特許第6092597号(P6092597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092597
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】ガスタービン燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23R 3/42 20060101AFI20170227BHJP
   F23R 3/60 20060101ALI20170227BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F23R3/42 D
   F23R3/60
   F02C7/00 D
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-261840(P2012-261840)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-105983(P2014-105983A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】関原 傑
(72)【発明者】
【氏名】市川 国弘
【審査官】 齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−285692(JP,A)
【文献】 特開2004−037035(JP,A)
【文献】 米国特許第02999704(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/00−60
B23K 9/00−32
B23K 26/00−70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室を形成するライナーと、該ライナーの下流側に接続されるトランジションピースと、該トランジションピースを内包するフロースリーブとを備え、前記フロースリーブは複数の分割片の突合せ部に沿ってタイピースを溶接することで一体化するように構成されたガスタービン燃焼器において、
前記タイピースは、前記分割片の突合せ部の長手方向に沿って連続的に延伸すると共に、前記突合せ部を被覆するように配置される第1の部材と、
該第1の部材の端部に形成され切欠き部を有する第2の部材とを備え、
前記第1の部材の幅をW1とし、前記第2の部材の幅をW2とし、前記切欠き部の切欠きの幅をW3とすると、W1<W3<W2であることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器において、
前記第2の部材は、前記分割片の合せ面に対して傾斜した面と、平行な面を有することを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項3】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器において、
前記第2の部材は、前記分割片の合せ面に対して直交した面と、平行な面を有することを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項4】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器において、
前記切欠き部は、半円状に形成されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項5】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器において、
前記切欠き部は、矩形状に形成されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項6】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器において、
前記切欠き部は、前記分割片の合せ面に平行な面と、直交した面及び又は傾斜した面の組み合わせによって形成されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンの構成要素である燃焼器に係り、特にトランジションピースを内包するフロースリーブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービン燃焼器の部品であるトランジションピースは、一般に、筒状のライナーと環状流路であるタービン流路とを連結する形状となっており、さらにトランジションピースの外側面との間に圧縮機の吐出空気をライナーへ誘導する流路を構成するためのフロースリーブが配置される。
【0003】
このフロースリーブは、複雑なトランジションピースを内包する構造であるため、半割の構造の合せ面でタイピースを溶接により繋ぎ合わせた構造を採用することが多い。また、ガスタービンの燃焼器には、燃焼時に微小な振動を伴うことがある。このため、溶接部で振動による疲労損傷が発生する可能性もあるため、タイピースの形状を適正化することが望ましい。一般的にはタイピース構造の例として、特許文献1のように、断続的に板幅の異なる端部に切欠きを有する帯板状のタイピース、および別途設けた切欠きを有する矩形板状のタイピースからなる構造がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-285692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、将来的な高圧力比化、出力増大化を考慮すると、不十分となる可能性も考えられることから、更なる効果的な耐振動構造が必要である。
【0006】
本発明の目的は、耐振動性能を向上させたフロースリーブ構造を具備するガスタービン燃焼器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のガスタービン燃焼器は、ライナーと、トランジションピースと、複数の分割片で構成され、その突合せ部に沿ってタイピースを溶接して一体化されるフロースリーブとを備えたガスタービン燃焼器において、前記タイピースは、前記分割片の突合せ部の長手方向に沿って連続的に延伸すると共に、前記突合せ部を被覆するように配置される第1の部材と、該第1の部材の端部に形成される、前記第1の部材より幅広であって切欠き部を有する第2の部材により構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐振動性能を向上させたフロースリーブ構造を具備するガスタービン燃焼器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一般的なガスタービンの全体構造例を示す図である。
図2】半割のフロースリーブを合せ面にてタイピースを溶接した構造を示す図である。
図3図2中のA部の拡大図である。
図4】本発明の実施例1のフロースリーブ構造を示す図である。
図5】本発明の実施例2のフロースリーブ構造を示す図である。
図6】本発明の実施例3のフロースリーブ構造を示す図である。
図7】本発明の実施例4のフロースリーブ構造を示す図である。
図8】本発明の実施例5のフロースリーブ構造を示す図である。
