(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092444
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】インクジェット印刷システムの故障した印刷ノズルを検出する方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
B41J2/01 207
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-86088(P2016-86088)
(22)【出願日】2016年4月22日
(65)【公開番号】特開2016-203636(P2016-203636A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2016年4月22日
(31)【優先権主張番号】10 2015 207 566.4
(32)【優先日】2015年4月24日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ ミヒェル
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ケーラー
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ティタ
【審査官】
下村 輝秋
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−240885(JP,A)
【文献】
特開2013−147003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御計算機(15)を用いてインクジェット印刷機(1)の故障した印刷ノズルを自動的に検出する方法であって、前記方法は、
・印刷画像データに基づき第1印刷画像(12)を作成する印刷プロセスを実行するステップと、
・少なくとも1つの画像センサにより、前記第1印刷画像(12)を取り込んでデジタル化するステップと、
・前記制御計算機(15)において、印刷方向に対して横方向に、少なくとも1つの印刷ノズルの分だけ前記印刷画像データをデジタル的にシフトするステップと、
・当該デジタル的にシフトした前記印刷画像データに基づき、第2印刷画像(16)を作成する別の印刷プロセスを実行するステップと、
・前記少なくとも1つの画像センサにより、前記第2印刷画像(16)を取り込んでデジタル化するステップと、
・前記制御計算機(15)において第1および第2の取り込んだ印刷画像を照合するステップと、
・前記制御計算機(15)により、当該照合結果(18)から故障した印刷ノズルを求めるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
印刷方向に対して横方向に、少なくとも1つの印刷ノズルの分だけ前記印刷画像データをシフトするのに加えて、逆方向に同じ量だけ前記印刷ヘッド(7)をシフトする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1および第2の取り込んだデジタルの印刷画像(12,16)間の前記照合を差分形成によって行う、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記照合結果(18)から求めた検出結果(19)を前記制御計算機(15)により、ディスプレイを介してユーザに出力する、
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの故障した印刷ノズルに対し、前記インクジェット印刷機(1)の補償モードを開始するトリガとして、前記照合結果(18)から求めた検出結果(19)を使用する、
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記画像センサはそれぞれ、各印刷画像の1つの画像部分(20)だけを取り込む、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
実行中の印刷プロセス中に前記取り込んだ前記画像部分(20)を明度プロファイルに累算し、各前記第1および第2のデジタルの印刷画像の前記取り込んだ画像部分(20)の前記明度プロファイル間で前記差分形成を行う、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
印刷方向に対して横方向の、少なくとも2つの印刷ノズル分だけの前記印刷画像データの前記シフトを、少なくとも1つの印刷ノズルによるシフトを複数のステップによって行う、
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載した方法を実行するために前記印刷機(1)が構成されている、制御計算機を備えたインクジェット印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載した特徴的構成を有する、インクジェット印刷システムの故障した印刷ノズルを検出する方法と、請求項9の上位概念に記載した特徴的構成を有しかつこの法を実行する装置とに関する。
【0002】
本発明は、デジタル印刷の技術分野に属する。
【背景技術】
【0003】
