【実施例】
【0041】
以下に実施例を挙げて本発明の詳細を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[試料の調製]
・試料1〜5
タピオカ澱粉に水を添加して、タピオカ澱粉を30〜40質量%含有するスラリーとした。このスラリーを30℃に加温した後、タピオカ澱粉の乾燥質量100質量部に対して2質量部の硫酸ナトリウムを溶解した。その後、水酸化ナトリウムを添加してpH11〜12に調整した後、澱粉の乾燥質量100質量部に対して、試料1では0.5、試料2では0.05、試料3では0.04、試料4では0.03、及び試料5では0.02質量部の塩化ホスホリルを添加して1時間反応した。次に、硫酸を添加してpH9〜10に調整した後、pHを維持したまま澱粉の乾燥質量100質量部に対して7質量部の酢酸ビニルモノマーを添加して30分間反応した。さらに、硫酸を添加してpH5〜6に調整した後、水洗、脱水した。得られた生成物に水を添加して、該生成物を30〜40質量%含有するスラリーを調製し、このスラリーを表面温度158℃のダブルドラムドライヤーで乾燥して試料1〜5を得た(表2)。
【0042】
・試料6
タピオカ澱粉に水を添加して、タピオカ澱粉を30〜40質量%含有するスラリーとした。このスラリーを30℃に加温した後、水酸化ナトリウムを添加してpH9〜10に調整し、pHを維持したまま澱粉の乾燥質量100質量部に対して7質量部の酢酸ビニルモノマーを添加して30分間反応した。硫酸を添加してpH5〜6に調整した後、水洗、脱水した。得られた生成物に水を添加して、該生成物を30〜40質量%含有するスラリーを調製し、このスラリーを表面温度158℃のダブルドラムドライヤーで乾燥して試料6を得た(表2)。
【0043】
・試料7
タピオカ澱粉に水を添加して、タピオカ澱粉を30〜40質量%含有するスラリーとした。このスラリーを30℃に加温した後、タピオカ澱粉の乾燥質量100質量部に対して2質量部の硫酸ナトリウムを溶解し、水酸化ナトリウムを添加してpH11〜12に調整した後、澱粉の乾燥質量100質量部に対して0.05質量部の塩化ホスホリルを添加して1時間反応した。硫酸を添加してpH5〜6に調整した後、水洗、脱水した。得られた生成物に水を添加して、該生成物を30〜40質量%含有するスラリーを調製し、このスラリーを表面温度158℃のダブルドラムドライヤーで乾燥して試料7を得た(表2)。
【0044】
・試料8
試料2の調製において、澱粉の乾燥質量100質量部に対して7質量部の酢酸ビニルモノマーを添加する代わりに、1.5質量部の酢酸ビニルモノマーを添加した以外は、試料2と同様にして、試料8を得た(表2)。
【0045】
・試料9
試料2の調製において、澱粉の乾燥質量100質量部に対して7質量部の酢酸ビニルモノマーを添加する代わりに、3質量部の酢酸ビニルモノマーを添加した以外は、試料2と同様にして、試料9を得た(表2)。
【0046】
・試料10
水120質量部にタピオカ澱粉100質量部を加えてスラリーとし、撹拌下3%の苛性ソーダ水溶液を加えてpH11.3〜11.5に保持しながら、トリメタリン酸ソーダ0.5質量部を加え、39℃で5時間反応した後、硫酸でpH9.5とし、25℃に冷却した。次いで、3%苛性ソーダ水溶液を加えてpH9.0〜9.5に維持しながら無水酢酸6質量部を加えてアセチル化し、硫酸で中和、水洗、脱水した。得られた生成物に水を添加して、該生成物を30〜40質量%含有するスラリーを調製し、このスラリーを表面温度158℃のダブルドラムドライヤーで乾燥して試料10を得た(表2)。
【0047】
・試料11
