【実施例】
【0027】
本発明の実施例にかかる過給機用のコンプレッサハウジング及びその製造方法について、
図1〜
図10を用いて説明する。
図1に示すごとく、本例のコンプレッサハウジング1は、自動車のターボチャージャ(過給機)に用いられるコンプレッサ(圧縮機)7の外殻を形成するものであり、複数のブレード42を有するインペラ4を収容可能に構成されていると共に、インペラ4に向けて空気A1を吸い込む吸気口11と、インペラ4から吐き出された空気A2を導入するスクロール室12とを備えている。
【0028】
同図に示すごとく、コンプレッサハウジング1は、吸気口11及びスクロール室12を形成する金属製のハウジング本体2と、ハウジング本体2に圧入されてインペラ4に対向するシュラウド面320を形成する滑り部材付きリング3とを有して構成されている。また、滑り部材付きリング3は、シュラウド面320を備えた樹脂製の滑り部材32と、滑り部材32をその外周から支持する金属製の環状支持部材31とから構成される。そして、滑り部材付きリング3は、環状支持部材31において、ハウジング本体2に対して圧入されている。
【0029】
本例において、環状支持部材31は、ハウジング本体2と同じ材料により構成され、例えば、環状支持部材31及びハウジング本体2は共に、アルミニウム製のダイキャスト品により構成されている。また、滑り部材32は、ポリイミド樹脂によって構成されている。
【0030】
図1に示すごとく、ハウジング本体2は、吸気口11を形成する筒状の吸気口形成部21と、スクロール室12を形成するスクロール室形成部23を一体的に形成してなる。また、スクロール室形成部23の内側に、吸気口11と連通する吸気通路221を形成すると共に滑り部材付きリング3が内側に圧入される筒状の被圧入部22が形成されている。
被圧入部22は、吸気口11と反対側から、座繰られるように略円環状に形成されている。また、ハウジング本体2は、滑り部材32のシュラウド面320からスクロール室12に向かって延びるディフューザ面240を形成するディフューザ部24を有する。
【0031】
また、
図1、
図5、
図6に示すごとく、滑り部材付きリング3における環状支持部材31は、外周面311と、ハウジング本体2の被圧入部22の底面222に当接する当接面312とを有する。さらに、滑り部材付きリング3は外周面311と当接面312との間にテーパ面311aを形成してなる。
【0032】
そして、環状支持部材31の外周面311がハウジング本体2の被圧入部22の内側に対して圧入されて形成されている。すなわち、滑り部材付きリング3は、環状支持部材31において、ハウジング本体2に対して圧入されて構成されている。
ここで、
図5に示すごとく、環状支持部材31には、内周面313に径方向及び軸方向に向かって凹んだ複数の溝部310が設けられている。そして、溝部310に滑り部材32の一部が充填されることにより、滑り部材32と環状支持部材31とが係合している。
【0033】
図1に示すごとく、滑り部材付きリング3における滑り部材32の内周面321には、インペラ4に対向するシュラウド面320が形成されている。滑り部材32のシュラウド面320は、インペラ4の回転軸Xを含む断面において、凸となる曲面状に形成されており、ハウジング本体2のディフューザ部24のディフューザ面240と連続している。
【0034】
ここで、同図に示すごとく、インペラ4は、滑り部材付きリング3の内側に配置されており、回転軸40を中心に回転可能に取り付けられている。また、インペラ4は、ハブ41の外周面から周方向に並ぶ複数のブレード42を突出させている。複数のブレード42は、滑り部材32のシュラウド面320に対向して配置されている。
【0035】
図1に示すごとく、ハウジング本体2のディフューザ部24のディフューザ面240に対向する位置には、コンプレッサハウジング1の吸気側X1とは反対の側(吐出側X2)を覆うバックプレート部51が設けられている。
