特許第6092402号(P6092402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6092402-発電プラントの柔軟な運転方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092402
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】発電プラントの柔軟な運転方法
(51)【国際特許分類】
   F22B 1/18 20060101AFI20170227BHJP
   F22B 35/00 20060101ALI20170227BHJP
   F22B 35/08 20060101ALI20170227BHJP
   F22B 35/10 20060101ALI20170227BHJP
   F01K 23/10 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F22B1/18 C
   F22B35/00 F
   F22B35/08
   F22B35/10
   F01K23/10 D
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-536068(P2015-536068)
(86)(22)【出願日】2013年10月2日
(65)【公表番号】特表2015-534633(P2015-534633A)
(43)【公表日】2015年12月3日
(86)【国際出願番号】EP2013070510
(87)【国際公開番号】WO2014056772
(87)【国際公開日】20140417
【審査請求日】2015年5月22日
(31)【優先権主張番号】102012218542.9
(32)【優先日】2012年10月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Siemens Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(72)【発明者】
【氏名】ブルックナー,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シュルント,ゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】トーマス,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイセンベルガー,ベルント
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−083005(JP,A)
【文献】 特開2008−082583(JP,A)
【文献】 特開2007−183068(JP,A)
【文献】 国際公開第2002/101205(WO,A1)
【文献】 特開平01−159501(JP,A)
【文献】 特開昭63−172803(JP,A)
【文献】 特開2002−115507(JP,A)
【文献】 特開2005−315244(JP,A)
【文献】 特表2011−523019(JP,A)
【文献】 米国特許第3980100(US,A)
【文献】 米国特許第3192908(US,A)
【文献】 欧州特許出願公開第2194320(EP,A1)
【文献】 欧州特許出願公開第1050667(EP,A1)
【文献】 独国特許出願公開第102010060064(DE,A1)
【文献】 独国特許出願公開第10155508(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 1/00−37/78
F01K23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫流の原理に従って動作する排熱回収ボイラ(1)であって、高温排ガス(R)用の排ガスダクト(K)内に配置された1以上の予熱器段階(V)、1以上の蒸発器段階(D)、及び1以上の過熱器段階(U)の伝熱面を有し、前記高温排ガス(R)が、まず、前記過熱器段階(U)の伝熱面、次に、前記蒸発器段階(D)の伝熱面、最終的に、前記予熱器段階(V)の伝熱面の周囲に流され、さらに、給水ポンプ(P)が前記予熱器段階(V)の伝熱面の上流に接続され、前記蒸発器段階(D)および過熱器段階(U)の伝熱面がその下流に接続された排熱回収ボイラ(1)を備えた発電プラントの運転方法であって、前記排熱回収ボイラ(1)は、前記排ガスダクト(K)内の過熱器段階(U)の伝熱面の領域内に配設された助燃器(F)を備え、前記助燃器(F)が立ち上がるのとほぼ同時に前記発電プラントの出力を増加するために、前記伝熱面を通って流れる給水(W)の質量流量を増加させることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記給水質量流量は、前記排熱回収ボイラの蒸発器段階(D)の出口における過熱ベースライン設定値を減らすことによって増加する、ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
