特許第6092518号(P6092518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6092518-不織布 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092518
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】不織布
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/06 20120101AFI20170227BHJP
   D04H 1/46 20120101ALI20170227BHJP
   A61F 13/00 20060101ALI20170227BHJP
   A61F 13/02 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   D04H1/06
   D04H1/46
   A61F13/00 355F
   A61F13/02 310A
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-27835(P2012-27835)
(22)【出願日】2012年2月10日
(65)【公開番号】特開2013-163878(P2013-163878A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年11月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】武田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 翔太
【審査官】 馳平 裕美
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−219572(JP,A)
【文献】 特開昭54−156876(JP,A)
【文献】 特開2004−285509(JP,A)
【文献】 特開2003−109569(JP,A)
【文献】 特開平11−279912(JP,A)
【文献】 特開2012−162840(JP,A)
【文献】 特開2012−036160(JP,A)
【文献】 特開2003−201681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D04H 1/00−18/04
D06P 1/00− 7/00
A61F13/00〜13/84
A61K 9/00〜9/72,47/00〜47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)潜在捲縮性繊維を主体とする繊維ウエブを形成する工程、(2)前記繊維ウエブに対して、流体圧3.0〜6.0MPaの流体流の絡合作用を作用させて絡合繊維ウエブを形成する工程、(3)前記絡合繊維ウエブに対して熱を作用させることにより潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、高捲縮性繊維とする際に、絡合繊維ウエブを収縮させて収縮繊維ウエブを形成する工程、及び(4)収縮繊維ウエブを染液の昇温速度0.9℃/min.以下でのビーム染色により着色して不織布とする工程、を含む不織布の製造方法であり、前記不織布は、着色した高捲縮性繊維を主体とし、平均地合指数が0.17以下、かつ50%伸長時の回復率が、たて方向、よこ方向ともに30%以上であり、前記高捲縮性繊維が、平均繊度0.8〜1.4dtexの潜在捲縮性繊維の捲縮が発現した繊維であることを特徴とする不織布の製造方法。
【請求項2】
薬効成分を含む膏体を塗布して外用貼付薬を構成するための皮膚貼付基布、皮膚に貼付した貼付薬を覆うようにカバーし、貼付薬を保護するためのカバー材、又は衣料用の芯地として用いる不織布であることを特徴とする、請求項1記載の不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は着色した高捲縮性繊維を主体とする不織布に関する。本発明の不織布は伸長性を有するため、薬効成分を含む膏体を塗布して外用貼付薬を構成するための皮膚貼付基布、化粧用ゲルを塗布して顔面パック材を構成するための皮膚貼付基布、化粧液を含浸して顔面パック材を構成するための皮膚貼付基布、皮膚に貼付した貼付薬を覆うようにカバーし、貼付薬を保護するためのカバー材、又は衣料用の芯地として好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
従来から不織布は様々な用途に適用されている。例えば、伸長性を有する不織布はその伸長性を利用して、例えば、皮膚貼付基布などの用途に好適に使用されているが、従来の伸長性を有する不織布は、着色成分を含まない白色のものが多かった。しかしながら、近年、外観上の高付加価値追求の観点から、白色以外に着色された伸長性を有する不織布の需要が高まっている。
【0003】
そのため、本願出願人は「潜在捲縮性ポリエステル繊維を主体とする繊維ウエブに水流絡合を施した後、前記潜在捲縮性ポリエステル繊維を160〜200℃の捲縮発現温度で熱収縮せしめて伸縮性繊維ウエブを形成する工程と、該伸縮性繊維ウエブを110℃以下の染浴温度で染色する工程とを含むことを特徴とする伸縮性着色不織布の製造方法」(特許文献1)を提案した。具体的には、染色する工程をビーム染色により行うことを提案した。このビーム染色は、穴あきのパイプ状のビームに伸縮性繊維ウエブを巻き付けた後、ビーム染色機中で、ビーム内部から染液を供給し、伸縮性繊維ウエブのビーム側の内層から外層にかけて染液を透過させ、透過した染液を再度ビーム内部から供給するという、染液を循環させて染色する方法である。このように、染液が伸縮性繊維ウエブを透過するため、染色した伸縮性着色不織布は染色前の伸縮性繊維ウエブと比べて、地合いが悪くなる傾向があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−219572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような状況下においてなされたものであり、地合いの優れる、着色した高捲縮性繊維を主体とする不織布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1にかかる発明は「(1)潜在捲縮性繊維を主体とする繊維ウエブを形成する工程、(2)前記繊維ウエブに対して、流体圧3.0〜6.0MPaの流体流の絡合作用を作用させて絡合繊維ウエブを形成する工程、(3)前記絡合繊維ウエブに対して熱を作用させることにより潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、高捲縮性繊維とする際に、絡合繊維ウエブを収縮させて収縮繊維ウエブを形成する工程、及び(4)収縮繊維ウエブを染液の昇温速度0.9℃/min.以下でのビーム染色により着色して不織布とする工程、を含む不織布の製造方法であり、前記不織布は、着色した高捲縮性繊維を主体とし、平均地合指数が0.17以下、かつ50%伸長時の回復率が、たて方向、よこ方向ともに30%以上であり、前記高捲縮性繊維が、平均繊度0.8〜1.4dtexの潜在捲縮性繊維の捲縮が発現した繊維であることを特徴とする不織布の製造方法。」である。