図9】本発明の実施例6のフロースリーブ構造を示す図である。
図10】本発明の実施例7のフロースリーブ構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、一般的なガスタービンの構造断面図を示す。ガスタービンは大きく分けて、圧縮機1、燃焼器2及びタービン3によって構成されている。圧縮機1は大気から吸い込んだ空気を作動流体として断熱圧縮し、燃焼器2は圧縮機1から供給された圧縮空気に燃料を混合し燃焼することで高温高圧のガスを生成し、そしてタービン3は燃焼器2から導入した燃焼ガスの膨張の際に回転動力を発生する。タービン3からの排気は大気中に放出される。
【0011】
特に、燃焼器2の部品であるトランジションピース4は、筒状のライナー5と管状流路であるタービン流路6とを連結する形状となっている。なお、ライナー5は燃焼室するものであり、燃焼ガスの流れ方向から見てその下流側にトランジションピース4が接続されている。また、トランジションピース4の外側には、このトランジションピース4を内包すると共に、トランジションピース4と所定の間隙を有して配置されるフロースリーブ7が備えられている。前述した圧縮機2より吐出された圧縮空気は、フロースリーブ7とトランジションピース4の間の間隙により形成される流路を経て、ライナー5の入口側に導かれる。
【0012】
図2は、図1に示すフロースリーブ7の構造例を示す図、図3は、図2中のA部の拡大図であり、タイピース8の端部構造を示す図である。フロースリーブ7は、複数の分割片(図示の例では半割)によって構成されており、その突合せ部に沿ってタイピース8を溶接して一体化されるのが一般的である。
【0013】
以上説明した燃焼器のフロースリーブ構造(比較例)に基づき、本発明の実施の形態を図面を用いて以下説明する。
【0014】
図4は、本発明の実施の形態1として本発明の特徴を最も良く表わしているフロースリーブ構造を示す図である。図に示すように、フロースリーブ構造は、半割の構造の合せ面でタイピース8を溶接して形成する構造をとっている。そして、本実施例におけるタイピース8は、分割片の突合せ部の長手方向に沿って連続的に延伸すると共に、突合せ部を被覆するように配置される第1の部材81と、この第1の部材の端部に形成される、第1の部材より幅広の第2の部材82によって構成している。そして、第2の部材82にはフロースリーブ7の突合せ部に対して非被覆領域となる半円状の切欠き部10が形成されている。なお、第2の部材82は、フロースリーブ7半割合せ面に対して傾斜した面821、および平行な面822を有している。ここで、タイピース8における第1の部材81の幅をW1、第2の部材の幅をW2、第2の部材82の端部における切欠き部10の幅(開口幅)をW3とすると、W1<W3<W2の関係となる。本構造により、タイピース8全体から見ると、切欠き部10の存在により第2の部材82は低剛性部となる。
【0015】
このように、タイピース8の溶接部長を長くとり剛性を向上するとともに、内包する高温側のトランジションピース4からの熱膨張変形による変位制御型応力を切欠き部10の剛性低減により抑制することが可能となる。
【0016】
図5は、本発明の実施の形態2として本発明の特徴を最も良く表わしているフロースリーブ構造を示す図である。図に示すように、本実施例におけるタイピース8は、第2の部材82を半割合せ面に対して直交した面823、および平行な面822によって形成していることを特徴としている。このようにタイピース8の溶接部長を長くとり剛性を向上するとともに、内包する高温側のトランジションピース4からの熱膨張変形による変位制御型応力を切欠き部の剛性低減により抑制することが可能となる。
【0017】
図6は、本発明の実施の形態3として本発明の特徴を最も良く表わしているフロースリーブ構造を示す図である。図4に示す切欠き部10が半円状であったのに対して、本実施例では矩形状に形成していることを特徴としている。このようにタイピース8の溶接部長を長くとり剛性を向上するとともに、内包する高温側のトランジションピース4からの熱膨張変形による変位制御型応力を切欠き部の剛性低減により抑制することが可能となる。
【0018】
図7は、本発明の実施の形態4として本発明の特徴を最も良く表わしているフロースリーブ構造を示す図である。本実施例では、図5に示す切欠き部10が半円状であったのに対して、矩形状に形成したことを特徴としている。このようにタイピース8の溶接部長を長くとり剛性を向上するとともに、内包する高温側のトランジションピース4からの熱膨張変形による変位制御型応力を切欠き部の剛性低減により抑制することが可能となる。
【0019】
図8は、本発明の実施の形態5として本発明の特徴を最も良く表わしているフロースリーブ構造を示す図である。図4から図7に示した第2の部材82では、その端部に切欠き部11を形成した構成としていたが、本実施例では第2の部材に代えて、T字状の第3の部材83を設けた構成としたことを特徴とするものである。具体的には、第1の部材81の端部に、その幅W2が第1の部材W1より広く、且つタイピースの長手方向に見た長さtをW1より短く形成した第3の部材83を備えている。この3者の関係はt<W1<W2である。なお、第3の部材83は半割合せ面に対して直交した面831、および平行な面832を有する。このようにタイピース8の溶接部長を長くとり剛性を向上することが可能となる。
【0020】
図9は、本発明の実施の形態6として本発明の特徴を最も良く表わしているフロースリーブ構造を示す図である。図4に示す切欠き部10が半円状であったのに対して、本実施例では、半割合せ面に対して直交する面、傾斜した面、および平行な面の組み合わせからなる切欠き12を設けたタイピースを有していることを特徴としている。このようにタイピース8の溶接部長を長くとり剛性を向上するとともに、内包する高温側のトランジションピース4からの熱膨張変形による変位制御型応力を切欠き部の剛性低減により抑制することが可能となる。
【0021】
図10は、本発明の実施の形態7として本発明の特徴を最も良く表わしているフロースリーブ構造を示す図である。図5に示す切欠き部10が半円状であったのに対して、本実施例では半割合せ面に対して直交した面と傾斜した面の組み合わせからなる切欠き13を設けたタイピースを有していることを特徴としている。このようにタイピースの溶接部長を長くとり剛性を向上するとともに、内包する高温側のトランジションピース4からの熱膨張変形による変位制御型応力を切欠き部の剛性低減により抑制することが可能となる。
【符号の説明】
【0022】
1:圧縮機
2:燃焼器
3:タービン
4:トランジションピース
5:ライナー
6:タービン流路
7:フロースリーブ
8:タイピース
81:第1の部材
82:第2の部材
821:半割合せ面に対して傾斜した面
822:半割合せ面に対して平行な面
823:半割合せ面に対して直交した面
83:第3の部材
831:半割合せ面に対して直交した面
832:半割合せ面に対して平行な面
10:半円状の切欠き部
11:矩形状の切欠き部
12:半割合せ面に対して直交、傾斜、並行する三つの面の組み合わせからなる切欠き
13:半割合せ面に対して直交、傾斜する二つの面の組み合わせからなる切欠き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10