特許第6092285号(P6092285)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092285
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】無機スラリー脱水促進剤
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/01 20060101AFI20170227BHJP
   C02F 11/14 20060101ALI20170227BHJP
   D21C 11/04 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   B01D21/01 106
   C02F11/14 DZAB
   D21C11/04 C
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-64224(P2015-64224)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-193970(P2015-193970A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2015年12月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-66408(P2014-66408)
(32)【優先日】2014年3月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中野 孝之
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−3541(JP,A)
【文献】 特開2010−58072(JP,A)
【文献】 特開2002−266273(JP,A)
【文献】 特開平09−111682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D21/01
C02F1/52−1/56
11/00−11/20
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A)を含有する無機スラリー脱水促進剤。
1−O−〔(EO)k/(PO)m〕−(PO)n−(EO)r−H (1)
[一般式(1)中、R1は炭素数6〜22のアルキル基又は炭素数6〜22のアルケニル
基;EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基;m及びnはそれぞれプロピレンオキシ基の平均付加モル数を表し、k及びrはそれぞれエチレンオキシ基の平均付加モル数を表し、k、m、n及びrはそれぞれ1〜20の数;〔(EO)k/(PO)m〕はEO及びPOがランダムに付加した基を表す。]
【請求項2】
さらに水を含有し、無機スラリー脱水促進剤の重量を基準として、水の含有量が1〜10重量%である請求項1に記載の無機スラリー脱水促進剤。
【請求項3】
さらに酢酸カリウムを含有し、無機スラリー脱水促進剤の重量を基準として、酢酸カリウムの含有量が0.01〜0.50重量%である請求項1又は2に記載の無機スラリー脱水促進剤。
【請求項4】
一般式(1)において、kとmとの比{k/m}が0.4〜5.0である請求項1〜3のいずれかに記載の無機スラリー脱水促進剤。
【請求項5】
一般式(1)において、nとrとの比{n/r}が0.3〜5.0である請求項1〜4のいずれかに記載の無機スラリー脱水促進剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機スラリー脱水促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル化合物は、クラフトパルプ製造時に発生する緑液の処理において、無機スラリー(特に炭酸カルシウム)をフィルターで分離する際に効率よく回収するための脱水促進剤として使用されている(例えば特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−211020号公報
【特許文献2】特開2008−36541号公報
【特許文献3】特開2010−58072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の脱水促進剤を添加すると、無機スラリーを分離する際の真空乾燥工程において発泡を起こし、乾燥工程の効率を著しく落とすなどの問題がある。
本発明は、無機スラリーの脱水性が良好であり、真空乾燥時の発泡が抑えられる無機スラリー脱水促進剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は下記一般式(1)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A)を含有する無機スラリー脱水促進剤である。
1−O−〔(EO)k/(PO)m〕−(PO)n−(EO)r−H (1)
[一般式(1)中、R1は炭素数6〜22のアルキル基又は炭素数6〜22のアルケニル
基;EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基;m及びnはそれぞれプロピレンオキシ基の平均付加モル数を表し、k及びrはそれぞれエチレンオキシ基の平均付加モル数を表し、k、m、n及びrはそれぞれ1〜20の数;〔(EO)k/(PO)m〕はEO及びPOがランダムに付加した基を表す。]
【発明の効果】
【0006】
