特許第6092467号(P6092467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092467
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】加工ノズル、加工ヘッド、加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/144 20140101AFI20170227BHJP
   B23K 15/00 20060101ALI20170227BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20170227BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20170227BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20170227BHJP
   B29C 67/00 20170101ALI20170227BHJP
【FI】
   B23K26/144
   B23K15/00 501B
   B22F3/105
   B22F3/16
   B33Y30/00
   B29C67/00
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-510887(P2016-510887)
(86)(22)【出願日】2015年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2015059003
(87)【国際公開番号】WO2016151781
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2016年2月29日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度 経済産業省「産業技術研究開発(三次元造形技術を核としたものづくり革命プログラム(次世代型産業用3Dプリンタ技術開発及び超精密三次元造形システム技術開発))」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】514227988
【氏名又は名称】技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(74)【代理人】
【識別番号】100198960
【弁理士】
【氏名又は名称】奥住 忍
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 泰之
(72)【発明者】
【氏名】小松 由尚
(72)【発明者】
【氏名】成田 竜一
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第2502729(EP,A1)
【文献】 特表2009−505812(JP,A)
【文献】 特開2007−222869(JP,A)
【文献】 特開2012−125772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 − 26/70
B22F 3/105
B29C 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光によって加工面上に形成された溶融プールに対して粉体材料を射出するための加工ノズルであって、
前記レーザ光が通過する光経路を構成する内側筐体と、
前記内側筐体と粉体材料の第1供給路としての間隙を介して配置された外側筐体と、
を備え、
前記外側筐体内部に、粉体の第2供給路と、前記第2供給路と異なる径を有する第3供給路とを備えたことを特徴とする加工ノズル。
【請求項2】
前記外側筐体は、円筒形状であって、
前記第2供給路と前記第3供給路とは、それぞれ少なくとも2つ備え、前記外側筐体内部において、周状に、交互に設けられたことを特徴とする請求項1に記載の加工ノズル。
【請求項3】
前記外側筐体と前記加工面との間に、前記第1、第2粉体供給路から吐出された粉体材料の射出方向を変更するフラッパをさらに設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の加工ノズル。
【請求項4】
前記外側筐体を回転する回転手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1、2または3に記載の加工ノズル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の加工ノズルと、
前記レーザ光を集束させる集束装置と、
を含むことを特徴とする加工ヘッド。
【請求項6】
請求項5に記載の加工ヘッドと、
前記加工ヘッドに前記粉体材料を供給する材料供給部と、
を備えたことを特徴とする加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工ノズル、加工ヘッド、加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、複数種のパウダを分配率を変えつつ供給する技術が開示されている。例えば表1には、1層目から5層目までで、パウダの混合比率を徐々に変化させる技術が開示されている。段落0058には、内ノズル31が上下移動することで、内ノズル31と外ノズル32との先端の隙間から吐出するパウダ流4の集中位置が変化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−125772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、図5の構成も図7の構成も、粉体は1つの供給路41のみから射出される。つまり、一度に供給できる粉体は1種類のみである。そのため、複数種類の粉体を加工面に供給しようとすると、事前に混合してから供給しなければならず、供給中に偏析が起こり、思った組成が実現できないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明にかかる加工ノズルは、
