特許第6092538号(P6092538)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092538
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】二重サッシ内蔵壁パネル
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/94 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   E04B2/94
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2012-159278(P2012-159278)
(22)【出願日】2012年7月18日
(65)【公開番号】特開2014-20094(P2014-20094A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124316
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】松島 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】近藤 広隆
【審査官】 新井 夕起子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−181333(JP,A)
【文献】 特開2010−138584(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/88 − 2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サッシが収納される開口部が厚さ方向に貫通して形成され、前記開口部の周囲にフレームを有する壁パネルであり、
前記フレームは中実断面であり、前記開口部上下の上枠部と下枠部、及び幅方向両側の縦枠部とに区分され、この上枠部と両縦枠部と下枠部の各内周面が周回しており、
前記開口部は互いに異なる立面形状をする内側開口部と外側開口部とに前記フレームの厚さ方向に区分され、
前記上枠部と前記下枠部の少なくともいずれか一方における前記内側開口部の内周面と前記外側開口部の内周面との間に段差があり、前記両縦枠部の少なくともいずれか一方の縦枠部における前記内側開口部の内周面と前記外側開口部の内周面との間に段差があり、
前記内側開口部と外側開口部にそれぞれ異なる寸法の内側サッシと外側サッシが収納されていることを特徴とする二重サッシ内蔵壁パネル。
【請求項2】
前記フレームを構成する上枠部と下枠部、及び縦枠部の少なくともいずれかの枠部の、室内側を向く室内側見付け面と室外側を向く室外側見付け面の内、見付け幅が大きい見付け面の反対側の、前記二重サッシ間に形成される空気層に面する位置に中間部見付け面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の二重サッシ内蔵壁パネル。
【請求項3】
前記中間部見付け面とその反対側の、見付け幅が大きい前記室内側見付け面、もしくは前記室外側見付け面との間に、前記枠部を見込み方向に貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の二重サッシ内蔵壁パネル。
【請求項4】
前記貫通孔が形成された枠部以外の枠部、もしくはその枠部に保持される少なくともいずれかのサッシの枠、または前記枠部と前記サッシの枠との間の少なくともいずれかに、室内、もしくは室外に連通する通気口が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の二重サッシ内蔵壁パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は面外方向に貫通して形成された開口部に二重サッシを収納した二重サッシ内蔵壁パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば屋外に面した外壁の開口部に二重サッシを収納することは、外壁において各サッシ間に形成される空気層の存在による断熱性とそれを利用した換気性能を確保する目的で採用されることが多く(特許文献1、2参照)、サッシ間の空気層に屋内、もしくは屋外の空気を通過させることにより空気層の温度変化(主に温度上昇)とそれに伴う輻射熱を抑え、屋内温度を一定に保持することが期待される。
【0003】
一方、ユニット化されたカーテンウォールのパネルにおいても、例えば屋外の空気を屋外に面したガラスの屋内側に取り込み、ガラスの屋内側に存在する空間(空気層)を通過させることにより断熱効果と換気効果を得ることがある(特許文献3〜6参照)。
【0004】
二重サッシを収納する外壁においても、ガラス(障子)を収納するカーテンウォールパネルにおいても、空気層を通過した空気は屋外に排出されるか、屋内に取り込まれて循環させられることになるが、特に空気層を通過した空気を屋内に取り込む場合には、サッシ等を収納したサッシ枠の周辺に排気のためのダクトを接続することが必要になる(特許文献2、4〜6参照)。
【0005】
サッシ枠の周囲にダクトを接続する場合、ダクトはサッシ枠の内、屋内に面する見付け面とサッシ枠の外周面である見込み面のいずれかに接続されるが、サッシ等を収納するサッシ枠は概して見込み幅が見付け幅より大きい形状をするため、ダクトはサッシ枠の見込み面(外周面)に接続されることが多い(特許文献1、2)。ダクトを見付け面に接続する場合には、サッシ枠はダクトの接続のために特に適した断面形状に形成されることが必要になる(特許文献4)。
【0006】
二重サッシ間の、もしくはガラス背面側の空気層を通過させられた空気は多くの例のようにサッシ枠の上枠から屋内に還気させられる他(特許文献1、2、5、6)、上枠を通じて屋外に排気させられる(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−26849号公報(請求項2、段落0007〜0010、図2
