(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092282
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】耐火ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/295 20060101AFI20170227BHJP
H01B 7/08 20060101ALI20170227BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
H01B7/295
H01B7/08
H01B7/18 H
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-54789(P2015-54789)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-177874(P2016-177874A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2015年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000238049
【氏名又は名称】冨士電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 英明
【審査官】
和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0078446(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0133897(US,A1)
【文献】
実開平01−155611(JP,U)
【文献】
特開平05−002928(JP,A)
【文献】
実開昭59−126414(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体上に耐火層および絶縁体層を順に備える耐火絶縁線心が複数本、前記絶縁体層を当接させて並列配置されており、その外周に、隣接する前記耐火絶縁線心間の凹部を埋めるように共通の外被が被覆されている耐火ケーブルであって、
前記絶縁線心間の両側の外被表面に、下記要件i)およびii)を満たす断面V字状の溝が設けられていることを特徴とする耐火ケーブル。
i)前記絶縁体層の外径(D1)と前記溝幅(w)が次の関係を有する。
0.85D1≦w≦1.20D1
ii)前記溝形成部から外れた位置での前記外被の厚さ(t)と前記溝の深さ(d)が次の関係を有する。
0.30t≦d≦0.60t
【請求項2】
前記絶縁体層の外径(D1)と前記溝幅(w)が次の関係
0.90D1≦w≦1.15D1
を有し、かつ前記溝形成部から外れた位置での前記外被の厚さ(t)と前記溝の深さ(d)が次の関係
0.40t≦d≦0.50t
を有することを特徴とする請求項1に記載の耐火ケーブル。
【請求項3】
前記溝の側面が内側に膨らむ湾曲面で形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の耐火ケーブル。
【請求項4】
前記溝は、前記外被全体が均一な厚さとなるように設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の耐火ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、ビルや地下街などの防災設備の電気配線に使用される耐火ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや地下街などの防災設備の電気配線として耐火ケーブルが使用されている。この耐火ケーブルの耐火性能や電気特性、構造や寸法などの基準は、消防庁告示により規定されており、例えば、耐火性能は、現行の「消防庁告示第10号」では、JIS A 1304に定める火災曲線(840℃−30分)の温度条件下でも給電が可能なことが基準とされている。
【0003】
このような耐火性能の基準を満たす耐火ケーブルとして、導体上に耐火層および絶縁体を順に被覆して耐火絶縁線心とし、これを複数本(例えば、2本)並列させ、その外周に共通のシース(外被)を一括被覆した断面平型の耐火ケーブルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
かかる耐火ケーブルにおいて、耐火層には一般に、ガラスマイカテープ、プラスチックマイカテープなどが使用され、絶縁体およびシースには、塩化ビニル樹脂またはポリエチレン(シースのポリエチレンは、難燃剤を含有する難燃性ポリエチレン)が使用されている。特に、近年は、環境への配慮から、絶縁体およびシースには、火災時に煙やガスの発生の少ないポリエチレン系材料が使用されてきている。
【0004】
