特許第6092641号(P6092641)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6092641装飾用シールおよび装飾用シールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092641
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】装飾用シールおよび装飾用シールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 29/00 20060101AFI20170227BHJP
   B44C 5/00 20060101ALI20170227BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20170227BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   A45D29/00
   B44C5/00 G
   B32B27/00 E
   B32B27/16
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-15576(P2013-15576)
(22)【出願日】2013年1月30日
(65)【公開番号】特開2014-144195(P2014-144195A)
(43)【公開日】2014年8月14日
【審査請求日】2015年1月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100175787
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 龍也
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100169812
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 寛志
(72)【発明者】
【氏名】谷 哲也
(72)【発明者】
【氏名】塚越 優子
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−145849(JP,A)
【文献】 英国特許出願公開第00676755(GB,A)
【文献】 特開2009−195410(JP,A)
【文献】 特開2012−166513(JP,A)
【文献】 特許第4953396(JP,B2)
【文献】 特開2011−110817(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 29/00
B32B 27/00
B32B 27/16
B44C 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離シート上に印刷して形成された、紫外線硬化型のプライマーインクで印刷されてなる粘着性を有するプライマー層と、
該プライマー層上に印刷して形成されてなる、少なくとも紫外線硬化型のカラーインクと、必要に応じて用いた紫外線硬化型のホワイトインクとからなる絵柄層(複層である場合を含む)と、
該絵柄層上に、紫外線硬化型のクリアインクで印刷されてなるクリアコート層と、を有し、
前記絵柄層及び前記クリアコート層のうち、少なくとも前記クリアコート層が、前記剥離シートにおける前記プライマー層が設けられている範囲よりも広い範囲にわたって設けられた持ち手部分を備え
前記プライマー層と前記絵柄層と前記クリアコート層が積層している部分における最上部をなす前記クリアコート層の厚みが1〜5μmであり、
前記持ち手部分における前記クリアコート層の厚みが20μm以上であることを特徴とする装飾用シール。
【請求項2】
前記絵柄層及び前記クリアコート層のうち、前記クリアコート層のみが、前記剥離シートにおける前記プライマー層が設けられている範囲よりも広い範囲にわたって設けられており、前記持ち手部分が、前記クリアコート層で形成されている請求項1に記載の装飾用シール。
【請求項3】