レーザ光によって加工面上に形成された溶融プールに対して粉体材料を射出するための加工ノズルであって、
前記レーザ光が通過する光経路を構成する内側筐体と、
前記内側筐体と粉体材料の第1供給路としての間隙を介して配置された外側筐体と、
を備え、
前記外側筐体内部に、粉体の第2供給路と、前記第2供給路と異なる径を有する第3供給路とを備えた。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明にかかる加工ヘッドは、
上述の加工ノズルと、前記レーザ光を集束させる集束装置と、を含むことを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明にかかる加工装置は、
上述の加工ヘッドと、
前記加工ヘッドに前記粉体材料を供給する材料供給部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数種類の粉体を同時に射出する加工ノズルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る加工ノズルの構成を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る加工ノズルの構成を示す底面の端面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る加工ノズルの構成を示す縦断面図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る加工装置の構成を示す概略図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る加工ノズルの構成を示す縦断面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る加工ノズルの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としての加工ノズル100について、図1乃至図4を用いて説明する。加工ノズル100は、レーザ光110によって加工面150上に形成された溶融プール151に対して粉体材料130を射出するためのノズルである。
【0013】
加工ノズル100は、レーザ光110が通過する光経路111を構成する内側筐体101と、内側筐体101と粉体材料130の供給路103としての間隙を介して配置された外側筐体102と、を備えている。
【0014】
外側筐体102内部には、さらに粉体の供給路121、122を備えている。粉体供給路121、122は、それぞれ異なる径を有する。ここでは供給路121及び供給路122は、それぞれ3つ設けられている。外側筐体102は、円筒形状であって、供給路121と供給路122とは、外側筐体102内部において、周状に、交互に設けられている。
【0015】
図2は、加工ノズル100の下流端を示す端面図である。図2に示すとおり、加工ノズル100の下流端には、光経路111の開口部201と、供給路103の開口部203と、供給路121の開口部221と、供給路122の開口部222とが設けられている。
【0016】
図3は、図1のA−A断面図である。図3に示すとおり、リング状の供給路103から供給される粉体材料131は、リング状に非常に細い流れを形成し、狭い範囲に集束する。一方、円周上に配置された6か所の供給路121、122からは、供給路103よりも多くの粉体材料が、加工面150に供給される。また、供給路121は、供給路122よりも径大に形成されており、供給路121からは供給路122よりも多くの粉体材料が、加工面150に供給される。
【0017】
造形精度及び造形速度に応じて、これらの供給路のうち、使用するものを変えて粉末材料を供給する。例えば、高精細の造形を行なう場合には、供給路103のみを用いて、周囲から一点に向けて的確な粉末材料の供給を行なう。
【0018】
一方、造形精度を維持しつつ高速造形を行なう場合には、供給路121を用いて、やや多量の粉体材料を加工面150に供給する。さらに、超高速造形を行なう場合には、供給路121及び供給路122の両方を用いて、より多量の粉体材料を加工面150に供給する。またさらに、超超高速造形を行なう場合には、全ての供給路103、121、122を用いて、粉体材料を加工面150に供給する。
【0019】
このように供給路を様々に組み合わせることにより、供給路103のみ、供給路121のみ、供給路122のみ、供給路103、121、供給路103、122、供給路121、122、供給路103、121、122という、7段階の粉体材料供給を行なうことができる。
【0020】
また、例えば、TiAl合金を積層する場合、TiとAlとを別々の供給路に供給することで、材料の違いによる輸送効率の影響を無視することができ、設計値に準じた重量比率でTiAl合金を積層することが可能となる。
【0021】
複数の異なる材料を積層する場合にも、材料毎に別々の供給路を用いることで、異なる材料を積層することが可能となる。複数の異なる材料を積層するとは、例えば、銅(基材)上に密着層を積層し、次に鉄を積層することなどをいう。また、材料は同じだが粒径の異なる粉体を、別々の供給路を用いて供給することにより、造形条件に応じた精度や速度で造形加工を行なうことができる。
