特許第6092283号(P6092283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6092283支承装置の供給の為の方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092283
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】支承装置の供給の為の方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   F16N 5/00 20060101AFI20170227BHJP
   F16N 7/00 20060101ALI20170227BHJP
   F16N 7/30 20060101ALI20170227BHJP
   F16N 19/00 20060101ALI20170227BHJP
   F16N 23/00 20060101ALI20170227BHJP
   F16N 29/00 20060101ALI20170227BHJP
   F04D 19/04 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F16N5/00
   F16N7/00
   F16N7/30
   F16N19/00
   F16N23/00
   F16N29/00 E
   F04D19/04 B
【請求項の数】13
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-57057(P2015-57057)
(22)【出願日】2015年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-200407(P2015-200407A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2015年3月20日
(31)【優先権主張番号】10 2014 104 734.6
(32)【優先日】2014年4月3日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】391043675
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト・シュタムラー
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・エムリヒ
【審査官】 村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−273908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16N 5/00
F04D 19/04
F16N 7/00
F16N 7/30
F16N 19/00
F16N 23/00
F16N 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに可動な部材のガイドに使用される少なくとも一つの支承装置(84)に作動媒体(18)、特に潤滑媒体を供給するための方法であって、作動媒体(18)が、作動媒体リザーバー(20)から第一のバルブ装置(I)を介して、その下に配置された少なくとも一つの密閉された容器(22)内へと導かれ、密閉された容器(22)は搬送チャネル(24)を介して支承装置(84)と接続されており、そして、密閉された容器(22)から搬送チャネル(24)を介して、容器(22)に供給されるガスまたは周囲空気と、特に、負圧である、搬送チャネル(24)の支承部側の開口領域(26)の間の差圧に促進されて、支承装置(84)に作動媒体(18)を供給するために、密閉された容器(22)に第二のバルブ装置(II)を介して、外部から付勢されるガス及び/又は周囲空気が供給され、その際、作動媒体(18)が、負圧下にある真空ポンプの支承装置(84)に供給されることを特徴とする方法。
【請求項2】
支承装置(84)に供給される作動媒体流が、密閉された容器(22)内へのガス及び/又は周囲空気供給を介して制御及び/又は調整されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項3】
密閉された容器(22)内へのガス及び/又は周囲空気供給がスロットルバルブ(32)によって調整されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項4】
第一および第二のバルブ装置(I,II)を介して交互に作動媒体(18)が作動媒体リザーバー(20)からその下に配置される密閉された容器(22)内へと導かれ、そして作動媒体(18)を、密閉された容器(22)から支承装置(84)へと搬送するために、
密閉された容器(22)に外部から付勢されるガス及び/又は周囲空気が供給されることを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