本発明の無機スラリー脱水促進剤は、無機スラリーの脱水性が良好であり、真空乾燥時の発泡が抑えられるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、下記一般式(1)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A)を含有する無機スラリー脱水促進剤である。
【0008】
1−O−〔(EO)k/(PO)m〕−(PO)n−(EO)r−H (1)
[一般式(1)中、R1は炭素数6〜22のアルキル基又は炭素数6〜22のアルケニル
基;EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基;m及びnはそれぞれプロピレンオキシ基の平均付加モル数を表し、k及びrはそれぞれエチレンオキシ基の平均付加モル数を表し、k、m、n及びrはそれぞれ1〜20の数;〔(EO)k/(PO)m〕はEO及びPOがランダムに付加した基を表す。]
【0009】
上記一般式(1)において、R1は炭素数6〜22のアルキル基又は炭素数6〜22の
アルケニル基を表す。
炭素数6〜22のアルキル基としては、直鎖又は分岐のアルキル基が含まれ、具体的には、ヘキシル基、ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基及びドコシル基等が挙げられる。
炭素数6〜22のアルケニル基としては、ヘキセニル基、デセニル基、ドデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、イソデセニル基、イソドデセニル基、イソオクタデセニル基、イソエイコセニル基及びイソドコセニル基等が挙げられる。
1は、1種でもよく、2種以上を併用したものでもよい。
【0010】
1としては、無機スラリーの脱水性及び真空乾燥時の発泡の抑制の観点から、炭素数6〜22のアルキル基及び炭素数6〜22のアルケニル基が好ましく、さらに好ましくは炭素数8〜18のアルキル基及び炭素数8〜18のアルケニル基であり、特に好ましくは炭素数10〜16のアルキル基及び炭素数10〜16のアルケニル基である。
また、R1が23以上の場合、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A)の無機スラリー中の水に対する溶解性が著しく悪くなる。
【0011】
上記一般式(1)において、EOはエチレンオキシ基、POはプロピレンオキシ基を表す。
以下において、エチレンオキシ基はEO、プロピレンオキシ基はPOと略記する。
【0012】
上記一般式(1)において、m及びnはそれぞれPOの平均付加モル数を表し、k及びrはそれぞれEOの平均付加モル数を表し、k、m、n及びrはそれぞれ1〜20の数を表す。
mとして、真空乾燥時の発泡抑制の観点から、1〜20であり、好ましくは1〜10であり、特に好ましくは1〜5である。
nとして、無機スラリーの脱水速度の観点から、1〜20であり、好ましくは1〜10であり、特に好ましくは1〜5である。
kとして、真空乾燥時の発泡抑制の観点から、1〜20であり、好ましくは1〜10であり、特に好ましくは1〜5である。
rとして、無機スラリーの脱水速度の観点から、1〜20であり、好ましくは1〜10であり、特に好ましくは1〜5である。
【0013】
上記一般式(1)において、〔(EO)k/(PO)m〕はEO及びPOがランダムに付加した基を表す。
kとmとの比{k/m}は、真空乾燥時の発泡抑制の観点から、0.4〜5.0が好ましく、さらに好ましくは0.8〜4.0であり、特に好ましくは1.2〜3.0である。
【0014】
上記一般式(1)において、nとrとの比{n/r}は、無機スラリーの脱水速度の観点から、0.3〜5.0が好ましく、さらに好ましくは0.5〜4.0であり、特に好ましくは0.6〜3.0である。
【0015】
本発明におけるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A)は、以下の製造方法等で製造することができる。
炭素数6〜22の脂肪族アルコール(a)を加圧反応容器に仕込み、アルカリ触媒(c)の存在下に、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを吹き込み、常圧又は加圧下で反応を行なった後、プロピレンオキサイドを吹き込み、常圧又は加圧下で反応を行った後、エチレンオキサイドを吹き込み、常圧又は加圧下で反応を行う。
反応終了後、酸(d)を用いてアルカリ触媒の中和を行う。
【0016】
反応温度は、反応速度ならびに副生成物発生防止の観点から、110〜130℃が好ましい。
各反応の反応時間は、アルキレンオキサイドが十分に反応すること並びに加熱による副反応防止の観点から、5〜20時間が好ましい。
反応時の圧力は、安全性の観点から、0.1〜0.4MPaが好ましい。
【0017】
炭素数6〜22の脂肪族アルコール(a)としては、炭素数6〜22のアルキルアルコール及び炭素数6〜22のアルケニルアルコールが含まれる。
炭素数6〜22のアルキルアルコールとしては、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、ドデシルアルコール、トリデシルアルコール、テトラデシルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクタデシルアルコール、エイコシルアルコール及びドコシルアルコール等が挙げられる。
炭素数6〜22のアルケニルアルコールとしては、ヘキセニルアルコール、デセニルアルコール、ドデセニルアルコール、ヘキサデセニルアルコール、オクタデセニルアルコール、エイコセニルアルコール、ドコセニルアルコール、イソデセニルアルコール、イソドデセニルアルコール、イソオクタデセニルアルコール、イソエイコセニルアルコール及びイソドコセニルアルコール等が挙げられる。
(a)としては、無機スラリーの脱水性及び真空乾燥時の発泡の抑制の観点から、炭素数8〜18の脂肪族アルコールが好ましく、さらに好ましくは炭素数10〜16の脂肪族アルコールである。
