(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るX線検査装置について説明する。
【0017】
(1)X線検査装置の概略説明
図1は、本発明の一実施形態に係るX線検査装置10の外観を示す斜視図である。X線検査装置10は、連続的に搬入される物品Gに対してX線を照射することにより物品Gの良否判定(異物判定)を行う。物品Gには、例えば、トレーに載せられた生鮮食料品、袋詰めされた菓子、瓶または缶等の円筒状容器に投入された薬剤および食品等が含まれる。本実施形態では、円筒形状の容器に入れられた薬剤および食品を円筒状物品Gとよび、円筒状物品G以外の物品Gを通常物品Gとよぶ。なお、円筒状物品Gは、蓋、キャップ、またはタブ等が取り付けられる上端(上面)と、底となる下端(下面)と、上端から下端に延びる側面(側壁)とを有するものとする。
【0018】
X線検査装置10は、検査対象となる物品Gに対してX線を照射し、物品Gを透過したX線量(透過X線量)に基づいて物品Gに異物が混入しているか否かを判定する。X線検査装置は、物品Gに異物の混入がない場合には、当該物品を良品と判定し、物品Gに混入されている異物を判定した場合には、当該物品を不良品と判定する。X線検査装置10は、判定結果(検査結果)をモニタに表示する。
【0019】
(2)X線検査装置の詳細説明
図1または
図4に示すように、X線検査装置10は、主として、シールドボックス11と、コンベアユニット(搬送部)12と、X線照射器(X線照射部)13と、X線ラインセンサ(X線検出部)14と、接触部材15と、規制部材16と、タッチパネル機能付きのモニタ30とから構成されている。また、X線検査装置10は、
図9に示すように、制御装置80をさらに含む。X線検査装置10は、制御装置80を用いて、X線検査装置10に含まれる各構成を制御する。
【0020】
(2−1)シールドボックス
シールドボックス11は、コンベアユニット12、X線照射器13、X線ラインセンサ14、接触部材15、規制部材16、および制御装置80等を収容するボックスである。シールドボックス11の正面上部には、モニタ30、キーの差し込み口、および電源スイッチ等が配置されている。
【0021】
シールドボックス11の両側面には、開口11aが形成されている。開口11aは、物品Gをシールドボックス11の内外に搬入および搬出させるために用いられる。開口11aは、遮蔽ノレン19によって塞がれている。遮蔽ノレン19は、シールドボックス11の内部のX線が外部へ漏洩することを防止する。遮蔽ノレン19は、鉛を含むゴムから成形されている。遮蔽ノレン19は、物品Gが開口11aを通過する際に物品Gによって押しのけられるようになっている。
【0022】
(2−2)コンベアユニット
コンベアユニット12は、
図2に示すように、シールドボックス11内で物品Gを搬送する。コンベアユニット12は、
図1に示すように、シールドボックス11の両側面に形成された開口11aを貫通するように配置されている。シールドボックス11の片側に形成された開口11aから投入された物品Gは、コンベアユニット12によって反対側の開口11aに向けて搬送される。なお、コンベアユニット12は、円筒状物品Gを、横たえた状態で上流から下流に搬送する。具体的には、コンベアユニット12は、円筒状物品Gの上面(上端)または下面(下端)を搬送方向に向けた状態で搬送する。言い換えると、コンベアユニット12は、搬送面と円筒状物品Gの側面とが接触した状態で、円筒状物品Gを搬送する。
【0023】
コンベアユニット12は、例えば、
図4または
図5に示すように、主として、無端状のベルト(コンベアベルト)21と、駆動ローラ(掛け渡しローラ)22と、3つの従動ローラ(掛け渡しローラ)23と、コンベアモータ24と、ベルト緩め機構25と、フレーム26とから構成されている。
【0024】
ベルト21は、
図4に示すように、駆動ローラ22と3つの従動ローラ23とに渡し掛けられる。ベルト21は、所定の範囲の剛性を有する。具体的に、ベルト21は、幅方向の最小屈曲半径が50mm以下である。ベルト21は、物品Gを搬送するための搬送部を構成する。搬送部とは、高さ方向上側に位置するベルト21の部分である。搬送部は、搬送面を有する。搬送面は、物品Gに接触して物品Gを搬送方向上流側端部から下流側端部に送る面である。搬送面は、後述するフレーム26の平面部と同じ傾きを有する。言い換えると、搬送面は、平面部に対して平行である。