作動媒体(18)とガス又は周囲空気が密閉された容器(22)の内部でメンブラン(108)によって互いに分離されることを特徴とする請求項1からに記載の方法。
【請求項6】
互いに可動な部材のガイドに使用される少なくとも一つの支承装置(84)に作動媒体(18)、特に潤滑媒体を供給するためのシステム(10)であって、一つの作動媒体リザーバー(20)と、その下に配置された少なくとも一つの密閉された容器(22)を有し、この容器に、第一のバルブ装置(I)を介して作動媒体(18)が作動媒体リザーバー(20)から供給可能であり、その際、密閉された容器(22)が、搬送チャネル(24)を介して支承装置(84)と接続されており、そして作動媒体(18)を密閉された容器(22)から搬送チャネル(24)を介して、容器(22)に供給されるガス又は周囲空気と、特に負圧下にある搬送チャネル(24)の支承部側の開口領域の間の差圧に促進されて、支承装置(84)へと搬送するために、密閉された容器(22)が第二のバルブ装置(II)を介して外部から付勢されるガス及び/又は周囲空気を供給可能であり、その際、支承装置(84)が、負圧下にある真空ポンプに含まれていることを特徴とするシステム。
【請求項7】
支承装置(84)が、真空ポンプ内、特にターボ分子ポンプ内に統合された少なくとも一つのローラー支承部を有し、このローラー支承部によって、少なくとも一つのポンプ段、特にターボポンプ段のポンプ運転中に回転する部材を担持し、そして駆動部(104)によって回転させられることが可能であるローター軸(12)が回転可能に支承されていることを特徴とする請求項に記載のシステム。
【請求項8】
支承装置(84)に供給される作動媒体流が、密閉された容器(22)内へのガス及び/又は周囲空気供給を介して制御可能及び/又は調整可能であり、その際、特に、密閉された容器(22)内へのガス及び/又は周囲空気供給が、スロットルバルブ(32)を介して調整可能であることを特徴とする請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
交互に、作動媒体(18)が、作動媒体リザーバー(20)から、その下に配置された密閉された容器(22)内へ移送され、そして、作動媒体(18)を密閉された容器(22)から支承装置(84)へと搬送するために、密閉された容器(22)に外部から付勢されるガス及び/又は周囲空気が供給されるよう、第一および第二のバルブ装置(I,II)が制御装置(30)を介して駆動可能であることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
密閉された容器(22)の内部に、一つのメンブラン(108)が設けられており、このメンブランを介して作動媒体(18)とガスまたは周囲空気が互いに分離されていることを特徴とする請求項6から9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
密閉された容器(22)の、ガスまたは周囲空気によって付勢されることが可能である領域が、特に調整可能なスロットルバルブ(110)を介して負圧にさらされることが可能であることを特徴とする請求項6から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
搬送チャネル(24)に、一つの逆止弁(112)が付設されていること、及び/又は密閉された容器(22)に少なくとも一つの充填状態センサーが付設されていることを特徴とする請求項6から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
真空ポンプ、特にターボ分子ポンプであって、少なくとも一つのポンプ段、特にターボポンプ段のポンプ運転中に回転する部材を担持し、そして駆動部(104)によって回転させられることが可能であるローター軸(12)を有し、このローター軸が、少なくとも一つのローラー支承部(84)を有する支承装置によって回転可能に支承されており、その際、支承装置に作動媒体(18)、特に潤滑媒体を供給する為に、請求項6から12のいずれか一項に記載のシステムが設けられていることを特徴とする真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに可動な部材のガイドに使用される少なくとも一つの支承装置に作動媒体、特に潤滑媒体を供給するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特に真空ポンプのようなポンプの例えばローターの支承部は、非接触式のアクティブマグネット支承部を例外として潤滑される必要がある。その際、作動媒体による能動的な潤滑は、受動的なグリース(油脂)式の長期潤滑に対して有利であることが示された。
【0003】
