特許第6092389号(P6092389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6092389有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを利用した二次電池素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092389
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを利用した二次電池素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20170227BHJP
   H01G 11/52 20130101ALI20170227BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
   H01G11/52
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-525378(P2015-525378)
(86)(22)【出願日】2013年11月7日
(65)【公表番号】特表2015-529947(P2015-529947A)
(43)【公表日】2015年10月8日
(86)【国際出願番号】KR2013010038
(87)【国際公開番号】WO2014126325
(87)【国際公開日】20140821
【審査請求日】2015年1月29日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0015059
(32)【優先日】2013年2月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507324740
【氏名又は名称】ハンファ トータル ペトロケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン,ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジンア
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドフン
(72)【発明者】
【氏名】チォイ,チャンヒョン
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−059271(JP,A)
【文献】 特開2007−095575(JP,A)
【文献】 特開2010−157521(JP,A)
【文献】 特開2012−182084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/14− 2/18
H01M 10/00−10/0587
H01G 11/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材と、前記多孔性基材の単面、両面及び気孔部の少なくとも一部領域からなる群から選ばれる一つ以上の領域に、溶媒に粒子形態に分散または懸濁されたバインダーを含むコーテイング液を利用して単層または複層に形成されたコーテイング層を含むコーテイング多孔性分離膜の製造方法であって、
前記溶媒に分散または懸濁されたバインダーの平均粒径が前記多孔性基材の気孔平均サイズの1.5倍未満であることと、
前記コーテイング液には、前記溶媒に溶解される第2有機物バインダーとして、燐酸塩エステル、燐酸塩アクリル系共重合体、変性アクリレート系共重合体、変性アクリル酸系共重合体、エステルとアミンアマイド系共重合体、カルボキシル酸系共重合体、アルキルオールアミノアミド系共重合体、シロキサンとアクリル系共重合体、シロキサンとカルボキシル酸系共重合体、アルコキシルレート系共重合体、アクリル系とエーテル系の共重合体、及びこれらの金属塩形態から選ばれる1種または2種以上がさらに含まれることと、
前記コーテイング液は、分散された平均粒径0.1μm〜5μmの無機物粒子をさらに含み、コーティング液にて無機物粒子:バインダーの重量比は4:1〜140:1であることと、前記バインダーの平均粒径が、前記無機物粒子の平均粒径の1/2以下であることを特徴とするコーテイング多孔性分離膜の製造方法。
【請求項2】
前記バインダーは、ポリスチレン系、スチレンブタジエン系、ニトリル系、ポリビニルクロライド系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系、ポリビニルリデンフルオライド系、エチレン−ビニルアセテート系、ポリビニルブチルアール系、ポリテトラフルオロエチレン系、ポリイミド系、ポリエチレンオキシド系、セルロース系、ポリビニルアルコール系、澱粉系重合体または共重合体から選ばれる高分子化合物が有機溶媒または水系溶媒に分散されてなるラテックスまたはエマルジョンまたは懸濁液から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のコーテイング多孔性分離膜の製造方法。
【請求項3】
前記無機物粒子は、SnO、BaTiO、Al、CeO、SiO、TiO、LiPO、NiO、ZnO、MgO、Mg(OH)、CaO、ZrOおよびYから選ばれる1種または2種以上から構成され、平均粒径が0.1〜5μmの球形または板状形または不規則な形状の粒子形態であることを特徴とする請求項2に記載のコーテイング多孔性分離膜の製造方法。
【請求項4】
前記コーテイング液には、高分子分散剤、湿潤済、消泡及び脱泡剤、レベルリング剤、増粘剤、流動性添加剤、接着増進剤、表面用添加剤及びUV吸収剤から選ばれる1種以上の添加剤がさらに含まれることを特徴とする請求項1に記載のコーテイング多孔性分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記多孔性基材の厚さは1〜100μmであり、気孔度は5〜90%であることを特徴とする請求項1に記載のコーテイング多孔性分離膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項のいずれかの1項に記載の方法で製造されたコーテイング分離膜が適用された二次電池素子。
【請求項7】
