特許第6092235号(P6092235)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6092235合成のフィラメントを溶融紡糸及び冷却する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092235
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】合成のフィラメントを溶融紡糸及び冷却する装置
(51)【国際特許分類】
   D01D 5/084 20060101AFI20170227BHJP
   D01D 5/092 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   D01D5/084
   D01D5/092 103
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-539332(P2014-539332)
(86)(22)【出願日】2012年11月1日
(65)【公表番号】特表2014-534357(P2014-534357A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】EP2012071646
(87)【国際公開番号】WO2013064588
(87)【国際公開日】20130510
【審査請求日】2015年7月30日
(31)【優先権主張番号】102011117458.7
(32)【優先日】2011年11月2日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マークス ライヒヴァイン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】ローラント ニチュケ
(72)【発明者】
【氏名】イェアク ヘーゲンバート
(72)【発明者】
【氏名】イェアク シペル
【審査官】 加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭55−075670(JP,U)
【文献】 特開昭50−064513(JP,A)
【文献】 特開昭50−64512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01D 5/084
D01D 5/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成のフィラメントを溶融紡糸及び冷却する装置であって、前記フィラメントを押し出すための少なくとも1つの紡糸ノズル(2)を下側面に有する加熱された紡糸ビーム(1)と、該紡糸ビーム(1)の下に配置された冷却装置(4)とを備えており、該冷却装置(4)はブローチャンバ(9)と、該ブローチャンバ(9)の内部に配置されていてガス透過性の壁を備えた多孔性シリンダ(17)とを有しており、該多孔性シリンダ(17)の上端部は、前記紡糸ノズル(2)の下に間隔をおいて前記フィラメントを受け入れるために配置されている、装置において、
前記多孔性シリンダ(17)の前記上端部に、別体の加熱手段(22,23)が接触しており、該加熱手段(22,23)によって前記多孔性シリンダ(17)の前記上端部が加熱可能であることを特徴とする、合成のフィラメントを溶融紡糸及び冷却する装置。
【請求項2】
前記加熱手段は、加熱スリーブ(22)によって形成されていて、該加熱スリーブ(22)は、前記多孔性シリンダ(17)の外壁(19)又は内壁(18)の周囲に配置されている、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記加熱手段は、熱伝導性の金属リング(23)によって形成されていて、該金属リング(23)は、前記多孔性シリンダ(17)の前記上端部に接触して保持されており、かつ自由な加熱端部(23.1)で、前記多孔性シリンダ(17)と前記紡糸ノズル()との間に形成された自由空間(21)内に進入している、請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記金属リング(23)の前記加熱端部(23.1)は前記自由空間(21)において、前記紡糸ビーム(1)の熱を通す部材に接触するように又は片持ち式に接触せずに保持されている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記金属リング(23)は保持端部に、円筒形の加熱カラー(23.3)を有していて、該加熱カラー(23.3)は前記多孔性シリンダ(17)内に進入している、請求項3又は4記載の装置。
