(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
テスト体液サンプルを、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)、及び正常肝臓からなる4つのグループから選択される2つのグループのどちらかに分類する方法であって、
前記テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定することを含み、
非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か正常肝臓かに分類するために発現量を測定するノンコーディングRNAが、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1202、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-320d、hsa-miR-1271-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-1、及びhsa-miR-16-5pからなる組み合わせであり、
非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か慢性C型肝炎かに分類するために発現量を測定するノンコーディングRNAが、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1202、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-320d、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、及びhsa-miR-1268aからなる組み合わせであり、
非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か慢性B型肝炎かに分類するために発現量を測定するノンコーディングRNAが、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、及びhsa-miR-720からなる組み合わせであり、
慢性C型肝炎か正常肝臓かに分類するために発現量を測定するノンコーディングRNAが、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、及びhsa-miR-1207-5pからなる組み合わせであり、
慢性B型肝炎か正常肝臓かに分類するために発現量を測定するノンコーディングRNAが、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1271-5p、及びhsa-miR-22-3pからなる組み合わせであり、
慢性B型肝炎か慢性C型肝炎かに分類するために発現量を測定するノンコーディングRNAが、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1202、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-320d、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、及びhsa-miR-1268aからなる組み合わせである、方法。
前記ノンコーディングRNA又は前記マイクロRNAが、前記体液サンプルのエキソソームリッチフラクションにおけるRNAである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、以下の態様、すなわち、
[1] テスト体液サンプルを、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)、及び正常肝臓からなる4つのグループから選択される2つのグループのどちらかに分類する方法であって、前記テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定することを含む、方法;
[2] 前記1又は複数のノンコーディングRNAがhsa-miR-451aを含む、[1]記載の方法;
[3] さらに、前記テスト体液サンプル中の前記1又は複数のノンコーディングRNAの発現量と、前記2つのグループの標本体液サンプルから得られた標本データ情報とを使用して、前記テスト体液サンプルが前記2つのグループのいずれに属するか判別することを含む、[1]又は[2]に記載の方法;
[4] テスト体液サンプルを非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か正常肝臓かに分類する方法であって、前記テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定することを含み、前記1又は複数のノンコーディングRNAが、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1202、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-320d、hsa-miR-1271-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-1、hsa-miR-16-5p、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法;
[5] テスト体液サンプルを非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か慢性C型肝炎かに分類する方法であって、前記テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定することを含み、前記1又は複数のノンコーディングRNAが、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1202、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-320d、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268a、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法;
[6] テスト体液サンプルを非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か慢性B型肝炎かに分類する方法であって、前記テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定することを含み、前記1又は複数のノンコーディングRNAが、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-720、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法;
[7] テスト体液サンプルを、慢性C型肝炎か正常肝臓かに分類する方法であって、前記テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定することを含み、前記1又は複数のノンコーディングRNAが、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-1207-5p、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法;
[8] テスト体液サンプルを、慢性B型肝炎か正常肝臓かに分類する方法であって、前記テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定することを含み、前記1又は複数のノンコーディングRNAが、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1271-5p、hsa-miR-22-3p、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法;
