【文献】
萩原 秀和、外3名,個に対応するドリル型CAIシステム −学習者レベルに適応する問題提示−,電子情報通信学会技術研究報告,日本,社団法人電子情報通信学会,2004年 2月27日,Vol.103,No.697,p.197−202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の模試を構成する複数の模試設問、当該模試設問の正答、及び当該模試設問の正答率に関する模試設問情報を記憶した模試設問情報データベース、とネットワークを介して通信可能に構成され、
上記模試情報データベースから、上記模試設問情報を受信する模試設問情報受信手段と、
上記学習者に対して出題される設問として、上記模試設問を上記設問情報記憶手段に登録する登録処理手段と、をさらに有する、
請求項1乃至5いずれかの項に記載の学習支援装置。
所定の出題者によって任意に作成された任意設問、当該任意設問に対する正答、当該任意設問に対して設定された難易度に係る情報を受け付ける任意設問情報受付手段、をさらに有し、
上記登録処理手段はさらに、上記学習者に対して出題される設問として、上記任意設問を上記設問情報記憶手段に登録する、
請求項6記載の学習支援装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る学習支援装置について、図を参照して説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係る学習支援装置1は学習者のレベルに応じた学習を支援する装置であって、学習者端末2、指導者端末3、及び模試情報データベース4とインターネット等のネットワークNWを介して通信可能に構成されている。
【0024】
学習支援装置1は、いわゆるパーソナルコンピュータ等によって実現され、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスクドライブといったハードウェア資源、CPUが実行するコンピュータプログラム等のソフトウェア資源により、設問情報記憶部1A、学習者情報記憶部1B、指導方法方決定テーブル1C、難易度設定テーブル1D、登録処理部11、難易度設定部12、抽出処理部13、判定処理部14、指導方法決定部15、レベル設定部16、及び通信処理部17からなる機能部を構成する。
【0025】
設問情報記憶部1Aは、学習者に対して出題される設問に関する情報を記憶した記憶部である。
この設問情報記憶部1Aには例えば、
図2に示されるように、学習者に対して出題される設問、当該設問に対する正答、当該設問の解説、当該設問ごとの正答率、当該正答率に応じた難易度が互いに関連付けて記憶されている。
【0026】
ここで、学習者に対して出題される設問は、模試で出題された設問(以下、「模試設問」と称することがある)と、所定の出題者によって任意に作成された設問(以下、「任意設問」と称することがある)によって構成される。模試設問は、模試情報データベース4から取得されたものであり、任意設問は、学習支援装置1が別途備える入力手段から直接入力されたり、ネットワークNWを介して通信可能に構成された端末等から取得されたりしたものである。
【0027】
正答率は、所定の時期に係る情報と関連付けられており、どの時期にどのような正答率であったかを把握できるようになっている。
この正答率について、設問が模模試設問によって構成される場合、当該設問の正答率に関連付けられる時期は模試の実施時期となっている。例えば、模試が「5月」に実施されていた場合、この模試で出題された設問の正答率は、「5月」におけるものとなる。なお、模試設問に関連付けられる時期は、基本的には模試の実施時期であるため、実施時期以外の時期における正答率に係る情報はないが、過年度の模試の情報等に基づき、他の時期における正答率を設定することもできる。
また、設問が任意設問によって構成される場合、当該設問には正答率が存しないため、出題者によって、各設問に所定の時期ごとの難易度のみが設定される。
なお、難易度は、後述する難易度設定部12によって、正答率に基づいて設定されている。
【0028】
学習者情報記憶部1Bは、学習者に関する情報を記憶した記憶部である。
この学習者情報記憶部1Bには例えば、
図3に示されるように、学習者ごとに、学習者のレベル、設問に対する解答、解答の正否、偏差値が関連付けて記憶されている。
【0029】
ここで、学習者のレベルは、学習者の偏差値に基づき、レベル設定部16によって設定される。
偏差値は、学習者が受けた模試の結果に基づいて設定される。
【0030】
指導方法決定テーブル1Cは、指導者が学習者を指導する際の指導方法を決定する基準となるテーブルであって、指導方法決定部13によって参照される。
この指導方法決定テーブル1Cには例えば、
図4に示されるように、学習者のレベルに応じて、設問の難易度を基準とした指導方法が記憶されている。例えば、学習者レベルAの学習者について、難易度1〜7の設問に対する指導方法は何某、難易度8,9の場合の指導方法は何某といったように設定されている。