前記絵柄層及び前記クリアコート層のうち、前記絵柄層及び前記クリアコート層の両方が、前記剥離シートにおける前記プライマー層が設けられている範囲よりも広い範囲にわたって設けられており、前記持ち手部分が、前記絵柄層と前記クリアコート層とで形成されている請求項1に記載の装飾用シール。
【請求項4】
上記印刷がインクジェット記録方式によってされており、前記プライマー層と前記絵柄層と前記クリアコート層が積層している部分の厚みが40μm以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の装飾用シール。
【請求項5】
爪用のネイルシールである請求項1〜4のいずれか1項に記載の装飾用シール。
【請求項6】
紫外線硬化型のインクで画像を形成するインクジェットプリンターで、剥離シート上に、紫外線硬化型のプライマーインクを用いて粘着性を有するプライマー層を印刷し、
該プライマー層上に、少なくとも紫外線硬化型のカラーインクと、必要に応じて紫外線硬化型のホワイトインクとを用いて所望する絵柄を印刷して絵柄層(複層に形成する場合を含む)を形成し、
該絵柄層上に、紫外線硬化型のクリアインクを用いて印刷してクリアコート層を形成し、
前記絵柄層及び前記クリアコート層の形成において、少なくとも前記クリアコート層を、前記剥離シートにおける前記プライマー層が設けられている範囲よりも広い範囲にわたって設けて持ち手部分を形成し、かつ、前記プライマー層と前記絵柄層と前記クリアコート層が積層している部分における最上部をなす前記クリアコート層の厚みを1〜5μm、及び前記持ち手部分における前記クリアコート層の厚みを20μm以上に形成することを特徴とする装飾用シールの製造方法。
【請求項7】
前記絵柄層及び前記クリアコート層の形成において、前記クリアコート層のみを、前記剥離シートにおける前記プライマー層が設けられている範囲よりも広い範囲にわたって設け、前記クリアコート層で前記持ち手部分を形成する請求項6に記載の装飾用シールの製造方法。
【請求項8】
前記絵柄層及び前記クリアコート層の形成において、前記絵柄層及び前記クリアコート層の両方を、前記剥離シートにおける前記プライマー層が設けられている範囲よりも広い範囲にわたって設け、前記絵柄層と前記クリアコート層とで前記持ち手部分を形成する請求項6に記載の装飾用シールの製造方法。
【請求項9】
前記紫外線硬化型のプライマーインクが、アクリレートオリゴマー、アクリレートモノマー、オキセタン系カチオン重合タイプのモノマーから選ばれる化合物に、光重合開始剤及び粘着性付与剤を加えてなるものであり、かつ、前記インクジェットプリンターで印刷して得たシールを剥離シートから剥がした際に、形成したプライマー層によってシールに粘着性を付与できるものである請求項6〜8のいずれか1項に記載の装飾用シールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄さと柔軟性を兼ね備えた装飾用シールおよび装飾用シールの製造方法に関し、より詳しくは、紫外線硬化型のインクで画像を形成するインクジェット印刷によって、基材(基紙や基材フィルム等)を用いることなく、剥離シート上に機能性の異なる3種類の紫外線硬化型のインクを層状に重ねて付与することで、爪用のネイルシールとして特に有用な、薄さと柔軟性を兼ね備えた装飾用シール、該シールを簡便に作製できる装飾用シールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、従来の刷毛塗りによって彩色するマニュキュアが進化し、爪等に好みの彩色や模様を付与するネイルアートが広まっている。また、携帯電話や多機能携帯電話、さらに、文具や家具や家電製品などの製品に対して、使用者の好みに応じて個々に装飾を施すことも広く行われるようになっている。古くから行われている対象物である爪等にペイントを施すマニュキュア以外の方法で、彩色や模様を付与する手段としては、下記のものが一般的である。粘着層を設けた基材フィルム等の上に印刷により装飾層を形成した装飾用シールを爪等の対象物に貼り付ける方法(特許文献1等参照)か、或いは、支持シート上に、オフセット印刷で、透明層、絵柄層および白色層を、その順序で積層させ、さらにその上に接着剤層を設けた転写シールを用い、対象物に接着層側を載せて支持シートの上から擦り、支持シートを剥離することで、絵柄を転写させる方法(特許文献2参照)等がある。