特許第6092220号(P6092220)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092220
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/58 20060101AFI20170227BHJP
   A61F 2/30 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   A61B17/58
   A61F2/30
【請求項の数】20
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-529061(P2014-529061)
(86)(22)【出願日】2012年8月28日
(65)【公表番号】特表2014-530649(P2014-530649A)
(43)【公表日】2014年11月20日
(86)【国際出願番号】GB2012052110
(87)【国際公開番号】WO2013034889
(87)【国際公開日】20130314
【審査請求日】2015年7月30日
(31)【優先権主張番号】1115411.9
(32)【優先日】2011年9月7日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509229810
【氏名又は名称】デピュイ・(アイルランド)
【氏名又は名称原語表記】DEPUY (IRELAND)
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ロック・マイケル
【審査官】 吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第00809969(EP,A2)
【文献】 国際公開第2010/138850(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0043310(US,A1)
【文献】 米国特許第06719796(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0051798(US,A1)
【文献】 米国特許第06022377(US,A)
【文献】 特表平10−502278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/58
A61F 2/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膝関節形成処置で使用するための調整可能なスペーサ器具であって、
ほぼ平面な上面を有する第1部材と、
ほぼ平面な下面を有する第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に介在する、角度調整機構であって、前記上面と前記下面との間の傾斜度を調整するように操作可能であり、かつ前記傾斜度を維持することができる解放式ロックを含む、角度調整機構と、を備え
前記角度調整機構が、複数の突出機構と、前記突出機構を複数の異なる構成において係合するように位置付けられた異なる高さの複数領域と、を含み、前記複数の異なる構成がそれぞれ、前記上面と前記下面との間の異なる傾斜度に対応する、調整可能なスペーサ器具。
【請求項2】
前記角度調整機構は、前記傾斜度を連続的に調整するように操作可能である、請求項1に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項3】
前記角度調整機構は、前記傾斜度を個別に調整するように操作可能である、請求項1に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項4】
前記角度調整機構は、使用時に概ね前後方向に延びる軸線を中心として、前記上面及び/又は前記下面を傾斜させるように構成される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項5】
前記角度調整機構は、前記角度調整機構が操作されるときに相互作用する前記第1部材及び前記第2部材の全体的な一体化部品を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項6】
前記角度調整機構は、前記第1部材又は前記第2部材を互いに対して回転させることによって操作可能である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項7】
前記第1部材又は前記第2部材は、前記調整可能なスペーサ器具の面にほぼ垂直な軸線を中心として回転可能である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項8】
前記第1部材の後部及び/又は前記第2部材の後部が、使用時に後十字靱帯を受け取るように構成される窪みを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項9】
前記調整可能なスペーサ器具が、2つの部分のみからなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項10】
前記角度調整機構が、前記第1部材及び前記第2部材とは別の回転可能部分を含み、前記回転可能部分は、前記第1部材及び/又は前記第2部材の回転がなくとも、前記傾斜度を調整するように操作可能である、請求項1に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項11】
前記異なる高さの複数領域は、前記複数の突出機構がそれぞれ内部に係合する、窪みが形成されたトラックの形態である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項12】
前記窪みが形成されたトラックはそれぞれ、連続的なカム面を提供する基底部を含む、請求項11に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項13】
前記窪みが形成されたトラックはそれぞれ、複数の戻り止めの形態である、請求項11に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項14】
