【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の有/無機複合コーテイング多孔性分離膜は、溶媒に一定サイズの粒子形態に分散されたバインダーと、選択的に無機物粒子を含むコーテイング液を利用して、多孔性基材上の単面または両面または多孔性基材の気孔部の少なくとも一部領域に単層または複層にコーテイングされたコーテイング層を含むことを特徴とする。
本発明に利用される前記バインダーは二種の形態を意味するもので、第1は、有機溶媒に一定サイズに分散されている油系バインダーと、第2は、水系(水)に一定サイズに分散されている水系バインダーの形態を全て使用できる。ここで、'一定サイズに分散されている' ということは、バインダーの粒子が初期重合時または後加工によって一定サイズの分布を有する形態で溶媒に分散され、エマルジョンや懸濁液に存在することを意味する。このようなバインダーは、分散されたバインダー粒子のサイズを製造過程で温度やpHまたは硫化剤濃度等によって調節することにより、より効果的に無機粒子相互間または無機粒子と基材間の接着力を調節することができる。
【0014】
本発明でバインダー粒子の‘一定サイズ'とは、バインダー粒子の平均粒径(mean, d
50)が無機物粒子の平均粒径対比1/2以下であると同時に多孔性基材の気孔平均サイズの1.5倍未満であることを意味し、このような条件が成立される時、バインダーの比表面積が増加するばかりでなく、多孔性基材内部の表面にバインダーが効果的に浸透して、乾燥時に多孔性基材と外部表面のバインダーとの結合力及び基材と無機物粒子との結合力を効果的に向上させることが可能になり、バインダーと基材との接着力がより効果的に向上され、また、無機物粒子が含まれる場合には無機物粒子間または無機物粒子と基材との十分な接着力を表すことができるようになる。本発明におけるように、特定の粒子サイズを有するバインダーを使用する場合、化学的架橋及びイオン性架橋などが可能な形態のバインダーを使用する場合より、優れたバインダーと基材との接着力及び無機物粒子間または無機物粒子と基材間接着力を持たせることが可能である。
【0015】
本発明は、無機物粒子を含まない二次電池用コーテイング分離膜にも制限なく適用が可能である。コーテイング液に無機物粒子が含まれていない場合には、バインダー粒子の平均粒径(d
50)が多孔性基材の気孔平均サイズの1.5倍未満であれば、優れた基材との接着力を表すことができる。
本発明でコーテイング液に無機物粒子とバインダーを使用する場合、無機物粒子を分散させるための追加的なバインダーや分散剤(低分子または高分子分散剤)、またはコーテイング液のコーテイング性を向上させるための消泡/脱泡剤、湿潤剤(wetting agent)、レベリング剤(leveling agent)、流動性調節剤などが追加的に含ませることができるが、電池特性のためにはなるべく少ない量を添加することが好ましい。
【0016】
本発明によってコーテイング液を多孔性基材上にコーテイング時、多孔性基材の表面エネルギーが低いポリオレフィン系多孔膜の場合、濡れ性 (wetting)が低いのでコーテイング不均一を招くこともある。コーテイング均一性のために、多孔性基材の表面エネルギーと表面粗さを高めるために、一般的に利用されるコロナ、プラズマまたは高エネルギー放射線処理などの表面処理技術を利用することができ、表面処理によってコーテイング液をより効果的に多孔性基材上に均一にコーテイングできる。しかしながら、本発明による場合、表面処理をしなくても優れた通気性と接着力は確保できるが、表面処理をする場合、より優れた通気性と接着力が確保され、電池内で電解液との濡れ性を向上させるためには、表面処理を行うことが有利である。
【0017】
本発明において、無機物粒子を使用する場合の分離膜製造方法の好ましい一具体例は、
(a) 無機物粒子を溶媒に添加及び混合して、無機物粒子を分散させる段階;
(b) 粒子形態のバインダーを前記(a)段階で得られた混合溶液に添加及び混合して、コーテイング液を得る段階;および
(c) 多孔性基材の表面の単面、両面及び基材中気孔部の少なくとも一部からなる群から選ばれる一つ以上の領域を、前記(b)段階で得られたコーテイング液で単層または複層にコーテイング及び乾燥する段階を含む。
【0018】
本発明で多孔性基材上にコーテイング液をコーテイングする時、コーテイング方式に特別に制限はないが、一般的に使用されるデイップコーテイング(dip-coating)、 ダイコーテイング(die-coating)、グラビアコーテイング(Gravure-coating)、コンマコーテイングなどの種々なコーテイング方式が利用され得る。
【0019】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0020】
