)のLTBP2タンパク質を捕捉して除去することが可能になる。次いで、接合体化又は標識化された結合性分子が結合した残存量のLTBP2タンパク質(あれば)が、検出ゾーン(6)に移動する。この場合、反応ゾーン(6)は、標識化結合性分子-LTBP2複合体だけを受容し、サンプル中のLTBP2タンパク質レベルが所定の閾値レベル又は値より高いときにのみ、その後シグナルを生成する。
サンプル中のLTBP2タンパク質の量が或る閾値レベル又は値を下回っているか又は上回っているかを決定する別の可能性は、サンプル中に存在する全てのLTBP2タンパク質を捕捉する一次捕捉抗体を、固相に結合されると或るシグナル又は色を発生する標識二次抗体と組み合せて使用することである。次いで、色又はシグナルの強度は、シグナル強度が或る閾値シグナルを上回ると、検査は陽性である(すなわち腎機能障害又は腎臓不全が切迫している)ことを示す参照の色又はシグナルチャートと比較され得る。或いは、色又はシグナルの量又は強度は、例えば光吸収センサ又は光照射メータを含んでなる電子デバイスで測定することができ、これにより、生成されたシグナル強度又は色吸収の数値が得られる。この数値は、次いで、閾値を下回っていれば陰性結果の形で、閾値を上回っていれば陽性結果の形で対象者に提示され得る。この実施形態は、患者におけるLTBP2レベルを経時的にモニターするときに該当する。
【0122】
参照値又は範囲は、例えば、対象者が所与の疾患又は病状を有していない期間に、家庭用デバイスを用いて決定することができる。これにより、患者に、自身のベースラインのLTBP2レベルが示される。よって、家庭用検査デバイスの定期的使用により、対象者に、ベースラインレベルと比較してのLTBP2レベルの突然の変化を注意喚起することができ、医師への連絡を可能にする。
或いは、参照値は、本明細書で教示される所与の疾患又は病状に罹患している対象者において決定することができる。この参照値は、個人的なLTBP2「リスクレベル」、すなわち前記疾患又は病状に曝されているか又は間もなく曝されることを示すLTBP2レベルを示す。このリスクレベルは、疾患進行のモニタリング又は処置効果の評価のために関心事である。リスクレベルと比較してのLTBP2レベルの減少は、患者が快方に向かっている病状を示す。
更に、参照値又はレベルは、高度に類似する疾患状態又は表現型を有する(例えば全員が本明細書で教示される疾患又は病状を有しないか又は全員が前記疾患若しくは病状を有する)対象者の測定結果の組合せにより確立することができる。
【0123】
その原理が本発明による家庭用検査デバイスに使用され得る当該分野で公知の半定量検査の非限定的例は、Sanitoetsが販売しているHIV/AIDS検査又は前立腺ガン検査である。家庭用前立腺検査は、全血中4ng/mlより高い血中PSAレベルを検出する初期の半定量検査として意図された迅速検査である。代表的な家庭用自己検査キットは、以下の成分を含んでなる:血液サンプルが適用され、タンパク質レベルが或る閾値レベルを上回るとシグナルを生じる検査デバイス;サンプル適用ゾーンからシグナル検出ゾーンへの分析物(すなわち興味対象のタンパク質)の移行を助ける、例えば点滴ピペット中の、或る量の希釈剤、任意に、血液標本採集用の空ピペット、指穿刺デバイス、任意に、穿刺領域を清浄するための滅菌綿棒、及びキットの使用指示書。
類似の検査もまた、例えば乳ガン検出用及び心臓リスクの家庭検査を考慮したCRP-タンパク質レベル検出用に知られている。後者の検査は、検査結果の検査機関への送付を包含し、そこで結果が技術専門家又は医療専門家により解釈される。このような患者病状の電話又はインターネットベースの診断は、当然のことながら、ほとんどのキットで可能であり、推奨される。なぜならば、検査結果の解釈はしばしば、検査の実施より重要であるからである。サンプル中に存在するタンパク質レベルの数値を提供する上記のような電子デバイスを使用するとき、この値は、当然のことながら、電話、携帯電話、衛星電話、電子メール、インターネットその他の通信手段で容易に通信でき、対象者が腎臓不全に罹患しているか又は罹患するリスクにあり得ることを病院、医師又は応急処置チームに警告することができる。このようなシステムの非限定的例は、米国特許第6,482,156号に開示されている。
【0124】
下記の説明で、本発明の特定の実施形態を例示する図面への言及がなされる;図面は、限定を意図するものでは全くない。当業者は、当業者の共通の実務に従って、デバイス及び代わりの成分及び特徴を適応させ得る。
図10A及びBは、本発明の検査ストリップの1つの好適な実施形態を示す。ストリップ(1)は近位端(2)及び遠位端(3)を含む。サンプル適用ゾーン(4)は近位端(2)に設けられ、反応ゾーン(5)はそれに隣接し、検出ゾーン(6)は遠位端(3)近傍にある。サンプルは、固体支持体(7)上、適用ゾーン(4)に置かれ、毛管作用により検出ゾーン(6)へ移され得る。サンプル適用ゾーン(4)の領域を除き、固体支持体(7)の片面又は両面を覆う保護層(8)を備えていてもよい。この保護層は、サンプル及びストリップの化学成分を汚染及び蒸発から保護する。固体支持体(7)のサンプル適用ゾーン(4)と毛管接触する1以上の吸収パッド(9)が、必要に応じて、サンプルを吸収及び放出し得る;このパッド(9)は、代表的には、サンプル適用ゾーン(4)と同じか又は反対の固体支持体(7)表面に配置される。
図12Bにおいて、吸収パッド(9)はサンプル適用ゾーン(4)の部分である。1以上の他の吸収パッド(9')が、固体支持体(7)の検出ゾーン(6)に毛管接触して、いずれの捕捉バンド(11)、(14)に対しても遠位に配置され得る。これらパッド(9')は、固体支持体を通過した流体を吸収し得る;このパッド(9')は、代表的には、サンプル適用ゾーン(4)と同じか又は反対の固体支持体(7)表面に配置される。固体支持体(7)は、毛管作用特性を有する任意の適切な材料から作製され得、上記のものと同じ特性を有し得る。これは、水和すると毛管作用による流体フローによって固体支持体を横切って移動することができる物質(例えば非固定化LTBP2結合性分子)を支持することもできるべきである。
【0125】
固体支持体(7)はまた、反応ゾーン(5)中、サンプル適用ゾーン(4)に対して遠位に位置するLTBP2結合性分子接合体のバンド(10)を含んでなり得る。サンプル中のLTBP2は、毛管作用によりこのバンド(10)に向かって運ばれ、そこで、LTBP2は不可逆的に固定されたLTBP2結合性分子接合体と反応する。
LTBP2結合性分子接合体には、検出が容易となるように、検出剤が結合又は付着していてもよい。ラボ検出剤の例としては、限定されないが、発光標識;色素のような比色標識;蛍光標識;又は電気活性剤(例えば、フェロシアン化物)のような化学標識;酵素;放射活性標識;又は高周波標識が挙げられる。より一般的には、検出剤は粒子である。本発明の実施に有用な粒子の例としては、限定されないが、コロイド金粒子;コロイドイオウ粒子;コロイドセレン粒子;コロイド硫酸バリウム粒子;コロイド硫酸鉄粒子;ヨウ素酸金属粒子;ハロゲン化銀粒子;シリカ粒子;コロイド金属(含水)酸化物粒子;コロイド硫化金属粒子;コロイドセレン化鉛粒子;コロイドセレン化カドミウム粒子;コロイド金属リン酸塩粒子;コロイド金属フェライト粒子;有機層又は無機層で被覆した上記コロイド粒子のいずれか;タンパク質又はペプチド分子;リポソーム;又はポリスチレンラテックスビーズのような有機ポリマーラテックス粒子が挙げられる。好ましい粒子は、コロイド金粒子である。コロイド金は、G. Frens, 1973 Nature Physical Science, 241:20(1973)に概説される方法のような任意の従来手段により作られ得る。代替法は、米国特許第5,578,577号、同第5,141,850号;同第4,775,636号;同第4,853,335号;同第4,859,612号;同第5,079,172号;同第5,202,267号;同第5,514,602号;同第5,616,467号;同第5,681,775号に記載され得る。