切断ブロックを直接的又は間接的に取り外し可能に取り付けることができる、取り付け構成を更に備える、請求項1〜13のいずれか一項に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項15】
前記調整可能なスペーサ器具は、前記上面及び前記下面が平行である初期状態と、前記上面及び前記下面が非平行である複数の傾斜状態と、を有し、前記調整可能なスペーサ器具は、前記角度調整機構を操作することによって、前記初期状態と前記複数の傾斜状態との間で駆動可能である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項16】
前記上面及び前記下面が平行なときに、前記調整可能なスペーサ器具の厚さは、10mm以下又は20mm以下である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の調整可能なスペーサ器具。
【請求項17】
請求項14に記載の調整可能なスペーサ器具と、
切断ブロックと、を備える、部品のキットであり、前記切断ブロックは、取り付け構成を備える搭載部を含み、該搭載部によって、前記切断ブロックは前記調整可能なスペーサ器具に取り外し可能に取り付けることができ、前記切断ブロックは切断ガイドを含み、該切断ガイドは、前記調整可能なスペーサ器具の上面又は下面に平行であるように、前記切断ブロックにおいて位置付けられる、部品のキット。
【請求項18】
前記搭載部は、前記切断ブロックに対して別個の部分であり、かつ取り付け機構を含み、該取り付け機構によって、前記搭載部が前記切断ブロックに取り外し可能に取り付け可能である、請求項17に記載の部品のキット。
【請求項19】
前記搭載部は、前記切断ブロックの一体部分である、請求項17に記載の部品のキット。
【請求項20】
前記搭載部は、前記切断ガイドと前記スペーサ器具との間の分離を変化させるように調整可能である、請求項17に記載の部品のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手術器具及びその使用方法に関し、具体的には膝関節に実施される関節形成術処置における手術器具及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な関節形成術が既知である。多くは、大腿骨の遠位部分の一部又は脛骨の近位部分のみが交換される、部分的な膝処置か、あるいは大腿骨の遠位部分及び脛骨の近位部分の両方が交換される総合的な膝処置を含む、整形外科移植の使用を伴う。
【0003】
膝関節形成術の外科的処置は多くの場合、腱及び靭帯などの膝関節の軟組織も含む。一例は、靭帯のバランス調整であり、ここでは多くの場合、膝関節が部分的又は全体的に交換されたときに、移植されたコンポーネントによって互いにかけられる力、又は残りの骨にかけられる力の平衡を保つために、靭帯そのものの個々のストランドを切断することによって、及び/又は骨から靭帯の取り付け点を解放することによって、膝関節の周囲の靭帯が調整される。膝関節のバランスは、膝関節のほとんどあらゆる動作範囲にわたって靭帯及び膝関節がどのように作用するかを見るために、屈曲及び伸長状態にある脚で調査される場合がある。
【0004】
靭帯のバランス調整は容易に得られるものではなく、結果は外科医の技術、判断及び経験による場合がある。また、靭帯の平衡は完全に再現可能ではなく、結果は患者のいずれかの関節の具体的な生体構造又は状態により変化する場合がある。
【0005】
したがって、このように成功する膝関節形成術の処置は、プロテーゼのバランス及びアライメントの組み合わせによって決まる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、膝関節形成手術処置時に靭帯のバランスの評価の信頼性を改善し、及び/又は脛骨若しくは大腿骨の切断又は再切断を改善する器具及び/又は外科手術方法を提供することが有用である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、膝関節形成処置で使用するための調整可能なスペーサ器具を提供し、この器具は、ほぼ平面な上面を有する第1部材と、ほぼ平面な下面を有する第2部材と、この第1部材と第2部材との間に介在する、角度調整機構であって、上面と下面との間の傾斜度を調整するように操作可能であり、角度調整機構と、を備える。
【0008】
このように、スペーサ器具は、大腿骨及び脛骨を互いに対して傾斜させるのに使用することができ、これによって外科医は関節の靭帯のバランスを評価し、膝関節形成処置にいずれかの調整又は修正を行うことが可能になる。
【0009】
角度調整機構は、複数の第1構成及び複数の第2構成を含むことができる。第1構成及び第2構成は異なる高さ又は深さを有してもよい。第1構成及び/又は第2構成は、第1構成又は第2の構成のうちの異なる構成が再配置されてもよく、第1部材及び第2部材に、それらの角度向きを変えさせるように相互作業できるようにする。
【0010】
角度調整機構は、第1部材及び/又は第2部材が、第1部材又は第2部材の面に平行な軸線を中心として枢動させるように構成され得る。この軸線は、使用時に器具の概ね前後方向に延びることができる。
【0011】
角度調整機構は実質的に、スペーサ器具の高さをその中心部において中央軸線に沿って維持するように構成されてもよい。このように、スペーサ器具の操作は実質的に、膝関節の傾斜度のみに作用し、手術時に骨の分離度又は関節の間隙の寸法には作用しない。
【0012】
好ましくは、角度調整機構は、傾斜度を維持することができる解放式ロックを含む。このように、器具によって傾斜度がいったん設定されると、それは維持され、これによって外科医は器具を解放し、他の作業を実施するのも自由である。解放式ロックは、角度調整機構の一体部分として提供されてもよい。解放式ロックは、角度調整機構に対する別の、すなわち別個の機構として提供されてもよく、これはアナログ式の又は連続的な調整機構であってもよい。
【0013】
2つの異なる方向に又は異なる感覚における傾斜度は調整することができる。傾斜度は、内側方向であってもよく、又は側面方向であってもよい。
【0014】
角度調整機構は、傾斜度を連続的に調整するように操作可能であってもよい。
【0015】
調整機構は、傾斜度を個別に調整するように操作可能であってもよい。複数の異なる規模の傾斜度が提供されてもよく、及び/又は2つの異なる感覚若しくは方向において提供されてもよい。
【0016】