【特許文献2】特開平7−279552号公報(請求項1、段落0006〜0008、図1図3
【特許文献3】特開2009−270251号公報(請求項1、段落0019〜0020、図2図4
【特許文献4】特開2012−7374号公報(請求項1、段落0024〜0035、図2図4
【特許文献5】特開2001−3643号公報(請求項3、段落0024〜0029、図10
【特許文献6】特開2002−227328号公報(請求項1、段落0013、0014、図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記カーテンウォールユニットとして使用される壁パネルの本体(フレーム)が例えばプレキャストコンクリート製等の場合には、コンクリート等自体が脆性材料であることで、フレーム自体は中実断面で形成されるが、その関係でフレームを構成する枠部に薄肉の部分を形成することができないため、開口部に二重サッシを収納し、フレームの例えば上枠部に二重サッシ間の空気層に連通する排気口等としての貫通孔を形成しようとする場合、貫通孔の形成位置を確保することが難しい。
【0009】
二重サッシの内側サッシと外側サッシは採光の目的から同等の形状と面積を持ち、高さ方向に段差が付いて配置されることはないため、仮にフレームの上枠部に貫通孔を形成することができたとしても、貫通孔は内側サッシと外側サッシ間の空気層に連通するよう、上枠部を見付け方向(パネルの面内方向)に貫通する形で形成されざるを得ない。
【0010】
従ってその貫通孔にダクトを接続しようとすれば、ダクトをフレームの外周側に配置せざるを得ないため、特許文献2、5、6のようにフレーム外の部位との取り合いを必要とし、ダクトの敷設が各層(各階)単位での工事では済まなくなることもあり、ダクトの敷設工事の複雑化を余儀なくされることになる。
【0011】
本発明は上記背景より、パネル本体であるフレームがプレキャストコンクリート等の中実断面である場合にも、サッシを収納する開口部の周囲のフレーム(枠部)の見付け面に、空気層を通過させた空気を排出するための排気口、もしくは還気するための還気口を形成可能な形態の二重サッシ内蔵壁パネルを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明の二重サッシ内蔵壁パネルは、サッシが収納される開口部が厚さ方向に貫通して形成され、前記開口部の周囲にフレームを有する壁パネルであり、
前記フレームが中実断面であり、前記開口部上下の上枠部と下枠部、及び幅方向両側の縦枠部とに区分され、この上枠部と両縦枠部と下枠部の各内周面が周回しており、
前記開口部が互いに異なる立面形状をする内側開口部と外側開口部とに前記フレームの厚さ方向に区分され、
前記上枠部と前記下枠部の少なくともいずれか一方における前記内側開口部の内周面と前記外側開口部の内周面との間に段差があり、前記両縦枠部の少なくともいずれか一方の縦枠部における前記内側開口部の内周面と前記外側開口部の内周面との間に段差があり、
前記内側開口部と外側開口部にそれぞれ異なる寸法の内側サッシと外側サッシが収納されていることを構成要件とする。
【0013】
「壁パネル」は壁として使用されるユニット化された版のことであり、主に外壁に使用されるが、耐力壁(耐震壁を含む)か非耐力壁(間仕切り壁)かを問わず、内壁に使用されることもある。外壁に使用される場合には、耐力壁としての外壁に形成された開口部に収納される場合と、カーテンウォールのパネルとして躯体に支持される場合がある。壁パネルが屋内の内壁に使用されることもあることから、壁パネルを挟んだ一方側(内側)と他方側(外側)を室内側と室外側を呼ぶが、内壁に使用される壁パネルを隔てた室の内外は相対的な関係に過ぎず、一方の室の室内側は他方の室の室外側になる。室外は屋外を含む。
【0014】
「サッシ」はガラス、もしくはそれに類似するアクリル板等の合成樹脂板(以下、ガラス等と言う)とその周囲を保持する框組みからなる障子単体の場合と、障子(ガラス等)を嵌殺し状態に、もしくは開閉自在に収納したサッシ枠を含む場合がある。開口部を除くフレームはプレキャストコンクリート、もしくはコンクリートと同等のモルタル、合成樹脂、あるいはアルミニウム合金等で形成され、材料に応じ、中実断面形成される。
【0015】
「開口部が厚さ方向に貫通」とは、開口部が壁パネルの厚さ方向に貫通していることを言う。壁パネルの厚さ方向とフレームの厚さ方向は同義である。フレームは壁パネルの内、開口部を除いた部分であり、開口部を包囲するように周回し、開口部上下の上枠部と下枠部、及び幅方向両側の縦枠部とに区分される。開口部は壁パネルの厚さ方向には内側サッシが収納される内側開口部と外側サッシが収納される外側開口部とに区分される。
【0016】
「互いに異なる立面形状をする内側開口部と外側開口部」とは、内側開口部と外側開口部が、それぞれを壁パネルの室内側と室外側から見たときに異なる立面形状をしていることである。「異なる立面形状」とは、例えば内側開口部と外側開口部が方形状をしている場合に、互いに同一(合同)でない方形状をしていることであり、具体的には図1に示すように内側開口部と外側開口部のいずれか一方の高さ寸法(内法)が他方の高さ寸法より小さい(大きい)か、図2に示すようにいずれか一方の幅寸法(内法)が他方の幅寸法より小さい(大きい)ことを言う。但し、内側開口部と外側開口部は共に、必ずしも方形状である必要はない。
【0017】
「内側開口部と外側開口部にそれぞれ異なる寸法の内側サッシと外側サッシが収納される」とは、内側開口部と外側開口部の内法に対応した寸法の内側サッシと外側サッシがそれぞれに収納されることを言う。内側サッシ4と外側サッシ5はそれぞれ内側開口部31と外側開口部32の内周側に、図1図2における外側サッシ5のように完全に納まる(内付けされる)場合と、内側サッシ4のように壁パネル1の面外方向(見込み方向)に突出して納まる(外付け・半外付けされる)場合がある。内側開口部31と外側開口部32のそれぞれに内側サッシ4と外側サッシ5が収納されることで、内側サッシ4の室外側の面と外側サッシ5の室内側の面との間に空気層6が形成される。