また、ハウジング本体2のディフューザ部24のディフューザ面240とバックプレート部51との間には、インペラ4から吐き出された空気A2を昇圧させるディフューザ部13が形成されている。
【0036】
また、コンプレッサハウジング1を有するコンプレッサ7においては、インペラ4の回転により、吸気口11から吸気通路221を介して、インペラ4へと空気A1が吸い込まれる。そして、インペラ4のブレード42により加速され、インペラ4から吐き出された空気A2は、ディフューザ部13において昇圧され、スクロール室12に導入される。
【0037】
次に、本例のコンプレッサハウジング1の製造方法について説明する。
まず、
図2〜
図6に示すごとく、金属製の環状支持部材31における内周面313に樹脂を射出成形することにより滑り部材32を設けて、インペラ4に対向するシュラウド面320を備えた滑り部材付きリング3を形成する。
【0038】
具体的には、まず、
図2に示すごとく、滑り部材32の射出成形用の注入口610を設けた射出用成形型(上型)61と固定用成形型(下型)62からなる成形型6内に環状支持部材31を配置する。このとき、環状支持部材31の内周面313と射出用成形型61の型面611との間に樹脂充填用のキャビティ612が形成される。そして、射出用成形型61の注入口610から樹脂をキャビティ612内に流し込み、固化させる。ここで、
図3に示すごとく環状支持部材31の内周面313に設けられた複数の溝部310に、
図5に示すごとく樹脂が充填される。これにより、樹脂からなる滑り部材32と環状支持部材31とが係合した状態で、シュラウド面320を備えた滑り部材32を環状支持部材31の内周面313に形成する。その後、滑り部材32を設けた環状支持部材31を成形型6から脱型して滑り部材付きリング3を得る。
【0039】
次いで、
図7〜
図9に示すごとく、吸気口11及びスクロール室12を備えた金属製のハウジング本体2に対して、上記滑り部材付きリング3の形成工程において形成した滑り部材付きリング3を圧入する。
具体的には、
図7、
図8に示すごとく、滑り部材付きリング3をハウジング本体2内に吐出側X2から矢印Pに示すように挿入し、環状支持部材31を被圧入部22の内側に圧入する。そして、環状支持部材31の当接面312を被圧入部22の底面222に当接させる。
以上により、
図9に示すごとく、コンプレッサハウジング1を得る。
【0040】
次に、本例のコンプレッサハウジング1及びその製造方法における作用効果について説明する。
過給機用のコンプレッサハウジング1の製造方法においては、滑り部材付きリング3の形成工程にて、環状支持部材31における内周面313に樹脂を射出成形することにより滑り部材32を設けて、滑り部材付きリング3を形成する。これによって、滑り部材32の射出成形をハウジング本体2に直接行うのでなく、ハウジング本体2とは別部材である、体格の小さい環状支持部材31に対して射出成形できる。そのため、射出成形に用いる成形型6の小型化を図ることができ、型費を低減させることができる。そのため、コンプレッサハウジング1の生産コストの低減も図ることができる。
【0041】
また、環状支持部材31は、ハウジング本体2に比べて充分に小型である。そのため、環状支持部材31を固定用成形型62にセットする際の位置決めも容易である。また、環状支持部材31をセットする成形型6の型精度も高めやすい。したがって、容易に高精度な滑り部材32を成形できる。
【0042】
また、ハウジング本体2に対して、滑り部材付きリング3を環状支持部材31において圧入する。これによって、例えばアウトレットポート14の形状の変更等、コンプレッサハウジング1の形状を変更しても、滑り部材付きリング3の環状支持部材31を圧入する被圧入部22の形状及び大きささえ共通化しておけば、同種の滑り部材付きリング3を汎用的に使用することができる。すなわち、個々のコンプレッサハウジング1の形状に応じて異なる成形型6を作製するがことが不要となり、コンプレッサハウジング1の生産コストを大幅に低減することもできる。
【0043】