【請求項6】
前記金属リング(23)は、多孔性シリンダ(17)の内壁(18)に対して前記円筒形の加熱カラー(23.3)との接触なしに、保持されている、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記金属リング(23)は、前記多孔性シリンダ(17)の前記上端部に交換可能に載設されている、請求項3から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
再加熱装置(30)が、前記紡糸ノズル(2)と前記多孔性シリンダ(17)の前記上端部との間に配置されていて、前記再加熱装置(30)によって、前記紡糸ノズル(2)と前記多孔性シリンダ(17)との間における温度調整された自由空間(21)が形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記金属リング(23)の前記加熱端部(23.1)は、温度調整された前記自由空間(21)内に進入している、請求項8記載の装置。
【請求項10】
前記紡糸ノズル(2)に蒸気供給装置(31)が対応して設けられており、該蒸気供給装置(31)によって蒸気が、前記紡糸ノズル(2)の下における前記自由空間内に導入可能である、請求項1から9までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前段部に記載の、合成のフィラメントを溶融紡糸及び冷却する装置に関する。
【0002】
合成糸を製造する場合、多数のフィラメントが紡糸ノズルによる押出し後に、後置された冷却ゾーンにおいて冷却され、これによって熱可塑性の材料が硬化され、ひいてはフィラメントをマルチフィラメント糸にまとめることができることが一般的に知られている。押し出されたばかりのフィラメントを冷却するために、冷却空気流が生ぜしめられて、フィラメントに導かれる。この際に、フィラメント束の内部における個々のフィラメントストランドを強力に冷却できるようにするために、冷却空気流を、多孔性シリンダを介してフィラメントに供給するシステムが、有用であることが判明している。このような装置は、例えば欧州特許出願公開第1505180号明細書に基づいて公知である。
【0003】
この公知の装置では、複数の紡糸ノズルを列型配置形式で保持している紡糸ビームの下に、ブローチャンバが配置されている。このブローチャンバは、紡糸ビームの下側に保持され、この場合各紡糸ノズルには、ブローチャンバの内部において多孔性シリンダが対応して設けられている。多孔性シリンダは、ガス多孔性のシリンダ壁を有しており、その結果ブローチャンバ内に吹き込まれた冷却空気は、多孔性シリンダを通して均一にすべての側から、紡糸ノズルから進出するフィラメントに向かって流れる。紡糸ビームと冷却装置との間には、断熱体が設けられており、その結果、フィラメントを押し出すために必要な紡糸ノズルの温度調整は、次いで行われるフィラメント冷却によって影響されずに行われる。
【0004】
例えばポリアミドのような特定のポリマの押出し時には、モノマ及びオリゴマのような極めて揮発性の物質が発生し、このような揮発性物質は、周囲においてコントロールされずに付着もしくは沈着することがある。このような付着もしくは沈着傾向は、多孔性シリンダの上端部において強くなることが確認されており、これによって、多孔性シリンダのシリンダ壁におけるブロー開口が接着及び閉鎖してしまう。その結果、フィラメントの冷却は不均一となる。
【0005】
このようなモノマを拘束もしくは凝集するために、従来技術では一般的に、水蒸気を紡糸ノズルの下に供給することが知られている。例えば独国特許出願公開第19920682号明細書に記載されているように、いわばベールのように覆うこのいわゆるノズル覆い作用(Duesenbeschleierung)にはしかしながら、水蒸気が特に多孔性シリンダの低温の壁において凝縮し、かつ水を形成するという欠点がある。
【0006】
ゆえに本発明の課題は、請求項1の前段部に記載した、合成のフィラメントを溶融紡糸及び冷却する装置を改良して、フィラメントの冷却のために使用される多孔性シリンダに、ポリマが紡糸時に不都合に沈着することを回避することである。
【0007】
この課題を解決するために本発明の構成では、多孔性シリンダの上端部に、加熱手段が対応して設けられており、該加熱手段によって多孔性シリンダの上端部が加熱可能であるようにした。
【0008】
本発明の別の好適な態様は、従属請求項に記載された構成及びこれらの構成の組合せによって確定されている。
【0009】
