(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の方法において、前記ヘッドマウント・ディスプレイの回転方向及び回転速度を、前記ヘッドマウント・ディスプレイの回転に応じた角速度ベクトルを検出することにより取得することを特徴とする方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔本発明の実施形態の説明〕
本発明の実施の形態の概要を例示的に列挙すると以下のとおりである。
〔形態1〕
ユーザが視認する仮想空間画像をヘッドマウント・ディスプレイに提供する方法であって、
前記ヘッドマウント・ディスプレイの回転方向及び回転速度を取得するステップと、
前記回転方向に基づいて画像情報量低減化処理を施す方向を設定するとともに、前記回転速度に基づいて前記画像情報量低減化処理を施す範囲及び強さを設定するステップと、
ユーザが視認する仮想空間において、前記ヘッドマウント・ディスプレイの変位に基づいて前記画像情報量低減化処理を施し、画像情報量を低減させた画像を生成するステップ、を具備したことを特徴とする方法。
本形態1によれば、VR酔いを低減しつつ、視認性の低下を防止することができる。
【0012】
〔形態2〕
形態1に記載の方法において、前記ヘッドマウント・ディスプレイの回転方向及び回転速度を、前記ヘッドマウント・ディスプレイの回転に応じた角速度ベクトルを検出することにより取得することを特徴とする方法。
本形態2によれば、ヘッドマウント・ディスプレイの回転方向及び回転速度の取得を簡便に行うことができる。
【0013】
〔形態3〕
形態1又は2に記載の方法において、前記画像情報量低減化処理を施す方向、及び/又は、画像情報量低減化処理を施す強さが段階的に設定されることを特徴とする方法。
本形態3によれば、画像情報量低減化処理を簡便に実現することができる。
【0014】
〔形態4〕
形態1〜3に記載の方法において、前記回転速度が所定値未満の場合には前記画像情報量低減化処理を施さないことを特徴とする方法。
本形態4によれば、特に、視認性の低下を防止することができる。
【0015】
〔形態5〕
形態1〜4に記載の方法において、前記回転方向及び/又は回転速度は、離散値として取得されることを特徴とする方法。
本形態5によれば、画像情報量低減化処理の方向及び/又は程度の設定を簡素化することができるとともに、回転の際の微小なブレ等の影響を回避できる。
【0016】
本発明の他の実施の形態は、上記各方法をコンピュータにより実現するためのプログラムに係るものである。
そして、前記プログラムにおいても、前記方法と同様の作用効果を奏するものである。
【0017】
以下、本発明に係る実施の一形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下において説明する実施の形態に限定されるべきではなく、特許請求の範囲の記載に基づき解釈されるべきである。また、当業者であれば、他の類似する実施形態を使用することができること、また、本発明から逸脱することなく適宜形態の変更又は追加を行うことができることに留意すべきである。
【0018】
〔本発明の構成の概要〕
本発明は、概略以下のような新規な知見に基づいて案出されたものである。
今、仮に、ユーザが現実空間におり、頭を水平方向に回転させた場合の態様を想定すると、回転速度が速い(大きい)場合には、視野角が小さく視認範囲は視線方向に狭まっており、また、周辺領域はモーションブラーのエフェクトがかかってぼやけて視認されることになる。そして、このような視認態様に基づき、ユーザは、自然な視覚系の情報を取得することができ、中心部分の視認領域を除き、取得する情報量を視覚的な負担を生じさせにくい程度に抑えることができる。
【0019】
他方、HMDを装着したユーザが視認する仮想現実空間においても、HMDの変位速度が大きい場合に、視認範囲を視線方向に狭め、前記ヘッドマウント・ディスプレイの変位方向に基づいて前記画像情報量低減化処理を施す方向を決定し、ユーザが視認する仮想空間画像に対して、中心部分の視認領域を除き、情報量を低減させるような視認態様を実現することができれば、ユーザは、前述の現実空間のケースと同様に比較的自然な視覚系の情報を取得することが期待できる。そして、中心部分の視認領域を除いた情報量も視覚的な負担を生じさせにくい程度に抑えられることになるから、視覚的な負担を一因とするVR酔いを低減させることが期待できる。
【0020】
