特許第6092608号(P6092608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092608
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】加熱装置の温度制御方法及び加熱装置
(51)【国際特許分類】
   F27D 19/00 20060101AFI20170227BHJP
   F23N 5/00 20060101ALI20170227BHJP
   C21D 1/52 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   F27D19/00 A
   F23N5/00 D
   F23N5/00 G
   F23N5/00 S
   C21D1/52 K
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-276064(P2012-276064)
(22)【出願日】2012年12月18日
(65)【公開番号】特開2014-119216(P2014-119216A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年6月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】近藤 雅也
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−248315(JP,A)
【文献】 特開平10−008131(JP,A)
【文献】 特開昭52−120208(JP,A)
【文献】 特開昭53−032809(JP,A)
【文献】 特開昭56−102517(JP,A)
【文献】 特開昭55−131137(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 19/00
C21D 1/52
F23N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内に燃焼ガスを供給して前記炉内に投入された金属製の被加熱物を加熱するバーナと、前記バーナの燃焼量を調整して炉内温度を所定の設定温度に調整可能な炉内温度設定手段とを備えた加熱装置の温度制御方法であって、
前記被加熱物を前記炉内へ投入する前に、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記被加熱物の加熱処理を行うときの所定の加熱処理温度よりも高温の高設定温度に設定して、前記炉内温度を前記高設定温度とする予備昇温処理と、
前記被加熱物の加熱処理を行うときの前記加熱処理温度よりも低温、かつ、前記炉内の前記燃焼ガスの露点温度よりも低い温度の前記被加熱物が前記炉内へ投入されて前記炉内温度が前記加熱処理温度よりも低下した後に、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記加熱処理温度に設定して、前記炉内温度を前記加熱処理温度とする設定温度復帰処理とを含む加熱装置の温度制御方法。
【請求項2】
前記加熱装置に、前記バーナの燃焼空気比を設定可能な空気比設定手段が設けられ、
前記被加熱物の前記炉内への投入時に、前記空気比設定手段により、前記バーナの燃焼空気比を前記被加熱物の加熱処理を行うときの所定の加熱処理空気比よりも高い設定空気比に設定する空気比上昇処理を含む請求項1に記載の加熱装置の温度制御方法。
【請求項3】
前記設定温度復帰処理において、前記被加熱物の前記炉内への投入時からの経過時間が所定の設定経過時間になったときに、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記加熱処理温度に設定する請求項1又は2に記載の加熱装置の温度制御方法。
【請求項4】
前記設定温度復帰処理において、前記被加熱物の表面温度が前記燃焼ガスの露点よりも高くなったときに、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記加熱処理温度に設定する請求項1又は2に記載の加熱装置の温度制御方法。
【請求項5】
炉内に燃焼ガスを供給して前記炉内に投入された金属製の被加熱物を加熱するバーナと、前記バーナの燃焼量を調整して炉内温度を所定の設定温度に調整可能な炉内温度設定手段と、運転を制御する運転制御手段とを備えた加熱装置であって、
前記運転制御手段が、
前記被加熱物を前記炉内へ投入する前に、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記被加熱物の加熱処理を行うときの所定の加熱処理温度よりも高温の高設定温度に設定して、前記炉内温度を前記高設定温度とする予備昇温処理を実行し、