調整機構は、使用時に概ね前後方向に延びる軸線を中心として、上面及び/又は下面を傾斜させるように構成されてもよい。
【0017】
調整機構は、第1部材及び第2部材の一体化部品を含んでもよく、この一体化部品は、調整機構が操作されるときに相互作用する。これは、第1部材及び/又は第2部材とは別個の部品から作製された調整機構を有するものと比較して、高さが減少した小型の機器を提供する。
【0018】
調整機構は、第1部材及び/又は第2部材の別個の部品として、又は非一体化部品として提供されてもよい。調整機構は、第1部品及び/又は第2部を回転させることなく、角度を調整するように操作可能であってもよく、又はそのように構成されてもよい。調整機構は、第1部材及び第2部材の両方に対して調整機構全体又は調整機構の一部を回転させることによって、角度を調整するように操作可能であってもよく、そのように構成されてもよい。このように第1部材及び第2部材は、それらが規定する角度が調整されるときに回転する必要はない。
【0019】
調整機構は、第1部材又は第2部材を回転させることによって操作可能であってもよい。第1部材は、第2部材に対して回転可能であってもよく、第2部材は第1部材に対して回転可能であってもよく、第1部材及び第2部材は互いに対して回転可能であってよい。
【0020】
第1部材及び/又は第2部材は、調整可能なスペーサ器具の面にほぼ垂直な軸線を中心として回転可能であってもよい。この面は上面又は下面に平行であってもよい。
【0021】
第1部材の後部及び/又は第2部材の後部は、使用時に後十字靱帯を受け取るように構成される窪みを含んでもよい。このように、後十字靱帯は使用時に器具に当たることはない。
【0022】
調整可能なスペーサ器具は2つの部品のみからなってもよい。これは改善された製造の簡素化及び機器の小型化(具体的にはその高さ及び厚さ)をもたらす。その部品又は各部品は成形されるか、又は機械加工されてもよい。その部品又は各部品は、プラスチック材料又は金属から作製されてもよい。器具は再利用可能であってもよく、又は使い捨てであってもよい。
【0023】
調整機構は、複数の突出機構と、突出機構を複数の異なる構成において係合するように位置付けられた、異なる高さ又は深さの複数領域と、を含んでもよく、構成はそれぞれ、上面と下面との間の異なる傾斜度に対応する。突出機構は、第1部材の下面上に配置されてもよく、異なる高さ若しくは深さの領域は、第2部材の上面上に配置されてもよく、逆もまた同様である。突出機構及び異なる高さ若しくは深さの領域は、ほぼ円形のパターンで配置されてもよく、又はほぼ円形の回転対称で配置されてもよい。好ましくは、少なくとも3つの突出機構、及び異なる高さ若しくは深さの少なくとも3つの関連付けられた若しくは相互作用する領域が提供される。3つの突出機構及び3つの相互作用する領域は、調整機構の好ましい形態において安定した表面を提供するための、最低要件である。
【0024】
異なる高さの複数領域は、窪みが形成されたトラックの形態であり、その内部において複数の突出機構がそれぞれ係合する。窪みが形成されたトラックは、内部で突出機構が強制的に移動するように拘束され得る経路を提供することができる。
【0025】
それぞれの窪みが形成されたトラックは基底部を含み得る。基底部は連続的なカム面を提供することができる。
【0026】
窪みが形成されたトラックはそれぞれ複数の戻り止めの形態であってもよい。各トラックの戻り止めはそれぞれ、規模又は方向が異なる傾斜度を提供するように配置される深さを有してもよい。
【0027】
調整可能なスペーサ器具は、切断ブロックが取り外し可能に取り付けら得る取り付け構成を更に含んでもよい。取り付け構成は、第1部材又は第2部材の一部であってもよい。取り付け構成は、切断ブロックに取り付けられた取り付け構成を受け取るための窪みであってもよい。
【0028】
調整可能なスペーサ器具は、上面及び下面が平行である初期状態と、上面及び下面が非平行である複数の傾斜状態と、を有することができる。調整可能なスペーサ器具は、角度調整機構を操作することによって初期状態と傾斜状態との間で駆動可能であってもよい。
【0029】
調整可能なスペーサ器具の厚さは、上面及び下面が平行であるときに、10mm以下であり、好ましくは8mm以下であり、最も好ましくは6mm以下であり得る。スペーサ器具の厚さは、約4mm〜8mmであってもよく、好ましくは約6mmであってもよい。これらの値は、脛骨又は大腿骨の切断が行われた後ではあるが、他の骨が作製される前に、関節の間隙において使用するのに、特に適している器具を提供する。
【0030】
調整可能なスペーサ器具の厚さは、上面及び下面が平行であるときに、19mm以下であり、好ましくは17mm以下であり、最も好ましくは15mm以下であり得る。スペーサ器具の厚さは、約13mm〜17mmであってもよく、好ましくは約15mmであってもよい。これらの値は、大腿骨及び脛骨の切断が行われた後に関節の間隙において使用するのに特に適している器具を提供する。
【0031】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の調整可能なスペーサ器具と、切断プロックと、を備える、部品のキットを提供する。切断ブロックは、取り付け構成を備える搭載部を含んでもよく、この搭載部によって切断ブロックは調整可能なスペーサ器具に取り外し可能に取り付けることができる。切断ブロックは切断ガイドを含んでもよく、この切断ガイドは、切断ブロックに、あるいは切断ガイドが調整可能なスペーサ器具の上面及び下面と平行であるように構成された切断ブロック及び/又は搭載部に位置付けられる。
【0032】
このように、部品のキットはスペーサ器具の上面又は下面を基準として脛骨又は大腿骨の切断若しくは再切断を行うために使用され得る。これは、大腿骨及び脛骨の平行に切除された表面が、膝関節がバランス調整された状態でより容易かつ確実に作られるか、あるいは膝関節のバランス調整するようにより容易かつ確実に作られるのを可能にする。
【0033】
搭載部は、切断ブロックとは別個の部分であってもよい。搭載部は、取り付け機構を含んでもよく、これによって搭載部が切断ブロックに取り外し可能に取り付け可能になり得る。このように、従来の切断ブロックが使用されてもよく、従来の切断ブロックがスペーサ器具に取り付けることができるように、搭載部は適合されてもよい。
【0034】
搭載部は、切断ブロックの一体部分であってもよい。
【0035】
