(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
圧力スイング吸着装置(10)は、2基の吸着塔(1a),(1b)と、これら吸着塔(1a),(1b)で吸着工程と脱着工程を交互に行うためにガスを給排気することができる配管系を備え、該配管系に送風手段(4)と排気手段(5)が設けられ、
圧力スイング吸着装置(20)は、2基の吸着塔(2a),(2b)と、これら吸着塔(2a),(2b)で吸着工程と脱着工程を交互に行うためにガスを給排気することができる配管系を備えることを特徴とする請求項3又は4に記載の酸素分離設備。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の圧力スイング吸着法では、ガス分離工程として、空気を導入して吸着材に酸素を吸着させる「吸着工程」と、吸着材から真空ポンプ等の排気手段を使って酸素を脱着させる「脱着工程」が最低限必要であるが、一般に吸着工程と脱着工程のみでは分離されるガスの酸素濃度を95vol%以上とすることは難しい。酸素濃度をさらに高めるには、吸着塔内の酸素濃度を高めるための「パージ」と呼ばれる工程が必要となり、このため設備の構造(配管や切り替えのための弁など)が複雑になるという問題がある。
【0008】
したがって本発明の目的は、PSA法を用いた吸着分離においてパージ工程を行うことなく、空気から酸素を効率的に分離し、高濃度の酸素を得ることができる酸素分離方法及び設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記のような従来技術の課題を解決すべく検討を重ねた結果、空気からの酸素の分離を二段階で行うこと、具体的には、一段目では酸素の吸着材が充填された吸着塔に空気を導入してPSAを行い、二段目では、一段目の吸着塔から脱着された酸素濃縮ガスを、窒素の吸着材が充填された吸着塔に導入してPSAを行うことより、PSAにおいてパージ工程を行うことなく、空気から酸素を効率的に分離し、高濃度の酸素ガスが得られることを見出した。
【0010】
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]圧力スイング吸着方式による吸着塔であって、酸素を主として吸着する吸着材が充填された吸着塔(1)に空気を導入し、ガス吸着を行う工程(A)と、
工程(A)で吸着塔(1)に吸着されたガス(g
1)を脱着する工程(B)と、
工程(B)で脱着されたガス(g
1)を、圧力スイング吸着方式による吸着塔であって、窒素を主として吸着する吸着材が充填された吸着塔(2)に導入し、ガス吸着を行う工程(C)と、
工程(C)で吸着塔(2)に吸着されることなく排気されたガス(g
2)を高酸素濃度ガスとして回収する工程(D)を有することを特徴とする酸素分離方法。
【0011】
[2]上記[1]の酸素分離方法において、工程(A)のために吸着塔(1)に導入される前の空気と、工程(A)で吸着塔(1)に吸着されることなく排気されたガス(g
3)を熱交換し、ガス(g
3)の顕熱で前記空気を昇温させることを特徴とする酸素分離方法。
[3]上記[1]又は[2]の酸素分離方法において、工程(C)で吸着塔(2)に吸着された後、脱着されたガス(g
4)を、工程(A)のために吸着塔(1)に導入される前の空気に混合することを特徴とする酸素分離方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの酸素分離方法において、2基の吸着塔(1)で工程(A)と工程(B)を交互に行う酸素分離方法であって、一方の吸着塔(1)の工程(B)で脱着されたガス(g
1)と、工程(A)のために他方の吸着塔(1)に導入される前の空気を熱交換し、ガス(g
1)の顕熱で前記空気を昇温させることを特徴とする酸素分離方法。
【0012】
[5]酸素を主として吸着する吸着材が充填された吸着塔(1)を備えた圧力スイング吸着装置(10)と、
吸着塔(1)に空気を供給する送風手段(4)と、