【0018】
図1は外側開口部32の高さ寸法(内法)が内側開口部31の高さ寸法(内法)より大きい場合の壁パネル1の形成例を示す。ここに示すように下枠部22における外側開口部32の内周面(上向き面:見込み面)と内側開口部31の内周面(上向き面:見込み面)が同等のレベルに位置し、実質的に揃えられている場合、内側開口部31と外側開口部32が互いに異なる立面形状をすることで、開口部3を除いたフレーム2を構成する上枠部21と下枠部22、及び縦枠部23、23の少なくともいずれかの枠部の室内側を向く室内側見付け面の見付け幅と室外側を向く室外側見付け面の見付け幅を相違させることが可能になる。
【0019】
図1図2の例では上枠部21の室内側見付け面21aの見付け幅が室外側見付け面21bの見付け幅より大きく、一方の縦枠部23の室内側見付け面23aの見付け幅が室外側見付け面23bの見付け幅より大きくなっているが、内側開口部31と外側開口部32の立面形状と面積に応じ、上枠部21のみ等、いずれか1本の枠部のみの見付け幅が室内側と室外側とで相違する場合と、いずれか2本以上の枠部の見付け幅が室内側と室外側とで相違する場合がある。
【0020】
請求項1ではフレーム2を構成する上枠部21と下枠部22、及び縦枠部23、23の少なくともいずれかの枠部の、室内側見付け面21aの見付け幅と室外側見付け面21bの見付け幅を相違させることができる結果、室内側見付け面21aと室外側見付け面21bの内、見付け幅が大きい見付け面(室内側見付け面21a)の反対側の、二重サッシ4、5間に形成される空気層6に面する位置に中間部見付け面21cを形成することが可能になる(請求項2)。中間部見付け面21cは上枠部21と下枠部22、及び縦枠部23、23の少なくともいずれかの枠部の見込み方向中間部に形成される。「見付け面の反対側の面」は枠部での見付け面の反対側に位置する面を指す。
【0021】
図1の上枠部21で言えば、室内側見付け面21aの見付け幅が室外側見付け面21bの見付け幅より大きいため、室内側見付け面21aの反対側に空気層6に面する中間部見付け面21cが形成される。図1の上枠部21が室内側と室外側を入れ換えた形になった場合には、室外側見付け面21bの見付け幅が室内側見付け面21aの見付け幅より大きくなるため、室外側見付け面21bの反対側に空気層6に面する中間部見付け面21cが形成されることになる。
【0022】
また図2に示す一方の縦枠部23(室内から室外を見たときの左側の縦枠部23)に着目すれば、室内側見付け面23aの見付け幅が室外側見付け面23bの見付け幅より大きいため、室内側見付け面23aの反対側に空気層6に面する中間部見付け面23cが形成される。ここでも縦枠部23が室内側と室外側を入れ換えた形になった場合には、室外側見付け面23bの見付け幅が室内側見付け面23aの見付け幅より大きくなるため、室外側見付け面23bの反対側に空気層6に面する中間部見付け面23cが形成されることになる。
【0023】
請求項2では枠部の見込み方向中間部の空気層6に面する位置に中間部見付け面21cが形成されることで、中間部見付け面21cとその反対側の、見付け幅が大きい室内側見付け面21a、もしくは室外側見付け面21bとの間に、還気口、もしくは排気口として利用可能な貫通孔24を形成することが可能になる(請求項3)。貫通孔24は枠部を見込み方向に貫通して形成される。
【0024】
図1の例では上枠部21における外側開口部32の内周面(下向き面::見込み面21d)が内側開口部31の内周面(下向き面:見込み面21f)より上に位置し、外側開口部32の内周面(見込み面21d)と内側開口部31の内周面(見込み面21f)をつなぐ中間部見付け面21cは外側サッシ5の室内側に位置し、室外側を向いた状態で外側サッシ5の室内側に存在する空気層6に面する。この場合の上枠部21では中間部見付け面21cとその反対側の室内側見付け面21aとの間に枠部(上枠部21)を見込み方向に貫通する貫通孔24が形成される。図1の上枠部21が室内側と室外側を入れ換えた形になった場合には、中間部見付け面21cとその反対側の室外側見付け面21bとの間に貫通孔24が形成される。
【0025】
図2では前記一方の縦枠部23における外側開口部32の内周面(見込み面23d)が内側開口部31の内周面(見込み面23f)より開口部3の中心に対して外周側に位置し、外側開口部32の内周面(見込み面23d)と内側開口部31の内周面(見込み面23f)をつなぐ中間部見付け面23cは外側サッシ5の室内側に位置し、室外側を向いた状態で外側サッシ5の室内側に存在する空気層6に面する。
【0026】
この一方の縦枠部23では中間部見付け面23cとその反対側の室内側見付け面23aとの間に二点鎖線で示すように枠部(縦枠部23)を見込み方向に貫通する貫通孔24が形成可能になっている。図2の一方の縦枠部23が室内側と室外側を入れ換えた形になった場合には、中間部見付け面23cとその反対側の室外側見付け面23bとの間に貫通孔24が形成可能になる。貫通孔24が形成される枠部は上枠部21と縦枠部23には限られず、下枠部22に形成されることもある。
【0027】
また図1に示す例の上枠部21における外側開口部32の内周面(見込み面21d)と、図2に示す例の一方の縦枠部23における外側開口部32の内周面(見込み面23d)の、外側サッシ5より室内側に位置する部分(区間)は中間部見付け面21c、23cに連続することで、二重サッシ4、5間の空気層6に面する状態にあるため、これらの両枠部21、23における外側開口部32の内周面(見込み面21d、23d)は空気層6を通過した空気を、外側開口部32を通じて室外側へ排出するために利用可能となる。
【0028】