図1は、上述のような新規な知見に基づく本発明の実施の一形態に係る方法の主要構成を示すフローチャートである。フローチャートには、主要構成として、HMDの回転方向及び回転速度を取得するステップ2、前記回転方向に基づいて画像情報量低減化処理の方向を設定するとともに、前記回転速度に基づいて前記画像情報量低減化処理を施す範囲及び強さを設定するステップ3、及び、ユーザが視認する仮想空間において、HMDの変位に基づいて前記画像情報量低減化処理を施し、画像情報量を低減させた画像を生成するステップ4が示されているが、その詳細については後述する(例えば、
図5に係る説明参照)。
【0021】
〔全体システムのハードウェア構成の概要〕
図2は、本発明の一実施形態を含む全体システムのハードウェア構成の概要を示す概念図であり、全体システム100のハードウェア構成として、HMD120と、画像生成装置200とを含むものである。HMD120と画像生成装置200は、一例として有線ケーブル150によって電気的に接続され、相互に通信可能である。有線ケーブル150に代えて、無線接続が用いられてもよい。
【0022】
HMD120は、ユーザ101の頭に装着されて利用される表示デバイスである。HMD120は、ディスプレイ122と、センサ126とを備える。HMD120は更に、不図示のスピーカ(ヘッドホン)を備えてもよい。
【0023】
ディスプレイ122は、HMD120を装着したユーザ101の視界に画像を提示するように構成される。例えば、ディスプレイ122は、非透過型ディスプレイとして構成することができる。この場合、HMD120の外界の光景はユーザ101の視界から遮断され、ユーザ101の目にはディスプレイ122に映し出された画像だけが届けられる。ディスプレイ122には、例えば、コンピュータグラフィックスを用いて生成した画像が表示される。コンピュータグラフィックスによる画像の一例は、仮想現実の空間、例えば、コンピュータゲームで作り出される世界を画像化した仮想現実空間画像である。
【0024】
センサ126は、HMD120を装着したユーザ101の頭がどちらの方向を向いているかを検知するためのセンサである。センサ126としては、例えば、磁気センサ、角速度センサ、若しくは加速度センサのいずれか、又はこれらの組み合わせが用いられてよい。センサ126が磁気センサ、角速度センサ、又は加速度センサである場合、センサ126はHMD120に内蔵されて、HMD120の向きや動きに応じた値(磁気、角速度、又は加速度の値)を出力する。センサ126からの出力値を適宜の方法で加工することで、HMD120を装着したユーザ101の頭の向きが算出される。ユーザ101の頭の向きは、ユーザ101が頭を動かした際にその動きに追従するようにディスプレイ122の表示画像を変化させるのに利用することができる。例えば、ユーザ101が頭を右(又は左、上、下)に向けると、ディスプレイ122には、仮想現実空間においてユーザの右(又は左、上、下)方向にある仮想的光景が映し出されることになる。
【0025】
なおセンサ126として、HMD120の外部に設けられたセンサを適用することとしてもよい。例えば、センサ126は、HMD120とは別体の、室内の固定位置に設置された赤外線センサであってよい。この赤外線センサを用いて、HMD120の表面に設けられた赤外線反射マーカーを検知することにより、HMD120を装着したユーザ101の頭の向きを特定することができる。
【0026】
画像生成装置200は、HMD120に表示される画像を生成するためのシステムである。画像生成装置200は、ハードウェア構成として、プロセッサ202と、メモリ204と、ユーザ入力インターフェイス206と、通信インターフェイス208とを少なくとも備える。画像生成装置200は、専用の装置であってもよいが、例えば、パーソナルコンピュータ、ゲームコンソール、スマートフォン、PDA(Personal Digital Assistant)、タブレット端末等として実現することが可能である。
【0027】
メモリ204には、少なくともオペレーティングシステムと画像生成用プログラムとが格納されている。オペレーティングシステムは、画像生成装置200の全体的な動作を制御するためのコンピュータプログラムである。メモリ204はまた、画像生成装置200の動作によって生成されるデータを一時的又は永続的に記憶することもできる。メモリ204の具体例は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク、フラッシュメモリ、光ディスク等である。
【0028】