吸着塔(1)に吸着されたガス(g
1)を脱着時に排気する排気手段(5)と、
窒素を主として吸着する吸着材が充填され、排気手段(5)により吸着塔(1)から排気されたガス(g
1)が供給される吸着塔(2)を備えた圧力スイング吸着装置(20)を備え、
吸着塔(2)に吸着されることなく排気されたガス(g
2)が高酸素濃度ガスとして回収されるようにしたことを特徴とする酸素分離設備。
【0013】
[6]上記[5]の酸素分離設備において、さらに、吸着塔(1)に導入される前の空気と、吸着塔(1)に吸着されることなく排気されたガス(g
3)を熱交換する熱交換器(24)を備えることを特徴とする酸素分離設備。
[7]上記[5]又は[6]の酸素分離設備において、吸着塔(2)に吸着された後、脱着されたガス(g
4)の排気管(17)を、送風手段(4)が設けられた空気供給管(8)であって、送風手段(4)の上流側の管部位置に接続したことを特徴とする酸素分離設備。
[8]上記[5]〜[7]のいずれかの酸素設備において、吸着工程と脱着工程を交互に行う2基の吸着塔(1)を備えた酸素分離設備であって、さらに、一方の吸着塔(1)から脱着されたガス(g
1)と、他方の吸着塔(1)に導入される前の空気を熱交換する熱交換器(25)を備えることを特徴とする酸素分離設備。
【0014】
[9]上記[8]の酸素設備において、圧力スイング吸着装置(10)は、2基の吸着塔(1a),(1b)と、これら吸着塔(1a),(1b)で吸着工程と脱着工程を交互に行うためにガスを給排気することができる配管系を備え、該配管系に送風手段(4)と排気手段(5)が設けられ、
圧力スイング吸着装置(20)は、2基の吸着塔(2a),(2b)と、これら吸着塔(2a),(2b)で吸着工程と脱着工程を交互に行うためにガスを給排気することができる配管系を備えることを特徴とする酸素分離設備。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、空気からの酸素の分離を二段階で行い、一段目では酸素を主として吸着する吸着材が充填された吸着塔に空気を導入してPSAを行い、二段目では、一段目の吸着塔から脱着された酸素濃縮ガスを、窒素を主として吸着する吸着材が充填された吸着塔に導入してPSAを行うことより、PSAおいてパージ工程を行うことなく、空気から酸素を効率的に分離し、高濃度の酸素ガスを得ることができる。
また、PSAにより酸素を吸着する一段目の吸着塔に導入する前の空気を、当該吸着塔から排気された高温の脱着ガスや非吸着ガスとの熱交換で昇温させる方法の場合には、PSAにより酸素を吸着する吸着塔から排気されるガスによる熱ロスを小さくすることができる。
さらに、二段目の吸着塔から脱着されたガスを原料の空気に混合し、原料の一部として用いる方法の場合には、酸素の回収率をより高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の酸素分離方法は、空気から酸素を分離するための方法であり、圧力スイング吸着方式による吸着塔であって、酸素を主として吸着する吸着材が充填された吸着塔1に空気を導入し、ガス吸着を行う工程Aと、この工程Aで吸着塔1に吸着されたガスg
1を脱着する工程Bと、この工程Bで脱着されたガスg
1を、圧力スイング吸着方式による吸着塔であって、窒素を主として吸着する吸着材が充填された吸着塔2に導入し、ガス吸着を行う工程Cと、この工程Cで吸着塔2に吸着されることなく排気されたガスg
2を高酸素濃度ガスとして回収する工程Dを有する。この酸素分離方法は、一段目の工程Aと二段目の工程Cでガス分離を行うことにより高酸素濃度ガスを得るものであり、このため、工程A(吸着工程)と工程B(脱着工程)間でパージ工程は行わない。
【0018】
また、この酸素分離方法の実施に供する酸素分離設備は、酸素を主として吸着する吸着材が充填された吸着塔1を備えた圧力スイング吸着装置10と、吸着塔1に空気を供給する送風手段4と、吸着塔1に吸着されたガスg