インクジェット印刷機には一般的に1つまたは複数の印刷ヘッドが含まれており、各印刷ヘッドには複数の印刷ノズルが含まれている。インクジェット印刷機は、インクが吐出されることによって印刷するためにこれらのノズルを使用する。印刷機は、複数の個別ノズルの固有の配置構成を有するノズルプレートを有し、これらの個別ノズルによって1200dpiまでの解像度が可能になる。これには、約20μmのノズル間隔が必要である。個別の印刷ノズルが故障すると、専用に設けられたノズルにより、BCMYによる個別色分解で画像を生成できない複数の領域が生じる。したがって白線として見える色のない箇所が発生してしまうのである。多色印刷の場合、この箇所において、対応する色が欠落し、色値が歪められてしまう。個別ノズルの吐出路は、理想的に進行せず、ここから多かれ少なかれずれてしまうことにも注意しなければならず、また吐出されたドットのサイズも考慮しなければならない。したがって正常に機能しないノズルは、印刷したすべての文書の印刷品質に係わって来るのである。個別ノズルの故障の原因は多種多様であり、故障は一時的な故障のこともあれば、持続的な故障のこともある。
【0004】
特にベタでの印刷画像への影響を低減するため、従来技術からは補償のための複数のアプローチが公知である。これらのアプローチの1つでは、同色かつ同じインクジェットユニットの別の複数のノズルによって故障をカバーすることが試みられている。すなわち、故障した個々のインクジェット印刷ノズルを補償するため、どの個別ノズルが係わっているのかを確認した後、隣接する複数のノズルを駆動制御し、これらのノズルのドットサイズを拡大して、故障したノズルの箇所も一緒にカバーされるようにするのである。これにより、隣接するノズルは、故障したノズルの画像も一緒に描画するのである。個々のノズルが印刷しないことによる白線はこのようにして防ぐことができる。
【0005】
公知の別のアプローチでは、故障した印刷ノズルは、同じ箇所の、使用されるそれぞれ別の複数の印刷用インクの複数のノズルによって置き換えられる。ここで試みられるのは、まだ利用可能な複数のインクを所期のように制御して重ねて印刷することにより、欠落した印刷用インクに可能な限りに近づけることである。これにより、印刷ノズルまたは印刷ヘッドの冗長性が必要となることも、隣接する印刷ノズルの故障が問題になることもなくなる。しかしながらこの補償法の大きな欠点は、これが多色印刷にしか使用できないことである。これに加えて必要な色の組み合わせを求めるため、印刷機の計算機による大きな計算および制御要求が課される。さらに(残った複数のインクのなお印刷可能な色空間と、欠落したインクとの色距離に応じて)得られる印刷結果は、目標値から大きくずれ得るのである。
【0006】
故障した印刷ノズルを補償するための別のアプローチでは、同色の2重のノズルユニットが設けられ、冗長性により、個々のノズルの故障を補償することができる。または一つの画像を印刷するため、位置決め可能な複数の印刷ヘッドが利用される。印刷ノズルが故障すると、印刷ヘッドが改めて位置決めされて、故障したノズルが、可能な限りに良好に置き換えられる。これらの2つのアプローチでは実際に、同色の印刷ヘッドの冗長性が必要であり、これにはすでに述べた複数の問題がつきものである。
【0007】
しかしながらこのような補償に対する前提は、まず故障した印刷ノズルを一度は正しく検出することである。すなわち、このように故障を生じたことを検出しなければならないだけでなく、どの印刷ノズルがまさに関係しているのか識別しなければならないのである。なぜならば、公知のほとんどの補償方法では、機能できない印刷ノズルの正確な知識が必要だからである。
【0008】
検出を行うため、従来技術からは、種々異なる解決のためのアプローチが公知である。すなわち、
1.複数のテスト印刷画像を印刷する
これらの印刷画像はつぎに機械オペレータに判定される。すなわちカウントされ、場合によっては故障しているノズルの情報が、手動の入力によって機械に通知される。この情報に基づいて、新たな印刷画像が作成され、故障したノズルが補償される。このプロセスは、主処理時間と並行して実行することはできない。印刷画像におけるエラーはまず識別しなければならず、つぎに上記の手動のプロセスが開始される。ここでは何が稼働時間の中断に結び付いたかを検査する必要がある。さらにこれは自動識別ではなく、場合によって損紙の発生の原因になり得る。例えば上記のようなテストパターンは、米国特許出願公開第2011/227988号明細書および米国特許第8322814号明細書から公知である。
【0009】
2. 固有のテストフォームの印刷および自動評価
選択肢A。テストフォームは、独立したジョブとして印刷機において印刷される。
選択肢B。テストフォームは、ウェブ印刷では利用部分間に印刷され、シート印刷では利用されない紙縁部に印刷される。
【0010】
このテストフォームにより、故障したインクジェットノズルを比較的簡単に自動識別することができる。欠点は、紙縁部または利用部分間の中間スペースは、すべてのタイプの印刷において所望されていない、ないしは、使用可能でないことである。テストパターンが独立した印刷ジョブとして形成される場合には大きな損紙が生じてしまう。幅の狭い紙縁部に許されるのは、限られたサイズのテストフォームだけであり、すなわち、複数のノズルの一部の検査だけであるため、故障したノズルを即座に識別して補償することは保証されないのである。すなわち、欠陥品が製造されてしまうかまたは択一的には紙判が十分には利用されないのである。
【0011】
3.