しかしながら、ポリエチレン系材料は、塩化ビニル樹脂に比べ硬く、とりわけ耐燃性を付与するために難燃剤を配合したポリエチレンは硬い。さらに、耐火ケーブルでは、導体と絶縁体層の間に上記のように耐火層を備えることから剛性がさらに増大する。このため、配線時の作業性(施工性)にやや難があり、特に、一般の屋内配線に用いるビニル系の平型絶縁ケーブル(例えば、VVF(600Vビニル絶縁ビニルシースケーブル平形)ケーブルなど)に比べ、施工性に乏しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実公平6−2172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、耐火ケーブルに要求される耐火性能、絶縁性能などの諸特性を低下させることなく、配線作業性を向上させることができる耐火ケーブルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の[1]〜[4]の構成を有する耐火ケーブルを提供する。
[1]導体上に耐火層および絶縁体層を順に備える耐火絶縁線心が複数本、前記絶縁体層を当接させて並列配置されており、その外周に、隣接する前記耐火絶縁線心間の凹部を埋めるように共通の外被が被覆されている耐火ケーブルであって、前記絶縁線心間の両側の外被表面に、下記要件i)およびii)を満たす断面V字状の溝が設けられていることを特徴とする耐火ケーブル。
i)前記絶縁体層の外径(D
1)と前記溝幅(w)が次の関係を有する。
0.85D
1≦w≦1.20D
1
ii)前記溝形成部から外れた位置での前記外被の厚さ(t)と前記溝の深さ(d)が次の関係を有する。
0.30t≦d≦0.60t
[2]前記絶縁体層の外径(D
1)と前記溝幅(w)が次の関係
0.90D
1≦w≦1.15D
1
を有し、かつ前記溝形成部から外れた位置での前記外被の厚さ(t)と前記溝の深さ(d)が次の関係
0.40t≦d≦0.50t
を有することを特徴とする[1]の耐火ケーブル。
[3]前記溝の側面が内側に膨らむ湾曲面で形成されていることを特徴とする[1]または[2]の耐火ケーブル。
[4]前記溝は、前記外被全体が均一な厚さとなるように設けられていることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかの耐火ケーブル。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐火ケーブルに要求される耐火性能、絶縁性能などの諸特性を低下させることなく、配線作業性を向上させることができる耐火ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態の耐火ケーブルを示す横断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の変形例を示す横断面図である。
【
図3】従来の耐火ケーブルの一例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。説明は図面に基づいて行うが、図面は単に図解のために提供されるものであって、本発明はそれらの図面により何ら限定されるものではない。また、以下の説明において、同一もしくは略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態の耐火ケーブルを示す横断面図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の耐火ケーブル1は、銅やアルミなどからなる導体11上に、耐火層12および絶縁体層13を順に被覆した耐火絶縁線心線10を複数本(図面の例では、2本)並列させ、その外周に共通の外被20を一括被覆した構造を有する。
【0013】
耐火層12は、ガラスクロスにマイカを接着したガラスマイカテープ、ポリエチレンなどからなるプラスチックフィルムにマイカを接着したプラスチックマイカテープなどの耐火テープを巻き付け、その外周をガラスヤーンなどで押え巻(図示なし)することにより形成される。巻き付け方法は、縦添えおよび重ね巻きのいずれであってもよい。耐火層12は、導体11外周に断面円形状に形成され、その厚さは、通常、0.1〜0.6mmの範囲である。
【0014】
絶縁体層13は、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィンなどの押出しにより形成される。ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体、エチレン・ブテン共重合体などが挙げられる。また、メタロセン触媒によりエチレンにプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテンなどのα‐オレフィンや環状オレフィンなどを共重合させたものなども使用することができる。これらは単独または混合して使用される。耐火性能、環境保全性などの観点からは、なかでも、低密度ポリエチレン(LDPE)の使用が好ましく、低密度ポリエチレン(LDPE)の単独使用が特に好ましい。
【0015】
絶縁体層13を形成するポリエチレンなどの絶縁材料には、酸化防止剤、紫外線安定剤などの添加剤が必要に応じて添加されていてもよい。ただし、難燃剤は電気特性、耐水性などを低下させることからその使用は好ましくない。絶縁体層13は耐火層12の外周に断面円形状に形成され、その厚さは、通常、0.8〜1.0mmの範囲である。
【0016】
