(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述した従来のデマンド制御は、空気調和機の消費電力が一定の閾値を超えた際に、空気調和機の能力を一律に低下させるものであったため、大半の利用者の快適性が損なわれていない状況であっても、消費電力が一定の閾値を超えない限り空気調和機の能力が低下されないまま維持されたり、大半の利用者の快適性が損なわれている状況であっても、消費電力が一定の閾値を超えれば空気調和機の能力が低下されたりする事態が生じており、利用者環境への配慮が足りないものであって、利用者の快適性と省電力との両立を図ったものとは言い難かった。
【0006】
そこで、本発明は上述したような問題を鑑みてなされたものであり、利用者の快適性と省電力との両立を図ることのできる空気調和機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の空気調和機は、室内機及び室外機を備えた空気調和機であって、前記室内機が配置された室内における平均室温を検知する平均室温検知機構と、前記室外機に収容された圧縮機と、前記圧縮機から吐出される冷媒の圧力、又は、当該圧縮機に吸入される冷媒の圧力が目標値として設定された圧力となるように前記圧縮機を制御する圧縮機制御部と、前記圧縮機制御部において通常制御時に目標値として設定されるものであり、外気温度と、前記室内における空調負荷とに連動した通常目標圧力を記憶する通常目標圧力記憶部と、前記通常目標圧力に対応した通常飽和温度と、前記平均室温との温度差を通常温度差として算出する通常温度差算出部と、前記空気調和機における通常制御時の消費電力に対する電力消費削減目標量に基づいて、前記通常温度差を縮小した省電力時温度差を算出する省電力時温度差算出部とを備え、前記圧縮機制御部が、前記平均室温及び前記省電力時温度差に基づいて算出される省電力時飽和温度に対応する飽和圧力である省電力時目標圧力を目標値に変更して、前記圧縮機を制御するように構成されたことを特徴とする。このように構成すれば、通常温度差(通常目標圧力に対応した通常飽和温度と、平均室温との温度差)が大きいほど利用者が快適性に満足した状況で空気調和機の能力が無駄に使用されていることに着目し、通常温度差の大きさに応じて電力消費削減目標量に基づいた通常温度差の縮小を行うとともに、通常温度差を縮小した省電力時温度差に基づいた省電力時目標圧力を目標値として圧縮機を制御することで、空気調和機の消費電力が一定の閾値を超えた場合のみ空気調和機の能力を低下させる従来のデマンド制御と比べて省電力効果を常時確保しつつ、省電力時目標圧力を利用者の快適性の維持が可能な範囲に設定できるという効果を発揮することができる。その結果、快適性を損なわずに省電力が可能となり、利用者の快適性と省電力との両立を図ることができる。
【0008】
さらに、利用者によるデマンド要求に対して精度の高い消費電力設定を行うことができるとともに、従来のデマンド制御で発生が予測されるような必要以上に電力消費削減目標量を増加させることによる快適性の低下を防止することができるという効果を得るには、前記省電力時温度差算出部が、前記電力消費削減目標量に基づく省電力係数を前記通常温度差に乗じることによって前記省電力時温度差を算出することが好ましい。
【0009】
さらに、室内における空調負荷に対応した最適な省電力時目標圧力を得ることにより最大限の省電力が可能となるという効果を得るには、利用者の操作に応じて前記電力消費削減目標量を変更可能な電力消費削減目標量変更部を備えることが好ましい。
【0010】
さらに、室内機の能力不足による冷暖房能力の不足を防止することができるという効果を得るには、前記圧縮機制御部が、前記空気調和機の冷房運転時には、前記平均室温から所定値を減算した値を前記省電力時飽和温度の上限値に設定し、前記空気調和機の暖房運転時には、前記平均室温に所定値を加算した値を前記省電力時飽和温度の下限値に設定可能な省電力時飽和温度設定部を備えることが好ましい。
【0011】
