(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
略連続する刺激期間の第1の部分が、吸気フェーズの第1の部分に一致するとともに、吸気フェーズ全体の少なくとも3分の1の継続時間、吸気フェーズ全体の少なくとも2分の1の継続時間、および吸気フェーズ全体の少なくとも3分の2の継続時間の少なくとも1つを有する、請求項5に記載の刺激プロトコル決定システム。
略連続する刺激期間の第2の部分が、呼気フェーズの第1の部分に一致するとともに、呼気フェーズ全体の少なくとも3分の1の継続時間、呼気フェーズ全体の少なくとも2分の1の継続時間、および呼気フェーズ全体の少なくとも3分の2の継続時間の少なくとも1つを有する、請求項5に記載の刺激プロトコル決定システム。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の詳細な説明において、添付の図面はその説明の一部を構成し、実施されうる本開示の具体例を示している。この点に関して、”上(top)”、”下(bottom)”、”前(front)”、”後(back)”、”先(leading)”、”後(trailing)”などの方向の用語は、説明されている図面の方向に関連して使用される。本開示の構成例は複数の異なる姿勢で配置可能であるため、方向の用語は例示の目的に使用され、それに限定するものではない。当然ながら、他の実施例も可能であり、また構造的または論理的な変更も本開示の範囲から逸脱することなく可能であることは明らかである。それゆえ、以下の詳細な説明は、意味を制限するものではない。
【0006】
本開示の少なくともいくつかの実施例は、呼吸サイクルの対象部分の期間において間隔をあけてまたは周期的に刺激を与えることによって閉塞性睡眠時無呼吸を治療する方法に関する。そうすることにより、上気道の崩落を抑制しながら上気道の開存性を維持するおよび/または増加させる。同時に、的を絞った刺激を用いることにより、所定の神経または神経群に与えられる刺激の総量を制限することを可能にする。
【0007】
図1Aは、本開示の一例にかかる、少なくとも部分的に埋め込み可能な刺激システムの概略図である。
図1Aに示すように、一例のシステム10において、埋め込み可能なパルス発生器(IPG)35は患者20の胸部内に外科的に配置可能であり、刺激リード線32はIGP35の接続ポート内に配置されたコネクタ(図示せず)を介してIPG35に電気的に接続されている。以下に詳細に説明するように神経33に刺激を与えるために、リード線32は、刺激電極部45を備え、その刺激電極部45が患者10の舌下神経33などの患者の所望の神経に接触した状態で配置されるようにIPG35から延在している。一例の組み込み可能な刺激システムにおいては、例えば、本明細書内に全体が参照として組み込まれているクリストファーソン(Christopherson)などの米国特許第6,572,543号に記載のリード線32が使用されてもよい。一実施の形態において、リード線32はさらに、呼吸圧力などの呼吸努力を検出するために患者10内に配置されるセンサ部40(IPG35に電気的に接続され、IPG35から延在している)を少なくとも1つ備える。
【0008】
いくつかの実施の形態において、センサ部40は、対象の神経に刺激を与える電極部をトリガー起動させるために、呼吸パターン(例えば、吸気、呼気、呼吸休止など)を含む呼吸努力を検出する。したがって、この構成の場合、IPG35(
図1)は、呼吸センサ部40からの呼吸波形を受け取ることにより、本開示の例に基づく健康回復に効果的な治療法にしたがって、呼気に同期する(または呼吸サイクルの別の態様に対して同期する)電気刺激を出力する。当然ながら、呼吸センサ部40がIPG35から電力の供給を受け、IPG35は刺激リード線32からのインピーダンス信号を受け取って処理するための内部回路を備えることは明らかである。
【0009】
いくつかの実施の形態において、センサ部60は圧力センサである。一例において、本実施の形態の圧力センサは、患者の胸部内の圧力を検出する。他の例においては、検出される圧力は、胸部の圧力と心臓の圧力(例えば血流)との組み合わせであってもよい。この構成の場合、コントローラは、患者の呼吸パターンを検出するために、この圧力検出情報を解析するように構成されている。
【0010】
いくつかの他の実施の形態において、呼吸センサ部40は、生体インピーダンスセンサ又は一対の生体インピーダンスセンサを有し、胸部以外の部分に配置されてもよい。一態様において、このようなインピーダンスセンサは、生体インピーダンス信号またはパターンを検出するように構成され、それにより、制御ユニットが生体インピーダンス信号内の呼吸パターンを評価する。生体インピーダンスの検出に関して、一実施の形態においては、インピーダンスを算出するために、体内の電極部とIPG35のケースの導電体の部分とに電流を流しつつ、間隔をあけて配置されている2つの刺激電極部の間(または刺激電極部の一方とIPG35のケースの導電体の部分との間)の電圧が検出される。
【0011】
いくつかの実施の形態において、システム10はまた、呼吸機能に関連する生理学的データをさらに取得するために追加的なセンサを有する。例えば、システム10は、概ね胸部に分散配置され、胸越しの(trans−thoracic)生体インピーダンス信号、心電図(ECG)信号、または呼吸に関連する他の信号を測定する様々なセンサ(例えば
図1のセンサ47、48、49)を備えてもよい。
【0012】
いくつかの実施の形態において、閉塞性睡眠時無呼吸の治療のためのセンシングおよび刺激システムは、閉塞性睡眠時無呼吸と診断された患者のための健康回復に効果的な解決方法を提供する、全体として埋め込み可能なシステムである。他の実施の形態においては、システムの1つ以上の構成要素が患者の体内に埋め込まれない。埋め込まれない構成要素の非限定的な例として、外部センサ(呼吸、インピーダンスなど)、外部処理ユニット、または外部電源などが挙げられる。当然ながら、システムの埋め込まれる部分は、システムの埋め込まれる部分からシステムの外側部分に向かってまたはその逆にデータおよび/または制御信号を送るための通信経路を備える。その通信経路は、無線周波数(RF)テレメトリーリンクまたは他のワイヤレス通信プロトコルなどである。
【0013】
部分的に埋め込み可能であるかまたは全体的に埋め込み可能であるかにかかわらず、システムは、繰り返される呼吸サイクルのいくつかの部分の期間において舌下神経に刺激を与え、それによって睡眠中に上気道の障害すなわち閉塞を抑制するように構成されている。1つの実施の形態において、埋め込み可能なシステムは、埋め込み可能なパルス発生器(IPG)と、末梢神経カフ刺激リード線と、圧力検出用リード線とを有する。
【0014】
図1Bは、本開示の一例にかかる、埋め込み可能なパルス発生器(IPG)60を概略的に示すブロック図である。一実施の形態において、IPG60は、概して、
図1AのIPG35と少なくとも実質的に同一の特徴および特性を備える。
図1Bに示すように、一例において、組み込み可能なパルス発生器60は、コントローラ62と、メモリ64と、センシングモジュール66と、刺激モジュール68と、患者管理モジュール70と、治療管理部72とを備える。
【0015】
