【文献】
Viktoria WEBER,Neutral Styrene DivinlbenzenCopolymer for Adsorption of Toxins in liver Failure,Biomacromolecules,米国,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2008年 3月18日,Bd.9,No.4,18,1322-1328
【文献】
Vincenzo CANTALUPPI,Protective effect of resin adsorption on septic plasma-induced tubular injury,CRITICAL CARE,英国,BIOMED CDNTRAL LTD.,2010年 1月11日,Bd.14,No.1,R4
【文献】
Dieter FALKENHAGEN,Fluidized Bed Adsorbent Systems for EXtracorporeal Liver Support,Thearpeutic Apheresis and Dialysis,International Society for Apheresis,2006年 4月 1日,Bd.10,No.2,1,154-159
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エンドトキシン結合リポペプチドは、ポリミキシンB、コリスチン、およびそれらのプロドラッグから成る群から選択されるポリミキシンであることを特徴とする、請求項1に記載の体外灌流装置。
前記枯渇剤(107、207、607)は前記エンドトキシン結合リポペプチドを供給するための分注手段(107、207、607)を含み、前記第1担体(107a、207a、607a)の表面は、前記エンドトキシン結合リポペプチドから形成される吸着性コーティングを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の体外灌流装置(100、200、600)。
前記エンドトキシン結合リポペプチドを供給するための分注手段(508)は前記枯渇剤(507)の下流で前記濾液回路(505)に配置され、前記分注手段(508)は中性の疎水性表面を有する第2担体(508a)を含み、前記第2担体(508a)の表面は前記エンドトキシン結合リポペプチドから形成された吸着性コーティングを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の体外灌流装置(500)。
前記第1または第2担体(107a、207a、508a、607a)の表面に吸着された前記エンドトキシン結合リポペプチドは、リポペプチドが供給されたときに0.01μg/mlから0.8μg/mlのリポペプチド血清中濃度をもたらす量が存在することを特徴とする、請求項3または4に記載の体外灌流装置(100、200、500、600)。
前記エンドトキシン結合リポペプチドを供給するための分注手段(308、408)は、前記体外血液回路(302、402)に関連するリポペプチド供給ポイント(313、413)で前記エンドトキシン結合リポペプチドを前記体外血液回路(302、402)に供給するための投与装置(308、408)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の体外灌流装置(300、400)。
前記リポペプチド供給ポイント(313、413)は前記フィルタ(304、404)の下流で前記体外血液回路(302、402)に配置されることを特徴とする、請求項7に記載の体外灌流装置(300、400)。
前記フィルタの下流で前記体外血液回路に透析器が配置され、前記リポペプチド供給ポイントは前記透析器の下流で体外血液回路に配置されることを特徴とする、請求項8に記載の体外灌流装置。
前記エンドトキシン結合リポペプチドの濃度を測定するための測定手段(314、414)が前記フィルタ(304、404)または前記透析器の下流および前記リポペプチド供給ポイント(313、413)の上流に配置されることを特徴とする、請求項8または9に記載の体外灌流装置(300、400)。
前記灌流装置の前記コントローラ(310、410)は、前記体外血液回路(302、402)内を運ばれる血液に前記リポペプチドが投与されるときに、身体のリポペプチドクリアランス、前記枯渇剤(307、407)のリポペプチドクリアランス、および/または前記透析器のリポペプチドクリアランスを考慮するように構成されることを特徴とする、請求項7ないし10の一項に記載の体外灌流装置(300、400)。
前記エンドトキシン結合リポペプチドを供給するための分注手段は、前記フィルタ(704)の下流で前記体外血液回路(702)に配置された透析器(708)を含み、前記透析器は、前記透析器(708)を介して運ばれる透析液を用いて前記エンドトキシン結合リポペプチドを前記体外血液回路(702)に供給するように構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の体外灌流装置(700)。
前記第1および第2担体(107a、207a、307a、407a、507a、508a、607a、707a)は中性の好ましくは合成ポリマから形成されることを特徴とする、請求項1ないし12の一項に記載の体外灌流装置。
前記ポリマは、架橋ポリスチレンポリマまたは架橋エチレンジビニルベンゼンポリマ、好ましくはポリスチレンジビニルベンゼンコポリマまたはエチルビニルベンゼンジビニルベンゼンコポリマから選択されることを特徴とする、請求項13に記載の体外灌流装置。
前記第1または第2担体(107a、207a、307a、407a、507a、508a、607a、707a)は多孔性であり、100nm以下の平均細孔径を有することを特徴とする、請求項1ないし14の一項に記載の体外灌流装置。
前記第1または第2担体(107a、207a、307a、407a、507a、508a、607a、707a)は20nm以下の平均細孔径または80から100nmの平均細孔径を有することを特徴とする、請求項15に記載の体外灌流装置。
前記第1または第2担体(107a、207a、307a、407a、507a、508a、607a、707a)は繊維様または粒子状であることを特徴とする、請求項1ないし16の一項に記載の体外灌流装置。
前記第1または第2担体(107a、207a、307a、407a、507a、508a、607a、707a)は、300μm以下の平均粒径を有する微粒子の形状を有することを特徴とする、請求項17に記載の体外灌流装置。
前記第1担体(107a、207a、307a、407a、507a、607a、707a)は、10から20nmまたは80から100nmの平均細孔径および75から150μmの平均粒径、好ましくは110から130μmの平均粒径、理想的には120μmの平均粒径を有することを特徴とする、請求項18に記載の体外灌流装置。
前記濾液回路(605)は前記フィルタ(604)に通じていること、および前記第1担体(607a)は微粒子の形状を有し、かつ前記濾液回路(605)はこれらの微粒子の懸濁液を含み、前記微粒子は20μm以下の平均粒径、好ましくは8μm以下の平均粒径、理想的には5μm以下の平均粒径を有することを特徴とする、請求項3、7、または12に記載の体外灌流装置(600)。
【背景技術】
【0002】
敗血症および関連する合併症は、ヒトの罹病率および死亡率に少なからず寄与している。多くの場合、高濃度のエンドトキシンが身体を冒し、全身作用をもたらすときに、敗血症はグラム陰性細菌の感染に起因すると考えることができる。
【0003】
エンドトキシンはグラム陰性細菌の細胞壁のリポ多糖類(LPS)であり、細胞溶解および細胞分裂によって放出される。実際、リポ多糖類はグラム陰性細菌の外側細胞膜の最も一般的脂質成分である。エンドトキシンは発熱物質であり、感染者は、例えば微生物中毒の経過中にエンドトキシンが体内に侵入すると、強い炎症反応および発熱で反応し、重要なメディエータとして、単核食細胞系の非制御活性化を引き起こす。内毒血症の結果、血液回路にエンドトキシンが蓄積し、免疫細胞の非制御活性化および凝固系の不均衡を導く。これは、とりわけ高熱、低血圧、および重篤な場合には多臓器不全を特徴とする敗血症を導くことがあり得る。敗血症は非常に深刻に受け止められる状態であり、重症敗血症または敗血症性ショックの患者の致死率は、状態の重症度によって約30〜60%である。グラム陰性細菌の感染の結果としての内毒血症は、全身性炎症反応(「全身性炎症反応症候群」、SIRS)、敗血症、重症敗血症、または敗血症性ショック、および結果的重症合併症の発症の最も一般的な原因の1つである。肝臓病患者または化学療法患者のような免疫防御が危険にさらされた患者は、細菌感染症にかかり易く、そうするとエンドトキシン中毒の症状を示す。
【0004】
内毒血症はまた、急性肝不全、または慢性肝不全による急性代償不全の場合にも発生することがあり、そうすると結果的に(生化学的観点から)敗血症に非常によく似た状態を発症する。例として、急性代償不全は慢性肝不全の患者に発生することがある。この状態で、正常な腸管内細菌叢に由来するエンドトキシンは腸管バリアを通過し、体内の炎症メディエータの放出を刺激し、したがって敗血症様状態を引き起こす。
【0005】
さらに、敗血症状態はグラム陽性細菌、ウィルス、および真菌によっても誘発されることがあり得る。
【0006】
上述の通り、免疫細胞の非制御活性化および凝固系の不均衡は、敗血症および他の重篤な状態の場合に発生することが一般的に知られている。単核食細胞系の非制御活性化は、炎症メディエータ、特にサイトカインの過剰な放出(サイトカインストームまたは高サイトカイン血症とも呼ばれる)を刺激する。サイトカインは敗血症および敗血症性ショックの場合の重要なメディエータである。腫瘍壊死因子(TNF‐α、しばしば単にTNFとも呼ばれる)およびインターロイキン‐1β(IL‐1β)は、最も重要な炎症促進性サイトカインの例として挙げることができる。さらなる重要な炎症促進性サイトカインはIL?6およびIL‐8を含む。最初に放出されるサイトカインTNF‐αは、メディエータカスケードを介して生物学的シグナル増幅を誘発し、こうして結果的に、生物学的均衡の重篤な破壊ならびにそれに続く循環虚脱および多臓器不全を含む生理学的変化を引き起こす。敗血症の臨床像は重要なメディエータTNF‐αの高い血中濃度に相関するだけでなく、例えば炎症促進期のIL‐1β、IL‐6、およびIL‐8のような、あるいは炎症促進性メディエータがサイトカインを含めて非常に低濃度になる抗炎症期の発生によるIL‐10またはIL‐13のような他のサイトカインの高い血中濃度にも相関する。さらに、慢性炎症性腸疾患、乾癬、およびリウマチ性関節炎のような他の重篤な状態もまた、過度のTNF‐αの放出に関連付けられる。
【0007】
標準として適用される集中治療に加えて、抗生物質または副腎皮質ステロイド、免疫グロブリン、および特に循環補助剤もまた、敗血症の治療に使用される。
【0008】
抗生物質治療の不利点は抗生物質耐性菌の蔓延である。さらに、エンドトキシンは抗生物質およびそれに随伴する細菌細胞の破壊によってますます放出され、それは次に炎症メディエータの分布の増大を導く。加えて、抗生物質の投与は往々にして、腸管内細菌叢の変化またはアレルギー反応のような副作用を伴う。主要因子TNF‐αに対して抗生物質を使用する試みは失敗した。なぜなら、この方法によりTNF濃度を零または非常に低い値に低下させることが、アネルギ状態を誘発したようであり、それは対照群に比べて高い死亡率を伴ったからである。LPSおよびTNF‐αに対する特定の抗生物質の治療用法は技術的に非常に複雑であり、したがって高コストを伴う。
【0009】
したがって、体外血液または血漿浄化システム(アフェレーシス療法)を用いて、以下でさらに詳述する通り、上述したサイトカイン、特にTNF‐α因子を除去して、これらのサイトカインの濃度を正常化し、こうしてアネルギ(抗炎症)期を回避するように試みる。エンドトキシンは、LPS吸着体として知られる物(例えばToraymyxin(登録商標)吸着材)によって除去することができ、こうして炎症促進サイトカインの放出が回避され、それは当然、抗炎症反応をも低減する。
【0010】
アフェレーシス法は体外で実行される方法であり、そこで病態生理学的に関連する血液および血漿成分、例えば(グリコール)タンパク質、ペプチド、脂質、リポタンパク質、およびリポ多糖類のような生体分子だけでなく、血液細胞および血漿もまた除去される。アフェレーシス法は一方では診断および治療目的に使用することができるが、他方では、健康な個人から充分な量の充分に高純度の特定の血液成分を得る非常に効果的な可能性をも構成する。特定の適応症では、これは非常に効果的な代替法であり、同時に、薬物による治療と比較して副作用がほとんど無いため、多大なる重要性はアフェレーシス療法に帰する。血漿アフェレーシス法の場合、血漿を完全に分離するかあるいは代用溶液に置換することができ、またはサイトカインLDL、エンドトキシン、もしくは免疫グロブリンのような特定の成分だけが吸着体によってそこから除去され、次いで血漿は再びドナー/患者に戻される。薬剤を使用する上述した治療戦略と比較して、アフェレーシス療法はまた、アフェレーシス装置の作動を停止させることによって、いつでも即座に治療が停止されるという利点をも有する。
【0011】
有毒かつ/または有害な血液成分を除去するためのアフェレーシス法および吸着体材料は先行技術で周知である。サイトカイン、特にTNF‐α、および/またはエンドトキシン(LPS)を特に吸着し、これらを血液または血漿のような体液から除去する吸着体材料もまた公知である。
【0012】
米国特許公開US 2001/0070424 A1は、直径が25から200nmの少なくとも1つの輸送細孔および直径が10から25nmの有効細孔をも有する、多孔性ポリマに基づく吸着体材料を開示している。とりわけ、ポリマは非イオン性樹脂(中性樹脂)とすることもできる。吸着体はタンパク質分子、特にサイトカインおよびβ2ミクログロブリンを除去するために使用される。
【0013】
国際公開WO 2011/123767 A1は、炎症メディエータを吸着するための多孔性吸着体粒子の治療上有効な用量を患者に投与し、5から300nmの細孔径の全細孔容積が0.5cc/gより大きく3.0cc/gまでであるようにした、炎症を治療するための方法を開示している。
【0014】
国際公開WO 2003/090924 A1には、炎症過程に関連して血液成分を分離するための多孔性分離マトリックスが記載されている。分離マトリックスは、5μmから500μmの細孔径、およびマトリックス上に配設された少なくとも1つの官能基をも有する。
【0015】
ドイツ特許公開DE 19515554 A1は、全血および/または血漿からTNF‐αおよびリポ多糖類を同時体外除去するための方法および装置を開示している。ここで、血液または血漿は、多孔性カチオン交換体材料およびアニオン交換体材料を介して、体外灌流システムに誘導される。そこに記載された多孔性担体材料は、30nmより小さい平均細孔径、および/または10
6ダルトンより小さく、かつ特に2×10
4ダルトンより小さい球状タンパク質のための分子排除サイズを有する。
【0016】
サイトカインをはじめとする有毒成分を体液から除去するための中性樹脂は、国際公開WO 2005/082504 A2にも開示されている。国際公開WO 2005/082504 A2は、活性炭と、30nmの平均細孔径および35〜120μmの平均粒径(Amberchrom CG300C)または45nmの平均細孔径および560μmの平均粒径(脂肪族エステル系樹脂‐Amberlite XAD‐7HP)を有する少なくとも1つの非イオン性樹脂とを備えた、解毒装置を記載している。
【0017】