さらに、従来のデマンド制御で発生が予測される、空気と冷媒の温度差が不足することによる、室内機における熱交換不良を防止することができるとともに、快適性の低下を防止することができ、不必要に省電力時飽和温度を制限することによる省電力効果の不足を防止することができるという効果を得るには、前記省電力時飽和温度設定部が、3℃乃至10℃の範囲内の値に所定値を設定可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
このように、本発明の空気調和機によれば、通常温度差(通常目標圧力に対応した通常飽和温度と、平均室温との温度差)が大きいほど利用者が快適性に満足した状況で空気調和機の能力が無駄に使用されていることに着目し、通常温度差の大きさに応じて電力消費削減目標量に基づいた通常温度差の縮小を行うとともに、通常温度差を縮小した省電力時温度差に基づいた省電力時目標圧力を目標値として圧縮機を制御することで、空気調和機の消費電力が一定の閾値を超えた場合のみ空気調和機の能力を低下させる従来のデマンド制御と比べて省電力効果を常時確保しつつ、省電力時目標圧力を利用者の快適性の維持が可能な範囲に設定できるという効果を発揮することができる。その結果、快適性を損なわずに省電力が可能となり、利用者の快適性と省電力との両立を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、
図1〜
図5を参照しながら、本発明の一実施形態に係る空気調和機について説明する。
[空気調和機1の全体構成]
図1は、本発明の空気調和機の冷媒回路を示している。図に示すように、空気調和機1は、室内機100と室外機101とを備えている。ここで、本実施形態の空気調和機1は、ビル内のオフィス等の広い室内空間を対象とした空気調和機であって、室外機101と、室内の各領域に分散配置された複数の室内機とからなる空気調和機を想定したものであるが、
図1では説明の便宜上、複数の室内機のうち、代表する室内機100のみを図示している。
【0016】
室内機100は、室内における室温を検知可能な室温センサ2と、室内熱交換器3と、利用者の操作に応じて室内機100を制御可能なリモコン4とを有している。
【0017】
室外機101は、圧縮機5と、四路切換弁6と、室外ファン7と、室外熱交換器8と、膨張弁9と、外気温度を検知可能な外気温度センサ10とを有している。室外機101は、室外機ケーシング101aを有しており、その内部において、圧縮機5、室外ファン7、室外熱交換器8及び電装品箱11等が収容されている。電装品箱11には、各温度センサからの検出情報に基づいて圧縮機5の回転速度や膨張弁9の開度を制御可能な制御部12を内蔵した制御基板等が収容されている。
【0018】
[空気調和機1の動作]
空気調和機1では、四路切換弁6を図示の点線位置に切り換えることで、冷房運転が実現可能であり、図示の実線位置に切り換えることで、暖房運転が実現可能となっている。
【0019】
[制御部12の構成]
図2は、制御部12の構成を示している。制御部12は、本発明の目的とされる利用者の快適性と省エネルギーとの両立を図るための制御機構を備えたものであって、図に示すように、平均室温検知機構13、通常目標圧力記憶部14、通常温度差算出部15、省電力時温度差算出部16、電力消費削減目標量変更部17、及び、圧縮機制御部18を有している。
【0020】
平均室温検知機構13は、以下の算出式(1)に、室内に設置された室内機100における容量(空調負荷)Icnと、室温センサ2で検知された室温Tinとを入力することにより、室温Tinの加重平均(平均室温)Tiaを検知するように構成されているものである。ここで、以下の算出式(1)の構成要素である「容量Icn」及び「室温Tin」中の符号nは、室内の各領域に分散配置された各室内機の識別番号を示している。このため、平均室温検知機構13は、以下の算出式(1)に基づいて、各室内機が担当している領域の容量Icnに応じた室温Tinの加重平均Tiaを検知可能となっている。
【数1】
【0021】
通常目標圧力記憶部14は、例えば電気的にデータの書き換えが可能なEEPROMやフラッシュメモリ等で構成されており、圧縮機制御部18において通常制御時に目標値として設定される通常目標圧力を記憶するように構成されているものである。ここでの通常目標圧力とは、外気温度センサ10で検知された外気温度と、室内における容量Icnとに連動した圧力を意味するものであって、冷房運転時には通常目標吸入圧力Ptoとして、暖房運転時には通常目標吐出圧力Ptoとして圧縮機制御部18における通常制御に使用されるものである。