前記被加熱物の加熱処理を行うときの前記加熱処理温度よりも低温、かつ、前記炉内の前記燃焼ガスの露点温度よりも低い温度の前記被加熱物が前記炉内へ投入されて前記炉内温度が前記加熱処理温度よりも低下した後に、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記加熱処理温度に設定して、前記炉内温度を前記加熱処理温度とする設定温度復帰処理を実行する加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内に燃焼ガスを供給して前記炉内に投入された金属製の被加熱物を加熱するバーナと、前記バーナの燃焼量を調整して炉内温度を所定の設定温度に調整可能な炉内温度設定手段とを備えた加熱装置の温度制御方法及び加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加熱装置として、例えば、特許文献1には、炉内に燃焼ガスを供給して炉内に投入された金属製の被加熱物を加熱するバーナと、バーナへの燃料供給量および空気供給量を調整してバーナに供給する燃料に対する燃焼用空気の過剰率に相当する燃焼空気比を所定の燃焼空気比に調整可能とするとともに、バーナの燃焼量を調整して炉内温度を定常温度に調整する加熱装置が開示されている。
【0003】
この特許文献1の加熱装置では、常温の金属製の被加熱物を常温の炉内に投入した後に、バーナの燃焼を開始し、炉内に投入された被加熱物はバーナから供給される燃焼ガスと接触されることで昇温される。そして、被加熱物の昇温の初期段階において、燃料ガス中の水分が低温の被加熱物の表面で結露することを防止して、当該結露による被加熱物の表面の酸化を防止するために、バーナの燃焼空気比を大きくして、炉内に供給される燃焼ガスの露点を下げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3927259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、上述の如く、常温の炉内に常温の被加熱物を投入してから、炉内へのバーナの燃焼ガスの供給を開始するので、燃焼ガス中に含まれる水分が結露することを防止するためには、バーナの燃焼ガスの露点が常温付近まで低下するようにバーナの燃焼空気比を、例えば、この特許文献1の請求項1にも記載されている様に4.7以上もの燃焼空気比にまで大幅に上昇させる必要がある。このように燃焼空気比を大幅に上昇させた場合、バーナの燃焼が不安定になる虞があることに加え、バーナの燃焼により発生する燃焼ガスの温度が低下して、迅速に被加熱物を昇温することができないという問題が発生する。
【0006】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、その目的は、燃焼ガス中の水分の被加熱物の表面での結露を抑制しつつ、迅速に被加熱物を昇温することができる加熱装置の温度制御方法及び加熱装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための本発明に係る加熱装置の温度制御方法は、
炉内に燃焼ガスを供給して前記炉内に投入された金属製の被加熱物を加熱するバーナと、前記バーナの燃焼量を調整して炉内温度を所定の設定温度に調整可能な炉内温度設定手段とを備えた加熱装置の温度制御方法であって、
前記被加熱物を前記炉内へ投入する前に、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記被加熱物の加熱処理を行うときの所定の加熱処理温度よりも高温の高設定温度に設定して、前記炉内温度を前記高設定温度とする予備昇温処理と、
前記被加熱物の加熱処理を行うときの前記加熱処理温度よりも低温、かつ、前記炉内の前記燃焼ガスの露点温度よりも低い温度の前記被加熱物が前記炉内へ投入されて前記炉内温度が前記加熱処理温度よりも低下した後に、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記加熱処理温度に設定して、前記炉内温度を前記加熱処理温度とする設定温度復帰処理とを含む点にある。
【0008】
また、この目的を達成するための本発明に係る加熱装置は、
炉内に燃焼ガスを供給して前記炉内に投入された金属製の被加熱物を加熱するバーナと、前記バーナの燃焼量を調整して炉内温度を所定の設定温度に調整可能な炉内温度設定手段と、運転を制御する運転制御手段とを備えた加熱装置であって、
前記運転制御手段が、
前記被加熱物を前記炉内へ投入する前に、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記被加熱物の加熱処理を行うときの所定の加熱処理温度よりも高温の高設定温度に設定して、前記炉内温度を前記高設定温度とする予備昇温処理を実行し、
前記被加熱物の加熱処理を行うときの前記加熱処理温度よりも低温、かつ、前記炉内の前記燃焼ガスの露点温度よりも低い温度の前記被加熱物が前記炉内へ投入されて前記炉内温度が前記加熱処理温度よりも低下した後に、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記加熱処理温度に設定して、前記炉内温度を前記加熱処理温度とする設定温度復帰処理を実行する点にある。