【0126】
固体支持体(7)は、検出ゾーン(6)に1以上の捕捉バンド(11)を更に含んでなる。捕捉バンドは、そこに不可逆的に固定されたLTBP2結合性分子の集団を含んでなる。反応ゾーン(5)で形成されたLTBP2:LTBP2-結合性分子接合体の複合体は、検出ゾーン(6)に向かって移動し、そこで、前記バンド(11)が移動中の複合体を捕捉して濃縮する。こうして、肉眼によるか又は読取り機を用いるかのいずれかでの視覚化が可能になる。反応ゾーン(5)及び検出ゾーン(6)に存在するLTBP2結合性分子は、LTBP2の同じ部分と反応してもよいし、LTBP2の異なる部分と反応してもよい。
1以上のコントロールバンド(12)が固体支持体(7)上に存在してもよい。例えば、非固定化ペプチド(12)がサンプル適用ゾーン(4)に存在し得る。このペプチドは、LTBP2結合性分子のいずれのバンド(13)及び(14)とも交差反応しない。サンプルを適用すると、該サンプルは反応ゾーン(5)に向かって移動する。そこには、抗-ペプチド抗体接合体が配置されており(13)、ペプチド-抗体複合体が形成される。該複合体は、検出ゾーン(6)に向かって移動し、そこには抗-ペプチド抗体の捕捉バンド(14)が固体支持体上に固定されており、これが該複合体を濃縮して視覚化を可能にする。コントロール捕捉バンド(14)は、LTBP2捕捉バンド(11)とは別個に位置し、したがって、陽性反応は、アッセイが正しく機能したときに、検出反応とは別個に観察することができる。
【0127】
本発明によるコントロールの特別な利点は、それが内部コントロールであること−すなわち、LTBP2測定結果と比較し得るコントロールが、個々の固体支持体上に存在することである。したがって、本発明によるコントロールは、例えば、固体支持体におけるバラツキを補正するために使用され得る。このような補正は、例えば支持体の統計学的サンプリングに基づく外部コントロールでは実行不可能であろう。加えて、ロット毎、試行毎(run-to-run)の異なる支持体間の変動が、本発明によるコントロール結合性物質及びコントロール物質の使用によって最小化され得る。更に、非特異結合の影響が低減し得る。これら補正は全て、外部の、支持体上にないコントロールでは実施することが困難である。
アッセイの間、サンプルからのLTBP2とLTBP2結合性分子接合体とは、固体支持体(7)上で結合して濃縮する。この結合により、固体支持体(7)の背景色を超えて視覚化され得る化合物の濃縮が生じる。この化合物は、反応及び検出ゾーンに結合した抗体、検出剤、その他の粒子を含む上記化合物の結合から形成され得る。実施される特定のアッセイに基づいて、反応及び検出ゾーンは、線形又は非線形であり得る適切なダイナミックレンジを達成するように選択して提供され得る。
【0128】
アッセイを実施するための固体支持体(7)は、例えば
図11に示すようなカートリッジ(20)内に収容され得る。カートリッジは、1以上の開口部を除き、好ましくは防水性である。固体支持体(7)は、近位端(2)の適用ゾーン(4)を提供するようにカートリッジの開口部(21)を通じて曝され、遠位端(3)近くの検出ゾーン(6)の読取りが可能となるように別の開口部(22)を通じて曝されている。カートリッジ(20)は、読取りデバイスとの通信用のセンサコード(23)を備え得る。
サンプル中のLTBP2の存在及び/又は濃度は、LTBP2結合性分子が固定されているチップを使用する表面プラズモン共鳴(SPR)、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)、生物発光共鳴エネルギー転移(BRET)、蛍光消光、蛍光偏光測定又は当該分野で公知のその他の手段により測定することができる。記載された結合アッセイのいずれも、サンプル中のLTBP2の存在及び/又は濃度を決定するために使用することができる。そうするために、使用する結合アッセイに適切に、LTBP2結合性分子をサンプルと反応させ、LTBP2濃度を測定する。アッセイを検証及び較正するため、種々の濃度の標準LTBP2及び/又はLTBP2結合性分子を使用するコントロール反応を実施することができる。固相アッセイを用いる場合、インキュベーション後、洗浄工程を行って未結合のLTBP2を除去する。所定の標識に適切なように結合LTBP2を測定する(例えば、シンチレーションカウンティング、蛍光、抗体-色素など)。定性的な結果が望ましい場合、コントロール及び異なる濃度は必要ないかもしれない。当然のことながら、LTBP2及びLTBP2結合性分子の役割は、切り替わり得る;当業者は、LTBP2結合性分子が種々の濃度のサンプルに適用されるように方法を適合させ得る。
【0129】
本発明によるLTBP2結合性分子は、LTBP2に特異的に結合する任意の物質である。本発明による有用なLTBP2結合性分子の例としては、限定されないが、抗体、ポリペプチド、ペプチド、脂質、糖質、核酸、ペプチド-核酸、小分子、小有機分子、又は他の薬剤候補が挙げられる。LTBP2結合性分子は、天然化合物又は合成化合物であり得、例えば合成小分子、動物、植物、細菌又は真菌細胞の抽出物並びに前記細胞からの条件付け培地に含有される化合物を含み得る。或いは、LTBP2結合性分子は、LTBP2の結合部位を有する工学的に操作されたタンパク質であり得る。本発明の1つの観点によれば、LTBP2結合性分子は、10
-6Mより良好な親和性でLTBP2に特異的に結合する。適切なLTBP2結合性分子は、LTBP2の標準サンプルとの結合から決定することができる。LTBP2結合性分子とLTBP2との結合を決定する方法は、当該分野で公知である。本明細書中で使用する場合、用語 抗体には、限定されないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化又はキメラ抗体、工学的に操作した抗体及びタンパク質への結合に十分な生物学的に機能的な抗体フラグメント(例えばscFv、ナノボディ、Fvなど)が含まれる。この抗体は、例えばマウス、ラット、ヒト又はヒト化モノクローナル抗体のようなLTBP2に対する市販の抗体であり得る。
1つの好適な実施形態では、結合性分子又は物質は、成熟の膜結合型又は細胞結合型LTBP2タンパク質又はフラグメントの両方に結合することができる。1つのより好適な実施形態では、結合性物質又は分子は、上記のように、可溶性形態の、好ましくは血漿循環形態のLTBP2に特異的に結合するか又はこれを特異的に検出する。
本発明の1つの観点によれば、LTBP2結合性分子は、別の物質(例えばプローブ結合性パートナー)での検出を可能にするタグで標識される。このタグは、例えば、ビオチン、ストレプトアビジン、his-タグ、mycタグ、マルトース、マルトース結合性タンパク質又は結合性パートナーを有する当該分野で公知の任意の種類のタグであり得る。プローブ:結合性パートナーの組合せに利用できる組の例は、任意であり、例えばビオチン:ストレプトアビジン、his-タグ:金属イオン(例えばNi