本発明は、モノマの沈着は主として温度差に関連しているという認識に基づいている。例えば、高温の部材にはまったく又は極めて僅かしか沈着物が形成されないということが観察されている。従って、多孔性シリンダの上端部を加熱することによって、沈着物の発生が増すことは回避される。
【0010】
加熱手段としては、基本的には、例えば加熱スリーブのようなアクティブな加熱手段が適しており、この加熱手段は、多孔性シリンダの外壁又は内壁の周囲に配置されている。
【0011】
しかしながら、既存の熱を利用するパッシブな加熱手段が特に有利である。このような加熱手段は、好ましくは、熱伝導性の金属リングによって形成されていて、該金属リングは、多孔性シリンダの上端部に接触して保持されており、かつ自由な加熱端部で、多孔性シリンダと紡糸ノズルとの間に形成された自由空間内に進入している。このように構成されていると、紡糸ノズル及び紡糸ビームから放出された熱を、多孔性シリンダの上端部を加熱するために好適に使用することができる。熱伝導性の金属リングはこの場合好ましくは熱伝導率が極めて高い金属から成っており、これによって、加熱端部を介して対流によって吸収される熱を、多孔性シリンダの上端部に直接供給することができる。
【0012】
金属リングの加熱端部は、周囲の特性及び形態に応じて選択的に、紡糸ビームの熱を通す部材に又は片持ち式に接触なしに自由空間内において保持されてよい。この場合に重要なことは、直接的な接触時に、熱放出が紡糸ノズルの温度調整から影響を受けずに行われるということである。
【0013】
少なくとも、多孔性シリンダの貫流されない端部を覆うことができるようにするために、金属リングは保持端部に、円筒形の加熱カラーを有していて、該加熱カラーは多孔性シリンダ内に進入している。この構成によってさらに、フィラメントがアクティブに冷却されずに案内されるゾーンを、紡糸ノズルの下に得ることができる。
【0014】
運転時において可能な限り、金属リングと多孔性シリンダとの間における材料応力を回避するために、金属リングは好ましくは、円筒形の加熱カラーとの接触なしに、多孔性シリンダの内壁に対して保持される。
【0015】
この場合金属リングが多孔性シリンダの上端部に追加的な固定なしに載設されていると、交換可能性をさらに改善することができる。
【0016】
糸の特定の物理的な特性に影響を与えることを目的として、フィラメントの冷却を遅延させるために、本発明の別の態様では、再加熱装置が、紡糸ノズルと多孔性シリンダの上端部との間に配置されていて、再加熱装置によって、紡糸ノズルと多孔性シリンダとの間における温度調整された自由空間が形成されている。この場合、温度調整された自由空間における熱エネルギを利用して、同時に金属リングを加熱することができ、好適である。金属リングの加熱端部は好ましくは、再加熱装置の温度調整された自由空間内に進入している。
【0017】
モノマ及びオリゴマを、可能な限り押出しの直後に拘束できるようにするために、本発明のさらに別の態様では、紡糸ノズルに蒸気供給装置が対応して設けられており、該蒸気供給装置によって蒸気が、紡糸ノズルの下における自由空間内に導入可能である。このように構成されていると、いわゆるノズル覆い作用が可能となり、この作用は、吸込み作用と好適に組み合わせることができる。
【0018】
次に図面を参照しながら、本発明に係る装置の幾つかの実施の形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る装置の1実施形態を示す横断面図である。
図2図1に示した本発明に係る装置の実施形態の縦断面図である。
図3】本発明に係る装置の別の実施形態を示す横断面図である。
図4】本発明に係る装置のさらに別の実施形態を示す横断面図である。
図5】本発明に係る装置のさらなる別の実施形態を示す横断面図である。
【0020】
図1及び図2には、本発明に係る装置の第1の実施形態が複数の見方で示されている。第1の実施形態は、図1においては糸走路の図示を省いて横断面図で示され、図2には糸走路と共に縦断面図で示されている。従って、特にいずれかの図面を選択していない場合には、以下における説明は、両方の図面に対するものである。
【0021】
本発明に係る装置の実施形態は、紡糸ビーム1を有しており、この紡糸ビーム1はその下側面12に複数の紡糸ノズル2を列型の配置形態で並んで保持している。紡糸ノズル2は、紡糸ビームの内部において複数の溶融物管路6を通して紡糸ポンプ3に接続されている。紡糸ポンプ3は、ポンプ駆動装置を介して駆動され、この場合紡糸ポンプ3はそれぞれの紡糸ノズル2に対して、別個の搬送手段を有している。紡糸ポンプ3は、溶融物供給路5を介して、図示されていない溶融物源に接続されている。紡糸ビーム1は加熱されるように形成されているので、紡糸ノズル2、溶融物管路6及び紡糸ポンプ3は加熱される。