切断ブロックは大腿骨切断ブロック又は脛骨切断ブロックであってもよい。大腿骨切断ブロックは、遠位の大腿骨の切断を行うためのものであってもよく、又は前方及び/若しくは後方の大腿骨の切断を行うためのものであってもよい。脛骨切断ブロックは近位の脛骨切断を行うためのものであってもよい。
【0036】
搭載部は、切断ガイドとスペーサ器具との間の分離を変化させることができる。このように、切除された大腿骨と切除された脛骨の間の間隙の寸法は調整することができる。間隙は、屈曲状態又は伸長状態にある間隙であり得る。
【0037】
本発明の更なる態様は、膝関節形成処置を実施する様々な方法を提供する。
【0038】
本方法は、脛骨の近位部分又は大腿骨の遠位部分を切除し、ほぼ平らな骨表面を作ることとを含む。上面及び下面を有する調整可能なスペーサ器具は、脛骨と大腿骨との間の間隙において、平らな骨表面上に配置することができる。調整可能なスペーサ器具は、上面と下面との間の傾斜度を変化させるように調整され得る。膝の靭帯のバランスを評価することができる。
【0039】
調整可能なスペーサは、傾斜度を維持するように固定されてもよい。
【0040】
外科医によって、あるいは圧力センサ又はテンションセンサ若しくは検出器など更に器具を使用することによって、評価が実施され得る。
【0041】
本方法は、切断ガイドを有する切断ブロックを、調整可能なスペーサ器具に取り付けることを更に含んでもよい。切断ブロックは、関節がバランス調整された後に取り付けられてもよい。切断ガイドは、調整可能なスペーサの上面又は下面に平行であってもよい。切断ガイドは、まだ切除していない脛骨の近位部分又は大腿骨の遠位部分のうちの少なくとも一部を切除するために使用されてもよい。このように、脛骨及び大腿骨はバランス調整された状態にある膝と平行に切断されてもよい。
【0042】
脛骨の近位部分及び大腿骨の遠位部分の両方は、ほぼ平らな骨表面を作るように切除されてもよい。本方法は、切断ガイドを有する切断ブロックを調整可能なスペーサ器具に取り付けることを含み、切断ガイドは、調整可能なスペーサの上面又は下面に平行である。切断ガイドを使用して、脛骨の近位部分又は大腿骨の遠位部分のうちの少なくとも1つを再切断することができる。このように、事前に行われた切断は、膝がバランス調整されるときに、より平行にするために補正することができる。
【0043】
本方法は、伸長状態又は屈曲状態の膝を用いて実施することができる。
【0044】
屈曲状態の膝を用いて、脛骨の近位部分が切除され、調整可能なスペーサ器具を操作することにより、脛骨に対して大腿骨を回転させることができる。
【0045】
本方法は、切断ガイドを有する切断ブロックを調整可能なスペーサ器具に取り付けることを含み、切断ガイドは、調整可能なスペーサの下面に平行である。切断ガイドを使用して、大腿骨の前方部分又は後方部分を切除することができる。このように、屈曲状態の間隙を画定する切断は、より確実に、バランス調整された状態の膝と平行を形成できる。
【0046】
次に、例示のみを目的として、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
図1】分解状態にある本発明の器具の一部の概略斜視図を示す。
図2】組立状態にある図1の器具の概略斜視図を示す。
図3図2の器具の概略正面図を示す。
図4】本発明に係る器具の更なる実施形態の概略正面図を示す。
図5】第1の傾斜構成を適合するための器具の使用を例示する、概略的な斜視図を示す。
図6図5に示すように、器具の概略正面図を示す。
図7】第2の傾斜構成を適合するための器具の使用を例示する、概略的な斜視図を示す。
図8図7に示すように、器具の概略正面図を示す。
図9】本発明の方法の第1の実施形態の際の、伸長状態の膝関節における使用時の、器具の概略正面図を示す。
図10】本発明の方法の第1の実施形態において更に使用される、器具の概略正面図を示す。
図11】器具を含む、本発明に係る部品のキットのアセンブリ及び図10に示すような膝関節の拡大図を示す。
図12】本発明の方法の第2の実施形態の際の、屈曲状態の膝関節における使用時の、器具の概略正面図を示す。
図13】器具を含む本発明に係る部品のキットのアセンブリであって、本発明の第2の実施形態で更に使用されるアセンブリの概略正面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
異なる図における同様の項目は、特に指定されない限り、共通の参照番号を有する。
【0049】
図1及び2を参照して、本発明に係るスペーサ器具100の第1の実施形態が示されている。スペーサ器具100は、手術時に膝関節を分離し、外科医が膝関節のバランスを評価するのに役立つ。スペーサ器具100は、手術時に大腿骨及び脛骨のアライメントを調整するよう操作可能な角度調整機構を含む。
【0050】
スペーサ器具100は、第1上部部材102及び第2下部部材104を含む。上部部材及び下部部材はそれぞれ、概ね板様の形態を有し、かつ脛骨の近位部のものと類似の形状を有する。上部プレート102及び下部プレート104はそれぞれ全体的に、スペーサ100の後方端部において、窪み部分又は切り取り部分106、108の両側に配置され、窪み部分又は切り取り部分106、108を画定する第1及び第2の耳たぶ部(lobe)を有する。窪み106、108は、使用時に後十字靱帯を受け取るように成形され、かつそのように構成され、これと衝突するのを防止する。上部プレート102はほぼ平らな平面の上面110及び下面112を有する。下部プレートは同様に、ほぼ平らな平面の下面114及び上面116を有する。
【0051】
上部プレート102は、その下面112から延在する、中央に位置付けられたボス120を有する。3つの半球体が先端に付いたペグ122、124、126も下面112から延び、中央のボス120を中心として概ね等辺の方式で配置される。ペグ122、124、126のそれぞれは、同じ高さを有し、これは下面112から同じ距離だけ延びる。ペグ122、124、126は、調整可能なスペーサの角度調整機構の部品を提供する。
【0052】
円形の開口部130は、下部プレート104の中央から配置されている。開口部130は内部にボス120を受け取るように寸法決めされている。第1、第2、及び窪みが形成されたトラック132、134、136は、中央開口部130と同心の円弧で配置される。各トラック132、134、136は、複数の窪みの形態で提供される。例示の実施形態では、11の別個の戻り止めが各トラックにある。