なお、指導方法の内容は特に限られないが、例えば、難易度の高いものについては後に改めて解答させる、学習者のレベルに合った難易度のものについては指導者が解説を行ったりする、難易度の低いものについては自学による学習を指導する、といったものとすることができる。
【0031】
難易度設定テーブル1Dは、設問ごとに、正答率に応じた難易度を設定するための基準となるテーブルであって、難易度設定部12によって参照される。
この難易度設定テーブル1Dには、例えば、
図5に示されるように、段階分けされた正答率ごとに難易度が設定されている。
図5の例では、例えば、正答率が0−10%の設問は難易度「10」、正答率が11−20%の設問は難易度「9」といったように設定されている。これにより、設問ごとの難易度10段階と、学習者の偏差値に基づく学習レベル10段階を照らし合わせ、各設問が学習者のレベルにあった問題かどうかを容易に見極めることができる。
また、難易度設定テーブルには、最初に学習者のレベルをあらかじめ設定するため、各難易度に偏差値が設定されている。これにより、学習を始めるにあたって、その学習者の偏差値から難易度が設定できるようになっている。
【0032】
登録処理部11は、模試情報データベース4から取得した模試設問や、所定の出題者によって任意に作成された任意設問を、上記学習者に対して出題される設問として設問情報記憶部1Aに登録する。
より具体的に、模試設問の場合には、模試設問の正答率、偏差値及び模試の実施時期に係る情報が登録され、当該正答率は模試の実施時期における正答率として登録される。
その後、登録処理部11は、各難易度の設問にすべて正解した場合の偏差値を模試データより算出する。同様の作業を複数回の模試で行い平均値を割り出し、
図5に示すような各難易度の段階ごと(本例では難易度10段階の各段階)の偏差値を確定させる。なお、各教科の特性により、難易度の各段階の偏差値は教科ごと、学年ごと等に異なっていてもよい。
また、模試の実施時期以外における正答率あるいは難易度は、任意で設定することができる。任意設問の場合には、任意設問の正答、任意設問の難易度に係る情報が登録される。難易度は、所定の時期ごと、例えば月ごとに、出題者の任意で設定することができる。これにより、任意設問についても時期ごとの難易度が設定される。
【0033】
難易度設定部12は、設問ごとに、問題の正答率に応じた難易度を決定する処理部である。
この難易度設定部12は、
図5に示した難易度設定テーブル1Dを参照して、設問ごとに、問題の正答率に応じた難易度を決定する。決定された難易度は、各設問に関連付けられて設問情報記憶部1Aに登録される。
ここで、正答率に応じて決定される難易度は10段階で設定され、正答率のような細かな数値ではなく、感覚的に捉えやすいものになっている。
なお、本例では、正答率は所定の時期と関連付けて登録されるようになっており、これに応じて難易度も所定の時期における難易度として設定される。
【0034】
抽出処理部13は、設問情報記憶部1Aを参照して、学習者に対して出題する設問に係る情報を抽出する。設問の抽出においては、設問のみらならず、設問に設定された難易度や、難易度と関連付けられた時期に係る情報も併せて抽出することができる。
【0035】
判定処理部14は、学習者による設問に対する解答の正否を判定する処理部である。
この判定処理部14は、学習者端末2から受信した設問に対する解答に基づき、設問情報記憶部1Aを参照して、解答の正否を判定する処理を実行する。
【0036】
指導方法決定部15は、学習者のレベルに応じて、設問の難易度を基準とした指導方法を決定する処理部である。
この指導方法決定部15は、学習者が設問に解答した後において、学習者情報記憶部1Bを参照して当該学習者のレベルを特定した上、指導方法決定テーブル1Dを参照して、学習者のレベルと設問の難易度に応じた指導方法を決定する。
【0037】
レベル設定部16は、学習者のレベルを設定する処理部である。
レベル設定部16は、最初に学習者のレベルをあらかじめ設定する処理を行う。例えば、科目ごとの学習者の偏差値から、
図5の難易度設定テーブル1Dに基づいて学習者の当該科目での難易度を設定する。具体的には、例えば、学習者の数学の偏差値が65であれば難易度は「9」と設定される。
このレベル設定部16は本例では、模試における学習者の偏差値に応じて決定され、学習者情報記憶部1Bに登録される。
【0038】
通信処理部17は、学習者端末2、指導者端末3、及び模試情報データベース4等と、インターネット等のネットワークNWを介してデータの送受信処理を実行する機能部である。
学習支援装置1はこの通信処理部17により、学習者端末2との間で設問や解答に係る情報の送受信を実行したり、指導者端末3に対して指導方法の指示に係る情報を送信したりすることができる。
また、模試情報データベース4から模試設問に係る情報を取得することもできる。
【0039】