【0018】
アルカリ触媒(c)としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム及びセシウム等)の水酸化物又はアルコキシド(メトキシド、エトキシド、プロポキシド及びブトキシド等)、アルカリ土類金属(マグネシウム、カルシウム及びバリウム等)の水酸化物又はアルコキシド、3級アミン(トリエチルアミン、トリメチルアミン等)及び4級アンモニウム塩(テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド等)が挙げられる。
(c)のうち、副生物発生防止の観点から、好ましくは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム及び水酸化セシウムである。
アルカリ触媒(c)の使用量としては、反応速度と経済性の観点から、アルキレンオキサイド付加物(a)及びプロピレンオキサイドの合計重量に基づいて、0.0001〜1重量%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.5重量%である。
アルカリ触媒(c)としては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
酸(d)としては、特に限定されるものではないが、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸及び酢酸等が挙げられる。
酸(d)のうち、設備の腐食防止の観点から、リン酸及び酢酸が好ましい。
【0020】
本発明の無機スラリー脱水促進剤には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A)以外に、水及び酢酸カリウムを含有してもよい。
無機スラリー脱水促進剤中の水の含有量は、無機スラリー脱水促進剤の無機スラリーへの分散性の観点から、また消防上の安全性の観点からも無機スラリー脱水促進剤の重量を基準として1〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは1〜5重量%である。
酢酸カリウムの含有量は、無機スラリー脱水促進剤の経時安定性の観点から、無機スラリー脱水促進剤の重量を基準として、0.05〜0.40重量%が好ましく、さらに好ましくは0.10〜0.30重量%である。
【0021】
本発明の無機スラリー脱水促進剤の粘度(25℃、BL型粘度計)は、無機スラリー脱水促進剤の無機スラリーへの分散性の観点から、30〜200mPa・sが好ましく、さらに好ましくは50〜100mPa・sである。
【0022】
本発明の無機スラリー脱水促進剤のpH(1重量%水溶液)は、無機スラリー脱水促進剤の経時安定性の観点から、5.0〜7.5が好ましく、さらに好ましくは5.5〜7.0である。
【0023】
本発明の無機スラリー脱水促進剤の曇点は、真空乾燥時の発泡抑制及び無機スラリーの脱水速度の観点から、25〜50℃が好ましく、さらに好ましくは30〜40℃である。
【0024】
本発明の無機スラリー脱水促進剤は、クラフトパルプ製造において、苛性化工程で生じる緑液を処理したときに得られる無機スラリー(特に、炭酸カルシウムスラリー)の含水率を低減させる無機スラリー脱水促進剤として使用できる。
【0025】
本発明の無機スラリー脱水促進剤の添加量は、苛性化工程の運転状況、無機スラリーの固形分濃度及び無機スラリーの含水率より適宜決定すれば良いが、真空乾燥時の発泡抑制および無機スラリーの脱水速度の観点から、無機スラリーの重量に対して、50〜500ppmが好ましく、さらに好ましくは100〜250ppmである。
【0026】
本発明の無機スラリー脱水促進剤を添加する方法には、薬液ポンプを使用して、原液で添加する、あるいは水や適当な有機溶剤、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールジメチルエーテル、メチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等のアルコール類、ジオキサン、エチレンカーボネート等に溶解して添加してもよい。
【0027】
本発明の効果が損なわれない範囲において、本発明の無機スラリー脱水促進剤に従来から使用されてきた脱水促進剤、例えば、カチオン性ポリマー、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン縮合物、直鎖アルコールのエチレンオキサイド付加物等を併用しても良い。
【0028】
本発明の無機スラリー脱水促進剤は、無機スラリーの脱水性が良好であり、真空乾燥時の発泡が抑えられることから、クラフトパルプ製造時に苛性化工程で発生する緑液の処理で得られる無機スラリー(特に、炭酸カルシウム)をフィルターで分離し、含水率を低減させる無機スラリー脱水促進剤として有用である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により、本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、以下において、部は重量部を示す。
【0030】
<実施例1>