【0025】
駆動ローラ22は、コンベアモータ24によって駆動される。駆動ローラ22は、下流側に配置される。従動ローラ23には、一つの第1の従動ローラと、二つの第2の従動ローラとが含まれる。第1の従動ローラは、駆動ローラ22に対して同じ高さ位置に配置される(
図4参照)。第2の従動ローラは、駆動ローラ22に対して低い高さ位置に配置される(
図4参照)。第1の従動ローラから駆動ローラ22までの距離間隔が、コンベアユニット12による物品Gの搬送長さである。駆動ローラ22がコンベアモータ24によって駆動されることにより、ベルト21が回転され、ベルト21上の物品Gが上流側から下流側に搬送される。
【0026】
なお、コンベアユニット12による物品Gの搬送速度は、オペレータによって入力された設定速度に応じて変動する。制御装置80は、設定速度に基づいてコンベアモータ24をインバータ制御し、物品Gの搬送速度を細かく制御する。また、コンベアモータ24には、コンベアユニット12による搬送速度を検出して制御装置80に送るエンコーダ24b(
図9参照)が装着されている。
【0027】
ベルト緩め機構25は、ベルト21の装着および取り外しを容易にするための機構である。ベルト緩め機構25は、
図4および
図5に示されるように、第1の従動ローラの近傍に配置されている。ベルト緩め機構25は、駆動ローラ22に対する第1の従動ローラの距離を変更可能な構成を有する。ベルト緩め機構25は、第1の従動ローラを駆動ローラに近づけるように移動させることで、ベルト21の装着および取り外しを容易にする。
【0028】
フレーム26は、コンベアユニット12の骨組みとなる部分である。フレーム26には、駆動ローラ22および第1の従動ローラ23を回動可能に支持する部材が含まれる(
図4および
図5参照)。また、フレーム26には、
図5に示すように、矩形の天板部材が含まれる。天板部材は、駆動ローラ22および第1の従動ローラ23の上端とほぼ同じ高さ位置に配置され、駆動ローラ22および第1の従動ローラ23の間に延びる。より具体的に、天板部材は、駆動ローラ22の近傍から第1の従動ローラ23の近傍に延びる辺と、駆動ローラ22および第1の従動ローラ23の幅方向に延びる辺とに囲まれた平面部を有する。平面部は、水平面に対して平行である。天板部材は、平面部の長手方向中央において、幅方向に延びるスリット26aを有する(
図5参照)。具体的に、スリット26aは、天板部材のうち、後述するX線ラインセンサ14の上方位置にくる部分に形成される。
【0029】
コンベアユニット12は、後述する接触部材15および規制部材16が取り付けられることにより、ベルト21の搬送部の態様を、通常物品Gの搬送に適した態様から、円筒状物品Gの搬送に適した態様へと変化させる。
【0030】
具体的に、
図4および
図5に示すように、フレーム26の平面部に後述する接触部材15が装着されると、ベルト21の搬送部は、水平面に平行な搬送面を有する態様から、搬送方向に転がり面21aおよび非転がり面21bを有する態様に変化する。言い換えると、接触部材15により、ベルト21の搬送面の傾きが変化する。
【0031】
転がり面21aは、円筒状物品Gを搬送方向に直交する方向に転がす面である(
図6参照)。具体的に、転がり面21aは、円筒状物品Gの側面(側壁)を接触させた状態で、円筒状物品Gをベルト21の幅方向に移動させる面である。すなわち、転がり面21aは、寝かせた状態の円筒状物品Gをベルト21の幅方向に転がす面である。
【0032】
非転がり面21bは、平面部(水平面)に対して、第1の傾きに比べて緩やかな傾き(第2の傾き)を有する面である(
図7参照)。非転がり面21bは、転がり面21aの上流側および下流側の位置であって、駆動ローラ22の近傍および第1の従動ローラ23の近傍に形成される面である。転がり面21aおよび非転がり面21bの詳細な態様については、後段の(2−9)の欄で説明する。
【0033】
(2−3)X線照射器
X線照射器13は、
図2〜
図4に示すように、コンベアユニット12の上方に配置されている。また、X線照射器13は、コンベアユニット12の幅方向中央に配置されている。
【0034】
X線照射器13は、
