(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092557
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】放電ランプ用電極の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 9/02 20060101AFI20170227BHJP
H01J 61/06 20060101ALI20170227BHJP
H01J 61/073 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
H01J9/02 L
H01J61/06 B
H01J61/073 B
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-212807(P2012-212807)
(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公開番号】特開2014-67623(P2014-67623A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】391001619
【氏名又は名称】長野県
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】早川 壮則
(72)【発明者】
【氏名】芹澤 和泉
(72)【発明者】
【氏名】小平 宏
(72)【発明者】
【氏名】石鍋 栄彦
(72)【発明者】
【氏名】本多 友彦
(72)【発明者】
【氏名】古畑 肇
(72)【発明者】
【氏名】小松 豊
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 秀一
【審査官】
鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−015008(JP,A)
【文献】
特開平03−283341(JP,A)
【文献】
特開2009−266571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 9/02
H01J 61/06
H01J 61/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極先端部の少なくとも一部を構成し、エミッターを含有する柱状の先端固体部材と、少なくとも電極胴体部を構成し、前記先端固体部材の接合面よりも径の大きい接合面を有する柱状の胴体固体部材を、互いの接合面を介して固相接合させ、
固相接合によって生成された電極素材に対し、テーパー状の電極先端部を形成するように切削加工を施す
ことを特徴とする放電ランプ用電極の製造方法。
【請求項2】
電極先端部の少なくとも一部を構成し、エミッターを含有する柱状の先端固体部材と、前記先端固体部材の接合面と径が同じ接合面を有する柱状の中間固体部材を、互いの接合面を介して固相接合させ、また、
前記中間固体部材と、前記中間固体部材の接合面よりも径の大きな接合面を有し、少なくとも電極胴体部を構成する柱状の胴体固体部材を、互いの接合面を介して固相接合させ、
固相接合によって生成された電極素材に対し、テーパー状の電極先端部を形成するように切削加工を施す
ことを特徴とする放電ランプ用電極の製造方法。
【請求項3】
前記電極素材において、前記先端固体部材と前記胴体固体部材の接合面周縁部分を少なくとも切削することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の放電ランプ用電極の製造方法。
【請求項4】
前記電極素材において、前記先端固体部材の接合面周縁部分に形成された楔部分を除去するように、切削加工することを特徴とする請求項1および請求項3のいずれかに記載の放電ランプ用電極の製造方法。
【請求項5】
前記電極素材において、前記先端固体部材の接合面中央部だけを残すように、切削加工することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の放電ランプ用電極の製造方法。
【請求項6】
前記先端固体部材の接合面の径と、前記胴体固体部材の接合面の径との比が、0.05<D1/D2<1を満たすことを特徴とする請求項1に記載の放電ランプ用電極の製造方法。
【請求項7】
前記先端固体部材が、トリエーテッドタングステンから成ることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の放電ランプ用電極の製造方法。
【請求項8】
固相接合として、SPS接合を施すことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の放電ランプ用電極の製造方法。
【請求項9】
電極先端部の少なくとも一部を構成する柱状の先端固体部材と、前記先端固体部材の接合面と径が同じ接合面を有する中間固体部材を、互いの接合面を介して固相接合させ、また、