また、本発明の請求項2にかかる発明は「薬効成分を含む膏体を塗布して外用貼付薬を構成するための皮膚貼付基布、皮膚に貼付した貼付薬を覆うようにカバーし、貼付薬を保護するためのカバー材、又は衣料用の芯地として用いる不織布であることを特徴とする、請求項1記載の不織布の製造方法。」である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1にかかる発明は、着色した高捲縮性繊維を主体とした不織布であるにもかかわらず、平均地合指数が0.17以下の地合いの優れる不織布である。また、請求項1にかかる発明は、高捲縮性繊維を主体としているため、伸長性に優れる不織布である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a) 凹部単位の中心軸と一致する直線と、不織布のよこ方向に平行な直線及び不織布のたて方向に平行な直線との位置関係に関する説明図 (b) よこ方向の凹部単位の中心同士を結んでできる直線と、不織布のよこ方向に平行な直線との位置関係に関する説明図 (c) たて方向の凹部単位の中心同士を結んでできる直線と、不織布のたて方向に平行な直線との位置関係に関する説明図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の不織布は伸長性に優れるように、高捲縮性繊維を主体としている。高捲縮性繊維は捲縮数が多く、外力が作用した際には、その捲縮が伸びることができるため、高捲縮性繊維を主体とする不織布は伸長性に優れている。なお、高捲縮性繊維は伸長性を有するばかりでなく、外力を取り除いた場合には、捲縮を元の状態に戻そうとする力が働くため、伸縮性に優れている。そのため、屈曲部の動き及び/又は凹凸に追従できるという効果も奏する。
【0010】
本発明の高捲縮性繊維とは50個/インチ以上の捲縮数を有する繊維をいい、このような高捲縮性繊維は、例えば、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させることによって得ることができる。なお、捲縮数はJIS L1015:2010 8.12.1 けん縮数に規定する方法により得られる値である。
【0011】
この潜在捲縮性繊維としては、例えば、熱収縮率の異なる複数の樹脂が複合された複合繊維、繊維の一部に特定の熱履歴を施した繊維を挙げることができる。より具体的には、複合繊維として、偏芯型芯鞘構造のもの、又はサイドバイサイド型構造のものを好適に用いることができる。熱収縮率の異なる樹脂の組み合わせとしては、例えば、ポリエステル−低融点ポリエステル、ポリアミド−低融点ポリアミド、ポリエステル−ポリアミド、ポリエステル−ポリプロピレン、ポリプロピレン−低融点ポリプロピレン、ポリプロピレン−ポリエチレンなど種々の合成樹脂を組み合わせたものが使用できる。特に、ポリエステル−低融点ポリエステル若しくはポリプロピレン−低融点ポリプロピレンの組み合わせからなる潜在捲縮性繊維は、化学的な耐性、伸長性及び伸縮性の点で優れているため好ましい。また、繊維の一部に特定の熱履歴を施した潜在捲縮性繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂からなる繊維の一側面を熱刃などにあてながら通過させたものを使用できる。
【0012】
特に、潜在捲縮性繊維として、面積収縮率が35%以上の優れた捲縮発現能を有する潜在捲縮性繊維を使用するのが好ましい。この面積収縮率が大きい程、捲縮発現能に優れ、不織布の繊維密度を高めることができるため、結果として、地合いの優れる不織布であることができるためである。より好ましい面積収縮率は37%以上であり、更に好ましい面積収縮率は40%以上である。このような潜在捲縮繊維は、例えば、特開平7−54216号公報に開示の方法、特開2003−89928号に開示の方法により製造することができる。
【0013】
なお、面積収縮率は次の方法により得られる値である。まず、潜在捲縮性繊維のみをカードに通して一方向性繊維ウエブを得た後、一方向性繊維ウエブの繊維配向方向とのなす鋭角が15°となるように切断して、2枚の繊維ウエブを調製した後、これら2枚の繊維ウエブの繊維配向方向が交差するように積層して、クロスレイ繊維ウエブ(繊維配向方向の交差する鋭角:30°)を形成する。そして、このクロスレイ繊維ウエブを90メッシュのポリエステル製綾織ネット(支持体)を用いて、5m/min.の速度で搬送しながら、順に、シャワー、シャワーした面に対して水圧3.0MPa、シャワーした面の反対面に水圧3.0MPaの水流で絡合し、80g/mの水流絡合不織布を形成する。その後、水流絡合不織布を25cm角にカットして試験片を調製し、その試験片を温度160℃に設定したオーブンで30秒間熱処理し、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、試験片を収縮させて、たてL(cm)、よこC(cm)の大きさの試験片となった時に、次の式から得られる値を面積収縮率Sa(%)という。
Sa=[(25×25−L×C)/(25×25)]×100
【0014】
この潜在捲縮性繊維の平均繊度は特に限定するものではないが、繊維同士が絡みやすく、また、繊維同士の密着性が高くなりやすく、地合いの優れる不織布であることができるように、1.7dtex以下であるのが好ましく、1.6dtex以下であるのがより好ましく、1.5dtex以下であるのが更に好ましく、1.4dtex以下であるのが更に好ましく、1.3dtex以下であるのが更に好ましく、1.2dtex以下であるのが更に好ましく、1.1dtex以下であるのが更に好ましい。平均繊度の下限は特に限定するものではないが、乾式法により繊維ウエブを形成する場合には、地合いの優れる不織布を形成できるように、0.5dtex以上であるのが好ましく、0.8dtex以上であるのがより好ましい。
【0015】