内容量が2000mlである撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール[コノール20P;新日本理化(株)製]217部と水酸化カリウム0.5部[ナカライテスク(株)製]を仕込み、反応槽内の温度を90℃に調整した。その後、0.099MPa以下の減圧下で脱水し、水分を0.03%以下にした。この後、反応槽内の温度を140℃に調整した。次いで、エチレンオキサイド494部とプロピレンオキサイド130部を混合した後容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。引き続きプロピレンオキサイド65部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド74部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。この後、80℃に冷却し、酢酸0.4部〔ナカライテスク(株)製〕で触媒を中和し、イオン交換水20部を投入した。
一連の操作により、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:10、m:2、n:1、r:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A−1)を含む無機スラリー脱水促進剤(1)を得た。
【0031】
<実施例2>
実施例1において、「ラウリルアルコール217部」に代えて「ラウリルアルコール210部」とし、「エチレンオキサイド494部とプロピレンオキサイド130部を混合」に代えて「エチレンオキサイド383部とプロピレンオキサイド252部を混合」とし、「引き続きプロピレンオキサイド65部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド74部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌」に代えて「引き続きプロピレンオキサイド63部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド72部を容器内に滴下」とする以外は同様にして実施し、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:8、m:4、n:1、r:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A−2)を含む無機スラリー脱水促進剤(2)を得た。
【0032】
<実施例3>
実施例1において、「ラウリルアルコール217部」に代えて「ラウリルアルコール177部」とし、「エチレンオキサイド494部とプロピレンオキサイド130部を混合」に代えて「エチレンオキサイド161部とプロピレンオキサイド530部を混合」とし、「引き続きプロピレンオキサイド65部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド74部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌」に代えて「引き続きプロピレンオキサイド53部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド60部を容器内に滴下」とする以外は同様にして実施し、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:4、m:10、n:1、r:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A−3)を含む無機スラリー脱水促進剤(3)を得た。
【0033】
<実施例4>
実施例1において、「ラウリルアルコール217部」に代えて「ラウリルアルコール311部」とし、「エチレンオキサイド494部とプロピレンオキサイド130部を混合」に代えて「エチレンオキサイド283部とプロピレンオキサイド187部を混合」とし、「引き続きプロピレンオキサイド65部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド74部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌」に代えて「引き続きプロピレンオキサイド93部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド106部を容器内に滴下」とする以外は同様にして実施し、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:4、m:2、n:1、r:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A−4)を含む無機スラリー脱水促進剤(4)を得た。
【0034】
<実施例5>
実施例1において、「ラウリルアルコール217部」に代えて「ラウリルアルコール311部」とし、「エチレンオキサイド494部とプロピレンオキサイド130部を混合」に代えて「エチレンオキサイド186部とプロピレンオキサイド123部を混合」とし、「引き続きプロピレンオキサイド65部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド74部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌」に代えて「引き続きプロピレンオキサイド123部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド140部を容器内に滴下」とする以外は同様にして実施し、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:2、m:1、n:1、r:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A−5)を含む無機スラリー脱水促進剤(5)を得た。
【0035】
<実施例6>