<多孔性分離膜>
本発明による多孔性分離膜は、多孔性基材と、溶媒に分散されたバインダー、及び選択的に無機物粒子を含むコーテイング液を利用して、前記多孔性基材上の単面、両面及び気孔部の少なくとも一部からなる群から選ばれる一つ以上の領域に、単層または複層に有/無機複合コーテイング層が形成された多孔性分離膜を含む。
【0021】
前記多孔性基材は、一般的にリチウム二次電池の如き電気化学素子に使用される多孔性基材であれば、全て使用が可能である。このような多孔性基材としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレプタレート、ポリブチレンテレプタレート、ポリエステル、ポリアセタル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフイド、ポリエチレンナフタレン等の如き高分子化合物を各々単独にまたは2種以上混合して形成した膜やこれらの不織布を挙げることができる。
【0022】
前記多孔性基材の厚さは1〜100μmに製作できるが、好ましくは1〜30μm厚さであり、最近は電池の高出力/高容量化が進行しているので、多孔性基材は薄膜を利用することが有利である。 多孔性基材に存在する気孔サイズは0.01〜50μmであり、気孔度は5〜90%、好ましくは20〜80%で形成され得る。しかし、このような数値範囲は実施形態または必要に従って容易に変えることができる。
【0023】
多孔性基材の気孔は種々のタイプの気孔構造があるが、ポロシメーター(porosimeter)を利用して測定された、またはFE-SEM上で観察される気孔の平均サイズ中いずれかの一種でも前記提示した条件を満たすれば、本発明に含まれる。ここで、一般的に知られている一軸延伸乾式分離膜の場合においては、FE-SEM上からMD方向の気孔サイズでないTD方向の気孔サイズにおいて中央の気孔サイズを基準にし[
図1参照]、それ以外の網構造を有する多孔性基材(例えば、湿式PE分離膜)はポロシメーターで測定した気孔のサイズを基準にするのが一般的であるが、これに限定されるものではない。
【0024】
前記コーテイング液に無機物粒子が含まれる場合、バインダーは無機物粒子と粒子間または無機物粒子と多孔性基材の表面を接着及び固定する機能を発揮し、多孔性基材の物理的変形及び物性低下を防止する。
【0025】
前記バインダーは、高分子化合物が粒子形態で有機溶媒または水に分散されたエマルジョンまたは懸濁液形態のバインダーを意味し、具体的には、分散されたバインダー粒子の平均粒径(d
50)が無機物粒子の平均粒径(d
50)の1/2以下であると同時に前記多孔性基材の気孔平均サイズ(d
50)の1.5倍未満であることを特徴とするエマルジョンまたは懸濁液形態であって、例えば、ポリスチレン系、スチレンブタジエン系、ニトリル系、ポリビニルクロライド(PVC)系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系、ポリビニルリデンフルオライド(PVDF)系、エチレン-ビニルアセテート(EVA)系、ポリビニルブチラル(Polyvinyl butyral)系、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系、ポリイミド系、ポリエチレンオキシド系、セルロース系、ポリビニルアルコール系、澱粉系重合体または共重合体などの高分子化合物が有機溶媒または水の如き水系溶媒に分散されてなるラテックスまたはエマルジョンまたは懸濁液で構成される群から選ばれる1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0026】
前記バインダーの粒子はより小さい程、比表面積が広くなるばかりでなく、多孔性基材を通過するバインダー量が多くなり、無機物粒子間及び基材と無機物粒子間の接着力を高めるのにより効果的である。前記バインダーの平均粒径が無機物粒子の平均粒径の1/2以下であり、前記バインダーの平均粒径が多孔性基材の平均気孔サイズの1.5倍未満である時、本発明が目的とする接着力が優れた有/無機混合コーテイング分離膜を得ることができる。
【0027】
一般的に、二次電池に利用される多孔性分離膜を例に挙げれば、湿式法で製膜されるPE分離膜と乾式法で製膜されるPP分離膜の平均的な気孔サイズは各々100〜700nm(ここで、3成分系を使用する場合は400
〜700nm、2成分系を使用する場合は100〜300nmであるが、気孔サイズの場合、製膜される条件に従って相異し得るので、ここで、気孔サイズを表示したものは気孔サイズを制限しようとするものではない)と50