1を脱着時に排気する排気手段5と、窒素を主として吸着する吸着材が充填され、排気手段5により吸着塔1から排気されたガスg
1が供給される吸着塔2を備えた圧力スイング吸着装置20を備え、吸着塔2に吸着されることなく排気されたガスg
2が高酸素濃度ガスとして回収されるようにしたものである。この酸素分離設備のガス分離手段は、一段目の圧力スイング吸着装置10と二段目の圧力スイング吸着装置20からなるが、上記のように吸着工程と脱着工程間でパージ工程は行わないため、この酸素分離設備は、パージ工程を行うための設備構成は備えない。
【0019】
図1は、本発明の酸素分離設備の一実施形態を示すものである。
本実施形態では、圧力スイング吸着装置10(以下、「PSA装置10」という)が2基の吸着塔1a,1bを備え、また、圧力スイング吸着装置20(以下、「PSA装置20」という)も2基の吸着塔2a,2bを備えている。
PSA装置10が備える2基の吸着塔1a,1bは、それぞれ吸着塔を500〜600℃程度まで加熱するための加熱手段7を備えている。この加熱手段7は、吸着塔を外囲するように設置される電熱ヒーター等で構成される。
【0020】
吸着塔1a,1bに充填される酸素を主として吸着する吸着材とは、空気を通したときに酸素の吸着容量が窒素の吸着容量に較べて大きい吸着材である。この吸着材は、酸素を主として吸着できるものであれば、その種類に特別な制限はないが、吸着性能の面からはペロブスカイト型吸着材が望ましい。先に述べたように、ペロブスカイトの構造の一般的な表現はABO
xである。このAおよびBの元素に限定はないが、特に本発明のように酸素の分離に使用するものは、Aは第2族、第3族およびランタノイドに属する元素(Sr、Ba、Y、Laなど)であり、Bは第7族から第9族に属する元素(Mn、Fe、Coなど)であり、それぞれ、それらの中から選ばれる1種類の元素であっても、複数種類の元素であってもよい。ペロブスカイトは、温度あるいは酸素分圧の変化により結晶構造が変化し、構造中のOの数(x)が変わることで酸素を吸収、放出する。ペロブスカイト型吸着材としては、例えば、SrFeO
x、BaFeO
x、SrNiO
x、SrCoO
xや、特開2005−87941号公報、特開2008−12439号公報に示されるものなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
また、吸着塔2a,2bに充填される窒素を主として吸着する吸着材とは、空気を通したときに窒素の吸着容量が酸素の吸着容量に較べて大きい吸着材である。この吸着材は、窒素を主として吸着できるものであれば、その種類に特別な制限はないが、吸着性能の面からは、リチウムを置換又は担持したゼオライト(Li置換又は担持ゼオライト)が特に好ましい。
【0022】
送風手段4はブロア等で構成され、吸着塔1a,1bに酸素を供給する酸素供給管8に設けられている。この酸素供給管8の下流側は、吸着塔1a,1bに対応して2本の分岐供給管80a,80bに分岐している。また、排気手段5は真空ポンプ等で構成され、吸着塔1a,1bの吸着ガスを排気するガス排気管9に設けられている。このガス排気管9の上流側は、吸着塔1a,1bに対応して2本の分岐排気管90a,90bに分岐している。
そして、分岐供給管80aと分岐排気管90aが合流してガス給排管11aとなり、このガス給排管11aが吸着塔1aの一端(下部側)に接続されている。また、分岐供給管80bと分岐排気管90bが合流してガス給排管11bとなり、このガス給排管11bが吸着塔1bの一端(下部側)に接続されている。
【0023】
吸着塔1a,1bを通過した非吸着ガス(オフガス)を排出するためのガス排気管12は、その上流側が吸着塔1a,1bに対応して2本の分岐排気管120a,120bに分岐し、これら分岐排気管120a,120bが、吸着塔1a,1bの他端(上部側)に接続されている。