なお、本発明の不織布は1種類の潜在捲縮性繊維から構成されていても良いし、繊度の点で異なる2種類以上の潜在捲縮性繊維から構成されていても良い。繊度の点で異なる2種類の潜在捲縮性繊維を含んでいる場合、次の式により算出される平均繊度が前記範囲内にあるのが好ましい。繊度の点で異なる3種類以上の潜在捲縮性繊維から構成されている場合も、同様にして算出した値が前記範囲内にあるのが好ましい。
【0016】
Fav=1/[(Pa/100)/Fa+(Pb/100)/Fb]
ここで、Favは平均繊度(単位:dtex)、Paは不織布に占める一方の潜在捲縮性繊維Aの質量割合(単位:mass%)、Faは潜在捲縮性繊維Aの繊度(単位:dtex)、Pbは不織布に占める他方の潜在捲縮性繊維Bの質量割合(単位:mass%)、Fbは潜在捲縮性繊維Bの繊度(単位:dtex)をそれぞれ意味する。なお、繊度はJIS L1015で規定する正量繊度をいう。
【0017】
また、潜在捲縮性繊維の繊維長は特に限定するものではないが、地合いの優れる不織布であることができるように、110mm以下であるのが好ましく、64mm以下であるのがより好ましく、51mm以下であるのが更に好ましい。繊維長の下限は特に限定するものではないが、乾式法により繊維ウエブを形成する場合には、繊維同士が絡みやすいように、25mm以上であるのが好ましく、30mm以上であるのがより好ましい。
【0018】
本発明の不織布は上述のような高捲縮性繊維を主体とするものであるが、本発明における「主体」とは、高捲縮性繊維を50mass%以上含むことを意味し、高捲縮性繊維が多ければ多いほど、伸長性及び伸縮性に優れ、また、高捲縮性繊維が絡み、繊維密度の高い状態であることができ、より地合いが優れている傾向があるため、70mass%以上含むのがより好ましく、90mass%以上含むのが更に好ましく、100mass%高捲縮性繊維からなるのが最も好ましい。
【0019】
なお、高捲縮性繊維以外の繊維は特に限定するものではないが、高捲縮性繊維が潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させたものである場合、不織布の伸長性及び伸縮性を損なわないように、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させる際の熱の作用によって溶融しない繊維であるのが好ましく、例えば、ポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維など)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ポリアミド系繊維(6ナイロン繊維、66ナイロン繊維など)、ポリビニルアルコール繊維、アクリル繊維等の合成繊維、又はコットンやレーヨン等のセルロース系繊維を含むことができる。
【0020】
本発明の不織布を構成する高捲縮性繊維は着色しているため、本発明の不織布は外観上、高付加価値を有するものである。例えば、本発明の不織布を、薬効成分を含む膏体を塗布して外用貼付薬を構成するための皮膚貼付基布として使用する場合に、高捲縮性繊維が肌色に着色していると、外用貼付薬を貼付していることが目立たないという効果を奏する。
【0021】
この「着色」とは、白色以外の色を有することを意味し、着色した高捲縮性繊維は、高捲縮性繊維を構成する樹脂に有機系又は無機系顔料を練り込んだ高捲縮性原着繊維であることもできるし、白い高捲縮性繊維を染色した高捲縮性繊維であることもできるし、白い高捲縮性繊維を顔料で着色した高捲縮性繊維であることもできる。なお、高捲縮性繊維全体が白色以外の色に着色している必要はなく、少なくとも一部が着色していれば、それは着色した高捲縮性繊維である。
【0022】
本発明の不織布は、着色した高捲縮性繊維を主体としているにもかかわらず、平均地合指数が0.17以下の地合いの優れるものである。この平均地合指数は後述する測定方法から明らかなように、数字が小さいほど、繊維が均一に分散していること、つまり、地合いが優れていることを意味するため、0.16以下であるのが好ましく、0.15以下であるのがより好ましく、0.14以下であるのが更に好ましい。なお、平均地合指数が0.17以下というのは、地合いを向上させるために、従来よりも繊度の小さい1.3dtexの高捲縮性繊維を使用した場合であっても得ることのできなかった平均地合指数であり、実際に目視した場合に、従来よりも地合いが優れていることを認識できる不織布の平均地合指数である。
【0023】
本発明の平均地合指数は、特願平11−152139号に記載されている方法により得られる値であり、つまり、次のようにして得られる値である。
(1)光源から被測定物(不織布)の任意の箇所に対して光を照射し、照射された光のうち、被測定物の所定領域において反射された反射光を受光素子によって受光して輝度情報を取得する。
(2)被測定物の所定領域を画像サイズ3mm角、6mm角、12mm角、24mm角に等分割して、4つの分割パターンを取得する。
(3)得られた各分割パターン毎に等分割された各区画の輝度値を輝度情報に基づいて算出する。
(4)各区画の輝度値に基づいて、各分割パターン毎の輝度平均(X)を算出する。
(5)各分割パターン毎の標準偏差(σ)を求める。
(6)各分割パターン毎の変動係数(CV)を次の式により算出する。
変動係数(CV)=(σ/X)×100
ここで、σは各分割パターン毎の標準偏差を示し、Xは各分割パターン毎の輝度平均を示す。
(7)各画像サイズの対数をX座標、当該画像サイズに対応する変動係数をY座標とした結果得られる座標群を、最小二乗法により一次直線に回帰させ、その傾きを算出し、この傾きの絶対値を地合指数とする。
(8)この地合指数の測定を3回繰り返し行い、その平均値を平均地合指数とする。
【0024】
本発明の不織布は平均地合指数が0.17以下の地合いの優れるものであるが、地合いの優れていることを、紫外線透過率で表現することもできる。つまり、紫外線透過率が低ければ低いほど、高捲縮性繊維が均一に分散しており、地合いが優れていることを意味する。なお、高捲縮性繊維が酸化チタン等の紫外線を散乱する効果のある無機粉体、及び/又は紫外線吸収剤を含んでいると、紫外線透過率が低くなるが、本発明の不織布は無機粉体及び紫外線吸収剤の量が不織布全体の0.3mass%以下であったとしても、波長が220nm〜400nmの紫外線の透過率が6%以下の地合いの優れるものである。
【0025】
この紫外線の透過率は、分光光度計(島津 UV―3100S、積分球使用、スキャンスピード中速、スリット巾5.0nm)を用いて、220nm〜400nmの範囲で、0.5nmきざみで透過率を測定したデータを積分した値である。具体的には下記の式による。
(ただし、D[i]は波長i(nm)における透過率(%)を意味する)
【0026】