2+)、マルトース:マルトース結合性タンパク質を含む。
【0130】
別の1つの実施形態において、本発明は、サンプル中のLTBP2の存在を決定するための簡便で正確な比色試剤ストリップ及び方法を提供する。より具体的には、本発明はまた、試剤ストリップを含んでなるデバイスに関する。本試剤ストリップは、サンプル中のLTBP2の存在を測定するための少なくとも1つの検査パッドを備えた固体支持体を含んでなる。該検査パッドは、好ましくは、LTBP2と相互作用して測定可能な応答、好ましくは視覚的に又は装置により測定可能な応答を生成することができる試剤組成物が組み込まれたキャリアマトリクスを含んでなる。試剤ストリップは、任意のサイズ及び形状で製造されてもよいが、一般に試剤ストリップは縦長である。固体支持体は、任意の適切な材料から構成されてもよく、好ましくは酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート又はポリスチレンのような堅固な材料から作られる。一般には、キャリアマトリクスは、尿サンプルが毛管力により該キャリアマトリクスを移動して試剤組成物に接触し、検出可能又は測定可能な色変化を生じさせることを可能にする吸収性材料である。キャリアマトリクスは、興味対象のアッセイを実施するに必要な化学試剤を組み込むことができる任意の物質であり得る(ただし、キャリアマトリクスが該化学試剤に対して実質的に不活性であり、液体の検査サンプルの可溶成分に関して多孔性又は吸収性である限りにおいて)。表現「キャリアマトリクス」とは、水その他の生理学的流体に不溶であり、水その他の生理学的流体に曝されたとき構造的完全性を維持する吸水性又は非吸水性のマトリクスをいう。適切な吸水性マトリクスとしては、濾紙、スポンジ材料、セルロース、木、織布及び不織布などが挙げられる。非吸水性マトリクスとしては、グラスファイバー、高分子フィルム及び成形膜又は細孔膜が挙げられる。他の適切なキャリアマトリクスとしては、親水性無機粉体、例えばシリカゲル、アルミナ、珪藻土など;粘土質物質;布;親水性天然高分子材料、特にセルロースビーズのようなセルロース材料、及び特に濾紙又はクロマトグラフィー用紙のような繊維含有紙;架橋ゼラチン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリスルホン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、架橋デキストラン、アガロース及び他の架橋及び非架橋水不溶性親水性ポリマーのような合成ポリマー又は改変された天然に存在するポリマーが挙げられる。疎水性で非吸収性の物質は、本発明のキャリアマトリクスとしての使用に適切ではない。
【0131】
キャリアマトリクスは、種々の化学組成物又は化学組成物の混合物からなることができる。マトリクスはまた、硬度及び柔軟性と組み合せた平滑性及び粗さに関して変化し得る。しかし、あらゆる場合で、キャリアマトリクスは、親水性又は吸収性材料を含んでなる。キャリアマトリクスは、最も有利には、吸水性濾紙又は非吸水性高分子フィルムから構築される。好適なキャリアマトリクスは、セルロース誘導材料(例えば、紙、好ましくは濾紙)を含む親水性で吸水性のマトリクス、又は高分子フィルム(例えば、ポリウレタン又は架橋ゼラチン)を含む非吸水性マトリクスである。サンプル中のLTBP2と反応したとき色変化を生じる試剤組成物を、キャリアマトリクス中に均一に組み込むことができる。キャリアマトリクスは、試剤組成物をキャリアマトリクス全体を通して均一に保持する一方で、検査サンプルの所定成分によるキャリアマトリクス浸透性を維持する。適切な試剤組成物の例として、例えば、抗体-ベース技術の場合にはLTBP2結合性分子を挙げてもよく、酵素的検出の場合にはpH緩衝液を挙げてもよい。試剤組成物は、好ましくは、固体支持体の少なくとも一方の端部に付着した検査パッド上で、乾燥されて安定化される。試剤組成物が吸着し乾燥している検査パッドは、好ましくは、最小の背景色を示す膜材料から作られる。好ましくは、検査パッドは、背景色を最小にするために、酸又は塩基で洗浄した材料から構築され得る。別の1つの実施形態において、試剤ストリップ上で乾燥されている試剤組成物は、検査パッドの脆性を減少させる湿潤剤を更に含んでなる。好適な湿潤剤の非限定的例としては、TritonX-100、Bioterg、グリセロール、0 Tweenなどが挙げられる。試剤組成物は、当該分野で公知の任意の方法によって試剤ストリップに適用することができる。例えば、検査パッドを作っているキャリアマトリクスは、当該分野で公知の技術に従って、試剤組成物の溶液中に浸漬して乾燥させてもよい。本発明による試剤ストリップは、尿サンプル中の1より多い分析物についてアッセイするために複数の検査パッドを備えて提供され得る。1以上の検査パッド(腎機能障害マーカーであるシスタチンC、NGAL、βトレースタンパク質、腎臓傷害分子1(KIM-1)、インターロイキン-18(IL-18)、BNP、NT-プロ-BNP又はそれらのフラグメントのようなタンパク質、血液、白血球、亜硝酸塩、グルコース、ケトン、クレアチニン、アルブミン、ビリルビン、ウロビリノゲンを含んでなる群から選択される1以上の分析物の存在を測定するための検査パッド及び/又はpH検査パッド及び/又は比重を測定するための検査パッドを含む)を備えて提供される固体支持体を含んでなる試剤ストリップが提供され得る。
【0132】
本発明による試剤ストリップ101の可能な実施形態を
図12A〜Bに模式的に示す。ストリップ101は近位端102及び遠位端103を備える。その上に試剤組成物が提供される種々の検査パッド109、109'、109''が、試剤ストリップの固体支持体107上、近位端102に提供される。ストリップは、十分に大量の(任意に血液又は唾液などのような粘性サンプルのキャピラリフローを改善する生理学的流体で希釈された)サンプルで湿らせることができるように設計されなければならない。
本明細書中で規定される試剤ストリップは、以下のように使用される。簡潔には、本発明の試剤ストリップの1以上の検査パッド領域をサンプル中に浸漬させるか、又は少量のサンプルを試剤ストリップに、検査パッド領域上に適用する。視覚的に又は反射率測定により分析することができる発色が、短時間のうちに、通常0.5〜10分以内に、試剤ストリップ上で起こる。LTBP2との反応に際しての検査パッド上の試剤領域の色変化は、好ましくは、患者サンプル中のLTBP2濃度に正比例する。検査パッド上で発色する色強度は、視覚的に又は例えば反射率ベースの読取機により決定されてもよい。検査パッド領域での発色を参照色と比較して、サンプル中に存在するLTBP2量の推定値を決定する。検査パッド上で発色する色強度を、補正因子の適用により決定した或る範囲のLTBP2濃度に対応する少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つの標準色斑と比較する。
【0133】
試剤ストリップは、支持体ストリップに塗布されているか又は検査パッド中に組み込まれた蛍光色素又は赤外色素を更に含んでなり得る。これにより、検出可能又は測定可能な応答のための検出系を有する装置中での試剤ストリップの適切な配置が確実になる。
