特許第6092562号(P6092562)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6092562過給機用のコンプレッサハウジング及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092562
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】過給機用のコンプレッサハウジング及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/42 20060101AFI20170227BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F04D29/42 P
   F02B39/00 G
   F02B39/00 T
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-220226(P2012-220226)
(22)【出願日】2012年10月2日
(65)【公開番号】特開2014-70628(P2014-70628A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年6月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000185488
【氏名又は名称】株式会社オティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 智己
(72)【発明者】
【氏名】磯谷 知之
(72)【発明者】
【氏名】松井 裕樹
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 実開平03−068529(JP,U)
【文献】 特開昭64−073197(JP,A)
【文献】 特開2011−231620(JP,A)
【文献】 特開2009−264388(JP,A)
【文献】 特開2005−140001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/42
F02B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブレードを有する過給機用のインペラを収容可能に構成してなると共に、上記インペラに向けて空気を吸い込む吸気口と、上記インペラから吐き出された空気を導入するスクロール室とを備えた過給機用のコンプレッサハウジングの製造方法であって、
金属製の環状支持部材における内周面に樹脂を射出成形することにより滑り部材を設けて、上記インペラに対向するシュラウド面を備えた滑り部材付きリングを形成する工程と、
上記吸気口及び上記スクロール室を備えた金属製のハウジング本体に対して、上記滑り部材付きリングを上記環状支持部材において圧入する工程とを有することを特徴とする過給機用のコンプレッサハウジングの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、上記環状支持部材は、上記ハウジング本体と同じ材料からなることを特徴とする過給機用のコンプレッサハウジングの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記環状支持部材は、内周面に、径方向及び軸方向に向かって凹んだ複数の溝部を設けてなり、上記滑り部材付きリングの形成工程においては、上記溝部に上記樹脂を充填しつつ上記滑り部材を成形することにより、該滑り部材と上記環状支持部材とが係合した状態で上記滑り部材付きリングを形成することを特徴とする過給機用のコンプレッサハウジングの製造方法。
【請求項4】
複数のブレードを有する過給機用のインペラを収容可能に構成してなると共に、上記インペラに向けて空気を吸い込む吸気口と、上記インペラから吐き出された空気を導入するスクロール室とを備えた過給機用のコンプレッサハウジングにおいて、
上記吸気口及び上記スクロール室を形成する金属製のハウジング本体と、該ハウジング本体に圧入されて上記インペラに対向するシュラウド面を形成する滑り部材付きリングとを有し、
該滑り部材付きリングは、上記シュラウド面を備えた樹脂製の滑り部材と、該滑り部材をその外周から支持する金属製の環状支持部材とからなり、
上記滑り部材付きリングは、上記環状支持部材において、上記ハウジング本体に対して圧入されており、