さらに、前記助燃器(F)の出力の変化が評価されて、前記給水質量流量の増加の補正率として影響を受ける、ことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫流の原理に従って動作する排熱回収ボイラを備えた発電プラントの柔軟な運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の発電プラントは、効率が高いだけでなく、運転上できるだけ柔軟性があることが求められる。これには、短い起動時間や速い負荷変動速度はもちろん、ネットワーク内での周波数妨害の均一化の可能性も含まれる。それゆえ、様々な国々の個々のネットワークの要件プロファイル及び関連する報償モデルに応じて、特に、ガス・蒸気複合発電プラントの場合には、ピーク負荷運転時に、助燃器(Zusatzfeuerung)によって蒸気回路経由で、ネットワークが追加の出力をできるだけ急速に使用できるようにすることが得策でありえる。このような助燃器を備えたガス・蒸気発電プラントは、例えば、DE 10 2010 060 064 A1、EP 1 050 667 A1及びUS 3,980,100により知られている。
【0003】
近年知られている助燃器を備えた発電プラントでは、ドラム型ボイラが一般的に使用されている。ここで、助燃器が作動してから蒸発器が生成する蒸気量が増加するまでに、著しい遅れが生じる。影響を受けた伝熱面パイプの蒸気冷却は、蒸気生成の過渡挙動に直結しており、その蒸気冷却の向上もまた遅延する。具体的には、これは、助燃器のスイッチをオンにした時点ですぐに、過熱器伝熱面及び再熱器伝熱面はまず、ほぼ同一の蒸気流量で、排ガス側の加熱の進行に対処しなければならないということである。しかしながら、逆に言えば、これらの伝熱面の流体温度、ひいては壁温をも、助燃器の出力増加を制限することだけによって、許容限度内に保つことができるということでもある。しかしながら、このような要件は、プラントの柔軟性を実質的に制限する。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、上記欠点を克服する方法を提供することである。
この目的は、請求項1に記載の特徴を備えた、発電プラントの柔軟な運転方法により達成される。
【0005】
助燃器は、特に、排熱回収ボイラの排ガスダクトの過熱器/再熱器領域内に配置されるが、その助燃器を使用することによって、蒸気回路に伝わる熱が増加し、これによって、発生する蒸気量、及び、最終的には、蒸気タービンによって伝達される機械力も増加する。しかしながら、この文脈においては、立ち上げられた助燃器付近の排ガスダクト内で、排ガス温度が著しく上昇することを考慮に入れなければならない。特に、排ガス方向の助燃器の下流の最初の伝熱面(これらは、一般的に、高圧過熱器伝熱面である)は、この状況で、高い熱的負荷を受ける。しかしながら、長期間の安全運転を確保しようとするならば、これらの伝熱面を十分にパイプクーリング(pipe cooling)することが不可欠である。最終的には、排ガスダクト内の対応する伝熱面を十分、確実にパイプクーリングする、追加の噴射冷却器等の更なる構成要素の使用を避けたいならば、このパイプクーリングは、蒸発器内で生成される蒸気量によって提供されなければならない。しかしながら、蒸発器内での蒸気の生成は、助燃器のスイッチをオンにした後、著しく遅れてからしか増加しないため、過熱器は、少なくとも、助燃器が立ち上げられた直後は、パイプクーリング特性は概ね同じのまま、実質的により多く加熱されてしまい、その後のすべての結果に影響を及ぼす。
【0006】
それゆえ、本発明によれば、貫流の原理に従って動作する排熱回収ボイラであって、排ガスダクト内に配置された、排熱回収ボイラの様々な圧力段階の伝熱面を含む排熱回収ボイラを備えた発電プラントの柔軟な運転のため、排熱回収ボイラの排ガスダクト内に配置された助燃器が立ち上がるのとほぼ同時に出力を増加させるために、伝熱面を通って流れる給水の質量流量の増加を提供する。
【0007】
本発明の核となる思想は、ドラム型システムと比較して、貫流システムの技術的・物理的な利点を用いることにある。本発明は、ドラム型蒸発器を備えたシステムに対しては利用できない、貫流システムのシステム特性を利用する。高熱の過熱器伝熱面の冷却は、給水を制御することによって積極的に影響を受け得るため、このシステム特性とは、助燃器が排ガスダクトに組み込まれた排熱回収ボイラを備えた発電プラントにおける実質的な利点を表す。従って、助燃器やそれに合った同時給水制御によって、いかなる場合においても柔軟性のある結果を生じるように整えられている貫流システムは、ドラム型ボイラと比較すると、プラント柔軟性がさらにいっそう高い。さらに、蒸気質量流量を上げると、過熱器の構成に対して、関連する最大温度が低下する。これによっても、助燃器の下流に配置された過熱器を、より費用対効果の高い材料で装備することができるようになる。
【0008】
本発明の有利な展開は、蒸発器自体の固有保護に関する。助燃器のスイッチがオンになった時に、蒸発器出口における過熱器のベースライン設定値を積極的に引き下げると、助燃器に起因する蒸発器パイプの更なる加熱に、より耐えられるようになる。ここでも、蒸発器を通る流れを増加させると、より良いパイプクーリングにつながる。これに特に適した制御形態の1つは、EP 2 194 320 A1に見出すことができる。
【0009】