図2に示すように、X線ラインセンサ14に向けてX線を扇状の照射空間XPに照射する。照射空間XPは、コンベアユニット12の搬送面に対して垂直に延びる。また、照射空間XPは、コンベアユニット12の搬送方向に対して交差する方向に広がる。すなわち、X線照射器13から照射されるX線は、ベルト21の幅方向に広がる。
【0035】
物品Gは、コンベアユニット12によってシールドボックス11内部を移動して照射空間XPを通過する(
図3参照)。これにより、物品Gには、X線照射器13から出力されたX線が照射される。すなわち、X線照射器13は、物品Gに対して上方からX線を照射する。
【0036】
(2−4)X線ラインセンサ
X線ラインセンサ14は、
図2から
図4に示すように、コンベアベルト21の搬送面に対して下側に配置されている。また、X線ラインセンサ14は、コンベアユニット12の搬送方向において、X線照射器13に対応する位置に設けられている。
【0037】
X線ラインセンサ14は、
図2および
図3に示すように、主として、多数のX線検出素子14aから構成されている。X線検出素子14aは、コンベアユニット12の搬送方向に直交する向きに一直線に水平配置されている。各X線検出素子14aは、物品Gやコンベアユニット12を透過したX線(透過X線)を検出し、検出した透過X線に基づくX線透過信号を出力する。言い換えると、X線透過信号は、物品Gを透過したX線量(透過X線量)の大小に依存する透過X線の強度に応じて出力される。X線透過信号により、X線画像の明るさ(濃淡値)が決定される。
【0038】
なお、
図3はまた、X線ラインセンサ14のX線検出素子14aによって検出されるX線の検出量(透過量)のグラフの例を示す。グラフの横軸は、各X線検出素子14aの位置に対応する。また、グラフの横軸は、コンベアユニット12の搬送方向に直交する方向の距離に対応する。また、グラフの縦軸は、X線検出素子14aで検出されたX線の透過量(検出量)を示す。すなわち、検出量の多いところが明るい(淡い)X線画像として表示され、検出量が少ないところが暗い(濃い)X線画像として表示される。
【0039】
X線ラインセンサ14は、検体である物品Gが扇状のX線の照射空間XP(
図3参照)を通過するタイミングを検知するためのセンサとしても機能する。すなわち、X線ラインセンサ14は、コンベアユニット12のベルト上で搬送される物品GがX線ラインセンサ14の上方位置(照射空間XP)に来たとき、所定の閾値以下の電圧を示すX線透過信号(第1信号)を出力する。一方、X線ラインセンサ14は、物品Gが照射空間XPを通過すると所定の閾値を上回る電圧を示すX線透過信号(第2信号)を出力する。第1信号および第2信号が後述の制御装置80に入力されることにより、照射空間XPにおける物品Gの有無が検出される。所定の閾値とは、物品Gの有無を判定するために任意で設定された値である。
【0040】
(2−5)接触部材
接触部材15は、フレーム26の平面部に対するベルト21の搬送面の傾きを変化させるための部材である。具体的に、接触部材15は、ベルト21の搬送面(
図2参照)を、転がり面21aおよび非転がり面21b(
図4および
図5参照)に変化させるための部材である。接触部材15は、X線検査装置10に対して取り外し可能な構成となっている。
【0041】
接触部材15は、板バネである。接触部材15は、
図5に示すように、平面視で矩形である。接触部材15は、幅方法一端が長手方向に沿って折り曲げられ、V字の断面形状を有する(
図5および
図6参照)。具体的に、接触部材は、
図6に示すように、所定の内角θを有する2つの面によって構成される。2つの面には、取り付け面と、接触面とが含まれる。取り付け面は、フレーム26の平面部(天板部材の上面)に対して平行な面である。取り付け面は、フレーム26の平面部にネジ止めされる。接触面は、取り付け面に対して第1の傾きθを有する面である。
【0042】
接触部材15は、フレーム26の平面部に取り付けられる。接触部材15は、接触部材15の長手方向がベルト21の搬送方向に沿うように取り付けられる。
図5に示すように、フレーム26の平面部には、4つの接触部材15が取り付けられる。
【0043】
具体的に、ベルト21の幅方向には、