また、爪(曲面)に対しても良好に貼付することのできるネイルシールを提供することを目的として、粘着層上に特有の水性樹脂液を塗り重ねて形成した下地層を介して透明なトップ層を設けることで、下地層を介して粘着層とトップ層を一体の積層構造としたネイルシールについての提案もある(特許文献3参照)。特にネイルシールには、例えば、立体的な装飾を可能とした構成のものや(特許文献4参照)、さらには、立体形状を有する付け爪を作製する方法として、付け爪素材に、インクジェットプリンターで模様を印刷するといったことについても提案がされており(特許文献5参照)、多様な装飾形態が実現されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4953396号公報
【特許文献2】特開2004−337601号公報
【特許文献3】特許第4324241号公報
【特許文献4】特開2007−068621号公報
【特許文献5】特許第4943592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したようなシールによる装飾を立体化する傾向に反し、各種製品の装飾に用いる場合も勿論であるが、特にネイルシールは、従来の刷毛塗りするマニュキュアに代えて日常的に使用されるようになってきていることから、一方で、装飾することで、製品の機能性や指先の動きが損なわれることがないように、できるだけ厚みを感じることがない薄い装飾用シールであることが強く望まれている。これに対し、従来の装飾用シールの多くは、前記した粘着剤を貼り付けた樹脂製フィルム(基材)の上に印刷をした構成のものであり、このような構成のシールでは、薄い基材を使用したとしても基材となるフィルム等による厚みと硬さが避けられず、爪のカーブに沿って貼りにくく、特に大きい面積へ貼付けの際に皺がより、また、その後にシール表面の保護のために行うトップコート液のコーティングも難しいという問題があった。なによりも貼着の際に発生する皺は、その意匠性を大きく損ねるため、爪全体に及ぶ大きい面積のシールとせずに部分的なシールとせざるを得ない状況があり、貼り付けた際に皺が発生しにくい大きい面積の装飾用シールの開発が望まれる。従来の粘着剤層上に絵柄を設ける方式のシールも、基材としての機能が要求されるため、粘着剤層を厚くする必要があり、装飾用シールの厚みを薄くするといった目的を達成できるものではなかった。また、従来の爪等の対象物に絵柄を転写する構成のシートは、基材に印刷する方式のものよりもシールの絵柄部分の厚みを薄くできるが、転写を可能とするためにシールの積層構造が複雑になることに加え、転写シールを使用して厚みの薄い絵柄の全てを、爪の曲面等に良好な状態に転写する操作を行うことは難しく、転写に失敗する場合も多く、より簡単な構造で、しかも簡便な操作によって、厚みの薄い絵柄を爪等の対象物に形成することができる装飾用シートが開発されれば極めて有用である。
【0005】
したがって、本発明の目的は、絵柄を転写する方式でなく、かつ、厚みが厚くなる要因の基材を用いることのない簡単な層構成の装飾用シールでありながら、そのシールの絵柄部分の厚みを極めて薄くすることができ、使用した場合に、大面積でありながら簡便な操作で模様や彩色を形成することができる、耐久性のある従来にない厚みの薄い装飾用シールを提供すること、さらには、上記優れた装飾用シールを簡便に得ることができる装飾用シールの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、剥離シート上に印刷して形成された、紫外線硬化型のプライマーインクで印刷されてなる粘着性を有するプライマー層と、該プライマー層上に印刷して形成されてなる、少なくとも紫外線硬化型のカラーインクと、必要に応じて用いた紫外線硬化型のホワイトインクとからなる絵柄層(複層である場合を含む)と、紫外線硬化型のクリアインクで印刷されてなるクリアコート層とを有することを特徴とする装飾用シールを提供する。
【0007】