プロセッサ202は、メモリ204に格納されているプログラムを読み出して、それに従った処理を実行するように構成される。プロセッサ202がメモリ204に格納されたプログラムを実行することによって、画面生成が行われる。プロセッサ202は、CPU(Central Processing Unit)及びGPU(Graphics Processing Unit)を含む。
【0029】
ユーザ入力インターフェイス206は、画像表示システム100のユーザから画像生成装置200を操作するための入力を受け取るように構成される。ユーザ入力インターフェイス206の具体例は、ゲームコントローラ、タッチパッド、マウス、キーボード等である。
【0030】
通信インターフェイス208は、ネットワークを介して他の装置と通信するためのネットワークインターフェイスである。
【0031】
なお、画像生成用プログラムは、SNSプラットフォームとは独立したプログラムとして構築してもよいし、SNSプラットフォーム上で提供されるプログラムとすることもできる。プログラムが、SNSプラットフォーム上で提供されるプログラムの場合には、プログラム(アプリケーションソフトウェア)がサーバに実装されており、該サーバが、各ユーザの入力操作に応じて画像生成のための演算処理やデータ処理を実行することになる。したがって、このようなケースにおいては、メモリ204に画像生成用プログラムを格納しておく必要はない。
【0032】
〔画像生成装置の基本的動作〕
次に、画像生成装置200の基本的動作について説明する。なお、以下の説明においては、仮想空間を仮想現実(VR)空間とする。
【0033】
図3は、画像生成装置200の基本機能の構成を示すブロック図であり、
図2に示されたプロセッサ202がメモリ204内の画像生成プログラムを読み出して実行することによって実現される画像生成処理の機能を表す。
【0034】
画像生成部231は、HMD120に表示するための画像を生成する。例えば、画像生成部231は、記憶部220から所定のデータを取得し、取得したデータに基づいてコンピュータグラフィックス処理によって画像を生成する。一例として、画像生成部231は、HMD120を装着した第2ユーザ101がコンピュータゲームによる仮想現実空間を認識することができるような仮想現実空間画像を生成する。仮想現実空間画像は、ユーザが仮想現実空間内で目にすることのできる光景を表す。例えば、画像生成部231によって生成される仮想現実空間画像は、コンピュータゲーム内に登場するキャラクタ、建物や木などの風景、室内の家具や壁の内装、地面に落ちているアイテム、ユーザが操作しているアバター(自分自身)の体の一部(手や足)やアバターが手で持っている物体(銃や剣)等の様々なオブジェクトを含む。仮想現実空間を構成するこのような各オブジェクトの配置位置、形状、色など、仮想現実空間画像を生成するのに必要なデータは、仮想現実空間構成情報221として記憶部220に格納されている。画像生成部231は、記憶部220から取得した仮想現実空間構成情報221に基づいて、このようなコンピュータゲームの仮想現実空間画像を生成する。
【0035】
また、画像生成部231は、センサ126からの出力値に基づいて画像を変化させている。例えば、画像生成部231が生成する画像は、仮想現実空間内におけるユーザの視界が、センサ126からの出力値が示すユーザ101の頭の動きに追従して移り変わっていく様子を表す画像であってよい。一例として、
図4Aは、ユーザの頭の動きを模式的に示す。図示されるように、ユーザ101の頭の中心とHMD120の中心(ディスプレイ122の画面中心)とを結ぶ軸をZ軸、ユーザ101の頭の中心と頭頂部とを結ぶ軸をY軸、ユーザ101の頭の中心を通りY軸及びZ軸に直交する軸をX軸にとる。センサ126が例えば角速度センサである場合、センサ126からはX軸回りのピッチ角、Y軸回りのヨー角、及びZ軸回りのロール角のそれぞれの角速度の値が出力される。画像生成部231は、これらの角速度の出力値、即ちユーザ101の頭の向きに基づいて、仮想現実空間画像を変化させる。例えば、ユーザ101が頭を右に向けた場合、Y軸回りのヨー角が変化する。画像生成部231は、Y軸の角速度値の変化に合わせて、仮想現実空間内でユーザの右方向にある光景が映し出されるように、仮想現実空間画像を変化させる。同様に、ユーザ101が頭を右に傾けた場合、Z軸回りのロール角が変化する。画像生成部231は、Z軸の角速度値の変化に合わせて、仮想現実空間内におけるユーザの視界が右に傾くように、仮想現実空間画像を変化させる。
【0036】