その様な支承部の運転媒体又は潤滑媒体の搬送は、従来は、例えば渦巻き軸(独語:Schneckenwelle)または回転する潤滑媒体ポンプのようなアクティブ式のポンプを使って行われている。これは比較的高コストである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第3315748A1号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第69433065号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第2138152A号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第4157132A号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって本発明の課題は、冒頭に記載した形式の方法およびシステムであって、支承装置への可能な限り理想的な作動媒体供給の為のコストが最小限に減少されるものを提供することである。その際、この方法およびこのシステムは特に負圧下にある装置において、特に真空装置において使用可能であるべきである。
【0006】
「負圧」の概念は、一般的に、周囲圧、つまりこの領域の周囲の圧力よりも低い、ある領域における圧力であると解される。周囲圧は、特に、各箇所におよんでいる、大気圧、つまり、大気または周囲空気の空気圧である。特に、以下で例えばポンプや真空ポンプのような装置について話すとき、「負圧」とは、装置がその時に存在するその箇所における大気圧よりも低い圧力を意味する。例えば装置が、そこでの圧力が既に大気圧よりも低い室内で運転されるとき、該装置に関しての「負圧」は、ここでもまた、該装置を「取り囲む」この空間内の圧力よりも低く、つまり「周囲圧」よりみ低く、このことは、ここでもまた冒頭に記載した定義と変わりない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、発明に従い、請求項1に記載の特徴を有する方法および請求項7に記載の特徴を有するシステムによって解決される。本発明に係る方法の好ましい態様、および本発明に係るシステムの好ましい実施形は、下位の請求項に記載されている。
【0008】
互いに可動な部材のガイドに使用される少なくとも一つの支承装置に作動媒体、特に潤滑媒体を供給するための、本発明に係る方法に従い、作動媒体は、作動媒体リザーバーから第一のバルブ装置を介して、その下に配置された密閉された少なくとも一つの容器内へと導かれ、密閉された容器は、搬送チャネルを介して支承装置と接続され、そして、作動媒体を密閉された容器から搬送チャネルを介して、容器に供給されるガス又は周囲空気と、特に負圧下にある、搬送チャネルの支承部側の開口領域の間の差圧に促進されて支承装置へと搬送するために、密閉された容器には第二のバルブ装置を介して、外部から付勢されるガス及び/又は周囲空気が供給される。
【0009】
その様な方法は、特に、例えばポンプ、特に真空ポンプのような、負圧下にある装置の支承部の供給の為に好適である。その際、作動媒体の支承装置への搬送の促進の為に、密閉された容器に供給される、外部から付勢されたガスまたは周囲空気と、当該装置の内部の負圧の間の差圧が利用される。空圧的な効果のそのような利用によって、作動媒体の適当な搬送が、能動的なポンプ無しでも保証され、これによって支承装置の供給の為のコストは相応して減少される。
【0010】
本発明に係る方法の好ましい態様に従い、例えばポンプ、特に真空ポンプのような負圧下にある装置の支承装置に作動媒体が供給される。その際、好ましくは、密閉された容器に供給されるガスまたは周囲空気と、当該装置のハウジングの内部の負圧の間の差圧が、作動媒体供給の促進の為に使用される。
【0011】
支承装置に供給される作動媒体流は、好ましくは、密閉された容器内へのガス及び/又は周囲空気供給を介して制御及び/又は調整される。その際、密閉された容器内へのガス及び/又は周囲空気供給は、特にスロットルバルブを介して調整されることが可能である。
【0012】
バルブ装置は、特に、交互に、第一および第二のバルブ装置を介して、作動媒体が作動媒体リザーバーからその下に配置された密閉された容器内へ導かれ、そして作動媒体を密閉された容器から支承装置へと搬送するために、密閉された容器に、外部から付勢されるガス及び/又は周囲空気が供給されるよう操作される、または駆動されることが可能である。
【0013】
第一および第二のバルブ装置は、つまり交互に開かれ、又は再び閉じられることが可能である。これによって、当該支承装置に作動媒体を周期的に供給されることが保証される。
【0014】
特に、外部から付勢されるガスが密閉された容器の内部で作動媒体と接触する場合、ガスとして不活性ガスが使用される。
【0015】
本発明に係る方法の別の有利な形態に従い、作動媒体とガス又は周囲空気は、密閉された容器の内部でメンブランによって互いに分離されている。
【0016】
その様なメンブランによって、作動媒体とガスまたは周囲空気が、互いに直接接触することが防止される。例えば、波形メンブランまたは平坦メンブランが使用されることが可能である。
【0017】