前記二次電池素子がリチウム二次電池であることを特徴とする請求項に記載の二次電池素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池素子に使用される分離膜に関するものであって、より詳しくは、多孔性基材に有/無機複合コーテイング層を適用した多孔性分離膜及びこれを具備した二次電池素子に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、陽極/陰極/分離膜/電解液を基本に構成され、化学エネルギーと電気エネルギーが可逆的に変換されながら充放電が可能な、エネルギー密度が高いエネルギー貯蔵体であって、携帯ホン, ノートブックなどの小型電子装備に幅広く使用されてきたが、最近は環境問題、高油価、エネルギー効率及び貯蔵のための対応に、複合電気自動車(hybrid electric vehicles、HEV)、プラグ電気自動車 (Plug-in EV)、電気自転車(e-bike)及びエネルギー貯蔵システム(Energy storage system、ESS)への応用が急速に拡大されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池は、分離膜によって絶縁化されている安定な電気化学素子であるが、内部または外部の電池異常現象や衝撃によって陽極と陰極の短絡が発生され、発熱及び爆発可能性があるので、絶縁体としての分離膜の熱的/化学的安全性の確保は最も重要に考慮されるべき事項である。
更に、最近リチウム二次電池の高容量化、高出力化の要求が増化されるに従って、電池の安全性、即ち、爆発(explosion)、発火(fire)の如き電池に対する安全性がより重要なものに台頭してきており、このような電池の安全性を確保しようと電子的な保護回路やBMS(battery management system)による電池セルの電圧/電流/インピーダンス/温度等を綜合的に制御して、過充電、過電流などの電池異常に対応しようとする試みが行なわれている。
【0004】
リチウム二次電池において商業的に多く利用されるポリオレフィン系列の分離膜は、陽極と陰極の電気的な短絡を防止しながらリチウムイオンの通路になる気孔を提供する機能をする多孔性フィルムで、商業的には湿式法と乾式法によって製造されるポリオレフィン系列の分離膜が広く利用されている。
湿式法は、無機物粒子やオイル成分をポリオレフィンと共に押出し機内で 混練溶融押出しをしてシートを製造した後、ロールやテンターを利用して、同時または逐次二軸延伸を行なって薄膜フィルムを製膜し、ソルベントで無機粒子やオイル成分を抽出しする抽出工程を含む方式で多孔性フィルムを製造し、商業的にはポリオレフィン系中でポリエチレン(PE)を主に利用して製膜をする。一方、乾式法は樹脂を溶融押出しした後に、ロールによって延伸をするかテンターで延伸をして多孔性膜を製膜する、有機溶媒を使用しない多孔性フィルムを製造する技術であって、一般的にはポリプロピレン(PP)を主に使用し、時によってはポリエチレンを使用することもある。
【0005】
多孔性分離膜を製造する工程において、不織布形態の分離膜を除いて、一般的に、フィルム延伸という工程を通じて多孔性基材を製造されるポリオレフィン系多孔性分離膜は、根本的に100℃以上の内部または外部刺激によって電池が高温に上昇する場合、分離膜の収縮または溶融等のような体積変化が避けられないようになり、これに因る陽極/陰極間の電気的な短絡に因る爆発などが発生され得る。また、電池内部でデンドライト成長(dendrite growth)に起因して分離膜が破裂される場合、さらに内部短絡に因る電池爆発を誘導し得る問題もある。このような高温に依る熱収縮およびデンドライトによる電池の不安定性を抑制するために、多孔性分離膜基材の単面または両面に無機物粒子をバインダーと共にコーテイングすることにより、無機物粒子が基材の収縮率を抑制する機能を付与すると共に無機物コーテイング層によってより安全な分離膜を付与するコーテイング分離膜が開示されている。このとき、多孔性基材に適用された有/無機コーテイング層は、多孔性基材との均一なコーテイングにならないと表面におけるコーテイング欠点(defect)に因りコーテイング層が二次電池の組立時または電池内で部分的に無機コーテイング層が脱離しやすくなるが、このような脱離は電池の安全性を低下させ得るので、より均一な有/無機コーテイングのためのコーテイングシステムが均一な無機コーテイング層の形成及び優れた電池特性を確保するために必要である。
【0006】
有/無機コーテイング分離膜に対する従来の知られた技術として、有機溶媒を使用して有/無機スラリー(PVDF-CTFE/BaTiO3またはPVDF-CTFE/Al2O3)をコーテイングした有/無機コーテイング多孔性分離膜の製造方法が、大韓民国登録特許第10-0775310号(特許文献1)に開示されている。前記特許における工程は、多量のN-メチルピロリドン(NMP)溶媒またはアセトン(acetone)を分散媒質として使用する従来の電極溶液鋳型工程と一致する。
一般的に、有機溶媒の役割は、自身が蒸発されるとき、粉末形無機物粒子間の良好な接着性を提供するために、バインダー(PVDF-CTFE)を溶解させることである。有機溶媒バインダー溶液から製造されるスラリーは、多孔性基材と有/無機コーテイング層、そして無機コーテイング層内の無機物粒子間の相互連結性を提供し、このように結合された成分などは、電池組立て及び駆動時に、相互連結性を失なわずに発熱による多孔性分離膜の収縮と外部の物理的衝撃(event)に耐えることができる。
【0007】
そして、無機物粒子は、一般的に一定なサイズの分散を有しており、バインダーが溶媒に完全に溶解され、無機物粒子表面との常用性が優れたバインダーを使用した時、溶媒が蒸発するに従ってバインダーが無機物粒子表面を十分に覆って無機物粒子間に十分な接着力を有するようにし、溶媒に完全に溶解されるバインダーは多孔性基材との濡れ性が良くなくても、多孔性気孔構造内部へバインダー溶液が浸透することで、十分に多孔性基材との物理的な接着力を表すようにする。しかしながら、このような場合、多孔性気孔内部へバインダー溶液の浸透が容易であるので、相対的に無機物と多孔性基材表面との十分な接着力を表すために、バインダーの量が十分に必要であるとか、溶媒が揮発されるに従ってゲル(gel)が形成される過程を経るようになり、これによって溶媒が閉じ込められる(solvent-impermeable)空間が発生し、不均衡な有/無機コーテイング層が生じる原因となり、このような現象によって電池特性が低下する可能性がある。また、スラリー内バインダー濃度が高まる場合、スラリーの粘度が非常に高まるため、薄膜の有/無機複合層の製造を難しくし、乾燥過程で高い温度を必要にし、スラリーの粘度を低く維持する場合は多孔性基材との接着力や無機物間の接着力が低下し、無機物粒子が脱離されやすくなる現象が発生する。このような理由で、溶媒に一定のサイズに分散されたエマルジョンまたは懸濁液状態のバインダーを使用する例が多いが、有機溶媒(有系)に一定なサイズで分散されたバインダーを使用する例もあり、特に水系(水)に一定なサイズで分散されたバインダーを利用して無機物粒子をコーテイングするのは、親環境的であり、工程上利点が多いので選好されている。