欧州特許EP 0787500 B1および欧州特許EP 0958839 B1は、体液から有毒成分、特にサイトカインを除去するための、10から30nmの細孔径および20から350μm、好ましくは10から100μm、または250から350μmの粒径を有する、疎水性担体材料を開示している。
【0018】
欧州特許EP 1944046 B1は、30nmの細孔径および75から120μmの粒径を有するポリスチレンジビニルベンゼンコポリマ系の担体材料を開示している。
【0019】
Tettaら(Tetta et al.1998.Nephrol Dial Transplant13:1458‐1464)は、体液からサイトカインを除去するための、30nmの細孔径を有するAmberchrom CG300md型の吸着体を記載している。
【0020】
Cantaluppiらによる文献(Cantaluppi et al.2010.Critical Care14:R4)は、サイトカイン吸着のためのAmberchrom CG161m型の吸着体を記載している。
【0021】
アニオン交換体樹脂(例えばセルロースに結合されたDEAEまたはPEI基)は、エンドトキシン結合に非常によく適することも明らかになった。しかし、タンパク質Cおよびタンパク質Sのような体内凝固系の主要因子の望ましくない結合、および関連する凝固問題は不都合である。これらの凝固問題は、エンドトキシンに対する固定化抗体を含む特定の吸着体を使用することによって回避することができる。しかし、この可能性は、経済的な理由から限定的にしか適用することができない。
【0022】
ドイツ特許公開 DE 19913707 A1には、有機または合成ポリマと、それに結合され、補体因子、リポ多糖類、ならびにTNF‐αおよびインターロイキンのようなさらなる敗血症メディエータに対するポリクローナルまたはモノクローナル抗体とから形成された担体材料で構成される、敗血症治療で使用するためのプラズマフェレーシス用の免疫吸着体が記載されている。
【0023】
ドイツ特許公開DE 102004029573 A1は、アフェレーシス用材料または吸着、およびサイトカインMIF(マクロファージ遊走阻止因子)を血液、血漿、または他の体液から除去し、枯渇させ、または不活化するための方法をも開示している。吸着剤は固定担体材料を含み、その表面にMIF結合分子または官能基が固定化される。
【0024】
ドイツ特許公開DE 102005046258 A1は、インスリン抵抗性および/または代謝異常症候群を治療するための免疫吸着体を開示しており、免疫吸着体はIL‐6、IL‐4、およびC5aに特異的な結合リガンドを持つ担体材料を含む。
【0025】
臨床用途に既に長年使用されている治療形態は、ポリミキシンの非経口投与によって構成される。ポリミキシンは、最初は細菌バシラス・ポリミキサに由来し、グラム陰性細菌の感染を治療するためにヒトおよび動物に既に数十年間使用されてきた、抗生物質である。ポリミキシンは細胞膜の透過性を高めることによって細胞壁構造を妨害し、こうして細胞溶解を引き起こす。ポリミキシンはリン脂質のみならず、エンドトキシン(LPS)にも結合し、高親和性のポリミキシン‐エンドトキシン(LPS)複合体を形成する。ポリミキシンの抗菌メカニズムは、例えばTony Velkovらによる文献(Tony Velkov et al.2010.Journal of Medicinal Chemistry:53(5):1898‐1916)に詳細に記載されている。
【0026】
ポリミキシンの神経毒性および腎毒性作用のため、ポリミキシンBおよびポリミキシンE(コリスチン)だけが抗生物質としての特定の治療上の重要性を高めてきた。今まで、これらの2つのポリミキシンはそれらの物質クラスの治療に許容できる唯一の代表であった。ポリミキシンBおよびコリスチンは米国で非経口注入用としてFDAに認可されている。ポリミキシンBおよびコリスチンは、経口または外用治療形態に数十年使用されてきた。しかし、グラム陰性細菌の感染によって生じる状態および状況の非経口全身治療に対しては、それらの神経毒性および腎毒性副作用のため、それらは治療上の文脈で最後の手段として抗生物質としてのみ使用される。コリスチンはポリミキシンBより腎毒性が低いようであるが、これは少なくとも部分的に、より高い所要投与量により相殺され、したがって腎毒性反応は日常的な臨床業務ではほぼ同程度になると予想される。しかし、2つの抗生物質の腎毒性に関して充分なデータが現在得られていない。ニューヨーク(米国)の感染症専門医(Infectologists)は、ポリミキシンBで治療した60名の患者の14%の腎不全を記載している。ギリシャの医師は、治療の開始時に既に腎機能不全が存在した患者の大多数における顕著な腎毒性を記載している。対照的に、正常な腎機能の患者では、顕著な変化は立証されなかった。ポリミキシンの毒性に関する詳細な概要は、FalagasおよびKasiakouによる文献に見ることができる(Falagas and Kasiakou.2006.Critical Care10:R27)。したがって、ポリミキシンの投与量は毒性副作用、特に腎毒性副作用の回避または最小化に中心的な役割を果たす。
【0027】
近年頻繁に観察される、多剤耐性病原菌株の感染によって生じる疾患の重篤な進行の発生のため、例えば細菌緑膿菌の菌株による急性感染の場合、ポリミキシンは、それらの毒性にも関わらず、必然的に抗生物質として非経口的に投与されることが多くなっている。非経口投与のためのポリミキシンB1およびB2の硫酸塩の形のポリミキシンBの供給源は現在、Bedford Laboratoriesによって提供されている(「注射用ポリミキシンB500000単位」の製造者Bedford Laboratories)。製造者情報によると、非経口投与は静脈内、筋肉内、または髄膜炎の場合には髄腔内に実行され、指定された最大一日投与量は一般的に、二回から三回に分けて一日当たり体重1kgにつき2.5mgである。投与後のポリミキシンの血清中濃度は通常、1ないし6μg/mlの範囲である。重篤な場合、これはより高い6ないし50μg/mlの範囲になることもある。コリスチンは主にコリスチンメタンスルホン酸塩の形で投与され、血清中濃度は約1ないし3μg/mlの範囲である。コリスチン(ポリミキシンE)は、ポリミキシンBと同様の方法で、通常はより高い用量で使用される。
【0028】
ポリミキシンBに対する耐性はかなり珍しいが、外膜の変化のため、抗生物質が細胞質膜に達しない場合には発生することがある。ポリミキシンは大腸菌、エンテロバクタ、クレブシエラ属のような多くのグラム陰性病原菌に対し、かつ通常は耐性菌である緑膿菌、プロテウス型、およびS.マルセセンスに対しても有効である。B.フラジリスの感受性は多様である。大腸菌の場合、最小阻害濃度は0.04〜3.7mg/lの範囲であり、緑膿菌の場合、1.2から33.3mg/lの間である(Garidel and Brandenburg.2009.Anti‐Infective Agents in Medicinal Chemistry, 8:367‐385)。
【0029】
非経口投与の場合に臨床用途に以前使用されたポリミキシンBおよびコリスチンの用量は、腎毒性および神経毒性副作用を誘発するので、ポリミキシンのようなエンドトキシン結合リポペプチドの適用に関連して、新しい治療戦略および治療法が過去に開発された。
【0030】
適切な吸着体材料を使用する、既に前述した体外血液および/または血漿浄化法は、薬剤の形態によるポリミキシンの投与に対し、頻繁に適用される代替法として確立されている。
【0031】
公知の吸着体材料は多孔性または繊維状担体材料を含み、その表面にポリミキシンBが固定化される。公知の神経毒性および腎毒性副作用は、敗血症状態の治療にかなりの程度使用されるこのタイプの吸着体材料に関連して、以前から報告されてきた。
【0032】
欧州特許公開EP 0110409 Aには、多孔性ガラスから形成されたポリミキシンB固定化担体(FPG2000)およびセルロース系のポリミキシンB固定化多糖担体(Cellulofine A‐3)が開示されている。セルロースまたは誘導体化セルロースから形成され、ポリミキシンBが共有結合された微小粒子もまた公知である(Weber V.,Loth F.,Linsberger I.,Falkenhagen D.:Int.J.Artif.Organs25(7)、679)。欧州特許公開EP 0129786 A2は、ポリミキシンが共有結合により固定化された繊維状担体を持つエンドトキシン解毒材を記載している。繊維状担体は、担体の表面にポリミキシンを共有結合するために官能基を備える。記載されたエンドトキシン吸着体の不利点として、低いエンドトキシン結合能および速度が挙げられる。ポリミキシンBが共有結合された繊維状担体に関連する治療の有効性および質は最適以下であった(Cruz DN et al.2007.Effectiveness of polymyxin B‐immobilized fiber column in sepsis:a systematic review.Crit.Care11(3):137)。
【0033】
国際公開WO 2010/083545および国際公開WO 2011/160149は、ポリミキシンが非共有結合的相互作用(吸着)を介して疎水性担体表面に固定される吸着体材料を記載している。国際公開WO 2007/142611 A1および米国特許US 5510242は、ポリミキシンが吸着結合された疎水性担体表面を記載している。サルモネラ・チフィムリウムのLPS抗原を結合するためのポリミキシン被覆ポリエステル繊維の使用は、BlaisおよびYamazakiによって記載された(Blais and Yamazaki.1990.Use of polymyxin‐coated polyester cloth in the enzyme immunoassay of Salmonella lipopoly‐saccharide antigens. International journal of Food Microbiology11:195‐204)。
【0034】
国際公開WO 2011/133287 A1は、微小流体分離装置を備え、毒素、薬剤、病原体等のような望ましくない物質を血液から除去することのできる、血液濾過装置を開示している。装置は、望ましくない物質の有無または濃度に関して血液を監視するセンサを備えることができる。監視は、抗生物質のような治療に有効な成分の患者の血液への注入を含むこともできる。
【0035】
序論に示した種類の体外灌流装置は、例えばFalkenhagenらによって記載されている(Falkenhagen et al.2006.Fluidized Bed Adsorbent System for Extracorporeal Liver Support.Therapeutic Apheresis and Dialysis10(2):154‐159)。そこに記載されたフィルタは「Albuflow(登録商標)」の商品名で入手可能である(Fresenius Medical Care, Germany)。
【0036】
内毒血症誘発病状、特に敗血症を患っている患者の致死率は、上述したポリミキシン系吸着体材料の臨床応用によって低減することができるが、重症敗血症および敗血症性ショックの患者の致死率は、最大限の治療にも関わらず、依然として非常に高い。この理由のため、および抗生物質に対する細菌の多剤耐性のますます増大する問題、およびそれに関連して増加する疾患の重篤な進行の発生のため、臨床応用においてきわめて安全でもある、改善された治療形態およびより効率的な体外灌流装置に対する高い要求も存在する。
【発明の概要】
【0039】
したがって、本発明の目的は、敗血症および敗血症様状態の改善された治療を可能にする、序論に示されたタイプの体外灌流装置を提供することである。
【0040】
この目的は、本発明に従って灌流装置がエンドトキシン結合リポペプチドを体外血液回路に供給するための分注手段を含み、かつエンドトキシン結合リポペプチドがポリミキシン、ポリミキシン誘導体、それらのプロドラッグ、およびそれらの組合せから成る群から選択されることを特徴とする、序論に示されたタイプの体外灌流装置によって達成される。
【0041】
本発明のおかげで、以前から公知の治療方法と比較して、敗血症および敗血症様状態の改善された治療が可能になる。
【0042】
本発明に係る灌流装置の第1の主要な利点は、フィルタがエンドトキシンおよび他の高分子血漿成分のためのバリアだけでなく、形成されたエンドトキシン‐リポペプチド複合体のためのバリアをも構成するので、肝臓で分解される前に体外血液回路を循環する患者の血液に存在するエンドトキシン‐リポペプチド複合体が濾液回路に流入することができず、担体に到達することができないということにある。複合体と第1担体表面との間の競合的相互作用プロセスのため、担体との接触はエンドトキシン‐リポペプチド複合体の溶解を導き、よってこれは敗血症による患者の状態を悪化させるであろう。リポペプチド‐エンドトキシン複合体の解離によって生じるエンドトキシンの新たな供給は、エンドトキシンによって引き起こされる補体系または凝固系および細胞系(単核細胞)の活性化プロセスの新たな激化をもたらし、これらの活性化プロセスは、多臓器不全の開始もしくは激化、または敗血症のアネルギ期すなわち免疫系が衰弱する段階の開始のような対応する臨床的帰結を伴う。この帰結は、エンドトキシンの放出はいかなる場合でも防止すべきであることを意味する。
【0043】
本発明のおかげで、エンドトキシン結合リポペプチドは分注手段によって血液に送ることができ、エンドトキシンは複合体の形成によって除去することができ、かつ同時に、望ましくない血液成分、特にサイトカインは枯渇剤によって枯渇させることができ、よって患者にとって追加的な安全上の危険性無く、最大限の治療が可能になる。
【0044】
本発明に係る灌流装置のさらなる重要な利点はまた、濾液回路に配置された枯渇剤のため、望ましくない血液成分、特にサイトカインを第1担体の表面における吸着によって血漿から除去することができることにある。発明者らは驚くことに、本発明に従って使用されるフィルタの使用により、体外血液回路からのわずかなサイトカインがフィルタを通過して、濾液回路に運ばれる分画血漿内に送られるが、サイトカイン、なによりもまずTNF‐αに対する吸着効率は、細胞血液成分だけを残す血漿フィルタと比較して著しく向上することを発見した。本発明に従って使用されるフィルタは、300,000より高い相対モル質量を有するタンパク質またはリポタンパク質および糖タンパク質の透過を事実上完全に防止する。この利点は、細胞成分だけを保持する血漿フィルタを使用する場合と比較して、サイトカインの除去のずっと高い再現性を保証することが明らかになった。
【0045】
本発明に従って使用されるフィルタは分画血漿を通過させるので、高分子血液成分、エンドトキシン、およびエンドトキシン‐リポペプチド複合体も保持される一方、より小さい血液成分はフィルタ膜を通過することができる。適切なフィルタは、「Albuflow(登録商標)」の商品名で入手可能である(製造者:Fresenius Medical Care;材料:ポリスルホン中空ファイバ;ふるい係数はアルブミンに対しては0.6以上、フィブリノゲンに対しては0.1以下)。
【0046】
本書で使用する用語「血漿」は、これが本発明に係る装置の濾液回路内を運搬される限りにおいて、したがって分画された血液血漿に関連する。
【0047】
本開示の範囲内で「中性の疎水性表面を有する担体」という表現は、中性かつ疎水性の表面を有する不水溶性固体に関係する。用語「中性」は非イオン性と理解される。担体は繊維状または粒子状の形を取ることができる。担体はまた多孔性であってもよく、かつ外表面および内表面を有することができる。外表面および内表面は中性かつ疎水性である。担体の「内表面」という用語は細孔の表面の全体を表す。用語「外表面」は対照的に、外側から直接アクセス可能な担体の表面の全体に関係する。