分岐供給管80a,80b、分岐排気管90a,90b、分岐排出管120a,120bには、それぞれ開閉弁13a,13b,14a,14b,15a,15b(自動開閉弁)が設けられ、吸脱着の各工程に応じて開閉されるようになっている。また、ガス排気管12には背圧弁16が設けられ、吸着塔内を所定圧力に維持しつつ非吸着ガスを排出できるようにしている。
【0024】
ガス排気管9の下流側は、吸着塔2a,2bへのガス供給管を構成しており、吸着塔2a,2bに対応して2本の分岐供給管91a,91bに分岐している。一方、吸着塔2a,2bの吸着ガスを排気するガス排気管17には、真空ポンプ等の排気手段6が設けられている。このガス排気管17の上流側は、吸着塔2a,2bに対応して2本の分岐排気管170a,170bに分岐している。そして、分岐供給管91aと分岐排気管170aが合流してガス給排管18aとなり、このガス給排管18aが吸着塔2aの一端(下部側)に接続されている。また、分岐供給管91bと分岐排気管170bが合流してガス給排管18bとなり、このガス給排管18bが吸着塔2bの一端(下部側)に接続されている。
【0025】
吸着塔2a,2bを通過した非吸着ガス(オフガス)を排出するためのガス排気管19は、その上流側が吸着塔2a,2bに対応して2本の分岐排気管190a,190bに分岐し、これら分岐排気管190a,190bが、吸着塔2a,2bの他端(上部側)に接続されている。
分岐供給管91a,91b、分岐排気管170a,170b、分岐排出管190a,190bには、それぞれ開閉弁21a,21b,22a,22b,23a,23b(自動開閉弁)が設けられ、吸脱着の各工程に応じて開閉されるようになっている。
本発明の酸素分離設備の操業では、後述するように、各吸着塔1a,1bにおいて、吸着工程と脱着工程間でパージ工程は行わないため、パージ工程を行うための設備構成は備えない。
【0026】
以下、
図1の酸素分離設備を用いた本発明の酸素分離方法の一実施形態について、
図2及び
図3に基づいて説明する。
図2は、吸着塔1aと吸着塔2aが吸着工程、吸着塔1bと吸着塔2bが脱着工程にあるときの開閉弁の開閉状態及びガス流れを示す説明図、
図3は、吸着塔1aと吸着塔2aが脱着工程、吸着塔1bと吸着塔2bが吸着工程にあるときの開閉弁の開閉状態及びガス流れを示す説明図である。
図2及び
図3において、太線がガスの流れている流路を示し、開閉弁のなかで黒塗りが閉状態のもの、白抜きが開状態のものである。
なお、吸着塔1a,1bは、必要に応じて、加熱手段7により吸着材の酸素吸着・脱着に必要な温度まで加熱される。
【0027】
図2において、原料である空気g
0は、送風手段4によって空気供給管8、分岐供給管80a、ガス給排気管11aを通じて吸着塔1aに導入され、塔内に充填された吸着材(酸素を主として吸着する吸着材)に酸素が主として吸着される(工程A)。吸着塔1a内で酸素濃度が低下したガスは、非吸着ガスとして塔上部から排気され、分岐排出管120a、ガス排出管12を通じて背圧弁16を介して排気(ガスg
3)される。一方、上記のように吸着塔1aでガス吸着が行われる工程Aの間、前回行われた工程Aで吸着塔1b内の吸着材に吸着されているガスg
1(酸素濃度が高いガス)が、排気手段5によって吸着塔1bから脱着され(工程B)、ガス給排管11b、分岐排気管90b、ガス排気管9を通じて排気される。以上が一段目のPSAによるガス分離工程であり、このPSAでは吸着工程と脱着工程間でのパージ工程は行われない。
【0028】
吸着塔1bから脱着され、ガス排気管9を通じて排気された上記ガスg
1は、二段目のPSAによるガス分離工程に送られる。すなわち、ガスg
1は、ガス排気管9に連なる分岐供給管91a、ガス給排管18aを通じて吸着塔2aに導入され、塔内に充填された吸着材(窒素を主として吸着する吸着材)に窒素が主として吸着される(工程C)。吸着塔2aに吸着されることなく排気されたガスg