上記本発明の装飾用シールの好ましい形態としては、下記のことが挙げられる。前記クリアコート層が、前記プライマー層が設けられている範囲よりも広い範囲に設けられており、さらに、その広い範囲の部分のクリアコート層の厚みが20μm以上であること;上記印刷がインクジェット記録方式によってされており、プライマー層と絵柄層とクリアコート層が積層している部分の厚みが40μm以下であることが挙げられる。
【0008】
本発明の別の実施形態は、紫外線硬化型のインクで画像を形成するインクジェットプリンターで、剥離シート上に、紫外線硬化型のプライマーインクを用いて粘着性を有するプライマー層を印刷し、該プライマー層上に、少なくとも紫外線硬化型のカラーインクと、必要に応じて紫外線硬化型のホワイトインクとを用いて所望する絵柄を印刷して絵柄層(複層に形成する場合を含む)、及び紫外線硬化型のクリアインクを用いて印刷してクリアコート層を形成することを特徴とする装飾用シールの製造方法を提供する。
【0009】
上記本発明の装飾用シールの製造方法の好ましい形態としては、前記紫外線硬化型のプライマーインクが、アクリレートオリゴマー、アクリレートモノマー、オキセタン系カチオン重合タイプのモノマーから選ばれる化合物に、光重合開始剤及び粘着性付与剤を加えてなるものであり、かつ、前記インクジェットプリンターで印刷して得たシールを剥離シートから剥がした際に、形成したプライマー層によってシールに粘着性を付与できるものであることが挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明によれば、絵柄を転写する方式でなく、かつ、基材を用いることのない簡単な層構成の装飾用シールでありながら、そのシールの絵柄部分の厚みを極めて薄くすることができ、使用した場合に、大面積のシールであっても簡便な操作で模様や彩色を形成することができる、耐久性のある従来にない厚みの薄い装飾用シールが提供され、しかも、簡便な方法で上記の優れた装飾用シールを提供することが可能になる。その好ましい形態によれば、極めて厚みの薄い大面積の装飾用シールでありながら、その取扱い性にも優れ、爪等の装飾に用いる場合に、簡便に、その表面に皺のない良好な状態で一体化させることができ、シールを貼着した後に、シール表面の耐久性を高めるために行われているトップコート用溶液を刷毛塗りした場合の操作も容易にでき、その結果、装飾用シールによって付与された彩色や模様は、皺等の発生がない意匠性に優れるものであると同時に、その耐久性の高いものに容易にすることができる。
【0011】
より具体的には、下記の効果が得られる。
(a)本発明の装飾用シールを構成する、プライマー層、インクからなる絵柄層およびクリアコート層は、それぞれ、剥離シートの上に直接、インクジェット記録装置で印刷することで形成されたものであるため、その厚みは、従来にない最小限にとどめた極めて薄いものになる。例えば、ネイルシールとした場合に、爪を装飾する部分となるプライマー層と絵柄層とクリアコート層が積層している部分の厚みが40μm以下、所望すれば、25μm程度の極めて薄い厚みのシールとすることも可能である。
(b)本発明の装飾用シールは、従来のように基材を必要としないので、従来の基材(フィルム等)を必要としていた方式のシールと比べて、明らかに基材の分だけ薄くなり、柔軟性のあるシールとなる。このため、使用の際に、シールを貼付し、貼付したシール表面をトップコート用溶液でコーティングするという一連の操作が容易に、しかも良好な状態ででき、使い勝手に優れるものである。
(c)本発明の装飾用シールは、薄さと柔軟性を兼ね備えたものであるので、爪の曲面による貼付け時の皺も寄りにくくなるので、これまで、薄いものの場合には、爪の一部分にしか貼付けができなかったネイルシールの、爪全面への貼付けも可能となり、その結果、より多様な意匠を表現した装飾が実現できるようになる。
(d)本発明の装飾用シールを用いることで、爪全面へ容易に、多彩な絵柄模様や多様な彩色が施された極めて薄いシールを良好な状態で貼付けることが可能になるので、従来行っていたような、ベースカラーを塗る必要もアートを描く必要もなくなり、本発明の装飾用シールをネイルシールとして活用することで、ベースカラーとその上のアートの施術が一工程で済むようになり、簡便に意匠性に優れる爪の装飾が可能になる。