[9] テスト体液サンプルを、慢性B型肝炎か慢性C型肝炎かに分類する方法であって、前記テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定することを含み、前記1又は複数のノンコーディングRNAが、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1202、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-320d、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268a、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法;
[10] 前記ノンコーディングRNAが、マイクロRNAである、[1]から[3]のいずれかに記載の方法;
[11] テスト体液サンプルを、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か正常肝臓かに分類する方法であって、前記テスト体液サンプル中の1又は複数のマイクロRNAの発現量を測定することを含み、前記1又は複数のマイクロRNAが、hsa-miR-451、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-92a、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1246、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1202、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-22、hsa-miR-1915、hsa-miR-1、hsa-miR-16、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法;
[12] テスト体液サンプルを、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か慢性C型肝炎かに分類する方法であって、前記テスト体液サンプル中の1又は複数のマイクロRNAの発現量を測定することを含み、前記1又は複数のマイクロRNAが、hsa-miR-451、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-92a、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1246、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1202、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-22、hsa-miR-1915、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法;
[13] テスト体液サンプルを、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か慢性B型肝炎かに分類する方法であって、前記テスト体液サンプル中のマイクロRNAの発現量を測定することを含み、前記マイクロRNAが、hsa-miR-451である、方法;
[14] テスト体液サンプルを、慢性C型肝炎か正常肝臓かに分類する方法であって、前記テスト体液サンプル中の1又は複数のマイクロRNAの発現量を測定することを含み、前記1又は複数のマイクロRNAが、hsa-miR-451、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-92a、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1246、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1202、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-483-5p、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法;
[15] テスト体液サンプルを、慢性B型肝炎か正常肝臓かに分類する方法であって、前記テスト体液サンプル中の1又は複数のマイクロRNAの発現量を測定することを含み、前記1又は複数のマイクロRNAが、hsa-miR-451、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-92a、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1246、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法;
[16] テスト体液サンプルを、慢性B型肝炎か慢性C型肝炎かに分類する方法であって、前記テスト体液サンプル中の1又は複数のマイクロRNAの発現量を測定することを含み、前記1又は複数のマイクロRNAが、hsa-miR-451、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-92a、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1246、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1202、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-22、hsa-miR-1915、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、方法;
[17]前記体液サンプルが、血液サンプルである、[1]から[16]のいずれかに記載の方法;
[18] 前記ノンコーディングRNA又は前記マイクロRNAが、前記体液サンプルのエキソソームリッチフラクションにおけるRNAである、[1]から[17]のいずれかに記載の方法;
[19] テスト体液サンプルを、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)、及び正常肝臓からなる4つのグループのいずれかに分類する方法であって、[1]から[18]のいずれかに記載の方法を用いて前記末梢血サンプルを分類することを含む、方法;
[20] hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1202、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-320d、hsa-miR-1271-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268a、hsa-miR-1、hsa-miR-16-5p、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるノンコーディングRNAの使用であって、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、及び/又は非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)のマーカーとしての使用;
[21] hsa-miR-451、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-92a、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1246、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1202、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-22、hsa-miR-1915、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268、hsa-miR-1、hsa-miR-16、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるマイクロRNAの使用であって、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、及び/又は非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)のマーカーとしての使用;