複数のパラメータを介して、センシングモジュール66は、患者が寝ているまたは起きているのにかかわらず、患者の呼吸状態や他の呼吸に関連する兆候を判定するために、種々の生理学的センサ(圧力センサ、血液酸素センサ、音響センサ、心電図(ECG)センサ、またはインピーダンスセンサなど)からの信号を受け取って監視する。このような呼吸検出は、1つのセンサまたは任意の複数のセンサのいずれかから受け取ってもよく、あるいはより信頼でき且つ正確な信号を提供可能な種々の生理学的センサの組み合わせから受け取ってもよい。一例において、センシングモジュール90は、
図1Aのセンサ部40および/またはセンサ47、48、49から信号を受け取る。
【0016】
一例において、IPG60のコントローラ62は、1つ以上の処理ユニットと、IPG60とシステム10(
図1A)の動作を支持する制御信号を生成するように構成されている関連するメモリとを有する。特に、センサを介して集められた生理学的データに応答するコントローラ62に関連するメモリ64に収容されている入力指示および/または機械可読な指示(ソフトウェアを含む)を介して受け取った命令に応答してまたは基づいて、コントローラ62は、舌下神経などの対象の神経への刺激を選択的に制御するためにパルス発生器60の動作を指示する制御信号を生成し、それにより気道開存性を回復させて無呼吸事象を減少させるまたはなくす。一例において、コントローラ62は一般的な汎用コンピュータに組み込まれている。
【0017】
この用途のために、コントローラ62に関して、用語”プロセッサ(processor)”は、メモリ内に収容されている機械可読な指示のシーケンス(ソフトウェアに制限しない)を実行する現行のプロセッサまたは将来開発されるプロセッサを意味する。機械可読な指示のシーケンスを実行することにより、プロセッサは、本開示の例において説明したように、神経に刺激を与えるIPG60の動作などのアクションを実行する。機械可読な指示は、プロセッサによって実行されるために、メモリ65としての、リードオンリーメモリ(ROM)、大容量ストレージデバイス、または他の持続性のストレージ、あるいは非揮発性のメモリからランダムアクセスメモリ(RAM)内にロードされてもよい。一例において、メモリ64は、コントローラ62によって実行可能な且つ機械可読な指示を持続的にまたは非揮発的に蓄えるメディアを読み出し可能なコンピュータを有する。他の例において、ハードウェアに組み込まれている回路が、機械可読な指示(ソフトウェアを含む)に代わってまたはともに、そこに記載されている役割を果たすために、使用されてもよい。例えば、コントローラ62は、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)の一部として実施されてもよい。少なくともいくつかの例において、コントローラ62は、ハードウェア回路と機械可読な指示の具体的な組み合わせを限定せず、またコントローラ62よって実行される機械可読な指示のソースを特定のソースに限定しない。
【0018】
この点を考慮して、一般的な用語において、治療管理部72は、呼吸情報と同期するように動作し、その呼吸情報に基づいて適切な刺激パラメータを決定し、また対象の神経に電気的刺激を与える。
【0019】
一例において、いくつかの構成要素の中で、治療管理部72は、刺激プロトコル決定モジュール74を備える。
【0020】
一例において、刺激プロトコル決定モジュール74は、入力機能76と選択機能78とを備える。概括的に言えば、入力機能は、呼吸努力情報を介して検出された上気道の流れの制限の兆候を受け取る。一例において、入力機能76は、流れ制限パラメータ80と呼吸努力パラメータ82とを含んでいる。
【0021】
一例において、流れ制限パラメータ80は、患者の上気道内に流れ制限が存在する状態を検出して監視する。一態様において、流れ制限パラメータ80は、流れ制限の程度および/または継続時間を監視する。流れ制限を認識する様々な例が、少なくとも
図3〜13に関連して後述されている。
【0022】
一例において、呼吸努力パラメータ82は、これに限定するわけではないが、
図1A〜1Bに関連して既に上述した呼吸検出方法などの呼吸情報の検出を介して取得された呼吸努力情報を検出して監視する。呼吸努力情報は、気流に対応し、また患者の上気道の流れ制限の程度および/または継続時間の作成または判定を可能にする。
【0023】
上述したように、治療管理部72はまた、選択機能78を備える。概括的に言えば、選択機能78により、IPG60が上気道の流れ制限の特定のタイプに対応する適当な刺激プロトコルを選択可能になる。一例において、選択機能78は、呼吸フェーズパラメータ84とプロトコル配列パラメータ86とを含んでいる。呼吸フェーズパラメータ84は、刺激が与えられるべき、呼吸フェーズ、または複数の呼吸フェーズ、あるいは、各フェーズの部分を決定する。一態様において、これらの決定は、入力機能76によって受け取られた検出情報を用いる、呼吸努力の継続的な検出に基づいて行われる。
【0024】
プロトコル配列パラメータ86は、流れ制限のタイプ、程度、および/または継続時間に基づいて、患者の神経に付与するのに適したプロトコルの配列を提供する。プロトコル配列パラメータ86は、呼吸フェーズパラメータ84および入力機能76と協働する。
【0025】
以下、治療管理部72を介する呼吸障害の治療、特に、治療管理部72のプロテクト決定モジュール74の機能、構成要素、パラメータ、および/または特徴を介する上気道の流れ制限(例えば、閉塞)の治療が、
図3〜13を参照しながら説明される。
【0026】
概括的に言えば、IPG60の刺激モジュール68は、医者によってプログラムされた治療レジメンにしたがっておよび/またはプロトコル決定モジュール74を介するなどの治療管理部72と協働することにより、神経刺激信号を生成して電極(
図1Aに示す刺激電極45など)を介して付与するように構成されている。
【0027】
概括的に言えば、患者管理モジュール70は、当業者によく知られた方法で、IPG60との通信を容易にするように構成されている。したがって、患者管理モジュール70は、IPG70の動作(検出された生理学的データ、刺激履歴、検出された無呼吸の回数などを含む)を報告するように構成されているとともに、患者プログラマー、臨床医プログラマーなどの外因からのIPG60の初期プログラミングまたはさらなるプログラミングを受け取るように構成されている。
【0028】
一例において、
図1Cに示すように、方法100は、上気道の開存性を維持するおよび/または回復させるための刺激を与える前に、呼吸サイクルの間、流れ制限のパターンを特定することを含んでいる(102)。一態様において、方法100は、流れ制限が最初に生じた状況を特定する。特に、
図1に関して、方法100は、(1)主(優位)に吸気中に生じる流れ制限(104)と、(2)主(優位)に呼気中に生じる流れ制限(106)と、(3)吸気の一部分および呼気の一部分の両方において生じる流れ制限(混合流れ制限)(108)とを区別する。一態様において、本開示の中において、流れ制限は、閉塞性睡眠時無呼吸または当業者にとってよく知られた不規則な呼吸パターンに概ね関連するタイプの上気道の狭窄に対応する。
【0029】