上記環状支持部材は、内周面に、径方向に向かって凹んだ溝部及び軸方向に向かって凹んだ溝部を、それぞれ周方向に沿って連続して設けてなり、
該溝部に上記滑り部材の一部が充填されることにより、該滑り部材と上記環状支持部材とが係合していることを特徴とする過給機用のコンプレッサハウジング。
【請求項5】
請求項4において、上記環状支持部材は、上記ハウジング本体と同じ材料からなることを特徴とする過給機用のコンプレッサハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のブレードを有するインペラを収容可能に構成された過給機用のコンプレッサハウジング及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のターボチャージャ等の過給機に用いられるコンプレッサ(圧縮機)は、複数のブレードを有するインペラを収容可能に構成されていると共に、インペラに向けて空気を吸い込む吸気口と、インペラから吐き出された空気を導入するスクロール室とを備えたコンプレッサハウジングを有している。
【0003】
上記構成のコンプレッサにおいては、インペラの複数のブレードとコンプレッサハウジングにおけるインペラに対向するシュラウド面との隙間をできる限り小さくすることで、圧縮効率を高めることができる。ところが、この隙間を小さくすると、例えば振動やインペラ回転軸の振れ等によってインペラのブレードがコンプレッサハウジングのシュラウド面に接触することがあり、この場合にはインペラが損傷してしまうおそれがある。
【0004】
そこで、従来、コンプレッサハウジングにおけるシュラウド面を形成する部分に樹脂で構成された滑り部材を配置した構造が提案されている。これによれば、万が一振動やインペラ回転軸の振れ等によってインペラのブレードがコンプレッサハウジングのシュラウド面に接触しても、そのシュラウド面を形成する部分に取り付けられた滑り部材が削れるだけであり、インペラのブレードとコンプレッサハウジングのシュラウド面との間の隙間は、依然として小さいままで維持される。
【0005】
そして、このような滑り部材を、コンプレッサハウジングにおけるシュラウド面を形成する部分に、成形型を用いて射出成形することにより配置した過給機用のコンプレッサハウジング9及びその製造方法が提案されている(特許文献1)。
すなわち、図11図12に示すごとく、シュラウド面を形成する型面95を有すると共に、樹脂を注入するための注入口96及びエア抜きが可能なエア抜き孔97を設けた射出用成形型92を、矢印X3に示すようにコンプレッサハウジング9における所定の位置に配置し、注入口96から樹脂を注入する(矢印X4)。これにより、コンプレッサハウジング9におけるシュラウド面を形成する部分に、滑り部材91を配置する。なお、注入口96から樹脂を注入する際、成形型のキャビティ内に樹脂が充填されるのに伴い、キャビティ内のエアをエア抜き孔97から抜くことができる(矢印X5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−299381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載のコンプレッサハウジング9の製造方法においては、実際には図11図12に示すごとく、固定用成形型93内にコンプレッサハウジング9を配置したうえで、射出用成形型92を用いて滑り部材91を成形する必要がある。このように、滑り部材91をコンプレッサハウジング9に対して直接射出成形するためには、固定用成形型93が大型化してしまい、型費が高くなるため、コンプレッサハウジングの生産コストが高くなる。
また、コンプレッサハウジング9を固定用成形型93にセットする際の位置決め精度が要求されるが、大型の固定用成形型93の型精度を高めることは困難であり、また体格の大きいコンプレッサハウジング9自体を大型の固定用成形型93へ取付けるときの取付精度も高くしにくい。
【0008】
さらに、例えばアウトレットポート(図10参照)の形状の変更等、コンプレッサハウジング9の形状が変わると、個々のコンプレッサハウジング9の形状に応じた固定用成形型93の作製が必要となり、生産コストの上昇を招くこととなる。