別の1つの実施形態において、本発明はまた、サンプル中のLTBP2の存在を測定する検査パッドに関する。好ましくは、検査パッドは、LTBP2と相互作用して測定可能な応答、好ましくは視覚的に又は装置により測定可能な応答を生成することができる試剤組成物が組み込まれたキャリアマトリクスを含んでなる。別の1つの好適な実施形態において、本発明は、試剤ストリップ上、好ましくは本明細書に規定する試剤ストリップ上での使用のための、本明細書の規定による検査パッドを提供する。
本キット中の特異的結合性物質、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、バイオマーカーなどは、種々の形態、例えば、凍結乾燥形態、溶液中の遊離形態又は固相上に固定化された形態であり得る。これらは、例えば、マルチウェルプレート中に又はアレイ若しくはマイクロアレイとして提供されてもよいし、或いは別個に及び/又は個別に包装されていてもよい。これらは、本明細書中に教示されるように適切に標識されていてもよい。前記キットは、例えば、イムノアッセイ、ELISAアッセイ、質量分析アッセイなどのような本発明のアッセイ法の実施に特に適切であり得る。
【0134】
用語「モジュレートする」は、一般に、定性的又は定量的な変更、変化又は変動をいい、具体的には、モジュレートされるものの増大(例えば、活性化)又は減少(例えば、阻害)の両方を包含する。この用語はあらゆる程度のモジュレーションを包含する。
例えば、モジュレーションは、決定可能又は測定可能な変量をもたらす場合、モジュレーションなしの参照状況と比較して、前記変量の値の、少なくとも約10%、例えば少なくとも約20%、好ましくは少なくとも約30%、例えば少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約50%、例えば少なくとも約75%、更により好ましくは少なくとも約100%、例えば少なくとも約150%、200%、250%、300%、400%又は少なくとも約500%増加を包含し得る;又は、モジュレーションは、モジュレーションなしの参照状況と比較して、前記変量の値の、少なくとも約10%、例えば少なくとも約20%、少なくとも約30%、例えば少なくとも約40%、少なくとも約50%、例えば少なくとも約60%、少なくとも約70%、例えば少なくとも約80%、少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%、例えば少なくとも約96%、97%、98%、99%又は100%さえの減少又は低減を包含し得る。
好ましくは、意図する標的(例えば、LTBP2遺伝子又はタンパク質)の活性及び/又はレベルのモジュレーションは、特異的又は選択的であり得る。すなわち、意図する標的の活性及び/又はレベルは、ランダムの非関連(意図していない、望んでいない)標的の活性及び/又はレベルを実質的に変更することなくモジュレートし得る。
標的(例えば、LTBP2タンパク質)の「活性」への言及は、一般に、例えば細胞、組織、器官又は生物内での、標的の生物学的活性の任意の1以上の観点、例えば、限定されないが、生化学的活性、酵素的活性、シグナル伝達活性及び/又は構造的活性の1以上の観点を包含する。
【0135】
標的の治療的又は予防的標的化に関しては、標的(例えば、LTBP2遺伝子又はタンパク質)の「レベル」への言及は、好ましくは、例えば細胞、組織、器官又は生物内での、標的の量及び/又は利用可能性(例えば、生物学的活性を遂行するための利用可能性)を包含し得る。
例えば、標的のレベルは、標的の発現をモジュレートし及び/又は発現した標的をモジュレートすることによってモジュレートされ得る。標的の発現のモジュレーションは、例えば、標的をコードする異種核RNA(hnRNA)、前駆体mRNA(プレ-mRNA)、mRNA又はcDNAのレベルで達成又は観察され得る。例としてであって限定されないが、標的発現の減少は、当該分野において公知の方法により、例えば細胞、組織、器官又は生物を、アンチセンス剤(例えば、アンチセンスDNA又はRNAオリゴヌクレオチド)、アンチセンス剤をコードする構築物、又はRNA干渉剤(例えば、siRNA又はshRNA)、又はリボザイム若しくはリボザイムをコードするベクターなどでトランスフェクトするか(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクションなどによる)又は形質転換する(例えば、ウイルスベクターを用いる)ことによって達成され得る。例としてであって限定されないが、標的発現の増加は、当該分野において公知の方法により、例えば細胞、組織、器官又は生物を、該細胞、組織、器官又は生物中で適切な発現レベルをもたらす調節性配列の制御下に該標的をコードする組換え核酸でトランスフェクトするか(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクションなどによる)又は形質転換する(例えば、ウイルスベクターを用いる)ことによって達成され得る。例としてであって限定されないが、標的レベルは、標的の形成(例えば、フォールディング、又は複合体の形成を導く相互作用)及び/又は標的の安定性(例えば、複合体に結合するか又は複合体から解離する複合体成分の性向)、分解又は細胞局在などの変更を介してモジュレートされ得る。
【0136】
用語「アンチセンス」は、一般に、遺伝子発現に干渉するように設計され、意図する標的核酸配列に特異的に結合し得る分子をいう。アンチセンス剤は、代表的には、標的配列に特異的にハイブリダイズし得るオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドアナログを包含し、代表的には、標的核酸に対応するゲノムDNA、hnRNA、mRNA又はcDNA(好ましくはmRNA又はcDNA)内の配列に相補的又は実質的に相補的である核酸配列を含むか、該核酸配列から本質的になるか又は該核酸配列からなり得る。本明細書中で適切なアンチセンス剤は、代表的には、それぞれの標的に高ストリンジェンシー条件でハイブリダイズすることが可能であり得、標的に生理学的条件下で特異的にハイブリダイズし得る。
用語「リボザイム」は、一般に、ポリヌクレオチドを触媒的に切断し得る核酸分子、好ましくはオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチドアナログをいう。好ましくは、「リボザイム」は、所与の標的タンパク質のmRNAを切断しその翻訳を減少させることができ得る。本明細書中で企図される例示のリボザイムとしては、限定されないが、ハンマーヘッドタイプリボザイム、ヘアピンタイプのリボザイム、デルタタイプリボザイムなどが挙げられる。リボザイム及びその設計に関する教示については、例えば、米国特許第5,354,855号、同第5,591,610号、Pierceら,1998(Nucleic Acids Res 26: 5093-5101 )、Lieberら,1995(Mol Cell Biol 15: 540-551)及びBenselerら,1993(J Am Chem Soc 1 15: 8483-8484)を参照。
【0137】