【0022】
通常温度差算出部15は、通常目標圧力記憶部14に予め記憶された通常目標圧力(通常目標吸入圧力Pto/通常目標吐出圧力Pto)を通常飽和温度(通常目標吸入圧力飽和温度Tto/通常目標吐出圧力飽和温度Tto)に換算するように構成されているものである。ここでの換算は、冷媒の物性値(飽和圧力及び飽和温度)を相互に換算可能な以下の冷媒物性式(2)を用いて実現可能である。
【数2】
【0023】
また、通常温度差算出部15は、冷房運転時にあっては、以下の算出式(3)に、通常目標吸入圧力飽和温度Ttoと、平均室温検知機構13で検知された加重平均Tiaと、を入力することにより、通常温度差ΔToを算出するように構成されているものである。同様に、通常温度差算出部15は、暖房運転時にあっては、以下の算出式(4)に、通常目標吐出圧力飽和温度Ttoと加重平均Tiaとを入力することにより、通常温度差ΔToを算出するように構成されているものである。
【数3】
【数4】
【0024】
省電力時温度差算出部16は、以下の算出式(5)に、空気調和機1における通常制御時の消費電力に対して予め設定された目標デマンド量(電力消費削減目標量)Dmと、通常温度差算出部15で算出された通常温度差ΔToと、を入力することにより、通常温度差ΔToを縮小したデマンド温度差(省電力時温度差)ΔTdを算出するように構成されているものである。以下の算出式(5)からも明らかなように、通常温度差ΔToの縮小は、通常温度差ΔToに目標デマンド量Dmを乗じることにより実現可能である。このため、例えば通常温度差ΔToが25℃、目標デマンド量Dmが80の場合には、算出により得られるデマンド温度差ΔTdは、25×80/100=20℃となる。
【数5】
【0025】
電力消費削減目標量変更部17は、利用者によるリモコン4の操作に応じて目標デマンド量Dmを変更可能に構成されているものである。なお、目標デマンド量Dmは、50、60、70、80、90、100などの値に段階的に設定可能である。つまり、利用者が快適性を重視する場合には、省電力係数(=目標デマンド量Dm/100)を大きな値に設定可能であり、省電力を重視する場合には、省電力係数(=目標デマンド量Dm/100)を小さな値に設定可能となっている。ここで、省電力係数の最小値は、快適性の評価に応じて利用者環境の快適性が損なわれない値に設定されるものであって、例えば確実に快適性を確保したい場合には0.5に設定される。また、省電力係数の最大値は、消費電力量の削減が許容されるバラツキに応じて設定されるものであって、例えば10%程度のバラツキが許容される場合には1.1に設定される。
【0026】
圧縮機制御部18は、冷房運転時において圧縮機5に吸入される冷媒の圧力、又は、暖房運転時において圧縮機5から吐出される冷媒の圧力が目標値として設定された圧力となるように圧縮機5を制御するように構成されているものである。
【0027】
圧縮機制御部18は、冷房運転時には以下の算出式(6)に、平均室温検知機構13で検知された加重平均Tiaと、省電力時温度差算出部16で算出されたデマンド温度差ΔTdと、を入力することにより、デマンド飽和温度(省電力時飽和温度)Ttdを算出するように構成されているものである。同様に、圧縮機制御部18は、暖房運転時にあっては、以下の算出式(7)に、加重平均Tiaとデマンド温度差ΔTdとを入力することにより、デマンド飽和温度(省電力時飽和温度)Ttdを算出するように構成されているものである。
【数6】
【数7】
【0028】
圧縮機制御部18は、以下の算出式(8)に、デマンド飽和温度Ttdを入力することにより、省電力目標圧力を算出するように構成されているものである。ここでの省電力目標圧力とは、冷房運転時には省電力時目標吸入圧力Ptdとして、暖房運転時には省電力時目標吐出圧力Ptdとして圧縮機制御部18におけるデマンド制御に使用されるものである。
【数8】
【0029】
圧縮機制御部18は、目標値を通常目標圧力(通常目標吸入圧力Pto/通常目標吐出圧力Pto)から省電力時目標圧力(省電力時目標吸入圧力Ptd/省電力時目標吐出圧力Ptd)に変更して、圧縮機5を制御するように構成されているものである。