試料2の調製において、澱粉の乾燥質量100質量部に対して7質量部の酢酸ビニルモノマーを添加する代わりに、8質量部の酢酸ビニルモノマーを添加した以外は、試料2と同様にして、試料11を得た(表2)。
【0048】
・試料12
試料1の調製において、タピオカ澱粉の代わりにコーンスターチを使用し、且つ澱粉(コーンスターチ)の乾燥質量100質量部に対して0.5質量部の塩化ホスホリルを添加する代わりに、0.8質量部のトリメタリン酸ナトリウムを添加した以外は、試料1と同様にして、試料12を得た(表2)。
【0049】
・試料13
試料1の調製において、タピオカ澱粉の代わりに馬鈴薯澱粉を使用し、且つ澱粉(馬鈴薯澱粉)の乾燥質量100質量部に対して0.5質量部の塩化ホスホリルを添加する代わりに、1質量部のトリメタリン酸ナトリウムを添加した以外は、試料1と同様にして、試料13を得た(表2)。
【0050】
・試料14
試料1の調製において、タピオカの代わりにワキシーコーンスターチを使用し、且つ澱粉(ワキシーコーンスターチ)の乾燥質量100質量部に対して0.5質量部の塩化ホスホリルを添加する代わりに、0.1質量部のトリメタリン酸ナトリウムを添加した以外は、試料1と同様にして、試料14を得た(表2)。
【0051】
・試料15
水120質量部に硫酸ナトリウム20質量部を溶解し、馬鈴薯澱粉100質量部を加えてスラリーとし、撹拌下4%の苛性ソーダ水溶液30質量部、酸化プロピレン10質量部に、トリメタリン酸ソーダ1質量部を加え、41℃で20時間反応した後、硫酸で中和、水洗、脱水した。得られた生成物に水を添加して30〜40質量%のスラリー状に調製し、表面温度158℃のダブルドラムドライヤーで乾燥して試料15を得た(表2)。
【0052】
なお、ヒドロキシプロピル基(HP基)含量は以下の方法で測定した。
【0053】
澱粉試料0.05gを精密に量り、0.5mol/L硫酸を25mL加えて沸騰水浴中で加熱して溶解し、冷却後、水を加えて100mLにした。試料液1.0mLを正確に量り、冷水で冷却しながら硫酸8mLを加え、攪拌した後、沸騰水中で正確に3分間加熱し、直ちに氷水中で冷却した。冷却後、ニンヒドリン試薬0.6mLを管壁に沿って加え、直ちに攪拌し、25℃水浴中で100分間反応させた。これに硫酸15mLを加えた後、静かに攪拌したものを検液とし、5分間後、590nmの吸光度を測定した。対照液は、同じ植物を起源とする未加工澱粉を用い、検液の場合と同様の操作を行った。さらに、検量線作成のため、プロピレングリコールを0、15、30、60μg/mLになるように調製し、これらの液についても検液の場合と同様の操作を行った。検量線から、検液中および対照液中のプロピレングリコール濃度(μg/mL)を求め、下記式(2)によりヒドロキシプロピル基含有量を求めた。
【0054】
ヒドロキシプロピル基含有量(質量%)=(f−e)×0.007763/w…(2)
上記式(2)中、f:検液中のプロピレングリコール濃度(μg/mL)、e:対照液中のプロピレングリコール濃度(μg/mL)、w:試料乾燥物重量(g)を意味する。
【0055】
・試料16
タピオカ澱粉に水を添加して、タピオカ澱粉を30〜40質量%を含有するスラリーとした。このスラリーを30℃に加温した後、澱粉の乾燥質量100質量部に対して2質量部の硫酸ナトリウムを溶解し、水酸化ナトリウムを添加してpH11〜12に調整した後、澱粉の乾燥質量100質量部に対して0.05質量部の塩化ホスホリルを添加して1時間反応した。その後、澱粉の乾燥質量100質量部に対して2質量部の酸化プロピレンを添加して3時間反応した。硫酸を添加してpH5〜6に調整した後、水洗、脱水した。得られた生成物に水を添加して、該生成物を30〜40質量%含有するスラリーを調製し、このスラリーを表面温度158℃のダブルドラムドライヤーで乾燥して試料16を得た(表2)。