【0022】
紡糸ビーム1には、下側面12に冷却装置4が対応して設けられている。この冷却装置4は図示の実施形態ではブローボックス8によって形成されており、このブローボックス8は、紡糸ビーム1の下側面12に接続されている。ブローボックス8は、互いに結合されているトップボックス8.1とボトムボックス8.2とによって形成されている。トップボックス8.1とボトムボックス8.2との間には、孔付プレート26が配置されていて、この孔付プレート26はトップボックス8.1とボトムボックス8.2とを互いに分離している。トップボックス8.1は上側のブローチャンバ9を閉鎖し、ボトムボックス8.2は下側のブローチャンバ10を閉鎖している。
【0023】
ブローボックス8はその上側面11において紡糸ノズル2の下に、貫通する糸開口20を有しており、これらの糸開口20は、上側のブローチャンバ9において挿入された多孔性シリンダ17によって、かつ下側のブローチャンバ10において挿入された管片25によって継続される。そのために、孔付プレート26は、多孔性シリンダ17及び管片25に対応する複数の開口を有している。多孔性シリンダ17は、すべて同一に形成されていて、ガス透過性のシリンダ壁を有しており、このシリンダ壁は、図示の実施形態では内壁18と外壁19とによって形成されている。例えば内壁18は多孔板によって、外壁19はワイヤメッシュ又は金属織布によって形成されてよい。これに対して管片25は、閉鎖された壁をもって形成されている。下側のブローチャンバ10は、その側面もしくは長手方向において給気通路24に接続されており、この給気通路24を通して冷却空気が下側のブローチャンバ10に導入される。給気通路24は給気部29に接続されている。管片25の領域にボトムボックス8.2は、複数の流出開口28を有しており、その結果フィラメントは冷却を目的としてブローボックス8を貫通することができる。ブローボックス8は、このブローボックス8に係合する2つのリフティングシリンダ27.1,27.2によって、高さ調節可能に形成されている。運転時にブローボックス8は、リフティングシリンダ27.1,27.2によって紡糸ビーム1の下側面12に押し付けられる。
【0024】
糸開口20をシールするために、紡糸ビーム1の下側面12とブローボックス8の上側面11との間には、シールシステム13が配置されている。このシールシステム13は、紡糸ビーム1の下側面12に堅く結合された押圧プレート14によって形成されている。押圧プレート14は複数の絶縁プレート16を介して紡糸ビーム1に保持されている。シールのために押圧プレート14は、ブローボックス8の上側面11に保持されるフォームシールエレメント15と共働する。
【0025】
特に図1から分かるように、シールシステム13は、紡糸ノズル2と多孔性シリンダ17の上端部との間に自由空間21が形成されるように、切り取られている。この場合多孔性シリンダ17の上端部は、内側から自由に接近可能であり、これによって金属リング23を収容することができる。金属リング23は、自由空間21内に進入する自由な加熱端部23.1を有している。金属リング23は、反対側に位置する保持端部23.2で、多孔性シリンダ17の内壁18の端部に接触している。保持端部23.2は、多孔性シリンダ17内に進入する加熱カラー23.3を有している。この場合金属リング23の加熱カラー23.3は、多孔性シリンダ17の内壁18の内径よりも幾分小さい外径を有している。これによって加熱カラー23.3と内壁18との間には僅かな遊びが形成されている。金属リング23は、熱伝導性の良好な金属から形成されている。多孔性シリンダ17内へのフィラメントの走入を促進するために、加熱端部23.1は、加熱カラー23.3に比べて大きな直径をもって形成されている。従って金属リング23は、ホッパ形状の内輪郭を備えて形成されている。
【0026】
図1及び図2から分かるように、ブローボックス8は、このブローボックス8に作用する2つのリフティングシリンダ27.1,27.2によって高さ調節可能に構成されている。運転時にブローボックス8は、リフティングシリンダ27.1,27.2によって紡糸ビーム1の下側面12に押し付けられ、これによってフォームシールエレメント15は押圧プレート14に押圧されて、分離面もしくは継ぎ目はシールされる。運転位置において金属リング23の加熱端部23.1は、加熱される紡糸ビーム1と加熱される紡糸ノズル2とによって画定される自由空間21内に進入している。これによって金属リング23は、100℃を越える温度に加熱され、熱エネルギを、保持端部23.2を介して直接、多孔性シリンダ17の内壁18に導入する。多孔性シリンダ17の上端部は、金属リング23によって直接加熱される。これにより多孔性シリンダ17の上端部における付着物の沈着を回避することができる。