【0030】
圧縮機制御部18は、冷房運転時には、加重平均Tiaから所定値を減算した値をデマンド飽和温度Ttdの上限値に設定し、暖房運転時には、加重平均Tiaに所定値を加算した値をデマンド飽和温度Ttdの下限値に設定可能な省電力時飽和温度設定部19を備えているものである。換言すれば、省電力時飽和温度設定部19は、冷房運転時には、加重平均Tiaとデマンド飽和温度Ttdとの温度差であるデマンド温度差ΔTdを上記所定値に設定可能である。同様に、省電力時飽和温度設定部19は、暖房運転時には、デマンド飽和温度Ttdと加重平均Tiaとの温度差であるデマンド温度差ΔTdを上記所定値に設定可能である。ここでの所定値は、空気と冷媒との温度差が3℃未満になると、室内機100における熱交換が困難となる事態や、空気と冷媒との温度差が10℃以上になれば、十分熱交換が可能であり、10℃以上に設定すると省電力効果が低下する事態を回避するために、3℃乃至10℃の範囲内の値に設定可能となっている。従って、冷房運転時において、例えば加重平均Tiaが27℃、所定値が5℃の場合には、デマンド飽和温度Ttdの上限値が22℃に設定される。一方、暖房運転時において、例えば加重平均Tiaが20℃、所定値が5℃の場合には、デマンド飽和温度Ttdの下限値が25℃に設定される。
【0031】
[本実施形態のデマンド制御動作]
以下では、
図3及び
図4を参照しながら、冷房運転時及び暖房運転時における各デマンド制御動作の一例について説明する。なお、
図3及び
図4に示す各動作は、制御部12が、ROMに格納されたプログラムを実行することによって実現可能である。
【0032】
[冷房運転時におけるデマンド制御動作]
図3は、冷房運転時におけるデマンド制御動作の一例を示したフローチャートである。この制御動作では、まず、ステップS1において、予め設定された目標デマンド量(電力消費削減目標量)Dmが認識される。
【0033】
次に、ステップS2において、通常目標圧力記憶部14に予め格納されている通常目標吸入圧力(通常目標圧力)Ptoが認識される。
【0034】
次に、ステップS3において、上記冷媒物性式(2)に基づき、通常目標吸入圧力Ptoが通常目標吸入圧力飽和温度(通常飽和温度)Ttoに換算される。
【0035】
次に、ステップS4において、室内に設置された室内機100における容量(冷房負荷)Icnと、室内における室温Tinとが認識される。
【0036】
次に、ステップS5において、上記算出式(1)に基づき、室温Tinの加重平均(平均室温)Tiaが算出される。
【0037】
次に、ステップS6において、上記算出式(3)に基づき、通常温度差ΔToが算出される。
【0038】
次に、ステップS7において、上記算出式(5)に基づき、デマンド温度差(省電力時温度差)ΔTdが算出される。
【0039】
次に、ステップS8において、上記算出式(6)に基づき、デマンド飽和温度(省電力時飽和温度)Ttdが算出される。
【0040】
次に、ステップS9において、上記算出式(8)に基づき、省電力時目標吸入圧力Ptdが算出される。
【0041】
次に、ステップS10において、圧縮機制御部18における目標値が通常目標吸入圧力Ptoから省電力時目標吸入圧力Ptdに変更される。
【0042】
次に、ステップS11において、目標蒸発温度における上限値Teuo及び下限値Tedoが認識される。
【0043】
次に、ステップS12において、以下の算出式(9)に、デマンド飽和温度Ttd及び通常目標飽和温度Ttoが入力されることにより、目標蒸発温度における上限値Teuo及び下限値Tedoを変更可能な変更量Tcが算出される。
【数9】
【0044】
次に、ステップS14において、以下の算出式(10)に、上限値Teuo及び変更量Tcが入力されるとともに、以下の算出式(11)に、下限値Tedo及び変更量Tcが入力されることにより、目標蒸発温度の上限デマンド値Teud及び下限デマンド値Teddがそれぞれ算出される。
【数10】
【数11】
【0045】
そして、ステップS14において、目標蒸発温度における上限値Teuo及び下限値Tedoが、それぞれ、上限デマンド値Teud及び下限デマンド値Teddに変更された後、処理は再びステップS1に移行する。