しかしながら、一般的に、分散されたバインダーのみでは無機物粒子間または無機物粒子と多孔性基材間の十分な接着力を表すことができない。
【0008】
前記の通り、有機溶媒に可溶なバインダー組成物を基にするコーテイング法には、幾つかの問題点がある。第一、有機溶媒に溶かれるバインダーは乾燥過程で有機溶媒が揮発されることに従ってゲルが形成される過程を経るようになり、これによって溶媒が閉じこめられる(solvent-impermeable)空間が発生され、不均衡な有/無機コーテイング層が生じる原因となり、このような現象によって電池特性が低下される。このような問題点を克服するにはバインダーの二次転移温度(Tg)以上における真空を利用した二次乾燥過程が必要である。不十分な乾燥に因り製品に残留溶媒が存在する場合、バインダーの一部が溶解され、ゲルが形成され得る。これに因りコーテイング層の表面が粘り付くようになると、外部のほこりや不必要な粒子等が粘り付くことがあり得るし、製品の巻取り時にコーテイング層間または基材との接着で製品の不良率が増加され得る。第二に、スラリー内のバインダー濃度が高まる場合、スラリーの粘度が非常に高まるため、薄膜の有/無機複合層の製造が難しくなり、通気性が低下し、沸点が高まるため乾燥過程で高い温度を必要とする。第三に、スラリーの粘度を低く維持する場合は、多孔性基材との接着力や無機物間の接着力が低下し、無機物粒子が容易に脱離する現象が発生し、第四に、有機溶媒に基づいた工程は、乾燥時、臨界爆発限界によって乾燥ラインの乾燥ゾーン(dry zone)が長くなる外ないので、加工速度を向上させ難いという加工上の問題点が発生し、第五に、有機溶媒は揮発性を有するので、スラリーが外部環境に露出される瞬間から持続的に溶媒が揮発するので、スラリーの製造及び移送、コーテイング工程で溶媒蒸発に因るスラリーの濃度変化及び流体的性質が変わるようになることにより、最終製品のコーテイング品質に影響を及ぼし得るし、第六に、コーテイング分離膜の製造時、安全、健康及び環境に対する危険要素などが内在している。特性上有機溶媒は毒性、加燃性及び揮発性を呈するため、有機溶媒からの危険性を緩和させ、環境汚染を減らすための特別製造管理が必要である。このように、有機溶媒に可溶なバインダーを利用した有/無機コーテイング分離膜の製造は電池及び加工特性上限界を有する。
【0009】
一方、多孔性基材とコーテイング層間の接着力を向上させるための方法として、大韓民国公開特許第10-2012−0052100号(特許文献2)では、スチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシルメチルセルロース(CMC)を有機溶媒であるアセトンに溶解させたスラリーをポリエチレン多孔性膜にキャステイングして、有/無機複合層を形成した後、その上に、さらに高分子溶液を電気放射して、2つのコーテイング層が形成されたコーテイング分離膜を製造する技術が開示された。しかしながら、このような方法で有/無機複合層を形成させる場合も、上に提示した有機溶媒を使用したコーテイングにおける問題点を避けることができないし、基材との接着力が低いので、無機物脱離による問題点を解決しようと無機物コーテイング層上に放射をして、3層にコーテイング分離膜を製造する技術も提示されたが、この場合、放射による膜の形成はコーテイング分離膜の薄膜化が要求されている時点において、コーテイング層の厚さ調節に対する限界を克服するのが難しいばかりでなく、気孔の均一性が低いので、電池の適用時、電流が均一に分布された流れにならず、一部分に集中され、部分的な発熱、熱火及び爆発が発生され得るので、有/無機コーテイング分離膜の根本的な技術的解決策を提示できなかった。
【0010】
さらに、従来技術による方法で有/無機複合多孔性分離膜を製造する場合、多孔性基材とコーテイング層間の接着力が弱くなって、コーテイングされた材料等が基材から容易に剥がれる問題点を解決するために、大韓民国登録特許第10-1125013号(特許文献3)には、水に溶けるイオン性高分子を使用する架橋型セラミックコーテイング分離膜の製造方法が開示されている。この方法もまた水に溶けるイオン性高分子を使用するが水に分散されているものでなく、完全に溶解させるので、溶媒が閉じ込まれる現象を避けることができず、有機溶媒であるジエチルアセトアマイド溶媒を水対比15倍使用するので、根本的に水系を利用したコーテイング法に対する提示とはなり得ず、基材との接着力向上を目的にコーテイング後、化学架橋を誘導するために、スラリーの製造過程で架橋剤及び開示剤が有機溶媒と共に添加されなければならないので、乾燥過程で20時間以上の熱またはUV処理が必須的に要求される。しかしながら、スラリー溶液に架橋剤及び開示剤を添加する場合、多孔性基材に適用される前、コーテイング溶液の保管及び移送過程で外部から加えられた熱とエネルギーによって部分的に自体架橋が進行し、スラリーの固化現像が進行するので、最終的にコーテイング分離膜の均一性が低下する短所がある。また、乾燥時にも長時間の熱処理及びUV処理が必要であるために、製造工程上生産量が非常に制限的であり、乾燥過程で高温/高エネルギーによって薄膜の多孔性基材が損傷され、物性及び通気度が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】大韓民国登録特許第10-0775310号
【特許文献2】大韓民国公開特許第10-2012−0052100号