【0056】
・試料17
試料16の調製において、澱粉の乾燥質量100質量部に対して0.05質量部の塩化ホスホリルを添加する代わりに、0.02質量部の塩化ホスホリルを添加した以外は、試料16と同様にして、試料17を得た(表2)。
【0057】
・試料18
タピオカに予め水を添加して30〜40質量%のスラリー状にした。30℃に加温した後、水酸化ナトリウムを添加してpH9〜10に調整し、pHを維持したまま澱粉の乾燥質量100質量部に対して7質量部の酢酸ビニルモノマーを添加して30分間反応した。硫酸を添加してpH5〜6に調整した後、水洗、脱水、乾燥して試料18を得た(表2)。
【0058】
・試料19
タピオカ澱粉に水を添加して、タピオカ澱粉を30〜40質量%含有するスラリーとした。このスラリーを30℃に加温した後、澱粉の乾燥質量100質量部に対して2質量部の硫酸ナトリウムを溶解し、水酸化ナトリウムを添加してpH11〜12に調整した後、澱粉の乾燥質量100質量部に対して0.02質量部の塩化ホスホリルを添加して1時間反応した。硫酸を添加してpH5〜6に調整した後、水洗、脱水、乾燥して試料19を得た(表2)。
【0059】
・試料20
タピオカ澱粉に水を添加して、タピオカ澱粉を30〜40質量%含有するスラリーとした。このスラリーを30℃に加温した後、澱粉の乾燥質量100質量部に対して2質量部の硫酸ナトリウムを溶解し、水酸化ナトリウム等を添加してpH11〜12に調整した後、澱粉の乾燥質量100質量部に対して0.05質量部の塩化ホスホリルを添加して1時間反応した。硫酸を添加してpH9〜10に調整した後、pHを維持したまま澱粉の乾燥質量100質量部に対して7質量部の酢酸ビニルモノマーを添加して30分間反応した。硫酸を添加してpH5〜6に調整した後、水洗、脱水、乾燥して試料20を得た(表2)。
【0060】
【表2】
【0061】
[実施例1:どら焼きの皮]
上記試料の調製で得られた表2に示す試料1〜20を用いて表3に示す配合比率でどら焼きの皮を作製した。つまり、全卵を混合後、上白糖、蜂蜜、みりん、しょうゆ、水飴を投入して混合し、さらに水を加え混合した。この混合物に、薄力粉、各試料を添加混合し、どら焼きの皮の生地とした。生地は澱粉質原料100質量部に対して水分添加量は145質量部であった。出来あがった生地を裏ごしし、冷蔵庫で一晩ねかした。翌日、ベーキングパウダー、重層、炭酸アンモニウムをねかした生地に添加混合した。ホットプレート焼成し、水分含有量が30質量%のどら焼きの皮を得た。粒餡をサンドし脱酸素剤を封入しシールした後常温保存し、調製1日後および調製35日後の官能検査に供した。
【0062】
なお、水分含有量は、常圧加熱乾燥法の方法によって測定した(以下の実施例においても同様)。
【0063】
【表3】
【0064】
官能検査は、皮の食感について以下の基準に基づいてパネラー8名で評点評価し、結果を平均値で示す。各試料の評点結果を表4に示す。どら焼きの保形性が良好な生地は、焼成時の皮の形が良好で、焼成後も生地に適度な厚みが形成される。生地粘度が高すぎても低すぎても良好な保形性は得られない。
【0065】
焼成後のどら焼きの皮の保形性の評価は、生地の形や厚みが良好:○、焼成後生地の形や厚みがやや悪い:△、焼成後の生地の形や厚みが悪い:×、とした。
【0066】
どら焼きの皮のしっとり感は、無添加区のしっとり感を0点とした場合に、無添加区よりややしっとり感が強い:+1点、しっとりしている:+2点、とてもしっとりしている:+3点、ややしっとり感が劣る:−1点、しっとり感が劣る:−2点、とてもしっとり感が劣る:−3点、の基準で評価した。
【0067】
