【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための本発明に係る加熱装置の温度制御方法は、
炉内に燃焼ガスを供給して前記炉内に投入された金属製の被加熱物を加熱するバーナと、前記バーナの燃焼量を調整して炉内温度を所定の設定温度に調整可能な炉内温度設定手段とを備えた加熱装置の温度制御方法であって、
前記被加熱物を前記炉内へ投入する前に、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記被加熱物の加熱処理を行うときの所定の加熱処理温度よりも高温の高設定温度に設定して、前記炉内温度を前記高設定温度とする予備昇温処理と、
前記被加熱物の加熱処理を行うときの前記加熱処理温度よりも低温、かつ、前記炉内の前記燃焼ガスの露点温度よりも低い温度の前記被加熱物が前記炉内へ投入されて前記炉内温度が前記加熱処理温度よりも低下した後に、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記加熱処理温度に設定して、前記炉内温度を前記加熱処理温度とする設定温度復帰処理とを含む点にある。
【0008】
また、この目的を達成するための本発明に係る加熱装置は、
炉内に燃焼ガスを供給して前記炉内に投入された金属製の被加熱物を加熱するバーナと、前記バーナの燃焼量を調整して炉内温度を所定の設定温度に調整可能な炉内温度設定手段と、運転を制御する運転制御手段とを備えた加熱装置であって、
前記運転制御手段が、
前記被加熱物を前記炉内へ投入する前に、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記被加熱物の加熱処理を行うときの所定の加熱処理温度よりも高温の高設定温度に設定して、前記炉内温度を前記高設定温度とする予備昇温処理を実行し、
前記被加熱物の加熱処理を行うときの前記加熱処理温度よりも低温、かつ、前記炉内の前記燃焼ガスの露点温度よりも低い温度の前記被加熱物が前記炉内へ投入されて前記炉内温度が前記加熱処理温度よりも低下した後に、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記加熱処理温度に設定して、前記炉内温度を前記加熱処理温度とする設定温度復帰処理を実行する点にある。
【0009】
上記加熱装置及びその温度制御方法の第1特徴構成によれば、被加熱物の炉内への投入時に、炉内温度を被加熱物の加熱処理を行うときの所定の加熱処理温度よりも高温の高設定温度に調整するので、炉内温度を所定の加熱処理温度に調整して被加熱物を炉内に投入する場合よりも、炉内に投入された被加熱物を高温雰囲気で迅速に昇温することができる。よって、炉内に投入された被加熱物の昇温過程においても、燃焼ガス中の水分の被加熱物の表面への結露を防止することができる。
また、被加熱物の炉内への投入後には、炉内温度を加熱処理温度に調整するので、炉内に投入した被加熱物を加熱処理温度で加熱することができる。
【0010】
更に、本特徴構成によれば、被加熱物の炉内への投入時の炉内温度が高設定温度であるために、例えば、被加熱物の投入時の炉内温度を常温とする場合のように、結露を防止するためにバーナの燃焼空気比を大幅に高く調整することなどを行うことを必要とせず、バーナの燃焼空気比を理論空気比近傍としてバーナの燃焼ガスの温度を高く維持することができるので、迅速に被加熱物を昇温して、燃焼ガス中の水分の被加熱物の表面への結露を防止することができる。
【0011】
本発明に係る加熱装置の温度制御方法の第2特徴構成は、上記加熱装置の温度制御方法の第1特徴構成に加えて、
前記加熱装置に、前記バーナの燃焼空気比を設定可能な空気比設定手段が設けられ、
前記被加熱物の前記炉内への投入時に、前記空気比設定手段により、前記バーナの燃焼空気比を前記被加熱物の加熱処理を行うときの所定の加熱処理空気比よりも高い設定空気比に設定する空気比上昇処理を含む点にある。
【0012】
上記加熱装置の温度制御方法の第2特徴構成によれば、被加熱物の炉内への投入時において、バーナの燃焼空気比を理論空気比近傍に空気比とされる所定の加熱処理空気比よりも若干高い設定空気比(例えば、1.4〜3.0程度)として、バーナの燃焼により炉内に供給する燃焼ガスの露点を低下させて、燃焼ガス中の水分の被加熱物の表面での結露を一層抑制することができる。
【0013】
本発明に係る加熱装置の温度制御方法の第3特徴構成は、上記加熱装置の温度制御方法の第1乃至第2特徴構成の何れかに加えて、
前記設定温度復帰処理において、前記被加熱物の前記炉内への投入時からの経過時間が所定の設定経過時間になったときに、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記加熱処理温度に設定する点にある。
【0014】
上記加熱装置の温度制御方法の第3特徴構成によれば、上記投入時からの経過時間として、炉内温度を高設定温度から加熱処理温度に低下させた場合でも、炉内の燃焼ガスの温度が露点以下にならなくなるまでの経過時間を上記設定経過時間として予め求めておき、設定温度復帰処理において、上記投入時からの経過時間がその設定経過時間となったときに、炉内温度設定手段の設定温度を高設定温度から加熱処理温度に変更することになるので、燃焼ガス中の水分の被加熱物の表面での結露を防止しながら、被加熱物の加熱処理温度での加熱処理に移行することができる。
【0015】
本発明に係る加熱装置の温度制御方法の第4特徴構成は、上記加熱装置の温度制御方法の第1乃至第2特徴構成の何れかに加えて、
前記設定温度復帰処理において、前記被加熱物の表面温度が前記燃焼ガスの露点よりも高くなったときに、前記炉内温度設定手段の設定温度を前記加熱処理温度に設定する点にある。
【0016】
上記加熱装置の温度制御方法の第4特徴構成によれば、設定温度復帰処理において、前記被加熱物の表面温度が前記燃焼ガスの露点よりも高くなったときに、炉内温度設定手段の設定温度を高設定温度から加熱処理温度に変更することになるので、燃焼ガス中の水分の被加熱物の表面での結露を防止しながら、被加熱物の加熱処理温度での加熱処理に移行することができる。
また、被加熱物の表面温度が燃焼ガスの露点よりも高くなったときに速やかに、炉内温度設定手段の設定温度を高設定温度から加熱処理温度に変更すれば、被加熱物の温度が加熱処理されるべき温度である加熱処理温度を超えて加熱処理に悪影響を及ぼすことを防止することができる。