【特許文献3】大韓民国登録特許第10-1125013号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、前記の如き従来技術の問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の目的は、多孔性基材にバインダーと選択的に無機物粒子を特定サイズに分散させたコーテイング液をコーテイングして、通気性と接着性が優れた有/無機複合コーテイング多孔層を形成することにより、多孔性基材の熱的、化学的安定性を向上させることができ、また、無機物粒子が含まれる場合には、無機物粒子間または無機物粒子と基材との間で十分な接着力を表すことができる分離膜及びこれを利用した二次電池素子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の有/無機複合コーテイング多孔性分離膜は、溶媒に一定サイズの粒子形態に分散されたバインダーと、選択的に無機物粒子を含むコーテイング液を利用して、多孔性基材上の単面または両面または多孔性基材の気孔部の少なくとも一部領域に単層または複層にコーテイングされたコーテイング層を含むことを特徴とする。
本発明に利用される前記バインダーは二種の形態を意味するもので、第1は、有機溶媒に一定サイズに分散されている油系バインダーと、第2は、水系(水)に一定サイズに分散されている水系バインダーの形態を全て使用できる。ここで、'一定サイズに分散されている' ということは、バインダーの粒子が初期重合時または後加工によって一定サイズの分布を有する形態で溶媒に分散され、エマルジョンや懸濁液に存在することを意味する。このようなバインダーは、分散されたバインダー粒子のサイズを製造過程で温度やpHまたは硫化剤濃度等によって調節することにより、より効果的に無機粒子相互間または無機粒子と基材間の接着力を調節することができる。
【0014】
本発明でバインダー粒子の‘一定サイズ'とは、バインダー粒子の平均粒径(mean, d50)が無機物粒子の平均粒径対比1/2以下であると同時に多孔性基材の気孔平均サイズの1.5倍未満であることを意味し、このような条件が成立される時、バインダーの比表面積が増加するばかりでなく、多孔性基材内部の表面にバインダーが効果的に浸透して、乾燥時に多孔性基材と外部表面のバインダーとの結合力及び基材と無機物粒子との結合力を効果的に向上させることが可能になり、バインダーと基材との接着力がより効果的に向上され、また、無機物粒子が含まれる場合には無機物粒子間または無機物粒子と基材との十分な接着力を表すことができるようになる。本発明におけるように、特定の粒子サイズを有するバインダーを使用する場合、化学的架橋及びイオン性架橋などが可能な形態のバインダーを使用する場合より、優れたバインダーと基材との接着力及び無機物粒子間または無機物粒子と基材間接着力を持たせることが可能である。
【0015】
本発明は、無機物粒子を含まない二次電池用コーテイング分離膜にも制限なく適用が可能である。コーテイング液に無機物粒子が含まれていない場合には、バインダー粒子の平均粒径(d50)が多孔性基材の気孔平均サイズの1.5倍未満であれば、優れた基材との接着力を表すことができる。
本発明でコーテイング液に無機物粒子とバインダーを使用する場合、無機物粒子を分散させるための追加的なバインダーや分散剤(低分子または高分子分散剤)、またはコーテイング液のコーテイング性を向上させるための消泡/脱泡剤、湿潤剤(wetting agent)、レベリング剤(leveling agent)、流動性調節剤などが追加的に含ませることができるが、電池特性のためにはなるべく少ない量を添加することが好ましい。
【0016】
本発明によってコーテイング液を多孔性基材上にコーテイング時、多孔性基材の表面エネルギーが低いポリオレフィン系多孔膜の場合、濡れ性 (wetting)が低いのでコーテイング不均一を招くこともある。コーテイング均一性のために、多孔性基材の表面エネルギーと表面粗さを高めるために、一般的に利用されるコロナ、プラズマまたは高エネルギー放射線処理などの表面処理技術を利用することができ、表面処理によってコーテイング液をより効果的に多孔性基材上に均一にコーテイングできる。しかしながら、本発明による場合、表面処理をしなくても優れた通気性と接着力は確保できるが、表面処理をする場合、より優れた通気性と接着力が確保され、電池内で電解液との濡れ性を向上させるためには、表面処理を行うことが有利である。
【0017】
本発明において、無機物粒子を使用する場合の分離膜製造方法の好ましい一具体例は、
(a) 無機物粒子を溶媒に添加及び混合して、無機物粒子を分散させる段階;
(b) 粒子形態のバインダーを前記(a)段階で得られた混合溶液に添加及び混合して、コーテイング液を得る段階;および
(c) 多孔性基材の表面の単面、両面及び基材中気孔部の少なくとも一部からなる群から選ばれる一つ以上の領域を、前記(b)段階で得られたコーテイング液で単層または複層にコーテイング及び乾燥する段階を含む。
【0018】
本発明で多孔性基材上にコーテイング液をコーテイングする時、コーテイング方式に特別に制限はないが、一般的に使用されるデイップコーテイング(dip-coating)、 ダイコーテイング(die-coating)、グラビアコーテイング(Gravure-coating)、コンマコーテイングなどの種々なコーテイング方式が利用され得る。
【0019】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0020】
<多孔性分離膜>
本発明による多孔性分離膜は、多孔性基材と、溶媒に分散されたバインダー、及び選択的に無機物粒子を含むコーテイング液を利用して、前記多孔性基材上の単面、両面及び気孔部の少なくとも一部からなる群から選ばれる一つ以上の領域に、単層または複層に有/無機複合コーテイング層が形成された多孔性分離膜を含む。
【0021】
前記多孔性基材は、一般的にリチウム二次電池の如き電気化学素子に使用される多孔性基材であれば、全て使用が可能である。このような多孔性基材としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレプタレート、ポリブチレンテレプタレート、ポリエステル、ポリアセタル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフイド、ポリエチレンナフタレン等の如き高分子化合物を各々単独にまたは2種以上混合して形成した膜やこれらの不織布を挙げることができる。
【0022】
前記多孔性基材の厚さは1〜100μmに製作できるが、好ましくは1〜30μm厚さであり、最近は電池の高出力/高容量化が進行しているので、多孔性基材は薄膜を利用することが有利である。 多孔性基材に存在する気孔サイズは0.01〜50μmであり、気孔度は5〜90%、好ましくは20〜80%で形成され得る。しかし、このような数値範囲は実施形態または必要に従って容易に変えることができる。