2(非吸着ガス)は、窒素分が吸着塔2aで吸着除去されて酸素濃度がさらに高くなっており、分岐排気管190a、ガス排気管19を通じて排気され、製品ガスである高酸素濃度ガスとして回収される(工程D)。一方、上記のように吸着塔2aでガス吸着が行われる工程Cの間、前回行われた工程Cで窒素が主として吸着された吸着塔2bから排気手段6により窒素が多いガスが脱着され、排気される(ガスg
4)。
【0029】
この酸素分離方法では、一段目PSAの吸着工程と脱着工程間でのパージ工程が行われないが、二段目PSAにおいて、一段目PSAで脱着されたガスg
1(酸素濃縮ガス)の窒素分が吸着除去されるので、二段目PSAで吸着されることなく排気されたガスg
2(非吸着ガス)は酸素濃度がさらに高められ、これを高酸素濃度ガスとして回収することができる。
【0030】
図2の状態で吸着塔1a,1bと吸着塔2a,2bによる上記工程が完了した時点で、開閉弁の開閉状態を
図3に示すように変更して吸着塔1a,1bと吸着塔2a,2bの切り替えを行い、以下のようなガス分離を行う。
図3において、原料である空気g
0は、送風手段4によって空気供給管8、分岐供給管80b、ガス給排気管11bを通じて吸着塔1bに導入され、塔内に充填された吸着材(酸素を主として吸着する吸着材)に酸素が主として吸着される(工程A)。吸着塔1b内で酸素濃度が低下したガスは、非吸着ガスとして塔上部から排気され、分岐排出管120b、ガス排出管12を通じて背圧弁16を介して排気(ガスg
3)される。一方、上記のように吸着塔1bでガス吸着が行われる工程Aの間、前回行われた工程Aで吸着塔1a内の吸着材に吸着されているガスg
1(酸素濃度が高いガス)が、排気手段5によって吸着塔1aから脱着され(工程B)、ガス給排管11a、分岐排気管90a、ガス排気管9を通じて排気される。以上が一段目のPSAによるガス分離工程であり、この一段目PSAでは吸着工程と脱着工程間でのパージ工程は行われない。
【0031】
吸着塔1aから脱着され、ガス排気管9を通じて排気された上記ガスg
1は、二段目のPSAによるガス分離工程に送られる。すなわち、ガスg
1は、ガス排気管9に連なる分岐供給管91b、ガス給排管18bを通じて吸着塔2bに導入され、塔内に充填された吸着材(窒素を主として吸着する吸着材)に窒素が主として吸着される(工程C)。吸着塔2bに吸着されることなく排気されたガスg
2(非吸着ガス)は、窒素分が吸着塔2bで吸着除去されて酸素濃度がさらに高くなっており、分岐排気管190b、ガス排気管19を通じて排気され、製品ガスである高酸素濃度ガスとして回収される(工程D)。一方、上記のように吸着塔2bでガス吸着が行われる工程Cの間、前回行われた工程Cで窒素が主として吸着された吸着塔2aから排気手段6により窒素が多いガスが脱着され、排気される(ガスg
4)。
以上の
図2、
図3の工程を繰り返し行うことで、原料である空気g
0から高酸素濃度ガス(ガスg
2)を連続的に得ることができる。
【0032】
本発明は、一段目のPSA装置(吸着塔1)で空気から酸素を吸着し、この一段目のPSA装置(吸着塔1)から脱着されたガスを二段目のPSA装置(吸着塔2)に導入して窒素を吸着し、このPSA装置(吸着塔2)の非吸着ガス(オフガス)を高酸素濃度ガスとして回収するものであるが、上述した実施形態のように、直列に接続された2段のPSA装置(吸着塔1,2)でガスの吸着・脱着を行うだけでは、得られる酸素回収率には一定の限界がある。
また、さきに述べたように、吸着塔1に充填される吸着材(酸素を主として吸着する吸着材)としては、吸着性能の面からペロブスカイト型吸着材が好ましいが、この吸着材は500〜600℃といった高温状態で使用される(酸素の吸着・脱着)ものであり、このため吸着材の熱が吸着塔1から排出されるガスに着熱して熱ロスとなる問題がある。
【0033】
本発明の酸素分離方法は、上記のような課題を解決するために、以下のような好ましい形態を採ることができる。
(i) 工程Aのために吸着塔1に導入される前の空気と、工程Aで吸着塔1に吸着されることなく排気されたガスg
3を熱交換し、ガスg
3の顕熱で前記空気を昇温させる。