具体的には例えば図1における上枠部21の室外側の部分と図2における縦枠部23の室外側の部分に二点鎖線で示すように外側開口部32の内周面(見込み面21d、23d)から、各枠部21、23の室外側見付け面21b、23bとの間に連続する、排気口としての貫通孔21e、23eを形成することで、空気層6を通過した空気を外側開口部32の内周面(見込み面21d、23d)から室外へ排出することが可能である。外側開口部32の内周面(見込み面21d、23d)を通じた排気の状況は図4−(b)、(d)に示す排気の形態に相当する。
【0029】
貫通孔24は枠部(フレーム2)が中実断面の場合、中間部見付け面21cと室内側見付け面21a、もしくは室外側見付け面21bとの間に貫通して形成されればよく、例えばフレーム2を成形するための型枠(堰板)内の貫通孔24の形成位置に中空断面の、または離脱可能な部材を埋設しておくことで形成される。枠部が中空断面の場合には、中間部見付け面21cと室内側見付け面21a、もしくは室外側見付け面21bへの孔の形成では還気、もしくは排気すべき空気が枠部の内部に漏れるため、枠部の中間部見付け面21cと室内側見付け面21a、もしくは室外側見付け面21bとの間に中空の管を跨設することにより貫通孔24を枠部の内部に連通させることなく形成することが必要になる。
【0030】
請求項3では見付け幅が大きい室内側見付け面21a、もしくは室外側見付け面21bと空気層6に面する中部見付け面21cとの間に貫通孔24を形成可能であることで、空気層6を通過した空気を室内側へ取り込むための還気用等のダクト8等をフレーム2のいずれかの枠部の室内側に直接、接続することが可能になる。この結果、ダクト8等とフレーム2(壁パネル1)外の部位との取り合いが不要になるため、ダクト8の敷設を各層(各階)単位で済ませることができ、敷設工事が単純化される。貫通孔24を還気口として利用する場合、還気口に入り込む空気は一旦、室内に取り込まれた後に、ダクト8を通じて室外(屋外)へ排出されることもあり、その場合には還気口(貫通孔24)は結果的には排気口になる。
【0031】
図1における上枠部21の中間部見付け面21cと外側サッシ5のガラス等、障子51の室内側の面との間には内側サッシ4との間に存在する空気層6に連続するクリアランスがフレーム2(枠部)の見込み方向(厚さ方向)に形成され、中間部見付け面21cはこのクリアランスに面することで、空気層6に面する状態にある。空気層6は外側サッシ5の障子51の室内側の面と内側サッシ4のガラス等、障子41の室外側の面との間に形成され、内側サッシ4と外側サッシ5間の空気層6を通過した空気はクリアランスを経由して上枠部21の中間部見付け面21cに到達する。
【0032】
従って図1の例で言えば、上枠部21において空気層6に面する中間部見付け面21cとその反対側に位置する(反対側の面である)室内側見付け面21aとの間に両面間を貫通する貫通孔24が形成されれば、貫通孔24は空気層6と室内の双方に連通するため、空気層6を通過した空気を二重サッシの外側である室内側へ、または室内を通じて室外側へ排出することが可能になる。
【0033】
ここで、図1に示す壁パネル1は外側開口部32の高さ寸法が内側開口部31の高さ寸法より大きいことで、上枠部21は室内側見付け面21aの見付け幅が室外側見付け面21bの見付け幅より大きい形状をするため、室内側見付け面21aに突き合わせる形でダクト8等を接続するだけで、貫通孔24にダクト8等を連通させることが可能であり、壁パネル1の範囲外に及ぶことなく、壁パネル1の立面の範囲内にダクト8を配置すればよくなる。図1に示す例の場合、上枠部21の室内側見付け面21aの領域(範囲)内に、具体的には室内側見付け面21aの内、室外側見付け面21bの重なり部分を除いた領域(範囲)内に貫通孔24が形成されるため、室内側見付け面21aに直接、上記したダクト8を突き合わせて接続することが可能になっている。
【0034】
以上のことを整理すれば、請求項1の「内側開口部31と外側開口部32が互いに異なる立面形状をすること」の要件から「フレーム2を構成する上枠部21と下枠部22、及び縦枠部23、23の内、少なくともいずれかの枠部の室内側見付け面21aの見付け幅と室外側見付け面21bの見付け幅が相違すること」が言える。この要件から直接的に「室内側見付け面21aと室外側見付け面21bの内、見付け幅が大きい見付け面の反対側に、空気層6に面する中間部見付け面21cが形成されること」(請求項2)の要件が導出される。更に「中間部見付け面21cが空気層6に面する状態で形成されること」の要件から「見付け幅の大きい室内側見付け面21a、もしくは室外側見付け面21bとそれに対向する中間部見付け面21cとの間に貫通孔24が形成可能であること」の要件が導出される(請求項3)。
【0035】
外側サッシ5と内側サッシ4間の空気層6には例えば図1に示すように下枠部22と内側サッシ4との間に形成された通気口(通気孔)25から室内空気(内気)が送り込まれるか、または下枠部22と外側サッシ5との間に形成される通気口(通気孔)25から室外空気(外気)が取り込まれる。すなわち、通気口(通気孔)25は貫通孔24が形成された枠部(上枠部21)以外の枠部(下枠部22、もしくは縦枠部23)、もしくはその枠部に保持される少なくともいずれかのサッシの枠(サッシ枠42、52)、または枠部とサッシの枠(サッシ枠42、52)との間の少なくともいずれかに形成され、室内、もしくは室外に連通する(請求項4)。通気口の「口」はフレーム2の枠部、もしくはサッシ枠、框等に穿設される孔と、枠部とサッシ枠間、またはサッシ枠と框間等に確保される空隙等の空間その他、開口全般を含む。
【0036】