【0022】
加工ノズル100を備えた光加工装置400について、図4を用いて説明する。光加工装置400は、集光した光が生み出す熱で材料を溶融することにより三次元的な造形物(あるいは肉盛溶接)を生成する装置である。光加工装置400は、光源412、ステージ405、材料収容装置421〜423、材料供給部424〜426、加工ヘッド408および制御部413を備えている。
【0023】
光源412としては、ここではレーザ光源を用いることとするが、LED、ハロゲンランプ、キセノンランプを用いることができる。また、例えば電子ビームなどを用いてもよい。
【0024】
ステージ405は、Xステージ、あるいはXYステージ、あるいはXYZステージである。材料収容装置421〜423は、加工ノズル100に対し、材料供給部424〜426を介して材料を含むキャリアガスを供給する。例えば、材料は金属粒子、樹脂粒子などの粒子である。キャリアガスは、不活性ガスであり、例えばアルゴンガス、窒素ガス、ヘリウムガスなどを用いることができる。
【0025】
加工ヘッド408は、内部に設けられたレンズ等からなる光学系によって光源412からのレーザ光を集束させ、その下流端には加工ノズル100が取り付けられている。
【0026】
コントローラ413は、細書き/太書きや造形物の形状などの造形条件を入力し、入力した造形条件に応じて光源412からのレーザ光の出力値、加工ヘッド408の位置および向き、ステージ405の位置などを変更すると共に、加工ノズル100を制御し、粉体スポット形状を変化させる。また、コントローラ413は、材料供給部424〜426を制御して、ノズル100から射出する材料の種類及び量を制御する。
【0027】
以上の構成によれば、複数種類の粉体を同時に射出する加工ノズルを提供できる。
【0028】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係る加工ノズル500について、図5を用いて説明する。図5は、本実施形態に係る加工ノズル500の構成を説明するための断面図である。本実施形態に係る加工ノズル500は、上記第1実施形態と比べると、フラッパ501、502を有する点で異なる。その他の構成及び動作は、第1実施形態と同様であるため、同じ構成及び動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0029】
フラッパ501、502により、供給路121、122から吐出された粉体材料の流れを変えることができる。すなわち、供給路121から吐出された粉体材料を、粉体スポット511に供給することができ、供給路122から吐出された粉体材料を、粉体スポット512に供給することができる。
【0030】
レーザ光110は、一般的にレンズの構成により、加工面150が最も高温になるように構成されているため、粉体スポット511、512は、それぞれ、加工面150の溶融プール151よりも低温になっている。各粉体材料の溶融温度に合った粉体スポット511、512へ、それぞれの粉体材料を供給するように、フラッパ501、502を制御する。
【0031】
これにより、粉体材料を良い環境で供給することが可能となり、精度の良い造形を実現することができる。例えば異なる素材で複層造形を行なう場合にも、供給路103、121、122を使い分け、さらにフラッパ501、502の角度を調整することにより、各種の素材をその素材にあった環境で積層加工することができる。例えば、融点の低い粉体を加工面150のより上方に供給し、融点の高い粉体を、より加工面150の近くに供給することで、各粉体の溶融位置を変え、粉体の混合精度を向上させることができる。
【0032】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係る加工ノズル600について、図6を用いて説明する。図6は、本実施形態に係る加工ノズル600の構成を説明するための斜視図である。本実施形態に係る加工ノズル600は、上記第1実施形態と比べると、内側筐体101に対して外側筐体102を回転方向601に回動させる回動部602を有する点で異なる。その他の構成及び動作は、第1実施形態と同様であるため、同じ構成及び動作については同じ符号を付してその詳しい説明を省略する。
【0033】
本実施形態によれば、加工面150上を溶融プール151が進む方向(走査方向)651に合わせて、外側筐体102を回動することができる。つまり、外側筐体102に設けられた供給路121、122の溶融プール151に対する配置を、走査方向651に応じて変えることができる。例えば、溶融プール151の走査方向651前方に多くの粉体材料を供給したい場合、図6の状態から、180度、外側筐体102を回転させればよい。つまり、3つの供給路121の内、2つを、溶融プール151の前方に配置すれば、前方への粉体材料の供給量が後方に比べて多くなる。また例えば、供給路122を用いて供給する粉体材料を溶融プール151の走査方向651後方に多く供給したい場合にもやはり、図6の状態から、180度、外側筐体102を回転させればよい。
【0034】
以上、本実施形態によれば、造形条件に応じて、より細かく粉体供給を制御することが可能になり、粉体の効率的な利用及び造形精度の向上を図ることができる。
【0035】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の範疇に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6