本発明の不織布の目付は特に限定するものではないが、ある程度の目付がないと、地合いが悪くなる傾向があるため、30g/m以上であるのが好ましく、40g/m以上であるのがより好ましい。一方で、目付が高すぎると、高捲縮性繊維の自由度が低くなり、高捲縮性繊維同士が十分に絡合することが困難になる傾向があり、また、皮膚貼付基布として使用する場合のように、皮膚に当接させて使用する場合には、曲げ剛性が高く、使用時の違和感が強くなる傾向があるため、150g/m以下であるのが好ましく、130g/m以下であるのがより好ましく、110g/m以下であるのが更に好ましい。なお、「目付」は、JIS L 1085:1998 6.2 単位面積当たりの質量に規定する方法により得られる、1mあたりの質量である。
【0027】
また、本発明の不織布の厚さは、特に限定するものではないが、厚さが薄すぎると、不織布の伸長性、伸縮性が損なわれる傾向があるため、厚さは0.3mm以上であるのが好ましく、0.4mm以上であるのがより好ましい。一方で、厚さが厚すぎると、皮膚貼付基布として使用する場合のように、皮膚に当接させて使用する場合には、曲げ剛性が高く、使用時の違和感が強くなる傾向があるため、1.5mm以下であるのが好ましく、1mm以下であるのがより好ましく、0.85mm以下であるのが更に好ましい。なお、「厚さ」は、圧縮弾性試験機を用い、接触面積5cm、荷重0.98N{100gf}の条件で測定した値である。
【0028】
本発明の不織布は前述の通り、高捲縮性繊維を主体としているが、たて方向、よこ方向のいずれの方向における引張り強さも30N/5cm幅以上であるのが好ましい。このような引張り強さであると、繊維同士が十分に絡んだ状態で、繊維密度が高い状態にあり、地合いが優れているためである。より好ましくは、たて方向、よこ方向のいずれの方向においても、40N/5cm幅以上であるのが好ましく、50N/5cm幅以上であるのがより好ましく、60N/5cm幅以上であるのが更に好ましい。
【0029】
なお、不織布製造時に、高捲縮性繊維がたて方向に配向しやすいことから、たて方向の引張り強さが強くなる傾向があり、具体的には、たて方向の引張り強さは70N/5cm幅以上、好ましくは80N/5cm幅以上であり、より好ましくは90N/5cm幅以上である。なお、引張り強さの上限は特に限定するものではないが、たて方向、よこ方向ともに250N/5cm幅以下であるのが現実的である。
【0030】
本発明における「引張り強さ」は、不織布から幅が50mm、長さが300mmの試料片を採取し、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)を用い、試料片が破断するまでの最大荷重を測定する。この最大荷重の測定を3枚の試料片について行い、これら最大荷重を算術平均し、引張り強さとする。なお、測定はつかみ間隔200mm、引張速度500mm/分の条件で行う。また、本発明における「たて方向」とは不織布生産時の流れ方向であり、「よこ方向」とはたて方向に直交する方向をいう。
【0031】
本発明の不織布は伸長しやすいものであるが、具体的には、伸び率がたて方向、よこ方向ともに100%以上であるのが好ましい。より好ましくは、たて方向、よこ方向ともに120%以上である。特に、不織布製造時に繊維がたて方向に配向しやすいことから、よこ方向に伸長しやすく、具体的には、よこ方向の伸び率は150%以上であるのが好ましく、160%以上であるのがより好ましく、170%以上であるのが更に好ましい。この伸び率は前述の引張り強さの測定を行った時の、最大荷重時の試料片の伸び[=(最大荷重時の長さ、単位:mm)−(つかみ間隔=200mm)]のつかみ間隔(200mm)に対する百分率をいう。この測定を3回行い、前記百分率の算術平均値を伸び率とする。
【0032】
本発明の不織布は伸長性に優れるように、よこ方向における50%モジュラス強度は10N/5cm以下であるのが好ましく、7N/5cm以下であるのがより好ましい。一方、たて方向における50%モジュラス強度も伸長性に優れるように、より低い方が好ましいが、膏体を塗布するなど、後加工時における工程通過性の点から、8N/5cm以上であるのが好ましく、10N/5cm以上であるのが更に好ましい。
【0033】
この50%モジュラス強度は、不織布から幅が50mm、長さが300mmの試料片を採取し、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)を用い、試料片をつかみ間隔200mmで固定した後、100mm伸長(つかみ間隔:300mm)するまでの最大荷重を測定する。この最大荷重の測定を3枚の試料片について行い、これら最大荷重を算術平均し、50%モジュラス強度とする。なお、測定は引張速度500mm/分の条件で行う。
【0034】
また、本発明の不織布は伸縮性に優れるものであるが、具体的には50%伸長時の回復率はたて方向、よこ方向ともに30%以上であるのが好ましい。より好ましくは35%以上である。特に、回復性に優れるよこ方向においては、40%以上であるのが好ましく、より好ましくは50%以上であり、更に好ましくは60%以上である。
【0035】
この50%伸長時の回復率は、不織布から幅が50mm、長さが300mmの試料片を採取し、定速伸長型引張試験機(オリエンテック社製、テンシロン)を用い、試料片をつかみ間隔200mmで固定する。このつかみ間隔200mmの位置を始点とし、始点から100mmの位置、即ち50%伸長位置(L50=100mm)まで速度200mm/分で引っ張り、すぐに同速度で始点まで戻す。このとき試料片の引張応力がゼロになるときの始点からの距離(L)を測定する。この測定を3枚の試料片について行い、前記距離(L)を算術平均した後、次の式から算出される数値を50%伸長時の回復率とする。
50%伸長時の回復率(%)=[(L50−L)/L50]×100
=100−L
【0036】
本発明の不織布は層間剥離強度が50N/50mm幅を超える、厚さ方向における内部で剥離しにくいのが好ましい。厚さ方向における内部で剥離しにくい不織布であることによって、次のような効果を奏する。
(1)貼付薬用基布として使用した場合であっても、使用後、皮膚から剥がす際に、膏体が皮膚に残るということがない。
(2)貼付薬用基布として使用した場合、時間の経過に伴って、不織布表面が荒れたり、毛羽立ったりせず、見栄えが良い。
(3)皮膚貼付材の効能等について、鉛筆等で皮膚貼付材に記入した場合であっても、記載しやすく、ノリも良い。
(4)化粧用基布として使用し、化粧液を含浸して、顔面パック材とし、使用後に化粧液を含んだ顔面パック材で顔を拭いた場合であっても、繊維が脱落しにくい。
(5)皮膚に貼付した貼付薬を覆うようにカバーし、貼付薬を保護するためのカバー材として使用した場合であっても、使用中に、時間経過に伴って、カバー材表面が荒れたり、毛羽立ったりせず、見栄えが良い。