ここで言う「枠部」は壁パネル1のフレーム2を構成する上枠部21と下枠部22、及び縦枠部23、23の少なくともいずれかの枠部を指し、「サッシの枠」は内側開口部31に収納される内側サッシ4、もしくは外側開口部32に収納される外側サッシ5の枠(サッシ枠42、52)であり、上枠421、521、下枠422、522、縦枠423、523の少なくともいずれかを指す。室内側の通気口25は例えば図1に示すようにサッシ枠42を構成する下枠422と内側サッシ4の下框412との間に空隙を確保するか、または下枠422の、室内に面するいずれかの部分に孔を穿設するか、ガラリを配置する、あるいは無双窓式のスライド自在な板を配置することにより形成される。室外側の通気口25も同様である。
【0037】
請求項4では貫通孔24が上枠部21と下枠部22と縦枠部23のいずれかに形成され、空気層6を通過する空気が、貫通孔24が形成される枠部以外のいずれかの枠部の通気口25から取り込まれることで、図4−(a)〜(d)に示すように空気の取り込み口(導入口)としての通気口25と空気層6を通過した空気の排出口、もしくは還気口としての貫通孔24の組み合わせを複数通りに設定することが可能である。
【0038】
図4−(a)は図1の例と同じく通気口25を下枠部22の室内側に形成し、還気口としての貫通孔24を上枠部21の室内側に形成した場合、(b)は通気口25を下枠部22の室内側に形成し、排出口としての貫通孔24を上枠部21の室外側に形成した場合である。(c)は通気口25を下枠部22の室外側に形成し、還気口としての貫通孔24を上枠部21の室内側に形成した場合、(d)は通気口25を下枠部22の室外側に形成し、排出口としての貫通孔24を上枠部21の室外側に形成した場合である。
【0039】
但し、図4の各図に矢印で示すように下枠部22における通気口25と、上枠部21における還気口、もしくは排気口としての貫通孔24、あるいは貫通孔21eは季節に応じて互いに逆転することもあり、上枠部21の貫通孔24、21eが導入口としての通気口になり、下枠部22の通気口が還気口、もしくは排気口になることもある。その他、例えば通気口25を上枠部21、もしくは縦枠部23に形成し、貫通孔24、23eを下枠部22、もしくは縦枠部23に形成する等、通気口25と貫通孔24、23eはそれぞれ下枠部22と上枠部21以外にも形成可能であるから、通気口25と貫通孔24、21e、23e間の、空気層6を通じた通気は図4以外にも複数通りに設定可能である。
【0040】
請求項1ではまた、内側開口部31と外側開口部32が互いに異なる立面形状をすることで、壁パネル1の外形線に対する外側サッシ5の外形線を任意の位置に配置することが可能になっているため、複数枚の壁パネル1が外壁7の構面に添って水平方向と鉛直方向に配列する場合に、図7に示すように各壁パネル1の外形線に対する外側サッシ5の外形線の位置を相違させることで、外壁7のデザインに変化を持たせる効果も得られる。
【0041】
壁パネル1は図6に示すように外壁7の構面に添った水平方向と鉛直方向にそれぞれ複数枚、配列したときに、統一感のある外壁面を構成する他、図7に示すように壁パネル1内の外側サッシ5が外壁面に無秩序に配列する等、窓の配列に変化を持たせるような外壁面を構成することが可能である。図7は同一形状で、同一寸法のフレーム2の立面形状(外郭形状)に対して異なる立面形状と面積の外側サッシ5を収納し、異なる外観を有する複数枚の壁パネル1を水平方向と鉛直方向に配列させたときの外壁面の構成例を示している。
【0042】
また例えば図1における上枠部21の外周面(上端面)と下枠部22の外周面(下端面)が図4−(a)〜(d)に示すように平坦面に形成されているとすれば、壁パネル1(フレーム2)は面外方向(見込み方向)の両表面が室内側と室外側のいずれを向いても使用可能な形状をすることになる。
【0043】
その場合、前記のように図1において貫通孔24が形成されている室内側見付け面21aを室外側に向け、室外側見付け面21bにしたときには、貫通孔24は室外に連通するため、壁パネル1の向きを変えるだけで、貫通孔24を排気口として利用し、空気層6を通過した空気を貫通孔24を通じて二重サッシの外側である室外側へ排出することが可能になる。
【0044】
このようにフレーム2の外周面が平坦面に形成される等、壁パネル1自身が室内側と室外側の向き(違い)を持たない場合には、同一の壁パネル1における枠部の貫通孔24を還気用にも排気用にも使用でき、壁パネル1が室内側と室外側を単純に入れ換えて使用することに対応可能であるため、単一の壁パネル1を2通りの用途に兼用することが可能になる。
【0045】
図1に示す壁パネル1の室内側と室外側を単純に入れ換えた状態を想定すれば、上枠部21の室外側(室外側見付け面21b)の見付け幅が大きくなるため、その室外側見付け面21bの内、室内側見付け面21aの重なり部分を除いた領域(範囲)内に、上枠部21を厚さ方向に貫通する貫通孔24を形成することが可能である。このときの貫通孔24は図1に示す壁パネル1における貫通孔24と違いはないため、図1に示す壁パネル1の室内側と室外側を入れ換えるだけで、貫通孔24を排気口として利用可能になる。
【0046】
このように同一形態(形状)で、同一寸法の壁パネル1でありながら、室内側の面と室外側の面を入れ換えるだけで、上枠部21等の見付け幅が大きい見付け面を室内側に向けたときに、貫通孔24が形成された見付け面(室内側見付け面21a)に還気用のダクト8を接続することができる。一方、上枠部21等の見付け幅が大きい側を室外側に向けたときの室外側見付け面21bとなる同一の見付け面に排気口(貫通孔24)が形成されるため、1種類の壁パネル1の使用により還気と排気の2通りの設計に対応することが可能になる。室内側を向いたときの見付け面にダクト8が接続され、室外側を向いたときに排気口として利用される貫通孔24の形成位置は上枠部21には限らず、下枠部22になることもあれば、縦枠部23になることもある。
【発明の効果】
【0047】