〜200nm水準が一般的に利用されているが、各々に対する効果的なバインダーの平均粒径はこれに従って異なり得る。例えば、一軸延伸乾式PP分離膜の気孔においてTD方向の気孔の幅は約50〜200nmのサイズを有するので、平均粒径が100nm以下のバインダーが好ましい。特に、前記平均粒径が100nm以下であり、イオンによって結合をするか、架橋剤によって結合をするバインダーの場合は、一層効果的な無機物間及び基材との接着力と熱的特性を示すが、平均粒径が大きい場合には接着力が低下することを発見した。
【0028】
本発明において、前記分散されたバインダーとして互いに異なる平均粒径を有する複数種のバインダーが利用され得るが、このような場合に各々のバインダーの平均粒径において、いずれかの1種のバインダーでも前記提示した条件を満たしておれば本発明に含まれる。
【0029】
本発明のコーテイング液には、前記バインダーの外に前記バインダーと高分子間引力を誘導して、基材に対する接着力とコーテイング性をより効果的に向上させるために、前記溶媒に溶解される第2有機物バインダーとして、燐酸塩エステル(phosphoric ester)、燐酸塩アクリル(phosphoric acryl)系共重合体、変性ポリアクリレート系共重合体、変性ポリアクリル酸系共重合体、ポリエステルとアミンアマイド系共重合体、ポリカルボキシル酸系共重合体、ポリアルキルオールアミノアミド系共重合体、シロキサンとアクリル系共重合体、シロキサンとカルボキシル酸系共重合体、ポリアルコキシルレート系共重合体、アクリル系とエーテル系の共重合体、及びこれらの金属塩形態を含み、これらの中1種または2種以上の物質が使用され得る。
【0030】
前記コーテイング液に含まれ得る無機物粒子は、従来の通常的な電池用コーテイング分離膜の製造に使用される種類の無機物粒子であれば使用が可能である。このような無機物粒子としては、SnO
2、BaTiO
2、Al
2O
3、CeO
2、SiO
2、TiO
2、Li
3PO
4、NiO、ZnO、MgO、Mg(OH)
2、CaO、ZrO
2、Y
2O
3、タルク等を単独または2種以上混合して使用することができるし、球形または板状形または不規則な形状の粒子形態のものを使用することができる。
【0031】
前記無機物粒子のサイズは制限がないが、分散安定性が良いスラリーの製造及び均一な厚さのコーテイング層形成のため、0.001〜10μmのものが良いし、最も好ましくは平均粒径が0.1〜5μmであるものが良い。前記無機物粒子の平均粒径が0.1μm未満の場合には、無機物粒子の分散性が低下されるか、既に形成された気孔内に粒子が分布され通気性が低下するおそれがあり、5μmを超える場合、有/無機複合コーテイング層の厚さが増加して機械的物性が低下するか、あまり大きな気孔に因り電池充放電時、内部短絡が生じる確率が高くなる問題がある。さらに、全体的な有/無機複合コーテイング分離膜の厚さ増加に因り、薄くて電池容量が高い中大形電池セルの製造時に制限がおこり得る。
【0032】
無機物粒子の場合にも、互いに異なる平均粒径を有する無機物粒子等を混合して使用できるが、各々の粒径分布において、いずれかの1種の無機物粒子でも前記提示した条件を満たしておれば本発明に含まれる。さらに、無機物粒子のサイズはレーザーや光散乱法などの粒子サイズと分布を測定する装備を使用して測定され得る。
【0033】
本発明で使用されるコーテイング液は、前記のバインダーの外に、粘度調節目的やイオン伝導度向上及びコーテイング性や無機物粒子の分散性などの目的のために、追加的に溶媒に溶ける低分子または高分子形態の有機化合物がさらに含み得る。
【0034】
本発明の分離膜において、前記提示された条件で無機物粒子が含まれず、バインダー粒子だけを含むコーテイング液にてもコーテイング層を形成できるが、このような場合には、バインダー粒子の平均サイズが多孔性基材の平均気孔サイズ対比1.5倍未満という条件を満たせば、接着性が優れたコーテイング分離膜が製造できる。
本発明で使用されるコーテイング液において、無機物粒子を使用する場合、無機物粒子:バインダーの重量比(P/B ratio)は4:1〜140:1であることが好ましい。前記バインダーに対する無機物粒子の重量比が4:1未満のバインダーの含量が高い場合は、無機物粒子対比バインダー樹脂の含量が高いので、通気度が減少し、電池性能が低下する問題があり、前記重量比が140:1を超えてバインダー含量が少なく、無機物粒子含量が度を越えて多いと、無機物粒子間または多孔性基材と無機物粒子間の接着力が低下し脱離する可能性が生じる。
【0035】
本発明の分離膜において、コーテイング層の厚さは0.1〜50μmであることが好ましく、気孔サイズは0.001〜10μm範囲が好ましく、気孔度は30〜80%範囲が好ましい。気孔サイズが0.001μm未満であるか気孔度が30%未満の場合には、少ない量の電解液が気孔に満たされ、リチウムイオンの伝達能力が落ちて、セルの性能が低下する問題があり、気孔サイズが10μm超過であるか気孔度が80%超過の場合、多孔性分離膜の機械的物性が低下するおそれがある。