(e)本発明の装飾用シールは、紫外線硬化型のインクで画像を形成するインクジェットプリンターを用いて通常の印刷を行うのと同様に容易に製造することができるので、特に絵柄層を、多様な模様の画像や所望する写真画像として形成することが可能になり、この結果、得られる装飾用シールの意匠の幅は格段に多様なものになる。さらに、インクジェット印刷では、形成するインク層の厚さを自在にコントロールできるので、絵柄層の形成と同時に或いはこれに連続して、層の厚みが厚い装飾用シールの持ち手となる部分を簡便に形成することができる。さらに、例えば、インクジェット印刷によって、絵柄層の縁となる部分の厚みを他の部分よりも厚く形成することも容易であり、このように構成すれば、縁部分の強度を向上させることができるので、本発明の装飾用シールを剥離して使用する場合の操作がより円滑なものになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の装飾用シールの一例を示す図である。
図2図1のシールの模式的なA−A断面図である。
図3図1のシールの模式的なB−B断面図である。
図4図1のシールを用いて爪を装飾する場合の操作の一例を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について、本発明のシールの好ましい一例としてネイルシールを挙げて、図面を参照しながら説明する。図1および2に示した爪の装飾に用いる本発明の装飾用シールを作製する手順としては、例えば、下記のようにして簡便に作製することができる。
【0014】
紫外線硬化型のインクジェットプリンターと、各層を形成するための機能をそれぞれに有する紫外線硬化型の各インクを用い、剥離シート(1)上に、下記の順で、それぞれの層を直接印刷する。
まず、剥離シート(1)上に、紫外線硬化型のプライマーインクで、プライマー層(2)を印刷して形成することを要する。図1および2に例示したシールでは、形成したプライマー層(2)の上に、さらに、紫外線硬化型のカラーインクと、必要に応じて紫外線硬化型のホワイトインクを用いて印刷して、絵柄層(3)を形成する。絵柄層(3)は、複数の層からなる複層としてもよく、例えば、多彩なカラーインクで形成した絵柄がはっきりとした意匠性のものにする場合は、複数の絵柄層の最下部層に、ホワイトインクを使用してなる白色の下塗り層を形成し、その上にカラーインクで絵柄を形成して複層とするとよい。
【0015】
図1および2に例示したシールでは、続いて、その上に紫外線硬化型のクリアインクを用いて印刷して、硬いクリアコート層(4)を形成することで、本発明の装飾用シールを作製する。この硬いクリアコート層(4)を積層構造中に形成することで、例えば、絵柄層(3)の形成に用いたホワイトインク等により生じる恐れのあるシールの反りや皺を防止することができる。また、クリアコート層(4)は硬いので、最上部全体に印刷することで、傷の防止効果も得られる。しかし、クリアコート層は、必ずしもその最上部に形成しなくてもよく、例えば、クリアコート層(4)が絵柄層(3)の下や間にあっても構わない(不図示)。最上部に形成した場合と比較して多少の強度が落ちるものの、本発明の装飾用シールを構成する積層構造中に硬いクリアコート層(4)を形成したことで、離型シートから剥離して使用できる形態の装飾用シールとできる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、下記のようにして印刷を行うことで、装飾用シールの構造をいわゆる持ち手となる部分が形成されたものにでき、これにより、使用の際に離型紙から貼付するシール部分を剥がす場合の操作性を向上させたものにできる。具体的には、前記したクリアインクを用いて印刷してクリアコート層(4)を形成する場合に、例えば、図1に示したように、少なくともプライマー層(2)が設けられている範囲よりも広い範囲にわたってクリアコート層(4)を設け、さらに、図3(A)に示したように、その広い範囲の部分のクリアコート層(4)の厚みが、前記プライマー層(2)の厚みと前記絵柄層(3)の厚みとを合わせた厚みよりも厚く形成し、この部分を持ち手として機能するものとすることが好ましい。また、持ち手を形成するための別の方法としては、図3(B)に示したようにすることによっても容易に形成することができる。