外被20は、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン、これらの樹脂に難燃剤を配合することにより難燃性を付与した難燃性ポリマーなどの押出しにより形成される。ポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体、エチレン・ブテン共重合体などが挙げられる。また、メタロセン触媒によりエチレンにプロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテンなどのα‐オレフィンや環状オレフィンなどを共重合させたものなども使用することができる。これらは単独または混合して使用される。また、難燃性ポリマーに配合される難燃剤としては、酸化アンチモン、酸化モリブデンなどの金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和物、ハロゲン系難燃剤、赤リンなどのリン系難燃剤などが挙げられる。
【0017】
外被20を形成する材料(外被材料)としては、なかでも、塩化ビニル樹脂、難燃性ポリエチレン、ポリエチレンとエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン・アクリル酸メチル共重合体(EMA)などのエチレン系コポリマーとの混合ポリマーに難燃剤を配合したものが、難燃性、耐火性能、耐外傷性、耐候性などの観点から、好ましい。また、環境保全性の観点からは、ノンハロゲン系難燃剤、例えば、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水和物により難燃化したポリエチレンまたはポリエチレンとエチレン系コポリマーとの混合ポリマーがより好ましい。さらに、端末処理の際の被覆(外被)除去性の観点からは、難燃性ポリエチレンが好ましい。
外被材料には、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、酸化防止剤、滑材などが添加されていてもよい。また、外被材料は、電子線や有機過酸化物などで架橋してもよい。
【0018】
本実施形態において、耐火絶縁線心線10は、その最外層の絶縁体層13同士を当接させて並列配置されており、外被20は、それらの隣接する耐火絶縁線心10間の凹部を埋めるように被覆されている。
そして、その外被20の表面、すなわち、耐火絶縁線心10間の両側の外被20表面には、下記要件i)およびii)を満たす断面V字状の溝21が設けられている。
i)絶縁体層13の外径(D
1)と溝21の幅(w)が次の関係を有する。
0.85D
1≦w≦1.20D
1
ii)溝21形成部から外れた位置での外被20の厚さ(t)と溝21の深さ(d)が次の関係を有する。
0.30t≦d≦0.60t
なお、外被20は、少なくとも溝21形成部から外れた位置は均一な厚さに被覆されている。
【0019】
溝幅(w)は、0.90D
1≦w≦1.15D
1を満たすことが好ましく、0.95D
1≦w≦1.05D
1を満たすことがより好ましく、0.98D
1≦w≦1.02D
1であることがより一層好ましい。溝幅(w)が、絶縁体層の外径(D
1)と同じか、略同じであると特に好ましい。
また、溝深さ(d)は、0.40t≦d≦0.50tを満たすことが好ましい。
【0020】
このように構成される耐火ケーブル1においては、上記要件i)およびii)を満たす断面V字状の溝21が設けられたことによって、従来の、例えば、
図3に示すような、絶縁線心10間の両側の外被20表面が平坦な平面で形成されている耐火ケーブルに比べ、低摩擦化が図ることができるとともに、可撓性を向上させることができ、さらに、捩じれなどの発生も抑制できる。しかも、上記要件i)およびii)を満たす溝21は、耐火ケーブル1の耐火性能、電気特性、機械的特性を損なうことがない。したがって、従来の耐火ケーブルに匹敵する耐火性能、電気特性、機械的特性を備えながら、配線時の作業性を改善し、作業時間を短縮することができる。また、配線後の耐火ケーブル1の外観も良好である。
【0021】
また、上記耐火ケーブル1においては、断面V字状の溝21が設けられているため、端末処理の際、外被を容易に除去することができる。すなわち、従来、耐火ケーブルの端末処理の際には、カッターで外被を切り裂いて、内部の耐火絶縁線心を取り出していたが、カッターの挿入位置(切り込み位置)が安定せず、絶縁体を損傷させることがあった。本実施形態においては、断面V字状の溝21が、いわゆる引き裂きノッチとしての機能を併せ持ち、カッターの挿入位置を安定化させることができ、カッターによる絶縁体の損傷を防止することができる。
【0022】
また、断面V字状の溝21は、側面が内側に膨らむ湾曲面で形成されていることが好ましい。これにより、耐火性能、電気特性、機械的特性の低下をより抑制することができる。
【0023】
さらに、耐火絶縁線心10間の両側の外被20表面に設けられた断面V字状の溝21は、それぞれの先端が隣接する絶縁体層13の当接部を挟んで対向するように設けられていることが好ましい。これにより、端末処理時の外被除去性をより改善することができる。