開口部が内側開口部と外側開口部に壁パネルの厚さ方向に区分され、内側開口部と外側開口部が互いに異なる立面形状をすることで、開口部を除いたフレームを構成する上枠部と下枠部、及び縦枠部の少なくともいずれかの枠部の室内側を向く室内側見付け面の見付け幅と室外側を向く室外側見付け面の見付け幅を相違させることができる。この結果、いずれかの枠部の見付け幅が大きい室内側見付け面と、空気層に面する中間部見付け面との間に枠部を厚さ方向に貫通する貫通孔を形成することができる。
【0048】
空気層に面する中間部見付け面と室内側見付け面との間に貫通孔が形成可能であることで、室内側見付け面に直接、還気のためのダクト等を接続することができるため、壁パネルの立面の範囲内にダクト等を配置すればよく、ダクト等と壁パネル外の部位との取り合いが不要になる。この結果、ダクトの敷設を各層(各階)単位で済ませることができ、工事が単純化される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】外側開口部の高さ寸法が内側開口部の高さ寸法より大きく、上枠部の室内側見付け面の見付け幅が室外側見付け面の見付け幅より大きい壁パネルの製作例を示した縦断面図であり、図3の拡大図である。
図2】外側開口部の幅寸法が内側開口部の幅寸法より大きく、一方の縦枠部の室内側見付け面の見付け幅が室外側見付け面の見付け幅より大きい壁パネルの製作例を示した横断面図であり、図1の横断面図である。
図3図1図2に示す壁パネルをカーテンウォールのパネルとして外壁に設置した様子を示した縦断面図である。
図4】(a)〜(d)は外壁に設置された壁パネルの下枠部に通気口を形成し、上枠部に還気口、もしくは排出口を形成した場合の空気の流れの形態を示した縦断面図である。
図5】壁パネルの組み立ての様子を示した斜視図である。
図6図1図2に示す壁パネルを外壁の構面に添い、水平方向と鉛直方向にそれぞれ複数枚、配列させたときの外壁面を示した斜視図である。
図7】同一形状、同一寸法の壁パネルのフレーム内に、壁パネル毎に異なる立面形状の外側サッシを収納した複数枚の壁パネルを水平方向と鉛直方向に配列させたときの外壁面を示した立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0051】
図1図2はサッシが収納される開口部3が厚さ方向に貫通して形成され、開口部3の周囲にフレーム2を有する二重サッシ内蔵壁パネル(以下、壁パネル)1の製作例と外壁7への設置例を示す。開口部3は図5に示すようにフレーム2の厚さ方向に、互いに異なる立面形状をする内側開口部31と外側開口部32とに区分され、内側開口部31と外側開口部32にそれぞれ異なる寸法の内側サッシ4と外側サッシ5が収納される。図5図1図2に示す壁パネル1の構成要素であるフレーム2と、その内側開口部31と外側開口部32に納まる内側サッシ4及び外側サッシ5との関係を示している。
【0052】
図1図3に示す外壁7の一部を示し、図2図1のx−x線の断面を示している。図1図3は壁パネル1が構造物の梁、スラブ等の躯体に支持されるユニット式カーテンウォールのパネルの例を示しているが、壁パネル1は躯体としての外壁7の開口部に収納される場合と、屋内の壁に組み込まれる場合がある。図1図3はまた、サッシ(内側サッシ4と外側サッシ5)を除くフレーム2が中実断面のプレキャストコンクリート(モルタルを含む)製である場合の例であるが、フレーム2の材料は問われず、中実断面か否かも問われない。
【0053】
図面では内側サッシ4が2枚の障子41を内開き式にサッシ枠42に収納したサッシで、外側サッシ5が1枚の障子51(ガラス)を嵌殺し状態にサッシ枠52に収納したサッシである場合の例を示しているが、内側開口部31と外側開口部32に収納される内側サッシ4と外側サッシ5の形態、すなわち固定状態に収納されるか、開閉自在に収納されるかも問われない。
【0054】
内側開口部31と外側開口部32は共に、フレーム2を構成する上枠部21と下枠部22、及び縦枠部23、23の各内周面が周回することにより形成され、各枠部の内周面が区画する内側開口部31の立面形状と外側開口部32の立面形状が図5に示すように相違する。
【0055】
図1図2の例では下枠部22における内側開口部31の内周面(上向き面:見込み面)と外側開口部32の内周面(上向き面:見込み面)がほぼ揃えられ、上枠部21における内側開口部31の内周面(下向き面:見込み面21f)と外側開口部32の内周面(下向き面:見込み面21d)との間に段差が形成され、この段差の存在によって上枠部21の内側開口部31の内周面(見込み面21f)と外側開口部32の内周面(見込み面21d)との間に後述の中間部見付け面21cが形成される。
【0056】
図1図2ではまた、一方(室内から室外を見たときの右側)の縦枠部23における内側開口部31の内周面(見込み面)と外側開口部32の内周面(見込み面)がほぼ揃えられ、他方の縦枠部23における内側開口部31の内周面(見込み面23f)と外側開口部32の内周面(見込み面23d)との間に段差が形成され、段差によって内側開口部31の内周面と外側開口部32の内周面との間に中間部見付け面23cが形成されている。
【0057】
但し、少なくともいずれかの枠部における内側開口部31と外側開口部32の各内周面間に段差が形成されていれば、内側開口部31と外側開口部32が互いに異なる立面形状をすることになるため、その他の枠部における内側開口部31と外側開口部32の各内周面が揃えられるか、段差が形成されるかは任意である。
【0058】
フレーム2は開口部3の上側に位置する上枠部21と、下側に位置する下枠部22、及び幅方向両側に位置する縦枠部23、23に区分される。これらフレーム2を構成する上枠部21と下枠部22、及び縦枠部23、23の内、室内側を向く室内側見付け面21aの見付け幅と室外側を向く室外側見付け面21bの見付け幅が相違する、少なくともいずれかの枠部の見込み方向中間部に、二重サッシ間に形成される空気層6に面する中間部見付け面21cが形成される。
【0059】