【0009】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、滑り部材を容易かつ高精度に形成することができる、低コストな過給機用のコンプレッサハウジング及びその製造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、複数のブレードを有する過給機用のインペラを収容可能に構成してなると共に、上記インペラに向けて空気を吸い込む吸気口と、上記インペラから吐き出された空気を導入するスクロール室とを備えた過給機用のコンプレッサハウジングの製造方法であって、
金属製の環状支持部材における内周面に樹脂を射出成形することにより滑り部材を設けて、上記インペラに対向するシュラウド面を備えた滑り部材付きリングを形成する工程と、
上記吸気口及び上記スクロール室を備えた金属製のハウジング本体に対して、上記滑り部材付きリングを上記環状支持部材において圧入する工程とを有することを特徴とする過給機用のコンプレッサハウジングの製造方法にある(請求項1)。
【0011】
第2の発明は、複数のブレードを有する過給機用のインペラを収容可能に構成してなると共に、上記インペラに向けて空気を吸い込む吸気口と、上記インペラから吐き出された空気を導入するスクロール室とを備えた過給機用のコンプレッサハウジングにおいて、
上記吸気口及び上記スクロール室を形成する金属製のハウジング本体と、該ハウジング本体に圧入されて上記インペラに対向するシュラウド面を形成する滑り部材付きリングとを有し、
該滑り部材付きリングは、上記シュラウド面を備えた樹脂製の滑り部材と、該滑り部材をその外周から支持する金属製の環状支持部材とからなり、
上記滑り部材付きリングは、上記環状支持部材において、上記ハウジング本体に対して圧入されており、
上記環状支持部材は、内周面に、径方向に向かって凹んだ溝部及び軸方向に向かって凹んだ溝部を、それぞれ周方向に沿って連続して設けてなり、
該溝部に上記滑り部材の一部が充填されることにより、該滑り部材と上記環状支持部材とが係合していることを特徴とする過給機用のコンプレッサハウジングにある(請求項4)。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明の過給機用のコンプレッサハウジングの製造方法においては、上記滑り部材付きリングの形成工程にて、上記環状支持部材における内周面に樹脂を射出成形することにより上記滑り部材を設けて上記滑り部材付きリングを形成する。これによって、上記滑り部材の射出成形をハウジング本体に直接行うのでなく、上記ハウジング本体とは別部材である、体格の小さい上記環状支持部材に対して射出成形できる。そのため、上記射出成形に用いる成形型の小型化を図ることができ、型費を低減させることができる。そのため、上記コンプレッサハウジングの生産コストの低減も図ることができる。
【0013】
また、上記環状支持部材は、ハウジング本体に比べて充分に小型である。そのため、上記環状支持部材を固定用成形型にセットする際の位置決めも容易である。また、上記環状支持部材をセットする成形型の型精度も高めやすい。したがって、容易に高精度な滑り部材を成形できる。
【0014】
また、上記ハウジング本体に対して、上記滑り部材付きリングを上記環状支持部材において圧入する。これによって、例えばアウトレットポートの形状の変更等、コンプレッサハウジングの形状を変更しても、上記滑り部材付きリングの環状支持部材を圧入する被圧入部の形状及び大きささえ共通化しておけば、同形状の上記滑り部材付きリングを汎用的に使用することができる。すなわち、個々のコンプレッサハウジングの形状に応じて異なる成形型を作製するがことが不要となり、コンプレッサハウジングの生産コストを大幅に低減することもできる。
【0015】
第2の発明の過給機用のコンプレッサハウジングは、上記ハウジング本体と、ハウジング本体に圧入された上記滑り部材付きリングとを有する。それゆえ、ハウジング本体とは個別に滑り部材付きリングを形成することが可能となり、上記滑り部材の形成を容易に行うことができる。
【0016】
また、例えば上記滑り部材を射出成形によって形成する場合、上記ハウジング本体に直接射出成形するのではなく、上記ハウジング本体とは別部材である体格の小さい上記環状支持部材に対して射出成形することができる。そのため、上記射出成形に用いる成形型の小型化を図ることができ、型費を低減させることができる。そのため、上記コンプレッサハウジングの生産コストの低減も図ることができる。
【0017】