前記中間固体部材と、前記中間固体部材の接合面よりも径の大きな接合面を有し、少なくとも電極胴体部を構成する柱状の胴体固体部材を、互いの接合面を介して固相接合させ、固相接合によって生成された電極素材に対し、テーパー状の電極先端部を形成するように切削加工を施す
ことを特徴とする放電ランプ用電極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置等に利用される放電ランプに関し、特に、複数の部材を接合させる放電ランプ用電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放電ランプでは、高出力化に伴い、金属種類、結晶特性などが異なる部材を接合させて電極を形成する。例えば、トリウムなどのエミッターが含有される金属部材を電極先端部、純タングステンなどの高融点金属部材を胴体部とし、2つの金属部材を互いに接合させる。これにより、電極全体のトリウム含有量を削減させる。
【0003】
接合方法としは、固相接合の一つである拡散接合が用いられる(特許文献1参照)。そこでは、電極先端部を構成する円柱状トリエーテッドタングステン(トリタン)部材と、胴体部を構成する円柱状タングステン部材を用意する。そして、互いに径が等しい接触面同士を当接させ、部材両側から圧力を加えながら通電加熱する。拡散接合の後、一体化した部材の先端部側を円錐状に切削加工し、電極形状を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−15007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トリエーテッドタングステン部材の断面は、タングステン部材の断面と比べて平滑度が低い。この平滑度の差は、径が大きくなるほど顕著である。そのため、接合強度が接合面において不均一となり、安定した接合強度が得られない。
【0006】
また、通電加熱によって拡散接合させる場合、表皮効果により表面側に電流が流れやすく、接合面の周縁付近の方が中心部よりも接合強度が大きい。そのため、拡散接合させた後に切削加工によって先端部分を形成すると、接合強度の大きい表面付近部分がより多く削られることになり、接合強度が低下してしまう。
【0007】
したがって、トリエーテッドタングステンなどエミッターを含有した先端部を構成する部材と、胴体部を構成する部材を、接合強度の不安定化なく固相接合させる必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の放電ランプ用電極の製造方法は、電極先端部の少なくとも一部を構成し、エミッターを含有する柱状の先端固体部材と、少なくとも電極胴体部を構成し、先端固体部材の接合面よりも径の大きい接合面を有する柱状の胴体固体部材を、互いの接合面を介して固相接合させ、固相接合によって生成された電極素材に対し、テーパー状の電極先端部を形成するように切削加工を施すことを特徴とする。
【0009】
例えば、電極として陰極が製造され、放電ランプに用いられる。エミッターとしては、トリエーテッドタングステンなどが適用可能であり、先端固体部材、胴体固体部材は、その形状は任意であり、また、材質として金属材料、あるいはセラミック材料などが適用可能である。また、固相接合方法としては、様々な拡散接合が適用可能であり、特に、SPS接合によって固相接合させることが可能である。
【0010】
本発明では、先端固体部材の径が、胴体固体部材の径よりも小さい。そして、固相接合の後に切削加工を行うことによって、楔部分が生じやすく、接合強度の弱い接合面端部だけを効率よく取り除いた電極を構成することが可能となる。
【0011】
例えば、切削工程のとき、電極素材において、先端固体部材と胴体固体部材の接合面周縁部分を少なくとも切削することが可能である。特に、電極素材において、先端固体部材の接合面周縁部分に形成された楔部分を除去するように、切削加工することができる。また、電極素材において、先端固体部材の接合面中央部だけを残すように、切削加工することもできる。
【0012】
このような切削加工を可能にするため、先端固体部材の接合面の径と、胴体固体部材の接合面の径との比が、0.05<D1/D2<1を満たすように構成してもよい。
【0013】
一方、本発明の他の局面における放電ランプ用電極の製造方法は、さらに中間部材を設けた電極の製造方法であり、電極先端部の少なくとも一部を構成し、エミッターを含有する柱状の先端固体部材と、先端固体部材の接合面と径が同じ接合面を有する柱状の中間固体部材を、互いの接合面を介して固相接合させ、また、中間固体部材と、中間固体部材の接合面よりも径の大きな接合面を有し、少なくとも電極胴体部を構成する柱状の胴体固体部材を、互いの接合面を介して固相接合させ、固相接合によって生成された電極素材に対し、テーパー状の電極先端部を形成するように切削加工を施すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電極性能を落とすことなく、複数の部材から電極を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1の実施形態である放電ランプを模式的に示した平面図である。