【0046】
[暖房運転時におけるデマンド制御動作]
図4は、暖房運転時におけるデマンド制御動作の一例を示したフローチャートである。ここでの制御動作における各ステップS201〜S210(ステップS206,S208を除く)は、上記の冷房運転時における各ステップS1〜S10(ステップS6,S8を除く)と順に同様のものであるが、圧縮機制御部18における目標値を通常目標吐出圧力Ptoから省電力時目標吐出圧力Ptdに変更することを目的とした点で相違するものである。
【0047】
まず、ステップS201において、予め設定された目標デマンド量(電力消費削減目標量)Dmが認識される。
【0048】
次に、ステップS202において、通常目標圧力記憶部14に予め格納されている通常目標吐出圧力(通常目標圧力)Ptoが認識される。
【0049】
次に、ステップS203において、上記冷媒物性式(2)に基づき、通常目標吐出圧力Ptoが通常目標吐出圧力飽和温度(通常飽和温度)Ttoに換算される。
【0050】
次に、ステップS204において、室内に設置された室内機100における容量(暖房負荷)Icnと、室内における室温Tinとが認識される。
【0051】
次に、ステップS205において、上記算出式(1)に基づき、室温Tinの加重平均(平均室温)Tiaが算出される。
【0052】
次に、ステップS206において、上記算出式(4)に基づき、通常温度差ΔToが算出される。
【0053】
次に、ステップS207において、上記算出式(5)に基づき、デマンド温度差(省電力時温度差)ΔTdが算出される。
【0054】
次に、ステップS208において、上記算出式(7)に基づき、デマンド飽和温度(省電力時飽和温度)Ttdが算出される。
【0055】
次に、ステップS209において、上記算出式(8)に基づき、省電力時目標吐出圧力Ptdが算出される。
【0056】
次に、ステップS210において、圧縮機制御部18における目標値が通常目標吐出圧力Ptoから省電力時目標吐出圧力Ptdに変更される。その後、処理は再びSステップ201に移行する。
【0057】
[本実施形態における空気調和機の特徴]
上記構成によれば、通常温度差ΔTo(
図5(a−1)に示す加重平均Tiaと通常目標吸入圧力飽和温度Ttoとの温度差、又は、
図5(b−1)に示す通常目標吐出圧力飽和温度Ttoと加重平均Tiaとの温度差)が大きいほど利用者が快適性に満足した状況で空気調和機1の能力が無駄に使用されていることに着目し、
図5(a−2)又は
図5(b−2)に示すように、通常温度差ΔToの大きさに応じて目標デマンド量Dmに基づいた通常温度差ΔToの縮小を行ってデマンド温度差ΔTdを算出するとともに、該デマンド温度差ΔTdに基づいた省電力時目標吸入圧力Ptd/省電力時目標吐出圧力Ptdを目標値として圧縮機5を制御することで、空気調和機の消費電力が一定の閾値を超えた場合のみ空気調和機の能力を低下させる従来のデマンド制御と比べて省電力効果を常時確保しつつ、省電力時目標吸入圧力Ptd/省電力時目標吐出圧力Ptdを利用者の快適性の維持が可能な範囲に設定できるという効果を発揮することができる。その結果、快適性を損なわずに省電力が可能となり、利用者の快適性と省電力との両立を図ることができる。
【0058】
また、上記構成によれば、利用者によるリモコン4の操作に応じた外部指令の目標デマンド量Dmに基づいて、最適な省電力時目標吸入圧力Ptd/省電力時目標吐出圧力Ptdを演算できる。これにより、室内における空調負荷に対応した最適な省電力時目標吸入圧力Ptd/省電力時目標吐出圧力Ptdを得ることができるため、最大限の省電力が可能となる。例えば、冷房運転時にデマンド制御を行う場合、従来のデマンド制御に対して吸入圧力を高く設定することが可能となる。より具体的に、吸入圧力を0.06Mpaだけ高く設定できる場合には、従来のデマンド制御と比べて省電力効果を約6%向上させることができる。
【0059】