また、画像生成部231は、ユーザの位置に基づいて画像を変化させている。例えば、ユーザが仮想現実空間内を歩き回る場合、画像生成部231が生成する画像は、仮想現実空間内でユーザが現在立っている位置から見える光景を表す画像であってよい。一例として、仮想現実空間内におけるユーザの経時的な位置情報が記憶部220に記憶される。画像生成部231は、記憶部220から仮想現実空間内におけるユーザの直前の位置情報を取得する。またゲームコントローラなどのユーザ入力インターフェイス206からは、ユーザが仮想現実空間内を歩き回るための操作入力として、ユーザの移動方向及び移動速度の指示が入力される。画像生成部231は、記憶部220から取得したユーザの直前の位置情報と、ユーザ入力インターフェイス206から入力されたユーザの移動方向及び移動速度の情報とに基づいて、仮想現実空間内におけるユーザの現在位置を算出する。算出したユーザの現在位置に基づいて、画像生成部231は、仮想現実空間内をユーザが歩くのに合わせてユーザの視界が移り変わるように、仮想現実空間画像を変化させる。
【0037】
図4Bは、センサ126によるポジション・トラッキングと仮想空間402内に配置される仮想カメラ404との間の関係を示す模式図である。因みに、ポジション・トラッキングとは、センサ126を用いてHMD120の位置や傾きに関する情報を検知する機能を意味する。
【0038】
図4Bに示すように、仮想空間402の内部の所定位置に仮想カメラ404が配置され、仮想空間402の外部(現実空間)にセンサ126が仮想的に配置される。視界領域408は、仮想空間画像410のうちユーザの視界を構成する部分(視界画像418)である。視界領域408は基準視線412に基づいて決定され、基準視線412は仮想カメラ404の位置及び傾きに基づいて決定される。このようにして、HMD120の装着者であるユーザの頭部の動きに応じて、3次元仮想空間としてのVR空間内の所定位置に配置された仮想カメラ404が制御され、仮想カメラ404により取得された視界領域408の映像(視界画像418)がユーザにより視認される。ユーザが視認する視界領域408は、仮想カメラ404の基準視線412によって決定され、当該基準視線412がHMD120のZ軸方向(
図4A参照)に一致するように、HMD120の動きと仮想カメラ404の動きが対応付けられている。
【0039】
このようにして、画像生成部231では、仮想現実空間内におけるユーザの位置と頭の向きに応じた仮想現実空間画像が生成される。生成された仮想現実空間画像は、画像出力部239を介してHMD120へ出力されて、ディスプレイ122に表示される。これによりユーザは、仮想現実空間において、現在自分が立っている場所から頭を向けた方向に存在する仮想的光景を見ることができる。
【0040】
〔処理の態様例〕
次に、本発明の実施の一形態に係る処理の一例の概略を、
図5、
図6A、
図6Bに示されるような例に基づき説明する。
図5は、本発明の実施の一形態に係る処理動作を示すフローチャートである。また、
図6Aは、仮想現実空間の水平方向に対して画像情報量低減化処理の一態様である画像のぼかしを付与した場合の態様例を表す模式図、
図6Bは、仮想現実空間の垂直方向に対して画像情報量低減化処理の一態様である画像のぼかしを付与した場合の態様例を表す模式図、
図6Cは、HMDの変位方向(
図6Cでは斜め方向)に画像情報量低減化処理の一態様である画像のぼかしを付与することにより生成された画像の態様例を表す模式図である。
【0041】
まず、HMDの角速度センサ126(
図2参照)から出力されるX軸回りのピッチ角、Y軸回りのヨー角、及びZ軸回りのロール角のそれぞれの角速度ωX,ωY,ωZを検出する(S501)。
【0042】
必要に応じて、検出された各角速度ωX,ωY,ωZに対して離散化処理を行う(S502)。ここで、離散化処理とは、連続した値を持つデータである検出された各角速度ωX,ωY,ωZを非連続的な数値(離散値)に置き換えることを意味する。このような離散化処理は、各角速度ωX,ωY,ωZに微小な変動がある場合にその変動の影響を回避するのに有効な手法である。なお、離散化によって得られる離散値は、必ずしも等間隔とする必要はない。例えば、所定値未満の検出値を「0」とみなしたり、所定の範囲を細分化するような離散化も適宜採用し得る。
【0043】
角速度ωX,ωY,ωZにより、各角速度ωX,ωY,ωZを成分とする3次元角速度ベクトルΩが決定される。そこで、角速度ベクトルΩの大きさ|Ω|、及び、方向Ω/|Ω|を取得する(S503)。
【0044】