その際、特に、作動媒体リザーバーと密閉された容器の間並びに搬送チャネル内に設けられた逆止弁を有するメンブランポンプの形式によるメンブランの付勢が考え得る。密閉された容器内への外部から付勢されるガスまたは周囲空気の供給の為に、最も簡単な場合、一つのバルブが十分である。密閉された容器のガスまたは周囲空気を受け入れる領域は、好ましくは調節可能なスロットルバルブを介して負圧にさらされることが可能である。その際、このスロットルバルブは、特に、常に定義されたガス容量が密閉された容器から出されるよう調整される。この容量は、密閉された容器内に進入する容積流よりも小さい。その際、メンブランのガス側への圧力は高まる。これによって、作動媒体は、搬送チャネルに付設された逆止弁の保持圧力に抗してポンピングされる。第二のバルブ装置のバルブが閉じられるとすぐに、残留圧力は、密閉された容器を負圧と接続するスロットルバルブによって減少される。その際、メンブランのみが、その固有応力によって戻され、及び/又はばね装置によって再び基の位置に戻されることが可能である。メンブランのこの戻り動作または相応する戻りストロークの間、新たに作動媒体が作動媒体リザーバーから密閉された容器内へと吸引され、これはその後次のポンプフェーズの為に使用される。
【0018】
特に、供給すべき支承装置へのチャネルボリュームが、密閉された容器のボリュームよりも小さく選択されるときも特に有利である。これによって特に、空のチャネルも完全に貫流されることが可能である。
【0019】
搬送チャネルは、特に上昇するチャネルであることが可能である。密閉された容器は、目的にかなって、下の領域で搬送チャネルと接続されている。上述したように、搬送チャネルに逆止弁が付設されることが可能である。その際、そのような逆止弁は、搬送チャネル内の任意の箇所に設けられることが可能である。しかしその際、これは、目的にかなってその進入領域内に設けられる。
【0020】
密閉された容器は、複数の支承装置の供給のために、複数の独立した搬送チャネルを介しても異なる支承装置と接続されることが可能である。その際、異なる搬送チャネルには、其々一つの独自の、特に調整可能なスロットルバルブが付設されることが可能である。これによって、容積流は異なるチャネル幾何に依存せず可能な限り均等に、または互いに相対的に所望の比率で保持されることが可能である。支承装置への作動媒体流は、特にここでもまた、二つのバルブ装置またはガス及び/又は周囲空気供給を介して調整可能である。調整は、特に後からも変更されることが可能である。
【0021】
二つのバルブ装置を介して、特に、支承装置に対する任意の間隔での断続的な作動媒体供給が行われることが可能であり、これによって、過潤滑が効率的に防止されることが可能である。
【0022】
其々の支承装置は、有利には、複数の密閉された容器を介して交互に作動媒体を供給されることが可能である。そのような複数の密閉された容器の使用は、中断の無い連続的な作動媒体供給を可能とする。これは、密閉された容器が反対に周期動作せられるので、支承装置が常に少なくとも一つの容器により能動的に供給されることが可能であることによる。
【0023】
特に、密閉された容器の充填状態が少なくとも一つの充填状態センサーによって監視されるときも有利である。そのような充填状態センサーは、特に密閉された容器の充填状態の能動的な制御及び/又は調整の為に使用されることが可能である。
【0024】
更に、各搬送チャネル内の作動媒体スループット(流量)が少なくとも一つの流量センサーによって監視されるとき有利である。そのような流量センサーは、当該支承装置に供給される作動媒体量の制御及び/又は調整の為に援用されることが可能である。
【0025】
互いに可動な部材のガイドに使用される少なくとも一つの支承装置に作動媒体、特に潤滑媒体を供給するための発明に係るシステムは、相応して、一つの作動媒体リザーバーと少なくとも一つの、その下に配置された密閉された容器を有する。この容器に、第一のバルブ装置を介して作動媒体が作動媒体リザーバーから供給可能であり、その際、密閉された容器は、搬送チャネルを介して支承装置と接続されており、そして密閉された容器には、第二のバルブ装置を介して、外部から付勢されるガス及び/又は周囲空気が供給可能である。これにより、作動媒体を密閉された容器から搬送チャネルを介して、容器に供給されるガス又は周囲空気と、搬送チャネルの、特に負圧下にある支承部側の開口領域の間の差圧に促進されて、支承装置へと搬送する。
【0026】
その際、支承装置は、好ましくは特にポンプ、特に真空ポンプのような負圧下にある装置が含まれる。
【0027】
特に、支承装置は、少なくとも一つの真空ポンプ、特にターボ分子ポンプ内に統合されたローラー支承部を有する。この支承部を介して、少なくとも一つのポンプ段、特にターボポンプ段のポンプ運転中回転する部材を担持し、そして駆動部によって回転させられることが可能なローター軸が回転可能に支承されている。
【0028】