実施例1において、「ラウリルアルコール217部」に代えて「ラウリルアルコール248部」とし、「エチレンオキサイド494部とプロピレンオキサイド130部を混合」に代えて「エチレンオキサイド226部とプロピレンオキサイド149部を混合」とし、「引き続きプロピレンオキサイド65部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド74部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌」に代えて「引き続きプロピレンオキサイド74部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド282部を容器内に滴下」とする以外は同様にして実施し、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:4、m:2、n:1、r:5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A−6)を含む無機スラリー脱水促進剤(6)を得た。
【0036】
<実施例7>
実施例1において、「ラウリルアルコール217部」に代えて「ラウリルアルコール225部」とし、「エチレンオキサイド494部とプロピレンオキサイド130部を混合」に代えて「エチレンオキサイド205部とプロピレンオキサイド135部を混合」とし、「引き続きプロピレンオキサイド65部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド74部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌」に代えて「引き続きプロピレンオキサイド338部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド77部を容器内に滴下」とする以外は同様にして実施し、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:4、m:2、n:5、r:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A−7)を含む無機スラリー脱水促進剤(7)を得た。
【0037】
<実施例8>
実施例1において、酢酸0.4部を投入する工程を省略する以外は同様にして実施し、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:4、m:2、n:5、r:1.5である
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(B−7)を含む無機スラリー脱水促進剤(8)を得た。
【0038】
<実施例9>
実施例1において、「酢酸0.4部」に代えて「酢酸1.0部」にすること以外は同様にして実施し、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:4、m:2、n:5、r
:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(B−8)を含む無機スラリー脱水促進剤(9)を得た。
【0039】
<実施例10>
実施例1において、「ラウリルアルコール217部」に代えて「ヘキシルアルコール133部」とし、「エチレンオキサイド494部とプロピレンオキサイド130部を混合」に代えて「エチレンオキサイド230部とプロピレンオキサイド152部を混合」とし、「引き続きプロピレンオキサイド65部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド74部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌」に代えて「引き続きプロピレンオキサイド379部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド86部を容器内に滴下」とする以外は同様にして実施し、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:4、m:2、n:5、r:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A−8)を含む無機スラリー脱水促進剤(10)を得た。
【0040】
<実施例11>
実施例1において、「ラウリルアルコール217部」に代えて「ベヘニルアルコール328部」とし、「エチレンオキサイド494部とプロピレンオキサイド130部を混合」に代えて「エチレンオキサイド177部とプロピレンオキサイド117部を混合」とし、「引き続きプロピレンオキサイド65部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド74部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌」に代えて「引き続きプロピレンオキサイド292部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド66部を容器内に滴下」とする以外は同様にして実施し、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:4、m:2、n:5、r:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A−9)を含む無機スラリー脱水促進剤(11)を得た。
【0041】
<比較例1>
内容量が2000mlである撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール[コノール20P;新日本理化(株)製]391部と水酸化カリウム0.5部[ナカライテスク(株)製]を仕込み、反応槽内の温度を90℃に調整する。その後、0.099MPa以下の減圧下で脱水し、水分を0.03%以下にした。この後、反応槽内の温度を140℃に調整する。次いで、エチレンオキサイド355部とプロピレンオキサイド234部を混合した後容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。この後、80℃に冷却し、酢酸0.4部〔ナカライテスク(株)製〕で触媒を中和し、イオン交換水20部を投入した。