どら焼きの皮の口溶け感は、無添加区の口溶けを0点とした場合に、無添加区よりやや口溶けが良い:+1点、口溶けが良い:+2点、とても口溶けが良い:+3点、やや口溶けが悪い:−1点、口溶けが悪い:−2点、とても口溶けが悪い:−3点、の基準で評価した。
【0068】
どら焼きの皮のソフト感は、無添加区のしっとり感を0点とした場合に、無添加区よりややソフト感が強い:+1点、ソフトである:+2点、とてもソフトである:+3点、ややソフト感が劣る:−1点、ソフト感が劣る:−2点、とてもソフト感が劣る:−3点、の基準で評価した。
【0069】
どら焼きの皮のふんわり感は、噛んだときにつぶれにくくふんわりとした食感を評価した。無添加区のふんわり感を0点とした場合に、無添加区よりややふんわり感が強い:+1点、ふんわり感が強い:+2点、とてもふんわり感が強い:+3点、ややふんわり感が弱い:−1点、ふんわり感が弱い:−2点、とてもふんわり感が弱い:−3点、の基準で評価した。
【0070】
【表4】
【0071】
試料1〜3及び11は、保形性に優れ、調製1日後および35日後において、しっとり感、口溶け感、ソフト感、ふんわり感で良好であった。特に試料11は、優れた食感改良効果を有していた。
【0072】
架橋処理は行っているが、粘度が200mPa・sより高い試料4、5は、しっとり感とソフト感は良好な評価が得られたものの、口溶け感が不足し、やや重い食感であった。
【0073】
架橋処理を行っていない粘度が高い試料6は、粘度が高く、火通りが悪くソフト感が不足していた。また、保形性はやや悪く、食感においては、しっとり感はあるものの、生地がつぶれ易く、口溶け感が悪く、ふんわり感のある食感は得られなかった。
【0074】
アセチル化処理を行っていない試料7は、調製1日後および35日後においてソフト感と共にしっとり感が不足しており、特に調整35日後のしっとり感が劣っており、硬くてパサついた食感であった。アセチル基含量が低い試料8〜10は、ややしっとり感とソフト感の評価が低く、良好な食感が得られなかった。
【0075】
コーンスターチを原資とした試料12は、調製35日後のしっとり感やソフト感およびふんわり感が低下し、馬鈴薯澱粉を原資にした試料13も同様の傾向がみられ、経時的な老化による食感低下を抑制する効果が低かった。
【0076】
ワキシーコーンスターチを原資とし、粘度が200mPa・sより高い試料14はしっとり感とソフト感は良好であったものの、口溶け感が非常に悪く、ふんわり感の評価が低く、重い食感であった。
【0077】
また、ヒドロキシプロピル化した馬鈴薯澱粉である試料15は、調製35日後の口溶け感が低下し、ややじっとりとして口溶けが良好でなかった。
【0078】
ヒドロキシプロピル化した試料16、17は、しっとり感やソフト感は良好であったものの、口溶け感が非常に悪く、ふんわり感の無い食感であった。
【0079】
α化処理を行わなかった試料18〜20は、生地の粘度が低く、保形性が悪く、食感改良効果は全体を通して良好なものではなかった。
【0080】
[実施例2:イーストドーナツ]
上記試料の調製で得られた表2に示す試料1、2、3、4、5、6、及び10を用いて表5に示す配合比率でイーストドーナツを作製した。つまり、強力粉、薄力粉、試料、ベーキングパウダー、イースト、イーストフード、上白糖、ぶどう糖、脱脂粉乳、食塩に溶いた全卵、水を添加撹拌後、油脂を添加して混捏した。28℃、湿度74%で60分間一次発酵させ、40gに分割し、ベンチタイム20分後にガス抜き成型し、36℃で45分間二次発酵させ、170℃で3分間フライしイーストドーナツを得た。イーストドーナツの生地は、原料澱粉質原料100質量部に対して水分添加量が56質量部であった。また、フライ後の水分含有量は27質量%であった。調製1日後と調製3日後に官能検査を実施した。