また、上記ハウジング本体とは別部材の上記滑り部材付きリングを個別に作製できるため、例えばアウトレットポートの形状の変更等、コンプレッサハウジングの形状が変更しても、上記滑り部材付きリングの環状支持部材を圧入する被圧入部の形状及び大きささえ共通化しておけば、同形状の上記滑り部材付きリングを汎用的に使用することができる。すなわち、個々のコンプレッサハウジングの形状に応じて異なる成形型を作製することが不要となり、コンプレッサハウジングの生産コストを大幅に低減することもできる。
【0018】
以上のごとく、本発明によれば、滑り部材を容易かつ高精度に形成することができる、低コストな過給機用のコンプレッサハウジング及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例における、コンプレッサハウジングの全体構造を示す断面図。
図2】実施例における、滑り部材付きリングの形成工程の環状支持部材に滑り部材を射出成形する成形型の断面図。
図3】実施例における、環状支持部材の断面図。
図4】実施例における、環状支持部材の斜視図。
図5】実施例における、環状支持部材の内周面に滑り部材を形成した滑り部材付きリングの断面図。
図6】実施例における、環状支持部材の内周面に滑り部材を形成した滑り部材付きリングの斜視図。
図7】実施例における、圧入の工程の様子を示す断面図。
図8】実施例における、圧入の工程の様子を示す斜視図。
図9】実施例における、コンプレッサハウジングの斜視図。
図10】実施例における、アウトレットポートの形状の異なるコンプレッサハウジングの全体構造を示す斜視図。
図11】背景技術における、コンプレッサハウジングへの滑り部材の射出成形前の断面図。
図12】背景技術における、コンプレッサハウジングへの滑り部材の射出成形後の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上記第1及び第2の発明において、上記滑り部材は、上記インペラに対向する上記シュラウド面を形成する。そして、上記滑り部材は、上記インペラのブレードと上記シュラウド面との間の隙間をできる限り小さく維持する役割を果たすものである。
例えば、振動やインペラ回転軸の振れ等によって上記インペラのブレードが上記シュラウド面に接触した場合には、該シュラウド面を形成する上記滑り部材が削られる。そして、上記インペラの上記ブレードと上記シュラウド面との間の隙間は、依然として小さいまま維持される。
【0021】
また、上記滑り部材を構成する材料としては、上述したように、上記インペラの上記ブレードが上記シュラウド面に接触した場合に削られるようにしておく必要があるため、例えば、ナイロン(登録商標)、ポリエステル、ポリイミド等の樹脂やセラミック等を用いることができる。
【0022】
上記第1の発明において、上記環状支持部材は、上記ハウジング本体と同じ材料からなることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記環状支持部材と上記ハウジング本体との熱膨張率を一致させることができるため、温度変化の激しい過給機の使用環境においても、両者の適切な嵌合状態を維持することができ、コンプレッサハウジングの耐久性を向上させることができる。すなわち、激しい温度変化に伴って、上記スクロール室と上記環状支持部材との間の嵌合力が弱まったり、両者間に過大な応力がかかったりすることを防ぐことができる。
【0023】
また、上記環状支持部材は、内周面に、径方向及び軸方向に向かって凹んだ複数の溝部を設けてなり、上記滑り部材付きリングの形成工程においては、上記溝部に上記樹脂を充填しつつ上記滑り部材を成形することにより、該滑り部材と上記環状支持部材とが係合した状態で上記滑り部材付きリングを形成することが好ましい(請求項3)。
【0024】
この場合には、上記複数の溝部により該溝部に充填された樹脂からなる上記滑り部材と、上記環状支持部材の内周面との接触面積をより大きく確保することができ、さらに上記複数の溝部の形状は、径方向及び軸方向に向かって凹状に形成されるため、上記滑り部材が溝部に引っかかり、該滑り部材の径方向内側への抜け防止及び軸方向への抜け防止の効果を得ることができる。
【0025】
上記第2の発明において、上記環状支持部材は、上記ハウジング本体と同じ材料からなることが好ましい(請求項5)。