「室内側を向く室内側見付け面の見付け幅と室外側を向く室外側見付け面の見付け幅が相違するいずれかの枠部」は図1図2の例では上枠部21と一方の縦枠部23であるが、下枠部22の場合もあれば、全枠部の場合もある。室内側見付け面21aと室外側見付け面21b、及び中間部見付け面21cは必ずしも平坦面である必要はない。
【0060】
中間部見付け面21cは前記のように室内側見付け面21aの見付け幅と室外側見付け面21bの見付け幅が相違する枠部における内側開口部31の内周面(見込み面21f)と外側開口部32の内周面(見込み面21d)との間の段差によって形成される。図1図2の例では上枠部21における内側開口部31の内周面(見込み面21f)と外側開口部32の内周面(見込み面21d)との間に形成された段差によって内側開口部31の内周面と外側開口部32の内周面をつなぐ中間部見付け面21cが形成される。図1図2では上枠部21における内側開口部31の内周面(見込み面21f)が外側開口部32の内周面(見込み面21d)より下に位置するため、中間部見付け面21cは室外側を向いているが、上枠部21における内側開口部31の内周面(見込み面21f)が外側開口部32の内周面(見込み面21d)より上に位置する場合には、中間部見付け面21cは室内側を向く。
【0061】
フレーム2を構成する各枠部21、22、23における内側開口部31の内周面と、外側開口部32の内周面にはそれぞれ内側サッシ4のサッシ枠42と、外側サッシ5のサッシ枠52が配置され、サッシ枠42、52はそれぞれの定着部(アンカー)によって各枠部21、22、23内に定着される。内側開口部31の内周面と外側開口部32の内周面の形状は各サッシ枠42、52内に収納される障子の形態に応じて決まり、図示するように段差が付く場合と平坦面に形成される場合がある。
【0062】
以下では図1図2の例に基づき、「室内側見付け面の見付け幅と室外側見付け面の見付け幅が相違する枠部」を上枠部21に代表させて説明する。図1の例では中間部見付け面21cは室外側(外側サッシ5側)を向いているが、前記のように内側開口部31の内周面が外側開口部32の内周面より上に位置する場合、あるいは壁パネル1が図1の室内側と室外側を入れ換えた形をした場合には、中間部見付け面21cは室内側(内側サッシ4側)を向くことになる。
【0063】
室内側見付け面21aの見付け幅と室外側見付け面21bの見付け幅が相違する枠部(上枠部21)の空気層6に面する中間部見付け面21cと、その枠部(上枠部21)の室内側見付け面21a、もしくは室外側見付け面21bとの間には貫通孔24が貫通して形成される。室内側見付け面の見付け幅と室外側見付け面の見付け幅が相違する枠部は下枠部22、もしくは縦枠部23であることもあり、全枠部であることもある。
【0064】
図示する例では上枠部21と一方の縦枠部23が「室内側見付け面の見付け幅と室外側見付け面の見付け幅が相違する枠部」に該当する。図面では上枠部21にのみ、貫通孔24を形成しているが、図2において一方の縦枠部23の室内側見付け面23aと中間部見付け面23cとの間にも貫通孔24が形成されることがある。中間部見付け面21c、23cが室内側を向く場合には、貫通孔24は中間部見付け面21c、23cと、室外側見付け面21b、23bとの間に形成されることになる。
【0065】
空気層6を通過して貫通孔24から壁パネル1の外部に排出される空気は、貫通孔24が形成された枠部(上枠部21)以外の枠部(下枠部22、縦枠部23)、もしくはその枠部(下枠部22、縦枠部23)に保持される少なくともいずれかのサッシの枠であるサッシ枠42、52、または前記枠部(下枠部22、縦枠部23)とサッシの枠(サッシ枠42、52)との間の少なくともいずれかに形成され、室内、もしくは室外に連通する通気口25から壁パネル1の内部に取り込まれ、空気層6に送り込まれる。
【0066】
図1図2の例では内側サッシ4の、上枠421と下枠422、及び縦枠423、423からなるサッシ枠42をフレーム2の内側開口部31に固定し、各縦枠423に1枚の障子41をそれぞれヒンジ43を介して内開き式に支持させ、下枠422と障子41の下框412との間に、常に開放する空隙(空間)を確保することによりこの空隙を通気口25として利用している。図1図2では障子41の上框411と上枠421との間、及び縦框413と縦枠423との間も空隙が形成されるが、各空隙から取り込まれた室内空気はダクト9の先に接続されたファンによる強制吸気により貫通孔24側へ移動しようとするため、空気層6の下端(下枠部22)側には下枠422と下框412との間の空隙(通気口25)から取り込まれることになる。
【0067】
図1図2ではまた、外側サッシ5の、上枠521と下枠522、及び縦枠523、523からなるサッシ枠52をフレーム2の外側開口部32に固定し、サッシ枠52内に障子51としてのガラスを嵌殺し状態で収納している。この場合、ガラスが直接、サッシ枠52内に飲み込まれるため、上枠521と下枠522、及び縦枠523、523は障子51の一部としての框が一体化した形状をしている。上枠521と下枠522、及び縦枠523、523の内のいずれか一部の枠(上枠521と縦枠523)にはガラスの収納と取り外しを可能にするための押縁524が着脱自在に接続される。
【0068】
図1図2では外側サッシ5のサッシ枠52を框が一体化した形状の上枠521と下枠522、及び縦枠523、523から構成しているが、例えば上枠521の一部の空気層6に面する片(見込み片)と室外に面する片(見付け片)に両者間に連通する孔(開口)を形成し、図4−(b)、(d)に示すようにこの孔を排気口として利用することも可能である。その場合、排気口に強制排気のためのファンを配置することが難しいため、排気は自然に行われることになる。同様に下枠522、もしくは縦枠523の一部の空気層6に面する片(見込み片)と室外に面する片(見付け片)に両者間に連通する孔(開口)を形成し、図4−(c)、(d)に示すようにこの孔を通気口(排気口)25として利用することも可能である。
【0069】