一連の操作により、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:4、m:2、n:
0、r:0であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A’−1)を含む無機スラリー脱水促進剤(1’)を得た。
【0042】
<比較例2>
内容量が2000mlである撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール[コノール20P;新日本理化(株)製]344部と水酸化カリウム0.5部[ナカライテスク(株)製]を仕込み、反応槽内の温度を90℃に調整する。その後、0.099MPa以下の減圧下で脱水し、水分を0.03%以下にした。この後、反応槽内の温度を140℃に調整する。次いで、エチレンオキサイド313部とプロピレンオキサイド206部を混合した後容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。引き続きエチレンオキサイド117部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。この後、80℃に冷却し、酢酸0.4部〔ナカライテスク(株)製〕で触媒を中和し、イオン交換水20部を投入した。
一連の操作により、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:4、m:2、n:
0、r:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A’−2)を含む無機スラリー脱水促進剤(2’)を得た。
【0043】
<比較例3>
内容量が2000mlである撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール[コノール20P;新日本理化(株)製]349部と水酸化カリウム0.5部[ナカライテスク(株)製]を仕込み、反応槽内の温度を90℃に調整する。その後、0.099MPa以下の減圧下で脱水し、水分を0.03%以下にした。この後、反応槽内の温度を140℃に調整する。次いで、エチレンオキサイド317部とプロピレンオキサイド209部を混合した後容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。引き続きプロピレンオキサイド105部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。この後、80℃に冷却し、酢酸0.4部〔ナカライテスク(株)製〕で触媒を中和し、イオン交換水20部を投入した。
一連の操作により、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:4、m:2、n:
1、r:0であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A’−3)を含む無機スラリー脱水促進剤(3’)を得た。
【0044】
<比較例4>
内容量が2000mlである撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール[コノール20P;新日本理化(株)製]311部と水酸化カリウム0.5部[ナカライテスク(株)製]を仕込み、反応槽内の温度を90℃に調整する。その後、0.099MPa以下の減圧下で脱水し、水分を0.03%以下にした。この後、反応槽内の温度を140℃に調整する。次いで、エチレンオキサイド283部とプロピレンオキサイド187部を混合した後容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。引き続きエチレンオキサイド106部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後プロピレンオキサイド93部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。この後、80℃に冷却し、酢酸0.4部〔ナカライテスク(株)製〕で触媒を中和し、イオン交換水20部を投入した。
一連の操作により、下記一般式(2)において、R1:ドデシル基、k:4、m:2、r:1.5、n:1であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A’−4)を含む無機スラリー脱水促進剤(4’)を得た。一般式(2)は一般式(1)中のPO、EOブロック付加部分の順序が異なるものである。
1−O−〔(EO)k/(PO)m〕−(EO)r−(PO)n−H (2)
【0045】
<比較例5>
内容量が2000mlである撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール[コノール20P;新日本理化(株)製]311部と水酸化カリウム0.5部[ナカライテスク(株)製]を仕込み、反応槽内の温度を90℃に調整する。その後、0.099MPa以下の減圧下で脱水し、水分を0.03%以下にした。この後、反応槽内の温度を140℃に調整する。次いで、エチレンオキサイド283部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。次に、プロピレンオキサイド280部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。引き続きエチレンオキサイド106部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。この後、80℃に冷却し、酢酸0.4部〔ナカライテスク社製〕で触媒を中和し、イオン交換水20部を投入した。