【0009】
上記加熱装置及びその温度制御方法の第1特徴構成によれば、被加熱物の炉内への投入時に、炉内温度を被加熱物の加熱処理を行うときの所定の加熱処理温度よりも高温の高設定温度に調整するので、炉内温度を所定の加熱処理温度に調整して被加熱物を炉内に投入する場合よりも、炉内に投入された被加熱物を高温雰囲気で迅速に昇温することができる。よって、炉内に投入された被加熱物の昇温過程においても、燃焼ガス中の水分の被加熱物の表面への結露を防止することができる。
また、被加熱物の炉内への投入後には、炉内温度を加熱処理温度に調整するので、炉内に投入した被加熱物を加熱処理温度で加熱することができる。
【0010】
更に、本特徴構成によれば、被加熱物の炉内への投入時の炉内温度が高設定温度であるために、例えば、被加熱物の投入時の炉内温度を常温とする場合のように、結露を防止するためにバーナの燃焼空気比を大幅に高く調整することなどを行うことを必要とせず、バーナの燃焼空気比を理論空気比近傍としてバーナの燃焼ガスの温度を高く維持することができるので、迅速に被加熱物を昇温して、燃焼ガス中の水分の被加熱物の表面への結露を防止することができる。
【0011】
本発明に係る加熱装置の温度制御方法の第2特徴構成は、上記加熱装置の温度制御方法の第1特徴構成に加えて、
前記加熱装置に、前記バーナの燃焼空気比を設定可能な空気比設定手段が設けられ、
前記被加熱物の前記炉内への投入時に、前記空気比設定手段により、前記バーナの燃焼空気比を前記被加熱物の加熱処理を行うときの所定の加熱処理空気比よりも高い設定空気比に設定する空気比上昇処理を含む点にある。
【0012】
上記加熱装置の温度制御方法の第2特徴構成によれば、被加熱物の炉内への投入時において、バーナの燃焼空気比を理論空気比近傍に空気比とされる所定の加熱処理空気比よりも若干高い設定空気比(例えば、1.4〜3.0程度)として、バーナの燃焼により炉内に供給する燃焼ガスの露点を低下させて、燃焼ガス中の水分の被加熱物の表面での結露を一層抑制することができる。
【0013】
本発明に係る加熱装置の温度制御方法の第3特徴構成は、上記加熱装置の温度制御方法の第1乃至第2特徴構成の何れかに加えて、
前記設定温度復帰処理において、前記被加熱物の前記炉内への投入時からの経過時間が所定の設定経過時間になったときに、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記加熱処理温度に設定する点にある。
【0014】
上記加熱装置の温度制御方法の第3特徴構成によれば、上記投入時からの経過時間として、炉内温度を高設定温度から加熱処理温度に低下させた場合でも、炉内の燃焼ガスの温度が露点以下にならなくなるまでの経過時間を上記設定経過時間として予め求めておき、設定温度復帰処理において、上記投入時からの経過時間がその設定経過時間となったときに、炉内温度設定手段の設定温度を高設定温度から加熱処理温度に変更することになるので、燃焼ガス中の水分の被加熱物の表面での結露を防止しながら、被加熱物の加熱処理温度での加熱処理に移行することができる。
【0015】
本発明に係る加熱装置の温度制御方法の第4特徴構成は、上記加熱装置の温度制御方法の第1乃至第2特徴構成の何れかに加えて、
前記設定温度復帰処理において、前記被加熱物の表面温度が前記燃焼ガスの露点よりも高くなったときに、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記加熱処理温度に設定する点にある。
【0016】
上記加熱装置の温度制御方法の第4特徴構成によれば、設定温度復帰処理において、前記被加熱物の表面温度が前記燃焼ガスの露点よりも高くなったときに、炉内温度設定手段の設定温度を高設定温度から加熱処理温度に変更することになるので、燃焼ガス中の水分の被加熱物の表面での結露を防止しながら、被加熱物の加熱処理温度での加熱処理に移行することができる。
また、被加熱物の表面温度が燃焼ガスの露点よりも高くなったときに速やかに、炉内温度設定手段の設定温度を高設定温度から加熱処理温度に変更すれば、被加熱物の温度が加熱処理されるべき温度である加熱処理温度を超えて加熱処理に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】加熱装置の概略構成図
図2】被加熱物の加熱処理における炉内温度の変化を示す図