この場合にも、上記環状支持部材と上記ハウジング本体との熱膨張率を一致させることができるため、温度変化の激しい過給機の使用環境においても、両者の適切な嵌合状態を維持することができ、コンプレッサハウジングの耐久性を向上させることができる。すなわち、激しい温度変化に伴って、上記スクロール室と上記環状支持部材との間に過大な応力がかかったりすることを防ぐことができる。
【0026】
また、上記環状支持部材は、内周面に、径方向及び軸方向に向かって凹んだ複数の溝部を設けてなり、該溝部に上記滑り部材の一部が充填されることにより、該滑り部材と上記環状支持部材とが係合している。
これにより、上記複数の溝部により該溝部に充填された樹脂からなる上記滑り部材と、上記環状支持部材の内周面との接触面積をより大きく確保することができ、さらに上記複数の溝部の形状は、径方向及び軸方向に向かって凹状に形成されるため、上記滑り部材が溝部に引っかかり、該滑り部材の径方向内側への抜け防止及び軸方向への抜け防止の効果を得ることができる。
【実施例】
【0027】
本発明の実施例にかかる過給機用のコンプレッサハウジング及びその製造方法について、図1図10を用いて説明する。
図1に示すごとく、本例のコンプレッサハウジング1は、自動車のターボチャージャ(過給機)に用いられるコンプレッサ(圧縮機)7の外殻を形成するものであり、複数のブレード42を有するインペラ4を収容可能に構成されていると共に、インペラ4に向けて空気A1を吸い込む吸気口11と、インペラ4から吐き出された空気A2を導入するスクロール室12とを備えている。
【0028】
同図に示すごとく、コンプレッサハウジング1は、吸気口11及びスクロール室12を形成する金属製のハウジング本体2と、ハウジング本体2に圧入されてインペラ4に対向するシュラウド面320を形成する滑り部材付きリング3とを有して構成されている。また、滑り部材付きリング3は、シュラウド面320を備えた樹脂製の滑り部材32と、滑り部材32をその外周から支持する金属製の環状支持部材31とから構成される。そして、滑り部材付きリング3は、環状支持部材31において、ハウジング本体2に対して圧入されている。
【0029】
本例において、環状支持部材31は、ハウジング本体2と同じ材料により構成され、例えば、環状支持部材31及びハウジング本体2は共に、アルミニウム製のダイキャスト品により構成されている。また、滑り部材32は、ポリイミド樹脂によって構成されている。
【0030】
図1に示すごとく、ハウジング本体2は、吸気口11を形成する筒状の吸気口形成部21と、スクロール室12を形成するスクロール室形成部23を一体的に形成してなる。また、スクロール室形成部23の内側に、吸気口11と連通する吸気通路221を形成すると共に滑り部材付きリング3が内側に圧入される筒状の被圧入部22が形成されている。
被圧入部22は、吸気口11と反対側から、座繰られるように略円環状に形成されている。また、ハウジング本体2は、滑り部材32のシュラウド面320からスクロール室12に向かって延びるディフューザ面240を形成するディフューザ部24を有する。
【0031】
また、図1図5図6に示すごとく、滑り部材付きリング3における環状支持部材31は、外周面311と、ハウジング本体2の被圧入部22の底面222に当接する当接面312とを有する。さらに、滑り部材付きリング3は外周面311と当接面312との間にテーパ面311aを形成してなる。
【0032】
そして、環状支持部材31の外周面311がハウジング本体2の被圧入部22の内側に対して圧入されて形成されている。すなわち、滑り部材付きリング3は、環状支持部材31において、ハウジング本体2に対して圧入されて構成されている。
ここで、図5に示すごとく、環状支持部材31には、内周面313に径方向及び軸方向に向かって凹んだ複数の溝部310が設けられている。そして、溝部310に滑り部材32の一部が充填されることにより、滑り部材32と環状支持部材31とが係合している。
【0033】
図1に示すごとく、滑り部材付きリング3における滑り部材32の内周面321には、インペラ4に対向するシュラウド面320が形成されている。滑り部材32のシュラウド面320は、インペラ4の回転軸Xを含む断面において、凸となる曲面状に形成されており、ハウジング本体2のディフューザ部24のディフューザ面240と連続している。
【0034】
ここで、同図に示すごとく、インペラ4は、滑り部材付きリング3の内側に配置されており、回転軸40を中心に回転可能に取り付けられている。また、インペラ4は、ハブ41の外周面から周方向に並ぶ複数のブレード42を突出させている。複数のブレード42は、滑り部材32のシュラウド面320に対向して配置されている。