【0053】
トラックにおける各戻り止めは異なる深さを有しながら、異なるトラックにおける対応の戻り止めは同じ深さを有する。中央の戻り止め(例、戻り止め138)は、図2示すような上部分部材及び下部部材の上面110と下面114との間で、ゼロの傾斜度に対応する。中央戻り止めのいずれかの側の戻り止めの深さは徐々に増加し、様々な方向において様々な傾斜度をもたらす。中央の戻り止めのいずれかの側の戻り止めはそれぞれ、±1°、次の戻り止めは±3°、次の戻り止めは±5°、次の戻り止めは±7°、及び最後の戻り止め±9°をもたらす。
【0054】
組み立てられたときに、図2及び3に示すようにボス120は、開口部130に受け取られ、各ペグ122、124、126は、ものトラック132、134、136の対応する1つに受け取られる。図2に示すように、上方プレート及び下方プレートが位置合わせされた状態で、各ペグは各トラックの中央戻り止め内に配置される。各トラックの中央戻り止めが同じ深さを有するとき、ペグはそれぞれ同じ高さを有し、図2及び3に示すように、上部プレート102の上面110は、下部プレート104の下面114と平行である。この構成において、高さ、すなわち上面110から下面114までのスペーサの厚さは、約6mmである。図5〜8に示されているように、ボス120を中心として、上部プレート及び下部ブレーとを互いに対して回転させることによって、ペグ122、124、126は、3つの異なる戻り止めの異なるセットを占有し、この深さは、上面110と下面114との間に傾斜度を生じさせるように構成される。例えば、上部プレート102を、ボス120を中心として第1の方向において下部プレート104に対して回転させることによって、ペグ122、124、126は、トラック132、134、136周辺において移動し、高さにおいて戻り止めを占有し、図6に示すように5°の傾斜度140を生じさせる。別の方法としては、図7に示すように、上部プレート102を下部プレート104に対して反対方向に回転させることによって、上面110はまた底面114に対して5°の角度142だけ、ただし反対方向に傾斜させることができる。3つの戻り止めの各群は、既定の傾斜角度、及び既定の方向におけるプレートを画定するように較正される。上面を底面に対して回転させることによって、上面110と下面114との間の傾斜度を変化させるように、戻り止めの異なる群を用いて係合するように、ペグは再配置されてもよい。例示の実施形態では、戻り止めの深さは、0°、±1°、±3°、±5°、±7°及び±9°の傾斜角をもたらすように構成される。
【0055】
更に、戻り止め及び円形の頭部のペグの使用は、解放式固定機構を提供し、これによって、器具100の基底部は、上面110及び下面114の傾斜度を固定させることができる。戻り止めは、スペーサ器具が使用時に圧縮下にある際に、隣接する戻り止め内に容易に移動するのを妨ぐ。このように、上面及び下面の傾斜度を調整するように下部プレートに対して上部プレートを回転して、上部プレートにかけられる閾値の回転力が存在する。
【0056】
更に、個別の戻り止めは、調整機構が個別の非連続性の、傾斜度の調整を有するのを可能にする。
【0057】
更に、戻り止めは、スムーズな遷移を必要としないため、有用であり得るいかなる大きさの角度又は角度方向を、及び有用であり得る角度のいかなる順序もスペーサ器具において提供するように構成することができ得る。3つの戻り止めの各群は、完全に異なる角度に変化し得る。例えば、戻り留めは±1°、±2°、±3°、±6°、±9°及び±30°の角度をもたらすように構成することができる。
【0058】
代替の実施形態において、戻り止めは、トラフの平滑な底面によって置き換えることができ、これは連続的なカム面であり、一方で連続的な傾斜度の調整も提供する。しかしながら、かかる実施形態において、傾斜度を解放可能に固定するために、別個のロック機構が提供される必要がある。更に、カム面は角度において緩やかな変化を提供する必要があり、個別の戻り止めの使用のような、大きな傾斜角の変化に対応することができない場合がある。
【0059】
戻り止めによってもたらされる角度の組み合わせを勿論、変更して任意の特定の用途に必要とされる角度の規模及び範囲を提供することができる。
【0060】
調整機構の代替的実施形態において、調整機構の部分は、第1部材及び第2部材とは全く別個に提供されてもよい。その上面及び下面上の両方で戻り止め、又は両面上で突起部のいずれかを提供する、別個の回転可能な角度調整部分は、部材の上面及び下面上で協動する機構(すなわち、突起部又は窪み)間に挟まれる。このように、この回転可能な角度調整部分は、部材間の角度を調整するように回転させることができる一方で、部材自体は回転せず、単に傾斜するだけである。
【0061】
ボス120及び円形開口部130の直径は、上部プレート102が下部プレート104に対して枢動できるように、選択される。ボス120は、下部プレートの面に本質的に垂直な軸線を中心として、下部プレートに対して上部プレートが回転できるようにし、また、スペーサ器具の操作中に、ペグ122、124、126がそれらの対応するトラック132、134、136から脱離するのを防ぐのに役立つ。
【0062】
図4は、第1の実施形態に類似のスペーサ器具100の更なる実施形態を示す。更なる実施形態は、第1の窪み144及び第2の窪み146を基部の前方において含む。窪み144及び146は、切断ブロック用の搭載部を、スペーサ器具100に使用中に無理なく取り付けられることができる構成を提供する。
【0063】
更に、あるいは別の方法として、他の実施形態では、上面110又は下面114は、使用時の基部の全体的な厚さを増加させるように、下面114又は上面110にシムが取り付けられるようにするための構成を含んでもよい。好ましくは、この構成は、患者の膝において、大腿骨と脛骨との間の間隙の大きさ、又は患者の大腿骨と脛骨との間の望ましい分離量によって、スペーサ器具100の厚さが調整可能であるように、シムを取り外し可能に取り付けられるようにする。
【0064】