図1Cに示すように、一例において、主に吸気中に流れ制限が生じる場合(104)、吸気中におよび/または吸気に同期して刺激が付与される(110)。一方、別例において、呼気中に(例えば呼気と同期して)主に流れ制限が生じる場合(106)、呼気中におよび/または呼気に同期して刺激が付与される(112)。
【0030】
しかしながら、いくつかの例において、吸気の一部分および呼気の一部分中に(例えば、吸気の一部分および呼気の一部分に同期して)主に流れ制限が生じる場合(108)、吸気のいくつかの部分および呼気のいくつかの部分において刺激が付与される(114)。
【0031】
一例において、流れ制限が吸気の終わりと呼気の始まりとの間の移行部にオーバーラップする場合、吸気の終わりと呼気の始まりとの間の移行部にオーバーラップするように刺激が付与される。
【0032】
別例において、吸気の一部分および呼気の一部分において流れ制限が生じる場合(108)、吸気フェーズ全体と呼気フェーズ全体とを含む呼吸サイクル全体をカバーするように刺激が付与される。
【0033】
流れ制限を認識するために、方法100は、
図2に示すような通常時の呼吸パターン150を基準点として使用する。当然ながら、患者によって差異が存在し、通常時の呼吸パターン150が、説明のための典型例であって、全ての患者における普遍的な通常時の呼吸パターンを正確に定義するものではない。この点を考慮して、いくつかの実施の形態においては、方法100は、特定の患者(方法が実行される)の特有の呼吸パターンを、呼吸における流れ制限の有無を評価するための基準点として使用する。
【0034】
図2に示す通常時の呼吸パターン150の例において、呼吸サイクル160は、吸気フェーズ162と呼気フェーズ170とを含んでいる。吸気フェーズ162は、初期部164、中期部165、および末期部166を含んでいる。一方、呼気フェーズ170は、初期部174、中期部175、末期部176部、および呼気ピーク177を含んでいる。第1の移行部180が、吸気末期部166と呼気初期部174との間の接合部で生じている。一方、第2の移行部182が、呼気末端部176と吸気初期部164との間の接合部で生じている。
【0035】
一例において、
図3〜13に関連して説明される様々な刺激プロトコルが、少なくとも治療管理部72および/またはプロトコル決定モジュール74を備えるシステム10(
図1A)および/またはIPG60(
図1B)を介して実行される。しかしながら、他の例においては、
図3〜13に関連して説明される様々な刺激プロトコルは、他の構成要素、モジュール、およびシステムを介して実行される。
【0036】
図3は、本開示の一実施の形態にかかる、不規則な呼吸パターン203Aと治療後の呼吸パターン203B(点線203Cによって分けられている)とを示すダイアグラム200である。
図3に示すように、不規則な呼吸パターン203Aは、主に呼吸サイクルの吸気フェーズ中に生じた上気道内の流れ制限の存在を反映している。吸気フェーズ202Aは、初期部204A、中期部205A、および末期部206Aを含み、一方、呼気フェーズ210Aは、初期部214A、中期部215A、ピーク217A、および末期部216Aを含んでいる。一態様において、吸気フェーズ202Aの中期部205Aは、実質的に頂部が切断された振幅(
図2などの通常時の呼吸パターンに比べて)に対応する概ね平らな形状すなわち水平形状であって、吸気中において上気道内に流れ制限(矢印201で示す)が発生していることを示している。しかしながら、刺激の付与を介して(バー221で示す)呼吸は回復し、治療後の呼吸パターン202Bに示すように、吸気フェーズ202Bの中期部205Bは、一般的な通常時の振幅に対応する概ね放物線形状に戻り、流れ制限が改善されたことを示している。一実施の形態において、刺激は、第1の端222から第2の端224に延在するバー221によって示され、吸気フェーズ202Bの継続時間全体に実質的に一致する。しかしながら、以下で詳細に説明するように、他の実施の形態においては、付与される刺激は、吸気フェーズ202Bの継続時間全体に延在せずに、吸気フェーズ202Bの選択された部分に付与される。
【0037】
一例において、流れ制限および/または関連する無呼吸の検出、および、刺激の停止または開始を決定するための呼吸サイクルの吸気フェーズおよび呼気フェーズそれぞれの開始と終了の検出が、公知の方法やその方法を実行するデバイスにしたがってまたは協働して実行されることは明らかである。呼吸努力および流れ制限に関連する様々な特徴およびパターンを認識して検出するための非限定的な例のデバイスや方法が、これに限定するわけではないが、2010年5月27日に公開されたタイトルが”A METHOD OF TREATING SLEEP APNEA”のPCT公開第WO/2010/059839号、タイトルが”RESPIRATORY EFFORT DETECTION METHOD AND APPARATUS”のクリストファーソン(Christopherson)の米国特許第5,944,680号、およびタイトルが”METHOD AND APPARATUS FOR TREATING OBSTRUCTIVE SLEEP APNEA”のテスターマン(Teaterman)の米国特許第5,522,862号に開示されている。
【0038】
図4は、本開示の一実施の形態にかかる、不規則な呼吸パターン253Aと治療後の呼吸パターン253Bとを示すダイアグラム250である。
図4に示すように、不規則な呼吸パターン253Aは、主に呼吸サイクルの呼気フェーズ中に生じた上気道内の流れ制限の存在を反映している。不規則な呼吸パターン253Aにおいて、吸気フェーズ252Aは、初期部254A、中期部255A、および末期部256Aを含んでいる。吸気フェーズ252Aは、一般的な通常時の呼吸パターン150(
図2)を示している。
図4を再び参照すると、呼気フェーズ262Aは、初期部264A、中期部265A、ピーク267A、および末期部266Aを含んでいる。一態様において、呼気フェーズ262Aは、振幅に対応する相対的に浅いピーク267A、または、通常時の呼吸パターン150(
図2)における呼気フェーズ170のピーク177に比べて実質的に小さいピーク圧力を備える。概ね浅い呼気に対応する呼気フェーズ262Aのパターンは、呼気中において上気道内に流れ制限(矢印251で示す)が発生していることを示している。さらに、ピーク267Aが浅いために、呼気フェーズ262Aの中期部265Aは、通常時の呼気フェーズ170(
図2に示す通常時の呼吸パターン150における)の中期部175に存在する概ね急勾配の上方向の傾斜に代わって、比較的に緩やかな上方向の傾斜を備える。
【0039】
しかしながら、
図4に示すように、刺激の付与を介して(バー270で示す)、ピーク267Bが完全な振幅に戻るとともに、呼気フェーズ262Bの中期部265Bが概ね急勾配の上方向の傾斜に回復して呼気フェーズ262Bが正常な状態になり、それにより流れ制限が改善される。一実施の形態において、刺激(270)は、バー271(第1の端272から第2の端274に延在する)によって示され、呼気フェーズ262Bの継続時間全体と実質的に一致する。しかしながら、以下に詳細に示すように、他の実施の形態においては、付与される刺激は、呼気フェーズ262Bの継続時間の一部分のみにおいて延在する。
【0040】