図3】被加熱物の加熱処理の手順を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る加熱装置の温度制御方法及び加熱装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1に示すように、加熱装置20は、加熱炉1の炉内に燃焼ガスEを供給して炉内に投入された金属製の被加熱物5を加熱するバーナ2と、バーナ2の燃焼量を調整して炉内温度を調整可能な炉内温度設定手段7cと、加熱装置20の運転を制御する運転制御手段7aとを備えている。この炉内温度設定手段7c及び運転制御手段7aは、後述する空気比設定手段7bとともに、コンピュータからなる制御部7が所定のプログラムを実行することによって機能するように構成されている。
【0019】
加熱炉1には、上板1aに4つのバーナ2と攪拌用ファン3とが設けられ、これらのバーナ2の燃焼により発生する燃焼ガスEが、攪拌用ファン3によって炉内を循環するように構成されている。また、加熱炉1の前面には開閉自在な扉6が設けられ、扉6を開閉させて被加熱物5の炉内への投入及び炉内からの取出しが行われる。そして、加熱炉1の炉内には、これらのバーナ2の火炎が被加熱物5に触れないようにするための隔板4が設けられるとともに、加熱炉1の炉内を炉内温度として検出する温度センサ15が設けられている。この温度センサ15で検出された炉内温度は、制御部7に入力される。
【0020】
夫々のバーナ2には、燃料ガスFを供給する燃料ガス供給路11と空気Aを供給する空気供給路13が接続されており、燃料ガス供給路11にはバーナ2への燃料ガスFの供給流量を調整可能な燃料ガス流量調整弁10が設けられ、一方、空気供給路13にはバーナ2への空気Aの供給流量を調整可能な空気流量調整弁12が設けられている。
そして、制御部7が機能する炉内温度設定手段7cは、上記温度センサ15で検出される炉内温度が所定の設定温度になるように、燃料ガス流量調整弁10の開度を制御して、バーナ2への燃料ガスFの供給流量を調整する。
【0021】
制御部7が機能する空気比設定手段7bは、上記炉内温度設定手段7cにより制御される燃料ガス流量調整弁10の開度に基づいて、空気流量調整弁12の開度を制御して、バーナ2に供給する燃料ガスFに対する空気Aの過剰率に相当する燃焼空気比を所定の燃焼空気比に設定する。
また、このようなバーナ2の燃焼空気比は高いほど、燃焼ガスEの露点温度は低くなり、燃焼ガスEに含まれる水分が結露し難くなる。
【0022】
制御部7には、炉内温度設定手段7cによる炉内温度調整において目標とする温度である設定温度を入力する操作部9と、現在の炉内温度の表示等を行う表示部8とが接続されている。
また、制御部7には、被加熱物5の炉内への投入後の経過時間を測定するためのタイマー等(図示せず)が備えられている。
【0023】
以上のように構成した加熱装置20は、所定の温度制御方法を実行することにより、燃焼ガスE中の水分の被加熱物5の表面での結露を抑制しつつ、迅速に被加熱物5を昇温することができるように構成されており。その温度制御方法を実行する構成について、以下に説明を加える。
運転制御手段7aは、被加熱物5の炉内への投入時に、炉内温度設定手段7cの設定温度を被加熱物5の加熱処理を行うときの所定の加熱処理温度よりも高温の高設定温度に設定して、炉内温度を高設定温度とする予備昇温処理と、被加熱物5の炉内への投入後に、炉内温度設定手段7cの設定温度を加熱処理温度に設定して、炉内温度を加熱処理温度とする設定温度復帰処理とを実行するように構成されている。ここで、被加熱物5の加熱処理を行うときの加熱処理温度は、例えば被加熱物5の焼戻し等の加熱処理を行う場合には、150℃〜350℃の範囲内の温度とされている。これに対し、高設定温度は、加熱処理温度よりも100℃〜200℃高い温度とされる。
【0024】
更に、この運転制御手段7aは、被加熱物5の炉内への投入時に、空気比設定手段7bによって、バーナ2の燃焼空気比を被加熱物5の加熱処理を行うときの所定の加熱処理空気比よりも若干高い設定空気比に設定する空気比上昇処理を実行するように構成されている。ここで、所定の加熱処理空気比は、理論空気比近傍の1.1〜1.3の範囲内の空気比とされ、設定空気比は、それよりも若干高い燃焼空気比(例えば、1.4〜3.0程度)とされている。
【0025】
また、運転制御手段7aは、炉内温度を加熱処理温度に設定する設定温度復帰処理において、タイマーによって測定される被加熱物5の炉内への投入時からの経過時間が、所定の設定経過時間になったときに、炉内温度設定手段7cの設定温度を加熱処理温度に設定するように構成されている。
そして、上記操作部9には、設定温度を高設定温度に設定するとともに、バーナ2の燃焼空気比を設定空気比に設定することを運転制御手段7aに指令する投入準備ボタン(図示せず)と、炉内への被加熱物5の投入後に、経過時間の測定を開始することを運転制御手段7aに指令する投入完了ボタン(図示せず)が設けられている。
また、上記表示部8には、炉内温度が高設定温度に調整されるとともに、バーナ2の燃焼空気比が設定空気比に設定された状態となると点灯する投入準備完了ランプ(図示せず)が設けられている。
【0026】