図1に示すように、スペーサ器具は非常に単純な構造を有し、2つの別個の部品又はピースのみからなる。サブ部品はなく、角度調整機構の部分は全体的に上部プレート及び下部プレートの一体化部品によって全体的に提供される。これは単純な器具かつ効率的な製造をもたらす。例えば、器具は補強された高分子、例えば繊維で補強されたナイロンで作製されてもよく、かかるプラスチック又は類似の材料から成形されてもよい。プラスチック材料から作製されたとき、器具は単一使用の使い捨て器具として提供されてもよい。器具はまた、再利用可能な器具として提供されたとき、外科手術等級のステンレス鋼など、機械加工された金属又は合金から作製されてもよい。
【0065】
更に、別個の部品ではなく、上方プレート及び下部プレートの一体化部品として角度調整機構の構成要素を提供することで、基部の全体的な厚さは低減され得る。典型的な膝の切断されてない大腿骨と再切断された脛骨都の間の間隙は約10mm(is of order 10mm)であり、よって使用中に器具を内部に挿入するにはごくわずかな空間しかなく、よって器具は小さい厚さである必要がある。同様に、切除された大腿骨と切断されていない脛骨との間の間隙は約10mmであり、よって小さい厚さの器具が、かかる外科的アプローチに必要とされる。
【0066】
スペーサ器具は手術中の使用が容易であり、汎用性がある。同じ器具は、膝のバランス異常を修正する再切除を可能にし、また、適用される外科手術処置によって、遠位の切断角度、大腿骨の回転、伸長時の間隙及び屈曲時の間隙の初期設定を可能にする。
【0067】
スペーサ器具100の構造及び操作を説明してきたが、使用され得る様々な外科的処置を以下に説明する。概して、スペーサ器具は2つの主要な使用モードを有する。第1の使用モードは、膝関節が屈曲又は伸長状態でのプレ最終切断である。第2の使用モードは、膝のバランスを最適化するための、屈曲又は伸長状態の膝の微細な調整を可能にするポスト最終切断である。器具は、代わりに骨切断を変更し、患者の現在の又は存在する靭帯を生かすことによって、靭帯解放技術を生かし、又は骨切断の必要性を排除するように設計されている。このように、器具は骨切断を変更することに基づく、外科用取り組みを可能にし、これは選択的に靭帯繊維を切断することより容易であると考えられる。
【0068】
患者の脚が伸長状態での、スペーサ器具の様々な使用方法がここで、図9〜11を参照して説明される。最初に、近位の脛骨切断及び遠位の大腿骨切断が行われ、大腿骨の遠位端及び脛骨の近位端上でほぼ平らな、切除された骨表面となる。これは約19mmの厚さの関節空間となる。スペーサ器具100は、初期の0°の傾斜構成で提供され(すなわち上面及び下面が平行状態である)、関節空間内に挿入される。図9は、患者の膝関節に隣接する患者の脚150の概略図を示す。図9はまた、上部プレートの上面及び関節プレートの下面がほぼ平行の状態で関節空間内に配置され、かつ切除された大腿骨152及び脛骨154の骨表面をそれぞれ接触させている、スペーサ器具100を示す。スペーサ器具100がその初期の平行な構成で、外科医は、その平行な構成にある器具を用いて、膝関節を囲む靭帯において張力を評価することができる。理想的には、膝がバランスの取れた状態において、脛骨及び大腿骨の切除面は、平行であり、かつ「矩形」空間を画定すべきであり、この矩形空間内部には、プロテーゼ構成要素が移植され得る。関節空間がスペーサ器具の厚さよりも大きいために、膝関節が伸長した状態でない場合、平行な構成においてその厚さを増加させるために、上記のとおりシムがスペーサ器具に追加される。いったん、いずれかのシムが追加されると、外科医は膝関節を包囲する靭帯において伸長を更に評価することができる。
【0069】
靭帯の評価の後に、これらの初期切断によって、膝は十分にバランス調整されていないと外科医が判断した場合、2つの行為のコースが利用可能である。
【0070】
膝がバランス調整されていると外科医が考えるまで、外科医は、靭帯の繊維を切断することによって、又は靭帯が骨に取り付けられている位置を切断することによって、膝靭帯を解放することができる。
【0071】
別の方法としては、図10に示すように、外科医は、スペーサ器具の上面及び下面の傾斜角を調整するように、スペーサ器具100を、下部プレートに対して上部プレートをねじることによって操作することができる。これは図10に示されており、ここでは大腿骨156が、概ね前後方向において枢動軸線を中心として概ね側面方向において傾斜している。外科医は、上部プレートを操作してそれを下部プレートに対して、下部プレートの面にほぼ垂直な回転軸を中心として回転させる。下面に対する上面の傾き、すなわち傾斜角は、靭帯がバランス調整されたと外科医が評価するまで調整することができる。上述のように、膝関節によってかけられる張力下で、ペグ及び戻り止めの作用は、スペーサ器具を、上面及び下面に対するその傾斜角において、無理なく固定するようにする。靭帯がここでバランス調整された状態で、膝関節がこの新しい構成にある状態で、大腿骨152の遠位の切除面はもはや、脛骨の切除された近位面154に平行ではない。このように、大腿骨の遠位部分は次に、脛骨154の切除面に平行になるように再切除される。
【0072】
図11に示されるように、切断ガイド162を含む遠位の切断ブロック160は、搭載部164によってスペーサ器具100に取り外し可能に取り付けられる。搭載部164は、下部プレート104の取り付け構成に取り外し可能に取り付けられる。切断ブロック160及び搭載部164は、切断ブロック160の切断ガイド162が、下部プレート104の下面に平行な面にあるように構成される。このように、切断ガイドは切除された脛骨表面154に平行に維持され、並びに、膝靭帯がバランス調整された状態で、更に切除された遠位の大腿骨の面が脛骨の切除面に平行であるように、大腿骨が再切除されるのを可能にする。
【0073】
大腿骨切断と脛骨切断との間の間隙が調整されるように、搭載部164は、切断ブロック160の高さが調整されるのを可能にする調整機構を含んでもよい。また、大腿骨上にされた切断の深さによって、間隙の測定値を表示するように、スケールが搭載部164上に提供されてもよい。
【0074】