この場合も、図1に示したように、少なくともプライマー層(2)が設けられている範囲よりも広い範囲にわたってクリアコート層(4)を設けることは上記の場合と同様であるが、図3(B)に示したように、クリアコート層(4)だけでなく絵柄層(3)を設ける範囲を、プライマー層(2)が設けられている範囲よりも広くする。そして、この場合は、図3(B)に示したように、絵柄層(3)の厚みを、少なくとも前記プライマー層(2)の厚みの分だけ厚くすることで、この部分の絵柄層(3)とクリアコート層(4)とで、持ち手として機能するのに十分な厚みを有する部分が形成される。持ち手を形成するための更に別の方法としては、図3(C)に示したようにすることによっても容易に形成することができる。この場合も、図1に示したように、少なくともプライマー層(2)が設けられている範囲よりも広い範囲にわたってクリアコート層(4)を設けることは上記と同様であるが、図3(C)に示したように、クリアコート層(4)持ち手となる部分を更に厚くすることで、持ち手として機能するのにより十分な厚みの部分が形成される。
【0017】
上記において、他の部分よりも厚い持ち手となる部分を形成するために必要となる層の厚みを調整するための具体的な方法は、前記した紫外線硬化型のインクジェットプリンターを用い、その印刷条件を調整すれば容易に形成することができる。すなわち、厚みを厚くする必要のある領域部分は、濃い画像を形成する場合と同様に、その領域内に付与されるインクのドット数を増加させることで、極めて容易に、通常の画像形成と同様の操作で形成できる。このように、他の部分を形成するのと同様のインクを用い、単に濃淡部分の画像を記録すると同様に、印刷領域のインクの量をコントロールすることで形成することができる。その他の手法としては、厚みを厚くする必要のある領域部分の形成に使用するインクの濃度を最大に高めて、その層の他の領域を形成に使用するためのインクよりも濃度を高めたものを使用することによっても容易に形成することができる。
【0018】
本発明の装飾用シールをネイルシールとして爪の装飾に使用する場合は、以下のようにすることが好ましい(図4参照)。まず、爪に、ジェルやベースコートなどで下処理をすることが好ましい。そして、所望の絵柄や色のネイルシールを選び、先に述べたようにして形成した持ち手の部分を摘まんで剥がし、これを、下地処理した爪に、剥がしたネイルシールのプライマー層(2)側が爪の表面になるようにして貼付ける。その後、前記した持ち手部分を取り、さらに、爪に比べてネイルシールが大きい余分な部分をハサミで切り取る。その後、しっかりと爪の表面へシールを貼り付けた後、シール表面を、トップジェルやトップコート溶液を用いてコーティングをする。このようにすれば、トップコート等によって、より強度のある意匠性の高い爪への装飾が可能になる。
【0019】
次に、本発明の装飾用シールを構成する各層の形成材料について説明する。
(剥離シート)
特に限定されず、市販の離型紙(合成樹脂製のフィルムを含む)全般が使用可能であり、例えば、紙にシリコーン系離型剤をコートした安価なタイプのものなどが好適に使用できる。
【0020】
(プライマー層)
各社市販品の紫外線硬化型のインクジェットプリンターに適合した、インクジェット用紫外線硬化タイプのインクが使用できるが、本発明では、装飾用シールを剥離シートから剥がした場合に、プライマー層が粘着性を有するものとなることを要するため、市販品の中でも、粘着力のあるタイプのインクを使用することを要する。このような印刷して形成した層に粘着性を持たせるためには、使用するインクとしては、例えば、アクリレートオリゴマー又はアクリレートモノマー、又は2−エチルヘキシルオキセタン等のオキセタン系カチオン重合タイプのモノマーなどに、光重合開始剤や粘着性付与剤等を加えてなる紫外線硬化タイプのインク等を使用することができる。プライマー層の厚みは、例えば、10〜15μm程度あれば十分である。
【0021】
(絵柄層)