図5に示すように、二つの接触部材15が取り付けられる。ベルト21の幅方向に並んだ二つの接触部材15は、ベルト21の幅方向中心を挟んで対称の位置にそれぞれ配置される。各接触部材15は、取り付け面および接触面に挟まれた辺がベルト21の幅方向内側に位置するように、フレーム26の平面部に取り付けられる。二つの接触部材15は、搬送する円筒状物品Gのサイズに応じて、ベルト21の幅方向異なる位置に取り付けることが可能な態様になっている(
図6参照)。
【0044】
また、ベルト21の搬送方向にも、
図5に示すように、二つの接触部材15が取り付けられる。各接触部材15は、ベルト21の搬送方向において、フレーム26の天板部材に形成されたスリット26aを挟んで、上流側と下流側とにそれぞれ配置される。具体的に、ベルト21の搬送方向に並んだ二つの接触部材15は、搬送方向中心を挟んで対称の位置にそれぞれ配置される。より具体的には、ベルト21の搬送方向に並んだ二つの接触部材15は、照射空間XPを妨げないように、照射空間XPより上流側の位置および照射空間XPより下流側の位置にそれぞれ配置される。なお、接触部材15は、
図4に示すように、それぞれ、駆動ローラ22および第1の従動ローラ23に対して所定の距離間隔を空けて、フレーム26の平面部に取り付けられる。
【0045】
接触部材15は、ベルト21の搬送部に対して裏側から部分的に接触する。これにより、ベルト21には、水平面に対して第1の傾きを有する転がり面21aが形成され、搬送方向において転がり面21aに隣接するベルト21の部分であって、第1の従動ローラ23または駆動ローラ22に隣接する部分には、非転がり面21bが形成される。
【0046】
(2−6)規制部材
規制部材16は、ベルト21の幅方向における円筒状物品Gの転がりを規制する部材である。すなわち、規制部材16は、転がり面21a上および非転がり面21b上での円筒状物品Gの転がりを規制する部材である。
【0047】
さらに、規制部材16は、ベルト21を、ベルト21の幅方向に二分する部材でもある。規制部材16は、
図5に示すように、ベルト21の幅方向中央に配置される。その結果、コンベアユニット12には、規制部材16を幅方向中心(基準)として、左右対称の搬送路が形成される。言い換えると、コンベアユニット12は、ベルト21の幅方向において規制部材16の両側で二つの物品Gを搬送可能な構成になっている。
【0048】
なお、規制部材16もまた、X線検査装置10に対して取り外し可能な構成となっている。具体的に、規制部材16は、片持ちの構造となっており、取り付け部164によって、X線検査装置10の正面側の部分に取り付けられる。X線検査装置10の正面側の部分とは、例えば、支持ブロック10bやコンベアユニット12のフレームである(
図4参照)。規制部材16は、
図6に示すように、取り付け部164から延びるL字型のアーム163の先端に取り付けられている。
【0049】
規制部材16は、
図4から
図7に示すように、コンベアユニット12の搬送方向に延びた部材である。具体的に、規制部材16は、
図4および
図5に示すように、ベルト21の長手方向に延び、平面視で矩形の部材である。規制部材16の下端は、ベルト21の転がり面21aおよび非転がり面21bから僅かに距離間隔を空けて配置される。
【0050】
規制部材16には、
図4および
図5に示すように、上流側規制部材16aと、下流側規制部材16bとが含まれる。上流側規制部材16aは、コンベアユニット12の搬送方向上流側に配置されている。上流側規制部材16aは、照射空間XPより上流側に配置される。具体的に、上流側規制部材16aは、長手方向上流側に位置する第1端部が第1の従動ローラ23の近傍に位置し、長手方向下流側に位置する第2端部が照射空間XPより上流側に位置する。一方、下流側規制部材16bは、コンベアユニット12の搬送方向下流側に配置されている。下流側規制部材16bは、照射空間XPより下流側に配置される。具体的に、下流側規制部材16bは、長手方向上流側に位置する第1端部が照射空間XPより下流側に位置し、長手方向下流側に位置する第2端部が駆動ローラ22の近傍に位置する。すなわち、上流側規制部材16aと下流側規制部材16bとは、照射空間XPを空けて、ベルト21の長手方向に沿うように配置されている。言い換えると、規制部材16は、ベルト21の長手方向において、照射空間XPで二分割された態様になっている。なお、上流側規制部材16aと下流側規制部材16bとは、一の直線状に並ぶように配置されている。
【0051】
(2−7)モニタ