一実施の形態において、刺激は、各呼吸サイクルにおける吸気フェーズ(
図3)または呼気フェーズ(
図4)それぞれで付与される。しかしながら、他の実施の形態においては、刺激の付与は、必要に応じて、自動滴定法に関連して、いくつかの呼吸サイクルで選択的に行われる。このような自動滴定法の例が、2010年5月27日に公開されたタイトルが”A METHOD OF TREATING SLEEP APNEA”のPCT公開第WO/2010/059839号に開示されている。
【0041】
図5Aは、本開示の一実施の形態にかかる、不規則な呼吸パターン283Aと治療後の呼吸パターン283Bとを示すダイアグラム280である。
図5Aに示すように、不規則な呼吸パターン283Aは、呼吸サイクルの吸気フェーズ282の一部分と呼気フェーズ292の一部分の両方において上気道内に生じた流れ制限を示している。
図5Aに示すように、吸気フェーズ282Aは、初期部284A,中期部285A、および末期部286Aを含んでいる。一方、呼気フェーズ292Aは、初期部294A、中期部295A、ピーク297A、および末期部296Aを含んでいる。
【0042】
一態様において、
図5Aは、不規則な呼吸パターン283Aにおいて、吸気フェース282Aの中期部285Aは、実質的に頂部が切断された振幅(
図2などの通常時の呼吸パターン150の吸気フェーズ162に比べて)に対応する概ね平らな形状すなわち水平形状である。この概ね平らな形状は、吸気中において上気道内に流れ制限(矢印281Aで示す)が発生していることを示している。
【0043】
他の態様において、不規則な呼吸パターン283Aはまた、振幅に対応するピーク297Aまたは通常時の呼吸パターン150(
図2)における呼気フェーズ170のピーク177に比べて実質的に小さいピーク圧力を備える呼気フェーズ292Aを含んでいる。概ね浅い呼気に対応するこのパターン283Aは、呼気中における上気道内の流れ制限(矢印281Bで示す)によって生じている。さらに、ピーク297Aが浅いために、中期部295Aは、通常時の呼気フェーズ170(
図2に示す通常時の呼吸パターン150における)の中期部175に存在する概ね急勾配の上方向の傾斜に代わって、比較的に緩やかな上方向の傾斜を備える。
【0044】
一例において、示された上気道の流れ制限は、主に吸気フェーズの第1の部分と呼気フェーズの第1の部分の両方において起こる。他の態様において、示された流れ制限は、吸気フェーズの第2の部分と呼気フェーズの第2の部分とにおいて主に起こらない。
【0045】
しかしながら、少なくとも吸気フェーズの一部分と呼気フェーズの一部分とに対する混合刺激(バー300で示す)の付与を介して、流れ制限は軽減される。治療後の呼吸パターン283Bに示すように、中期部285Bの後半部285C(および末期部286B)は、流れ制限前の基準の吸気フェーズに酷似し、また”吸気”の流れ制限の改善に対応する放物線形状に戻る。
【0046】
同様に、この刺激が吸気フェーズ282Bから呼気フェーズ292Bまでオーバーラップしているため、治療後の呼吸パターン283Bは、流れ制限前の(
図2の通常時の呼吸パターン150の呼気フェーズ170における振幅177のように)基準の振幅に接近するピーク297Bを示している。この治療後の呼吸パターン283Bはまた、急勾配に上方向に傾斜する振幅に回復し、”呼気”の流れ制限の改善を表す中期部295Bを示している。
【0047】
一実施の形態において、刺激は、第1の端301(吸気フェーズ282B内における)から第2の端303(呼気フェーズ292B内における)まで延在するバー300によって示される。その刺激は、概ね連続する刺激期間として付与される。刺激期間は、中期部285Bの途中(吸気フェーズ282Bの初期部284Bから離れた位置の開始点)から始まり、吸気と呼気の移行部を通過し、呼気フェーズ292Bの初期部294Bとピーク297Aを通過し、そして、呼気フェーズ292Bの中期部295Bの少なくとも途中まで(呼気フェーズ292Bの末期部296B前の終点まで)通過する。
【0048】
一例において、
図5Aの実施の形態は、吸気の終わりと呼気の始まり付近で気道崩壊が発生しうるリスクが大きい患者に対して刺激を付与するものである。このような例においては、吸気の継続時間および量を有害に制限することに加えて、吸気フェーズを通じて上気道が部分的に制限されることにより、吸気フェーズの終わりでおよび/または呼気フェーズの始まりまで、気道がさらに崩壊しやすくなる。したがって、
図5Aの実施の形態においては、混合刺激(バー300で示す)は、吸気フェーズ282Bの略中間の開始点から始まり、吸気の終わりと呼気の始まりとの間の移行部を実質的に連続して通過するように延在し、呼気フェーズ292Bの略中間の終点に到達する。一態様において、この混合刺激は、呼気の大部分が終わった後に終了する。このような方法により、呼吸サイクル全体を通じて舌下神経に連続刺激を与えることが回避され、舌下神経への不必要な刺激が最小限にされる。代わりに、これらの実施の形態において、上気道の崩壊を抑制するために、1つ以上の呼吸サイクルの対象の部分において刺激が戦略的に付与される。それにより、有効な結果が得られている間は、刺激が思慮深く付与される。
【0049】
なお、当然ながら、
図5Aのダイアグラム280が、吸気フェーズの終わりと呼気フェーズの始まりとにオーバーラップする混合刺激の付与を概略的に示している一例に過ぎない。
【0050】
したがって、このような混合刺激の付与により、呼気の狭窄が解消され、それに続く吸気努力の間に上気道が完全に崩壊しにくくなる。
【0051】
特定の理論に束縛されることなく、混合刺激が吸気フェーズの終わりと呼気フェーズとにオーバーラップすることにより、肺内が最小限の加圧レベルで維持され、気道の開存性が維持されると推定される。それは、最小の加圧レベルが、上気道の崩壊を発生させる本質的な原因となる、気道上の肺が高強度の真空になることを抑制するからである。
【0052】
このような方法により、幾人かの患者の場合、呼吸サイクル全体を通じて刺激を連続的に付与することなく、崩壊のリスクが高い期間において刺激が付与され、それによりエネルギが節約されるとともに本質的に不必要な神経への刺激が最小化される。
【0053】
図5Aに関連して説明したような刺激プロトコルの一例において、概ね連続する刺激期間(
図5Aにおいてバー300で示され、吸気フェーズの一部分と呼気フェーズの一部分とにおよぶ)は、第1の期間にわたる一連の連続する複数の呼吸サイクルにおいて付与される。さらに、入力モジュール(
図1Bの治療管理部72のプロトコル決定モジュール74の入力モジュール76など)は、刺激プロトコルがあるにもかかわらず流れ制限が持続しているか否か、または流れ制限が生じる前に刺激プロトコルが軽減されているまたは削除されているかを判定するように構成されている。したがって、一態様において、治療管理部の入力モジュールは、第1の期間内において上気道の流れ制限の少なくともいくつかの兆候を受け取ったかを判定する。他の態様においては、治療管理部の入力モジュールは、しきい値を超える少なくともいくつか兆候を第1の期間中に入力モジュールが受け取った場合、概ね連続する刺激期間の継続時間を増加させる。他の態様において、治療管理部の入力モジュールは、第1の期間中に上気道の流れ制限の兆候(またはしきい値以下の複数の兆候)を入力モジュールが受け取らなかった場合、概ね連続する刺激期間の継続時間を減少させる。