【0048】
本書で使用する場合、用語「ポリミキシン」および「ポリミキシン類」は、当初は細菌バシラス・ポリミキサ由来(ポリミキシンB)およびバシラス・コリスチナス由来(ポリミキシンE)である公知の天然由来の化合物に関係する。ポリミキシンは細菌から単離することができ、あるいは人工的に生産することができる。細菌に由来するポリミキシンBは、ポリミキシンB1、ポリミキシンB2、ポリミキシB3、ポリミキシンB4、ポリミキシンB5、およびポリミキシンB6と呼ばれる6つの誘導体から構成される。対照的に、FDAによって非経口注入が認可されたポリミキシンは、ポリミキシンB1ないしB4のみで構成される。前述の通り、ポリミキシンBおよびポリミキシンE(コリスチン)だけが臨床的に関連する。
【0049】
本書で使用する用語「プロドラッグ」は、上に定義したポリミキシンの前駆体化合物に関係する。前駆体化合物はインビボで活性ポリミキシンに変換される。代表例として、コリスチンメタンスルホン酸塩およびポリミキシンBメタンスルホン酸ナトリウムなどのプロドラッグが挙げられる。
【0050】
用語「ポリミキシン誘導体」は、ポリミキシンから誘導される化合物に関係し、この化合物は、天然由来のポリミキシンの修飾によって、例えばポリミキシン分子構造のDab側鎖、環状ペプチド環または脂肪酸鎖の化学的修飾によって得られる。ポリミキシン系抗生物質、類似物、および誘導体の詳細な概要は、Velkovらによる文献に記載されている(Velkov et al.2010.Journal of Medicinal Chemistry,53(5):1898‐1916)。本発明における使用に対するポリミキシン誘導体の適合性は、当業者が簡単な日常的試験に基づいて試験することができる。
【0051】
用語「内毒血症」は本書では、臨床的関連量のエンドトキシンが患者の血液中に発見されかつその後に敗血症およびSIRSのような疾患パターンにつながる、全ての疾患に対して使用される。
【0052】
用語「枯渇剤」は、濾液回路内を運ばれる血漿から望ましくない成分を除去することのできる薬剤に関係する。中性の疎水性表面を有する担体を含む枯渇剤は、その担体表面における吸着によるサイトカインのような炎症メディエータの除去に特に有益であることが過去に証明されている。これらのサイトカインは、潜在的に有害な炎症促進性サイトカインであることが好都合である。炎症促進性サイトカインの代表例としてTNF‐α、IL‐113、IL‐6、およびIL‐8が挙げられ、TNF‐αは初期炎症促進性炎症メディエータとして特に重要である。本発明に従って使用される枯渇剤はしたがって、TNF‐αの毒性作用に起因する状態および状況の治療に特に有益である。例として、敗血症の場合、炎症促進期におけるTNF‐αの値は、少なくとも100〜200ng/mlより大きい。下に示す例は、TNF‐α、IL‐1β、IL‐6、IL‐8、および抗炎症性IL‐10も最大限有効に除去され、かつ本発明に係る装置が敗血症、敗血症性ショック、および敗血症様状態の治療に極めてよく適していることを立証する。
【0053】
「エンドトキシン結合リポペプチドを体外血液回路内に供給するための分注手段」という表現は、一方ではリポペプチドを体外血液回路に直接供給するための分注手段に関係する。他方で、この表現は、リポペプチドが分注手段によって濾液回路内に分注され、次いでリポペプチドがそこから体外血液回路内に移動するという点において、リポペプチドを体外血液回路内に間接的に供給するための分注手段にも関係する。
【0054】
最初は細菌バシラス・ポリミキサおよびバシラス・コリスチナスから得られた天然由来のポリミキシンは、かなりの程度研究されかつ内毒血症によって引き起こされた状態および状況の治療に既に数十年使用されてきたペプチド抗生物質に属するので、エンドトキシン結合リポペプチドはポリミキシンであることが好ましい。リポペプチドは、臨床用に既に認可されているポリミキシンのみ、すなわちポリミキシンBおよびコリスチン(ポリミキシンE)ならびにそれらのプロドラッグから構成される群から選択されることが特に好ましい。代表例としてプロドラッグであるコリスチンメタンスルホン酸塩およびポリミキシンBメタンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。しかし、ポリミキシンBおよびそのプロドラッグが最も好適であり、これはヒト用医薬の分野における使用に最も成功していることから明らかである。
【0055】
第1の有利な実施形態によると、枯渇剤はエンドトキシン結合リポペプチドを供給するための分注手段を含み、枯渇剤の第1担体の表面は、エンドトキシン結合リポペプチドから形成された吸着性コーティングを有する。この実施形態では、第1担体はリポペプチドで吸着コーティングされるので、枯渇剤はしたがってエンドトキシン結合リポペプチドのための分注手段としても働く。リポペプチドは、脱着によって少量ずつ連続的に濾液回路内に放出され、さらにそこから体外血液回路に供給される。リポペプチドはこうして、濾液回路へのリポペプチドの分注(第1担体からの脱着)によって体外血液回路内に供給され、それは次いで血液回路内に送られる。小変形例では、濾液回路は、フィルタの下流で体外血液回路に通じる開放型濾液回路として形成することができる。別の小変形例では、濾液回路は、濾液領域で閉じた回路であってフィルタに通じる回路として形成することができる。実験室試験では、リポペプチドによる担体表面の吸着性コーティングはサイトカインの吸着に対し不利に影響しないことが明らかになっている(下の実施例11参照)。
【0056】
本開示で使用される用語「吸着性コーティング」は、エンドトキシン結合リポペプチドが非共有結合性吸着プロセスおよび相互作用を介して中性の疎水性担体表面に結合することを意味すると理解される。特に、疎水性相互作用は重要な役割を果たすと考えられる。疎水性相互作用は生化学的に非常に重要であり、極性環境において疎水性分子が会合する傾向があるという現象に基づいている。したがって、疎水性相互作用は本質的に力ではないが、極性環境によって強制される。イオン結合、水素架橋結合、およびファン・デル・ワールス相互作用をはじめ、それらに限らず、他の非共有結合的相互作用もまた、ポリミキシンのようなエンドトキシン結合リポペプチドの吸着に重要な役割を果たす。-非共有結合性相互作用を介してポリミキシンのようなエンドトキシン結合リポペプチドを様々な細孔および粒径の疎水性担体表面に結合することは、国際公開第2010/083545号パンフレット、国際公開第2011/160149号パンフレット、国際公開第2007/142611号パンフレット、および米国特許第5510242号明細書に既に記載されている。担体に吸着結合されたエンドトキシン結合リポペプチドは、本発明によれば、ポリミキシン、そのプロドラッグ、およびそれらの組合せから成る群から選択される。
【0057】
第1実施形態とは代替的に、第2の有利な実施形態では、エンドトキシン結合リポペプチドを供給するための分注手段は、濾液回路の枯渇剤の下流に配置され、分注手段は中性の疎水性表面を有する第2担体を含み、第2担体の表面はエンドトキシン結合リポペプチドで形成された吸着性コーティングを有する。リポペプチドは脱着によって少量ずつ連続的に濾液回路内に放出され、次いでそこからさらに体外血液回路に送られる。リポペプチドはこうして濾液回路へのリポペプチドの分注(第2担体からの脱着)によって体外血液回路内に供給され、それは次いで血液回路内に移動する。第2実施形態の小変形例では、濾液回路は、フィルタの下流で体外血液回路に通じる開放型濾液回路として形成することができる。第2実施形態の別の小変形例では、濾液回路は、濾液領域で閉じた回路であってフィルタに通じる回路として形成することができる。しかし、設計/装置の費用が低いため、第2実施形態と比較して第1実施形態の方が好ましい。
【0058】
本発明に係る灌流装置の上述した2つの実施形態(第1および第2実施形態)の展開は、中性の疎水性表面を有する担体であって、ポリミキシンで形成された吸着性コーティングを有する担体を用いて、エンドトキシンの除去は、以前に考えられていたように担体に固定化されたポリミキシン分子におけるエンドトキシンの吸着によってではなく、血液または血漿内に移送された非常に少量の脱着されたポリミキシン分子を介して実現されるという驚くべき事実に基づいている。この驚くべきかつ予測不可能な発見は、ポリミキシンが吸着コーティングされた担体の選択的な洗浄の後に、エンドトキシンの吸着は、担体表面に依然として固定化されたポリミキシン分子によって特定することができなかったという事実に基づいている。したがって発明者らは、ポリミキシンが表面に吸着結合された中性の疎水性担体ポリマの優れたエンドトキシン除去効率は、担体材料から脱着しかつ体液すなわち血液または血漿内に放出される非常に少量の自由ポリミキシン分子に起因すると判断することができた。担体に吸着されたポリミキシンの量に応じて、約0.01μg/mlから約0.8μg/mlのポリミキシン血清中濃度をもたらす、少量の放出されたポリミキシンは、エンドトキシンの活性を阻止するのに既に充分であり、神経毒性および腎毒性副作用が排除されるという発見もまた、驚くべきことであった。
【0059】
この驚くべき発見のみに基づいて、発明者らは、本発明に係る灌流装置の第1および第2の有利な実施形態を展開することができた。それまでは、エンドトキシンの除去は、担体に吸着されたポリミキシン分子にエンドトキシンが結合することによって実現されると常に考えられていた。モル質量が340000g/モル(相対分子質量が340kDa)の物質に対しふるい係数が5%のフィルタはエンドトキシン(LPS)に対するバリアを構成し、したがってエンドトキシンは、濾液回路に配置されたエンドトキシン用の吸着体材料に到達することができないという事実に鑑みて、この新しい驚くべき事実を知ることで、このタイプのフィルタに、エンドトキシン結合リポペプチドによる吸着性コーティングを施した担体であってかつ予め定めることのできる量のリポペプチドを血漿内に分注する担体を組み合せることに、初めて誘因が生じた。したがって、濾液回路に配置された分注手段のため、非常に少量でかつ何よりもまず均等な量のエンドトキシン結合リポペプチドを、濾液回路で運ばれる血漿内に全治療期間にわたって、好ましくは2ないし8日の期間にわたって毎日4ないし10時間、長期放出することが、濾液回路に配置された分注手段によって達成される。ここから、リポペプチドは体外血液回路内に入り、そこでそれらは血液中に存在するエンドトキシン(LPS)との複合体を形成し、したがってこれらを無害にする。フィルタのおかげで、上で既述の通りこれらの複合体はもはや濾液回路内に入って再び溶解することができず、よって患者の安全性が高く維持される。エンドトキシン‐リポペプチド複合体は次いで、患者の肝臓で大部分が分解される。
【0060】
第1または第2担体の表面に吸着されたエンドトキシン結合リポペプチドは、既述の通り、リポペプチドが分注されたときに0.01μg/mlから0.8μg/mlのリポペプチド血清中濃度をもたらす量が存在することが好ましい。驚くことに、第1または第2担体からのリポペプチドの非常に低い脱着は、0.01μg/mlから0.8μg/mlのリポペプチド血清中濃度を得るのに充分であることが明らかになった。これらの血清中濃度でエンドトキシンの活性は阻害され、神経毒性および腎毒性効果は排除されることが明らかになった。リポペプチド血清中濃度は好ましくは0.1μg/mlから0.6μg/mlの範囲、好ましくは0.1μg/mlから0.4μg/ml、最も好ましくは0.1μg/mlから0.25μg/mlの間である。これらの血清中濃度では、敗血症、重症敗血症、または敗血症性ショックのような疾患が重篤に進行している場合でも、神経毒性および腎毒性副作用無しに、効率的な治療を実行することができる。
【0061】
第1または第2担体は、100ないし1500m
2/gの全表面を有することが好ましく、全担体表面に対して、50ないし2000mgは第1または第2担体の表面でエンドトキシン結合リポペプチドに吸着結合される。このようにして、担体表面からエンドトキシン結合リポペプチドを脱着することによって、約0.01μg/mlないし約0.8μg/mlのリポペプチド血清中濃度を得ることができる。当業者は、平均細孔径および/または平均粒径の考慮中の使用された担体に関連して、簡単な日常的試験および計算に基づいて、予想されるリポペプチド血清中濃度を決定することができる。計算例は以下の実施例でさらに詳しく述べる。
【0062】
上述した実施形態とは代替的に、非常に低量のリポペプチドの担体表面からの脱着に基づいて、エンドトキシン結合リポペプチドを供給するための分注手段は、エンドトキシン結合リポペプチドを体外血液回路に関連するリポペプチド供給ポイントで体外血液回路に供給するための、第3の有利な実施形態に関わる投与装置を含む。リポペプチド供給ポイントは、フィルタの下流に配置することが好ましい。透析器を追加的にフィルタの下流で体外血液回路に配置する場合には、体外血液回路におけるリポペプチド供給ポイントが透析器の下流に配置されると好都合である。第3実施形態の小変形例では、濾液回路は、フィルタの下流で体外血液回路に通じる開放型濾液回路として形成することができる。第3実施形態の別の小変形例では、濾液回路は、濾液領域が閉鎖された回路であってフィルタに通じる回路として形成することができる。
【0063】
この実施形態では、リポペプチドは投与装置によって体外血液回路に注入される。リポペプチドは、非経口投与用製剤の形で、例えば輸液として存在することが好ましい。製剤は任意選択的に少なくとも1つの薬学的に許容される担体および/または賦形剤を含むことができる。製剤は1種類だけのエンドトキシン結合リポペプチド、または2種類以上のリポペプチドの混合物、例えばポリミキシンB1、B2、B3、およびB4の混合物を含むことができる。「薬学的に許容される担体および/または賦形剤」は、注射、輸液等のような非経口投与形態の生産用に公知のいずれかの物質とすることができる。本発明に適した輸液の処方は、以下の実施例4および5でさらに明記する。
【0064】
エンドトキシン結合リポペプチドは無菌水性注射剤または輸液製剤の生産用の凍結乾燥粉末の形で存在することが好ましく、粉末は例えば無菌水、5%デキストロース溶液、リンゲル液、または生理食塩水に溶解することができる。ポリミキシンBは硫酸ポリミキシンBの形で使用することが好ましい。リポペプチドは、好ましくは0.04mg/lから13mg/l、より好ましくは0.1mg/lから7mg/l、最も好ましくは0.5mg/lから4mg/lの濃度で溶解された形で製剤に存在する。用量は、リポペプチド血清中濃度が0.1μg/mlから0.6μg/ml、好ましくは0.1μg/mlから0.4μg/ml、最も好ましくは0.1μg/mlから0.25μg/mlの範囲になるように設定することが好ましい。それは、これらの血清中濃度で、敗血症、重症敗血症、または敗血症性ショックのような疾患が重篤に進行している場合でも、神経毒性および腎毒性副作用無しに効果的な治療を実行することができるためである。
【0065】
投与装置は、当業者にはそれ自体公知の通り、輸液が入った容器(例えば輸液バッグまたは輸液ボトル)と、チューブシステムと、単位時間当たりの所望量を投与するためのポンプ手段とを一般的に含む輸液ユニットによって形成される。
【0066】
注入速度は患者におけるリポペプチドの血清中半減期に依存する。例として、正常な腎機能の患者におけるポリミキシンBの血清中半減期は一般的に13時間であり、コリスチンの血清中半減期は文献によると6から7.4時間である。灌流装置による治療の場合、以下でさらに詳述する通り、投与されたリポペプチドのフィルタのクリアランスおよび/または枯渇剤のクリアランスもまた考慮に入れなければならない。この目的に適した輸液の処方および投与指示についても、以下の実施例でさらに明記する。