モニタ30は、表示部および入力部として機能する。具体的に、モニタ30は、液晶ディスプレイである。モニタ30には、物品Gの検査結果が表示される。
図8は、円筒状物品Gの検査結果の例である。また、モニタ30は、タッチパネル機能を有する。したがって、モニタ30は、オペレータによる検査パラメータや動作設定情報等の入力を受け付ける。ここで、検査パラメータとは、製品Gに混入する異物を検出するために必要なパラメータである。また、動作設定情報とは、検査速度やコンベアユニット12の搬送方向等の情報である。モニタ30は、制御装置80と電気的に接続されており、制御装置80と信号の授受を行う。
【0052】
(2−8)制御装置
制御装置80は、
図9に示すように、主として、CPU、ROM、RAM、およびHDD(ハードディスク)等によって構成されている。制御装置80は、図示しない表示制御回路、キー入力回路、通信ポートなども備えている。表示制御回路は、モニタ30でのデータ表示を制御する回路である。キー入力回路は、モニタ30のタッチパネルを介してオペレータにより入力されたキー入力データを取り込む回路である。通信ポートは、プリンタ等の外部機器やLAN等のネットワークとの接続を可能にする。
【0053】
制御装置80は、また、上述のコンベアモータ24、エンコーダ24b、X線照射器13、およびX線ラインセンサ14等と、信号の授受が可能なように接続されている。制御装置80は、エンコーダ24bからコンベアモータ24の回転数に関するデータを取得し、当該データに基づき、物品Gの移動距離を把握する。また、制御装置80は、上述したように、X線ラインセンサ14から出力された信号を受信することにより、コンベアユニット12のベルト上の物品Gが照射空間XPに来たタイミングを検出する。
【0054】
(2−9)転がり面および非転がり面の態様
以下、
図6および
図7を用いて、転がり面21aおよび非転がり面21bの態様を詳細に説明する。
図6は、
図5のVI−VI断面図である。また、
図7は、
図5のVII−VII断面図である。すなわち、
図6は、転がり面21aの断面図であり、
図7は、非転がり面21bの断面図である。
【0055】
なお、転がり面21aおよび非転がり面21bは、上述したように、接触部材15および規制部材16がX線検査装置10に取り付けられることにより、コンベアユニット12に形成される。すなわち、転がり面21aおよび非転がり面21bは、接触部材15によって、ベルト21の搬送面が変形された態様である。具体的に、転がり面21aおよび非転がり面21bは、ベルト21の幅方向中心を挟んで対称に配置されて搬送面に裏側から接触する接触部材15によって、形成される。
【0056】
(2−9−1)転がり面
転がり面21aは、上述したように、円筒状物品Gを搬送方向に直交する方向に転がす面である。
図6に示すように、転がり面21aは、フレーム26の平面部に対して、ベルト21の幅方向に異なる高さを有する。その結果、転がり面21aは、平面部に対して第1の傾きβを有する。転がり面21aは、ベルト21の幅方向中心を基準に対称の傾きを有する。
【0057】
また、
図6に示すように、転がり面21aは、部分的にU字またはV字に近い断面形状を有する。U字またはV字に近い断面形状は、幅方向中心近傍が底となる。言い換えると、転がり面21aは、幅方向中央領域AR1に、U字またはV字に近い断面形状を有する。さらに、転がり面21aは、
図6に示すように、全体的にM字に近い断面形状を有する。言い換えると、転がり面21aは、幅方向全領域AR2に、M字に近い断面形状を有する。
【0058】
より具体的に、転がり面21aは、ベルト21の幅方向における第1の端部の高さ位置が、規制部材16の近傍部分の高さ位置より高い。言い換えると、転がり面21aは、ベルト21の幅方向両端部の高さ位置が、ベルト21の幅方向中央部の高さ位置よりも高い。
【0059】
詳細には、転がり面21aは、ベルト21の幅方向において、中央部分が最も低く、ベルト21の幅方向中央部分から幅方向両端に向かって徐々に高くなり、その後、わずかに低くなる。詳細には、転がり面21aは、幅方向中央部分が最も低い位置にある。このとき、転がり面21aの幅方向中央部分(ベルト21の幅方向中央部分)は、フレーム26の平面部に対してほぼ平行である。転がり面21aの幅方向中央部分の側方部分は、転がり面21aの裏側から接触部材15が接触する。これにより、転がり面21aは、水平面に対して第1の傾きβとなる。転がり面21aは、接触部材15の接触面の端部に接触する部分が最も高い位置にあり、その後、幅方向外側に向けてわずかに下降する。