支承装置に供給される作動媒体流は、好ましくは、密閉された容器内へのガス及び/又は周囲空気供給を介して制御可能及び/又は調整可能である。
【0029】
好ましくは、密閉された容器内へのガス及び/又は周囲空気供給は、一つのスロットルバルブを介して調整可能である。
【0030】
好ましくは、第一および第二のバルブ装置は制御装置を介して、作動媒体が交互に、作動媒体リザーバーからその下に配置された密閉された容器内へと移送され、そして作動媒体を密閉された容器から支承装置へと搬送するために、密閉された容器に、外部から付勢されるガス及び/又は周囲空気が供給されるよう制御可能である。
【0031】
本発明に係るシステムの別の有利な実施形に従い、密閉された容器の内部には、一つのメンブランが設けられている。このメンブランによって、作動媒体およびガス又は周囲空気が互いに分離されている。その際、密閉された容器の、ガスまたは周囲空気によって付勢可能な領域は、好ましくは、特に調整可能なスロットルバルブを介して負圧にさらされることが可能である。メンブランは、例えば波状メンブランまたは平坦メンブランとして形成されていることが可能である。
【0032】
特に、作動媒体リザーバーと密閉された容器の間並びに搬送チャネル内に設けられた逆止弁を有するメンブランポンプの形式によるメンブランの付勢が考え得る。密閉された容器のガスまたは周囲空気を受け入れる領域は、好ましくは、特に調整可能な一つのスロットルバルブを介して負圧にさらされることが可能である。其々のポンプフェーズに引き続いて、メンブランのみが、その固有応力によって戻り動かされ、及び/又はばね装置によって再び元の位置に戻されることが可能である。
【0033】
搬送チャネルは、特に上昇するチャネルとして形成されていることが可能である。密閉された容器は、目的にかなって下の領域で搬送チャネルと接続されている。すでに上述したように、搬送チャネルには、特に一つの逆止弁が付設されていることが可能である。
【0034】
供給すべき支承装置へのチャネルボリュームは、好ましくは、密閉された容器の容積よりも小さい。
【0035】
複数の支承装置の供給の為に、密閉された容器が、複数の独立した搬送チャネルを介して異なる支承装置と接続されていることが可能である。
【0036】
バルブ装置は、一つの制御装置を介して、各支承装置に作動媒体が、独立した閉じられた容器を介して交互に供給されるよう駆動可能である。
【0037】
各搬送チャネルには、目的にかなって、特に調整可能な一つのスロットルバルブが付設されている。代替として、または追加的に、各搬送チャネルには、特に一つの逆止弁も付設されていることが可能である。
【0038】
作動媒体リザーバーには、好ましくは少なくとも一つの充填状態センサーが付設されている。各搬送チャネルには、特に少なくとも一つの流量センサーが設けられていることも可能である。
【0039】
第一および第二のバルブ装置は、其々、例えばディスクバルブとして形成されていることが可能である。これらは、例えば、一つの共通なアクチュエータを介して、特に、ばねによる、または鏡によるヒステリシスによって(独語:mit einer feder− bzw. spielgefuehrten Hysterese)、アクチュエータの各操作によって、まずバルブ装置の一つの閉じ、そしてその後、他方のバルブが開くよう操作可能である。これによって、供給システムの構築が更に簡単となる。アクチュエータの、二つの状態の間の簡単な切替えが、所望の作動媒体供給を保証するのに十分である。
【0040】
本発明は、更に、真空ポンプ、特にターボ分子ポンプであって、少なくとも一つのポンプ段、特にターボポンプ段のポンプ運転状態で回転する部材を担持し、そして駆動部によって回転されられることが可能である少なくとも一つのローター軸を有し、このローター軸が、少なくとも一つのローラー支承部を有する支承装置によって回転可能に支承されており、その際、支承装置に作動媒体、特に潤滑媒体を供給するために発明に係るシステムを設けられているものに関する。
【0041】
本発明を以下に図面を参照しつつ実施例に基づき詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】互いに可動な部材のガイドに使用される支承装置に作動媒体を供給するための本発明に係るシステムの例示的な一つの実施形の簡略図。
図2】密閉された容器内に配置されたメンブランを有する本発明に係るシステムの例示的な別の一つの実施形の簡略図。
図3】ローター支承部が回転支承部を有する真空ポンプの一つの例示的実施形の簡略図。供給の為に、本発明に係るシステムを使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1は、本発明に係る方法を実施するのに好適な、互いに可動な部材のガイドに使用される支承装置84に作動媒体18、特に潤滑媒体を供給するためのシステム10の例示的な一つの実施形を図解により示す。
【0044】
システム10は、一つの作動媒体リザーバー20とその下に配置された密閉された少なくとも一つの容器22を有している。この容器に、第一のバルブ装置Iを介して作動媒体18が作動媒体リザーバー20から供給可能である。