【0054】
一例において、第1の期間(一連の複数の呼吸サイクルが通じて行われる)は、無呼吸時の患者の呼吸低下の兆候に基づく、刺激がないときに無呼吸が生じうる期間である。
【0055】
図5Bは、本開示の一例にかかる、吸気フェーズの一部分と呼気フェーズの一部分に対する概ね連続する刺激期間の部分を概略的に示すダイアグラムである。
【0056】
概ね連続する刺激期間を示す基準点として、
図5Bは、前に
図1に示した呼吸サイクル160と実質的に同一の表現を提供している。したがって、図示されている呼吸サイクル160は、吸気フェーズ162と呼気フェーズ170とを含んでいる。吸気フェーズ162は、初期部164と、中期部165と、末期部166とを含んでいる。一方、呼気フェーズ170は、初期部174と、中期部175と、末期部176と、呼気ピーク177とを含んでいる。第1の移行部180が、吸気の末期部166と呼気の初期部174との間の接続部に存在する。一方、第2の移行部182が、呼気の末期部176と吸気の初期部164との間の接続部に存在する。
【0057】
本開示の一例によれば、
図5Bはさらに、概ね連続する刺激期間358の第1の部分360を表す第1のバー361と、概ね連続する刺激期間358の第2の部分380を表すバー381とを示している。
図5Bに示すように、バー361は、接続部180(吸気フェーズ162の終わりと呼気フェーズ170の始まり)に概ね一致する第1の端362と、吸気フェーズ162の中期部に位置する第2の端364とを備える。
図5Bに示すように、バー381は、バー381は、接続部180(呼気フェーズ162の終わりと呼気フェーズ170の始まり)に概ね一致する第1の端382と、呼気フェーズ170の中期部に位置する第2の端384とを備える。
【0058】
図5Bによってさらに示されるように、概ね連続する刺激期間が吸気フェーズ162と呼気フェーズ170とにオーバーラップした状態で、概ね連続する刺激期間の第1および第2の部分それぞれの継続時間は、治療管理部72のプロトコル決定モジュール74(
図1B)によって決定された異なる神経刺激プロトコルの間で変化することができる。
【0059】
一例において、概ね連続する刺激期間358の第1の部分360は、吸気フェーズ162全体(E1)の少なくとも3分の1の継続時間(372によって示されている)を備える。一態様において、3分の1の割合は、矢印357に示すように、バー361の端362から始まり測定されたものである。他の例において、概ね連続する刺激期間358の第1の部分360は、吸気フェーズ162全体(E1)の少なくとも半分の継続時間を備える。他の例において、概ね連続する刺激期間358の第1の部分360は、呼気フェーズ162全体(E1)の少なくとも3分の2(374によって示されている)の継続時間を備える。
【0060】
他の例において、概ね連続する刺激期間358の第2の部分380は、呼気フェーズ170全体(E2)の少なくとも3分の1(392によって示されている)の継続時間を備える。一態様において、3分の1の割合は、矢印377に示すように、バー381の端38から始まり測定されたものである。他の例において、概ね連続する刺激期間358の第1の部分380は、呼気フェーズ170全体(E2)の少なくとも半分(390によって示されている)の継続時間を備える。他の例において、概ね連続する刺激期間358の第1の部分380は、呼気フェーズ170全体(E2)の少なくとも3分の2(393によって示されている)の継続時間を備える。
【0061】
一例において、吸気フェーズ162の第1の部分(刺激が付与される期間)は、吸気フェーズ162全体(E1)の少なくとも大部分に相当する。また、呼気フェーズ170の第1の部分(刺激が付与される期間)は、呼気フェーズ170全体(E2)の少なくとも大部分に相当する。一例において、大部分は少なくとも51パーセントとして定義される。他の例においては、吸気フェーズ162の大部分は、吸気フェーズ162全体(E1)の少なくとも3分の2として定義され、また、呼気フェーズの大部分は、呼気フェーズ170全体(E2)の少なくとも3分の2として定義される。
【0062】
一例において、
図5Aおよび
図5Bに関連する刺激プロトコルの変更例が、少なくとも
図5〜11を参照しながら以下に説明されている。
【0063】
他の実施の形態において、
図6のダイアグラム310は、
図5Aに示す混合流れ制限に実質的に類似する混合流れ制限を原因として生じた不規則な呼吸パターン333Aを概略的に示している。しかしながら、
図5Aに示す付与される刺激300の実質的に連続する部分と異なり、
図6に示す実施の形態において、刺激は、比較的に短く分けられた2つのバースト(burst)340、342状で付与される。一方のバースト340は吸気期間322Bの初期に付与され、他方のバースト342は呼気期間322Bの初期に付与される。この実施の形態において、刺激は障害の予防を目的としており、吸気フェーズおよび呼気フェーズの一方または両方における初期に刺激は付与される。吸気フェーズおよび呼気フェーズそれぞれの初期に刺激(短い継続時間)を付与することにより、上気道はそのフェーズにおいて最大流量の空気が流れる前に開いた状態で維持される。それにより、ひとたび上気道が概ね完全に開いた状態で空気が流れ始めると、吸気されたまたは呼気された空気(それぞれ)が、吸気フェーズまたは呼気フェーズの残りの期間、上気道を開いた状態で維持する役割を果たす。他の態様において、吸気フェーズの初期に刺激バーストを適用することによって得られる本質的な1つの利点は、上気道に負圧(吸気努力によって発生する)の反作用が生じることである。
【0064】
特定の理論に束縛されることなく、吸気フェーズの初期に刺激バースト(例えば、基準レベルの刺激に加えて付加的な刺激バースト、または基準レベルの刺激ではなく孤立したバースト状の刺激)を付与することにより、その刺激によって上気道に高強度の真空が付与されている(肺を介して)ときに気道が径方向に拡大し、その上気道の径方向の拡大(刺激バーストによって生じる)により、上気道の組織に肺からの真空が作用するときに起こる組織の挙動と反対方向に組織が挙動するまたは反応すると推定される。したがって、吸気の開始中に肺からの高強度の真空引き(上気道の崩壊に寄与する)が始まる前のタイミングに、上気道の組織の径方向に拡大する運動量を生み出すために刺激が付与される。上気道の組織に対する時定数に関するすなわち時定数によって起こる遅延が存在するため、肺からの真空引きの前に組織に第1の刺激を付与することにより、刺激バーストを介して上気道を径方向に拡大させる十分な運動量が確立され、この運動量が上気道の組織に作用する真空引きによってもたらされる本質的な崩壊に対抗するまたは予防的に拒絶する。
【0065】
一態様において、このように刺激を付与することにより、また、刺激が複数の呼吸サイクル全体を通じて無差別に付与されることなく、1つ以上の呼吸サイクル内において戦略的に付与されるため、付与される刺激が小さい状態で気道の開存性が維持される。この点を考慮して、一実施の形態において、バースト340とバースト342(
図6参照医)の合計の継続時間は、