【0081】
【表5】
【0082】
官能検査は、ドーナツの食感について、しっとり感、口溶け感、及びふんわり感は実施例1と同様に、サックリ感は以下の基準に基づいて、パネラー8名で評点評価し結果を平均値で示す。各試料の評点結果を表6に示す。
【0083】
ドーナツのサックリ感は、噛んだときの歯切れを評価したものであり、無添加区のサックリ感を0点、無添加区よりややサックリ感が強い:+1点、サックリ感が強い:+2点、とてもサックリ感が強い、ややサックリ感が劣る:−1点、サックリ感が劣る:−2点、とてもサックリ感が劣る:−3点、の基準で評価した。
【0084】
【表6】
【0085】
試料1、2、3は調製1日後および調製3日後においてしっとりとして、口溶け感の良い食感であった。また、ふんわりとしてサックリとした歯切れの良いものであった。一方、アセチル基含量がやや低い試料10は、しっとり感が不足し、特に調製3日後はパサついた食感であった。架橋処理を行っていない粘度の高い試料6は、ねちゃついた食感で口溶け感が非常に悪かった。架橋処理は行われているが、粘度がやや高い試料4及び5も口溶けがやや悪く良好な食感が得られなかった。
【0086】
[実施例3:蒸しケーキ]
上記試料の調製で得られた試料1、2、3、4、5、6、及び10を用いて、表7に示す配合比率で蒸しケーキを作製した。つまり、上白糖、食塩、乳化油脂、全卵、サラダ油をミキサーボールに入れ撹拌した。さらに薄力粉、試料、ベーキングパウダー、水、水飴を加え、撹拌することで最終的な比重を0.4とし、蒸し加熱にて調製した。蒸しケーキは薄力粉に対して水分添加量が128質量部であった。また、焼成後の水分含有量は36質量%であった。調整1日後と調製4日後に官能検査を実施した。
【0087】
【表7】
【0088】
官能検査は、蒸しケーキの食感について、実施例1と同様に、以下の基準に基づいてパネラー8名で評点評価し、結果を平均値で示した。各試料の評点結果を表8に示す。
【0089】
【表8】
【0090】
試料1、2、3は、ケーキの生地に適度な粘度付けが出来、保形性が良好であった。また、しっとり感が強く、口溶けも良好であった。架橋処理を行っていない粘度が高い試料6は、しっとり感は良好なものの、生地粘度の上昇により生地が硬くなり、焼成時の生地の広がりが悪く、保形性の評価は良好ではなかった。また、食感は口溶け感が悪く、ふんわり感も弱かった。アセチル基含量がやや低い試料10は、調製4日後においてしっとり感が低下し、ややパサついた食感であった。架橋処理は行われているが、粘度が200mPa・sより高い試料4、5は口溶けが好ましくなかった。
【0091】
[比較例1:パイ]
上記試料の調製で得られた試料2、5、6、10、及び11を用いて表9に示す配合比率でパイを作製した。つまり、マーガリン12質量部に水を少しずつ加えて混合し、食塩、中力粉、試料を添加して撹拌した。一晩冷蔵庫内で寝かした後にマーガリン75質量部を折り込んでパイ生地を作製し、冷蔵庫でさらに寝かした後に折り込んで層をつくり、4mm厚に伸ばしたパイシートを型抜きして約200℃で、20分焼成した。パイの生地は澱粉質原料100質量部に対して水分の添加量が40質量部であり、焼成後の水分含有量は5質量%であった。調整1日後のパイを、官能検査に供した。
【0092】
【表9】
【0093】
官能検査は、パイの食感について、しっとり感、及び口溶け感は実施例1と同様に、サクサク感は以下の基準に基づいてパネラー8名で評点評価し、結果を平均値で示す。各試料の評点結果を表10に示す。
【0094】