【0045】
密閉された容器22は、下の領域において、特に上昇する搬送チャネル24を介して支承装置84と接続されている。密閉された容器22から搬送チャネル24を介して、容器22に供給されるガスまたは周囲空気と、搬送チャネル24の特に負圧下にある支承部側の開口領域26の間の差圧に促進されて、作動媒体18を支承装置84に供給するために、密閉された容器22には、第二のバルブ装置IIを介して外部から付勢されるガス及び/又は周囲空気を供給可能である。
【0046】
その際、支承装置は、負圧下にある装置28内に含まれている。この装置は、以下に個々に詳細に説明されるように、例えばポンプ、特に真空ポンプであることが可能である。
【0047】
装置28は、一つのハウジング72を有している。このハウジングの中に、特に支承装置84も含まれており、更に、作動媒体リザーバー20並びに密閉された容器22もこのハウジング72内に配置されていることが可能である。
【0048】
密閉された容器に第二のバルブ装置IIを介して供給可能な外部から付勢されるガス、又は、容器22に供給可能な周囲空気は、圧力pを有する一方で、ハウジング72の内部には、負圧pvとなっている。この負圧は、圧力paよりも低い。つまり差圧(これによって支承装置84への作動媒体供給が促進される)は、両方の圧力pおよびpの間の差から生じる。
【0049】
支承装置84に供給される作動媒体流は、密閉された容器22内へのガス及び/又は周囲空気供給を介して制御可能及び/又は調整可能である。この為、システム10は制御装置30を有していることが可能である。この制御装置を介してバルブ装置I、IIが適切に駆動可能である。この制御装置30は、装置28に付設された制御ユニット106(図3も参照)内に統合されていることが可能であり、またはこれから独立して設けられていることも可能である。
【0050】
密閉された容器22内へのガス及び/又は周囲空気供給は、特にスロットルバルブ32を介して所望の方法で調整可能であり得る。本実施例においては、このスロットルバルブ32はガスまたは周囲空気の流れ方向に関して、第二のバルブ装置IIの後方に配置されている。
【0051】
第一および第二のバルブ装置I,IIは、特に、ここでもまた制御装置30を介して駆動可能であるので、交互に、作動媒体18は、作動媒体リザーバー20から、その下に配置された密閉された容器22内へと移送され、そして、作動媒体18を密閉された容器22から支承装置84へと搬送するために、密閉された容器に外部から付勢されたガス及び/又は周囲空気が供給される。
【0052】
空のチャネル24も完全に貫流されることが可能であるように、供給すべき支承装置84へのチャネル容積は、特に、密閉された容器22の容積よりも小さいことが可能である。
【0053】
作動媒体18の意図しない逆流を防止するために、代替としてまたは追加的に、チャネル24が任意の箇所に逆止弁を有することが可能である。
【0054】
システム10を介して複数の支承装置84が供給されるべきとき、密閉された容器22は、複数の独立した搬送チャネル24を介して異なる支承装置84と接続されていることが可能である。
【0055】
各搬送チャネル24には、特に調整可能な一つのスロットルバルブが付設されていることが可能であるので、容積流は、異なるチャネル幾何に依存せずできる限り同様に、または互いに相対的に所望の比率で保持されることが可能である。
【0056】
支承装置84には、作動媒体84も交互に独立した密閉された容器22を介して供給されることが可能である。複数の密閉された容器22を介してのそのような供給は、中断の無い連続的作動媒体供給を可能とする。これは、容器22が反対向きにサイクル動作されることによって行われる。これによって、供給が常に少なくとも一つの容器22を介して行われることが保証される。
【0057】
各密閉された容器22には、少なくとも一つの充填状態センサーも付設されていることが可能である。これにより各充填状態を監視する。そのような充填状態センサーは、特にここでもまた、制御装置30と接続されていることが可能である。これにより充填状態を所望の方法で制御及び/又は調整する。
【0058】
各搬送チャネル24には、少なくとも一つの流量センサーも付設されていることが可能である。そのような流量センサーも、特にここでもまた、制御装置30と接続されていることが可能であり、これを介して、支承装置84に供給される作動媒体量を制御及び/又は調整する。
【0059】
両方のバルブ装置I,IIは其々一つのディスクバルブを有していることが可能である。その際、これらディスクバルブは、例えば一つの共通なアクチュエータが付設されていることが可能である。このアクチュエータを介して、バルブ装置は特に、アクチュエータ動作の際に、ばねにより導かれるまたは鏡により導かれるヒステリシスによって、まず、両方のバルブ装置I,IIIの一方が閉じ、そして引き続いて他方のバルブ装置が開くよう制御可能であるよう制御可能である。この事は、システム10の更なる簡易化をもたらす。よって、所望の搬送を成し遂げるために、当該アクチュエータは二つの状態の間のみを切り替えられる必要がある。