【0060】
なお、ベルト21の幅方向において第1の傾きβを形成する位置とその角度は、搬送される円筒状物品Gの種類や大きさに応じて変更される。
【0061】
(2−9−2)非転がり面
非転がり面21bは、上述したように、水平面に対して、第1の傾きに比べて緩やかな傾き(第2の傾き)を有する面である(
図7参照)。具体的に、非転がり面21bは、搬送方向において転がり面21aに近い位置で、フレーム26の平面部に対して第1の傾きよりもわずかに緩やかな傾きを有する。
【0062】
また、非転がり面21bは、転がり面21aに近い位置から搬送方向上流側または下流側に向かって、平面部に対してさらに緩やかな傾きを有する。言い換えると、非転がり面21bは、転がり面21aに隣接する部分で最も傾きが大きく、最も上流側の部分および最も下流側の部分が最も傾きが小さい。より具体的に、非転がり面21bは、駆動ローラ22または第1の従動ローラ23に接触する部分が平面部と同じ傾きを有する。すなわち、非転がり面21bのうち、駆動ローラ22に接触する部分および第1の従動ローラに接触する部分は、
図7に示すように、平面部に対して平行である。
【0063】
(3)特徴
(3−1)
上記実施形態に係るX線検査装置では、コンベアユニット12は、円筒状物品Gを横たえられた状態で搬送すると共に、転がり面21aを有する。転がり面21aは、円筒状物品Gを搬送方向に直交する方向である幅方向に転がす。規制部材16は、転がり面21a上での円筒状物品Gの転がりを規制する。これにより、円筒状物品Gの姿勢を一定に保つことができるため、円筒状物品GのX線検査を効率よく行うことができる。
【0064】
X線検査装置において、円筒状物品Gを起立した姿勢で搬送させることとすれば、ベルトの幅方向における円筒状物品Gの位置を変えずに一定の姿勢で円筒状物品Gを搬送することができる。しかし、起立した姿勢の円筒状物品Gは、搬送中に転倒する可能性がある。したがって、搬送速度を上限速度に近い速度に設定することができない。その結果、X線検査装置の処理能力を向上させることが困難である。また、円筒状物品Gを起立した姿勢で搬送すると、円筒状物品GにおいてX線を透過させる距離が長くなる。したがって、異物の検出精度が低下する可能性がある。
【0065】
また、直径に比べて高さ寸法が大きい円筒状物品(例えば、直径30mm×高さ120mm)を起立した姿勢で搬送する場合、X線検査装置の上流側に配置された装置からX線検査装置への円筒状物品の乗り継ぎ時や、X線検査装置からX線検査装置の下流側に配置された装置への円筒状物品の乗り継ぎ時に、円筒状物品が転倒する可能性が高かった。したがって、円筒状物品Gは、横たえられた状態で搬送されることが好ましい。
【0066】
一方、円筒状物品Gを横たえられた状態で搬送する場合には、円筒状物品Gの姿勢を一定に保ち、さらに、ベルトの幅方向において円筒状物品Gを一定の位置に留めておくために、円筒状物品Gのサイズに応じたガイドを設けることが考えられる。しかし、ガイドは、検査対象とする円筒状物品Gのそれぞれに取り付ける必要がある。すなわち、X線検査装置に円筒状物品Gを投入するたびに、円筒状物品Gにガイドを取付ける必要がある。また、円筒状物品Gのサイズが変わるたびに、ガイドの位置を変更させる必要がある。その結果、円筒状物品Gの異物検査を効率よく行うことが困難である。
【0067】
そこで、上記実施形態に係るX線検査装置10では、コンベアユニット12のベルト21が転がり面21aを有し、円筒状物品Gをベルト21の幅方向に転がす。また、X線検査装置10は、転がり面21a上の円筒状物品Gの転がりを規制する規制部材16を備える。これにより、円筒状物品Gは、転がり面21aで幅方向に転がる。規制部材16は、転がり面21a上での円筒状物品Gの転がりを規制し、幅方向において円筒状物品Gを一定の位置に留める。これにより、円筒状物品G毎にガイドを設けることなく、円筒状物品Gを寝かせた状態で搬送することができる。
【0068】
(3−2)