なお、学習支援装置1は、上述した機能部に加え、任意設問に係る情報や設問に対する任意の難易度に係る情報を直接入力するための入力手段等を備えていてもよい。
【0040】
学習者端末2は、出題された設問を解き、指導者から指導を受ける学習者が利用する端末である。
この学習者端末2は、いわゆるパーソナルコンピュータやタブレット端末等によって実現され、ディスプレイ等のデータ出力手段やマウス、スタイラス等の入力手段、あるいはタッチパネル等の入出力が一体となった入出力手段、さらには学習支援装置1や指導者端末3とネットワークNWを介してデータの送受信を行うためのブラウザプログラムといった通信処理手段を備える。
【0041】
指導者端末3は、学習支援装置1からの指示に基づき、学習者を指導する指導者が利用する端末である。
この指導者端末3は学習者端末2と同様、いわゆるパーソナルコンピュータやタブレット端末等によって実現され、ディスプレイ等のデータ出力手段やマウス、スタイラス等の入力手段、あるいはタッチパネル等の入出力が一体となった入出力手段、さらには学習支援装置1や学習者端末2とネットワークNWを介してデータの送受信を行うためのブラウザプログラムといった通信処理手段を備える。
【0042】
模試情報データベース4は、模試に関する情報を記憶した記憶部である。
この模試情報データベース4には例えば、
図6に示されるように、模試名、模試の実施時期、模試を構成する複数の模試設問、当該模試設問の正答、当該模試設問の解説、及び当該模試設問の正答率に係る情報が記憶されている。
【0043】
続いて、本実施形態に係る学習支援装置1による処理の流れについて、図を参照して説明する。
まず、
図7を参照して、学習支援装置1に設問が登録される際の処理の流れを説明する。
図7(a)は模試設問が登録される場合の流れを示しており、この場合はまず、学習支援装置1が模試情報データベース4から適宜のタイミングで模試設問に関する情報を取得する(S101)。
【0044】
取得した模試設問は、登録処理部11により、設問を構成する情報の一部として設問情報記憶部1Aに登録される(S102)。
これに応じて、難易度設定部12は、難易度設定テーブル1Dを参照して、設問ごとの正答率に応じた難易度を決定する。決定された難易度は、各設問に関連付けられて設問情報記憶部1Aに登録される(S103)。
【0045】
一方、
図7(b)は任意設問が登録される場合の流れを示しており、この場合はまず、学習支援装置1が適宜のタイミングで任意設問に関する情報を受け付ける(S104)。任意設問に関する情報の受け付けは、学習支援装置1が備える入力手段からの直接入力や、外部の端末等からのネットワークNWを介したデータの送受信によることができる。
【0046】
受け付けられた任意設問は、登録処理部11により、設問を構成する情報の一部として設問情報記憶部1Aに登録される(S105)。
この際、任意設問では出題者によって設問の難易度が設定されているため、任意設問に関する情報として難易度に係る情報も併せて受け付けられ、登録処理部11によって設問情報記憶部1Aに登録される。
【0047】
また、事前にレベル設定部16が、学習者のレベルをあらかじめ設定する処理を行う。これは、模試などでの科目ごとの学習者の偏差値から、
図5の難易度設定テーブル1Dに基づいて学習者の当該科目での難易度を決定する。具体的には、例えば、学習者の数学の偏差値が65であれば難易度は「9」と設定される。
【0048】
次に、本実施形態に係る学習支援装置1により、学習者に対して設問が出題され、これに応じて指導者が当該学習者を指導するまでの処理の流れについて、
図8を参照して説明する。
まず、学習支援装置1は抽出処理部13により、設問情報記憶部1Aを参照して設問を抽出する(S201)。この際、抽出処理部13は設問のみならず、設問に設定されている難易度に係る情報を抽出する。
抽出された設問に係る情報は、学習者端末2に対して送信される(S202)。
【0049】
ここで、学習者端末2において、設問が表示された画面の一例を
図9に示す。
この例では、設問表示欄101に設問が表示され、各設問に対してはさらに、難易度と関連付けられた時期を示す時期表示欄102、時期表示欄102に示された時期における難易度を表示する難易度表示欄103が関連付けて表示されている。
本例では、時期表示欄102には現在の時期が表示されるようになっており、学習者は現時点において、該当する問題がどの程度の難易度であるかを容易に把握することができるようになっている。
【0050】
学習者は学習者端末2において、出題された設問に対する解答を入力し、学習支援装置1に対して当該解答に係る情報を送信する(S203)。
なお、解答に係る情報は、
図9において例示した画面上に別途、設けた所定の解答入力欄に入力して送信できるようになっていてもよいし、別途の解答入力フォームから入力して送信できるようになっていてもよい。
【0051】
学習者端末1から解答を受け付けた学習支援装置1は、判定処理部14により、設問情報記憶部1Aを参照して解答の正否を判定する(S204)。