選択肢A。印刷画像全体が、カメラまたはセンサによってリアルタイムに読み込まれる。この場合、識別したデータと、オリジナルの印刷画像とを電子的に照合しなければならない。しかしながらこれらのデータの照合には、極めて高い計算能力およびリアルタイムでのデータの比較が必要である。可変のデータを使用する際には、上記の照合のため、刷了毎に新たに目標印刷画像を準備するかまたは可変のデータに対応して適合しなければならない。この解決手段には、高性能のハードウェアを使用するための高いコストが必要になるかまたはデータ処理中の機械の停止時間を生じさせる。またこのシステムはエラーを生じやすい。なぜならば、まさにどのノズル列が故障したのかが自動的に明らかにはならず、補償を行うことができないからである。電子式の測定を行えば、極めて精度の高い装置および大きなコストが要求されることになる。
【0012】
この例として、米国特許出願公開第2013/187970号明細書を挙げることができる。ここではデジタルの目標画像が、印刷済み画像のスキャンと比較される。この明細書には、スキャンした画像とデジタルの目標画像とを比較可能にする複数の変換(解像度変換、スキャナ特性変換)が記載されている。ここには差分形成がさらに記載されており、この差分形成は、あらかじめ定めた閾値を上回って偏差した際に、機能していないノズルを検出するために使用される。ここには基準マークを印刷することも述べられており、この基準マークに基づいて、機能しない印刷ノズルの位置決定ないし識別を行うことができる。
【0013】
選択肢B。ここでも印刷画像全体がカメラまたはセンサによってリアルタイムに読み込まれる。しかしながらデータは、印刷方向にデジタル的にグレイ値/明度または類似の量について累算され、印刷方向に対して横方向にプロファイルが形成される。このプロファイルがピクセル幅の「急峻な変化」を有する場合、ここから機能障害を推定する。ここでの大きな欠点は、例えばバーコードを印刷する際、急峻の変化の目標値が、ノズルの機能障害と区別できないことである。従来技術の公知の例は、米国特許第8531743号明細書である。この明細書には故障したノズルを検出するシステムが記載されており、ここでは光学式センサによって撮影した画像の明度差ストライプが印刷方向に沿って探索される。この際に累算されたプロファイルが形成され、閾値を下回る急峻な変化が探索される。この発明では、センサが撮像した行ないしはスキャンを個々の印刷プロセスインクに対応付けることができる方法が説明されており、これによってインクのそれぞれの故障したノズルが識別される。
【0014】
別の例は、欧州特許出願公開第2626209号明細書であり、ここでも同様に、印刷方向に沿って明度差ストライプの検出が行われる。この発明では、代わる代わるに照明することにより、すなわちさまざまな波長により、プロセスインク毎に1つの画像が形成され、スキャンした色分解において直接ストライプを探索することができる。ここでは積算されたプロファイルが形成され、閾値を下回る急峻な変化が探索される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/227988号明細書
【特許文献2】米国特許第8322814号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2013/187970号明細書
【特許文献4】米国特許第8531743号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第2626209号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の課題は、テストパターンの必要性ないしは性能の不足の点において、公知の方法の欠点を克服する、インクジェット印刷機の故障した印刷ノズルを検出する方法および装置を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題の本発明による解決手段は、請求項1の特徴的構成を有する方法に記載されている。