図1の例では貫通孔24は中間部見付け面21cと、上枠部21の室内側見付け面21aとの間に形成されていることで、壁パネル1の外部としては室内側見付け面21aにおいて室内に面するため、貫通孔24は空気層6を通過した空気を室内に還気するための還気口になる。貫通孔24を還気口として使用する場合には、上枠部21の室内側見付け面21aに還気用のダクト8、もしくはチャンバー9が接続される。図1では室内側見付け面21aに、同一高さに配列する複数枚の壁パネル1の貫通孔24からの空気を取り込むためのチャンバー9を接続し、チャンバー9にダクト8を接続している。ダクト8には強制的な吸気のためのファンが接続されることもあるが、ファンを使用することなく、空気層6での対流により自然に空気を循環させることもある。
【0070】
図1に示す断面形状の上枠部21においては、中間部見付け面21cに連続し、空気層6に面する外側開口部32の内周面(見込み面21d)が形成されているため、見込み面21dと室外側見付け面21bとの間を貫通する貫通孔21eを形成することで、その貫通孔21eを上枠部21における空気層6と室外が連通する排気口として利用することができる。
【0071】
同様に、図2に示す一方の断面形状の縦枠部23においては、中間部見付け面23cに連続し、空気層6に面する外側開口部32の内周面(見込み面23d)が形成されているため、見込み面23dと室外側見付け面23bとの間を貫通する貫通孔23eを形成することで、縦枠部23に空気層6と室外が連通する排気口を形成することが可能である。
【0072】
また図1に示す例では、貫通孔24が上枠部21の中間部見付け面21cと室内側見付け面21aとの間に形成されているが、フレーム2が室内側と室外側の向きを入れ換えて使用されれば、貫通孔24は上枠部21の中間部見付け面21cと室外側見付け面21bとの間に形成されることになる。フレーム2が図1の状態にあるとき、貫通孔24は壁パネル1の外部としては室内側見付け面21aにおいて室内に面するため、貫通孔24は空気層6を通過した空気を室内に還気するための還気口になる。図1の状態の室内側と室外側を入れ換えてフレーム1を使用したときには、貫通孔24は空気層6を通過した空気を室外に排出するための排気口になる。
【0073】
図4−(a)〜(d)は壁パネル1に形成した通気口25と貫通孔24、21eとの間における吸気と排気(還気)の形態(パターン)例を示す。(a)は図1に示した空気の流れと同じく、フレーム2の下枠部22と内側サッシ4の下框412との間に形成した通気口25から室内空気を空気層6に取り込み、フレーム2の上枠部21に形成した貫通孔24から還気(排気)する場合、(b)は下枠部22と下框412との間の通気口25から室内空気を空気層6に取り込み、上枠部21に形成した排気口(貫通孔21e)、もしくは上枠部21と外側サッシ5の上框511との間に形成した上記排気口から室外へ排気する場合である。
【0074】
図4−(c)はフレーム2の下枠部22に形成した通気口25としての孔(開口)から室外空気を空気層6に取り込み、フレーム2の上枠部21に形成した貫通孔24から還気(排気)する場合、(d)はフレーム2の下枠部22の通気口25から室外空気を空気層6に取り込み、フレーム2の上枠部21に形成した排気口(貫通孔21e)、もしくは上枠部21と外側サッシ5の上框511との間に形成した上記排気口から排気する場合である。なお、(a)〜(d)のいずれの場合も、矢印で示すように空気の流れ、すなわち空気の取り込みと排気の位置が逆になることもある。
【0075】
図5は前記のように図1図2に示す壁パネル1のフレーム2における内側開口部31と外側開口部32と、それぞれの内周面の形状に対応した形状の内側サッシ4及び外側サッシ5との関係を示している。ここに示すように図1図2の例ではフレーム2の内側開口部31と外側開口部32の下枠部22と一方の縦枠部23における内周面は揃えられ、上枠部21と他方の縦枠部23における内周面に段差が形成されている。
【0076】
図6図1図2に示す同一の壁パネル1を建物の梁、もしくはスラブ等に支持させながら、水平方向と鉛直方向に配列させた外壁の外観を示す。同一の壁パネル1はフレーム2の開口部3に対する外側開口部32(外側サッシ5)の配置と寸法が同一であることを言う。図6に示す壁パネル1の配列例では各壁パネル2のフレーム2に対する外側サッシ5の寸法と位置が統一されているため、同一の壁パネル1が整然と配列している外観になる。
【0077】
図7はフレーム2の開口部3に対する外側開口部32(外側サッシ5)の配置と寸法が壁パネル1毎に異なり、異なる外観を有する複数枚の壁パネル1を建物の梁、もしくはスラブ等に支持させながら、水平方向と鉛直方向に配列させた外壁の外観を示す。この場合、各壁パネル2のフレーム2に対する外側サッシ5の寸法と位置が統一されていないため、外側サッシ5、あるいはフレーム2の開口部3が不規則に配列している外観になる。
【符号の説明】
【0078】
1……二重サッシ内蔵壁パネル、2……フレーム、
21……上枠部、21a……室内側見付け面、21b……室外側見付け面、21c……中間部見付け面、21d……見込み面、21e……貫通孔、21f……見込み面、
22……下枠部、
23……縦枠部、23a……室内側見付け面、23b……室外側見付け面、23c……中間部見付け面、23d……見込み面、23e……貫通孔、23f……見込み面、
24……貫通孔、25……通気口、
3……開口部、
31……内側開口部、32……外側開口部、
4……内側サッシ、
41……障子、
411……上框、412……下框、413……縦框、
42……サッシ枠、
421……上枠、422……下枠、423……縦枠、43……ヒンジ、
5……外側サッシ、
51……障子、
52……サッシ枠、
521……上枠、522……下枠、523……縦枠、524……押縁、
6……空気層、
7……外壁、
8……ダクト、9……チャンバー。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7