パイのサクサク感は、無添加区のサクサク感を0点、無添加区よりややサクサク感が強い:+1点、サクサク感が強い:+2点、とてもサクサク感が強い:+3点、ややサクサク感が劣る:−1点、サクサク感が劣る:−2点、とてもサクサク感が劣る:−3点、の基準で評価した。
【0095】
なお、パイのしっとり感は、口あたりにボソつきや粉っぽさが無く口あたりが良いときにしっとり感が強いと評価している。
【0096】
また、パイの浮き(膨らみ)を、パイの浮きが無添加区よりとても良い:◎、パイの浮きが無添加区より良い:○、パイの浮きが無添加区よりやや良い:△、の基準で評価した。
【0097】
【表10】
【0098】
試料2、10、11は、パイの浮きが改善されず、サクサク感が不足していた。架橋処理が行われていない粘度の高い試料6は、浮きが良好でサクサクとした食感で口溶け感が良好であった。架橋処理は行われているが、粘度がやや高い試料5は、ややサクサク感があり、口溶け感もやや良好であった。しかしながら、試料2、5、6、10、11の全てにおいてしっとり感は十分と言えるほど良好なものではなかった。
【0099】
[比較例2:ウエハース]
上記試料の調製で得られた試料2、5、6、11、及び20を用いて表11に示す配合比率にてウエハースを作製した。つまり、食塩、脱脂粉乳、炭酸水素アンモニウム、重曹を予め混合しておき、この混合物に卵黄、水を添加し、撹拌した。さらに中力粉と試料を加え、撹拌し、冷蔵庫で1時間ねかした。ワッフルメーカー型に流して焼成し、ウエハースとした。ウエハースの焼成前の生地は、原料澱粉100質料部に対しての水分添加量が136質量部であり、加熱後の水分含有量は1質量%であった。調製1日後に官能検査を実施した。
【0100】
【表11】
【0101】
官能検査は、ウエハースの食感について、しっとり感、口溶け感、サクサク感は比較例1と同様に、パネラー8名で評点評価し、結果を平均値で示す。各試料の評点結果を表12に示す。
【0102】
【表12】
【0103】
α化処理した試料2、5、6、11は、ウエハースが硬くなり、しっとり感、口溶け感、サクサク感全てにおいての良好な食感は得られなかった。α化処理していない試料20は、良好な口溶け感を有し、軽くサクサクとした食感であったが、しっとり感は好ましくなかった。
【0104】
[比較例3:焼きまんじゅう]
上記試料の調製で得られた試料2、5、6、11、及び20を用いて表13に示す配合比率で焼きまんじゅうを作製した。つまり、上白糖、蜂蜜、全卵、バターをボールに入れ湯煎にかけゴムヘラで撹拌しながら上白糖を溶解した。溶解後常温で室温まで冷却後、重曹と水を添加し撹拌後、薄力粉、試料を添加混合した。出来上がった生地を室温にて1時間ねかせた後、餡を包み、180℃のオーブンで焼成した。焼成前の焼きまんじゅうの生地は、原料澱粉質原料100質量部に対して水分の添加量は35質量部であり、焼成後の水分含有量は19質量%であった。調製1日後および調製45日後に官能検査を実施した。
【0105】
【表13】
【0106】
官能検査は、焼きまんじゅうの食感について、しっとり感、口溶け感、サックリ感は実施例2と同様に、パネラー8名で評点評価し、結果を平均値で示す。各試料の評点結果を表14に示す。
【0107】
【表14】
【0108】
α化していない試料20は、保形性は悪かったが、サックリ感があり、また口溶け感の良い食感であった。アセチル基含量が高く、架橋処理は行われているがやや粘度の高い試料5はしっとり感があるものの、サックリ感が弱く、口溶け感が悪かった。試料2はややしっとり感はあるものの、やはり口溶け感とサックリ感が悪かった。試料6、11は、しっとり感は良好なものの、口溶け感が非常に悪く、しっとり感と口溶け感の両立は不可能であった。