各社市販品のインクジェットプリンターに適合した、インクジェット用の紫外線硬化タイプのインク(以下、UVインクと呼ぶ)が使用できる。その形成成分としては、例えば、バインダーの樹脂としてのアクリレート基を有するモノマー又はオリゴマー、重合開始剤及び顔料を含むものが挙げられる。UVインクを用いた紫外線硬化型のインクジェット印刷において、使用されるUVインクは、市販されているものをいずれも使用できるが、非水性UVインクであることが好ましい。本発明で使用される非水性UVインクは特に制限はなく、市販の非水性UVインクや、光重合モノマー単独あるいは光重合オリゴマーを組み合わせた光重合組成物に、顔料を分散させて新たに調製した非水性UVインクとしたものをいずれも用いることができる。また、バインダー樹脂の形成材料として、ウレタンアクリレートを含むものを使用することが特に好ましい。その理由は、ウレタンアクリレートが柔らかく、例えば、爪等の曲面に追随し易いためである。これらのインクで形成する絵柄層の厚みは、その絵柄の種類や、ホワイトインクで模様の下地として白色層を形成するか否かによっても異なるが、例えば、2〜20μm程度である。さらに、白色層を、絵柄を設ける範囲よりも広い範囲に形成し、これを後述する持ち手の一部とすることもできる。
【0022】
(クリアコート層)
各社市販品の紫外線硬化タイプのインクジェットプリンターに適合した、インクジェット用の紫外線硬化タイプのインクの中で、トップコート用として市販されている、透明性の高いインクをいずれも使用できる。例えば、バインダーの樹脂としてのアクリレート基を有するモノマー又はオリゴマー、及び重合開始剤を含むものが挙げられる。特に使用の際に、貼付したシール表面を、トップジェルやトップコート溶液を用いてコーティングしない態様の装飾用シールにする場合には、当該装飾用シールを構成するクリアコート層が、硬さ等の基材的な性質を有するものとなるようなインクを用いることが好ましい。また、クリアコート層を装飾用シールの最上部に印刷することで、シールの耐傷性を十分なものとすることができる。最上部に印刷する場合のクリアコート層の厚みは、例えば、1〜5μm程度あれば十分である。クリアコート層の形成に用いるインクで、持ち手となる部分を形成した場合の持ち手となる部分の厚みは、20μm以上、例えば、25μm〜40μm程度あれば持ち手として十分に機能するものとなることを確認した。
【実施例】
【0023】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
UVインクジェットプリンターである(株)ミマキエンジニアリング製のインクジェットプリンターUJF−3042HGを使用し、剥離紙(1)として、リンテック社製WG−80を使用した。そして、下記の手順で、上記UVインクジェットプリンターで、この剥離紙の上に直接印刷をしてネイルシールを作製した。ここで、膜厚は、ミツトヨ社製デジタル膜厚計:マイクロメータMDC−25Mで測定した。
【0024】
〔実施例1〕
まず、上記剥離紙(1)上に、UVプライマーインクとしてPR−100〔(株)ミマキエンジニアリング製〕を用い、上記UVインクジェットプリンター網点100%で、爪の形に印刷してプライマー層(2)を形成した。プライマー層の膜厚を測定すると約15μmであった。次に、形成したプライマー層(2)の上に、ホワイトインクとしてLF−140W〔(株)ミマキエンジニアリング製、UV硬化インクカートリッジ〕を用い、カラーインクとしてLF−140各色〔(株)ミマキエンジニアリング製、UV硬化インクカートリッジ〕を使用して、花の絵柄(絵柄層(3))を印刷した。絵柄層の膜厚を測定すると2〜6μm程度であった。
【0025】
次に、クリアインクとしてLH−100Cl〔(株)ミマキエンジニアリング製、UV硬化インクカートリッジ クリア〕を使用して、プライマー層(2)と絵柄層(3)を形成した爪の形の部分と、これに続く持ち手となる部分に下記のように印刷してクリアコート層(4)を形成した。すなわち、爪の形の部分は網点5%で、持ち手となる部分は網点100%で、連続印刷を2回行い、シール全面にクリアコート層(4)を形成した。クリアコート層の膜厚を測定すると爪の形の部分で1〜2μm、持ち手となる部分で約25μmであった。上記のようにして、特に持ち手となる部分を最大濃度のクリアインクで印刷することで、図1および図3(A)に示した構成の、爪全体を覆うことができる大面積のネイルシールを作製した。上記のようにして剥離紙(1)上に形成された花の絵柄の装飾用シールは、図2(A)に示したように、粘着性を有するプライマー層と絵柄(絵柄層)とクリアコート層が一体となり、ネイルシールの厚みは約25μmであり、従来の同種のネイルシール(80μm以上)よりも格段に薄いものであることを確認した。