【0037】
この「層間剥離強度」は次の手順により得られる値である。
(1)セキスイ製ビニクロステープNo.750(75mm巾)を20cm程度切り取り、不織布の両面に、それぞれ貼付する。なお、貼付は不織布のたて方向(不織布生産時の流れ方向)とテープの長手方向とを平行とする。また、貼付する際には、テープを不織布から6cm程度はみ出すように貼付した後、はみ出したテープを折り返し、テープの粘着面同士を粘着させて、掴み部分を3cm程度形成する。
(2)前記不織布をロール圧力1.0kgf、2.0m/min.の速度で圧着し、長手方向13cm(掴み部分3cmを含む)、幅方向5cmの試験片を得る。
(3)前記試験片を標準状態温度(温度20℃、相対湿度65%)にて1時間放置した後、引張り強さ試験機(オリエンテック製、テンシロンUTM−III−100)のチャック間(距離:50mm)に固定し、引張速度500m/min.にて引張った際の初期最大荷重点を層間剥離強度とする。
【0038】
本発明の不織布は換算曲げ剛性Bcが0.0005gf・cm/cm/(g/m)以下であるのが好ましい。この換算曲げ剛性Bcが0.0005gf・cm/cm/(g/m)よりも高いと、硬く感じられ、使用時の違和感が生じる場合があるためである。
【0039】
この換算曲げ剛性は次の式から算出される値である。
Bc=Br/M
ここで、Brはたて方向の曲げ剛性とよこ方向の曲げ剛性の算術平均曲げ剛性(単位:gf・cm/cm)を表し、Mは目付(単位:g/m)を表す。この曲げ剛性は不織布を曲げた時の剛性であるが、不織布の目付が大きくなると、曲げ剛性も大きくなり、目付と曲げ剛性とは比例関係があるため、曲げ剛性の目付による影響を排除するために、算術平均曲げ剛性を目付で除している。
【0040】
この算術平均曲げ剛性Brは純曲げ試験機(カトーテック(株)製、KES−FB2)を用いて、「風合い評価の標準化と解析第2版」(川端季雄ら著、風合い計量と規格化研究委員会編)の第27〜28頁に記載の方法により測定した値である。
【0041】
即ち、試料の不織布を幅1cmの間隔で長さ20cmにわたってチャックに把持し、曲率K=−2.5〜2.5cm−1の範囲において、変形速度0.50cm−1/sec.で等速度曲率の純曲げを行い、この際の曲げモーメントを測定することにより、単位長さ当たりの曲げ剛性(gf・cm/cm)を求める計測を、不織布のたて方向、よこ方向について、それぞれ3回づつ行い、その算術平均した値である。
【0042】
本発明の不織布は、更に、部分的に凹部を有することもできる。このように凹部を有することによって、意匠性に優れている。また、用途によっては、必要な情報を使用者に提供することができる。例えば、不織布を、薬効成分を含む膏体を塗布して外用貼付薬を構成するための皮膚貼付基布として使用する場合、薬効成分を示す文字、図形、記号などの凹部を有する場合、使用者が薬効成分を認識することができる。本発明の不織布は着色した高捲縮性繊維を主体としており、凹部と凸部との色差が大きいため、明確に凹部の情報を認識することができる。
【0043】
この凹部は圧着していても、融着していても良いが、本発明の不織布は高捲縮性繊維を主体としており、伸長性又は伸縮性を有するのが好ましいため、伸長性又は伸縮性を阻害しないように、凹部は圧着しているのが好ましい。なお、「圧着」とは、繊維同士が密着しているものの、繊維の一部が溶融し、固結して繊維同士が結合した状態になく、繊維の自由度が確保された状態をいう。
【0044】
なお、凹部は目的によって、様々な形態を採ることができ、例えば、文字、図形、模様、記号、絵などの形態であることができ、形態の異なる凹部が混在していても良い。
【0045】
本発明の不織布は凹部を部分的に有することによって、様々な情報を認識することができるが、その配置状態は特に限定するものではない。例えば、規則正しく、不規則に配置していることができる。しかしながら、特開2002−235269号公報に開示されているように、(1)凹部単位の中心軸(特開2002−235269号公報における識別凹部単位の中心軸、つまり、凹部であることによって認識できる文字等の長尺状繰り返し単位を完全に囲むことのできる最も面積の小さい長方形の対角線の交点を通る、前記長方形の長辺と平行な直線)と一致する直線LCAが、不織布のたて方向に平行な直線LMDとよこ方向に平行な直線LCDのいずれの直線とも交わるように配置している(図1(a)参照)、(2)任意の凹部単位の中心(凹部であることによって認識できる文字等の長尺状繰り返し単位を完全に囲むことのできる最も面積の小さい長方形の対角線の交点)と、この凹部単位と不織布のよこ方向で最も近い凹部単位の中心とを結ぶことによって形成される直線LC−CDと、不織布のよこ方向に平行な直線LCDとが交わるように配置している(図1(b)参照)、(3)任意の凹部単位の中心と、この凹部単位と不織布のたて方向で最も近い凹部単位の中心とを結ぶことによって形成される直線LC−MDと、不織布のたて方向に平行な直線LMDとが交わるように配置している(図1(c)参照)、のが好ましい。これら(1)〜(3)の条件を2つ以上満たすのが好ましく、3つとも満たすのがより好ましい。
【0046】
なお、凹部の総面積が広すぎると伸長性、伸縮性が阻害されやすくなるため、凹部の総面積は不織布面積の40%以下であるのが好ましく、20%以下であるのがより好ましく、10%以下であるのが更に好ましい。他方、凹部の総面積が狭すぎる、例えば、文字が小さすぎるような場合、出所、薬効成分、デザイン等の情報を認識しにくくなるため、凹部の総面積は不織布面積の5%以上であるのが好ましい。
【0047】
本発明の不織布の製造方法は特に限定するものではないが、例えば、(1)潜在捲縮性繊維を主体とする繊維ウエブを形成する工程、(2)前記繊維ウエブに対して絡合作用を作用させて絡合繊維ウエブを形成する工程、(3)前記絡合繊維ウエブに対して熱を作用させることにより潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、高捲縮性繊維とする際に、絡合繊維ウエブを収縮させて収縮繊維ウエブを形成する工程、及び(4)収縮繊維ウエブを着色して不織布とする工程、により製造することができる。
【0048】
より具体的には、(1)潜在捲縮性繊維を主体(50mass%以上)とする繊維ウエブを形成する工程は、例えば、カード法、エアレイ法などの乾式法、湿式法、又はスパンボンド法などの直接法により形成できる。これらの中でも、次の工程における絡合作用によって、繊維同士が絡合しやすいように、乾式法、特にカード法により繊維ウエブを形成するのが好ましい。
【0049】