【0027】
フィラメントを冷却するために冷却空気流が、給気通路24を介して下側のブローチャンバ10内に導入される。冷却空気は下側のブローチャンバ10から均一に孔付プレート26を介して上側のブローチャンバ9内に達する。上側のブローチャンバ9から冷却空気は、多孔性シリンダ17を介してフィラメントに供給される。参照符号7で示されたフィラメントは、下側のブローチャンバ10における管片25を貫通して、流出開口28を介してブローボックス8から退出する。
【0028】
長時間の運転時には、紡糸ノズル2の下側面における付着物も回避することができず、このような付着物に起因して、紡糸ノズル2の下側面は、一定時間毎にクリーニングされねばならない。そのためにブローボックス8は、リフティングシリンダ27.1,27.2によって下方の保守位置(ここには図示せず)に導かれる。ブローボックス8の保守位置において、金属リング23はそれぞれ糸開口20から取り外して交換することができる。
【0029】
図1及び図2に示した実施形態では、金属リング23は、紡糸ノズル2及び紡糸ビーム1から自由空間21に放出された熱エネルギを、対流によって加熱端部23.1において吸収し、この熱エネルギを、金属リング23の壁を介して保持端部23.2に導き、この保持端部23.2から熱エネルギは、接触によって多孔性シリンダ17の内壁18に伝達される。追加的に、多孔性シリンダ17の内部に突入する加熱カラー端部23.3を介して、多孔性シリンダ17の内壁18のさらなる加熱が、主として熱放射によって達成される。さらに金属リング23の内輪郭は、ブローボックス8の上側面11に形成された糸開口20のカバーを形成しており、この場合金属リング23の内輪郭のホッパ形状の構成は、多孔性シリンダ17内へのフィラメント及びガスの引込みを好適に促進する。
【0030】
加熱端部23.1を介して行われる金属リング23への熱伝達を改善するために、しかしながらまた、加熱端部23.1を、紡糸ビーム1の構成部材のうちの1つに接触させて保持することも可能である。そのために図3には別の実施形態が示されている。図3に示した実施形態は、図1及び図2に示した実施形態とほぼ同じであるので、ここでは相違点についてだけ言及し、その他の点については上記の記載を参照するものとする。
【0031】
図3に示した実施形態では、金属リング23はその保持端部23.2で、多孔性シリンダ17の上端部に接触して保持されている。金属リング23における加熱カラー23.3は、極めて短く形成されていて、多孔性シリンダ17の内壁18の内径部におけるセンタリングのためにしか役立たない。
【0032】
金属リング23の加熱端部23.1は、自由空間21内に進入している。この場合加熱端部23.1は周囲に、均一に分配配置された複数の加熱リブ23.4を有しており、これらの加熱リブ23.4は、紡糸ビーム1に固定されたプレート14,16に接触している。これによって、金属リング23の加熱端部23.1への熱伝達を改善する熱ブリッジ(Waermebruecke)、つまり熱伝達部が生ぜしめられる。
【0033】
しかしながら図3に示した実施形態において注意すべきことは、金属リング23において生じる熱膨張によって、自由空間21の内部において金属リング23の応力が生じることはない、ということである。ブローボックス8の高さ調節時に金属リング23の連行を保証するために、金属リング23は好ましくはブローボックス8の上側に固定されている。このことは図3には示されていない。
【0034】
モノマ及びオリゴマの配分が高い問題のある材料を紡糸するのに、図4に示した実施形態は特に適している。図4に横断面図で示した実施形態は、その構造及び機能に関して、図1及び図2に示した実施形態とほぼ同じであるので、以下においては相違点についてだけ述べ、その他の点については上の記載を参照するものとする。
【0035】
図4に示した実施形態では、ブローボックス8は上側のブローチャンバ9及び下側のブローチャンバ10の構成において、図1及び図2に示した実施形態と同じに構成されている。同様に、多孔性シリンダ17の上端部における金属リング23も、図1及び図2に示した実施形態と同じ構成を有し、その加熱端部23.1で自由空間21に進入している。この場合自由空間21は、再加熱装置30によって温度調整される。再加熱装置30はそのために、紡糸ビーム1の下側において紡糸ノズル2と多孔性シリンダ17との間に配置されている。再加熱装置30は、温度調整されるゾーンを紡糸ノズル2の直ぐ下に生ぜしめるために、加熱装置(ここには図示せず)を有している。再加熱装置30は、この実施形態では押圧プレート14で、紡糸ビーム1の下側面12に保持されており、この場合シールのためにブローボックス8は、フォームシールエレメント15で押圧プレート14に接触している。再加熱装置30は円筒形に形成されているので、隣接した紡糸ノズルは別の再加熱装置を有している。これらの再加熱装置は好ましくは一緒に温度調整される。