【0067】
エンドトキシン結合リポペプチドの濃度を監視するため、かつそれに応じて輸液の用量を調整できるようにするために、エンドトキシン結合リポペプチドの濃度を測定するための測定手段がフィルタまたは透析器の下流およびリポペプチド供給ポイントの上流に配置されると有利である。この目的に使用することのできる適切な測定手段、例えばセンサは、例えばJiangらによる先行技術(Jiang et al.2004.A synthetic peptide derived from bactericidal/permeability‐increasing protein neutralizes endotoxin in vitro and in vivo. International Immunopharmacology4:527‐537)に記載されている。測定のために、少量の血液が体外血液回路から分岐管路を介して測定手段/センサに運ばれ、濃度が決定された後、廃棄されることが好ましい。測定手段/センサを体外血液回路に直接挿入することは原理的に実際可能であるが、この場合、無菌性および生体適合性に関して測定手段/センサの状態に高い要求が課せられるので、あまり好ましくない。これらの理由から、測定手段/センサへの分岐管路を持つ形が好ましい。
【0068】
灌流装置にはコントローラによって制御される制御回路を割り当てることもでき、その場合、注入ポンプを作動させることによって、測定手段によって測定されたリポペプチド現在値(リポペプチド血清中濃度)に応じて、予め定められた目標値または目標値範囲に関して、リポペプチドの注入量が制御される。リポペプチド血清中濃度の目標値または目標値範囲は一般的に0.01〜0.8μg/mlの範囲にある。
【0069】
第3実施形態では、体外血液回路で運ばれる血液中にリポペプチドを投与するときに、身体のリポペプチドクリアランス、枯渇剤のリポペプチドクリアランス、および/または透析器のリポペプチドクリアランスを考慮するように、灌流装置のコントローラが設計されることも有利である。例として、サイトカインのような病態生理学的関連成分のほかに、ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマから形成された担体もまたポリミキシンのようなリポペプチドを吸着することは公知であるので、第1の担体(すなわち枯渇剤の担体)のリポペプチドクリアランスを考慮することは注入リポペプチドの投与に有利である。
【0070】
上述した実施形態に代わって、エンドトキシン結合リポペプチドを供給するための分注手段は、第4実施形態では、フィルタの下流で体外血液回路に配置された透析器であって、透析器を介して運ばれる透析液によってエンドトキシン結合リポペプチドを体外血液回路に供給するように設計された透析器を含む。小変形例では、濾液回路は、フィルタの下流で体外血液回路に通じる開放型濾液回路として形成することができる。別の小変形例では、濾液回路は、濾液領域で閉鎖されかつフィルタに通じる回路として形成することができる。使用される透析器は、PVP(ポリビニルピロリドン)を配合することによって生成された、1.4〜2.0m
2の表面を持つ親水性ポリスルホン膜であることが好ましい。例として、これらの膜は、Fresenius Medical Care社によって提供されるフィルタに、とりわけAF1000およびFX60モデルに使用されている。これらの透析用フィルタは、アルブミンに対して0.1%未満のふるい係数を有する。アルブミンに対し約4%のふるい係数を有する、同じく親水性ポリスルホン膜の使用に基づく、ハイカットオフフィルタ(high cut‐off filter)として知られるものを使用することも考えられる。透析条件下で、すなわち除去するように意図された物質の拡散制御除去が主に使用されるときに、アルブミン損失は1回の処置当たり5〜10g未満である。そのような透析用フィルタの例は、Fresenius Medical Care社によって製造されたEMiC
2フィルタによって構成される。そのようなフィルタが臨床用途で動作する流動条件は、使用条件に応じて80〜300ml/分の血流量が得られるように適切に選択される。持続的静静脈血液透析として知られる条件下では、60〜80ml/分の血流量が使用される一方、透析ユニット支援間欠的血液透析の場合、敗血症でも非常に頻繁に発生する、急性症例すなわち急性腎不全の患者では、150〜300ml/分の血流量が使用される。間欠的血液透析の場合、透析液の流量は500ml/分に設定することが好ましい一方、持続的静静脈血液透析の場合、血流量に対し1:1の比率の透析液流量が一般的である。上述した透析用フィルタのふるい係数は0.8(AF1000)から0.9(EMiC
2)の間、すなわち80%から90%の間であるので、透析液中のリポペプチド/ポリミキシンの濃度は0.2〜1.0μg/lの範囲とすべきであり、すなわち治療対象患者の管理された血清中濃度値よりわずかに高くすべきである。
【0071】
実際には、第1または第2担体が中性の好ましくは合成ポリマであるならば、特に好都合である。こうして担体材料の高い再現性を確保することができる。それが多孔性ポリマであれば、特に空隙率および粒径に関して高い再現性を確保することができる。加えて、多種多様な空隙率および粒径にすることができる。ポリマはホモポリマおよびヘテロポリマのどちらでもよい。これらのポリマは「非イオン性巨大網状ポリマ樹脂」の名前でも知られており、例えば「Amberchrom」および「Amberlite XAD」の商品名(Rohm&Haas/Dow Chemical Company)で入手可能である。
【0072】
実際の適用には、架橋ポリスチレンポリマおよび架橋エチルビニルベンゼンポリマが特に有用であることが立証された。体外血液浄化の場合、患者の体液と接触する装置部品の無菌性について高い要求が課せられる。架橋ポリスチレンポリマおよび架橋エチルビニルベンゼンポリマは熱および薬品に対する高い安定性を特徴とし、臨床業務で既に確立されている。有利な小変形例では、架橋ポリスチレンポリマはポリスチレンジビニルベンゼンコポリマである。さらなる有利な小変形例では、架橋エチルビニルベンゼンポリマはエチルビニルベンゼンジビニルベンゼンコポリマである。
【0073】
言うまでもなく、好適なポリスチレンジビニルベンゼンコポリマまたはエチルビニルベンゼンジビニルベンゼンコポリマの代わりに、当業者には周知の高疎水性の他の中性樹脂を使用することも可能である。本発明に適した他の中性疎水性ポリマの代表例として、例えばトリビニルシクロヘキサン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルスルホン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレートにより架橋したスチレンおよびエチルビニルベンゼンモノマからのポリマ、または脂肪族エステル系の樹脂、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0074】
第1または第2担体は多孔性であって、100nm以下、好ましくは1から100nmの範囲の平均粒径を有することが有利である。こうして、サイトカインのような望ましくない成分の枯渇のために、あるいはエンドトキシン結合リポペプチドとの吸着性コーティングのために、特に大きい内表面が形成される。
【0075】
当業者は用語「平均細孔径」の意味および意図的に空隙率または平均細孔径を調整することのできる方法を熟知しているが、それでもなお、明確を期すために、現段階でこの用語を定義する。平均細孔径は細孔の平均直径に関係する。多孔性材料の細孔径のガウス粒度分布を用いて、平均細孔径は分布曲線の最大値に相応する。平均細孔径は例えば窒素吸着(Weber et al.2008;Neutral styrene divinylbenzene copolymers for adsorption of toxins in liver failure. Biomacromolecules 9(4):1322〜1328に記載)を用いて、または水銀圧入法を用いて決定することができる。ポリマの細孔径は関係するモノマまたはコモノマ、溶媒、またはモジュレータの濃度を変えることによって調整される。選択されるポリマの細孔が小さければ小さいほど、分子(この場合、サイトカインおよび/またはエンドトキシン結合リポペプチドのような望ましくない血液成分)の吸着に利用可能なポリマの内表面は大きくなる。細孔が大きければ大きいほど、より大きい分子にとっての細孔のアクセシビリティが高くなる。本発明に使用することのできる所定の細孔径の合成疎水性ポリマの生産方法は、上述したWeberらによる文献に記載されている。
【0076】
懸濁重合として実行されるモノビニルおよびポリビニル芳香族モノマの共重合によるそのような担体の生産もまた米国特許第4382124号明細書から公知である。ポリビニル芳香族モノマはポリマの架橋剤として使用される。例えばスチレンおよび/またはエチルスチレン、好ましくはエチルスチレンはモノビニル芳香族化合物として使用される。ジビニルベンゼンは好ましくはポリビニル芳香族化合物として使用される。多孔性はモノマにポロゲンを添加することによって得られ、ポロゲンは重合の後で再び除去される。ポロゲンは疎水特性または親水特性を持つことができる。例として、疎水性ポロゲンにはトルエンおよびキシレンがあり、親水性ポロゲンにはC4‐C10アルコールがある。しかし、これらの2種類のポロゲンの混合物を使用することもできる。ポリマ担体の細孔径は、ポリマの架橋度、ポロゲンの種類および量、ならびに重合中の反応条件によって広範囲で変化することができる。所望の細孔径の中性の疎水性担体を得るためにどのパラメータを選択すべきかが、当業者には分かるであろう。
【0077】
多孔性疎水性担体の生産の特別な実施形態は、「ハイパー架橋」(Davankov et al. J.Polymer Science,47,95‐101(1974)によりスチレンジビニルベンゼンコポリマを好ましくは後架橋することによって構成される。そのような担体の例として、Purolite CompanyによるHypersol‐Macronet吸着剤がある。こうして、事実上2nm未満の微小孔だけを含む、内表面が非常に大きい担体を生産することができる。
【0078】
中性の疎水性表面ならびに様々な平均細孔径および粒径を持つ担体は、例えばRohm&Haas/Dow Chemical Companyから入手することができ、かつ商品名「Amberchrom CG」および「Amberlite XAD」の商品名で市販されている。中性の疎水性表面および約2.5nm以下の平均細孔径を持つ微細孔担体は、Purolite社から入手できる(例えばHypersol‐Macronet MN270、平均細孔径が2.5nm(25Å)のポリスチレンジビニルベンゼンポリマ)。
【0079】
1ないし100nmの平均細孔径を有する担体の全空隙率は、ポリマ1gにつき0.3〜0.8cm
3であることが好ましい。内表面(または全表面)は100から1500m
2/gの範囲であることが好ましい。
【0080】
第1または第2担体の平均細孔径は、20nm以下の範囲、好ましくは1ないし20nm、または80ないし100nmの範囲にあることが有利である。これらの特定の細孔径範囲では、第1担体または第2担体によるタンパク質Cの吸着が、20nm超および80nm未満の細孔径範囲よりずっと目立たないためである。20nmより小さい細孔径では、細孔内に移動するタンパク質Cは少なくなる。担体によるタンパク質Cの吸着は細孔径が大きくなるにつれて増加し、細孔径が80nmより大きくなると再び減少する。より大きい細孔径(80nm超)を選択することによりタンパク質C結合を最小限まで低下することができるが、平均細孔径が100nmを超えると担体の内表面が小さくなりすぎるため、そうならないように選択すると、臨床用途には好都合である。血漿中のビタミンK依存タンパク質であるタンパク質Cは、本発明に従って使用されるフィルタを通過することができ、したがって濾液回路に配置された第1または第2担体と接触する。タンパク質Cは血液凝固プロセスの重要な制御因子であり、抗凝固作用を有する。タンパク質S(62000Da)はタンパク質C(69000Da)と比較して同様の相対分子量を有するので、タンパク質Sの吸着もずっと低くなると考えることができる。同様の考察は、同様の分子量の凝固因子、例えばVII因子、IX因子、およびX因子にも当てはまる。
【0081】
20nm以下の平均細孔径を有する担体の全空隙率は、ポリマ1gにつき0.4ないし0.8cm
3であることが好ましい。内表面(または全表面)は、300ないし1500m
2/gの範囲であることが好ましい。
【0082】
80ないし100nmの平均細孔径を有する担体の全空隙率は、ポリマ1gにつき0.4ないし0.8cm
3であることが好ましい。内表面(または全表面)は、100ないし500m
2/gの範囲であることが好ましい。
【0083】
さらなる変形例では、第1および第2担体は繊維状とすることができ、あるいは粒子状とすることができる。しかし、第1および第2担体は、粒子状であることが好ましい。粒子状の担体は繊維状の担体と比較して取扱いが容易である。加えて、粒子の空隙率はより容易に生成しかつ調整することができる。
【0084】
ポリマ担体の平均粒径は、重合中に公知の方法で、例えば懸濁安定剤の種類および量ならびに撹拌器の形状および回転速度によって、調整することができる。中性の疎水性表面ならびに多様な平均細孔径および平均粒径を持つ疎水性担体は、例えばRohm/Haas/Dow Chemical Companyから入手することができ、「Amberchrom CG」および「Amberlite XAD」の商品名で販売されている。多様な平均細孔径および平均粒径の微細孔担体は例えばPurolite社によって生産されている。
【0085】
Mast Carbon(UK)社製のAC繊維は、適切な繊維状担体の実施例を構成する。
【0086】
第1または第2担体は、300μm以下、好ましくは2ないし300μmの平均粒径を有する微粒子の形態を有することが好ましい。この範囲より大きい粒径の場合、外表面を小さくすることにより血液適合性の改善がもたらされる一方、粒子が小さくなるほど動的有効性が高くなる特徴がある。
【0087】
特に好適な実施形態では、第1担体は10ないし20nmの平均細孔径または80ないし100nmの平均細孔径、および75ないし150μmの平均粒径を有する。この粒径範囲は、タンパク質Cの望ましくない吸着の点から有利であることが明らかになった(以下の実施例8参照)。望ましくないタンパク質Cの吸着によって引き起こされる血液凝固合併症(静脈血栓症、肺塞栓症)は、こうして最小限に抑えることができる。75ないし150μmの粒径では、担体の外表面は依然として、タンパク質Cの結合を零ではなくともわずかな程度に止めるのに充分小さいようである。しかし、それでも吸着すべき物質の拡散経路を小さくしておくのに充分な大きさであることは明らかである。この好適な実施形態では、タンパク質Cの生理学的関連量はここで依然として、比較的長い潜伏期間後も血液または血漿中に維持されるので、粒径は少なくとも75μmである。有利な小変形例では、第1担体は10ないし20nmの平均細孔径および75ないし150μmの平均粒径を有する。10nm未満の平均細孔径では、サイトカイン、特にTNF‐αのような除去すべき炎症メディエータの吸着効率は、再び低下する。20nmを越える細孔径では、内表面が小さくなり、サイトカインに対する吸着能力が低下する。本書で後述する有利な小変形例を含めて本発明に係る灌流装置のこの実施形態は、したがって、敗血症、特に敗血症性ショックおよび敗血症様状態の治療に極めてよく適している。
【0088】