一連の操作により、下記一般式(3)において、R1:ドデシル基、k:4、m:3、r:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A’−5)を含む無機スラリー脱水促進剤(5’)を得た。一般式(3)は一般式(1)中のPO、EOランダム付加部分がEOブロックに置き換わったものである。
1−O−(EO)k−(PO)m−(EO)r−H (3)
【0046】
<比較例6>
内容量が2000mlである撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール[コノール20P;新日本理化(株)製]311部と水酸化カリウム0.5部[ナカライテスク(株)製]を仕込み、反応槽内の温度を90℃に調整する。その後、0.099MPa以下の減圧下で脱水し、水分を0.03%以下にした。この後、反応槽内の温度を140℃に調整する。次いで、エチレンオキサイド283部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。引き続きプロピレンオキサイド93部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド106部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。この後、80℃に冷却し、酢酸0.4部〔ナカライテスク(株)製〕で触媒を中和し、イオン交換水20部を投入した。
一連の操作により、上記一般式(3)において、R1:ドデシル基、k:4、m:1、
r:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A’−6)を含む無機スラリー脱水促進剤(6’)を得た。
【0047】
<比較例7>
内容量が2000mlである撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、ラウリルアルコール[コノール20P;新日本理化(株)製]311部と水酸化カリウム0.5部[ナカライテスク(株)製]を仕込み、反応槽内の温度を90℃に調整する。その後、0.099MPa以下の減圧下で脱水し、水分を0.03%以下にした。この後、反応槽内の温度を140℃に調整する。次いで、プロピレンオキサイド283部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。次に、エチレンオキサイド280部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。引き続きプロピレンオキサイド106部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。さらに、エチレンオキサイド106部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。この後、80℃に冷却し、酢酸0.4部〔ナカライテスク社製〕で触媒を中和し、イオン交換水20部を投入した。
一連の操作により、下記一般式(4)において、R1:ドデシル基、k:4、m:2、
n:1、r:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A’−7)を含む無機スラリー脱水促進剤(7’)を得た。一般式(4)は一般式(1)中のPO、EOランダム付加部分がPO、EOブロックに置き換わったものである。
1−O−(PO)m−(EO)k−(PO)−(EO)r−H (4)
【0048】
<比較例8>
内容量が2000mlである撹拌装置、温度制御装置付きのステンレス製オートクレーブに、1−ペンタノール[和光純薬工業(株)製]117部と水酸化カリウム0.5部[ナカライテスク(株)製]を仕込み、反応槽内の温度を90℃に調整する。その後、0.099MPa以下の減圧下で脱水し、水分を0.03%以下にした。この後、反応槽内の温度を140℃に調整する。次いで、エチレンオキサイド234部とプロピレンオキサイド154部を混合した後容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。引き続きプロピレンオキサイド386部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌し、その後エチレンオキサイド88部を容器内に滴下し、140℃で2時間攪拌した。この後、80℃に冷却し、酢酸0.4部〔ナカライテスク(株)製〕で触媒を中和し、イオン交換水20部を投入した。
一連の操作により、一般式(1)において、R1:ドデシル基、k:4、m:2、n:
5、r:1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A’−8)を含む無機スラリー脱水促進剤(8’)を得た。
【0049】
実施例1〜11及び比較例1〜8で得た無機スラリー脱水促進剤(1)〜(11)及び(1’)〜(8 ’)中のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、水及び酢酸カリウムの含有量を下記測定法で測定した。結果を表1に示す。
【0050】
<無機スラリー脱水促進剤の水分含有量の測定方法>
以下の条件で脱水促進剤の水分含有量を測定した。
水分含有量を測定する装置として、カールフィッシャー水分計(容量滴定方式)使用した。カールフィッシャー水分計は、京都電子工業社製:カールフィッシャー水分計(MKA−610)を用いた。