この繊維ウエブは繊維が一方向に配向したパラレルウエブ、繊維が交差するように配向したクロスレイウエブ、或いは繊維がランダムに配置したランダムウエブであることができる。また、これら繊維ウエブが積層した積層ウエブであっても良い。例えば、パラレルウエブとクロスレイウエブとを積層(つまり、クリスクロスウエブ)することができる。
【0050】
なお、潜在捲縮性繊維としては、前述の潜在捲縮性繊維を使用できるが、面積収縮率が35%以上(好ましくは37%以上、更に好ましくは40%以上)の優れた捲縮発現能を有する、及び/又は平均繊度が1.7dtex(好ましくは1.6dtex以下、より好ましくは1.5dtex以下、更に好ましくは1.4dtex以下、更に好ましくは1.3dtex以下、更に好ましくは1.2dtex以下、更に好ましくは1.1dtex以下)の潜在捲縮性繊維を使用するのが好ましい。このような潜在捲縮性繊維を使用すると、繊維密度が高まり、優れた地合いとすることができるためである。また、次の工程の絡合作用によって、繊維ウエブの地合いが悪くならないように、絡合前の繊維ウエブの目付は30g/m以上であるのが好ましい。
【0051】
次いで、(2)前記繊維ウエブに対して絡合作用を作用させて絡合繊維ウエブを形成する。絡合作用を作用させることによって、繊維同士を絡ませ、不織布を製造する上での工程強度、及び不織布使用時における強度を付与する。なお、前記絡合作用としては、水流などによる流体流、ニードルパンチを挙げることができる。これらの中でも、地合いの優れる絡合繊維ウエブを製造しやすく、また、強度を付与しやすい、水流などによる流体流であるのが好ましい。
【0052】
好適である流体流の絡合作用の場合、適度な強度を付与できるように、流体圧は3.0MPa以上であるのが好ましく、3.5MPa以上であるのがより好ましく、4.0MPa以上であるのが更に好ましい。なお、流体圧が強すぎると、絡合繊維ウエブの地合いが悪くなる傾向があり、また、潜在捲縮性繊維の捲縮発現が不十分となり、伸長性又は伸縮性が悪くなる傾向があるため、流体圧は12MPa以下であるのが好ましい。
【0053】
このような流体流の作用は1回ではなく、2回以上作用させるのが好ましい。流体流の作用回数が多くなると、適度な強度を付与できるためである。しかしながら、繊維同士の絡合が進み過ぎると、潜在捲縮性繊維の捲縮発現が不十分となる傾向があるため、流体流の作用は4回以下であるのが好ましい。このように2回以上、流体流を作用させる場合、少なくとも1回、圧力3.0MPaの流体を作用させて、十分に絡合させるのが好ましく、2回以上、圧力3.0MPaの流体流を作用させるのがより好ましい。特に、2回以上、流体流を作用させる場合、繊維ウエブの両面に対して流体流を作用させ、繊維を十分に絡合するのが好ましく、繊維ウエブの両面に対して、圧力3.0MPaの流体流を作用させ、繊維を十分に絡合するのが更に好ましい。
【0054】
なお、流体流を作用させる前に、流体と繊維ウエブとの馴染みを良くするために、シャワー等により、繊維ウエブを湿らした後、段階的に圧を高くするのが好ましい。
【0055】
更に、流体絡合の際に使用する繊維ウエブを支持する支持体は、不織布の地合いを乱さないように、50〜100メッシュのプラスチック製又は金属製の平織り又は綾織りネット、或いはメッシュスクリーンであるのが好ましい。
【0056】
続いて、(3)前記絡合繊維ウエブに対して熱を作用させることにより潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、高捲縮性繊維とする際に、絡合繊維ウエブを収縮させて収縮繊維ウエブを形成する。このように、潜在捲縮性繊維の捲縮発現力を利用し、絡合繊維ウエブを十分に収縮させることによって、伸長性、伸縮性等に優れるとともに、繊維同士が絡み、繊維密度が高い状態となるため、地合いの優れる不織布とすることができる。そのため、面積を30%以上収縮させるのが好ましく、面積を35%以上収縮させるのがより好ましく、面積を40%以上収縮させるのが更に好ましい。この「面積を30%以上収縮させる」とは、例えば、1mの絡合繊維ウエブに対して熱を作用させることによって、0.7m以下の収縮繊維ウエブを形成することを意味する。このような収縮は、絡合繊維ウエブのたて方向(不織布生産時の流れ方向)にのみ収縮させることができるし、絡合繊維ウエブのよこ方向(たて方向と直交する方向)にのみ収縮させることができるし、絡合繊維ウエブのたて方向、よこ方向の両方向に収縮させることができるが、地合いを考慮すると、絡合繊維ウエブのたて方向、よこ方向の両方向に収縮させるのが好ましい。このように両方向に収縮させるためには、例えば、たて方向に関してはオーバーフィードし、よこ方向に関しては収縮を阻害しない状態で熱を作用させる。なお、絡合繊維ウエブを収縮させる熱は、コンベア等で絡合繊維ウエブを搬送しながら作用させることができる。
【0057】
この絡合繊維ウエブに対して作用させる熱は、潜在捲縮性繊維が50個/インチ以上の捲縮を発現できれば良く、潜在捲縮性繊維によってその温度は異なるため、特に限定するものではない。この温度は潜在捲縮性繊維に応じて、実験的に適宜設定できるものである。なお、加熱手段は特に限定するものではないが、例えば、熱風ドライヤー、赤外線ランプ、加熱ロールなどを挙げることができる。これらの中でも、潜在捲縮性繊維の捲縮が発現する際に、繊維同士の絡合作用を阻害しにくい、熱風ドライヤー、赤外線ランプなどの固体による強力な圧力がかからない加熱手段が好ましい。
【0058】
そして、(4)収縮繊維ウエブを着色して、本発明の不織布とすることができる。着色方法は特に限定するものではないが、例えば、ジッガ染色機を使用する方法、ウインス染色機を使用する方法、ビーム染色機を使用する方法、液流染色機を使用する方法、サーモゾル染色機を使用する方法、パッドスチーム染色機を使用する方法、ローラー捺染機を使用する方法、自動フラットスクリーン捺染機を使用する方法、オフセット印刷式捺染機を使用する方法、転写捺染機を使用する方法などを挙げることができるが、これらの中でも、高捲縮性繊維全体を均一に着色でき、また、収縮繊維ウエブを損傷しにくい、ビーム染色機を使用する方法により染色するのが好ましい。
【0059】
この好適であるビーム染色機を用いて着色する場合、染色する際に、収縮繊維ウエブが再度、収縮して地合いを損ねることがないように、染液の温度を110℃以下とするのが好ましい。また、染液の温度上昇が急激であると、染色が不均一になり、地合いが悪くなる傾向があるため、昇温速度を1℃/min.以下とし、ゆっくりと昇温させるのが好ましい。また、染液の流量が多いと、染液が収縮繊維ウエブを透過する際に、収縮繊維ウエブに圧力がかかり、繊維配置が変化して地合いが悪くなる傾向があるため、流量は使用する染色機の従来の流量の90%以下、より好ましくは80%以下とし、繊維配置を乱さないように、ゆっくりと透過させるのが好ましい。