この実施形態の特に有利かつ好適な小変形例では、第1担体は10ないし20nmの平均細孔径または80ないし100nmの平均細孔径、好ましくは10ないし20nmの平均細孔径、および75ないし150μmの平均粒径を有し、第1担体の表面はエンドトキシン結合リポペプチドから形成された吸着性コーティングを有する。すなわち、この小変形例では、枯渇剤は、第1実施形態に関連して上で詳述した通り、エンドトキシン結合リポペプチドのための分注手段としても働く(さらに以下の
図1および
図2も参照)。既述の通り、実験室試験で、リポペプチドの担体表面の吸着性コーティングは、サイトカインの吸着に対し不利に作用しないことが明らかになっている。第2担体が提供される実施形態では(上記または
図5に関連する以下の所見を参照されたい)、さらなる小変形例にしたがって第2担体が20nm以下の細孔径を有すると有利である。
【0089】
平均粒径が増大するとタンパク質Cの吸着は減少するので、さらなる有利な小変形例の第1担体は、100ないし150μmの平均粒径を有する。担体は、より好ましくは110ないし130μmの平均粒径を有し、理想的には約120μmの平均粒径を有する。これらの粒径では、たとえ体液(血漿)を比較的長時間にわたって第1担体に接触させても、一方ではサイトカインのような毒性物質を、かつ他方ではタンパク質Cのような重要な凝固因子を吸着させ続けることはほとんどできないためである。
【0090】
体外灌流装置の変形例では、濾液回路はフィルタの下流の位置で体外血液回路に通じる。この変形例では、濾液回路は開放型であり、分画血漿は濾液回路を通過することによってフィルタの下流で体外血液回路に直接供給される(
図1、3、5、および7におけるこの変形例の略図を参照されたい)。この変形例の基本原理は免疫吸着で現在使用されている(例えば日本の旭化成社製のアフェレーシス装置)。枯渇剤または分注手段(第1または第2担体)はこの変形例では、濾液回路に配置される装置であって、血漿がそれを通過して流れることができかつ例えばカラムまたはカートリッジとして形成することのできる装置に配置することが好ましい。
【0091】
体外血液回路の別の変形例では、濾液回路は閉鎖型であり、分画血漿はフィルタの膜を介して、体外血液回路を流れる血液に戻る(
図2、4、および6におけるこの変形例の略図を参照されたい)。第2変形例の基本原理は血液浄化システムPrometheus(登録商標)(ドイツのFresenius Medical Care GmbH)によって公知である[Falkenhagen D,Strobl W,Vogt G,Schrefl A,Linsberger I,Gerner FJ,Schoenhofen M.:Fractionated plasma separation and adsorption system:a novel system for blood purification to remove albumin bound substances. Artif Organs.1999 Jan;23(1):81-6])。枯渇剤または分注手段(第1または第2担体)は、濾液回路に配置される装置であって、血漿がそれを通過して流れることができかつ例えばカラムまたはカートリッジとして形成することのできる装置に配置することができる。
【0092】
有利な実施形態では、濾液回路はフィルタに通じ、こうして濾液領域で閉じられた回路を形成し、第1担体は微粒子の形態を有し、濾液回路はこれらの微粒子の懸濁液を含み、微粒子は20μm以下の平均粒径、好ましくは8μm以下の平均粒径、理想的には5μm以下の平均粒径を有する。この実施形態は上述した実施形態の発展形であり、第1担体(エンドトキシン結合リポペプチドによる吸着性コーティングの有無に関わらず)だけが濾液回路に配置される。微粒子状の第1担体(リポペプチドコーティングの有無に関わらず)はここでは懸濁液として濾液回路内を循環する。非常に小さくなるように選択された粒径のため、微粒子が例えばフィルタリークによって体外血液回路内に移動し、次いで患者の体内に移動すると、肺塞栓症のリスクを回避することができる。微粒子の懸濁液が含まれる体外血漿回路は、微小球体ベースの解毒システム(MDS)の重要な構成要素を構成し、欧州特許第0776223号明細書および米国特許第5855782号明細書に既に記載されている。
【0093】
本発明は、グラム陰性細菌による感染症の治療、特に全身性炎症反応(SIRS)、敗血症、重症敗血症、または敗血症性ショックの予防または治療に有利に使用される。本発明に係る灌流装置によって治療可能な疾患パターンの代表例は、グラム陰性細菌の感染後に発生し、かつSIRS、敗血症、多臓器不全を伴う重症敗血症、または敗血症性ショックにつながるおそれのあるものである。
【0094】
グラム陰性細菌の代表例としてエシェリキア属菌、ヘモフィルス・インフルエンザ、緑膿菌、パスツレラ、エンテロバクタ属菌、サルモネラ属菌、およびシゲラ属菌が挙げられる。本発明は特に、多剤耐性株の発生増大が観察されてきたグラム陰性細菌の場合に有利であり、ここでは特に関連する例として緑膿菌に重点を置く。
【0095】
既に上述の通りグラム陰性細菌に感染した場合に抗生物質を使用することにより、かつ抗生物質の投与によって誘発される細胞溶解の結果として、エンドトキシン分布の増大が発生しており、あるいは発生するおそれがある。エンドトキシン分布の増大は、例えば好ましくはPBP‐3(ペニシリン結合タンパク質3)に結合する抗生物質、例えばセファロスポリン類で最も一般的に使用されるセフタジジムのような抗生物質に対して記載されている。したがって本発明は、抗生物質の投与およびサイトカインの誘発によって引き起こされるエンドトキシン分布に対抗するために、細菌感染症の抗生物質による従来の治療の範囲で、追加の治療または予防手段として有利に使用される。
【0096】
さらなる態様では、本発明は、慢性肝不全の場合に、急性肝不全または急性代償不全の結果としての炎症反応、特に全身性炎症反応(SIRS)、敗血症、多臓器不全を伴う重症敗血症、または敗血症性ショックの予防または治療に有利に使用される。肝機能が無傷の患者では、腸管から血流内に入り込んだエンドトキシンは、エンドサイトーシスによって細網内皮系(RES)またはクッパー細胞から除去される。慢性肝不全のある患者では急性代償不全が発生することがある。この場合、正常な腸管内細菌叢のエンドトキシンは腸管バリアを通過し、かつしたがって妨害されずに肝臓に入り込み、全身性炎症反応(SIRS)、敗血症、多臓器不全を伴う重症敗血症、または敗血症性ショックを導く。
【0097】
本発明はまた、内毒血症により引き起こされる状態または状況を本発明に係る体外灌流装置によって予防または治療する方法にも関する。上述の定義および展開は、この方法にも同等に適用される。
【0098】
本発明に係る灌流装置によって患者の治療を開始する前に、迅速に分解ししかつリポペプチド血清中濃度を好ましくは0.01μg/mlから0.8μg/mlに調整するために、一度ボーラス投与を行うことが好ましい。この開示の範囲内で、用語「ボーラス」は、製剤の形、好ましくは注射または輸液製剤の形によるエンドトキシン結合リポペプチドの単回非経口投与を意味すると理解される。ボーラス投与は、本発明に係る装置の上述した全ての実施形態に関連して有利に使用することができる。ボーラス投与のための注射液の例は、以下の実施例4に明記する。
【0099】
本発明について、非限定実施例および図面に基づいて以下で詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0101】
図1は体外灌流装置100(体外血液浄化装置100)の略図を示す。灌流装置100は、患者101からフィルタ104までの動脈流入部102a(動脈分枝)と、フィルタ104から患者101までの静脈流出部102b(静脈分枝)とを備えた体外血液回路102を有する。患者の血液は血液ポンプ103(治療方法によってポンプ速度Q
Blut=60〜300ml/分)によって血液回路102内を運ばれる。フィルタ104は、モル質量が340000g/モル(340kDa)の物質に対し5%のふるい係数を有し、ここではAlbuflow(登録商標)型のフィルタ(製造者:Fresenius Medical Care;材料:ポリスルホン中空繊維;ふるい係数はアルブミンに対しては0.6以上、フィブリノゲンに対しては0.1以下)である。血漿の一部(=分画血漿)はフィルタ104によって濾別され、濾液回路105に送られる。相対モル質量が340kDaの物質に対するふるい係数が5%のフィルタは、フィブリノゲン、免疫グロブリン、LDL、HDL等のような高分子血漿成分が保持される一方、アルブミンまたはタンパク質Cのようなより小さい血液成分がフィルタ膜を通過するように、分画血漿を通過させる。濾液回路105は、フィルタ104の下流で静脈分枝102b内に通じる開放型回路として形成される。分画血漿は濾液ポンプ106(ポンプ速度Q
frakt.Plasma=Q
Blutの15〜20%)によって濾液回路105内を運ばれる。灌流装置100には装置100の自動制御のためのコントローラ110も割り当てられ、前記コントローラは信号接続を介してポンプ103、106にも接続される。コントローラ110はまた中央データ収集およびデータ出力もできるように構成されることが有用である。
【0102】
濾液回路105内を運ばれる分画血漿は、濾液回路105に配置されたカラム107に誘導される。カラム107は中性の疎水性表面を有する担体から形成された吸着床107aを含み、担体表面はリポペプチド分子、ここではポリミキシンから形成された吸着性コーティングを有する。
図1において、担体は120μmの平均粒径および15ないし20nmの平均細孔径を有するポリスチレンジビニルベンゼンポリマであり、ポリマの表面はポリミキシンによる吸着性コーティングを有する(ポリミキシンで被覆されたポリマの生産、実施例1参照)。したがって吸着床107aは一方では、TNF‐α、IL‐6、およびIL‐10のようなサイトカインのための枯渇剤として機能し、これらは担体に吸着され、血漿から除去される。他方では、吸着床107aは、濾液回路105内を運ばれる分画血漿に非常に少量のポリミキシンを連続的に分注することによって、ポリミキシンを血漿中に連続的に分注するための分注手段としても働く(脱着)。ポリミキシンはそこから体外血液回路102の静脈流出部102b内に入り、そこで血液中に存在するエンドトキシンとの複合体を形成し、これらを無害にする。
【0103】
図2は体外灌流装置200(体外血液浄化装置200)の略図を示す。灌流装置200は、患者201からフィルタ204までの動脈流入部202a(動脈分枝)と、フィルタ204から患者201までの静脈流出部202b(静脈分枝)とを備えた体外血液回路202を有する。患者の血液は、血液ポンプ203(ポンプ速度Q
Blut=30〜70ml/分)によって血液回路202内を運ばれる。フィルタ204は、モル質量が340000g/モル(340kDa)の物質に対し5%のふるい係数を有し、ここではAlbuflow(登録商標)型のフィルタ(製造者:Fresenius Medical Care;材料:ポリスルホン中空繊維;ふるい係数はアルブミンに対しては0.6以上、フィブリノゲンに対しては0.1以下)である。血漿の一部(=分画血漿)は血漿フィルタ204によって濾別され、濾液回路205に送られる。相対モル質量が340kDaの物質に対するふるい係数が5%のフィルタは、フィブリノゲン、免疫グロブリン、LDL、HDL等のような高分子血漿成分が保持される一方、アルブミンまたはタンパク質Cのようなより小さい血液成分はフィルタ膜を通過するように、分画血漿を通過させる。濾液回路205は濾液領域で閉鎖型回路として形成され、分画血漿は濾液ポンプ206(ポンプ速度Q
frakt.Plasma=Q
Blutの15〜25%)によって濾液回路205内を運ばれる。灌流装置200には装置200の自動制御のためのコントローラ210も割り当てられ、前記コントローラは信号接続を介してポンプ203、206にも接続される。コントローラ210はまた中央データ収集およびデータ出力もできるように構成されることが有用である。
【0104】
濾液回路205内を運ばれる分画血漿は、濾液回路205に配置されたカラム207に誘導される。カラム207は中性の疎水性表面を有する担体から形成された吸着床207aを含み、担体表面はリポペプチド分子、ここではポリミキシンから形成された吸着性コーティングを有する。
図2において、担体は120μmの平均粒径および15ないし20nmの平均細孔径を有するポリスチレンジビニルベンゼンポリマであり、ポリマの表面はポリミキシンによる吸着性コーティングを有する(ポリミキシンで被覆されたポリマの生産、実施例1参照)。したがって吸着床207aは一方では、TNF‐α、IL‐6、およびIL‐10のようなサイトカインのための枯渇剤として機能し、これらは担体に吸着され、血漿から除去される。他方では、吸着床207aは、濾液回路205内を運ばれる分画血漿に非常に少量のポリミキシンを連続的に分注することによって、ポリミキシンを血漿中に連続的に分注するための分注手段としても働く(脱着)。ポリミキシンはそこから体外血液回路202内に入る。次いでポリミキシン分子は、血液中に存在するエンドトキシンとの複合体を形成する。
【0105】
図3は体外灌流装置300(体外血液浄化装置300)の略図を示す。灌流装置300は、患者301からフィルタ304までの動脈流入部302a(動脈分枝)と、フィルタ304から患者301までの静脈流出部302b(静脈分枝)とを備えた体外血液回路302を有する。患者の血液は、血液ポンプ303(ポンプ速度Q
Blut=60〜300ml/分)によって血液回路302内を運ばれる。フィルタ304は、モル質量が340000g/モル(340kDa)の物質に対し5%のふるい係数を有し、ここではAlbuflow(登録商標)型のフィルタ(製造者:Fresenius Medical Care;材料:ポリスルホン中空繊維;ふるい係数はアルブミンに対しては0.6以上、フィブリノゲンに対しては0.1以下)である。血漿の一部(=分画血漿)はフィルタ304によって濾別され、濾液回路305に送られる。相対モル質量が340kDaの物質に対するふるい係数が5%のフィルタは、フィブリノゲン、免疫グロブリン、LDL、HDL等のような高分子血漿成分が保持される一方、アルブミンまたはタンパク質Cのようなより小さい血液成分がフィルタ膜を通過するように、分画血漿を通過させる。濾液回路305は、フィルタ304の下流で静脈分枝302b内に通じる開放型回路として形成される。分画血漿は濾液ポンプ306(ポンプ速度Q
frakt.Plasma=Q
Blutの15〜25%)によって濾液回路305内を運ばれる。
【0106】
濾液回路305内を運ばれる分画血漿は、濾液回路305に配置されたカラム307に誘導される。カラム307は中性の疎水性表面を有する担体から形成された吸着床307aを含む。
図3において、担体は120μmの平均粒径および15ないし20nmの平均細孔径を有するポリスチレンジビニルベンゼンポリマである。吸着床307aは、TNF‐α、IL‐6、およびIL‐10のようなサイトカインを担体に吸着させ、それらを血漿から除去することによって、これらの枯渇剤として機能する。
【0107】
エンドトキシン結合リポペプチドを分注するために、灌流装置300には、リポペプチド輸液、ここではポリミキシン輸液が入った輸液容器309(例えば輸液ボトルまたは輸液バッグ)と、輸液チューブ311と、輸液ポンプ312とを備えた、それ自体公知の輸液装置308が割り当てられる。適切な輸液については以下に実施例5でさらに詳述する。ポリミキシンは、リポペプチド供給ポイント313で体外血液回路302の静脈流出部302bに注入される。次いでポリミキシン分子は、血液中に存在するエンドトキシンと複合体を形成する。
【0108】