「RNA干渉」又は「RNAi」技術は、当該分野において慣用されており、本明細書中で意図される適切なRNAi剤としては、とりわけ、当該分野において公知の短鎖干渉性核酸(siNA)、短鎖干渉性RNA(siRNA)、二本鎖RNA(dsRNA)、マイクロ-RNA(miRNA)及び短鎖ヘアピンRNA(shRNA)分子が挙げられる。RNAi分子及びその設計に関する教示については、とりわけ、Elbashirら,2001(Nature 41 1: 494-501)、Reynoldsら,2004(Nat Biotechnol 22: 326-30)、http://rnaidesigner.invitrogen.com/rnaiexpress、Wang及びMu 2004(Bioinformatics 20: 1818-20)、Yuanら,2004(Nucleic Acids Res 32(Web Server issue): W130-4)、M Sohail 2004(「Gene Silencing by RNA Interference: Technology and Application」,第1版,CRC, ISBN 0849321417)、U Schepers 2005(「RNA Interference in Practice: Principles, Basics, and Methods for Gene Silencing in C.elegans, Drosophila, and Mammals」,第1版,Wiley-VCH, ISBN 3527310207)並びにDR Engelke及びJJ Rossi 2005 (「Methods in Enzymology, Volume 392: RNA Interference」,第1版,Academic Press, ISBN 0121827976)を参照。
【0138】
本明細書で使用する用語「医薬的に許容可能な」は、当該分野と一致し、医薬組成物の他の成分と相溶性であり、そのレシピエントに対して有害でないことを意味する。
本明細書で使用する場合、「キャリア」又は「賦形剤」には、あらゆる溶剤、希釈剤、緩衝剤(例えば、中性緩衝化生理食塩水又はリン酸緩衝化生理食塩水)、可溶化剤、コロイド、分散媒体、ビヒクル、充填剤、キレート剤(例えば、EDTA又はグルタチオン)、アミノ酸(例えば、グリシン)、タンパク質、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、香味料、芳香化剤、増粘剤、デポー効果を達成する薬剤、コーティング剤、抗菌剤、防腐剤、抗酸化剤、毒性制御剤、吸収遅延剤などが挙げられる。医薬活性物質のためのこのような媒体及び薬剤の使用は、当該分野において周知である。当該活性物質と非相溶性である場合を除き、治療組成物における任意の従来の媒体又は薬剤の使用が企図され得る。
本活性物質(薬剤)は単独で又は本明細書で教示する疾患及び病状用の当該分野において公知の任意の治療薬との組合せ(「併用療法」)で使用され得る。本明細書で企図される併用療法は、少なくとも1つの本発明の活性物質及び少なくとも1つの他の医薬的又は生物学的に活性な成分の投与を含み得る。前記の活性物質及び医薬的又は生物学的に活性な成分は、同一の又は異なる医薬製剤で、同時に又は逐次に(任意の順序で)投与され得る。
【0139】
任意に投与すべき1以上の他の活性化合物との組合せで使用する本活性物質(薬剤)の投薬量又は使用量は、個々の症例に依存し、慣例により最適効果を達成するために個々の状況に適合させる。よって、それは、治療すべき疾患の性質及び重篤度、性別、年齢、体重、全身の健康状態、食事、投与の態様及び時間、治療すべきヒト又は動物の個々の応答性、投与経路、使用する化合物の作用の効力、代謝安定性及び期間、治療が急性若しくは慢性であるのか予防的であるのか、他の活性化合物が本発明の薬剤に加えて投与されるのかどうかに依存する。
限定されないが、疾患のタイプ及び重篤度に依存して、代表的な一日投薬量は、上記の因子に依存して約1μg/kg体重〜100mg/kg体重又はそれ以上の範囲であり得る。数日又はそれより長期の繰り返し投与に関しては、病状に依存して、疾患症状の所望の抑制が生じるまで処置は維持される。本発明の活性物質の好適な投薬量は、約0.05mg/kg体重〜約10mg/kg体重の範囲であり得る。よって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、4.0mg/kg又は10mg/kg(又はそれらの任意の組合せ)の1以上の投薬が患者に対して行われ得る。このような投薬は、断続的に、例えば毎週、2週又は3週ごとに行われ得る。
本明細書で使用する場合、「処置を必要とする対象者」のような句は、本明細書で教示される所与の疾患又は病状の処置の利益を享受する対象者を含む。このような対象者は、前記病状と診断されている対象者、該病状に罹患し易いか又は発症し易い対象者及び/又は該病状を予防すべき対象者を含むが、これに限定されない。
【0140】
用語「処置する」又は「処置」は、既発症の疾患又は病状の治療的処置及び(望まない苦痛の発生の見込みを抑制するか又は小さくすること、例えば本明細書で教示される疾患又は病状の罹患及び進行の見込みを抑制することを目的とする)予防的又は抑制的手段の両方を包含する。有益な結果又は望ましい臨床的結果としては、限定されないが、1以上の症状又は1以上の生物学的マーカーの軽減、疾患の程度の低減、安定化した(すなわち、悪化しない)疾患状態、疾患進行の遅延又は緩徐化、疾患状態の寛解又は緩和などが挙げられ得る。「処置」はまた、処置を受けていない場合に予測される生存と比較して生存を延長させることを意味することがある。
用語「予防有効量」は、研究者、獣医師、医師又は臨床家により求められるように対象者において疾患の発生を阻害するか又は遅延させる活性化合物又は医薬剤の量をいう。本明細書で使用する用語「治療有効量」は、研究者、獣医師、医師又は臨床家により求められるように対象者において生物学的又は医学的応答(これは、とりわけ、治療すべき疾患又は病状の症状の軽減を含み得る)を誘発する活性化合物又は医薬剤の量をいう。本化合物の治療的及び予防的に有効な用量を決定する方法は、当該分野において公知である。
上記の観点及び実施形態は以下の非限定的な実施例によって更に支持される。
【実施例】
【0141】
実施例
実施例1:発見から導かれる候補マーカーの早期検証のためのMASSterclass標的化タンパク質定量
MASSterclass実験セットアップ
MASSterclassアッセイは最終段階(end-stage)のペプチド定量系として安定なアイソトープ希釈物を用いる標的化タンデム質量分析を使用する(多重反応モニタリング(MRM)及び単一反応モニタリング(SRM)とも呼ばれる)。標的化ペプチドは、興味対象の特異タンパク質に特異的(すなわち、プロテオティピック(proteotypic))である。すなわち、測定されるペプチド量は、元のサンプル中のタンパク質の量に直接関係する。複合サンプル中のバイオマーカー定量に必要とされる特異性及び感度に到達するためには、ペプチド分画を最終段階の定量工程より前に行う。
【0142】
適切なMASSTERCLASSアッセイは、以下の工程を含み得る:
− 血漿/血清サンプル
− ProteoPrepスピンカラム(Sigma Aldrich)を使用する、抗-アルブミン抗体及び抗-IgG抗体でのアフィニティー捕捉を用いるヒトアルブミン及びIgGの涸渇(タンパク質レベルでの複雑性の低減)
− 既知量のアイソトープ標識ペプチドのスパイキング。このペプチドは、興味対象のプロテオティピックペプチドと同じアミノ酸配列を有する(代表的には、1つのアイソトープ標識アミノ酸がその中に組み込まれて、質量差を生じている)。分子質量に基づく最終段階の定量工程の間を除きプロセス全体の間、該標識ペプチドは、内因性ペプチドと同一の化学的及びクロマトグラフィー的挙動を有する。