(ii) 工程Cで吸着塔2に吸着された後、脱着されたガスg
4を、工程Aのために吸着塔1に導入される前の空気に混合する。
(iii) 2基の吸着塔1で工程Aと工程Bを交互に行う酸素分離方法であって、一方の吸着塔1の工程Bで脱着されたガスg
1と、工程Aのために他方の吸着塔1に導入される前の空気を熱交換し、ガスg
1の顕熱で前記空気を昇温させる。
【0034】
上記(i)、(iii)により吸着塔1から排出されるガスへの着熱による熱ロスを少なくすることができるが、特に上記(i)と(iii)を組み合わせ、吸着塔1に導入する前の空気を吸着塔1から排気された高温のガスg
1(脱着ガス)とガスg
3(非吸着ガス)との2段階の熱交換により昇温させることにより、吸着塔1から排出されるガスへの着熱による熱ロスをより効果的に低減させることができる。また、上記(ii)により酸素回収率を高めることができる。このため上記(i)〜(iii)を組み合わせることにより、酸素回収率を高めることができるとともに、吸着塔1から排出されるガスへの着熱による熱ロスを最も効果的に低減させることができる。
【0035】
また、この酸素分離方法の実施に供する酸素分離設備は、上記課題を解決するために、以下のような好ましい形態を採ることができる。
(1) さらに、吸着塔1に導入される前の空気と、吸着塔1に吸着されることなく排気されたガスg
3を熱交換する熱交換器24を備える。
(2) 吸着塔2に吸着された後、脱着されたガスg
4の排気管17を、送風手段4が設けられた空気供給管8であって、送風手段4の上流側の管部位置に接続する。
(3) 吸着工程と脱着工程を交互に行う2基の吸着塔1を備えた酸素分離設備であって、さらに、一方の吸着塔1から脱着されたガスg
1と、他方の吸着塔1に導入される前の空気を熱交換する熱交換器25を備える。
【0036】
図4は、本発明の酸素分離設備の他の実施形態を示すものであり、上述した好ましい形態(1)〜(3)を備えた酸素分離設備である。
この酸素分離設備の基本構成は、
図1の実施形態と同様であるので、同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
この酸素分離設備は、
図1の基本構成に加えて、熱交換器24a,24b、熱交換器25a,25bを備えている。
【0037】
熱交換器24a,24bは、吸着塔1a,1bに導入される前の空気g
0と、吸着塔1a,1bに吸着されることなく排気されたガスg
3(オフガス)を熱交換するものである。
したがって、熱交換器24aは、吸着塔1aを通過した非吸着ガス(オフガス)を排出するための分岐排気管120aと、吸着塔1aに空気を供給する分岐供給管80aに対して設けられる。すなわち、熱交換器24aの一次側流路(流路の入口・出口)に分岐排気管120aが接続され、二次側流路(流路の入口・出口)に分岐供給管80aが接続される。また、熱交換器24bは、吸着塔1bを通過した非吸着ガス(オフガス)を排出するための分岐排気管120bと、吸着塔1bに空気を供給する分岐供給管80bに対して設けられる。すなわち、熱交換器24bの一次側流路(流路の入口・出口)に分岐排気管120bが接続され、二次側流路(流路の入口・出口)に分岐供給管80bが接続される。
【0038】
熱交換器25a,25bは、2基の吸着塔1a,1bのうち、一方の吸着塔1に導入される前の空気g
0と、他方の吸着塔1から脱着されたガスg
1を熱交換するものである。
したがって、熱交換器25aは、吸着塔1bの吸着ガスを排気(脱着)する分岐排気管90bと、吸着塔1aに空気を供給する分岐供給管80aに対して設けられる。すなわち、熱交換器25aの一次側流路(流路の入口・出口)に分岐排気管90bが接続され、二次側流路(流路の入口・出口)に分岐供給管80aが接続される。また、熱交換器25bは、吸着塔1aの吸着ガスを排気(脱着)する分岐排気管90aと、吸着塔1bに空気を供給する分岐供給管80bに対して設けられる。すなわち、熱交換器25bの一次側流路(流路の入口・出口)に分岐排気管90aが接続され、二次側流路(流路の入口・出口)に分岐供給管80bが接続される。