助燃器が立ち上がった後に、蒸発器出口での実際の過熱をいっそう速く減少させようとするならば、または、蒸気質量流量が必要量増加しても、特に、過熱器のクーリングが十分に急速に改善されないならば、給水質量流量を更に増加させる追加のパイロット制御信号を与えることができる。好ましくは、そのために、助燃器の出力増加を、DT1微分遅れ要素によって評価して、給水量信号に付加要素として付加する。このようなDT1微分遅れ要素の特性によって引き起こされる、助燃器の過渡過程の場合にのみ、追加の信号を生成するために、助燃器が停止している場合、または、助燃力が一定の場合には、これは給水質量流量信号によって変化しない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本発明を、例として、図面を参照しながら説明する。図面に非常に模式的に示す排熱回収ボイラ1は、貫流の原理に従って動作する。このような排熱回収ボイラは、通常、1以上の予熱器段階V、1以上の蒸発器段階D、及び1以上の過熱器段階Uを含む。個々の段階の伝熱面は、排ガスダクトK内に配置され、例えばガスタービンから発生する高熱の排ガスRが、まず、過熱器段階Uの伝熱面、次に、蒸発器段階Dの伝熱面、最終的に、予熱器段階Vの伝熱面の周囲を流れる。これにより、各段階において、排ガスRから、伝熱面を通って流れる媒体へ、熱が伝わる。流動媒体に関しては、給水ポンプPが予熱器段階Vの伝熱面の上流に接続され、蒸発器段階Dの伝熱面がその下流に接続される。蒸発器段階Dの伝熱面の出口は、流動媒体に関しては、気水分離器(より詳細には図示せず)経由で、下流の過熱器伝熱面Uに接続されてもよく、下流の過熱器伝熱面Uとしては、過熱器伝熱面から出ていく蒸気の温度を適合させる噴射冷却器に備えられてもよい。
【0011】
この場合、排熱回収ボイラ1は、給水Wの制御投入のために構成される。そのため、給水ポンプPは、給水量、または、給水ポンプPが予熱器Vに向かって圧する給水質量流量が適切な制御によって設定されるように、給水量制御装置SPによって制御される。そのような給水量制御装置SPの形態の1つとしては、例えば、EP 2 194 320 A1に見出すことができる。本明細書に示す例示的実施形態において、助燃器Fは、排ガスダクトK内の過熱器Uの伝熱面または他の可能な再熱器の伝熱面の領域内に備えられる。助燃器Fは、対応する助燃器出力制御装置SFによって、制御、特に、スイッチをオン・オフされる。本発明による方法を実施するために、助燃器F用の助燃器出力制御装置SF及び給水ポンプP用の給水量制御装置SPが、発電プラントの中央制御システム等の制御装置Sによって、適宜、制御監視される。
【0012】
貫流システムは、循環蒸発器よりも、通常運転時に、流動媒体が蒸発器出口ですでに過熱されているという決定的な利点がある。本発明による方法によって、助燃器のスイッチをオンにした時点ですでに、給水質量流量が同時に増加するならば、貫流蒸発器の場合は、蒸気質量流量の同時増加に直接つながる。これは過熱を消費して起こり、このようにして過熱が減少する。蒸気質量流量が増加するにつれて、過熱器のパイプクーリング特性も同時に改善される。それゆえ、貫流システムによって、助燃器のスイッチをオンにした時点ですでに、蒸気質量流量の増加に伴って、過熱器をより良く冷却することが可能である。理論的には、給水量を増加させることによって蒸気質量流量を増加させることは、蒸発器出口での流動媒体が飽和温度に達していない限り、可能であるということを考慮すべきである。その場合、給水質量流量がこれ以上増加すると、ボトル中に生成される水が上昇することになる。しかしながら、助燃器の余分な加熱もまた、ある一定の時間遅延後に蒸発器内で検知されるので、飽和温度への到達が、この側面から阻止される。
【0013】
本発明明細書の思想は、具体的には、貫流システムのこの技術的・物理的利点に関する。助燃器は一般的に、プラント全体の効率を悪化させる特性のため、プラント出力がすでに100%に達している時にだけスイッチがオンにされ、追加出力は、高い報償条件で使用可能になる。このシステムは、プラント負荷が100%の時に、最も高く過熱されるのは、ベンソン(BENSON)ボイラを備えた排熱回収ボイラ1の蒸発器出口であるようになっている。現在の構成では、これはおよそ40〜50Kである。助燃器Fのスイッチをオンにすると、同時に、このような貫流式排熱回収ボイラの給水設定値の決定時の蒸発器Dの過熱ベースライン設定値が、非常に短い時間内に最小値(一般的に10K)まで減少するならば、この措置によって、蒸発器を通って流れる給水量が増加する。給水制御は、増加した給水によって、新たな過熱設定値を設定しようとする。同時に、蒸発器から出ていく蒸気質量流量も増加し、その蒸気質量流量が、助燃器が原因で高負荷になった過熱器段階Uの冷却特性を改善する。蒸発器出口での過熱が給水増加量によって減少したという事実によって、過熱器の冷却効果がさらに増す。10Kという最小過熱ベースライン設定値は、気液平衡(bubble−point)曲線に対して十分なマージンを維持しているので、気水分離器内での水の生成は、蒸発器出口での実際の過熱の微量のアンダーシュートの場合でさえ、考慮に入れる必要はない。このことは、助燃器Fによって蒸発器がますます加熱された結果として、蒸発器出口での実際の過熱がさらに進む傾向があるという事実によって、さらに裏付けられる。
図1