【
図4】第2の実施形態における切削加工の工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1は、第1の実施形態である放電ランプを模式的に示した平面図である。
【0018】
ショートアーク型放電ランプ10は、パターン形成する露光装置(図示せず)の光源などに使用可能な放電ランプであり、透明な石英ガラス製の放電管(発光管)12を備える。放電管12には、陰極20、陽極30が所定間隔をもって対向配置される。
【0019】
放電管12の両側には、対向するように石英ガラス製の封止管13A、13Bが放電管12と一体的に設けられており、封止管13A、13Bの両端に、口金19A、19Bが配置されている。
【0020】
放電ランプ10は、陽極30と陰極20が放電ランプ10の同軸上に配置されている。陰極20は、円錐状の先端部20Aと、胴体部20Bとを備えている。
【0021】
封止管13A、13Bの内部には、金属性の陰極20、陽極30を支持する導電性の電極支持棒17A、17Bが配設され、金属リング(図示せず)、モリブデンなどの金属箔16A、16Bを介して導電性のリード棒15A、15Bにそれぞれ接続される。
【0022】
封止管13A、13Bは、封止管13A、13B内に設けられるガラス管(図示せず)と溶着しており、これによって、水銀、および希ガスが封入された放電空間DSが封止される。
【0023】
リード棒15A、15Bは外部の電源部(図示せず)に接続されており、リード棒15A、15B、金属箔16A、16B、そして電極支持棒17A、17Bを介して陰極20、陽極30の間に電圧が印加される。放電ランプ10に電力が供給されると、電極間でアーク放電が発生し、水銀による輝線(紫外光)が放射される。
【0024】
図2は、陰極20の概略的断面図である。
【0025】
陰極20は、2つの金属部材110、120を接合させ、その後切削加工によって成形された電極構造を採用している。金属部材110は、先端部20Aの一部を構成し、金属部材120は、柱状の胴体部20Bを構成するとともに、先端部20Aの胴体側部分を構成する。
【0026】
金属部材110は、トリア(ThO2:二酸化トリウム)を含有したタングステンであるトリエーテッドタングステンから成る金属部材であり、金属部材120は、金属部材110よりも熱伝導率の高い金属(ここでは、純タングステン)によって構成される。
【0027】
金属部材110、120は、放電プラズマ焼結(SPS(Spark Plasma Sintering))に従って拡散接合している。そのため、電極軸Eに垂直な接合面S付近には、拡散層が形成されている。金属結晶の径は、接合面Sに沿ってほぼ均一である。また、電極軸Eに関しては、接合面S付近を除いて結晶径が略均一である。このような接合面Sを挟む拡散層の形成により、熱伝導特性、導電性に関し、接合面Sに沿ってバラツキがない。
【0028】
図3は、陰極20の製造工程を示した図である。
図3を用いて、SPS接合および切削加工について説明する。なお、陽極についても同様に製造することが可能である。
【0029】
まず、円柱状の金属部材110、120をそれぞれ成形する。このとき、金属部材110の径D1は、金属部材120の径D2よりも小さくなるように成形される。ここでは、3<D1<30、5<D2<60とするとき(いずれもmm単位)、0.05<D1/D2<1を満たすように、径D1、D2が定められている。上限値は、少なくとも後述する楔部分を削除するように定められる。また、下限値は、電極先端部の傾斜角度、接合条件などに従って定められる。
【0030】
用意された金属部材110、120に対し、SPS接合処理が行われる。具体的には、金属部材110、120それぞれ一方の表面(以下、接合面という)110S、120Sを互いに当接させ、その反対側の表面それぞれにパンチ(図示せず)を当てる。このとき、互いの中心軸が一致するように金属部材110、120を接触させる。両パンチには電極が接続されており、装置内を真空雰囲気にした後、電圧が印加される。
【0031】
通電とともに、加圧機構(図示せず)によって両パンチの間には所定の圧力が加えられる。通電によって生じる放電プラズマにより、所定の温度まで一定時間で昇温された後、圧力が加えられた状態で一定時間保持する。これにより、電極素材200が得られる。
【0032】
そして、生成された電極素材200に対し、切削加工が施される。ここでは、破線Kで示す円錐状の電極先端面を形成するように、金属部材110、120それぞれが部分的に切削される。金属部材110は、接合面110Sの中央部110T以外を削り出し、金属部材120は、接合面120Sの周縁部を削り取る。切削方法、切削器具等は、従来知られた方法、器具などで行われる。
【0033】
破線Kで示す切断面の位置、すなわち電極外周面を形成する位置は、金属部材110、金属部材120の径D1、D2の大きさおよびその差、電極外周面の傾斜角度、金属部材110の厚みなどに従って定められる。特に、金属部材110の接合面周縁部110Tを少なくとも除去し、接合面中央部分110Cを残すように定められる。