上記実施形態に係るX線検査装置10では、転がり面21aは、幅方向における第1の端部の高さ位置が、規制部材16近傍部分の高さ位置より高い。また、転がり面21aは、水平面に対して第1の傾きを有する。すなわち、ベルト21は、水平面に対して幅方向に異なる高さを有する。これにより、円筒状物品Gを規制部材16近傍へ移動させて、規制部材16の近傍で円筒状物品Gの動きを止めることができる。
【0069】
(3−3)
上記実施形態に係るX線検査装置10では、コンベアユニット12は、ベルト21と、駆動ローラ22と、従動ローラ23とを有する。駆動ローラ22と第1の従動ローラ23とは、搬送方向において、ベルト21の上流側および下流側にそれぞれ設けられる。ベルト21は、駆動ローラ22および従動ローラ23に掛け渡される。ベルト21は、非転がり面21bをさらに有する。非転がり面21bは、駆動ローラ22および従動ローラ23の近傍であって、転がり面21aの上流側および下流側に位置する。また、非転がり面21bは、水平面に対して、第2の傾きを有する。第2の傾きとは、第1の傾きに比べて緩やかな傾きである。これにより、X線検査装置10の上流側および/または下流側に略水平面上に円筒状物品Gを搬送する他の装置が配置されている場合に、他の装置からX線検査装置10への円筒状物品Gの受け渡しを確実に行うことができる。
【0070】
すなわち、コンベアユニット12は、上述した接触部材15が取り付けられることにより、水平面に対するベルト21の幅方向の傾きを、ベルト21の搬送方向において変化させる。X線検査装置10に投入された円筒状物品Gは、搬送されて下流方向に移動するにつれて、
図7の矢印Dで示すように、規制部材16に近づく方向に転がる。その後、円筒状物品Gは、
図6に示すように、規制部材16の側面と、転がり面21aとによって挟まれた状態でさらに下流に搬送される。これにより、円筒状物品Gの姿勢およびベルト21の幅方向における位置を一定に保つことができる。
【0071】
(3−4)
また、上記実施形態に係るX線検査装置10は、接触部材15をさらに備える。接触部材15は、ベルト21の搬送方向に延びる。接触部材15は、ベルト21に対して裏側から接触することにより、転がり面21aを形成する。これにより、ベルト21の所望の位置に転がり面21aを形成することができる。
【0072】
本実施形態において、接触部材15は、
図4に示すように、それぞれ、駆動ローラ22および第1の従動ローラ23に対して所定の距離間隔を空けて、フレーム26の天板部材の上面(平面部)に取り付けられる。その結果、X線検査装置10に投入された円筒状物品Gを早期に姿勢が安定する位置に移動させ、物品Gについて精度のよいX線検査を得ることができる。
【0073】
(3−5)
また、上記実施形態に係るX線検査装置10では、規制部材16が、ベルト21を幅方向に二分するように搬送方向に延びる。これにより、二つの円筒状物品を一度に検査することができる。
【0074】
(3−6)
さらに、上記実施形態に係るX線検査装置10では、規制部材16が、ベルト21の幅方向の中央に配置される。これにより、X線検査装置10は、ベルト21の幅方向を中心として両側で搬送される円筒状物品Gに対して、X線を同様に照射することができる。
【0075】
(3−7)
また、上記実施形態に係るX線検査装置10では、接触部材15は、ベルト21の幅方向の両側に配置される。また、ベルト21は、幅方向において規制部材16の近傍が底となるU字またはV字の断面形状を有する。これにより、規制部材16の両側に円筒状物品Gを搬送することができる。
【0076】
(3−8)
また、上記実施形態に係るX線検査装置10では、規制部材16は、上流側規制部材16aと、下流側規制部材16bとを含む。上流側規制部材16aは、照射空間XPより上流側に位置して搬送方向に延びる部材である。照射空間XPとは、X線照射部13からX線が照射される空間である。下流側規制部材16bは、照射空間XPより下流側に位置して搬送方向に延びる。また、上流側規制部材16aと下流側規制部材16bとは、一の直線上に並ぶことが好ましい。これにより、円筒状物品GのX線検査を好適に行うことができる。
【0077】
(3−9)
上記実施形態に係るX線検査装置10では、接触部材15および規制部材16が取り外し可能な態様になっている。コンベアユニット12は、接触部材15および規制部材16を装着していない場合には、通常物品Gの検査に適した態様となり、接触部材15および規制部材16を装着した場合には、円筒状物品Gの検査に適した態様となる。