【0039】
分岐供給管80a,80bにおいては、空気g
0の流れ方向で開閉弁13a,13bの下流側に熱交換器25a,25b、熱交換器24a,24bの順で配置されている。これは、熱交換器25a,25bの一次側のガスg
1と、熱交換器24a,24bの一次側のガスg
3は、通常、ガス量がg
3>g
1であるため、ガス量の少ないガスg
1を先に空気g
0の温度が低い状態で熱交換させ、次いで、ガス量の多いガスg
3と若干温度の上昇した空気g
0と熱交換する方が、空気g
0を効率的に昇温させることができるからである。
また、吸着塔2a,2bから脱着されるガスg
4のガス排気管17は、送風手段4の上流側の空気供給管8に接続され、ガスg
4が空気g
0に混合されるようにしている。
【0040】
以下、
図4の酸素分離設備を用いた本発明の酸素分離方法の一実施形態について、
図5及び
図6に基づいて説明する。
図5は、吸着塔1aと吸着塔2aが吸着工程、吸着塔1bと吸着塔2bが脱着工程にあるときの開閉弁の開閉状態及びガス流れを示す説明図、
図6は、吸着塔1aと吸着塔2aが脱着工程、吸着塔1bと吸着塔2bが吸着工程にあるときの開閉弁の開閉状態及びガス流れを示す説明図である。
図5及び
図6において、太線(実線、点線、破線)がガスの流れている流路を示し、開閉弁のなかで黒塗りが閉状態のもの、白抜きが開状態のものである。
この実施形態では、吸着塔1a,1bは加熱手段7で加熱され、塔内の吸着材は吸着工程・脱着工程とも高温状態(例えば、500℃程度)で使用される。
【0041】
図5においても、
図2の場合と同様に、原料である空気g
0は、送風手段4によって空気供給管8、分岐供給管80a、ガス給排気管11aを通じて吸着塔1aに導入され、塔内に充填された吸着材(酸素を主として吸着する吸着材)に酸素が主として吸着される(工程A)。吸着塔1a内で酸素濃度が低下したガスは、非吸着ガスとして塔上部から排気され、分岐排出管120a、ガス排出管12を通じて背圧弁16を介して排気(ガスg
3)される。一方、上記のように吸着塔1aでガス吸着が行われる工程Aの間、前回行われた工程Aで吸着塔1b内の吸着材に吸着されているガスg
1(酸素濃度が高いガス)が、排気手段5によって吸着塔1bから脱着され(工程B)、ガス給排管11b、分岐排気管90b、ガス排気管9を通じて排気される。以上が一段目のPSAによるガス分離工程であり、このPSAでは吸着工程と脱着工程間でのパージ工程は行われない。
【0042】
以上の一段目のPSAによるガス分離工程において、吸着塔1aに導入される空気g
0(常温)は、熱交換器25aにおいて、工程Bで吸着塔1bから脱着された上記ガスg
1(例えば、約500℃)と熱交換し、ガスg
1の顕熱で昇温し、さらに熱交換器24aにおいて、吸着塔1aに吸着されることなく排気された上記ガスg
3(例えば、約500℃)と熱交換し、ガスg
3の顕熱でさらに昇温し、このように昇温した空気g
0が吸着塔1aに導入される。
【0043】
吸着塔1bから脱着され、上記熱交換器25aを経由した後、ガス排気管9を通じて排気された上記ガスg
1は、二段目のPSAによるガス分離工程に送られる。すなわち、
図2の場合と同様に、ガスg
1は、ガス排気管9に連なる分岐供給管91a、ガス給排管18aを通じて吸着塔2aに導入され、塔内に充填された吸着材(窒素を主として吸着する吸着材)に窒素が主として吸着される(工程C)。吸着塔2aに吸着されることなく排気されたガスg
2(非吸着ガス)は、窒素分が吸着塔2aで吸着除去されて酸素濃度がさらに高くなっており、分岐排気管190a、ガス排気管19を通じて排気され、製品ガスである高酸素濃度ガスとして回収される(工程D)。一方、上記のように吸着塔2aでガス吸着が行われる工程Cの間、前回行われた工程Cで窒素が主として吸着された吸着塔2bから排気手段6により窒素が多いガスが脱着され、排気される(ガスg
4)。このガスg