【0034】
切削後の電極素材200は、円錐状の金属部分110、一部が円錐台状でその他の部分が円柱状の金属部分120から構成され、
図2に示した電極先端部20A、胴体部20Bから成る陰極20が成形される。
【0035】
このように本実施形態によれば、放電ランプ10にトリエーテッドタングステンから成る電極先端部20Aを有する陰極20を、SPS接合によって接合させる。SPS接合の工程では、トリエーテッドタングステンからなる円柱状金属部材110と、純タングステンであって金属部材110の径D1より大きな径D2を有する円柱状金属部材120を、接合面110S、120Sを介して通電加熱し、SPS接合させる。その後、破線Kで示す断面が電極外周面となるように、切削加工が施される。
【0036】
トリウム成分を含む金属部材110の接合面110Sは、純タングステンの金属部材120の接合面120Sに比べて平滑度が低い。その差は、径が大きいほど顕著になる。しかしながら、接合面120の径D2より小さい接合面110Aの径D1が相対的に小さいため、固相接合後にその影響が現れにくくなり、接合強度低下を抑えることができる。
【0037】
また、金属部材110、120との物性の違いにより、接合面端部付近では、部分的に接合していない微小な楔部分が電極軸垂直方向に沿って生じる。本実施形態では、金属部材110の接合面周縁部110Tを切削することにより、SPS接合時に接合面周縁部110Tに形成される楔を除去することができる。その結果、接合強度の低下を抑えることができる。
【0038】
特に、楔部分だけを除去するように金属部材110の切削部分をできる限り少なくすることによって、金属部材110の径D1を金属部材120の径D2により一層近づけることができる。これは、SPS接合時に加圧力の増加を可能にし、接合強度を大きくすることができる。
【0039】
一方、SPS接合時に通電させると、表皮効果によって、金属部材110、120の外周面付近の接合強度と比較して、接合面中央部分の接合強度が小さくなる。しかしながら、金属部材110の径D1が相対的に小さいため、表皮効果の影響が小さくなる。また、接合強度が大きい金属部材110の外周付近を切削する範囲が比較的少なくなる。従って、互いに径が等しい接触面同士を当接させた場合と比較して、中央部の接合強度が大きくなる。
【0040】
トリエーテッドタングステンから成る金属部材110では、その表面付近に二酸化トリウムが存在しない部分が生じることがある。しかしながら、SPS接合後の切削加工によって金属部材110の表層部が除去されるため、二酸化トリウム欠損によるアーク放電の不安定化を防ぐことができる。さらに、SPS接合後に切削加工を行うことで、接合面径方向に段差が生じない。その結果、ランプ点灯時に異常放電が発生しない。
【0041】
金属部材の径のサイズ、電極先端面の傾斜角度、先端面断面形状は任意であり、段差のない平坦な外周面を持つように切削し、テーパー状の電極先端部を形成するように構成することが可能である。また、金属部材の材質、形状も任意であり、電極先端部にトリウム以外のエミッターが含有されるように固体部材を構成することも可能であり、金属部材以外の材質(セラミック、カーボンなど)で胴体部を構成することも可能である。さらに、電極先端部をトリエーテッドタングステンなどのエミッター含有部材と胴体部分の固体部材両方を含むように構成してもよい。
【0042】
次に、
図4を用いて、第2の実施形態である放電ランプについて説明する。第2の実施形態では、3つの金属部材を接合させて陰極を成形する。それ以外の構成については、実質的に第1の実施形態と同じである。
【0043】
図4は、第2の実施形態における切削加工の工程を示した図である。
【0044】
第2の実施形態では、円柱状の金属部材210、220、230をSPS接合することによって電極素材300が成形される。このとき、それぞれ部材の軸が一致するように接合される。金属部材210はトリエーテッドタングステンから成り、金属部材220、230は純タングステンから成る。
【0045】
金属部材210、220の径J1、J2は等しく、金属部材230の径J3は、金属部材の径J2よりも大きい。そして、電極外周面に相当する切断面Kは、
図4に示すように定められる。具体的には、金属部材220について、接合面S2における外周縁220T付近を削除し、金属部材210について、接合面S1における中央部分210Cのみ残すように切削する。
【0046】
その結果、陰極20’が形成される。電極先端部20A’の接合面S1、S2は拡散接合されており、径方向に段差はない。電極胴体部20B’の割合が大きい。なお、金属部材220については、トリエーテッドタングステンを含む金属部材で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0047】
10 放電ランプ
20 陰極
110 金属部材(先端固体部材)
120 金属部材(胴体固体部材)
S 接合面