図5Aに示す刺激パルス300の継続時間に比べて実質的に短い。したがって、神経に付与される刺激の総量を実質的に減少させつつ、適切な気道の開存性が得られる。
【0066】
いくつかの実施の形態においては、分かれたバースト状の刺激が吸気フェーズと呼気フェーズそれぞれ付与され、吸気フェーズのバーストの継続時間が呼気フェーズのバーストの継続時間と異なる。例えば、
図7Aのダイアグラム400に示すように、典型的なまたは通常時の呼吸パターン401は、付与された刺激によって維持される。第1の継続時間の刺激バースト(バー420Aによって示される)は、吸気フェーズ402Aの初期において付与される。一方、第2の刺激バースト(バー422Aによって示される)は、実質的に呼気フェーズ412A全体にわたって付与される。この刺激バーストのパターンは、連続する呼吸サイクル402B、402Cなどを通じて繰り返される。
【0067】
一態様において、”吸気フェーズ”バースト(420A、420B、420C)それぞれの継続時間と”呼気フェーズ”バースト(422A、422B、422C)それぞれの継続時間は、患者ごとに異なり、その患者が吸気フェーズ403Aまたは呼気フェーズ413Aのいずれにおいて大きい流れ制限を示す傾向があるのかによっても異なる。その例において、混合流れ制限(吸気および呼気の両方)を概ね示し且つ呼気中における流れ制限の方が大きい患者を治療するために、
図7Aに示すように、”呼気フェーズ”バースト(422A、422B、422C)は、”吸気フェーズ”バースト(420A、420B、420C)に比べて長い継続時間を備える。
【0068】
一実施の形態において、吸気フェーズにおいて付与される刺激の振幅、パルス幅、周波数のいずれか1つまたは全てが、呼気フェーズにおいて付与される刺激の振幅、パルス幅、周波数のいずれか1つ(または全て)と異なる。なお、刺激期間の初期で刺激が上方向に傾斜する(増加する)または刺激期間の末期で下方向に傾斜する傾斜刺激パターンは、吸気フェーズおよび呼気フェーズの一方または両方において不与可能である。
【0069】
いくつかの実施の形態において、
図7Bに示すように、呼吸サイクルそれぞれにおいて刺激バーストを付与することに代わって、刺激バースト(例えば420A、420B、420C)が一つおきの呼吸サイクルにおいて付与され、それにより、中間の”吸気フェーズ”バースト422Aと中間の”呼気フェーズ”バースト422Bが省略される。この実施の形態において、この刺激パターンによって患者が呼吸ドライブを平衡に保つ十分な酸素を受け取るため、患者は、呼吸サイクルそれぞれにおいて刺激バーストを受けなくても済む。他の実施の形態において、吸気フェーズ内の刺激バーストのパターン(420A、420B、420Cなどの各呼吸サイクルに付与される)を、呼気フェーズ内の刺激バーストのパターン(422A、422Cなどの一つおきの呼吸サイクルに付与される)に対して、またはその逆に、合わせる必要はない。このような方法により、患者の上気道はそのまま維持され、各吸気フェーズまたは各呼気フェーズで刺激を受け取ることなく患者は十分な酸素を受け取る。
【0070】
さらなる他の実施の形態において、他の形態の代わりの刺激バーストが付与される。例えば、1つの刺激パターンにおいて、低振幅で連続するパルス状の刺激が付与され、1つ以上の相対的に短い継続時間の刺激パターンが、低振幅で連続する刺激に対して追加的に付与される。
図8は、本開示の一実施の形態にかかる、刺激パターンを介して睡眠時の不規則な呼吸を治療する方法を概略的に示すダイアグラム400である。
図8に示すように、呼吸サイクル453は、吸気フェーズ451と呼気フェーズ461とを含んでいる。吸気フェーズ451は、初期部454と、中期部455と、末期部456とを含んでいる。
一方、呼気フェーズ461は、初期部464と、中期部465と、ピーク467と、末期部466とを含んでいる。
【0071】
図8のダイアグラム450にさらに示すように、吸気フェーズ451において低振幅で連続するパルス状の刺激(バー470で示す)が付与され、呼気フェーズ461において低振幅で連続するパルス状の刺激(バー480で示す)が付与される。バー470、480は説明のために分かれた要素として図示されているが、当然ながら、概ね連続する刺激が移行部を介して吸気フェーズ451から呼気フェーズ461に向かって連続している。なお、
図8に示すように、概ね連続するパルス状の低振幅の緊張刺激(tone sitmulation)470に加えて、短い継続時間の刺激バースト475が、吸気フェーズ451のみにおいて付与されている(主に吸気において流れ制限が患者に生じているため)。付加的な刺激バースト475は吸気フェーズ451内であればどこに付与されてもよく、
図8に示す例においては、そのバーストが吸気フェーズ451の初期部454に付与されている。他の態様において、初期部454にそのバーストが付与されることにより、また、刺激によって肺からの真空引きの前に開存性を上気道に確立する仮想的なステントのような反応が起こるために、吸気が始まるときに上気道の完全な開存性が確保しやすくなる。上述したように、刺激の初期部(ピーク圧力期間中)では拡大する方向(径方向外側)に動かす上気道の運動量が効率的に確立され、それにより、吸気中に肺を介して真空が付与されても、上気道は拡大状態を維持しやすい。これは、組織の反応が遅く、それにより、真空(肺によって発生した)が既に確立された上気道の径方向の拡大する運動量を全く解消することができず、その結果、刺激の初期部によって上気道の崩壊が抑制されるからである。
【0072】
特定の理論に束縛されることなく、刺激バースト(例えば
図8のバースト475)を用いることにより、血液内の酸素レベルおよび二酸化炭素レベルを許容範囲に維持しやすくなり、呼吸ドライブが穏やかになり、ピーク呼吸圧力が最小化されると推定される。同時に、これらの要因により、肺が大量の酸素をより得ようとして上気道に過剰な真空圧を作用させること(呼吸ドライブを介して)ができないために、上気道が崩壊するリスクが最小化される。
【0073】
一実施の形態において、
図8の刺激パターンは改良され、その改良パターンでは、吸気フェーズ451内の基準レベルの概ね連続する刺激470が省略され、吸気フェーズ451内の1つ以上の刺激バースト475がそのまま残される。その一方で、改良パターンの呼気フェーズ461においては基準レベルの刺激480が維持され、それにより、呼気フェーズ461の間、上気道の緊張と開存性とが効率的に維持される。
【0074】
図9は、本開示の一実施の形態にかかる、
図8の刺激パターンを改良したものに相当する刺激パターンを介して睡眠時の不規則な呼吸を治療する方法を概略的に示すダイアグラム500である。
図9に示すように、呼吸サイクル503は、吸気フェーズ501と呼気フェーズ511とを含んでいる。吸気フェーズ501は、初期部504と、中期部505と、末期部506とを含んでいる。一方、呼気フェーズ511は、初期部514と、中期部515と、ピーク517と、末期部516とを含んでいる。
図9のダイアグラム450にさらに示すように、概ね連続するパルス状の低振幅の緊張刺激530に加えて、短い継続時間の刺激バースト535が、呼気フェーズ511のみ(患者において呼気に主に流れ制限が生じている間)に付与される。特に、