【0023】
多孔性基材の気孔は種々のタイプの気孔構造があるが、ポロシメーター(porosimeter)を利用して測定された、またはFE-SEM上で観察される気孔の平均サイズ中いずれかの一種でも前記提示した条件を満たすれば、本発明に含まれる。ここで、一般的に知られている一軸延伸乾式分離膜の場合においては、FE-SEM上からMD方向の気孔サイズでないTD方向の気孔サイズにおいて中央の気孔サイズを基準にし[図1参照]、それ以外の網構造を有する多孔性基材(例えば、湿式PE分離膜)はポロシメーターで測定した気孔のサイズを基準にするのが一般的であるが、これに限定されるものではない。
【0024】
前記コーテイング液に無機物粒子が含まれる場合、バインダーは無機物粒子と粒子間または無機物粒子と多孔性基材の表面を接着及び固定する機能を発揮し、多孔性基材の物理的変形及び物性低下を防止する。
【0025】
前記バインダーは、高分子化合物が粒子形態で有機溶媒または水に分散されたエマルジョンまたは懸濁液形態のバインダーを意味し、具体的には、分散されたバインダー粒子の平均粒径(d50)が無機物粒子の平均粒径(d50)の1/2以下であると同時に前記多孔性基材の気孔平均サイズ(d50)の1.5倍未満であることを特徴とするエマルジョンまたは懸濁液形態であって、例えば、ポリスチレン系、スチレンブタジエン系、ニトリル系、ポリビニルクロライド(PVC)系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系、ポリビニルリデンフルオライド(PVDF)系、エチレン-ビニルアセテート(EVA)系、ポリビニルブチラル(Polyvinyl butyral)系、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系、ポリイミド系、ポリエチレンオキシド系、セルロース系、ポリビニルアルコール系、澱粉系重合体または共重合体などの高分子化合物が有機溶媒または水の如き水系溶媒に分散されてなるラテックスまたはエマルジョンまたは懸濁液で構成される群から選ばれる1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
前記バインダーの粒子はより小さい程、比表面積が広くなるばかりでなく、多孔性基材を通過するバインダー量が多くなり、無機物粒子間及び基材と無機物粒子間の接着力を高めるのにより効果的である。前記バインダーの平均粒径が無機物粒子の平均粒径の1/2以下であり、前記バインダーの平均粒径が多孔性基材の平均気孔サイズの1.5倍未満である時、本発明が目的とする接着力が優れた有/無機混合コーテイング分離膜を得ることができる。
【0027】
一般的に、二次電池に利用される多孔性分離膜を例に挙げれば、湿式法で製膜されるPE分離膜と乾式法で製膜されるPP分離膜の平均的な気孔サイズは各々100〜700nm(ここで、3成分系を使用する場合は400700nm、2成分系を使用する場合は100〜300nmであるが、気孔サイズの場合、製膜される条件に従って相異し得るので、ここで、気孔サイズを表示したものは気孔サイズを制限しようとするものではない)と50200nm水準が一般的に利用されているが、各々に対する効果的なバインダーの平均粒径はこれに従って異なり得る。例えば、一軸延伸乾式PP分離膜の気孔においてTD方向の気孔の幅は約50〜200nmのサイズを有するので、平均粒径が100nm以下のバインダーが好ましい。特に、前記平均粒径が100nm以下であり、イオンによって結合をするか、架橋剤によって結合をするバインダーの場合は、一層効果的な無機物間及び基材との接着力と熱的特性を示すが、平均粒径が大きい場合には接着力が低下することを発見した。
【0028】
本発明において、前記分散されたバインダーとして互いに異なる平均粒径を有する複数種のバインダーが利用され得るが、このような場合に各々のバインダーの平均粒径において、いずれかの1種のバインダーでも前記提示した条件を満たしておれば本発明に含まれる。
【0029】
本発明のコーテイング液には、前記バインダーの外に前記バインダーと高分子間引力を誘導して、基材に対する接着力とコーテイング性をより効果的に向上させるために、前記溶媒に溶解される第2有機物バインダーとして、燐酸塩エステル(phosphoric ester)、燐酸塩アクリル(phosphoric acryl)系共重合体、変性ポリアクリレート系共重合体、変性ポリアクリル酸系共重合体、ポリエステルとアミンアマイド系共重合体、ポリカルボキシル酸系共重合体、ポリアルキルオールアミノアミド系共重合体、シロキサンとアクリル系共重合体、シロキサンとカルボキシル酸系共重合体、ポリアルコキシルレート系共重合体、アクリル系とエーテル系の共重合体、及びこれらの金属塩形態を含み、これらの中1種または2種以上の物質が使用され得る。
【0030】
前記コーテイング液に含まれ得る無機物粒子は、従来の通常的な電池用コーテイング分離膜の製造に使用される種類の無機物粒子であれば使用が可能である。このような無機物粒子としては、SnO2、BaTiO2、Al2O3、CeO2、SiO2、TiO2、Li3PO4、NiO、ZnO、MgO、Mg(OH)2、CaO、ZrO2、Y2O3、タルク等を単独または2種以上混合して使用することができるし、球形または板状形または不規則な形状の粒子形態のものを使用することができる。
【0031】
前記無機物粒子のサイズは制限がないが、分散安定性が良いスラリーの製造及び均一な厚さのコーテイング層形成のため、0.001〜10μmのものが良いし、最も好ましくは平均粒径が0.1〜5μmであるものが良い。前記無機物粒子の平均粒径が0.1μm未満の場合には、無機物粒子の分散性が低下されるか、既に形成された気孔内に粒子が分布され通気性が低下するおそれがあり、5μmを超える場合、有/無機複合コーテイング層の厚さが増加して機械的物性が低下するか、あまり大きな気孔に因り電池充放電時、内部短絡が生じる確率が高くなる問題がある。さらに、全体的な有/無機複合コーテイング分離膜の厚さ増加に因り、薄くて電池容量が高い中大形電池セルの製造時に制限がおこり得る。
【0032】
無機物粒子の場合にも、互いに異なる平均粒径を有する無機物粒子等を混合して使用できるが、各々の粒径分布において、いずれかの1種の無機物粒子でも前記提示した条件を満たしておれば本発明に含まれる。さらに、無機物粒子のサイズはレーザーや光散乱法などの粒子サイズと分布を測定する装備を使用して測定され得る。