− トリプシン消化物。涸渇血清/血漿サンプル中のタンパク質を、トリプシンを用いてペプチドに消化する。この酵素は、リジン又はアルギニンのC-末端側にプロリンが存在する場合を除き、リジン及びアルギニンのC-末端でタンパク質を切断する。消化の前に、タンパク質を煮沸により変性させる。これによって、タンパク質分子は、37℃にて16時間のインキュベーションの間、トリプシン活性がより接近可能になる。
【0143】
− 第1のペプチド-ベース分画:フリーフロー電気泳動(FFE;BD Diagnostic)は、連続層流中を移動している荷電分子が該流れに垂直な電界により分離される、ゲルフリー流体分離技術である。電界により、pH勾配中で荷電粒子の等電点(pI)に従う分離が引き起こされる。モニターするペプチドを含有する画分のみを、更なる分画及びLC-MS/MS分析のために選択する。興味対象の各ペプチドがFFEチャンバーから特異的な分画数(合成ペプチドホモログを用いたタンパク質アッセイ開発の間に決定される)で溶出する。特定の画分又は画分プール(複合化)を次レベルの分画に進める。
− 第2のペプチド-ベース分画:フェニルHPLC(XBridge Phenyl;Waters)は、ペプチドを、ペプチド配列中に存在するアミノ酸の疎水性及び芳香性に従って分離する。バックエンド(back-end)C18分離との直交性は、上昇したpH値(pH10)でカラムを稼動することによって達成される。Gilarら,2005, J Sep Sci 28(14): 1694-1703により証明されているように、pHは、RP-HPLCにおけるペプチド選択性を変化させる遥かに最も強烈なパラメータである。興味対象の各ペプチドは、フェニルカラムから、合成ペプチドホモログを用いるタンパク質アッセイ開発の間に決定される特定の保持時間で溶出する。サンプル分離のバッチ処理前に9つの標準ペプチドの混合物を分離する外部コントロール系の使用により、保持時間シフトを補正するための画分採集の調整が可能になる。分画の程度は、サンプル中のタンパク質濃度及び該サンプルの複雑性に依存する。
【0144】
− 逆相(C18)nanoLC(PepMap C18;Dionex)及びMRM(4000 QTRAP;ABI)/SRM(Vantage TSQ;Thermo Scientific)モードを用いるMS/MS:タンデム質量分析での更なる分離を含むLC-MS/MSベースの定量。質量分析計の供給頭部(source head)に接続したエレクトロスプレーニードルに、LCカラムを接続する。物質がカラムから溶出するにつれ、分子はイオン化し、ガス相で質量分析計に入る。質量 対 荷電の比(m/z)に基づいて、モニターするペプチドが特異的に選択されて、第1の四重極子(Q1)を通る。次いで、選択されたペプチドは、衝突小室として使用する第2の四重極子(Q2)でフラグメント化される。次いで、得られるフラグメントが第3の四重極子(Q3)に入る。(アッセイ開発期の間に決定される)装置セッティングに依存して、特定ペプチドフラグメント(いわゆる、トランジッション(transition))のみが検出のために選択される。
− モニターするペプチドのm/zとこのペプチドのモニターするフラグメントのm/zとの組合せは、トランジッションと呼ばれる。このプロセスは、1回の実験の間に複数のトランジッションについて行うことができる。内因性ペプチド(分析物)及びその対応するアイソトープ標識合成ペプチド(内部標準物質)の両方が、同じ保持時間で溶出し、同じLC-MS/MS実験で測定される。
− MASSterclassの読取値は、分析物に特異的なピーク下面積と合成アイソトープ標識アナログ(内部標準物質)に特異的なピーク下面積との間の比によって規定される。MASSterclass読取値は、サンプル中の元々のタンパク質濃度に直接関連する。したがって、MASSterclass読取値は、種々のサンプル間及びサンプル群間で比較することができる。
【0145】
本研究において後続する代表的なMASSterclassプロトコルを下記に示す:
− 結合/平衡緩衝液として20mM NH
4HCO
3を使用した以外は、製造業者のプロトコルに従って、25μLの血漿を、ヒトアルブミン及びIgGの涸渇に供する(ProteoPrepスピンカラム;Sigma Aldrich)。
− 涸渇サンプル(225μL)を15分間95℃にて変性させ、氷上で直ぐに冷却する。
− 500fmolのアイソトープ標識ペプチド(カスタムメイド「Heavy AQUA」ペプチド;Thermo Scientific)をサンプル中にスパイクする。
− 20μgトリプシンをサンプルに加え、16時間37℃にて消化する。
− 消化サンプルを先ず溶媒A(0.1%ギ酸)中で1/8希釈し、次いで250amol/μLのアイソトープ標識された興味対象の全ペプチド(カスタムメイド「Heavy AQUA」ペプチド;Thermo Scientific)を含有する同じ溶媒中で1/20希釈した。
− 逆相NanoLCをMRM/SRMモードのオンラインMS/MSと併せて使用して20μLの最終希釈物を分離した:
− カラム:PepMap C18、75μm I.D.×25cm L, 100Å孔径、5μm粒子サイズ
− 溶媒A:0.1%ギ酸
− 溶媒B:80%アセトニトリル、0.1%ギ酸
− 勾配:30分;2%〜55%溶媒B
− MRMモードのMS/MS:方法は、分析物及び合成標識ペプチドのトランジッションを含有する。
− 使用したトランジッションは、タンパク質アッセイ開発の間に実験的に決定して選択した。
− 興味対象のペプチドの決定した保持時間の3分前から始まり該保持時間の3分後に終わる期間、興味対象のトランジッションの各々を測定した。これにより、確実に、各ピークが少なくとも15のデータ点を有した。
【0146】
− LCQuanソフトウェア(Thermo Scientific)を使用して生データを分析し定量した:同じC18保持時間での分析物(=LTBP2ペプチド)ピーク下面積及び内部標準物質(標識合成LTBP2ペプチド)ピーク下面積を、自動ピーク検出により決定した。これらを手作業で照合した。
− MASSterclass読取値は、分析物ピーク面積と内部標準物質ピーク面積との比により規定した。
MASSTERCLASS出力
測定した比はペプチドの示差量である。換言すれば、比は、規格化したペプチド濃度である。ペプチド濃度は、質量分析計で測定された比に比例する。
【0147】
実施例2:急性呼吸困難サンプルのLTBP2についてのスクリーニング
本実施例において、呼吸困難患者の評価のためのLTBP2測定値の臨床利用を評価した。