【0078】
具体的に、接触部材15および規制部材16を装着していない場合には、コンベアユニット12は、安定搬送が可能な通常物品G(例えば、トレーに載せられた生鮮食料品や袋詰めされた菓子)の検査に適した態様となる。また、接触部材15および規制部材16を装着することにより、コンベアユニット12は、安定搬送ができない円筒状物品G(例えば、円筒状容器に投入された薬剤および食品等)の検査に適した態様へと変化させることができる。すなわち、接触部材15および規制部材16の装着および取り外しにより、様々な態様の物品Gの検査を効率よく行うことができる。
【0079】
(3−10)
また、上記実施形態に係るX線検査装置10では、幅方向に所定の剛性を有するベルト21を用いる。具体的には、幅方向の最小屈曲半径が50mm以下のベルト21が用いられる。これにより、ベルト21の下面に接触部材15が接触した際、ベルト21の幅方向に、好適な傾斜面を形成することが可能になる。
【0080】
(4)変形例
(4−1)変形例A
上記実施形態に係るX線検査装置10は、検査ライン(X線検査システム)100に組み込まれて用いられても良い。
図10に、X線検査装置10が組み込まれる検査ライン100の例を示す。
【0081】
検査ライン100は、X線検査装置10の他、上流コンベアユニット60と、振り分け機構70とを含む。上流コンベアユニット60は、X線検査装置10の上流に設けられる。上流コンベアユニット60は、X線検査装置10に対して連続的に物品Gを送る。上流コンベアユニット60は、物品Gを載せる載置面を有する。物品Gは所定の距離間隔を空けて載置面に載せられる。これにより、X線検査装置10には、所定の距離間隔d(あるいは時間間隔)で物品Gが搬送される。X線検査装置10は、上流コンベアユニット60によって連続的に搬送されてくる物品Gに対してX線を照射することにより物品Gの良否判断を行う。X線検査装置10での検査結果は、X線検査装置10の下流に設けられた振り分け機構70に送られる。振り分け機構70は、ラインコンベアユニット73および不良品回収ライン74に接続される。振り分け機構70は、X線検査装置10において良品と判断した物品Gをラインコンベアユニット73に振り分け、不良品と判断した物品Gを不良品回収ライン74に振り分ける。
【0082】
(4−2)変形例B
上記実施形態に係るX線検査装置10では、ベルト21の幅方向に並んだ二つの接触部材15は、ベルト21の幅方向中心を挟んで対称の位置にそれぞれ配置される。ここで、ベルト21の2箇所で、大きさが異なる物品を搬送する場合には、物品Gのサイズに合わせてそれぞれの接触部材を配置してもよい。
【0083】
(4−3)変形例C
上記実施形態に係るX線検査装置10では、転がり面21aを形成するために、ベルト21の搬送面に対して裏側から接触部材15を接触させている。
【0084】
ここで、転がり面21aは、接触部材15を用いずに形成されてもよい。具体的には、コンベアユニット12の駆動ローラ22および第1の従動ローラ23の長手方向を水平面に対して傾斜させ、傾斜した駆動ローラ22および第1の従動ローラ23にベルト21を渡しかける。また、規制部材16をコンベアユニット12の幅方向一端側に設ける。すなわち、
図11に示すように、コンベアユニット12自体が水平面に対して幅方向に傾斜する構成とし、規制部材16は、コンベアユニット12の幅方向において高さ位置が低い方の端部側に配置する。これによって、搬送部全体が転がり面となるような構成としてもよい。これによっても、転がり面上でベルト21の幅方向に円筒状物品Gを転がせて、規制部材16で円筒状物品Gの転がりを規制することが可能である。
【0085】
また、上記実施形態に係るX線検査装置10は、ベルト21の幅方向に二つの接触部材15を有するが、ここで、接触部材15を、幅方向に一つだけ配置する構成とし、ベルト21の幅方向一端側に向けて搬送面が傾くように転がり面を形成してもよい。また、規制部材16をコンベアユニット12の幅方向一端側に設ける。すなわち、
図12に示すように、コンベアユニット12自体は、水平面に対して平行に設け、接触部材15によって幅方向一端側に円筒状物品Gを転がるよう搬送面を傾ける。これによっても、転がり面上でベルト21の幅方向に円筒状物品Gを転がせて、規制部材16で円筒状物品Gの転がりを規制することが可能である。