【0018】
この方法は、制御計算機を用いてインクジェット印刷機の故障した印刷ノズルを自動的に検出する方法であり、以下の複数のステップを含む。すなわち、この方法には、
1. 印刷画像データを用いて第1印刷画像を作成する印刷プロセスを実行するステップと、
2. 少なくとも1つの画像センサにより、この印刷プロセスにおいて作成した第1印刷画像を取り込んでデジタル化するステップと、
3. 制御計算機において、印刷方向に対して横方向に、少なくとも1つの印刷ノズル分だけ第1印刷画像をデジタル的にシフトするステップと、
4. デジタル的にシフトした第1印刷画像に基づき、第2印刷画像を作成する別の印刷プロセスを実行するステップと、
5. 少なくとも1つの画像センサにより、第2印刷画像を取り込んでデジタル化するステップと、
6. 制御計算機において、第1および第2の取り込んだ印刷画像を照合するステップと、
7. 制御計算機により、照合結果から故障した印刷ノズルを求めるステップと
が含まれているのである。
【0019】
本発明による方法の基礎をなしているのは、印刷画像をシフトすることによって故障した印刷ノズルを検出することである。このため、第1の印刷した利用部分をカメラによって取り込んで、制御計算機において、少なくとも1つの印刷ノズル分だけ印刷方向に対して横方向にシフトする。このシフトを左に向かって行うかまたは左に向かって行うかは重要ではない。唯一の条件は、これまで使用されていない複数の印刷ノズルがこのシフト方向に十分にあるようにして、引き続いてシフトにも拘わらずすべての利用部分を印刷できるようにすることである。印刷画像をシフトした後、つぎに利用部分が印刷され、新たにデジタル化され、制御計算機において、シフトされていない旧い画像と比較される。故障した印刷ノズルは、第2の利用部分において、印刷方向に対して垂直な複数の空白領域が、シフト幅だけ「移動している」ことによって求めることができる。これらの空白領域が、印刷画像の構成部分である場合には、これらの構成部分は、上記とは異なり、シフトさせた印刷画像において同じ画像位置に再度出現するはずである。
【0020】
この方法の利点は、従来技術から公知の方法とは異なり、ノズルの故障を検出するための専用のテストパターンが必要ないことである。なぜならば、この検出は実際の印刷画像に基づいているからである。印刷画像におけるノズルの故障の検出を具現化する公知の方法に比べて、目標画像が既知である必要はない。印刷画像において、目標印刷画像の知識なしに、故障したノズルを識別する公知の方法に比べて、多くの印刷にわたり、印刷した線の複雑な解析を行う必要はない。本発明では、印刷画像の2つのコピー間の差分形成によって画像センサが識別可能な真の相違が形成される。この相違は、原因としてただ1つの故障した印刷ノズルだけを有し得る。これにより上記検出では、格段に高い信頼性が得られる。さらに検査時間が格段に短縮されるかないしは必要な印刷コピーの数が少なくなる。
【0021】
有利であり、したがって好適な本発明の発展形態は、対応する従属請求項および対応する図面による説明から得られる。
【0022】
有利な一発展形態では、印刷方向に対して横方向に、少なくとも1つの印刷ノズルの分だけ第1デジタル印刷画像をシフトするのに加えて、逆方向に同じ量だけ印刷ヘッドをシフトする。
【0023】
本発明による方法において制御計算機は、第1および第2のデジタル化された利用部分間の照合の前に、印刷画像のシフトを再び計算しなければならないため、(画像センサは実際に引き続いて同じ箇所にある)、印刷画像の純粋にデジタル的なシフトを、再度、逆方向に印刷ヘッドを同じ大きさだけシフトすることによって調整することが考えられる。これにより、利用部分は、画像センサに対して再び元の場所にあり、その一方で隣接する印刷ノズルへの印刷画像のシフトはさらに維持されたままになる。これによって検出のための制御計算機の作業は軽減される。択一的には画像センサを同じ量だけ、かつ、印刷画像のデジタル的なシフトと同じ方向に動かすこともできる。