図3はまた、ポリミキシンセンサ314がフィルタ304の下流およびリポペプチド供給ポイント313の上流に配置された、有利な展開を示す。例として、Jiangらによって以前に記載されたポリミキシンセンサ(Jiang et al.2004.A synthetic peptide derived from bactericidal/permeability‐increasing protein neutralizes endotoxin in vitro and in vivo.International Immunopharmacology 4:527‐537)をこの目的に使用することができる。測定のために、体外血液回路302から分岐管を介して少量の血液をセンサ314に運び、ポリミキシンの濃度が決定された後、廃棄することが好ましい。灌流装置300には装置300の自動制御のためのコントローラ310も割り当てられ、前記コントローラはポンプ303、306、311にも接続され、該当する場合には、信号接続を介してポリミキシンセンサ314にも接続される。コントローラ310は中央データ収集およびデータ出力もできるように構成することが好都合である。灌流装置300にはコントローラ310によって制御される制御回路を割り当てることもでき、輸液ポンプ312を作動させることによって、ポリミキシンの注入量は、センサ314によって測定されたポリミキシン現在値(ポリミキシン血清中濃度)に応じて、予め定められた目標値または目標値範囲に関連して制御される。ポリミキシン血清中濃度の目標値または目標値範囲は通常、0.01〜0.8μg/mlの範囲である。
【0109】
図4は体外灌流装置400(体外血液浄化装置400)の略図を示す。灌流装置400は、患者401からフィルタ404までの動脈流入部402a(動脈分枝)と、フィルタ404から患者401までの静脈流出部402b(静脈分枝)とを備えた体外血液回路402を有する。患者の血液は血液ポンプ403(ポンプ速度Q
Blut=60〜300ml/分)によって血液回路402内を運ばれる。フィルタ404は、モル質量が340000g/モル(340kDa)の物質に対し5%のふるい係数を有し、ここではAlbuflow(登録商標)型のフィルタ(製造者:Fresenius Medical Care;材料:ポリスルホン中空繊維;ふるい係数はアルブミンに対しては0.6以上、フィブリノゲンに対しては0.1以下)である。血漿の一部(=分画血漿)はフィルタ404によって濾別され、濾液回路405に送られる。相対モル質量が340kDaの物質に対するふるい係数が5%のフィルタは、フィブリノゲン、免疫グロブリン、LDL、HDL等のような高分子血漿成分が保持される一方、アルブミンまたはタンパク質Cのようなより小さい血液成分がフィルタ膜を通過するように、分画血漿を通過させる。濾液回路405は濾液領域で閉鎖型回路として形成され、分画血漿は濾液ポンプ406(ポンプ速度Q
frakt.Plasma=Q
Blutの15〜25%)によって濾液回路405内を運ばれる。
【0110】
濾液回路405内を運ばれる分画血漿は、濾液回路405に配置されたカラム407に誘導される。カラム407は中性の疎水性表面を有する担体から形成された吸着床407aを含む。
図4において、担体は120μmの平均粒径および15ないし20nmの平均細孔径を有するポリスチレンジビニルベンゼンポリマである。吸着床407aは、TNF‐α、IL‐6、およびIL‐10のようなサイトカインを担体に吸着させてそれらを血漿から除去することによって、それらの枯渇剤として機能する。
【0111】
エンドトキシン結合リポペプチドを分注するために、灌流装置400は、リポペプチド輸液、ここではポリミキシン輸液が入った輸液容器409(例えば輸液ボトルまたは輸液バッグ)と、輸液チューブ411と、輸液ポンプ412とを備えたそれ自体公知の輸液装置408である。適切な輸液については以下に実施例5でさらに詳述する。ポリミキシンは、リポペプチド供給ポイント413で体外血液回路402の静脈流出部402bに注入される。次いでポリミキシン分子は、血液中に存在するエンドトキシンと複合体を形成する。
【0112】
図3と同様に、
図4はさらに、フィルタ404の下流およびリポペプチド供給ポイント413の上流にポリミキシンセンサ414が配置された有利な展開を示す。例として、Jiangらによって以前に記載されたポリミキシンセンサ(Jiang et al.2004.A synthetic peptide derived from bactericidal/permeability‐increasing protein neutralizes endotoxin in vitro and in vivo.International Immunopharmacology 4:527‐537)をこの目的に使用することができる。測定のために、体外血液回路402から分岐管を介して少量の血液をセンサ414に運び、ポリミキシンの濃度が決定された後、廃棄することが好ましい。灌流装置400には装置400の自動制御のためのコントローラ410も割り当てられ、前記コントローラはポンプ403、406、411にも接続され、該当する場合には、信号接続を介してポリミキシンセンサ414にも接続される。コントローラ410は中央データ収集およびデータ出力もできるように構成することが好都合である。灌流装置400にはコントローラ410によって制御される制御回路を割り当てることもでき、輸液ポンプ412を作動させることによって、ポリミキシンの注入量は、センサ414によって測定されたポリミキシン現在値(ポリミキシン血清中濃度)に応じて、予め定められた目標値または目標値範囲に関連して制御される。ポリミキシン血清中濃度の目標値または目標値範囲は通常、0.01〜0.8μg/mlの範囲である。
【0113】
図5は体外灌流装置500(体外血液浄化装置500)の略図を示す。灌流装置500は、患者501からフィルタ504までの動脈流入部502a(動脈分枝)と、フィルタ504から患者501までの静脈流出部502b(静脈分枝)とを備えた体外血液回路502を有する。患者の血液は血液ポンプ503(ポンプ速度Q
Blut=60〜300ml/分)によって血液回路502内を運ばれる。フィルタ504は、モル質量が340000g/モル(340kDa)の物質に対し5%のふるい係数を有し、ここではAlbuflow(登録商標)型のフィルタ(製造者:Fresenius Medical Care;材料:ポリスルホン中空繊維;ふるい係数はアルブミンに対しては0.6以上、フィブリノゲンに対しては0.1以下)である。血漿の一部(=分画血漿)はフィルタ504によって濾別され、濾液回路505に送られる。相対モル質量が340kDaの物質に対するふるい係数が5%のフィルタは、フィブリノゲン、免疫グロブリン、LDL、HDL等のような高分子血漿成分が保持される一方、アルブミンまたはタンパク質Cのようなより小さい血液成分がフィルタ膜を通過するように、分画血漿を通過させる。濾液回路505は、フィルタ504の下流で静脈分枝502内に通じる開放型回路として形成される。分画血漿は濾液ポンプ506(ポンプ速度Q
frakt.Plasma=Q
Blutの15〜25%)によって濾液回路505内を運ばれる。灌流装置500には、装置500の自動制御のためのコントローラ510も割り当てられ、前記コントローラは信号接続を介してポンプ503、506にも接続される。コントローラ510はまた中央データ収集およびデータ出力もできるように構成されることが有用である。
図5において、濾液回路505は開放型回路として形成される。しかし、濾液回路505は閉鎖型回路として形成することもできる。
【0114】
濾液回路505内を運ばれる分画血漿は、濾液回路505に配置されたカラム507に誘導される。カラム507は中性の疎水性表面を有する担体から形成された吸着床507aを含む。
図5において、担体は120μmの平均粒径および15ないし20nmの平均細孔径を有するポリスチレンジビニルベンゼンポリマである。吸着床507aは、TNF‐α、IL‐6、およびIL‐10のようなサイトカインを担体に吸着させてそれらを血漿から除去することによって、それらの枯渇剤として機能する。
【0115】
リポペプチドを分注するために、さらなるカラム508がカラム507の下流で濾液回路505に配置される。カラム508は、中性の疎水性表面を有する担体から形成された担体床508aを含み、担体表面はリポペプチド分子、ここではポリミキシンから形成された吸着性コーティングを有する。
図5において、担体は120μmの平均粒径および15ないし20nmの平均細孔径を有するポリスチレンジビニルベンゼンポリマであり、ポリマの表面はポリミキシンによる吸着性コーティングを有する(ポリミキシンで被覆されたポリマの生産、実施例1参照)。担体床508aは、濾液回路505内を運ばれる分画血漿に非常に少量のポリミキシンを連続的に分注することによって、ポリミキシンを血漿中に連続的に分注するための分注手段として働く(脱着)。ポリミキシンはそこから体外血液回路502内に入る。次いでポリミキシン分子は、血液中に存在するエンドトキシンと複合体を形成する。
【0116】
図6は体外灌流装置600(体外血液浄化装置600)の略図を示す。灌流装置600は、患者601からフィルタ604までの動脈流入部602a(動脈分枝)と、フィルタ604から患者601までの静脈流出部602b(静脈分枝)とを備えた体外血液回路602を有する。患者の血液は、血液ポンプ603(ポンプ速度Q
Blut=60〜300ml/分)によって血液回路602内を運ばれる。フィルタ604は、モル質量が340000g/モル(340kDa)の物質に対し5%のふるい係数を有し、ここではAlbuflow(登録商標)型のフィルタ(製造者:Fresenius Medical Care;材料:ポリスルホン中空繊維;ふるい係数はアルブミンに対しては0.6以上、フィブリノゲンに対しては0.1以下)である。血漿の一部(=分画血漿)はフィルタ604によって濾別され、濾液回路605に送られる。相対モル質量が340kDaの物質に対するふるい係数が5%のフィルタは、フィブリノゲン、免疫グロブリン、LDL、HDL等のような高分子血漿成分が保持される一方、アルブミンまたはタンパク質Cのようなより小さい血液成分がフィルタ膜を通過するように、分画血漿を通過させる。濾液回路605は濾液領域で閉鎖型回路として形成され、分画血漿は濾液ポンプ606(ポンプ速度Q
frakt.Plasma=Q
Blutの15〜25%)によって濾液回路605内を運ばれる。
【0117】
灌流装置600には装置600の自動制御のためのコントローラ610も割り当てられ、前記コントローラは信号接続を介してポンプ603、606にも接続される。コントローラ610はまた中央データ収集およびデータ出力もできるように構成されることが好都合である。
【0118】
ここで、枯渇剤/分注手段607としての濾液回路605は、担体607aの懸濁液(詳細には図示せず)を含み、すなわち枯渇剤/分注手段607つまり担体607aは微粒子状であり、分画血漿中に分散された懸濁液として存在し、懸濁液として濾液回路605内を循環する。微粒子状の担体607aは中性の疎水性表面を有し、担体表面はリポペプチド分子、ここではポリミキシンから形成された吸着性コーティングを有する。
図6において、担体607aは、5μm+/−3〜4μmの平均粒径および15ないし20nmの平均細孔径を持つポリスチレンジビニルベンゼンポリマ(ポリマ入手源:Rohm&Haas)であり、ポリマの表面はポリミキシンによる吸着性コーティングを有する(ポリミキシンで被覆されたポリマの生産、実施例1参照)。したがって、微粒子状の担体607aは一方では、TNF‐α、IL‐6、およびIL‐10のようなサイトカインを担体に吸着させてそれらを血漿から除去することによって、それらの枯渇剤として機能する。他方では、微粒子状の担体607aは、濾液回路605内を運ばれる分画血漿に非常に少量のポリミキシンを連続的に分注することによって、ポリミキシンを血漿中に連続的に分注するための分注手段としても働く(脱着)。そこからポリミキシンは体外血液回路602内に移動する。次いでポリミキシン分子は、血液中に存在するエンドトキシンと複合体を形成する。
【0119】
図7は体外灌流装置700(体外血液浄化装置700)の略図を示す。灌流装置700は、患者701からフィルタ704までの動脈流入部702a(動脈分枝)と、フィルタ704から患者701までの静脈流出部702b(静脈分枝)とを備えた体外血液回路702を有する。患者の血液は、血液ポンプ703(ポンプ速度Q
Blut=60〜300ml/分)によって血液回路702内を運ばれる。フィルタ704は、モル質量が340000g/モル(340kDa)の物質に対し5%のふるい係数を有し、ここではAlbuflow(登録商標)型のフィルタ(製造者:Fresenius Medical Care;材料:ポリスルホン中空繊維;ふるい係数はアルブミンに対しては0.6以上、フィブリノゲンに対しては0.1以下)である。血漿の一部(=分画血漿)はフィルタ704によって濾別され、濾液回路705に送られる。相対モル質量が340kDaの物質に対するふるい係数が5%のフィルタは、フィブリノゲン、免疫グロブリン、LDL、HDL等のような高分子血漿成分が保持される一方、アルブミンまたはタンパク質Cのようなより小さい血液成分がフィルタ膜を通過するように、分画血漿を通過させる。濾液回路705は、フィルタ704の下流で静脈分枝702b内に通じる開放型回路として形成される。分画血漿は濾液ポンプ706(ポンプ速度Q
frakt.Plasma=Q
Blutの15〜25%)によって濾液回路705内を運ばれる。
図7において、濾液回路705は開放型回路として形成される。しかし、濾液回路705は閉鎖型回路として形成することもできる。
【0120】
濾液回路705内を運ばれる分画血漿は、濾液回路705に配置されたカラム707に誘導される。カラム707は中性の疎水性表面を有する担体から形成された吸着床707aを含む。
図7において、担体は120μmの平均粒径および15ないし20nmの平均細孔径を有するポリスチレンジビニルベンゼンポリマである。吸着床707aは、TNF‐α、IL‐6、およびIL‐10のようなサイトカインを担体に吸着させてそれらを血漿から除去することによって、それらの枯渇剤として機能する。
【0121】
リポペプチドを分注するために、透析器708(透析用フィルタ708)が体外血液回路702の静脈分枝702bに配置される。透析器で、血液は半透膜を介して透析液と接触する。透析液は透析液ポンプ709によって透析液流入部708aを介して透析器708に送り込まれる。透析器708内を通過した後、透析液は透析液流出部708bを介して取り出され、廃棄される。リポペプチド、ここではポリミキシンは、透析液によって血液に送られる。
図7に示す実施形態では、透析器708はリポペプチド(ポリミキシン)を体外血液回路702内に分注するための分注手段として働く。次いでポリミキシン分子は、血液中に存在するエンドトキシンと複合体を形成する。
【0122】
透析器708は、PVP(ポリビニルピロリドン)を配合することによって製造された、1.4〜2.0m
2の表面を持つ親水性ポリスルホン膜を備えることが好ましい。例として、これらの膜は、Fresenius Medical Care社製のフィルタ、とりわけモデルAF1000およびFX60に使用されている。これらの透析用フィルタは、アルブミンに対し0.1%未満のふるい係数を有する。アルブミンに対し約4%のふるい係数を有する、同じく親水性ポリスルホン膜の使用に基づいた、ハイカットオフフィルタとして知られるものを使用することも考えられる。透析条件下で、すなわち除去するように意図された物質の拡散制御除去が主に使用されるときに、アルブミン損失は1回の処置当たり5〜10g未満である。Fresenius Medical Care社によって製造されたEMiC