なお、外被材料によっては(例えば、ポリエチレンなど)、カッターの先端が絶縁体層13まで達しなくとも、すなわち、外被20にわずかな切り込みを入れるだけでも、その切り込みを起点にして引き裂き、剥ぎ取ることができる。このような場合でも、断面V字状の溝21によって、切り込み位置を安定化させることができるため、外被20を容易に剥ぎ取ることが可能になる。また、絶縁線心間の両側の外被表面に設けられた断面V字状の溝21の先端同士を対向させた場合には、外被をより容易に除去することが可能になる。
【0024】
本実施形態においては、断面V字状の溝21は、外被20全体が均一な厚さとなるように設けられていることが、耐火性能、電気特性、機械的特性の低下を抑制し、かつ配線時の作業性を改善する観点から特に好ましい。
上記「外被全体が均一な厚さとなる」とは、外被20表面の任意の位置から絶縁体層13外周までの距離を測定したとき同じ値となることを意味する。なお、本明細書において、ケーブルの外径や被覆の厚さなどに関して記載する数値や用語は、本発明が属する技術分野において許容される誤差または範囲を含むものとする。上記の「均一な」や「同じ値」などの用語についても同様である。
【0025】
ここで、本発明による効果を確認するため、上記耐火ケーブル1を試作し、その特性(配線作業性、被覆除去性および電気特性)を評価した実験について記載する。評価方法を下記に、また、評価結果を、外被20の厚さ(t)、絶縁体層13の外径(D
1)、溝21の幅(w)、溝21の幅(w)と絶縁体層13の外径(D
1)との比(w)/(D
1)、および溝21の深さ(d)と外被20の厚さ(t)との比(d)/(t)とともに表1に示す。
【0026】
なお、耐火絶縁線心10は、直径2.0mmの銅導体11上に約0.18mm厚のプラスチックマイカテープを1枚縦添えし、ガラスヤーンで押え巻して約0.3mm厚の耐火層12を形成し、さらにその外側に、低密度ポリエチレン(LDPE)を、外径が約4.0mmとなるように押出被覆して構成した。また、このような耐火絶縁線心10を2本並列させて押出機に送り出し、その外周に難燃性ポリエチレン(酸素指数(JIS K 7201)27)を充実押出被覆して、外被20を構成した。外被20の厚さ(t)は約1.5mmとした。また、溝21はいずれも、略同一形状(側面が内側に膨らむ湾曲面からなる断面V字状)で、かつ絶縁線心10間の両側の外被20表面に設けられた溝21の先端同士が対向するように構成した。
【0027】
[配線作業性]
試作した耐火ケーブルを、既設建屋の壁面に沿って配線し、下記の基準で評価した。
◎:略壁面に沿って円滑に配線できる
○:壁面に対しわずかに捩じれまたは浮きが認められる(実用上問題なし)
△:壁面に対し捩じれおよび浮きが認められる
×:壁面に沿った配線が困難
【0028】
[被覆除去性]
外被にカッターを用いて切り込みを入れ、この切り込みを起点に外被を引き裂き、内部の2本の耐火絶縁線心を取り出し、下記の基準で評価した。
○:絶縁体を損傷することなく短時間に被覆を除去できる
△:絶縁体を損傷しないものの、被覆の除去に時間を要する
×:絶縁体にカッターによる損傷が認められる
【0029】
[電気特性]
試作した耐火ケーブルの外被が電気用品安全法の技術基準に適合するか否かにより評価した。
○:適合する
×:適合せず
【0030】
表1には、本発明との比較のために、溝が前述した要件i)およびii)を満足しない耐火ケーブルについて、同様に特性評価した結果を併せ示した。試作した耐火ケーブルは、溝の構成以外はいずれも同一構成とした。
【0032】
表1からも明らかなように、溝が前述した要件i)およびii)を満たす耐火ケーブル(例1−2〜例1−4、例2−2〜例2−4、例3−2〜例3−4、例4−2〜例4−4、例5−2〜例5−4、例7−2〜例7−4、例8−2〜例8−4、例9−2〜例9−4、例10−2〜例10−4)においては、配線作業性、電気特性および被覆除去性においていずれも良好な結果が得られており、特に、0.90D
1≦w≦1.15D
1および0.40t≦d≦0.50tを満たす耐火ケーブル(例2−4、例3−4、例4−4、例5−4、例7−4、例8−4、例9−4)でより良好な結果が得られている。
【0033】
なお、本実施形態において、並列させる耐火絶縁線心の数は、特に限定されるものではないが、耐火絶縁線心数が、2本または3本の場合に、配線作業性に関し、特に顕著な効果が得られる。
図2に、耐火絶縁線心が3本の場合の耐火ケーブル2の構成例を示す。
図2に示すように、耐火ケーブル2は、導体11上に、耐火層12および絶縁体層13を順に被覆した耐火絶縁線心線10が3本、絶縁体層13を当接させて並列配置されており、その外周に共通の外被20が一括被覆されている。そして外被20の表面には、前述したような断面V字状の溝21が設けられている。
【0034】
以上、本発明の実施形態およびその変形例について説明してきたが、本発明はそのような実施形態およびその変形例に何ら限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、これらの実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0035】
1,2…耐火ケーブル、10…耐火絶縁線心、11…導体、12…耐火層、13…絶縁体層、20…外被、21…断面V字状の溝。