【0024】
別の有利な発展形態は、第1および第2の取り込んだデジタル印刷画像間の照合を差分形成によって行うことである。取り込んだ2つの利用部分間の最も簡単かつ効率的の比較の形態は、差分形成によって得られる。差分の後、欠陥のある印刷ノズルの箇所だけに、関連する色値がまだ存在し得る。
【0025】
有利な一発展形態では、検出結果を制御計算機により、ディスプレイを介してユーザに出力する。印刷プロセス用の作業フロープロセスでは、検出および補償は有利には自動的に行われるが、人間のユーザに検出結果をグラフィックディスプレイを介してオプションで通知することも本発明による方法の必要な構成部分である。
【0026】
別の有利な発展形態は、少なくとも1つの故障した印刷ノズルに対し、インクジェット印刷機の補償モードを開始するトリガとして、検出結果を使用することである。すでに述べたように、この検出結果は、作業フロープロセスにおいて、補償モードをオンするためのトリガとして使用される。
【0027】
本発明の有利な一発展形態では、画像センサはそれぞれ、各印刷画像の1つの画像部分だけを取り込む。検出方法は、印刷した利用部分全体にわたって実行する必要はない。アクティブな印刷ノズル全体を取り込む、検出ストライプでも十分である。監視領域をさらに小さくすることも可能であるが、当然のことながら相応に情報が失われる。
【0028】
別の有利な発展形態では、実行中の印刷プロセス中に取り込んだ画像部分を明度プロファイルに累算し、各第1および第2のデジタルの印刷画像の取り込んだ画像部分の明度プロファイル間で差分形成を行う。故障した印刷ノズルによって発生する画像アーチファクトは、自ずから印刷方向にストライプ状に出現させるため、取り込んだ利用部分全体ないしは監視領域にわたる照合の代わりに、これらを1つの明度プロファイルに累算し、これによってつぎに2つの明度プロファイル間で照合を行う。これにより、制御計算機に対する計算コストが大いに低減される。
【0029】
有利な一発展形態では、印刷方向に対して横方向の、少なくとも2つの印刷ノズル分だけの第1デジタル印刷画像のシフトを、少なくとも1つの印刷ノズルの複数のステップで行う。全体シフト分のデジタルの印刷画像のシフトを、複数のステップで行うことも可能である。このためには当然のことながら、少なくとも2つの印刷ノズルの間隔分だけ、全体シフトを行う必要がある。これにより、欠陥のある印刷ノズルがある箇所を除いてシフト方向に「視覚的な流れ」が生じる。このアプローチは、例えば、印刷した利用部分において、ストライプ状の画像アーチファクトに類似する画像要素が存在する場合、または、印刷方向に比較的に大きな、完全には印刷できない領域が存在する場合に有利になり得る。
【0030】
上で述べた課題を解決する本発明の方法の実行はさらにインクジェット印刷機によって行われ、この印刷機は、請求項1から8までの少なくとも1項に記載された方法を実行するように構成されている。本発明には、本発明による方法を実行するため、上で述べた方法についての請求項にしたがって構成された印刷機も含まれている。
【0031】
以下では、対応する図面を参照し、少なくとも1つの有利な実施例に基づき、本発明による方法およびこの方法の機能的に有利な発展形態を詳しく説明する。図面において、互いに対応する要素にはそれぞれ同じ参照符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】インクジェットウェブ印刷機の例を示す図である。
【
図2】印刷ノズルの故障によって生じたエラー画像の例を示す図である。
【
図3】使用した印刷機システムの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