必要に応じて、角速度ベクトルΩについて、その大きさ|Ω|、及び、方向Ω/|Ω|に対して離散化処理を行う(S504)。これは、前述のように、角速度ベクトルΩの大きさ|Ω|、及び、方向Ω/|Ω|に微小な変動がある場合にその変動の影響を回避するのに有効な手法である。なお、離散化によって得られる離散値は、必ずしも等間隔とする必要はないことも前述のとおりである。
【0045】
次に、角速度ベクトルΩの大きさ|Ω|が所定値未満か否かを判定する(S505)。判定結果が是の場合には、画像のぼかしに係る処理を実施しない。また、判定結果が否の場合には、以下のステップに進む。
【0046】
次に、角速度ベクトルΩの方向(HMDの変位方向)Ω/|Ω|に基づいて画像のぼかし処理を施す方向を設定するとともに、角速度ベクトルΩの大きさ|Ω|に基づいて画像のぼかしの強さ及び前記画像のぼかし処理を施す範囲を設定する(S506)。なお、ぼかしの強さとは、画像に対してぼかし処理を施す程度を意味し、換言すれば、画像情報量の低減の程度を表すものである。
【0047】
上述の画像のぼかしの強さ及び前記画像のぼかし処理を施す範囲の設定について、
図7に基づき説明する。
図7は、画像のぼかしの強さ及び前記画像のぼかし処理を施す範囲の一例を説明するための模式図であり、HMDの変位速度が大きくなるに従って、画像のぼかし処理を施す周辺領域の範囲を拡大するとともに、当該周辺領域における画像のぼかしの強さを増大させて、自然な視認態様を実現するようにした手法の一例を説明するものである。
【0048】
図7において、HMDの変位方向が図面上で水平方向の場合が説明されており、(β)には、視認範囲中で画像のぼかし処理を施す周辺領域の範囲が示されている。また、(α)には、視認範囲の中心から左右に、画像のぼかしの強さが実線A、一点鎖線B、破線Cで示されている。ここで、実線A、一点鎖線B、破線Cは、それぞれ、HMDの変位速度が大、中、小のケースに対応するものであり、HMDの変位速度の大きさに応じた周辺領域における画像のぼかしの強さを模式的に示すものである。
図7から明らかなように、HMDの変位速度が大である程、画像のぼかし処理を施す周辺領域の範囲が大となり、当該周辺領域における画像のぼかしの強さも大となっている。なお、画像のぼかしの強さが、端部方向に行くに従って強くなっているのは、画像のぼかし処理を施さない状態から画像のぼかし処理を徐々に施すように移行させてHMDを装着するユーザに自然な視認態様を提供するためである。また、HMDの変位速度に応じた画像のぼかしのエフェクトを得るために、実線A、一点鎖線B、破線Cで直線の傾きを異ならせている。
図7においては、実線A、一点鎖線B、破線Cが直線状の態様で表されているが、必ずしも、直線に限られるものではなく、曲線状の態様や、段階状に変化する態様であってもよい。
【0049】
そして、HMDの変位に基づいて前記画像のぼかし処理を実施し、ユーザが視認する仮想空間において画像情報量を低減させた画像を生成する(S507)。
【0050】
上述のステップS507の処理により得られた画像の具体例を、
図6A、
図6B、及び
図6Cを用いて詳細に説明する。
図6Aは、HMDのY軸回りの回転によりヨー角について角速度が発生した場合に仮想現実空間の水平方向に対して画像のぼかしを付与することにより生成された画像の態様例を表す模式図である。また、
図6Bは、HMDのX軸回りの回転によりピッチ角について角速度が発生した場合に仮想現実空間の垂直方向に対して画像のぼかしを付与することにより生成された画像の態様例を表す模式図である。更に、
図6Cは、HMDの変位方向(
図6Cでは斜め方向)に画像のぼかしを付与することにより生成された画像の態様例を表す模式図である。
【0051】
まず、HMDのY軸回りの回転によりヨー角について角速度が発生した場合に仮想現実空間の水平方向に対して画像のぼかしを付与することにより生成された画像の
図6Aに示される態様例について説明する。
図6Aの態様例においては、HMDのY軸回りの回転によりヨー角について角速度が発生していることから、当該角速度の大きさに基づいて、水平方向の画像のぼかしの大きさ及び画像のぼかし処理を施す範囲が設定されている。具体的には、当該角速度の大きさが、大、中、小の3段階で示した場合の「中」の段階にある場合が想定されており、中段階の角速度の大きさに基づいて画像のぼかし処理を施す周辺領域の幅を大、中、小の3段階の中の中段階に設定するとともに、当該周辺領域における画像のぼかしの強さ(大きさ)を大、中、小の3段階の中の中段階に設定するものである。そして、このような構成により、上述のように、ユーザは比較的自然な視覚系の情報を取得することができ、取得する情報量も視覚的な負担を生じさせにくい程度に抑えられることになるから、視覚的な負担を一因とするVR酔いを低減させることができる。