解答と正否の判定結果が学習者情報記憶部1Bに登録されると(S205)、指導方法決定部15は、学習者情報記憶部1A及び指導方法決定テーブル1Cを参照して、学習者のレベルと設問の難易度に応じた指導方法を決定する(S206)。
【0052】
学習者が解答した設問、当該設問の難易度、学習者による解答、及び指導方法決定部15によって決定された指導方法に係る情報が指導者端末3に対して送信されると(S207)、指導者は当該指導方法に基づいて学習者を指導する(S208)。
このとき、指導者端末3に表示される画面の一例を
図10に示す。
この画面例では、学習者の氏名とレベルが表示された上、学習者に対して出題された設問ごとに、学習者による解答の内容、解答の正否、設問の難易度、当該設問における当該学習者に対する指導方法が併せて表示されている。
なお、難易度の表示では、表示されている難易度が設定されている時期に係る情報が表示されており、本例では現在の時期が表示されている。
【0053】
指導者は当該画面を参照することにより、学習者の解答がどのようなものであって、それに対してどのように指導すべきかを容易に理解し、学習者を適切に指導することができる。
【0054】
以上の本実施形態に係る学習支援装置1によれば、設問の難易度を感覚的に捉えやすく表示することができると共に、学習者のレベルと設問の難易度に応じた指導が可能となる。
つまり、従来は、一般に学力を図る基準として偏差値しかないため、教える先生がいくら学習者の偏差値レベルが分かっても、どの程度の難易度問題まで自力で解かせるか、または丁寧な解説を行うかなどは、すべて教える先生の力量と裁量に任されており、学習者への指導に大きなばらつきが出てしまっていた。
上述の実施形態によれば、教える側の先生は、学習者の偏差値と、各設問の難易度と、学習者のレベルを、難易度という数値によって適切かつ簡単に把握できるため、学習者のレベルに合わせて、難易度が学習者のレベル以下(易しい問題)であれば学習者に自分で解かせる、学習者のレベルにあった問題であれば指導者である先生が丁寧な解説を行い、また学習者のレベル以上(難しい問題)であれば現時点で学習をさせない、などの個別の学習指導を行うことができる。
【0055】
なお、以上の本実施形態において、学習者のレベルは適宜のタイミングで設定又は見直される。設定又は見直しはレベル設定部16によって実行され、例えば、模試が実施される度に、当該模試における学習者の偏差値に応じたレベルに設定される。
これにより、学習者のレベルを適切な状態としておくことができる。
【0056】
また、以上の本実施形態では、学習者に対する設問の出題において、現在の時期における難易度を合わせて表示するようにしたが、これに限らず、学習者が時期ごとの難易度を参照することができるようになっていてもよい。
例えば、
図9の画面例の変形例として、
図11(a)に示されるように、時期表示欄102にドロップダウンリストボタン104を設ける。デフォルトでは現在の時期が表示されているが、ドロップダウンリストボタン104が押下されると、
図11(b)に示されるように、時期を選択することができる。時期が選択されると、難易度表示欄103に、選択された時期に応じた難易度が表示される。
これにより学習者は、設問の将来的な難易度を参照したりすることができ、便利である。
【0057】
また、以上の本実施形態では、模試設問に関する情報の受け付けは、模試情報データベース4から取得によるものとしたが、これに限らず、学習支援装置1に別途、設けられた入力デバイスによる直接入力によることもできる。
【0058】
また、抽出処理部13は、所定の学習者に対して、所定の難易度に係る設問のみを抽出して出題するようにすることもできる。これにより、設問に対する解答結果に応じて、所定の難易度の設問のみを重点的に出題するといったことも可能である。
【0059】
また、上述の学習支援装置1は、さらにテキスト出力部18を備えてもよい。テキスト出力部18は、問題文と、その問題の難易度とを関連付けて紙に印刷する処理を行う。これにより、学習支援装置1で処理した問題と難易度を印刷して、問題集などの形で学習者に提供することができる。
これによっても、各問題の難易度が難易度レベルの数値により、明らかであるため、その指導を行う指導者は学習者のレベルを確認したうえで、最適な学習方法を選択できる。
【解決手段】学習者端末2及び指導者端末3とネットワークNWを介して通信可能に構成された学習支援装置1は、学習者に対して出題される設問、当該設問に対する正答、当該設問ごとの正答率、当該正答率に応じた難易度を記憶する設問情報記憶部1Aを備える。難易度設定部12は、設問ごとに正答率に応じた難易度を設定する。学習者端末2に対して難易度が表示された設問を送信し、学習者端末2から設問に対する解答を受信すると、判定処理部14は設問情報記憶手段1Aを参照して解答の正否を判定し、指導方法決定部15は、学習者のレベルに応じて、設問の難易度を基準とした指導方法を決定する。決定された指導方法に係る情報は、指導者端末3に対して送信される。