4には相当量の酸素が含まれているため、ガス排出管17を通じて送風手段4の上流側の空気供給管8内に導入し、空気g
0と混合して原料ガスの一部とする。
【0044】
この酸素分離方法では、一段目PSAの吸着工程と脱着工程間でのパージ工程が行われないが、二段目PSAにおいて、一段目PSAで脱着されたガスg
1(酸素濃縮ガス)の窒素分が吸着除去されるので、二段目PSAで吸着されることなく排気されたガスg
2(非吸着ガス)は酸素濃度がさらに高められ、これを高酸素濃度ガスとして回収することができる。
【0045】
図5の状態で吸着塔1a,1bと吸着塔2a,2bによる上記工程が完了した時点で、開閉弁の開閉状態を
図6に示すように変更して吸着塔1a,1bと吸着塔2a,2bの切り替えを行い、以下のようなガス分離を行う。
図6においても、
図3の場合と同様に、原料である空気g
0は、送風手段4によって空気供給管8、分岐供給管80b、ガス給排気管11bを通じて吸着塔1bに導入され、塔内に充填された吸着材(酸素を主として吸着する吸着材)に酸素が主として吸着される(工程A)。吸着塔1b内で酸素濃度が低下したガスは、非吸着ガスとして塔上部から排気され、分岐排出管120b、ガス排出管12を通じて背圧弁16を介して排気(ガスg
3)される。一方、上記のように吸着塔1bでガス吸着が行われる工程Aの間、前回行われた工程Aで吸着塔1a内の吸着材に吸着されているガスg
1(酸素濃度が高いガス)が、排気手段5によって吸着塔1aから脱着され(工程B)、ガス給排管11a、分岐排気管90a、ガス排気管9を通じて排気される。以上が一段目のPSAによるガス分離工程であり、この一段目PSAでは吸着工程と脱着工程間でのパージ工程は行われない。
【0046】
以上の一段目のPSAによるガス分離工程において、吸着塔1bに導入される空気g
0(常温)は、熱交換器25bにおいて、工程Bで吸着塔1aから脱着された上記ガスg
1(例えば、約500℃)と熱交換し、ガスg
1の顕熱で昇温し、さらに熱交換器24bにおいて、吸着塔1bに吸着されることなく排気された上記ガスg
3(例えば、約500℃)と熱交換し、ガスg
3の顕熱でさらに昇温し、このように昇温した空気g
0が吸着塔1bに導入される。
【0047】
吸着塔1aから脱着され、上記熱交換器25bを経由した後、ガス排気管9を通じて排気された上記ガスg
1は、二段目のPSAによるガス分離工程に送られる。すなわち、
図3の場合と同様に、ガスg
1は、ガス排気管9に連なる分岐供給管91b、ガス給排管18bを通じて吸着塔2bに導入され、塔内に充填された吸着材(窒素を主として吸着する吸着材)に窒素が主として吸着される(工程C)。吸着塔2bに吸着されることなく排気されたガスg
2(非吸着ガス)は、窒素分が吸着塔2bで吸着除去されて酸素濃度がさらに高くなっており、分岐排気管190b、ガス排気管19を通じて排気され、製品ガスである高酸素濃度ガスとして回収される(工程D)。一方、上記のように吸着塔2bでガス吸着が行われる工程Cの間、前回行われた工程Cで窒素が主として吸着された吸着塔2aから排気手段6により窒素が多いガスが脱着され、排気される(ガスg
4)。さきに述べたように、このガスg
4には相当量の酸素が含まれているため、ガス排出管17を通じて送風手段4の上流側の空気供給管8内に導入し、空気g
0と混合して原料ガスの一部とする。
以上の
図5、
図6の工程を繰り返し行うことで、原料である空気g
0から高酸素濃度ガス(ガスg
2)を連続的に得ることができる。
【0048】
この酸素分離方法では、吸着塔1に導入される常温の空気g
0が、吸着塔1から排気された高温のガスg
1(脱着ガス)とガスg
3(非吸着ガス)との2段階の熱交換で昇温することにより、吸着塔1から排出されるガスへの着熱による熱ロスを効果的に低減させることができる。さらに、吸着塔2から脱着されたガスg
4(脱着ガス)を原料の空気に混合し、原料ガスの一部として用いることにより、酸素の回収率を高めることができる。