【0060】
なお、染液は、従来と同様に、染料、分散剤及びpH調整剤で構成することができる。より具体的には、染料としては分散染料が好ましく、例えば、モノアゾ、ジスアゾ、アントラキノン、ニトロ、スチリル、メチン、キノナフタリン、アミノナフチルイミド、ナフトキノン、並びにクマリン誘導体などを挙げることができる。
【0061】
また、分散剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ドデシル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、またはこれらの類似構造体であって、飽和直鎖部分の炭素数が10〜16程度のものを好適に使用することができる。更に、pH調整剤としては、例えば、酢酸、酢酸/酢酸ナトリウム、硫酸アンモニウム/蟻酸等を使用することができる。
【0062】
上記染液を構成する各成分の量は、染料の特性によって変わるため特に限定するものではないが、分散染料を使用する場合、収縮繊維ウエブの質量に対して、0.01〜0.1%であるのが好ましい。また、分散剤、pH調整剤の量も特に限定するものではないが、分散剤は0.1〜1.0g/リットルであるのが好ましく、pH調整剤は0.5〜2.0g/リットルであるのが好ましい。なお、分散染料の量が少ない場合には、分散剤を添加しないこともできる。
【0063】
また、染色後の水洗・乾燥は通常の染色と同様に行えば良いが、乾燥に際しては、収縮繊維ウエブが再度収縮して地合いを損ねることがないように、100℃以下で乾燥するのが好ましい。
【0064】
このようにして、本発明の不織布を製造することができるが、収縮繊維ウエブを着色する前又は後に、エンボス処理を行うことにより、凹部を有する不織布とすることができる。なお、前述の通り、不織布の伸長性又は伸縮性を損うことがないように、繊維を融着させることなく、凹部を形成するのが好ましい。より具体的には、エンボス処理装置における温度を収縮繊維ウエブ又は不織布を構成する繊維の中で最も低い融点をもつ樹脂成分の融点よりも低い温度、好ましくは融点よりも30℃以上低い温度、より好ましく融点よりも50℃以上低い温度とするのが好ましい。一方で、凹部の鮮明性、及び保管時、更には後加工時における熱によって、凹部の嵩が回復して、凹部の鮮明性が悪くならないように、収縮繊維ウエブ又は不織布を構成する繊維の中で最も高いガラス転移温度をもつ樹脂成分のガラス転移温度よりも高い温度でエンボス処理を実施するのが好ましい。
【0065】
なお、エンボス処理装置としては、例えば、平滑ロールとエンボスロールとの組合せ、同期した一対のエンボスロールの組合せなどを挙げることができる。平滑ロールの素材としては、例えば、スチール、コットン、ウール、耐熱性樹脂等を挙げられるが、凹部を鮮明に形成するという観点及び異物混入の観点から、耐熱性樹脂からなる平滑ロールを使用するのが好ましい。この好適である耐熱性樹脂として、ポリアミド等を挙げることができ、ショアD硬さが80程度であるのが好ましい。一方、エンボスロールの素材としては、例えば、金属、耐熱性素材を挙げられるが、凹部を鮮明に形成するという観点から、金属からなるエンボスロールを使用するのが好ましい。したがって、耐熱性樹脂からなる平滑ロールと金属からなるエンボスロールとの組合せが特に好ましい。
【0066】
なお、エンボス処理は、熱をもっている状態の収縮繊維ウエブ又は不織布に対して、エンボス処理装置を加熱することなく作用させることができるし、熱をもっていない収縮繊維ウエブ又は不織布に対して、エンボス処理装置を加熱して作用させることができる。なお、エンボス処理装置による収縮繊維ウエブ又は不織布に対する作用圧は、エンボス処理装置の種類、処理テンポ、処理温度、凹部の面積、収縮繊維ウエブ又は不織布の幅、収縮繊維ウエブ又は不織布の種類又は状態等によって異なるため、凹部が鮮明であるように、適宜調整する。
【実施例】
【0067】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は次の実施例に限定されるものではない。
【0068】
(実施例1)
ポリエステル(融点:250.7℃)/低融点ポリエステル(融点:228.3℃)の組み合わせでサイドバイサイド型に構成された潜在捲縮性繊維(繊度1.3dtex、繊維長44mm、面積収縮率:43.5%)を100mass%用いて、カード機により開繊してランダムウエブ(目付:42g/m)を形成した。
【0069】
その後、ランダムウエブを90メッシュのポリエステル製綾織ネット(支持体)を用いて搬送しながら水流により絡合し、水流絡合繊維ウエブを形成した。なお、水流絡合の条件は次の通りとした。
1.シャワー:0.1MPa(片面「A面」とする、以下同様)
2.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから3.5MPa(A面)
【0070】
次いで、水流絡合繊維ウエブを110℃で乾燥した後、よこ方向を規制することなく、たて方向にオーバーフィードしつつ、コンベアで搬送する水流絡合繊維ウエブに対して、熱風ドライヤーによる温度180℃での熱処理を行うことによって潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、高捲縮性繊維を形成する際に、水流絡合繊維ウエブの面積をたて方向及びよこ方向にトータルで50%収縮させ、目付85g/mの収縮繊維ウエブを形成した。
【0071】
そして、この収縮繊維ウエブをビームに巻き付けた後、ビーム染色機に収容し、次の条件で収縮繊維ウエブを染色した。そして、水洗及び100℃で加圧後、急減圧して乾燥を行い、本発明の不織布を製造した。
【0072】
(染色条件)
1.染液:
(1)青色分散染料「スミカロン Blue E−RPD」(住友化学(株)製、商品名)・・0.6%
(2)pH調整剤:酢酸・・0.25g/リットル、酢酸ナトリウム1.0g/リットル
2.染液の温度:105℃
3.染液の昇温速度:0.9℃/min.
4.染色時間:30分
5.染液の流量:2000L/min.
【0073】
(比較例1)
染色条件を次のように変更したこと以外は、実施例1と同様にして不織布を製造した。
【0074】
(染色条件)
1.染液:
(1)青色分散染料「スミカロン Blue E−RPD」(住友化学(株)製、商品名)・・0.6%
(2)pH調整剤:酢酸・・0.25g/リットル、酢酸ナトリウム1.0g/リットル
2.染液の温度:105℃
3.染液の昇温速度:1.2℃/min.
4.染色時間:30分
5.染液の流量:2500L/min.