【0033】
本発明で使用されるコーテイング液は、前記のバインダーの外に、粘度調節目的やイオン伝導度向上及びコーテイング性や無機物粒子の分散性などの目的のために、追加的に溶媒に溶ける低分子または高分子形態の有機化合物がさらに含み得る。
【0034】
本発明の分離膜において、前記提示された条件で無機物粒子が含まれず、バインダー粒子だけを含むコーテイング液にてもコーテイング層を形成できるが、このような場合には、バインダー粒子の平均サイズが多孔性基材の平均気孔サイズ対比1.5倍未満という条件を満たせば、接着性が優れたコーテイング分離膜が製造できる。
本発明で使用されるコーテイング液において、無機物粒子を使用する場合、無機物粒子:バインダーの重量比(P/B ratio)は4:1〜140:1であることが好ましい。前記バインダーに対する無機物粒子の重量比が4:1未満のバインダーの含量が高い場合は、無機物粒子対比バインダー樹脂の含量が高いので、通気度が減少し、電池性能が低下する問題があり、前記重量比が140:1を超えてバインダー含量が少なく、無機物粒子含量が度を越えて多いと、無機物粒子間または多孔性基材と無機物粒子間の接着力が低下し脱離する可能性が生じる。
【0035】
本発明の分離膜において、コーテイング層の厚さは0.1〜50μmであることが好ましく、気孔サイズは0.001〜10μm範囲が好ましく、気孔度は30〜80%範囲が好ましい。気孔サイズが0.001μm未満であるか気孔度が30%未満の場合には、少ない量の電解液が気孔に満たされ、リチウムイオンの伝達能力が落ちて、セルの性能が低下する問題があり、気孔サイズが10μm超過であるか気孔度が80%超過の場合、多孔性分離膜の機械的物性が低下するおそれがある。
本発明の分離膜において、前記コーテイング液を多孔性基材上にコーテイングする方法は当業界に知られた通常的なコーテイング方法を通じてコーテイングすることができ、例えば、デイップ(Dip)コーテイング、ダイ(Die)コーテイング、ロール(roll)コーテイング、コンマ(comma)コーテイング、グラビア(Gravure)コーテイング、または、これらの混合方式の多様な工程を利用することができる。
【0036】
<多孔性分離膜の製造方法>
本発明の有/無機複合多孔性分離膜は、当業界に知られた通常的な方法に従って製造することができるが、無機物粒子を使用する場合の好ましきな実施形態を挙げれば、
(a) 無機物粒子を溶媒に添加及び混合して、無機物粒子を分散させる段階;
(b) 粒子形態のバインダーを前記(a)段階で得られた混合溶液に添加及び混合して、コーテイング液を得る段階; および
(c) 多孔性基材の表面の単面、両面及び基材中の気孔部の少なくとも一部からなる群から選ばれる一つ以上の領域を、前記(b)段階で得られたコーテイング液でコーテイング及び乾燥する段階を含む。
【0037】
前記(a)段階で無機物粒子を分散させる方法としては、当業界に知られた通常的な方法を利用することができ、例えば、超音波分散器、ボールミル(ball-mill)、デイスパーサー(disperser)、ミキサー(mixer)等を利用することができるし、特にボールミル(ball mill)法が好ましい。この時、処理時間は容量に従って異なり得るが、1〜20時間が適切であり、破砕された無機物粒子の粒度はボールミルに使用されたビードのサイズ及びボールミル時間に従って制御することができるが、前記に言及された通り、0.001〜10μm水準の粒子サイズであれば好ましい。本段階で、無機物粒子のサイズや形態及び表面の化学的な構造に従って粒子分散状態が低下する場合があるが、そのような場合、必要に従って高分子形分散剤を添加すれば、効果的に分散させることができる。この時、使用される分散剤の含量は、一般的に無機物粒子のサイズ、化学的な構造及び表面積に従って相異するが、無機物粒子100重量部に対して0〜3重量部が適切である。
【0038】
前記(b)段階では、無機物粒子が分散されたスラリー形態の混合溶液にバインダーを添加して、有/無機複合コーテイング液を製造する。
【0039】
前記(c)段階で、多孔性基材にコーテイング液をコーテイングする前に、最終に得られたコーテイング液の粘度や表面エネルギーに基づいて、選択的に多孔性基材に対し有/無機複合コーテイング液の濡れ性(wetting)を向上させるために使用される湿潤剤、コーテイング層の表面均一度向上のためのレベリング剤、分離膜基材とコーテイング液間の接着力を向上させるための接着増進剤、消泡及び脱泡剤、増粘剤、流動性添加剤、UV吸収剤などのコーテイング性向上のために適用可能な添加剤を適切量に混合することができ、添加剤の種類は望むコーテイング方法及びコーテイング特性に従って適切に選んで使用することが可能である。
【0040】
前記(c)段階では、コーテイング液を多孔性基材上にコーテイング及び乾燥することにより、最終的に本発明のコーテイング分離膜を製造することができる。 この時、前記多孔性基材上にコーテイングする方法は、当業界に知られた通常的なコーテイング方法を通じてコーテイングすることができるし、例えば、デイツプ(Dip)コーテイング、ダイ(Die)コーテイング、ロール(roll)コーテイング、コンマ(comma)コーテイング、グラビア(Gravure)コーテイング、バー(bar)コーテイングまたはこれらの混合方式を利用して、多孔性基材の表面の単面または両面または気孔の少なくとも一部に単層また複層にコーテイング層を形成して、本発明の分離膜を製造することができる。
【0041】
<多孔性分離膜を具備する電気化学素子>
本発明の有/無機複合コーテイング多孔性分離膜は、陽極、陰極及び電解質を含む電気化学素子において、前記陽極と陰極の間で分離膜に使用できる。
前記電気化学素子は電気化学反応をする全ての素子を含み、具体的な例を挙げれば、全ての種類の1次/2次電池、燃料電池、太陽電池またはスーパーキャパシターなどがある。特に、前記2次電池中リチュウム2次電池が最も好ましい。
2次電池素子は当技術分野に知られた通常的な方法に従って製造でき、陽極と陰極間に本発明の分離膜を介在させて組み立てた後、電解液を注入することにより製造できる。