【0060】
外部から付勢されるガスが密閉された容器22の内部で作動媒体18と接触する場合、ガスとして不活性ガスが使用されることが可能である。
【0061】
図1に表された実施形においてスロットルバルブ32が、密閉された容器22に供給されるガスまたは周囲空気の流れ方向において、第二のバルブ装置IIの後方に配置されている一方、このスロットルバルブ32が第二のバルブ装置IIの前方に配置されている実施形も基本的に可能である。
【0062】
図2は、本発明に係るシステム10の別の例示的な実施形を示す。この実施形においては、密閉された容器22の内部に、メンブラン108が設けられている。このメンブランを介して、作動媒体18およびガスまたは周囲空気が互いに分離されている。
【0063】
密閉された容器22のガスまたは周囲空気によって付勢可能な領域は、この場合、特に調整可能なスロットルバルブ110を介して、ハウジング72の内部と接続されている。この中は、負圧pとなっている。これは、ハウジング72の外側の圧力pよりも低い。
【0064】
さらに搬送チャネル24内には一つの逆止弁112が設けられている。第一のバルブ装置Iもまた、この場合、一つの逆止弁114を有している。
【0065】
メンブラン108は、それゆえ、一つのメンブランポンプの形式に従い、搬送チャネル24内、並びに作動媒体リザーバー20と密閉された容器22との間に設けられた逆止弁112,114によって操作されることが可能である。外部から付勢されるガスまたは周囲空気の密閉された容器22内への供給の為に、最も簡単には、一つのバルブが十分である。スロットルバルブ110は、常に定義されたガス容積流が密閉された容器22から出るよう調整される。これは、容器22内に入る容積流よりも小さい。これによってメンブラン108のガス側で圧力が上昇し、これによって作動媒体18は、搬送チャネル24に付設された逆止弁112の保持圧力に対抗して、搬送チャネル24内へと、そしてこれを介して支承装置84へとポンピングされる。作動媒体18から作動媒体リザーバー20への逆流は、逆止弁114によって防止される。第二のバルブ装置IIのバルブが閉じられるとすぐに、残留圧力は密閉された容器22を負圧pと接続するスロットルバルブ110を介して減少させられる。
【0066】
メンブラン108は、その固有応力(独語:Eigenspannung)のみによって戻り動かされ、及び/又はばね装置によって再びもとの場所へと戻されることが可能である。メンブラン108の相応する戻りストロークの間、作動媒体18は新たに作動媒体リザーバー20から密閉された容器22内へと吸入され、これはその後、次のポンプフェーズで使用できるようになる。
【0067】
この図2に表されたシステムは、特にここでもまた、図1に記載されたシステムと同様に実施されることが可能である。互いに対応する部材は、同じ参照符号が付されている。
【0068】
既に上述したように、発明に係るシステム10は、特に支承装置84に作動媒体供給を行うために設けられていることが可能である。これは、例えば真空ポンプのような装置28のローター支承部の部材である。
【0069】
図3内には、そのような真空ポンプの例示的な一つの実施形の簡略図が示されている。そのローター支承部は、回転支承部として形成された支承装置84を有している。その供給の為に発明に係るシステム10が使用可能である。
【0070】
図3に示された真空ポンプは、インレットフランジ68によって取り囲まれたポンプインレット70と、ポンプインレット70におよぶガスを図3に表されていないポンプアウトレットへと搬送するための複数のポンプ段を有する。真空ポンプは、静的な(静止した)ハウジング(72)を有するステーターと、ハウジング72内に配置され、回転軸14を中心として回転可能に支承されたローター軸12を有するローターを有する。
【0071】
真空ポンプは、ターボ分子ポンプとして形成されており、そして、互いに直列に接続され、ポンプ効果を発する複数のターボ分子的ポンプ段を有する。このターボ分子的ポンプ段は、ローター軸12と接続された複数のターボ分子的ローターディスク16と、軸方向でローターディスク16の間に配置され、そしてハウジング12内に固定された複数のターボ分子的ステーターディスク26を有する。複数のステーターディスクは、スペーサーリング36によって所望の軸方向間隔で互いに保持されている。ローターディスク16とステーターディスク26は、吸い込み領域50(独語:Schoepfbereich)に、矢印58の方向に向けられた軸方向のポンプ効果を提供する。
【0072】