【0036】
紡糸ビーム1の内部には、蒸気供給装置31が形成されており、この蒸気供給装置31は、リング通路32と供給管路33とから形成されている。リング通路32は、単数又は複数のブロー開口34を有しており、これらのブロー開口34は、紡糸ノズル2の直ぐ下において開口している。運転時に、供給管路33を介して水蒸気が導入され、この水蒸気は、リング通路32及びブロー開口34を介して紡糸ノズル2の下において分配される。紡糸ノズル2の下側において流出する水蒸気は、フィラメントの押出し時に発生するガスを凝集させる。これによって、隣接した部材における不都合な付着物をさらに減じることができる。この場合蒸気供給装置31は、紡糸ノズル2に保持された各紡糸ノズル2に対して、別個のブロー開口34を有している。
【0037】
図1図4に示した上に挙げた実施形態では、多孔性シリンダ17の上端部を加熱するための別個の加熱手段は、パッシブな加熱手段として形成されており、この加熱手段では、紡糸ノズル2及び紡糸ビーム1の周囲において発生する熱エネルギが使用され、これによって多孔性シリンダ17の上側の走入領域を加熱することができる。しかしながらまた、基本的には、多孔性シリンダ17を加熱するアクティブな加熱手段を上端部において設けることも可能である。そのために図5には、別の実施形態が横断面図で略示されている。図5に示した実施形態は、冷却装置4の構造及び機能に関しては、既に述べた実施形態と同じであるので、ここでは繰り返しを回避するために相違点についてだけ述べる。
【0038】
図5に示した実施形態では、多孔性シリンダ17の上端部に、加熱スリーブ22が配置されており、この加熱スリーブ22は、外壁19の周囲を取り囲んでいる。加熱スリーブ22はこの場合、多孔性シリンダ17の上端部において短い領域にわたって延在しており、この領域において貫流は行われない。加熱スリーブ22は例えば抵抗加熱エレメントを介してアクティブに加熱され、これによって多孔性シリンダ17の上端部を加熱することができる。加熱スリーブ22はこの場合、再加熱装置30のエネルギ供給部と好適に接続することができる。
【0039】
従って図5に示した実施形態では、フィラメントと一緒にドラッグされる水蒸気が多孔性シリンダ17の上側領域において凝縮することを好適に回避することができる。この場合多孔性シリンダ17の温度調整時に、100℃を越える範囲における温度が好適に得られる。例えば、ポリアミドPA6の紡糸時に、再加熱装置30は約260℃の温度に調節される。
【0040】
図1図5に示した実施形態は、冷却装置の構造及び構成における例である。基本的にはまた、上側のブローチャンバ9に給気通路を直に対応して設け、これによって下側のブローチャンバから上側のブローチャンバへの冷却空気の分配が省かれるように、ブローチャンバを一体的に形成することも可能である。この場合に重要なことは、生ぜしめられる吸込み作用に基づいて、糸開口に進入するフィラメント及びガスが冷却装置への走入時に、加熱されたガイド面に直に衝突し、これによって付着物の発生を最小にできることである。この場合多孔性シリンダの走入領域を加熱するためには、パッシブな加熱手段又はアクティブな加熱手段のどちらも好ましい。
【符号の説明】
【0041】
1 紡糸ビーム
2 紡糸ノズル
3 紡糸ポンプ
4 冷却装置
5 溶融物供給路
6 溶融物管路
7 フィラメント
8 ブローボックス
8.1 トップボックス
8.2 ボトムボックス
9 上側のブローチャンバ
10 下側のブローチャンバ
11 ブローボックスの上側面
12 紡糸ビームの下側面
13 シールシステム
14 押圧プレート
15 フォームシールエレメント
16 絶縁プレート
17 多孔性シリンダ
18 内壁
19 外壁
20 糸開口
21 自由空間
22 加熱スリーブ
23 金属リング
23.1 加熱端部
23.2 保持端部
23.3 加熱カラー
23.4 加熱リブ
24 給気通路
25 管片
26 孔付プレート
27.1,27.2 リフティングシリンダ
28 流出開口
29 給気部
30 再加熱装置
31 蒸気供給装置
32 リング通路
33 供給管路
34 ブロー開口
図1
図2
図3
図4
図5