スペーサ器具の使用方法の更なる実施形態では、また、膝の角度及び遠位切断の深さを設定するように、膝関節が伸長状態で、スペーサ器具100は遠位の大腿骨の切断がなされる前に使用されてもよい。最初に、近位の脛骨切断がなされ、次いでスペーサ器具は、大腿骨顆が上部プレート102の上面に係合している状態で、その平行な構成で関節空間内に導入される。関節を伸長状態におくために、任意のシムが必要に応じて追加されてもよい。外科医は次いで靭帯のバランスを評価し、より良い靭帯のバランスをもたらしながら膝関節の角度を決定するように、下面に対して上面を傾斜させるために、スペーサ器具100を操作する。次いで、膝関節角度設定を用いて、遠位の切断ブロック160は、図11に示すのと同様に、器具の脛骨プレート104と、遠位の大腿骨の切断がなされる前に、脛骨プレート104に対して、切断ブロック160の高さを調節することによって、遠位の切断セットの深さと、に取り付けられる。このように、靭帯が概ねバランス調整された状態で、切除された近位の脛骨表面及び遠位の大腿骨表面は概ね平行である必要がある。
【0075】
膝関節が伸長状態の、更に別の実施形態では、すぐ上で説明されたものに対して、同様ではあるが、遠位の大腿骨の切断のみが最初になされ、次いで、上部プレート102に取り付けられた搭載部を介して、脛骨切断ブロックを取り付けることによって、上部プレート102の上面に対して、近位の脛骨切断がなされる手法を使用することができる。このように再び、切除された脛骨表面及び大腿骨表面は、靭帯がバランス調整された状態で互いに概ね平行で提供することができる。
【0076】
本発明の実施形態に従って、膝関節が屈曲状態で、スペーサ器具100の使用方法もまたここで説明される。図12及び13を参照して、患者の膝関節170が屈曲状態であるのが示されている。膝関節は、大腿骨172の遠位部分及び脛骨174の近位部分を含む。膝靭帯の内側部分176、及び外側部分178が図12に示されている。
【0077】
最初に、斜線180によって示すように、近位の脛骨切断がなされ、脛骨の近位部分が取り除かれ、ほぼ平らに切除された近位脛骨表面182となる。下部プレート104の下面が、切除された脛骨表面182上にある状態で、スペーサ器具100は、関節の間隙内にその平行な構成で挿入される。上部プレート102の上面は、大腿骨顆184、186の後方部分に対して置かれる。
【0078】
スペーサ器具100は、下部プレートの下面に対して、上部プレートの上面を傾斜させるように、下部プレートに対して上部プレートを回転させることによって、外科医により操作される。靭帯176、178が均等に伸長するように、脛骨に対して大腿骨が直接回転されるまで、外科医はスペーサ器具を操作する。靭帯176、178の伸長の評価は外科医によって手動でなされてもよく、あるいは、脛骨上に器具100によってかけられた圧力のバランスを測定するように、圧力検出装置の使用によってなされてもよい。いったんスペーサ器具100の傾斜度が画定すると、スペーサ器具は、ペグ及び戻り止めの相互作用を通じて、その傾斜角に自動的にロックする。切断ブロック190は次いで、搭載部192によってスペーサ器具100に接続され、これは脛骨プレート104の取り付け機構194と取り外し可能に係合する。切断ブロック190は、大腿骨の前方切断をするための第1の切断ガイド196と、大腿骨の後方切断をするための第2の切断ガイド198を(前方及び後方の面取り切断をするための切断ガイドも)含む。搭載部192は、屈曲状態の間隙の大きさを設定するように、後方切断の高さを変化させるように、高さにおいて調整可能であってもよい。搭載部192は、様々な前方切断の高さによってもたらされる屈曲状態の間隙の測定値を提供するために、スケールを含んでもよい。切断ブロック190及び搭載部192は、第1の切断ガイド196及び第2の切断ガイド198がそれぞれ、下部プレート104の下面の面に概ね平行な面において位置するように構成される。このように、外科医は、斜線200によって示すように、第1の切断ガイドを使用しながら大腿骨の前方部分を取り除くための前方切断を行うことができ、また斜線202及び204によって示すように、大腿骨顆の後方部分を取り除くために、第2の切断ガイド198を使用しながら、後方切断も行ってもよい。このように、切断ブロックは、矩形の屈曲状態の間隙を生じさせるように、最初の脛骨切断に平行で、前方及び後方切断がなされるのを可能にする。
【0079】
このように、本器具及び方法は、所定のアライメントに対して靭帯のバランス調整をするというよりはむしろ、バランス調整された靭帯を得るように骨のアライメントを変更するこの一般概念を具体化する。外科用器具100は、測定手法、又はバランス手法を可能するために使用することができる。測定手法では、特定の角度において膝関節のバランスを確認するために、スペーサ器具の傾斜角を例えば3°に設定することができる。例えば、外科医は、彼らが3°の角度が適切であると考え、膝関節において3°を生じさせるスペーサ器具を使用し、次いでその角度の大腿骨若しくは脛骨の切断を行うと決定する場合がある。
【0080】
別の方法としては、バランス調整された技法において、靭帯が概ねバランス調整されている角度を決定するために、器具は現場で操作されてもよい。脛骨又は大腿骨に対する切断は、靭帯のバランスをもたらすために決定された角度に関してなされてもよい。
【0081】
このように、本発明の器具は、バランス異常を修正するために事前にされた切断を再切断することを可能にし、遠位切断角、大腿骨の回転、伸長状態の間隙、及び修正された間隙の初期設定を可能にする。このように多種多様の外科手術の技法が、本発明の角度調整可能なスペーサ器具を使用して可能である。
【0082】
下部プレートに対して上部プレートを回転させることによる器具の操作が説明されてきたが、実質的に固定されたままの上部プレートに下部プレートを回転させることによっても器具は操作することができるということが理解される。更に、又は別の方法としては、上部プレート及び下部プレートの両方は、器具を操作するために回転することができる。上部プレートの上面と下部プレートの下面との間の角度が調整されるのを可能にすることによって、器具が動作するこということが理解される。下部プレートに対して上部プレートが傾斜するかどうか、上部プレートが下部プレートに対して傾斜するかどうか、又はプレートが互いに対して傾斜するかどうかは重要ではない。
【0083】
発明の上記の説明から、多くの改変や変更が当業者にとって明らかであろう。
【0084】
〔実施の態様〕
(1) 膝関節形成処置で使用するための調整可能なスペーサ器具であって、 ほぼ平面な上面を有する第1部材と、 ほぼ平面な下面を有する第2部材と、 前記第1部材と前記第2部材との間に介在する、角度調整機構であって、前記上面と前記下面との間の傾斜度を調整するように操作可能であり、かつ前記傾斜度を維持することができる解放式ロックを含む、角度調整機構と、を備える、調整可能なスペーサ器具。