本発明の分離膜と共に適用される陰極、陽極、電解質は特別に制限されないし、当業界で使用される通常的なものを使用することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明に基づいて、油系や水系に一定なサイズに分散された粒子のバインダーを選択的に無機物粒子と混合して多孔性基材にコーテイング及び乾燥させた時、形成された有/無機複合コーテイング分離膜は熱及びUV等による架橋がなくても十分な接着力を表すことができ、熱及びUVなどに依る架橋時、より基材との接着性が優れ, さらに, 通気性が優れて、高温で熱収縮率を抑制できるばかりでなく、優れた加工性を表す。
さらに、本発明の有/無機複合コーテイング分離膜は電解液に対する濡れ性が向上されるので、リチウムのイオン伝導度及び電解液含浸率が向上する特徴もある。
本発明の分離膜を電池及び電気化学素子に適用することにより、電池性能が向上され、熱的、電気化学的安全性が向上された優れた二次電池素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】一軸延伸された乾式多孔性分離膜の気孔サイズを測る方法を例示したものである。
図2】実施例1で製造された有/無機コーテイング多孔性分離膜のFE-SEM写真である。
図3】分離膜の熱収縮実験結果を表す写真であって、実施例1と比較例7で製造された有/無機複合コーテイング多孔性分離膜を各々150℃で 1時間放置した後の写真である。
図4】実施例1と比較例3で製造された有/無機複合コーテイング多孔性分離膜の電池律速特性を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明は多様な変更を加えることができるし、種々な実施例を有することができるところ、本発明の理解を助けるために好ましき実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するだけで、本発明の範囲が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0045】
実施例及び比較例
下記実施例及び比較例で製造された有/無機複合コーテイング分離膜の特性評価方法は次の通りである。
【0046】
1.コーテイング厚さ測定法
コーテイング厚さ測定器としてミツトヨ(Mitutoyo)のデイジメチックテイクニスゲージ(digimatic thickness gage)547-401(Φ6.3mmのフラットチップタイプ (flat tip type)、測定時の圧力3.5N 以下)を使用して測定して、コーテイング分離膜の厚さ対比コーテイング前原板フィルム厚さの差異を計算した。
2.接着力測定法
コーテイング分離膜上に18mm×20mm(接着面積)のテープを接着させた後、10分間2kgfの荷重を加えた後、LLOYD UTM装備を利用して接着強度を測定した。この時、接着力は180°ピルテスト(peel test)を使用して、2mm/min.の速度でテープをひっぱりながら離れるまで掛かる力(gf)を測定して比較した。
【0047】
3.Gurley 測定法
Gurleyは Toyoseikiのデンソメーター(densometer)を利用して、100ccの空気が透過するのに掛かる時間を測定して比較した。(ISO 5635/5)
4.熱収縮率測定法
試片を50mm×50mmのサイズに切った後、試片中央に横×縦(3cm×3 cm)に線を引き、温度が150±5℃のオーブンに1時間放置した。その後, オーブンから取り出して、常温で5分以上放置して常温まで冷やした後、試片中央に引いた線の長さを測定して、 収縮前の長さ対比収縮率を計算した。
【0048】
実施例1
1-1. 有/無機複合コーテイング多孔性分離膜の製造
水に無機物粒子のアルミナ(Al2O3)を固形分含量が30重量%になるように添加し、第2有機物バインダーとして変性ポリアクリルポリエーテル共重合体をアルミナ 重量対比1%添加して、2時間以上ボールミル(ball mill)法を利用して無機物粒子を平均粒径0.5μmに破砕及び分散させ、水分散無機物スラリーを製造した。該スラリーにバインダーとして平均粒径80nmの水分散されたスチレンブタジエンラテックス(SBL)エマルジョンを無機物粒子/バインダーの割合(P/B ratio)がAl2O3/SBL=40/1(重量比)になるように添加した後、約2時間以上攪拌して、スラリー内に前記エマルジョンを均等に分散させ、コーテイング液を製造した。多孔性基材としては、TD方向の平均気孔サイズが100nmのコロナ処理された厚さ14μmの一軸延伸ポリプロピレン分離膜(気孔度45%)を使用して、前記コーテイング液をデイップ(dip)コーテイング法で前記多孔性基材に両面コーテイングして、最終的に20μm 厚さの有/無機複合コーテイング多孔性分離膜を製造した。製造された分離膜のFE-SEM写真を図1に表した。さらに、分離膜の熱収縮実験結果を表す写真を図3に表した。
【0049】
1-2. リチウム二次電池の製造
陽極としてはLiNiCoMnO系電極を、陰極としてはグラファイト(Graphite)電極を、電解液としてはリチウムヘキサフルオロフォスフエート(LiPF6)が溶解されたエチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート/ジエチルカーボネート (EC/EMC/DEC=3:2:5:)系電解液を使用して、コインセルタイプのリチウム二次電池を製造した。
【0050】
実施例2
多孔性基材に使用したポリプロピレン分離膜のTD 方向平均気孔サイズが、130nmであることを除いては、前記実施例1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
実施例3
多孔性基材に使用したポリプロピレン分離膜のTD 方向平均気孔サイズが 80nm、バインダーの平均粒径が60nmであることを除いては、前記実施例 1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
実施例4
多孔性基材としてTD方向平均気孔サイズが400nmのポリエチレン分離膜を使用したことを除いては、前記実施例 1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
実施例5
多孔性基材としてTD方向平均気孔サイズが400nmのポリエチレン分離膜を使用し、破砕されたアルミナの平均粒径が0.8μm、バインダーの平均粒径が100nmであることを除いては、前記実施例 1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
【0051】
実施例6