有利な変形実施例において本発明の適用分野は、インクジェット印刷機1である。このような機械1の構造の例は、
図1に示されている。この印刷機1の動作時には、すでに冒頭で述べたように、印刷部6の印刷ヘッド7において個々の印刷ノズルが故障を起こし得る。これによって生じるのは白線13であり、または多色刷りの場合には色値の歪みである。このような白線13の例は、
図2に示されている。
【0034】
上で説明した方法をユーザが手動で実行するのは効率的でないため、この実行は、インクジェット印刷機1の制御計算機15によって自動的に行われる。
図3にはこのようなシステムの例示的な構成が示されている。この自動化された方法は、印刷機1の作業フローに組み込まれている。必要時にはユーザが、個々のステップについての制御計算機15の構成設定を手動で補正することができる。制御計算機15は、印刷機制御部14の一部分である。
【0035】
上記検出方法の機能原理は、
図4において有利な実施例の形態で詳しく示されている。印刷された各画像または画像の一部分20は、画像センサによって検出される。画像のつぎのコピーまたは部分20を印刷する前、印刷画像は、印刷方向に対して横方向に1つまたは複数の印刷ノズルの分だけ電子的にシフトされるため、別の複数のノズルによって画像情報が印刷される。同時に機械的なシフト部により、印刷方向に対して横方向に電子的なシフトとは逆に印刷ヘッドが同じ量だけシフトされるため、印刷画像のこのつぎのコピーは、画像センサから見て同じ位置に印刷される。画像センサから見ると、デジタル印刷画像およびヘッドの物理的な位置の逆向きのシフトは打ち消される。この画像の複数の線/ギャップは、このプロセスにおいて、それらのノズル割り当てをデジタル的なシフトの量分だけ変化させる。印刷データのない印刷ギャップによって発生し、したがって所望される線状のアーチファクトは、結果的に得られる、逆方向に2回シフトされた画像においてその元の位置に留まる。これに対し、故障したノズルによって形成される印刷ギャップ21の形状の線状のアーチファクト13は、
ただ物理的なシフト
に追従し、したがって結果的に得られる印刷画像17においてシフトされる。これにより、相違が印刷方向の線/ギャップによって示され、デジタル的なシフトを伴うおよびこれを伴わない画像センサによって読み込んだ複数の画像の簡単な差分形成を、故障したノズルに対する一層確実な検出判定基準として使用することができる。
【0036】
差分形成の別の変形実施形態は、画像センサにおいて撮像した画像データを、確認すべき短い画像部分の所定の時間にわたって積分して明度プロファイルにすることである。ここでは印刷画像におけるエラーを直ちに視認することができる。すなわち、場合によっては個々のチャネルに分割された画像データの明度プロファイルは、機能しているノズルの場合、前の画像部分20の明度プロファイルと一致する。累算した明度プロファイルにおいて際立った高明度点または低明度点が、印刷画像16のシフトと同時にノズルに対してシフトする場合、これは、欠陥のあるまたは故障したノズルによって生じるエラー13である。
【0037】
印刷画像のデジタル的なシフトは、機械式の逆の補正なしに行うことも可能である。この際には印刷画像を印刷方向に対して横方向に、1つまたは複数の印刷ノズル分だけシフトして、別のノズルがこれらの画像情報を印刷するようにする。しかしながらここでは同時の機械式の逆のシフトを行わない。正しい照合18を可能にするため、カメラの画像撮影を都度必要な方向において必要な量だけシフトさせる。択一的には、画像評価中に、すなわち差分形成の前に、制御計算機により、スキャンした画像16を対応する量だけシフトさせることも可能である。この操作の後、相前後する画像の差分形成をすることも同様に可能である。しかしながらここでは、基材上において絶対位置がシフトするという欠点が生じる。多くの印刷ジョブにおいてこの最小かつ絶対的なシフトを許容することができる。いずれにせよ解析および差分形成はこの影響を受けない。