(2) 前記角度調整機構は、前記傾斜度を連続的に調整するように操作可能である、実施態様1に記載の調整可能なスペーサ器具。
(3) 前記調整機構は、前記傾斜度を個別に調整するように操作可能である、実施態様1に記載の調整可能なスペーサ器具。
(4) 前記調整機構は、使用時に概ね前後方向に延びる軸線を中心として、前記上面及び/又は前記下面を傾斜させるように構成される、実施態様1〜3のいずれかに記載の調整可能なスペーサ器具。
(5) 前記調整機構は、前記調整機構が操作されるときに相互作用する前記第1部材及び前記第2部材の全体的な一体化部品を含む、実施態様1〜4のいずれかに記載の調整可能なスペーサ器具。
【0085】
(6) 前記調整機構は、前記第1部材又は前記第2部材を互いに対して回転させることによって操作可能である、実施態様1〜5のいずれかに記載の調整可能なスペーサ器具。
(7) 前記第1部材又は前記第2部材は、前記調整可能なスペーサ器具の面にほぼ垂直な軸線を中心として回転可能である、実施態様1〜6のいずれかに記載の調整可能なスペーサ器具。
(8) 前記第1部材の後部及び/又は前記第2部材の後部が、使用時に後十字靱帯を受け取るように構成される窪みを含む、実施態様1〜7のいずれかに記載の調整可能なスペーサ器具。
(9) 前記調整可能なスペーサ器具が、2つの部分のみからなる、実施態様1〜8のいずれかに記載の調整可能なスペーサ器具。
(10) 前記調整機構が、前記第1部材及び前記第2部材とは別の回転可能部分を含み、前記回転可能部分は、前記第1部材及び/又は前記第2部材の回転がなくとも、前記傾斜度を調整するように操作可能である、実施態様1に記載の調整可能なスペーサ器具。
【0086】
(11) 前記調整機構が、複数の突出機構と、前記突出機構を複数の異なる構成において係合するように位置付けられた異なる高さの複数領域と、を含み、前記複数の異なる構成がそれぞれ、前記上面と前記下面との間の異なる傾斜度に対応する、実施態様1〜10のいずれかに記載の調整可能なスペーサ器具。
(12) 前記異なる高さの複数領域は、前記複数の突出機構がそれぞれ内部に係合する、窪みが形成されたトラックの形態である、実施態様11に記載の調整可能なスペーサ器具。
(13) 前記窪みが形成されたトラックはそれぞれ、連続的なカム面を提供する基底部を含む、実施態様12に記載の調整可能なスペーサ器具。
(14) 前記窪みが形成されたトラックはそれぞれ、複数の戻り止めの形態である、実施態様12に記載の調整可能なスペーサ器具。
(15) 切断ブロックを直接的又は間接的に取り外し可能に取り付けることができる、取り付け構成を更に備える、実施態様1〜14のいずれかに記載の調整可能なスペーサ器具。
【0087】
(16) 前記調整可能なスペーサ器具は、前記上面及び前記下面が平行である初期状態と、前記上面及び前記下面が非平行である複数の傾斜状態と、を有し、前記調整可能なスペーサ器具は、前記角度調整機構を操作することによって、前記初期状態と前記複数の傾斜状態との間で駆動可能である、実施態様1〜15のいずれかに記載の調整可能なスペーサ器具。
(17) 前記上面及び前記下面が平行なときに、前記調整可能なスペーサ器具の厚さは、10mm以下又は20mm以下である、実施態様1〜16のいずれかに記載の調整可能なスペーサ器具。
(18) 実施態様15に記載の調整可能なスペーサ器具と、 切断ブロックと、を備える、部品のキットであり、前記切断ブロックは、取り付け構成を備える搭載部を含み、該搭載部によって、前記切断ブロックは前記調整可能なスペーサ器具に取り外し可能に取り付けることができ、前記切断ブロックは切断ガイドを含み、該切断ガイドは、前記調整可能なスペーサ器具の上面又は下面に平行であるように、前記切断ブロックにおいて位置付けられる、部品のキット。
(19) 前記搭載部は、前記切断ブロックに対して別個の部分であり、かつ取り付け機構を含み、該取り付け機構によって、前記搭載部が前記切断ブロックに取り外し可能に取り付け可能である、実施態様18に記載の部品のキット。
(20) 前記搭載部は、前記切断ブロックの一体部分である、実施態様18に記載の部品のキット。
【0088】
(21) 前記搭載部は、前記切断ガイドと前記スペーサ器具との間の分離を変化させるように調整可能である、実施態様18に記載の部品のキット。
(22) 膝関節形成処置を実施する方法であって、 脛骨の近位部分又は大腿骨の遠位部分を切除し、ほぼ平らな骨表面を作ることと、 上面及び下面を有する調整可能なスペーサ器具を、前記脛骨と前記大腿骨との間の間隙における前記平らな骨表面上に配置することと、 前記調整可能なスペーサ器具を操作して、前記上面と前記下面との間の傾斜度を変化させることと、 前記膝の靭帯のバランスを評価することと、を含む、方法。
(23) 前記調整可能なスペーサ器具の前記上面又は前記下面に平行である切断ガイドを有する切断ブロックを、前記調整可能なスペーサ器具に取り付けることと、 前記切断ガイドを使用して、まだ切除していない前記脛骨の前記近位部分又は前記大腿骨の前記遠位部分の少なくとも一部を切除することと、を更に含む、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記脛骨の前記近位部分及び前記大腿骨の前記遠位部分の両方が、ほぼ平らな骨表面を作るように切除され、 前記調整可能なスペーサ器具の前記上面又は前記下面に平行である切断ガイドを有する切断ブロックを、前記調整可能なスペーサ器具に取り付けることと、 前記切断ガイドを使用して、前記脛骨のすでに切除した前記近位部分又は前記大腿骨の前記遠位部分を再切断することと、を更に含む、実施態様22に記載の方法。
(25) 前記膝が、伸長状態にある、実施態様22〜24のいずれかに記載の方法。
【0089】
(26) 前記膝が、屈曲状態にある、実施態様22に記載の方法。
(27) 前記脛骨の前記近位部分は切除されており、前記調整可能なスペーサ器具を操作することが、前記脛骨に対して前記大腿骨も回転させる、実施態様26に記載の方法。
(28) 前記調整可能なスペーサ器具の前記下面に平行である切断ガイドを有する切断ブロックを、前記調整可能なスペーサ器具に取り付けることと、 前記切断ガイドを使用して、前記大腿骨の前方部分及び/又は後方部分を切除することと、を更に含む、実施態様27に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13