本研究で使用した299の臨床サンプルは、University Hospital of BASELのEDに搬入された、最も優勢な症状として呼吸困難を有する無選別の患者(consecutive patients)についてのプロスペクティブスタディーであるBASEL V集団(cohort))からの一部である(この集団の一部はPotockiら,Journal of Internal Medicine 2010 Jan;267(1):119-29に記載されている)。急性心不全診断の最も有用な基準は、90日間のフォローアップデータ及びBNPレベルを含む患者の全診療記録の2人の心臓病専門医による独立の解釈に基づいていた。これに基づき、56%(n=168)の患者が急性心不全事象を有すると判定され、その他は呼吸困難非-心不全と分類された。患者の個体群統計、病歴、慢性的な薬物適用、腎機能パラメータ、エコーパラメータ、確立した心臓及び炎症マーカーレベルを含む広範な臨床及びマーカー変量を収集した(概要については表1を参照)。糸球体濾過速度は、腎疾患における食餌変更(Modification of Diet in Renal Disease;MDRD)式(Stevensら,New England Journal of Medicine 2006;354:2473-83)を用いて算出した。患者は、入院後少なくとも1年間は追跡し、あらゆる原因での死亡を記録した。
【0148】
LTBP2及びシスタチンCレベルは、MASSterclass
TMアッセイを用いて実施例1に記載したように測定した。BNP、NT-プロBNP及びCRPレベルは、市販のイムノアッセイを使用してPotockiら(2010)に記載されているように測定した。
特異タンパク質の診断正確性は、Sullivan Pepe M(The statistical evaluation of medical tests for classification and prediction. 1993 Oxford University Press New York)のように、受信者動作特性(ROC)曲線の曲線下面積(AUC)を測定することによって決定した。ノンパラメトリックアプローチ、すなわちブートストラッピング(Efron B, Tibshirani RJ. Nonparametric confidence intervals. An introduction to the bootstrap. Monographs on statistics and applied probability. 1993;57:75-90 Chapman & Hall New York)を使用して、AUCの推定値及び信頼区間も計算した。
LTBP2、シスタチンC、BNP、NT-プロBNP及びCRPレベルと全ての利用可能な臨床パラメータとの関連性は、一変量統計学的検定を用いて計算した。スピアマンの順位検定を使用して相関係数を計算し、ウィルコクソンの順位和検定を用いて2つの独立した観察サンプルが同じ集団に起源を有するかどうかを評価した。
【0149】
【表1】
【0150】
実施例3:腎臓機能パラメータとのLTBP2の関連性
LTBP2レベルについての急性呼吸困難患者のスクリーニング(実施例2)は、推定糸球体濾過速度(eGfr)、クレアチニンレベル及び血中尿窒素(BUN)レベルとのスピアマン順位相関についての低いp-値並びに腎臓不全の病歴の有無についての低いウィルコクソンp-値によって示されるように、LTBP2レベルと腎臓機能に関係する全ての入手可能な臨床パラメータとの関連性を示した(表2にまとめる)。
図2は、LTBP2が糸球体濾過の良好な指標であることを示す、LTBP2とeGfrとの相関を説明する。LTBP2と濾過との相関は、更に、Gfrについての既知の良好なマーカーであるシスタチンCとの相関によっても実証される。シスタチンCもまた、これらサンプル中でMASSterclass技術を使用して測定した。LTBP2とシスタチンC及びeGfrとの相関は、急性非代償性心不全の存在に関する補正後も妥当なままである(表2)。
【0151】
【表2】
【0152】
実施例4:腎機能障害のマーカーとしてのLTBP2
推定糸球体濾過速度は、腎臓が如何に健全に機能しているかの良好な指標である。最低3ヶ月間60を下回るeGfrを有する患者は、慢性腎臓病(CKD)を有すると考えられる。研究下の急性呼吸困難集団は、減少したeGfrを有する患者が107人に対して、より正常な糸球体濾過速度を有する患者は192人である。
0.9の全体メジアンAUC及び0.85〜0.93の95% CI(
図3)により示されるように、受信者動作特性(ROC)分析は、LTBP2が、この呼吸困難患者集団における腎臓機能障害の診断に高感度で特異的であることを証明した。この診断性能は、慢性腎臓病の利用可能な最良のバイオマーカーであるシスタチンCと等価である。
図4は、減少した(<60)、中間の(60〜90)及び正常な(>90)推定糸球体濾過速度を有する患者においてMASSterclassにより測定した相対的LTBP2レベルを説明する。患者間のメジアンLTBP2レベルは、減少したeGfrを有する患者で、正常なeGfr(>90)を有する患者より4.7倍高い。LTBP2レベルはまた、僅かに減少した腎臓機能(60と90との間のeGfr)を有する患者におて上昇している。
【0153】
実施例5:腎機能の急性変化のマーカーとしてのLTBP2
LTBP2とシスタチンC及びeGfrとの相関は、急性非代償性心不全の存在に関する補正後も妥当なままである。AHF患者における相関は、LTBP2が、心臓の急性代償不全(すなわち、減少した心拍出量)に起因するeGfrの急性変化を検出することができる事実を示唆する。
治療的介入による心拍出量及び腎機能の回復後、LTBP2レベルもまたベースラインレベルに回帰する。
【0154】
実施例6:死亡の予知マーカーとしてのLTBP2
研究下の急性呼吸困難患者の集団において、入院後少なくとも1年間患者を追跡し、82/299人の対象者(27%)が死亡した(あらゆる原因の死亡)。死亡率に対するLTBP2並びに他の臨床的及びマーカー変量の関連を、種々の方法を用いて調べた。参照標準として1年での死亡で受信者動作特性分析を実施し、メジアン曲線下面積を算出した。「生存」及び「死亡」患者におけるマーカーレベルの分布を、ウィルコクソン順位和検定を使用して比較した。カプラン-マイヤー曲線により、LTBP2レベルに応じて分割した群において、症状提示後の追跡期間にわたって死亡率を比較した。
急性呼吸困難を有する患者における症状提示時のLTBP2濃度は、1年までに死亡した患者(n=82;27%)で、生存していた患者と比較して有意に高かった(p=2e
-11)(
図5A)。死亡者においてLTBP2濃度がより高いというこのパターンは、対象者を急性心不全の有り(p=3.5e
-08)又は無し(p=0.01)の関数として考えたとき(
図6A)も、集団を腎機能(eGfr<60;p=8.8e-05 対 eGfr>60;p=0.0003)に基づいて分割したとき(
図6B)も残存した。このことは、LTBP2が、一般的な呼吸困難集団並びに急性心不全集団及び慢性腎臓病集団において不良な転帰を予知する能力を有することを説明する。
【0155】
加えて、1年での死亡率の関数として調べたLTBP2濃度の十分位分析(decile analysis)は、このマーカーの濃度上昇に伴う死亡率の段階的増大が存在することを明らかにした(
図5B)。全ての急性呼吸困難患者における1年での死亡を予知するために行ったROC分析は、LTBP2について、NT-プロBNPマーカー(AUC=0.77)と同様であるが、シスタチンC及びCRPタンパク質マーカーより高い0.77のAUC(95% CI:0.7〜0.84)を証明した(
図7)。カプラン-マイヤー分析は、最大正確性でのカットオフ点を上回るLTBP2を有する患者について入院〜1年までに死亡率が急速に上昇することを示している(
図8)。