2フィルタは、このタイプの透析用フィルタの例として挙げることができる。このタイプのフィルタが臨床用途で動作する流動条件は、使用条件によって60〜300ml/分の血流量が得られるようにそれに応じて選択される。持続的静静脈血液透析として知られる条件下では、60〜80ml/分の血流量が使用される一方、敗血症の場合にも非常に頻繁に発生する、急性症例すなわち急性腎不全の患者における透析装置支援間欠的血液透析の場合、150〜300ml/分の血流量が使用される。間欠的血液透析の場合の透析液の流量は500ml/分に設定することが好ましい一方、持続的静静脈血液透析の場合、血流量に対し1:1の比率の透析液流量が一般的である。上述した透析用フィルタのふるい係数は0.8(AF1000)から0.9(EMiC
2)の間、すなわち80%から90%の間であるので、透析液中のリポペプチド/ポリミキシンの濃度は0.2〜1.0μg/lの範囲とすべきであり、すなわち治療対象患者の管理された血清中濃度値よりわずかに高くすべきである。
【0123】
灌流装置700は、装置700の自動制御のために、コントローラ710も割り当てられる。コントローラ710は信号接続を介してポンプ703、706、709にも接続される。コントローラ710はまた中央データ収集およびデータ出力ができるように構成されることも好都合である。
【0124】
1.実施例1: 様々にPMBを被覆された担体(平均粒径:120μm、平均細孔径:15〜20nm)による血漿および分画血漿のポリミキシンB(PMB)脱着(Albuflowフィルタの使用)
1.1 PMBコーティング
担体:Amberchrom CG161c(ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマ、Dow Chemical Company)、平均粒径120μm、平均細孔径15nm;アクセス可能な表面はポリマ(乾燥)1g当たり900m
2。湿潤担体1ml当たりの乾燥重量は18%(w/v)。
ポリミキシンB(PMB):硫酸ポリミキシンB(Sigma Aldrich)
【0125】
PMB溶液(10mg/ml蒸留水)を121℃で30分間オートクレーブし、次いで15mlのグライナーチューブ(Greiner tube)内で担体にPMBを以下(表1.1)の通り、すなわち3mlの担体に7.5mlのPMB溶液を用いて、被覆させる。
【表1】
【0126】
室温でロールミキサでコーティングを一晩かけて実行する。次いで担体を10mlのNaCl溶液(無菌)で二回洗浄して、50%懸濁液を生成する。
【0127】
1.2 バッチ試験
Albuflow(登録商標)フィルタ(ドイツ国Fresenius Medical Care社製)を用いて新鮮凍結血漿(クエン酸血漿)を分画化し、全血漿と共に−20℃で凍結した。
A:全血漿
B:分画血漿
【表2】
【0128】
デュプリケート法で(表1.2参照)、Enviro‐genieを用いて、担体を0.5mlずつ、4.5ml血漿=10%(v/v)法により37℃で60分培養する。次いで担体を遠心分離し、上澄みを使用してELISAによりPMBを定量する(中国Beijing Kwinbon Biotechnology Co.,Ltd.社製ポリミキシンELISA)。
【0129】
1.3 結果
PMB濃度が高くなると、担体を被覆するために使用されたPMB溶液は、血漿中の多量のPMBを脱着する。結果を
図8に示す(PMBコーティング濃度によるPMBの脱着)。
【0130】
脱着により分画血漿で約150ng/mlのPMB血漿レベルを達成するために、この試験に使用する担体は、吸着体1ml当たり10mgのPMBを被覆しなければならない。
【0131】
2.実施例2: 血清中に様々なPMB被覆担体を含むエンドトキシンバッチ
2.1 試験構造
コンディショニングされた担体(Amberchrom CG161c:エチルビニルベンゼンジビニルベンゼンコポリマ(Dow Chemical Company、平均粒径120μm、平均細孔径15nm)に、様々な量のポリミキシンB(PMB)すなわち湿潤担体1g当たり0、5、10、15、および25mgを被覆する。これらをエンドトキシンバッチ試験でトリプリケート法により血清中のLPSの不活化について試験する。
【0132】
2.2 試験の実施
PMBコーティング
様々なPMB濃度(湿潤担体1g当たり5mg、10mg、15mg、および25mg)の担体試料を作成する(上記実施例1のプロトコール参照)。PMB溶液(10mg/ml蒸留水)および50%懸濁液中の担体を121℃で30分間オートクレーブし、15mlのグライナーチューブで担体に次の通りPMBを被覆する(表2.2)。
【表3】
【0133】
オーバヘッドシェーカ(overhead shaker)(Enviro‐Genie、振動数:25:50)で室温で4時間コーティングを実行する。次いで担体を10mlのNaCl溶液(無菌)で二回洗浄し、50%の懸濁液を生成する。
【0134】
血清の生成:
8mlを測定する7本の採血管(凝固活性化用の血清ビーズ入りvacuette)をドナーから取り外す。血液が充填された管を30分間静置する。次いで凝固した血液を遠心分離して血清を得る(無菌三角フラスコ内で冷却する)。
エンドトキシン(LPS)溶液:
LPS:緑膿菌、L‐7018、Sigma社バッチ:128K4115、−70℃で保存、10
-3g/ml(1mg/ml)で100μl
【0135】
このLPS保存液から無菌NaCl溶液で濃度10μg/mlのLPS溶液を生成する。LPSを5ng/mlの最終濃度でバッチに使用する。濃度10μg/mlのLPS溶液10μlをピペットで20mlの血清に移す。バッチ試験は2mlの血液試料採取管でトリプリケート法で実施する。
【0136】
2.3 結果:
最低濃度の被覆PMBでも50%を超えるLPS不活化を達成することができた。結果を
図9に示す(EU=エンドトキシン単位)。
【0137】
3.実施例3: 大腸菌および緑膿菌由来のエンドトキシンに基づくポリミキシン濃度によるエンドトキシン(LPS)の不活化
3.1.目的
この試験の目的は、血漿中のポリミキシンB(PMB)濃度依存エンドトキシン活性化を決定することである(バッチ試験I)。さらに、このエンドトキシン活性化の結果サイトカイン分布が阻害される程度を調査する(バッチ試験II)。
【0138】
3.2 血液ドナー
5IUのヘパリンを添加した9本の血液試料採取管(各管が9mlを測定)をドナーから取り外す。血漿を遠心分離し、細胞ペレットをロールミキサで培養する。血漿にエンドトキシン(LPS)を添加し、バッチ試験Iに使用する:
【0139】
3.3 LPS添加ポリミキシンB溶液およびバッチ試験I
LPS:緑膿菌(L‐7018、Sigma社バッチ:128K4115、−70℃、10
-3g/ml(1mg/ml)で100μl)
LPS:大腸菌(L‐4130、Sigma社バッチ:110M4086M、?70℃、10
-3g/ml(1mg/m)で100μl)
【0140】
LPSを0.5ng/mlの最終濃度でバッチに使用する。3mlの発熱物質を含まないガラスバイアルで試験を実行する。バッチ試験Iでは、デュプリケート法で異なるPMB濃度(Sigma社、P‐1004)を加え、オーバヘッドシェーカで37℃で60分間培養する(表3.5参照)。
【0141】
バッチ試験Iでは、0(PMB無し)、10、100、250、500、および1000ng/mlのPMB濃度を使用する。この目的のために、下記の濃度の無菌PMB溶液(121℃で90分間オートクレーブ処理された発熱物質を含まないもの)を生成する(表3.3):
【表4】
【0142】
3.4 エンドトキシン分析
Charles Riverによるリムルス・アメボサイト・ライセート(Limulus Amebocyte Lysate)試験(LAL)を用いて、エンドトキシンをEU/mlの形式で測定した。
【0143】
3.5 サイトカインバッチ(バッチ試験II)
バッチ試験Iの後、LPSおよびPMBを添加した血漿を、比率1:1で血液ドナーから得た細胞濃縮液に戻す(表3.5参照)。サイトカインバッチ、バッチ試験Iからの試料を0(PMB無し)、250、500、および1000ng/mlのPMB濃度で使用した。対照として、LPSを含まず、1000ng/mlのPMBを含む試料を使用した。ロールミキサ(5回転/分)における37℃での4時間および12時間の培養時間後に、試料を採取し、遠心分離し、その後のサイトカイン定量化のために、50μlの血漿を−80℃で凍結した。サイトカインバッチのための試験データを表3.5に記載する。
【表5】
【0144】
3.6 結果
エンドトキシンバッチ(バッチ試験I):
図10は、60分の培養後のPMB濃度(n=2)による血漿中の大腸菌由来のLPS(原LPS濃度:0.5ng/ml)の阻害を示す。
【0145】
図11は、60分の培養後のPMB濃度(n=2)による血漿中の緑膿菌由来のLPS(原LPS濃度:0.5ng/ml)の阻害を示す。
【0146】
結果は明らかに、血漿中の非常に低いPMB濃度でも、すなわち50から300ng/ml(0.05から0.3μg/ml)の範囲で、大腸菌および緑膿菌由来のLPSの強い阻害が起きることを示し、PMB濃度が増加しても、LPS阻害は著しく増加しなくなる。その結果、非常に低い濃度のPMBでも、LPS(エンドトキシン)の活性を阻害するのに充分である。これらの低い濃度では、神経毒性および腎毒性副作用は除外される。
【0147】
サイトカインバッチ(バッチ試験II):
4時間培養後のLPS(大腸菌)添加血漿中のPMB濃度(PMB無し、250ng/ml、500ng/ml、および1000ng/ml;対照は1,000ng/mlでLPSを含まない)毎の血液細胞によるサイトカインTNF‐アルファ(
図12)、IL‐1ベータ(
図13)、IL‐6(
図14)、およびIL‐8(
図15)の分布を
図3ないし
図4に示す。バッチ試験IIの結果は、非常に低いPMB濃度でも、LPSの強い阻害(バッチ試験I参照)だけでなく、その後もサイトカイン分布の強い阻害が起きることをはっきりと示している。これは、重要なメディエータであるTNF‐アルファの阻害の場合に特に顕著である(
図12)。
【0148】
4.実施例4: ポリミキシンB(PMB)注射液(ボーラス投与用)の非経口投与用の製剤の調製実施例:
4.1 PMB血清中濃度100ng/ml血漿のボーラス投与
前提: 体重70kgで体重の60%がPMBの分布量の患者→42000ml分布量。
血漿1ml当たりPMB100ngのPMB血清中濃度が求められる→全部で4.2mgのPMBが必要である。
【0149】
60分の期間にわたるボーラス投与用の注射液: 生理食塩水100mlに4.2mgのPMB=60分の期間にわたるボーラス投与用の最終注射液。
【0150】
4.2 PMB血清中濃度250ng/ml血漿のボーラス投与
前提: 体重70kgで体重の60%がPMBの分布量の患者→42000ml分布量。
血漿1ml当たりPMB250ngのPMB血清中濃度が求められる→全部で10.5mgのPMBが必要である。
【0151】
120分の期間にわたるボーラス投与用の注射液: 生理食塩水100mlに10.5mgのPMB=120分の期間にわたるボーラス投与用の最終注射液。
ボーラス投与により所望のPMB血清中濃度がセットされるやいなや、これは、上述の通り、本発明に係る灌流装置に関連付けられる分注手段を用いてPMB放出により維持される。
【0152】
5.実施例5: 脂質供給ポイントから体外血液回路へのポリミキシンB(PMB)の注入用輸液および投与指示の実施例
前提: 体重70kgの患者→PMBの分布量(体重の60%)、体液42000mlにPMB100ng/ml→分布量に4.2mgのPMB(2.1.1参照)。
【0153】
血清半減期6時間の24時間注入用輸液: 血清中PMBの半減期を6時間と想定する:6時間にPMB2.1mgすなわちPMB8.4mg/日が分解される→生理食塩水1LにPMB8.4mg=24時間注入用輸液。
【0154】
血清半減期14時間の24時間注入用輸液: 血清中PMBの半減期は14時間:14時間にPMB4.2mgすなわちPMB7.2mg/日が分解される→生理食塩水1LにPMB7.2mg=24時間注入用輸液。
【0155】
6.実施例6: 灌流装置のPMB全クリアランスを考慮に入れた脂質供給ポイントから体外血液回路へのポリミキシンB(PMB)注入の投与指示
以下の計算実施例は、PMBの患者クリアランスの他に、体外血液回路に配置された透析器(透析用フィルタ)のクリアランスおよび枯渇剤の担体のクリアランスをも考慮に入れている。計算実施例は既存のPMBの血清中濃度を前提とする。これは処置の開始前のボーラスの投与によってもたらされ、実施例4で記載した注射液をこの目的に使用することができる。
【0156】
脂質供給ポイントから体外血液回路への注入を介するポリミキシンBの投与の計算のために、患者の身体、透析器、および枯渇剤のPMBクリアランスを考慮する。
―PMBの透析クリアランス(CDial)は実験で決定することができ、血漿流量 および使用する透析用フィルタの種類にも依存する。特定の実施例では、これは60m l/分である。
―枯渇剤のPMBクリアランス(Cads)は使用する担体材料および濾液流量にも 依存する。特定の実施例ではこれは45ml/分である。
―PMBの患者クリアランスは、特定の実施例で、13.6のPMBの半減期から決 定された。それは36ml/分である。
【0157】
PMBの全クリアランス(Ctotal)は、個々のPMBクリアランス速度から加算によって得られる。結果としてのPMBの低下を
図16に示す。
図16で明瞭な特定の瞬間におけるPMB減少(Ctotal)の明らかな低下は、関連する瞬間のPMB血清中濃度を維持するために必要なPMBの注入に対応する。
【0158】
特定の実施例に対し次の
注入速度が与えられる:
=>透析および吸着による処置中、PMB0.84mg/時
6時間の体外処置により、以下の
注入しなければならないPMB量がここから得られる。
6時間の透析および吸着による処置: 5.1mg
【0159】
7.実施例7: Albuflowフィルタの使用によるサイトカインの吸着の改善(血漿および分画血漿の比較)
7.1 サイトカイン吸着バッチ試験
試験の説明:
異なる細孔径(30nmおよび15-20nm)の吸着体を、全血漿および分画血漿中のTNFα、IL‐6、およびIL‐10の吸着に関して試験する。
【0160】
試験構造:
担体:ポリスチレンジビニルベンゼンコポリマ、CG300c(担体A)、CG161c(担体B)、Dow Chemical Group
担体A:粒径:120μm、細孔径:30nm
担体B:粒径:120μm、細孔径:15〜20nm
血漿:深温凍結された非分画クエン酸血漿(血液の遠心分離によって得られた新鮮凍結血漿)
分画クエン酸血漿:Albuflowフィルタ(ドイツ国Fresenius Medical Care)の使用により得られる。
下の表7.1によるサイトカイン添加(TNF‐α、IL‐6、IL‐10)。
【0161】
担体AおよびBをコンディショニングする: 担体を2.5倍量の無水エタノールで洗浄し、担体を遠心分離する。上澄みを除去し、担体を2.5倍量の無水エタノールにより室温で1時間培養し、次いで遠心分離し、再び上澄みを除去する。次いで同じ手順を二回蒸留水を使用し、最後に生理食塩水を使用して実行する。コンディショニング後に、担体をさらに再度、0.9%NaCl溶液で3回洗浄する。
【0162】
トリプリケート法で全血漿および分画血漿(Albuflowフィルタにより前処理済み)の両方でバッチ試験を実施する。
【0163】
試験を開始する前に、担体を非添加全血漿または分画血漿で15分間培養し、NaClで1回洗浄し、次いでバッチ試験に使用する。
【0164】
バッチ試験:いずれの場合も、1mlの吸着体(湿潤)+9mlのクエン酸血漿をロールミキサ上で37℃で60分間。
【表6】
【0165】
分析:
R&D Systems社製の市販のELISAを用いてTNF‐α、IL‐6、およびIL‐10を定量した。