【0038】
別の変形実施形態は、機械式の逆の補正なしに複数のより小さなステップで、デジタル的なシフトを行うことである。すなわち、設けられている複数の印刷ノズルの領域から外へ印刷画像が移動しないのであれば、全体シフト幅は未知であるかないしは重要ではない。制御計算機における画像解析により、移動するピクセルの「視覚的な流れ」が識別され、またこの画像解析により、これと、故障した印刷ノズルによって発生する停止したライン13とを区別することができる。この際に生じる欠点は、「視覚的な流れ」は、小さな複数のステップで複数回シフトすることによってはじめて発生し、ひいては数回印刷しなければならないことである。さらに基材において絶対位置がシフトするという欠点も発生する。
【0039】
本発明には、以下のような態様が含まれる。
[1]制御計算機を用いてインクジェット印刷機の故障した印刷ノズルを自動的に検出する方法であって、以下のステップ、すなわち、・印刷画像データを用いて第1印刷画像を作成する印刷プロセスを実行するステップと、・少なくとも1つの画像センサにより、印刷プロセスにおいて作成した第1印刷画像を取り込んでデジタル化するステップと、・制御計算機において、印刷方向に対して横方向に、少なくとも1つの印刷ノズルの分だけ第1印刷画像をデジタル的にシフトするステップと、・このデジタル的にシフトした第1印刷画像に基づき、第2印刷画像を作成する別の印刷プロセスを実行するステップと、・少なくとも1つの画像センサにより、第2印刷画像を取り込んでデジタル化するステップと、・制御計算機において第1および第2の取り込んだ印刷画像を照合するステップと、・制御計算機により、この照合結果から故障した印刷ノズルを求めるステップとを含む、ことを特徴とする方法。
[2]印刷方向に対して横方向に、少なくとも1つの印刷ノズルの分だけデジタルの第1印刷画像をシフトするのに加えて、逆方向に同じ量だけ印刷ヘッドをシフトする、[1]に記載の方法。
[3]第1および第2の取り込んだデジタルの印刷画像間の照合を差分形成によって行う、[1]または[2]に記載の方法。
[4]検出結果を制御計算機により、ディスプレイを介してユーザに出力する、[1]から[3]までのいずれか1つに記載の方法。
[5]少なくとも1つの故障した印刷ノズルに対し、インクジェット印刷機の補償モードを開始するトリガとして、検出結果を使用する、[1]から[4]までのいずれか1つに記載の方法。
[6]画像センサはそれぞれ、各印刷画像の1つの画像部分だけを取り込む、[1]から[5]までのいずれか1つに記載の方法。
[7]実行中の印刷プロセス中に取り込んだ画像部分を輝度プロファイルに累算し、デジタルの各第1および第2印刷画像の取り込んだ画像部分の輝度プロファイル間で差分形成を行う、[6]に記載の方法。
[8]印刷方向に対して横方向の、少なくとも2つの印刷ノズル分だけのデジタルの第1印刷画像のシフトを、少なくとも1つの印刷ノズルの複数のステップで行う、[1]から[7]までのいずれか1つに記載の方法。
[9][1]から[8]までの少なくとも1つに記載した方法を実行するために印刷機が構成されていることを特徴とする、制御計算機を備えたインクジェット印刷機。
【符号の説明】
【0040】
1 インクジェット印刷機、 2 繰出器、 3 印刷準備段、 4 白/全面用フレキソ機構、 5 プライマ用フレキソ機構、 6 インクジェット印刷部、 7 インクジェットヘッド、 8 塗料用のフレキソ機構、 9 後処理段、 10 巻取器、 11 被印刷物、 12 利用部分、 13 故障した印刷ノズルによって発生した画像エラー、 14 印刷機制御部、 15 制御計算機、 16 シフトされたデジタル印刷画像、 17 結果的に得られた印刷画像、 18 照合結果、 19 検出結果、 20 監視される画像部分、 21 欠陥のある印刷ノズルによる印刷ギャップ