【0075】
(実施例2)
ポリエステル(融点:251.0℃)/低融点ポリエステル(融点:228.8℃)の組み合わせでサイドバイサイド型に構成された潜在捲縮性繊維(繊度1.1dtex、繊維長44mm、面積収縮率:42.9%)を100mass%用いて、カード機により開繊し、パラレルウエブ(目付:20g/m)を形成した。また、同様に形成したパラレルウエブをクロスラッパーによりクロスレイウエブ(目付:30g/m)を形成した。
【0076】
前記パラレルウエブとクロスレイウエブとを積層した後、90メッシュのポリエステル製綾織ネット(支持体)を用いて搬送しながら水流により絡合し、水流絡合繊維ウエブを形成した。なお、水流絡合の条件は次の通りとした。
1.シャワー:0.1MPa(A面)
2.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから6.0MPa(A面)
【0077】
次いで、水流絡合繊維ウエブを110℃で乾燥した後、よこ方向を規制することなく、たて方向にオーバーフィードしつつ、コンベアで搬送する水流絡合繊維ウエブに対して、熱風ドライヤーによる温度180℃での熱処理を行うことによって潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、高捲縮性繊維を形成する際に、水流絡合繊維ウエブの面積をたて方向及びよこ方向にトータルで45%収縮させ、目付92g/mの収縮繊維ウエブを形成した。
【0078】
そして、実施例1と同様にして染色し、本発明の不織布を製造した。
【0079】
(比較例2)
ポリエステル(融点:248.3℃)/低融点ポリエステル(融点:229.1℃)の組み合わせでサイドバイサイド型に構成された潜在捲縮性繊維(繊度2.2dtex、繊維長51mm、面積収縮率:56.5%)を100mass%用いて、カード機により開繊し、パラレルウエブ(目付:20g/m)を形成した。また、同様に形成したパラレルウエブをクロスラッパーによりクロスレイウエブ(目付:30g/m)を形成した。
【0080】
前記パラレルウエブとクロスレイウエブとを積層した後、90メッシュのポリエステル製綾織ネット(支持体)を用いて搬送しながら水流により絡合し、水流絡合繊維ウエブを形成した。なお、水流絡合の条件は次の通りとした。
1.シャワー:0.1MPa(A面)
2.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから8.5MPa(A面)
【0081】
次いで、水流絡合繊維ウエブを110℃で乾燥した後、よこ方向を規制することなく、たて方向にオーバーフィードしつつ、コンベアで搬送する水流絡合繊維ウエブに対して、熱風ドライヤーによる温度180℃での熱処理を行うことによって潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、高捲縮性繊維を形成する際に、水流絡合繊維ウエブの面積をたて方向及びよこ方向にトータルで45%収縮させ、目付91g/mの収縮繊維ウエブを形成した。
【0082】
そして、比較例1と同様にして染色して不織布を製造した。
【0083】
(比較例3)
染色条件を実施例1と同じにしたこと以外は、比較例2と同様にして不織布を製造した。
【0084】
(比較例4)
ポリエステル(融点:248.3℃)/低融点ポリエステル(融点:229.1℃)の組み合わせでサイドバイサイド型に構成された潜在捲縮性繊維(繊度2.2dtex、繊維長51mm、面積収縮率:56.5%)を100mass%用いて、カード機により開繊し、パラレルウエブ(目付:30g/m)を形成した。また、同様に形成したパラレルウエブをクロスラッパーによりクロスレイウエブ(目付:30g/m)を形成した。
【0085】
前記パラレルウエブとクロスレイウエブとを積層した後、90メッシュのポリエステル製綾織ネット(支持体)を用いて搬送しながら水流により絡合し、水流絡合繊維ウエブを形成した。なお、水流絡合の条件は次の通りとした。
1.シャワー:0.1MPa(A面)
2.ノズル径0.13mm、ノズルピッチ0.6mmのノズルプレートから4.0MPa(A面)
【0086】
次いで、水流絡合繊維ウエブを110℃で乾燥した後、よこ方向を規制することなく、たて方向にオーバーフィードしつつ、コンベアで搬送する水流絡合繊維ウエブに対して、熱風ドライヤーによる温度180℃での熱処理を行うことによって潜在捲縮性繊維の捲縮を発現させ、高捲縮性繊維を形成する際に、水流絡合繊維ウエブの面積をたて方向及びよこ方向にトータルで48%収縮させ、目付117g/mの収縮繊維ウエブを形成した。
【0087】
そして、比較例1と同様にして染色して不織布を製造した。
【0088】
(各種物性評価)
前述の手順に従って、引張り強さ、伸び率、50%モジュラス強度、50%伸長時の回復率、層間剥離強度、換算曲げ剛性、及び平均地合指数を、それぞれの不織布について計測した。この結果は表1、2に示す通りであった。
【0089】
【表1】
【0090】
【表2】
【0091】
表1、2から次のことがわかった。
1.実施例1と比較例1との比較から、染色条件の違い、つまり、染液の昇温速度が遅く、また、染液の流量が少ないことによって、平均地合指数及び紫外線透過率の小さい、地合いの優れる不織布を製造できること。
2.実施例2と比較例3との比較から、高捲縮性繊維の繊度が小さいと、平均地合指数及び紫外線透過率の小さい、地合いの優れる不織布を製造できること。
3.実施例1と比較例1〜3との比較から、高捲縮性繊維の繊度が小さいと、染色条件の影響を大きく受けること。
4.比較例1と比較例4との比較から、繊度の大きい高捲縮性繊維を用いて地合いを改善するために、目付を大きくし、比較的低い水圧で絡合しても、優れた地合いの不織布を得ることができないばかりか、繊維同士の絡合が不十分で層間剥離が生じたり、50%モジュラス強度が低いなど、実用上、問題があること。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の不織布は伸長性及び伸縮性に優れ、しかも地合いの優れるものであり、例えば、薬効成分を含む膏体を塗布して外用貼付薬を構成するための皮膚貼付基布、化粧用ゲルを塗布して顔面パック材を構成するための皮膚貼付基布、化粧液を含浸して顔面パック材を構成するための皮膚貼付基布、皮膚に貼付した貼付薬を覆うようにカバーし、貼付薬を保護するためのカバー材、又は衣料用の芯地として好適に使用できる。
【符号の説明】
【0093】
CA 凹部単位の中心軸と一致する直線
MD 不織布のたて方向に平行な直線
CD 不織布のよこ方向に平行な直線
C−MD 凹部単位の中心と、この凹部単位と不織布のたて方向で最も近い凹部単位の中心とを結ぶことによって形成される直線
C−CD 凹部単位の中心と、この凹部単位と不織布のよこ方向で最も近い凹部単位の中心とを結ぶことによって形成される直線
図1