【0052】
なお、
図6Aの態様例において、角速度の大きさが大又は小となるに従って、画像のぼかし処理を施す周辺領域の幅や画像のぼかしの大きさも大又は小とすることができる。
【0053】
次に、仮想現実空間の垂直方向に対して画像のぼかしを付与することにより生成された画像の
図6Bに示される態様例を説明する。
図6Bの態様例においては、HMDのX軸回りの回転によりピッチ角について角速度が発生していることから、当該角速度の大きさに基づいて、垂直方向の画像のぼかしの大きさ及びその画像のぼかし処理を施す範囲が設定されている。具体的には、当該角速度の大きさが、大、中、小の3段階で示した場合の「中」の段階にある場合が想定されており、中段階の角速度の大きさに基づいて画像のぼかし処理を施す周辺領域の幅を大、中、小の3段階の中の中段階に設定するとともに、当該周辺領域における画像のぼかしの強さ(大きさ)を大、中、小の3段階の中の中段階に設定するものである。そして、このような構成により、上述のように、ユーザは比較的自然な視覚系の情報を取得することができ、取得する情報量も視覚的な負担を生じさせにくい程度に抑えられることになるから、視覚的な負担を一因とするVR酔いを低減させることができる。
【0054】
なお、
図6Bの態様例においても、角速度の大きさが大又は小となるに従って、画像のぼかし処理を施す周辺領域の幅や画像のぼかしの大きさも大又は小とすることができる。
【0055】
次に、HMDの変位方向に画像のぼかしを付与することにより生成された画像の
図6Cに示される態様例を説明する。一般に、HMDの変位は、HMDのX軸、Y軸、Z軸回りの回転をもたらすことから、HMDの変位により、X軸回りのピッチ角、Y軸回りのヨー角、及びZ軸回りのロール角のそれぞれについて角速度が発生する。この場合には、X軸回りのピッチ角、Y軸回りのヨー角、及びZ軸回りのロール角を成分とする角速度ベクトルを求め、当該角速度ベクトルの方向に基づいて、画像のぼかし処理を施す方向を決定するとともに、当該角速度ベクトルの大きさに基づいて画像のぼかし処理を施す周辺領域の幅や画像のぼかしの強さ(大きさ)を決定することができる。
【0056】
図6Cにおいては、HMDの変位方向(角速度ベクトルの方向)は、画面上で水平及び垂直方向にそれぞれ成分を有することから、画像のぼかし処理を施す方向は、画面上で斜め方向となる。なお、
図6Cにおいては、当該角速度ベクトルの大きさが、大、中、小の3段階で示した場合の「中」の段階にある場合が想定されており、中段階の角速度の大きさに基づいて画像のぼかし処理を施す周辺領域(斜め方向の領域)の幅を大、中、小の3段階の中の中段階に設定するとともに、当該周辺領域における画像のぼかしの強さ(大きさ)を大、中、小の3段階の中の中段階に設定するものである。そして、このような構成により、上述のように、ユーザは比較的自然な視覚系の情報を取得することができ、取得する情報量も視覚的な負担を生じさせにくい程度に抑えられることになるから、視覚的な負担を一因とするVR酔いを低減させることができる。
【0057】
なお、
図6Cの態様例においても、角速度ベクトルの大きさが大又は小となるに従って、画像のぼかし処理を施す周辺領域の幅や画像のぼかしの強さ(大きさ)も大又は小とすることができる。そして、HMDの変位方向に基づいて前記画像のぼかし処理を施す方向を決定し、ユーザが視認する仮想空間画像に対して情報量を低減させた画像を生成することができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、その要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更が可能である。
【解決手段】HMDのX軸回りのピッチ角、Y軸回りのヨー角、及びZ軸回りのロール角のそれぞれの角速度ωX,ωY,ωZを検出し(S501)、各角速度ωX,ωY,ωZを成分とする3次元角速度ベクトルΩの大きさ|Ω|、方向Ω/|Ω|を取得する(S503)。次に、角速度ベクトルΩの大きさ|Ω|が所定値未満か否かを判定し(S505)、判定結果が否の場合には、角速度ベクトルΩの方向Ω/|Ω|に基づいて画像のぼかしの方向を設定するとともに、角速度ベクトルΩの大きさ|Ω|に基づいて画像のぼかしの大きさ及び前記画像のぼかし処理を施す範囲を設定する(S506)。それにより、HMDの変位に基づいて前記画像のぼかし処理を実施し、ユーザが視認する仮想空間において画像情報量を低減させた画像を生成する(S507)。