【0035】
図1に示すごとく、ハウジング本体2のディフューザ部24のディフューザ面240に対向する位置には、コンプレッサハウジング1の吸気側X1とは反対の側(吐出側X2)を覆うバックプレート部51が設けられている。
また、ハウジング本体2のディフューザ部24のディフューザ面240とバックプレート部51との間には、インペラ4から吐き出された空気A2を昇圧させるディフューザ部13が形成されている。
【0036】
また、コンプレッサハウジング1を有するコンプレッサ7においては、インペラ4の回転により、吸気口11から吸気通路221を介して、インペラ4へと空気A1が吸い込まれる。そして、インペラ4のブレード42により加速され、インペラ4から吐き出された空気A2は、ディフューザ部13において昇圧され、スクロール室12に導入される。
【0037】
次に、本例のコンプレッサハウジング1の製造方法について説明する。
まず、図2図6に示すごとく、金属製の環状支持部材31における内周面313に樹脂を射出成形することにより滑り部材32を設けて、インペラ4に対向するシュラウド面320を備えた滑り部材付きリング3を形成する。
【0038】
具体的には、まず、図2に示すごとく、滑り部材32の射出成形用の注入口610を設けた射出用成形型(上型)61と固定用成形型(下型)62からなる成形型6内に環状支持部材31を配置する。このとき、環状支持部材31の内周面313と射出用成形型61の型面611との間に樹脂充填用のキャビティ612が形成される。そして、射出用成形型61の注入口610から樹脂をキャビティ612内に流し込み、固化させる。ここで、図3に示すごとく環状支持部材31の内周面313に設けられた複数の溝部310に、図5に示すごとく樹脂が充填される。これにより、樹脂からなる滑り部材32と環状支持部材31とが係合した状態で、シュラウド面320を備えた滑り部材32を環状支持部材31の内周面313に形成する。その後、滑り部材32を設けた環状支持部材31を成形型6から脱型して滑り部材付きリング3を得る。
【0039】
次いで、図7図9に示すごとく、吸気口11及びスクロール室12を備えた金属製のハウジング本体2に対して、上記滑り部材付きリング3の形成工程において形成した滑り部材付きリング3を圧入する。
具体的には、図7図8に示すごとく、滑り部材付きリング3をハウジング本体2内に吐出側X2から矢印Pに示すように挿入し、環状支持部材31を被圧入部22の内側に圧入する。そして、環状支持部材31の当接面312を被圧入部22の底面222に当接させる。
以上により、図9に示すごとく、コンプレッサハウジング1を得る。
【0040】
次に、本例のコンプレッサハウジング1及びその製造方法における作用効果について説明する。
過給機用のコンプレッサハウジング1の製造方法においては、滑り部材付きリング3の形成工程にて、環状支持部材31における内周面313に樹脂を射出成形することにより滑り部材32を設けて、滑り部材付きリング3を形成する。これによって、滑り部材32の射出成形をハウジング本体2に直接行うのでなく、ハウジング本体2とは別部材である、体格の小さい環状支持部材31に対して射出成形できる。そのため、射出成形に用いる成形型6の小型化を図ることができ、型費を低減させることができる。そのため、コンプレッサハウジング1の生産コストの低減も図ることができる。
【0041】
また、環状支持部材31は、ハウジング本体2に比べて充分に小型である。そのため、環状支持部材31を固定用成形型62にセットする際の位置決めも容易である。また、環状支持部材31をセットする成形型6の型精度も高めやすい。したがって、容易に高精度な滑り部材32を成形できる。
【0042】
また、ハウジング本体2に対して、滑り部材付きリング3を環状支持部材31において圧入する。これによって、例えばアウトレットポート14の形状の変更等、コンプレッサハウジング1の形状を変更しても、滑り部材付きリング3の環状支持部材31を圧入する被圧入部22の形状及び大きささえ共通化しておけば、同種の滑り部材付きリング3を汎用的に使用することができる。すなわち、個々のコンプレッサハウジング1の形状に応じて異なる成形型6を作製するがことが不要となり、コンプレッサハウジング1の生産コストを大幅に低減することもできる。
【0043】