また、上記構成によれば、圧縮機制御部18において通常制御時に目標値として設定されるものであり、外気温度と、室内における空調負荷とに連動した通常目標圧力(通常目標吸入圧力Pto/通常目標吐出圧力Pto)を基準とするものであるため、利用者環境条件の変化に対して、常時、省電力効果を確保することができる。例えば冷房運転時にデマンド制御を行う場合、外気温度の変化に応じて吸入圧力を変化させることができる。より具体的に、外気温度が1℃低下した場合には、従来のデマンド制御と比べて省電力効果を約2%向上させることができる。
【0060】
また、上記構成によれば、通常温度差ΔToの縮小が、該通常温度差ΔToに省電力係数(=目標デマンド量Dm/100)を乗じることによって行われるものであるため、利用者によるデマンド要求に対して精度の高い消費電力設定を行うことができる。また、従来のデマンド制御で発生が予測される、必要以上に目標デマンド量Dmを増加させることによる、快適性の低下を防止することができる。
【0061】
また、上記構成によれば、通常温度差ΔToの縮小時に、利用者によるリモコン4の操作に応じて目標デマンド量Dmの値を、50、60、70、80、90、100などの値に段階的に設定可能であり、利用者の快適性が重視される場合には、省電力係数(=目標デマンド量Dm/100)を大きな値に設定可能であるとともに、省電力が重視される場合には、省電力係数(=目標デマンド量Dm/100)を小さな値に設定可能であるため、
空気調和機1が設置されている物件の用途又は利用者の要求に対して、デマンド制御の強弱が調整可能となる。従って、従来のデマンド制御で発生が予測される、快適性の低下や省電力効果の不足による、利用者からのクレームを防止することができる。
【0062】
また、上記構成によれば、冷房運転時には、加重平均Tiaから所定値を減算した値をデマンド飽和温度Ttdの上限値に設定し、暖房運転時には、加重平均Tiaに所定値を加算した値をデマンド飽和温度Ttdの下限値に設定可能であるため、室内熱交換器3の能力不足による冷暖房能力の不足を防止することができる。例えば冷房運転時にデマンド制御を行う場合、デマンド飽和温度Ttdの下限設定により、デマンド飽和温度を1℃上昇させる場合には、従来のデマンド制御に比べて約5%の冷房能力低下を防止することができる。
【0063】
また、上記構成によれば、所定値を3℃乃至10℃の範囲内の値に設定可能であるため、従来のデマンド制御で発生が予測される、空気と冷媒の温度差が不足することによる、室内機における熱交換不良を防止することができるとともに、快適性の低下を防止することができる。また、不必要にデマンド飽和温度Ttdを制限することによる、省電力効果の不足を防止することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0065】
なお、上記実施形態では、圧縮機制御部18が、上記算出式(8)に、デマンド飽和温度Ttdを入力することにより、省電力時目標吸入圧力Ptd/省電力時目標吐出圧力Ptdを取得する例について述べたが、本発明はこれに限定されず、圧縮機5の吸入配管/吐出配管において吸入/吐出冷媒温度を検出する吸入/吐出管サーミスタの出力に基づいて、省電力時目標吸入圧力Ptd/省電力時目標吐出圧力Ptdを取得してもよい。同様に、圧縮機制御部18は、吸入/吐出管サーミスタの出力に基づいて、通常目標吸入圧力Pto/通常目標吐出圧力Ptoを取得可能である。また、圧縮機制御部18は、制御部12側からの指令コマンド値に基づいて、省電力時目標吸入圧力Ptd/省電力時目標吐出圧力Ptd、又は、通常目標吸入圧力Pto/通常目標吐出圧力Ptoを取得可能である。
【0066】
なお、上記実施形態では、通常温度差算出部15が、上記冷媒物性式(2)を用いて、通常目標圧力(通常目標吸入圧力Pto/通常目標吐出圧力Pto)を通常飽和温度(通常目標吸入圧力飽和温度Tto/通常目標吐出圧力飽和温度Tto)に換算する例について述べたが、本発明はこれに限定されず、冷媒の物性値を示す冷媒物性表(ルックアップテーブル)を参照することにより、通常目標圧力(通常目標吸入圧力Pto/通常目標吐出圧力Pto)を通常飽和温度(通常目標吸入圧力飽和温度Tto/通常目標吐出圧力飽和温度Tto)に換算してもよく、冷媒の飽和圧力と飽和温度との対応関係(
図6参照)に基づいて、通常目標圧力(通常目標吸入圧力Pto/通常目標吐出圧力Pto)を通常飽和温度(通常目標吸入圧力飽和温度Tto/通常目標吐出圧力飽和温度Tto)に換算してもよい。