真空ポンプは、その上、軸方向で互いに入り込むよう配置され、そしてポンプ効果を発する、互いに直列に接続されたホルベックポンプ段を有する。ホルベックポンプ段のローター側の部材は、ローター軸12と接続されたローターハブ74と、ローターハブ74に固定され、そしてこれによって担持されているシリンダー側面形状のホルベックロータースリーブ76,78を有している。これらホルベックロータースリーブは、回転軸14に同軸な方向に向けられており、そして半径方向で互いに入り込んで接続されている。更に、シリンダー側面形状の二つのホルベックステータースリーブ80,82が設けられている。これらホルベックステータースリーブは、同様に回転軸14に対して同軸な方向に向けられており、そして半径方向で互いに入り込むよう接続されている。ホルベックポンプ段のポンプ効果を有する表面は、其々、各ホルベックロータースリーブ76,78とホルベックステータースリーブ80,82の半径方向の狭いホルベック間隙を形成しつつ互いに向かい合っている半径方向の側面によって形成されている。その際、ポンプ作用を奏する表面の一方、当該場合においては、ホルベックロータースリーブ76または78のそれは滑らかに形成されており、そして、ホルベックステータースリーブ80,82の向かい合った側のポンプ作用を奏する表面は、回転軸14を中心として周回するよう、ねじ線形状に軸方向に推移する溝を有する構造化部を有している。この溝の中を、ローターの回転によってガスが前進(促進)させられ、そしてこれによってポンピングされる。
【0073】
真空ポンプは、ローターの回転駆動の為の駆動モーター104を有している。その回転子はローター軸12によって形成されている。制御ユニット106がモーター104の駆動を行う。
【0074】
ローター軸12の回転可能な支承は、ポンプアウトレットの領域のローラー支承部として形成された回転支承部84と、ポンプインレット70の領域の永久磁石支承部86によって行われる。
【0075】
永久磁石支承部86は、ローター側の支承半部88とステーター側の支承半部90を有する。これらは、其々一つのリング積層部(軸方向に互いに積層化された複数の永久磁石リング92,94からなる)を有している。その際、マグネットリング92,94は半径方向の支承部間隙96を形成しながら対向し合っている。
【0076】
マグネット支承部86内部には、緊急または安全用支承部98が設けられている。これは、潤滑されないローラー支承部として形成されており、そして真空ポンプの通常運転中は、非接触で空転し、そしてローターがステーターに対して過剰に偏向すると初めて係合するに至り、これによってローターに対する半径方向のストッパーを形成する。このストッパーが、ローター側の構造がステーター側の構造と衝突するのを防止する。
【0077】
回転支承部84は、例えば潤滑媒体のような作動媒体を供給される。その際、図3に示されるように、回転支承部84の領域で、ローター軸12には、円すい形のスプラッシュナット(独語:Spritzmutter)100が設けられていることが可能である。これは、例えば潤滑媒体のような作動媒体を含ませられている複数の吸収性のディスク102を有する作動媒体貯蔵部の少なくとも一つのスキマー(独語:Abstreifer)と接触している。運転中、作動媒体は毛細管効果によって作動媒体貯蔵部からスキマーを介して回転するスプラッシュナット100へと伝達される。そして、遠心力の結果、スプラッシュナット100にそって、スプラッシュナット100の大きくなる外直径の方向へ、回転支承部84に向かって搬送される。そこで例えば潤滑機能を発揮する。
【0078】
本発明に係るシステム10の制御装置30は、この真空ポンプの制御ユニット106内に統合されているか、またはこれから独立して設けられていることが可能である。発明に係るシステム2を介して作動媒体18を供給される支承装置84は、真空ポンプのハウジング72内に配置されている。このハウジング内は負圧となっている。真空ポンプのこのハウジング72の内部には、特に作動媒体リザーバー20と発明に係るシステム10の密閉された容器22が設けられていることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
10 システム
12 ローター軸
14 回転軸
16 ローターディスク
18 作動媒体
20 作動媒体リザーバー
22 密閉された容器
24 搬送チャネル
26 支承部側の開口領域
28 装置
30 制御装置
32 スロットルバルブ
36 スペーサーリング
50 吸い込み領域
58 矢印
68 インレットフランジ
70 ポンプインレット
72 ハウジング
74 ローターハブ
76,78 ホルベックロータースリーブ
80,82 ホルベックステータースリーブ
84 支承装置、回転支承部
86 永久磁石支承部
88 ローター側の支承半部
90 ステーター側の支承半部
92,94 永久磁石リング
96 半径方向の間隙
98 安全用支承部
100 スプラッシュナット
102 吸収性のディスク
104 駆動モーター
106 制御ユニット
108 メンブラン
110 スロットルバルブ
112 逆止弁
114 逆止弁
I 第一のバルブ装置
II 第二のバルブ装置
供給される不活性ガス/周囲空気の圧力
ハウジングの内部の圧力
図1
図2
図3