図8に示すように、低振幅のパルス状に連続する刺激(バー520で示す)が吸気フェーズ501において付与され、低振幅の連続する刺激(バー530で示す)が呼気フェーズ511において付与される。付加的な刺激バースト535は呼気フェーズ511内であればどこで付与されてもよく、
図9に示す例においては、そのバーストは、呼気のピーク中に完全な開存性を確保するために、呼気フェーズ511の初期部514とピーク部517において付与される。他の態様において、この構成の場合、低レベルに概ね連続する刺激530とバースト535は、患者において上気道の流れ制限が最も著しいポイントに付与される。
【0075】
図10は、本開示の一実施の形態にかかる、
図8の刺激パターンを改良したものに相当する刺激パターンを介して睡眠時の不規則な呼吸を治療する方法を概略的に示すダイアグラム550である。
図10に示すように、呼吸サイクル503は、吸気フェーズ501と呼気フェーズ511とを含んでいる。吸気フェーズ501は、初期部504と、中期部505と、末期部506とを含んでいる。一方、呼気フェーズ511は、初期部514と、中期部515と、ピーク517と、末期部516とを含んでいる。
【0076】
図10にさらに示すように、
図8の刺激パターンは改良され、一つの付加的な刺激バースト560(低振幅の連続する刺激520に加えて)が吸気フェーズ501の後半部分において付与され、一つの付加的な刺激バースト535が呼気フェーズ511の初期部514とピーク部517とに付与されている(
図8のダイアグラム400と実質的に同じように)。この実施の形態において、刺激の2つのバースト560、535は、
図5の刺激パターンによく似ており、刺激パターン全体は、吸気フェーズ501および呼気フェーズ511の両方に通じる低レベルに概ね連続する刺激520、530を含んでいる。
【0077】
いくつかの実施の形態において、刺激バーストが開始される瞬間(所定の吸気位相または所定の呼気フェーズ内)は、過剰に刺激が付与されないように最適化される。例えば、患者において混合流れ制限が発生し、単一の長い刺激バーストが吸気フェーズと呼気フェーズの両方にオーバーラップしている(
図5に示すような)例において、吸気フェーズにおいて刺激を開始するための開始点が選択され、呼気フェーズにおいて刺激を終了するための終了点が選択されている自動滴定方法が適用される。
【0078】
図8〜10および13をさらに参照すると、当然ながら、刺激の振幅の調整が刺激の強度を変更する方法の一つである。他の実施の形態においては、刺激の強度は、パルス状の刺激の周波数、パルス幅、継続時間、極性を調整することによって変更される。例えば、振幅が増加された刺激バースト(
図8のバースト475または
図9のバースト535など)を付与することに代わって、刺激バーストは、パルス幅または周波数が増加されたもの、あるいは極性が変化されたものであってもよい。
【0079】
図11は、本開示の一実施の形態にかかる、不規則な呼吸を治療する方法を概略的に示すダイアグラム600を図示している。
図11に示すように、呼吸サイクル603は、吸気フェーズ601と呼気フェーズ611とを含んでいる。吸気フェーズ601は、初期部604と、中期部605と、末期部606とを含んでいる。一方、呼気フェーズ611は、初期部614と、中期部615と、ピーク617と、末期部616とを含んでいる。
図11のダイアグラム600に示すように、刺激630の最初の開始点は点Aで示され、刺激640の最初の終了点は点Fで示されている。少なくとも一例において、刺激線分630、640は分かれた要素として明確に図示されるが、当然ながら、実際には、線分630、640は単一の連続する刺激期間を表している。
【0080】
これらのパラメータを用いることにより、治療は、付与された刺激が有効であるか否かを観察するための時間を通じて行われる。呼吸サイクル内の刺激期間(線分630、640)が睡眠時の不規則な呼吸を改善するのに十分な場合、方法は、刺激期間(線分630、640)の合計継続時間を縮小し始める。したがって、刺激線分630の開始点が点Bに移行され、それに対応して刺激の期間(吸気フェーズ601内)が縮小され、そして、縮小された継続時間の刺激が有効であるか否かを観察しつつ、治療が複数の呼吸サイクルの期間において行われる。この調整プロセスは、吸気フェーズ601内の刺激線分630の継続時間が一段階ずつ(矢印Rの方向に)減少し、開始点(例えばA、B、C、D、Eなど)が吸気フェーズの刺激線分630が気道の開存性の維持および/または回復に対する刺激の有効性を失うほど短くなりすぎる点に固定されるまで、継続される。言い換えると、開始点は、刺激治療の有効性を失う点に固定されるまで、吸気フェーズの末期部に減少的に近づくように移動する。
【0081】
一例において、1デクリメント(1段階)ずつ開始点が調整されると、新しい継続時間が一連の連続する複数の呼吸サイクルの間維持され、それにより新しい設定を評価するための十分な時間が提供される。
【0082】
この情報を用いることにより、所望の効果が得られた点に最後の開始点を固定することができ、この点は、患者の呼吸サイクル610内の刺激線分630に対する最適な開始点として採用される。例えば、刺激線分630における開始点Dが気道の開存性の維持および回復に対する有効性がないと証明された場合、開始点Cが最後の有効な開始点であり、最適な刺激線分630が開始点Cを持つ。ひとたび最適な開始点が採用されると、所定の呼吸サイクル603内の各刺激線分630が開始点Cから始まる。
【0083】
一例において、各開始点(A、B、Cなど)の間のデクリメントまたはステップのサイズは、刺激期間358の第1の部分360の継続時間全体の1/10、1/5、または1/8などに相当する。
【0084】
他の例において、最初の開始点(例えば、A)は、
図5Bに示す概ね連続する刺激期間358の第1の部分360の一例の継続時間(3分の2、2分の1、または3分の1)に対応するように選択される。
【0085】
刺激期間(線分630および640)の最適な終了点が所定の呼吸サイクルにおいて決定されるように、呼気フェーズ611に対しても類似の方法が適用される。それにより、刺激線分640の最初の終了点(例えば、点F)が固定され、治療が行われる。有効性が得られるという条件で、方法は、刺激(呼気フェーズ611における)の縮小された期間に対応する早期の終了点(例えば、点G)が採用されるまで継続され、治療が複数の呼吸サイクルをカバーする時間の間行われる。刺激線分640の縮小を原因として有効性が失われていないかを判定するために、患者の反応が観察される。このプロセスは、呼気フェーズ611内の刺激線分640の継続時間が一段階ずつ(矢印Tの方向に)減少し、終了点(例えばF、G、H、I、J、Kなど)が呼気フェーズの刺激640が気道の開存性の維持および/または回復に対する刺激の有効性を失うほど短くなりすぎる点に固定されるまで、継続される。言い換えると、終了点は、刺激治療の有効性を失う点に固定されるまで、呼気フェーズの初期部に減少的に近づくように移動する。
【0086】
この情報を用いることにより、所望の効果が得られた点に最後の終了点を固定することができ、この点は、混合流れ制限(すなわち、吸気フェーズ601と呼気フェーズ611の両方にオーバーラップする流れ制限)を解消するための患者の刺激線分640に対する最適な終了点として採用される。