多孔性基材としてTD方向平均気孔サイズが400nmのポリエチレン分離膜を使用し、破砕されたアルミナの平均粒径が 1μm, バインダーの平均粒径が100nmであることを除いては、前記実施例 1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
実施例7
バインダーの平均粒径が50nmであることを除いては、前記実施例1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
実施例8
バインダーの平均粒径が100nmであることを除いては、前記実施例1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
実施例9
多孔性基材に使用したポリプロピレン分離膜を、コロナ処理をしないで使用したことを除いては、前記実施例1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
実施例10
多孔性基材としてTD方向平均気孔サイズが100nmのポリエチレン分離膜を使用し、バインダーの平均粒径が80nmであることを除いては、前記実施例 1と 同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
【0052】
実施例11
多孔性基材としてTD方向平均気孔サイズが400nmのポリエチレン分離膜を使用し、バインダーとして平均粒径が150nmのアクリルエマルジョンを使用したことを除いては、前記実施例 1と 同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
実施例12
多孔性基材としてTD方向平均気孔サイズが400nmのポリエチレン分離膜を使用し、バインダーとして平均粒径が180nmのPVDFエマルジョンを使用したことを除いては、前記実施例1と同一に実施して、有/無機複合多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
実施例13
バインダーとしてSBL(スチレンブタジエンラテックス)と共に、溶媒に溶けるCMC(カルボキシメチルセルロース)を使用したことを除いては、前記実施例1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
実施例14
アルミナとバインダーの重量比が80:1であることを除いては、前記実施例 1と 同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
実施例15
アルミナとバインダーの重量比が20:1であることを除いては、前記実施例 1と 同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
【0053】
比較例1
コーテイング層を形成しない厚さ14μmのポリプロピレン(PP)分離膜(気孔度45%)を使用したことを除いては、前記実施例1と同一に実施して、リチウム二次電池を製造した。
比較例2
コーテイング層を形成しない厚さ14μmのポリエチレン(PE)分離膜 (気孔度48%)を使用したことを除いては、前記実施例1と同一に実施して、リチウム二次電池を製造した。
【0054】
比較例3
PVDF-HFPをアセトンに5重量% 添加した後、40℃で約2時間以上溶解させ高分子溶液を製造した。該高分子溶液にAl2O3粉末、PVDF-HFPの重量比(P/B ratio)が9/1になるようにAl2O3粉末を添加して、3時間以上ボールミル(ball mill)法を利用して無機物粒子を破砕及び分散させ、スラリー形態のコーテイング液を製造した。破砕後スラリーのAl2O3粒径はボールミル法に使用されるビードの粒度及びボールミル法の適用時間に従って制御され得るが、本比較例3では平均粒径0.5μmで粉砕してスラリーを製造した。多孔性基材としてはコロナ処理された厚さ14μmのポリプロピレン分離膜(気孔度45%)を使用し、この多孔性基材上に前記コーテイング液をデイップ (dip)コーテイング法でコーテイングした。この時、デイップコーテイングは 5m/min.のライン速度で進行させて、最終的に20μm厚さのコーテイング分離膜(PVDF/Al2O3)を製造した。前記製造された有/無機複合コーテイング多孔性分離膜を利用して、前記実施例1と同一な方法でリチウム二次電池を製造した。
【0055】
比較例4
Al2O3粉末/SBLの混合重量比を1/1に変更したことを除いては、前記実施例 1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
比較例5
Al2O3粉末/SBLの混合重量比を150/1に変更したことを除いては、前記実施例 1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
比較例6
第2有機物バインダーを使用しないことを除いては、前記実施例 1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
【0056】
比較例7
バインダーの平均粒径が170nmであることを除いては、前記実施例 1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。 製造された分離膜の熱収縮実験結果を表す写真を図3に表した。
比較例8
多孔性基材の平均気孔サイズが150nmであり、バインダーとして平均粒径が 250nmのアクリルエマルジョンを使用し、P/B ratioが 20/1であることを除いては、前記実施例1と同一に実施して、有/無機複合コーテイング多孔性分離膜及びこれを具備するリチウム二次電池を製造した。
【0057】
前記実施例及び比較例で使用された材料等の特性及び製造された分離膜の特性を下記表1〜5に整理して表した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
【0060】
【表3】
【0061】
【表4】
【0062】
【表5】
【0063】
実験例: リチウム二次電池の性能評価
前記実施例1及び比較例3で製造されたリチウム二次電池の性能を評価するために、各電池の容量及びC-rateを測定した。
電池を0.2C、0.5C、1C、3C、5Cの放電速度でサイクリングを5回 実施し、これらの放電容量をC-rate 特性別に図式して図4に表した。
実験結果は、図4に表した通り、本発明のコーテイング分離膜を適用した実施例1のリチウム二次電池は比較例3の電池に対比して優れたC-rate特性を見せた。
図1
図2
図3
図4