本発明の分離膜において、前記コーテイング液を多孔性基材上にコーテイングする方法は当業界に知られた通常的なコーテイング方法を通じてコーテイングすることができ、例えば、デイップ(Dip)コーテイング、ダイ(Die)コーテイング、ロール(roll)コーテイング、コンマ(comma)コーテイング、グラビア(Gravure)コーテイング、または、これらの混合方式の多様な工程を利用することができる。
【0036】
<多孔性分離膜の製造方法>
本発明の有/無機複合多孔性分離膜は、当業界に知られた通常的な方法に従って製造することができるが、無機物粒子を使用する場合の好ましきな実施形態を挙げれば、
(a) 無機物粒子を溶媒に添加及び混合して、無機物粒子を分散させる段階;
(b) 粒子形態のバインダーを前記(a)段階で得られた混合溶液に添加及び混合して、コーテイング液を得る段階; および
(c) 多孔性基材の表面の単面、両面及び基材中の気孔部の少なくとも一部からなる群から選ばれる一つ以上の領域を、前記(b)段階で得られたコーテイング液でコーテイング及び乾燥する段階を含む。
【0037】
前記(a)段階で無機物粒子を分散させる方法としては、当業界に知られた通常的な方法を利用することができ、例えば、超音波分散器、ボールミル(ball-mill)、デイスパーサー(disperser)、ミキサー(mixer)等を利用することができるし、特にボールミル(ball mill)法が好ましい。この時、処理時間は容量に従って異なり得るが、1〜20時間が適切であり、破砕された無機物粒子の粒度はボールミルに使用されたビードのサイズ及びボールミル時間に従って制御することができるが、前記に言及された通り、0.001〜10μm水準の粒子サイズであれば好ましい。本段階で、無機物粒子のサイズや形態及び表面の化学的な構造に従って粒子分散状態が低下する場合があるが、そのような場合、必要に従って高分子形分散剤を添加すれば、効果的に分散させることができる。この時、使用される分散剤の含量は、一般的に無機物粒子のサイズ、化学的な構造及び表面積に従って相異するが、無機物粒子100重量部に対して0〜3重量部が適切である。
【0038】
前記(b)段階では、無機物粒子が分散されたスラリー形態の混合溶液にバインダーを添加して、有/無機複合コーテイング液を製造する。
【0039】
前記(c)段階で、多孔性基材にコーテイング液をコーテイングする前に、最終に得られたコーテイング液の粘度や表面エネルギーに基づいて、選択的に多孔性基材に対し有/無機複合コーテイング液の濡れ性(wetting)を向上させるために使用される湿潤剤、コーテイング層の表面均一度向上のためのレベリング剤、分離膜基材とコーテイング液間の接着力を向上させるための接着増進剤、消泡及び脱泡剤、増粘剤、流動性添加剤、UV吸収剤などのコーテイング性向上のために適用可能な添加剤を適切量に混合することができ、添加剤の種類は望むコーテイング方法及びコーテイング特性に従って適切に選んで使用することが可能である。
【0040】
前記(c)段階では、コーテイング液を多孔性基材上にコーテイング及び乾燥することにより、最終的に本発明のコーテイング分離膜を製造することができる。 この時、前記多孔性基材上にコーテイングする方法は、当業界に知られた通常的なコーテイング方法を通じてコーテイングすることができるし、例えば、デイツプ(Dip)コーテイング、ダイ(Die)コーテイング、ロール(roll)コーテイング、コンマ(comma)コーテイング、グラビア(Gravure)コーテイング、バー(bar)コーテイングまたはこれらの混合方式を利用して、多孔性基材の表面の単面または両面または気孔の少なくとも一部に単層また複層にコーテイング層を形成して、本発明の分離膜を製造することができる。
【0041】
<多孔性分離膜を具備する電気化学素子>
本発明の有/無機複合コーテイング多孔性分離膜は、陽極、陰極及び電解質を含む電気化学素子において、前記陽極と陰極の間で分離膜に使用できる。
前記電気化学素子は電気化学反応をする全ての素子を含み、具体的な例を挙げれば、全ての種類の1次/2次電池、燃料電池、太陽電池またはスーパーキャパシターなどがある。特に、前記2次電池中リチュウム2次電池が最も好ましい。
2次電池素子は当技術分野に知られた通常的な方法に従って製造でき、陽極と陰極間に本発明の分離膜を介在させて組み立てた後、電解液を注入することにより製造できる。
本発明の分離膜と共に適用される陰極、陽極、電解質は特別に制限されないし、当業界で使用される通常的なものを使用することができる。