第1の発明において、環状支持部材31は、ハウジング本体2と同じ材料からなる。これにより、環状支持部材31とハウジング本体2との熱膨張率を一致させることができるため、温度変化の激しい過給機の使用環境においても、両者の適切な嵌合状態を維持することができ、コンプレッサハウジング1の耐久性を向上させることができる。すなわち、激しい温度変化に伴って、スクロール室12と環状支持部材31との間の嵌合力が弱まったり、両者間に過大な応力がかかったりすることを防ぐことができる。
【0044】
また、第1の発明において、環状支持部材31は、内周面313に、径方向及び軸方向に向かって凹んだ複数の溝部310を設けてなり、滑り部材付きリング3の形成工程においては、溝部310に樹脂を充填しつつ滑り部材32を成形することにより、滑り部材32と環状支持部材31とが係合した状態で滑り部材付きリング3を形成することができる。
【0045】
これにより、複数の溝部310により溝部310に充填された樹脂からなる滑り部材32と、環状支持部材31の内周面313との接触面積をより大きく確保することができ、さらに複数の溝部310の形状は、径方向及び軸方向に向かって凹状に形成されるため、滑り部材32が溝部310に引っかかり、滑り部材32の径方向内側への抜け防止及び軸方向への抜け防止の効果を得ることができる。
【0046】
過給機用のコンプレッサハウジング1は、ハウジング本体2と、ハウジング本体2に圧入された滑り部材付きリング3とを有する。それゆえ、ハウジング本体2とは個別に滑り部材付きリング3を形成することが可能となり、滑り部材32の形成を容易に行うことができる。
【0047】
また、例えば滑り部材32を射出成形によって形成する場合、ハウジング本体2に直接行うのではなく、ハウジング本体2とは別部材である体格の小さい環状支持部材31に対して射出成形できる。そのため、射出成形に用いる成形型6の小型化を図ることができ、型費を低減させることができる。そのため、コンプレッサハウジング1の生産コストの低減も図ることができる。
【0048】
また、ハウジング本体2とは別部材の滑り部材付きリング3を個別に作製できるため、例えばアウトレットポート14の形状の変更等、コンプレッサハウジング1の形状が変更しても、滑り部材付きリング3の環状支持部材31を圧入する被圧入部22の形状及び大きささえ共通化しておけば、同種の滑り部材付きリング3を汎用的に使用することができる。すなわち、個々のコンプレッサハウジングの形状に応じて異なる成形型6を作製することが不要となり、コンプレッサハウジング1の生産コストを大幅に低減することもできる。
【0049】
第2の発明において、環状支持部材31は、ハウジング本体2と同じ材料からなる。これにより、環状支持部材31とハウジング本体2との熱膨張率を一致させることができるため、温度変化の激しい過給機の使用環境においても、両者の適切な嵌合状態を維持することができ、コンプレッサハウジング1の耐久性を向上させることができる。
すなわち、激しい温度変化に伴って、スクロール室12と環状支持部材31との間の嵌合力が弱まったり、両者間に過大な応力がかかったりすることを防ぐことができる。
【0050】
また、第2の発明において、環状支持部材31は、内周面313に、径方向及び軸方向に向かって凹んだ複数の溝部310を設けてなり、溝部310に滑り部材32の一部が充填されることにより、滑り部材32と環状支持部材31とが係合した状態で滑り部材付きリング3を形成することができる。
【0051】
これにより、複数の溝部310により溝部310に充填された樹脂からなる滑り部材32と、環状支持部材31の内周面313との接触面積をより大きく確保することができ、さらに複数の溝部310の形状は、径方向及び軸方向に向かって凹状に形成されるため、滑り部材32が溝部310に引っかかり、滑り部材32の径方向内側への抜け防止及び軸方向への抜け防止の効果を得ることができる。
【0052】
以上のごとく、本例によれば、滑り部材を容易かつ高精度に形成することができる低コストな過給機用のコンプレッサハウジング及びその製造方法を提供することができる。