希釈溶剤としてメタノールを用いて、測定試料約1gを有効数字4桁まで精秤し、メタノール中に投入し、1分間攪拌した。攪拌後、適定によって求められた水分量を読み取り、これを無機スラリー中脱水促進剤中の水分含有量とした。
【0051】
<無機スラリー脱水促進剤の酢酸カリウム含有量の測定方法>
以下の条件で脱水促進剤の酢酸カリウム含有量を測定した。
酢酸カリウム含有量を測定する装置として、カリウム用中空陰極ランプをセットするフレーム式原子吸光分析装置を使用した。フレーム式原子吸光分析装置は、島津製作所製:原子吸光分光光度計AA−7000を用いた。
測定試料約2gを有効数字4桁まで精秤し、希釈溶剤としてイオン交換水(電気伝導度が 0.2μS/cm以下のもの)を用いて、50mlのイオン交換水にて希釈した。
また、検量線作成用の標準溶液は酢酸カリウムをイオン交換水にて希釈し、100ppm、200ppm、400ppmのものを作成した。作成した水溶液を原子吸光分析にかけ、下記の式にて酢酸カリウム含量を求めた。
酢酸カリウム含量(%)=(希釈溶液中の酢酸カリウム含量(ppm))/(測りとったサンプルの重量(g))/200
【0052】
<無機スラリー脱水促進剤のポリオキシアルキレンアルキルエーテルの測定方法>
以下の計算式で無機スラリー脱水促進剤中のポリオキシアルキレンアルキルエーテル含有量を計算した。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル含有量(重量%)
=100−(酢酸カリウム含有量(重量%))−(水分(重量%))
【0053】
実施例1〜11及び比較例1〜8で得た無機スラリー脱水促進剤(1)〜(11)及び(1’)〜(8’)の粘度(25℃、BL型粘度計)、pH(1重量%水溶液)及び曇点を測定した。結果を表1に示す。
【0054】
<曇点>
曇点は、試料の無機スラリー脱水促進剤2部を、水98部に溶解して2重量%水溶液としたものを試験液として用いた。
(1)30cm3の試験管に試験液を10cm3入れた。
(2)25℃の温浴槽に試験管を入れ、ガラス棒状の温度計を用いて手動で試験液を攪拌しながら、試験液の温度を1℃/5秒の速度で上げた。
(3)攪拌しても濁る状態になったところでの温度を読み取った。
(4)試験管を温浴槽から取り出し、25℃の雰囲気下で、攪拌棒で試験液を攪拌しながら、温度を徐々に下げた。
(5)上記(2)〜(4)を2回繰り返し、(3)で読み取った温度の平均値を曇点とした。
【0055】
【表1】
【0056】
<無機スラリーの脱水性の評価>
某製紙会社の苛性化工程から排出された炭酸カルシウムスラリー(固形分濃度25重量%)500mlを60℃〜70℃にした後、1Lビーカーに入れた。この炭酸カルシウムスラリーに試料の無機スラリー脱水促進剤を炭酸カルシウムスラリーに対してそれぞれ100ppmとなるように添加した後に、攪拌羽を用いて100rpmで3分間攪拌を行った。このスラリーをリーフテスター((株)宮本製作所製)を用いて600mmHgで吸引ろ過した。60秒間吸引した後、脱水ろ過後の石灰泥ケーキを全て取出し重量(Ww)を測定した。その後、105℃の乾燥機内で8時間乾燥し、放冷後重量(Wd)を測定し石灰泥ケーキ中の含水率を次式より求めた。結果を表1に示す。
石灰泥ケーキの含水率(%)=(Ww−Wd)/Ww×100
【0057】
<真空乾燥時の発泡性の評価>
某製紙会社の苛性化工程から排出された炭酸カルシウムスラリー(固形分濃度25重量%)を、500mlの共栓付き試験管に300mlを入れ加温し、試料の無機スラリー脱水促進剤をマイクロシリンジにて石灰泥に対して200ppmとなるようにそれぞれ添加し、上下を5回ゆっくり転倒させた後に静置し、30秒後の発泡による液面からの泡の高さを測定した。結果を表1に示す。
【0058】
<無機スラリー脱水促進剤の経時安定性の評価>
無機スラリー脱水促進剤の経時安定性は、以下の方法で評価した。
100mlのガラス製容器に試料の無機スラリー脱水促進剤をそれぞれ90g入れ、密栓をしたのち、40±1℃のインキュベーター中に入れて、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月経過後の各時点てのpHを測定し、pHの変化の大小によって経時安定性を評価した。pHの測定方法は上述の通りである。結果を表1に示す。
【0059】
表1の結果から、実施例1〜11の脱水促進剤(1)〜(11)は、比較例1〜8の脱水促進剤(1’)〜(8’)と比較して、石灰泥の含水率が低いことから、無機スラリーの脱水性が高いことがわかる。また、泡の高さが低く、真空乾燥時の発泡性が改善されることが分かる。
これはアルコールに対しエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを始めにランダム付加することによって石灰泥に対して脱水促進剤が効果的に吸着し、この後プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドがこの順番にブロック付加することによって、余分な水分を石灰泥から排出したことによる効果であると推察される。
また、酢酸カリウムを含有している実施例1〜7及び9〜11の脱水促進剤(1)〜(7)及び(9)〜(11)は、酢酸カリウムを含有していない実施例8の脱水促進剤(8)と比較して、経時安定性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の無機スラリー脱水促進剤は、無機スラリーの脱水性が良好であり、真空乾燥時の発泡が抑えられることから、クラフトパルプ製造時に苛性化工程で発生する緑液の処理で得られる無機スラリー(特に、炭酸カルシウム)をフィルターで分離し、含水率を低減させる無機スラリー脱水促進剤として有用である。