次に、上記構成を採用した加熱装置20により実行される温度制御方法の詳細について、図2及び図3に基づいて説明する。図2に、被加熱物5の炉内への投入時からの設定温度Ta、炉内温度Tb及び被加熱物5の表面温度Tcの変化を示し、図3に被加熱物5の加熱装置20における加熱処理の流れを示す。
【0027】
図3に示すように、被加熱物5の加熱処理を開始するにあたり、作業者により操作部9の投入準備ボタンが押圧される。これにより、運転制御手段7aは投入準備ボタンの押圧信号を受付ける(#101)。投入準備ボタンの押圧信号を受付けると、運転制御手段7aは、炉内温度設定手段7cによる炉内温度の調整において目標となる設定温度を高設定温度に設定する(#102)。これにより、炉内温度設定手段7cは燃料ガス流量調整弁10の開度を調節して炉内温度を高設定温度に設定する予備昇温処理を実行する(#103)。
【0028】
炉内温度が高設定温度に設定されると、運転制御手段7aは、空気比設定手段7bによりバーナ2の燃焼空気比を被加熱物5の加熱処理を行うときの所定の加熱処理空気比よりも若干高い設定空気比に設定する空気比上昇処理を実行する(#104)。
【0029】
バーナ2の燃焼空気比を設定空気比に設定すると、表示部8に設けられた投入準備完了ランプを点灯させる(#105)。投入準備完了ランプを点灯させると、その点灯を確認した作業者によって、被加熱物5が炉内に投入されるとともに、操作部9に設けられた投入完了ボタンが押圧される。そして、運転制御手段7aはその投入完了ボタンの押圧信号を受付ける(#106)。ここで、投入完了ボタンの押圧信号を受付けけた時間が図2に示す時間t1となる。図2に示すように、時間t1における被加熱物5の炉内への投入により、高設定温度T1に調整されていた炉内温度Tbが低下する。
【0030】
次に、制御部7が、投入完了ボタンを押圧されてからの経過時間を、被加熱物5の炉内への投入時からの経過時間として測定する。この経過時間が所定の設定経過時間となると(#107)、運転制御手段7aは、炉内温度設定手段7cの設定温度を加熱処理温度に変更する(#108)。この設定温度が加熱処理温度に変更された時間が図2に示す時間t2となる。図2に示すように、時間t2において設定温度が高設定温度T1から加熱処理温度T2に変更されている。また、時間t1から時間t2までの経過時間が所定の設定経過時間Pとなる。
【0031】
設定温度が加熱処理温度に変更されると、炉内温度設定手段7cよって、炉内温度が加熱処理温度に調整される設定温度復帰処理が行われる(#109)。炉内温度が加熱処理温度に調整されると、加熱処理温度による加熱処理が開始される(#110)。図2において、この炉内温度Tbが加熱処理温度T2に調整された時間が時間t3である。また、この時間t3において、被加熱物5の表面温度Tcも加熱処理温度T2に調整されている。
【0032】
加熱処理(#110)では、例えば、加熱処理温度において加熱する加熱処理期間が、操作部9から予め入力されて記憶されており、加熱処理温度に設定された時からの加熱期間が、この加熱処理期間となると炉内温度を室温まで徐々に低下するように構成されている。そして、炉内温度が室温まで低下すると、加熱処理を終了するように構成される。
【0033】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、設定温度復帰処理において、被加熱物5の炉内への投入時からの経過時間が所定の設定経過時間になったときに、設定温度を加熱処理温度に設定したが、これに限らず、被加熱物5の表面温度が燃焼ガスEの露点よりも高くなったときに、炉内温度設定手段7cの設定温度を加熱処理温度に設定するように構成してもよい。この場合、燃焼ガスEの露点を求めるために、燃焼ガスEの湿度を求める湿度計を備えてもよいが、バーナ2の燃焼空気比から燃焼ガスEの露点を推定しても構わない。
【0034】
(2)上記実施形態では、炉内温度が加熱処理温度に調整されることで加熱処理(図3の#110)を開始するように構成したが、これに限らず、被加熱物5の表面温度が加熱処理温度に調整されることで加熱処理を開始するように構成してもよい。この場合、被加熱物5の表面温度を検出するにあたり、被接触温度センサを設けてもよい。
【0035】
(3)上記実施形態では、制御部7を加熱炉1と別体として構成したが、これに限らず、制御部7が加熱炉1に設けられていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明したように、燃焼ガス中の水分の被加熱物の表面での結露を防止しつつ、迅速に被加熱物を昇温することができる加熱装置の温度制御方法及び加熱装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
2 バーナ
5 被加熱物
7a 運転制御手段
7b 空気比設定手段
7c 炉内温度設定手段
20 加熱装置
E 燃焼ガス
P 設定経過時間
Ta 設定温度
Tb 炉内温度
Tc 表面温度
T1 高設定温度
T2 加熱処理温度
図1
図2
図3