【0087】
一例において、1デクリメント(1段階)ずつ終了点が調整されると、新しい継続時間が一連の連続する複数の呼吸サイクルの間維持され、それにより新しい設定を評価するための十分な時間が提供される。
【0088】
一例において、各終了点(F、G、Hなど)の間のデクリメントまたはステップのサイズは、刺激期間358の第2の部分380の継続時間全体の1/10、1/5、または1/8などに相当する。
【0089】
他の例において、最初の開始点(例えば、F)は、
図5Bに示す概ね連続する刺激期間358の第2の部分380の一例の継続時間(3分の2、2分の1、または3分の1)に対応するように選択される。
【0090】
図11に示す刺激線分630、640の継続時間を最適化することに加えて、振幅、周波数、パルス幅、継続時間などを増加または減少(あるいは極性の変更)により刺激の継続時間を増加または減少させることが可能である場合、当然ながら、振幅、極性、周波数、パルス幅などの刺激の他のパラメータを最適化することが可能である。
【0091】
いくつかの実施の形態において、埋め込み可能な刺激装置は、気道の開存性を維持を試みる(すなわち予防)第1のモード、または喪失した気道の開存性を回復させる第2のモードで動作可能である。第1のモードにおいて、気道の開存性を維持するために必要な最小限の刺激を使用する刺激パターンが付与され、その刺激パターンとして、限定するわけではないが、
図1〜11に関連して既に説明された刺激パターンの一つが含まれていてもよい。しかしながら、無呼吸につながる状況を抑制するための第1のモードを試みたにもかかわらず無呼吸が起きた場合、埋め込み可能な刺激装置は、第2のモード(緊急モード)の動作に切り替え、刺激パターンの各刺激バーストの振幅、周波数、パルス幅、および継続時間をより活動的にする。継続時間、振幅、および周波数は、障害が起こる前の呼吸速度に基づいて選択される。一実施の形態において、第1のモードおよび第2のモードの間の切り替えの管理と、第2のモードにおける刺激パラメータの管理とが、2010年5月27日に公開されたタイトルが”A METHOD OF TREATING SLEEP APNEA”のPCT出願第WO/2010/059839号に開示されている実質的に同一のシステムや方法を用いることによって実行される。
【0092】
いくつかの実施の形態において、上気道の流れ制限は、障害の相対的な程度を決定するための呼吸センサおよび/または圧力センサを介して検出される。これらのセンサは、吸気中、または呼気中、あるいはその両方のいずれにおいて障害が生じているかを判定するために使用されてもよい。さらに、障害のタイプと障害の特定のタイプの特性を示す圧力/インピーダンスパターンとが対応するため、センシング情報を用いて有効な刺激パターンを決定することができる。
【0093】
いくつかの実施の形態において、刺激パターンは、特定の呼吸フェーズのパターンとよく似ている。
図12に示すように、呼吸サイクル653は、吸気フェーズ651と呼気フェーズ661とを含んでいる。吸気フェーズ651は、初期部654と、中期部655と、末期部656とを含んでいる。呼気フェーズ661は、初期部664と、中期部665と、ピーク667と、末期部676とを含んでいる。
図12のダイアグラム650にさらに示すように、吸気および呼気において最大量の気流が生じる期間に最大量の刺激が気道の開存性を確保するように、刺激パターン680、690が付与される。したがって、吸気フェーズ651において1つの刺激パターン680が付与され、吸気フェーズ651が経過するに従い、刺激の振幅が増加する。特に、刺激パターン680は、開始点681と、傾斜部683と、水平部684と、降下部685と、末期部682とを含んでいる。概括的に言えば、この傾斜刺激パターンにおいては、刺激が開始されると刺激振幅が増加し(上昇部683を介して)、吸気フェーズ651の後半のほとんどにわたって(水平部684を介して)高い刺激振幅が維持される。
図12に示す例では吸気フェーズ651が完了する前に水平部684が終了するが、当然ながら、水平部684は吸気フェーズ651が完了する最後まで延在してもよい。
【0094】
それとともに、いくつかの実施の形態において、
図12にさらに示すように、傾斜刺激パターン690が呼気フェーズ661に付与される。刺激パターン690は、開始点691と、水平部693と、傾斜部694と、末期部292とを含んでいる。概括的に言えば、この傾斜刺激パターンにおいては、高い刺激振幅の状態で刺激が開始され(水平部693を介して)、呼気フェーズ651の後半のほとんどにわたって振幅が減少する(傾斜部694を介して)。この刺激パターン690においては、大きな刺激が付与されて水平部693を介して呼気ピーク667で維持され、それにより、呼気フェーズ661の始まりにおいて気道の開存性が確保され、気道の崩壊が積極的に抑制される。ひとたび呼気が開始されると、刺激は傾斜部694を介して減少し、呼気からの大量の空気が気道の開存性の維持を手助けし、呼気フェーズ661の末期部676の前に刺激パターン690が終了する。
【0095】
図13は、本開示の一実施の形態にかかる、刺激パターン730、740を概略的に示すダイアグラム700を含んでいる。
図13に示すように、呼吸サイクル703は吸気フェーズ701と呼気フェーズ711とを含んでいる。吸気フェーズ701は、初期部704と、中期部705と、末期部706とを含んでいる。一方、呼気フェーズ711は、初期部716と、中期部715と、ピーク717と、末期部716とを含んでいる。
図13にさらに示すように、吸気フェーズ701における刺激パターン730は、吸気フェーズ701の前半の複数の刺激バースト734からなる第1の部分733と、吸気フェーズ701の後半にわたる略連続する刺激線分735とを含んでいる。一方、呼気フェーズ711における刺激パターン740は、呼気フェーズ711の前半にわたる第1の略連続する刺激線分743と、呼気フェーズ711の後半の複数の刺激バースト745からなる第2の部分744とを含んでいる。当然ながら、刺激線分735および743は、説明のために
図13では複数に分かれているが、いくつかの実施の形態においては、実質的に連続する単一の刺激線分で形成される。
【0096】
この実施の形態において、上気道の緊張を維持するために吸気フェーズ701の初期部においてはバースト734状の刺激が付与され、最大の気流が生じ且つ気道の崩壊のリスクが高い呼気の直前の吸気701の後半においては連続する刺激735が付与される。一方、呼気フェーズ711において、気道の崩壊のリスクが大きい(そして最大の気流が生じる必要がある)呼気フェーズの前半において連続する刺激743が付与され、緊張とわずかの上気道の開存性を維持するために呼気フェーズ711の後半において刺激バースト745が付与される。
【0097】
本明細書において具体的な実施の形態を説明してきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、説明された実施の形態を様々な代わりのおよび/または等価物に置き換え可能であることは当業者にとっては明らかである。この出願は、本明細書に記載された具体的な実施の形態の任意の改良物または変更物にも及んでいる。それゆえ、本開示はクレームおよびその均等物のみによって限定される。