第1の発明において、環状支持部材31は、ハウジング本体2と同じ材料からなる。これにより、環状支持部材31とハウジング本体2との熱膨張率を一致させることができるため、温度変化の激しい過給機の使用環境においても、両者の適切な嵌合状態を維持することができ、コンプレッサハウジング1の耐久性を向上させることができる。すなわち、激しい温度変化に伴って、スクロール室12と環状支持部材31との間の嵌合力が弱まったり、両者間に過大な応力がかかったりすることを防ぐことができる。
【0044】
また、第1の発明において、環状支持部材31は、内周面313に、径方向及び軸方向に向かって凹んだ複数の溝部310を設けてなり、滑り部材付きリング3の形成工程においては、溝部310に樹脂を充填しつつ滑り部材32を成形することにより、滑り部材32と環状支持部材31とが係合した状態で滑り部材付きリング3を形成することができる。
【0045】
これにより、複数の溝部310により溝部310に充填された樹脂からなる滑り部材32と、環状支持部材31の内周面313との接触面積をより大きく確保することができ、さらに複数の溝部310の形状は、径方向及び軸方向に向かって凹状に形成されるため、滑り部材32が溝部310に引っかかり、滑り部材32の径方向内側への抜け防止及び軸方向への抜け防止の効果を得ることができる。
【0046】
過給機用のコンプレッサハウジング1は、ハウジング本体2と、ハウジング本体2に圧入された滑り部材付きリング3とを有する。それゆえ、ハウジング本体2とは個別に滑り部材付きリング3を形成することが可能となり、滑り部材32の形成を容易に行うことができる。
【0047】
また、例えば滑り部材32を射出成形によって形成する場合、ハウジング本体2に直接行うのではなく、ハウジング本体2とは別部材である体格の小さい環状支持部材31に対して射出成形できる。そのため、射出成形に用いる成形型6の小型化を図ることができ、型費を低減させることができる。そのため、コンプレッサハウジング1の生産コストの低減も図ることができる。
【0048】
また、ハウジング本体2とは別部材の滑り部材付きリング3を個別に作製できるため、例えばアウトレットポート14の形状の変更等、コンプレッサハウジング1の形状が変更しても、滑り部材付きリング3の環状支持部材31を圧入する被圧入部22の形状及び大きささえ共通化しておけば、同種の滑り部材付きリング3を汎用的に使用することができる。すなわち、個々のコンプレッサハウジングの形状に応じて異なる成形型6を作製することが不要となり、コンプレッサハウジング1の生産コストを大幅に低減することもできる。
【0049】
第2の発明において、環状支持部材31は、ハウジング本体2と同じ材料からなる。これにより、環状支持部材31とハウジング本体2との熱膨張率を一致させることができるため、温度変化の激しい過給機の使用環境においても、両者の適切な嵌合状態を維持することができ、コンプレッサハウジング1の耐久性を向上させることができる。
すなわち、激しい温度変化に伴って、スクロール室12と環状支持部材31との間の嵌合力が弱まったり、両者間に過大な応力がかかったりすることを防ぐことができる。
【0050】
また、第2の発明において、環状支持部材31は、内周面313に、径方向及び軸方向に向かって凹んだ複数の溝部310を設けてなり、溝部310に滑り部材32の一部が充填されることにより、滑り部材32と環状支持部材31とが係合した状態で滑り部材付きリング3を形成することができる。
【0051】
これにより、複数の溝部310により溝部310に充填された樹脂からなる滑り部材32と、環状支持部材31の内周面313との接触面積をより大きく確保することができ、さらに複数の溝部310の形状は、径方向及び軸方向に向かって凹状に形成されるため、滑り部材32が溝部310に引っかかり、滑り部材32の径方向内側への抜け防止及び軸方向への抜け防止の効果を得ることができる。
【0052】
以上のごとく、本例によれば、滑り部材を容易かつ高精度に形成することができる低コストな過給機用のコンプレッサハウジング及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 コンプレッサハウジング
11 吸気口
12 スクロール室
2 ハウジング本体
3 滑り部材付きリング
31 環状支持部材
313 内周面
32 滑り部材
320 シュラウド面
4 インペラ
図1
図2
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図12