【0026】
〔実施例2〕
実施例1で、花柄を印刷する前に1層、実施例1で使用したと同じホワイトインクを用い、剥離紙(1)上に形成したプライマー層(2)と同じ範囲に網点50%で印刷して白色の層(膜厚約12μm)を形成したこと以外は実施例1と同様にして、本実施例のネイルシールを作成した(図2(B)参照)。得られたネイルシールでは、爪の形の部分の厚みが約37μmであり、より鮮明な模様のものとなった。
【0027】
〔実施例3〕
実施例2で、花柄を印刷する前にホワイトインクで形成した白色の層の範囲を、プライマー層と同じ範囲と、これに続けて持ち手となる部分にも網点50%で印刷して白色層(膜厚約12μm)を形成したこと以外は実施例2と同様にしてシールを作成した(図3(B)参照)。ネイルシールの爪部分の厚みは約37μmで、持ち手の厚みは約37μmであった。
【0028】
参考例4〕
実施例2で、クリアインクを用いて形成したクリアコート層(4)を、花柄を印刷する前に形成した白色の層と、花柄の印刷との間に印刷して形成したこと以外は実施例2と同様にしてシールを作成した(不図示)。ネイルシールの爪部分の厚みは約32μmであった。
【0029】
〔比較例1〕
実施例3でクリアコート層を形成しなかったこと以外は実施例3と同様にしてネイルシールを作成した。ネイルシールの爪の形の部分の厚みは約35μmで、持ち手となる部分の厚みは約12μmであった。
【0030】
(評価)
上記実施例1〜3、参考例4、および比較例1で作製した花の絵柄のネイルシールを下記のようにして使用して評価した。具体的には、ジェルで下処理をした爪に、剥離紙から花の絵柄ネイルシールを剥がして貼付けた。その際、実施例1〜3および参考例4のものは、いずれも剥離紙からシールを容易に剥がすことができた。そして、爪に実施例1〜3および参考例4の各シールをそれぞれに貼った状態を目視で観察したところ、爪全体にわたって、外観として皺のない意匠性に優れたネイルアートが作製できた。また、爪に貼ったシールを爪で強く引っ掻いたところ、参考例4のネイルシールには傷がついたものの、実施例1〜3のネイルシールは、爪の引っ掻きにも耐えるものであった。しかし、比較例1で作製したシールではシールが大きくカールし、剥離紙から剥がすと丸まってしまい、爪に良好な状態で貼ることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の装飾用シールは、紫外線硬化型のインクで画像を形成するインクジェットプリンターを用いて通常の印刷を行うのと同様に容易に製造できるので、特に絵柄層を、簡便に多様な模様の画像や所望する写真画像とすることが可能であり、この結果、得られる装飾用シールの意匠の幅は格段に多彩で多様なものになる。さらに、インクジェット印刷を利用して製造した場合、形成する層の厚みは自在にコントロールできるので、装飾用シールの、厚みの厚い持ち手となる部分の形成を簡便にすることができ、また、例えば、絵柄層の縁となる部分を厚めに形成すれば、絵柄に影響を与えることなく、簡便に縁部分の強度を向上させることができるので、剥離操作がより円滑な装飾用シールとできる。本発明が提供する装飾用シールは、爪用として好適であるが、上記したように簡便に多彩で多様なシールが製造できるので、これに限定されず、その他の用途として、携帯電話等の携帯機器、文具や家具や家電製品などの製品に対する装飾用として有用である。そして、本発明が提供する装飾用シールをこれらのものに適宜に貼り付けるだけで、その意匠性を高めることができ、これらの製品を、より使用者の要望にマッチした個性的なデザインの製品にできると同時に、シールの厚みが薄く、しかも、所望する大きな面積の適宜な形状のシールが簡便に得られるので、上記に挙げたような製品に対する美麗な保護シートとしての活用が期待される。
【符号の説明】
【0032】
1:剥離紙
2:プライマー層
3:絵柄層
4:クリアインク層
図1
図2
図3
図4