【0166】
7.2 結果
分画血漿における改善されたサイトカイン吸着を決定することができた。
【0167】
図17〜
図19は、血漿フィルタと比較してAlbuflowフィルタを使用することによるサイトカインTNF‐α、IL‐6、およびIL‐10の改善された吸着を示す。
【0168】
8.実施例8: 同一細孔径で異なる粒径のエチルビニルベンゼンジビニルベンゼンコポリマの吸着特性の試験
同一の平均細孔径(15〜20nm)を持つが、3〜5μm、35μm、75μm、および120μmの異なる平均粒径を持つエチレンビニルベンゼンジビニルベンゼンコポリマ(担体)を、タンパク質Cに対する吸着特性に関して比較した。
【0169】
8.1 中性の疎水性ポリマの準備
この実施例で使用する同一平均細孔径および異なる平均粒径を持つエチレンビニルベンゼンジビニルベンゼンコポリマ(Amberchrom CG161、Rohm&Haas/Dow Chemical Company)を表8.1に記載する。
【表7】
【0170】
8.2 担体調製およびバッチ試験
表8.1に記載された担体#2000、#1785、#1760、および#2004をバッチ試験で、タンパク質Cに対するそれらの吸着特性に関して試験し、相互に比較した。
【0171】
担体をコンディショニングし、バッチ試験の直前に血漿中で15分間培養し、遠心分離し、次いでバッチ試験に使用した。
【0172】
担体のコンディショニング:乾燥担体は、水溶液または血漿による適切な湿潤化を可能にするために、使用前にコンディショニングする必要がある。乾燥疎水性担体は次の通り前処理する。所要量の乾燥担体を50mlのグライナーチューブに入れ、5倍量の未変性エタノールで洗浄する(懸濁させ、4000rpmで5分間遠心分離する)。上澄みを取り除いて捨て、再び新鮮な未変性エタノールで懸濁させ、1時間培養する(Enviro‐Genie、振動数25:50)。培養後に、担体懸濁液を遠心分離し(4000rpmで5分間遠心分離)、上澄みを捨てる。次いで担体を5倍量の蒸留水で洗浄する(懸濁させ、4000rpmで5分間遠心分離する)。上澄みを取り除いて捨て、再び新鮮な蒸留水で懸濁させ、1時間培養する(Enviro‐Genie、振動数25:50)。培養後に、担体懸濁液を遠心分離し(4000rpmで5分間遠心分離)、上澄みを捨てる。次いで担体を5倍量の生理食塩水で洗浄する(懸濁させ、4000rpmで5分間遠心分離する)。上澄みを取り除いて捨て、新鮮な生理食塩水で再び懸濁させ、1時間培養する(Enviro‐Genie、振動数25:50)。培養後に、担体懸濁液を遠心分離し(4000rpmで5分間遠心分離)、上澄みを捨てる。最終的に生理食塩水で50%担体懸濁液を生成し、使用するまで冷蔵庫で保存する。
【0173】
バッチ法(トリプリケート法、n=3)のために、15mlのグライナーチューブ内で150μlの担体(湿潤)を各々1350μlのクエン酸血漿で被覆した。チューブはEnviro-Genie内で25/50rpmで37℃で60分間振動させた。対照(120μlのNaCl+1350μlのクエン酸血漿)として、担体無しのチューブが加えられた。
【0174】
タンパク質C分析のために15分後および60分後に各々500μlの試料を採取した。Sysmex(Siemens、CA560)および関連試薬(Siemens、OUVV17)によりタンパク質Cを分析した。
【0175】
8.3 分析および結果
図20は、個々の担体について時間の経過によるタンパク質Cの濃度(ヒト血漿中の生理的タンパク質C濃度に対する[%]単位で表記)を示す。曲線に基づいて、平均粒径に対するタンパク質C吸着の依存性は明確である。担体#2000および#1785では顕著なタンパク質Cの吸着が決定された。担体#2000の場合、タンパク質Cはわずか15分後に血漿から略完全に除去された。対照的に、担体#1760および#2004による血漿からのタンパク質Cの吸着の程度はずっと小さかった。担体#1760(60分の培養後)に観察された〜25%のタンパク質Cの減少は依然として、生理的関連量のタンパク質Cが血漿に残る範囲である。60分の培養後に、タンパク質Cの開始濃度に対しわずか8%という最低のタンパク質Cの吸着は、担体#2004に対して決定された。個々の担体によるタンパク質Cの吸着(タンパク質Cの開始濃度に対する%で表す)を表8.3に記載する。
【表8】
【0176】
9.実施例9: 細孔および粒径が異なり、したがって利用可能な吸着表面が異なる吸着体間の血漿中のPMBの脱着の比較
9.1 担体
CG161c:
担体(Rohm&Haas/Dow Chemical Company;本書では以下、吸着体ともいう)は多孔性ポリスチレンジビニルベンゼンマトリックスから構成される。平均細孔径は15nmであり、平均粒径は120μmであり、アクセス可能な表面は吸着体(乾燥)1gにつき900m
2である。湿潤吸着体1ml当たりの乾燥重量は18%(w/v)である。
【0177】
HPR10:
担体(Rohm&Haas/Dow Chemical Company;本書では以下、吸着体ともいう)は、多孔性ポリスチレンジビニルベンゼンマトリックスから構成される。平均細孔径は30〜40nmであり、平均粒径は10μmであり、アクセス可能な表面は吸着体(乾燥)1gにつき500m
2である。湿潤担体1ml当たりの乾燥重量は30%(w/v)である。
【0178】
9.2 ポリミキシンB(PMB)による担体のコーティング
PMB溶液(Sigma Aldrich、10mg/ml蒸留水)を121℃で30分間オートクレーブし、次いで15mlのグライナーチューブ内でそれぞれの担体(CG161cまたはHPR10)にPMBを以下(表9.2)の通り、すなわち3mlの担体に7.5mlのPMB溶液を用いて、被覆させる。
【表9】
【0179】
室温でロールミキサ上でコーティングを一晩かけて実行する。次いで吸着体を10mlのNaCl溶液(無菌)で二回洗浄して、50%懸濁液を生成する。
【0180】
9.3 バッチ試験
デュプリケート法で、Enviro‐genie内で0.5mlの担体懸濁液を各々4.5mlクエン酸血漿=10%(v/v)を用いて37℃で60分培養する。次いで担体を遠心分離し、上澄みを使用してELISAによりPMBを定量する(中国Beijing Kwinbon Biotechnology Co.,Ltd.社製ポリミキシンELISA)。
【0181】
9.4 結果
結果(
図21、
図22、
図23、および
図24参照)から、血漿中のポリミキシンの脱着率は利用可能な担体表面に非常に大きく依存することが明らかである。これは、ポリミキシンの脱着が、1m
2当たりの疎水結合ポリミキシンの量に依存することを意味する。これは、以下の計算表(表9.4.1および表9.4.2)からも明らかである。
【表10】
【表11】
【0182】
9.5 計算実施例
担体(以下、吸着体ともいう)からのPMBの脱着による処置中の血漿中のPMB濃度を正確に決定するために、それぞれの吸着体についてインビトロ脱着実験(実施例9で実施した通り)を行う必要がある。実験で得たデータに基づいて、担体のコーティングの程度によって(吸着体1g当たりのPMBの量)によって、血漿中の脱着およびしたがって血漿中のPMB濃度を非常に正確に調整することが可能である(
図21ないし
図24参照)。実施例1に示す通り、分画血漿中の脱着率はより低くすることができ、したがって別々に決定することができる。
【0183】
計算実施例1:
体外血液回路でPMB被覆吸着体HPR10を使用することによって、0.8μg/mlの血漿中PMB濃度を得る。予備試験(
図23参照)のおかげで、吸着体1g当たりの被覆PMBの量と血漿中の脱着PMBの量との間の相関を記述する関数を実験によって決定することができる。この場合、それは次の通りである。
PMB[mg/g吸着体]=0.00000001x
2 + 0.0012x + 1.258
x=所望の血漿中PMB濃度=0.8μg/ml=800ng/ml
x=800ng/mlを使用すると、担体1gにつき疎水結合しなければならないPMBの量は、2.224mg/g担体(HPR10)となる。
【0184】
計算実施例2:
体外血液回路でPMB被覆吸着体CG161cを使用することによって、0.8μg/mlの血漿中PMB濃度を得る。予備試験(
図23参照)のおかげで、吸着体1g当たりの被覆PMBの量と血漿中の脱着PMBの量との間の相関を記述する関数を実験によって決定することができる。この場合、それは次の通りである。
PMB[mg/g吸着体]=0.00000003x
2 + 0.0048x + 3.0442
x=所望の血漿中PMB濃度=0.8μg/ml=800ng/ml
x=800ng/mlを使用すると、吸着体1gにつき疎水結合しなければならないPMBの量は、7.076mg/g吸着体(CG161c)となる。
【0185】
計算実施例3:
体外血液回路でPMB被覆吸着体HPR10を使用することによって、0.1μg/mlの血漿中PMB濃度を得る。予備試験(
図23参照)のおかげで、吸着体1g当たりの被覆PMBの量と血漿中の脱着PMBの量との間の相関を記述する関数を実験によって決定することができる。この場合、それは次の通りである。
PMB[mg/g吸着体]=0.00000001x
2 + 0.0012x + 1.258
x=所望の血漿中PMB濃度=0.1μg/ml=100ng/ml
x=100ng/mlを使用すると、吸着体1gにつき疎水結合しなければならないPMBの量は、1.378mg/g吸着体(HPR10)となる。
【0186】
計算実施例4:
体外血液回路でPMB被覆吸着体CG161cを使用することによって、0.1μg/mlの血漿中PMB濃度を得る。予備試験(
図23参照)のおかげで、吸着体1g当たりの被覆PMBの量と血漿中の脱着PMBの量との間の相関を記述する関数を実験によって決定することができる。この場合、それは次の通りである。
PMB[mg/g吸着体]=0.00000003x
2 + 0.0048x + 3.0442
x=所望の血漿中PMB濃度=0.1μg/ml=100ng/ml
x=100ng/mlを使用すると、吸着体1gにつき疎水結合しなければならないPMBの量は、3.527mg/g吸着体(CG161c)となる。
【0187】
計算実施例5(分画血漿)
体外血液回路でPMB被覆吸着体CG161cを使用することによって、0.15μg/mlの血漿中PMB濃度を得る。予備試験(
図24参照)のおかげで、吸着体1g当たりの被覆PMBの量と分画血漿中の脱着PMBの量との間の相関を記述する関数を実験によって決定することができる。この場合、それは次の通りである。
PMB[mg/g吸着体]=2.6718 ln(x) − 3.3628
x=所望の血漿中PMB濃度=0.15μg/ml=150ng/ml
x=150ng/mlを使用すると、吸着体1gにつき疎水結合しなければならないPMBの量は、10.025mg/g吸着体(CG161c)となる。
【0188】
計算実施例6(分画血漿):
体外血液回路でPMB被覆吸着体CG161cを使用することによって、0.8μg/mlの血漿中PMB濃度を得る。予備試験(
図24参照)のおかげで、吸着体1g当たりの被覆PMBの量と分画血漿中の脱着PMBの量との間の相関を記述する関数を実験によって決定することができる。この場合、それは次の通りである。
PMB[mg/g吸着体]=2.6718 ln(x) − 3.3628
x=所望の血漿中PMB濃度=0.8μg/ml=800ng/ml
x=800ng/mlを使用すると、吸着体1gにつき疎水結合しなければならないPMBの量は、14.497mg/g吸着体(CG161c)となる。
【0189】
10.実施例10: 時間の経過によるポリミキシンB(PMB)の脱着
この試験は、血漿中の平衡反応(ポリミキシン(B)の吸着および脱着)が迅速かつ安定的であることを実証するように意図されている。
10.1 担体
HPR10: 担体HPR10(Rohm&Haas/Dow Chemical Company;以下、吸着体ともいう)は、多孔性ポリスチレンジビニルベンゼンマトリックスから構成される。平均細孔径は30〜40nmであり、平均粒径は10μmであり、アクセス可能な表面は担体(乾燥)1gにつき500m
2である。湿潤担体1ml当たりの乾燥重量は30%(w/v)である。
【0190】
10.2 ポリミキシンB(PMB)による担体のコーティング
PMB溶液(Sigma、10mg/ml蒸留水)を121℃で30分間オートクレーブし、次いで15mlのグライナーチューブ内で担体(HPR10)にPMBを以下(表10.2)の通り、すなわち3mlの担体に7.5mlのPMB溶液を用いて、被覆させる。
【表12】
【0191】
室温でロールミキサ上でコーティングを一晩かけて実行する。次いで被覆された担体を10mlのNaCl溶液(無菌)で二回洗浄して、50%懸濁液を生成する。吸着体無しのチューブを対照として含める。
【0192】
10.3 バッチ試験
5IUのヘパリン入り血漿に5ng/mlのLPS(L‐7018緑膿菌、Sigma社、バッチ:128K4115)を添加する。トリプリケート法で、1%PMB被覆担体をLPS添加血漿と共に(30μlの担体+2970μlのLPS添加血漿)、オーバヘッドシェーカ内で37℃で培養し、次いでLAL分析用の試料を(5分、15分、および60分)間隔で採取した。
【0193】
10.4 分析
LAL試験を用いて分析を実行した。
バッチ試験およびLAL試験に使用した材料:
【表13】
【0194】
10.5 結果
血漿中の脱着PMBの平衡濃度に非常に迅速に到達する。5分後のLPS不活化は培養60分後と略同一である(
図25参照)。
【0195】
11.実施例11: ポリミキシンB(PMB)を被覆された担体のコーティングのサイトカイン吸着に対する影響
11.1 試験の説明
非被覆吸着体CG161cと比較してPMB被覆吸着体CG161cがサイトカインの吸着に適している程度を、10%(v/v)バッチ試験で試験した。緑膿菌由来の5ng/mlエンドトキシン(LPS)も追加した。
【0196】
11.2 試験構造
担体:Amberchrom CG161(平均粒径120μm、平均細孔径15nm)
PMBによるコーティング:
PMB溶液(Sigma Aldrich、10mg/ml蒸留水)および50%懸濁液中の担体を15mlのグライナーチューブ内でPMBで次の通り(表11.2.1)被覆する。
【表14】
【0197】
コーティングをEnviro‐Genie(25:50)で室温で一晩かけて実行した。次いで担体を10mlのNaCl溶液(無菌)で二回洗浄し、50%懸濁液を生成した。
【0198】
バッチ法:
トリプリケート法:各々の場合に1mlの吸着体(湿潤)+9mlのスパイク
15mlのグライナーチューブをEnviro‐Genieで25/50rpm、37℃で、60分間振動させる。
【0199】
サイトカイン:
保存液を1:10で血漿(新鮮な凍結血漿、血漿ドナーセンターRetz)中に希釈する(1:10;保存液5μL+血漿45μL)。使用したサイトカインに対する血漿スパイク(100mL)の最終濃度を下の表11.2.2に示す。
【表15】
【0200】
エンドトキシン(LPS):
緑膿菌:L‐7018、Sigma社、バッチ:128K4115、−70℃、10
-3g/ml(1mg/ml)で100μl。
LPSを5ng/mlの最終濃度でバッチに使用する。
→100mlの血漿中に50μlの10
-5溶液(表11.2.3および表11.2.4参照)
【表16】
【表17】
=8個の試料、すなわち100mlのクエン酸血漿スパイク
【0201】
11.3 分析:
Biorad社製のLuminex装置(抗体ベース)を用いてサイトカイン分析を実行する。
【0202】
11.4 結果:
結果を
図26に示す。この図から、ポリミキシンBによる担体表面の吸着性コーティングがサイトカインの吸着に影響しないことが明瞭に分かる。