フォワードステッピング(forward stepping)を用いる多変量コックス比例ハザード分析を行って、この患者集団について1年での死亡の独立予報値を同定した。単変量p-値が<0.05である場合には、変量は保持し、多変量モデル中に入力した;ハザード比(HR)を生成し、有意なp値を有するこの変量のみを最終の多変量モデルで保持した。この多変量分析において、最大正確性についてのカットオフを上回るLTBP2レベルは、全ての呼吸困難患者における1年時死亡の強力な独立予報値である(HR=3.76;p<0.0001)。表3に1年死亡率の選択単変量及び多変量予報値をまとめる。注目すべきことに、最終的に選択した多変量モデルは、LTBP2を腎機能の尺度(eGfr及び尿)、bmi及びカリウムと組み合わせて含む。このことは、LTBP2が、生存予知についてこの変量に対する補完性を示すことができることを示唆する。
【0156】
【表3】
【0157】
実施例7:心臓左心室肥大のマーカーとしてのLTBP2
胸部大動脈狭窄(TAC)は、左心室肥大、そして究極的には心不全の十分に確立されたモデルである。群(SHAMコントロール及びTAC群)あたり4匹の動物を手術し、TAC群の上行動脈にクリップを配置する。心エコー検査法によりラットをモニターし、心筋のパフォーマンスを計算する。4週間後、動物を犠牲にし、心穿刺により血液を採集する。続いて、心臓をPBSで灌流し、心室(左右)を摘出して液体窒素中で一気に凍結させる。標準的なプロトコルを用いて左心室からのタンパク質溶解物を調製し、その後の統計学的分析(下記参照)と組み合わせたMASStermind技術を用いて、肥大した左心室(TAC群)対SHAMコントロールのタンパク質プロフィールの差異を決定した。
要約すると、サンプルは、MASStermind分析用に、標準のN-末端COFRADIC手順に従って調製した。サンプル及びコントロールは、全てのトリプシン切断ペプチドのC末端での
18O/
16Oのトリプシン媒介組込みによって区別して標識した。N-末端ペプチドの選別後、NanoLC分離及びその後のMALDI標的上への直接スポッティングを行った。MALDI-TOF/TOF装置を使用してMSスペクトルを生成した。社内で開発したバイオインフォマティクスツール(例えば、ピーク認識及び脱同位体(deisotoping)、分析物と参照との間の比の決定、クラスタリング、サンプル間整列(inter-sample alignment)及び広範なサンプル品質制御のためのツール)を用いて、MSスペクトルを分析した。一旦、全てのサンプルを整列させ、品質を制御した後に、統計分析を開始した。
【0158】
2つの集団を弁別する差別的特徴(又はペプチド)について選択するために、2つの異なる統計尺度を適用した:一基準分類(one-rule classifier)及びマイクロアレイの有意性分析(Significance Analysis of Microarrays;SAM)分析。概念上、差別的特徴を見出す最も単純な機械学習技術は、一基準分類である。この方法では、形式「比<Xであれば、クラス=A、そうでなければクラス=B」という単純なルールが各特徴について作成される。データについてのこのルールの性能は、leave-one-out cross-validationにより決定される。この分析で低い誤り率を示す特徴は、首位のバイオマーカー候補である。SAM(Tusherら,2001, PNAS 98: 5116-5121)は、False Discovery Rate(FDR)を制御しつつ、最も差別的な特徴を選択する方法である。一基準分類に優るこの方法の主たる利点は、これが、両クラス間の比の差が減少し始め、実験からのランダムノイズが候補マーカーの実際のレベルを不明瞭にし始めたとき、依然として有用な傾向を取り出すことが可能であることである。SAMは、2クラスのサンプル間の特徴の比の相対的差異を算出する。このスコアの有意性を推定するため、全サンプルのクラス割当の順序を変えて再スコア付けすることによって帰無分布を推定する。これにより、偶然によって同定されたタンパク質又は遺伝子産物の割合であるfalse discovery rate(FDR)の信頼性のある推定が得られる。MSシグナルの強度及び欠測値(missing value)について最適に説明するため、異なるデータサブセットに対して、これら値についての種々のカットオフを用いて完全なSAM分析を行った。全ての結果を最終報告にまとめた。
図9に説明するように、LTBP2及び近縁のファミリーメンバー(LTBP4)は、SHAMコントロールと比較して、肥大した左心室において増大したレベルを示す。この差は、SAM分析スコアにより示されるように統計学的に有意である(<0.1% false discovery rate)。
【0159】
実施例8:腎臓線維症のマウスモデルにおけるLTBP2発現
腎臓機能障害とのLTBP2レベルの独立した連関は、遺伝子発現プロフィールの公的集積所であるGene Expression Omnibus(GEO)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/geo/)から検索した。このデータベースのLTBP2発現プロフィールについての検索により、Gli2ノックアウトマウスの腎臓におけるLTBP2転写物の高度に増大したレベルが強調された。Glis2は、正常腎機能の維持に重大や役割を有するクルッペル様ジンクフィンガータンパク質ファミリーに属する転写因子である(総説については:Kangら,2010, Histology and Histopathology)。
Glis2ノックアウトマウスモデルは、ネフロン癆(進行して末期腎疾患に至る大規模な線維症によって特徴付けられる腎臓病)の良好なモデルとして記載されており、慢性腎臓病発症の最良のマウスモデルと考えられている(Attanasioら,2007, Nature Genetics)。出生時、Glis2ノックアウトマウスは、腎臓において、発生上の明らかな異常を示さない。しかし、4週〜6ヶ月に、このノックアウトマウスからの腎臓は、サイズ及び重量が実質的に減少する。6ヶ月までに、腎臓全体にコラーゲンが沈積する顕著な間質性線維症が見られる。野生型及びノックアウト動物の4週齢での腎臓についてのGE Healthcare Codelinkシステムを用いる遺伝子発現プロファイリングにより、事実、野生型動物におけるLTBP2に関して発現の40倍増加が示された(
図13)。この発現増加は、腎臓における明らかな組織学的差異が観察される前の時点で生じ、よって予知値として理解できる。
【0160】
実施例9:ヒト腎臓生検におけるLTBP2発現
続いて、ヒト腎臓におけるLTBP2タンパク質の分布を、Hyytiainenら(1998, Journal of Biological Chemistry)に記載のようにポリクローナル抗体を用いる免疫組織化学により分析した。ヒト腎臓生検は腎臓腫瘍と診断されたヒト患者から取得した。これら患者の腎臓の大部分は、依然として組織学的に正常であるが、これら患者は平均で40〜50歳であるので、腎臓内膜の肥厚に至る軽度のアテローム性動脈硬化を有する。
ポリクローナル抗体は、血管周囲において、内皮細胞中及び平滑筋細胞中の両方でLTBP2の発現を強調している(
図14、矢印)。発現はまた、内膜(これは、これら患者においてアテローム性動脈硬化の発生に起因して病理学的に肥厚している)でも観察される(
図14、*)。内膜は、コラーゲン構造が堆積した細胞外マトリクス構造である。内膜の肥厚は、病理学的条件下で進行性腎臓線維症に至り得る繊維化促進プロセスであると考えられる。