[22] [1]から[19]に記載の方法に使用するリアルタイムPCRキットであって、テスト体液サンプル中の前記1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を検出できるプライマー及び試薬を含むキット;
[23] [1]から[19]に記載の方法に使用するマイクロアレイであって、
テスト体液サンプル中の前記1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を検出できるプローブを含むマイクロアレイ;
[24] [22]記載のキット又は[23]記載のマイクロアレイの使用方法であって、[1]から[19]のいずれかに記載の方法における前記1又は複数のノンコーディングRNAの測定を前記キット又は前記マイクロアレイを用いて行うことを含む、使用方法;
[25] 体液サンプルにおけるhsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1202、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-320d、hsa-miR-1271-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268a、hsa-miR-1、hsa-miR-16-5p、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1又は複数のノンコーディングRNAの発現データを含むデータセットであって、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)、及び正常肝臓からなる4つのグループから選択される1つ以上のグループに属する個体の標本体液サンプルから得られた前記ノンコーディングRNAの発現データを含み、[1]から[19]のいずれかに記載の方法に使用するためのデータセット;
[26] [1]から[19]のいずれかに記載の方法における次世代シーケンサーの使用であって、次世代シーケンサーを用いて前記テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定することを含む使用;
[27] [1]から[19]のいずれかに記載の方法を次世代シーケンサーで行うためのキットであって、テスト体液サンプル中の前記1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定できるプライマー及び試薬を含むキット;
に関する。
【0009】
一又は複数の実施形態において「ノンコーディングRNA(non-coding RNA)」は、マイクロRNA及びtRNAを含む。一又は複数の実施形態において「マイクロRNA(microRNA/miRNA)」は、低分子ノンコーディングRNAの一種をいい、当該技術分野において使用される通常の意味を示す。本明細書においてIDを用いて言及するマイクロRNAは、データベースを参照できる。特に言及の無い場合、本明細書におけるマイクロRNAの名称及びアクセッション番号は、miRBase (http://www.miRbase.org/)のRelease 18(2011年11月)のデータを参照する。また、本明細書においてマイクロRNAは、特に言及がない場合、成熟型の16〜25塩基からなるマイクロRNAをいう。
【0010】
本明細書において「体液」は、エキソソームを含む体液を含み、一又は複数の実施形態において、血液、リンパ液、腹水、胸膜液、唾液、尿、及び母乳を含みうる。採取のし易さ及び採取される被験者への負担軽減の点から、血液は末梢血が好ましい。一又は複数の実施形態において、「体液サンプル」は、前記体液又は前記体液から得られうるサンプルを含みうる。一又は複数の実施形態において、体液サンプルとして血漿、血清の形態が挙げられる。さらに、前記体液サンプルは、一又は複数の実施形態において、前記体液中のエキソソームが濃縮若しくは粗精製されたフラクション(以下、「エキソソームリッチフラクション」とも言う。)の形態或いは前記体液から単離若しくは精製されたエキソソームの形態であってもよい。体液サンプルは、一又は複数の実施形態において、ノンコーディングRNA又はマイクロRNAの発現量の検出の再現性の点から、エキソソームリッチフラクション或いは単離若しくは精製されたエキソソームの形態であることが好ましい。エキソソームリッチフラクションの調製及び/又はエキソソームの単離若しくは精製は、公知方法や市販のキット等を用いて行うことができ、また、後述する実施例の記載に従って行うことができる。よって、一又は複数の実施形態において、採取のし易さ及び採取される被験者への負担軽減の点、並びに、ノンコーディングRNA又はマイクロRNAの発現量の検出の再現性の点から、前記体液サンプルとしては、末梢血の血漿又は血清から調製したエキソソームリッチフラクションであることが好ましい。
【0011】
本明細書において「テスト体液サンプル」とは、分類方法によって分類される体液サンプルをいう。本明細書において「標本体液サンプル」とは、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)、又は正常肝臓のいずれかに属することが既知の個体から得られた体液サンプルをいう。なお、本明細書において特に言及の無い場合、「体液サンプル」は、前記テスト体液サンプル及び前記標本体液サンプルを含みうる。
【0012】
本明細書において「エキソソーム(exosome)」とは、細胞から分泌される膜小胞の1つであって、一般に、電子顕微鏡観察により直径が30〜100nmと観察され、密度勾配超遠心分離により密度が1.13g/ml前後の画分に分布するとされるものをいう。細胞は、細胞質内の不要なタンパク質やアミノ酸などを膜構造体(エキソソーム)で包んだうえで細胞外に輸送する。エキソソームは、体液中を循環することが知られている。さらに、最近ではエキソソームが細胞肝の情報伝達に関わっていることが報告されている。また、がん細胞が自らのマイクロRNAをエキソソームに封入して分泌することが明らかになってきた(例えば、上記特許文献2)。
【0013】
前記体液を供与する個体は、一又は複数の実施形態において、ヒト又は非ヒト動物が挙げられる。前記非ヒト動物としては、一又は複数の実施形態において、哺乳類が挙げられ、中でも、霊長類、げっ歯類などが挙げられる。
【0014】
本明細書において「慢性C型肝炎」とは、C型慢性肝炎とも呼ばれ、一般に、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染し、肝機能の異常(肝炎)が持続的に続く(一般的には6カ月以上続く)状態の疾患をいう。以下、慢性C型肝炎を「CHC」と表すこともある。本明細書において「慢性B型肝炎」とは、B型慢性肝炎とも呼ばれ、一般に、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染し、肝機能の異常(肝炎)が持続的に続く(一般的には6カ月以上続く)状態の疾患をいう。以下、慢性B型肝炎を「CHB」と表すこともある。慢性肝炎は、多くの場合、徐々に病気が進行し、肝硬変となり、さらには肝がんに移行すると言われる。慢性C型肝炎及び慢性B型肝炎は、通常、血液検査によるC型/B型肝炎ウイルスの感染及び肝炎(肝機能の異常)の検出、超音波検査、CT/MRIなどの情報に基づき、医師により診断される。さらに詳細な疾患の検査や進行の程度を知るために肝生検が行われることもある。一般に、血液検査による肝炎又は肝機能異常の検出は、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ、GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)とも言う。)及びALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ、GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスフェラーゼ)ともいう。)の酵素量(例えば、IU/Lの単位)を測定することで行われるが、これに限定されない。
【0015】
本明細書において「非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)」とは、中性脂肪を主とする脂肪の蓄積が幹細胞に起こり、非飲酒者(例えば、エタノール換算で1日20g未満)にもかかわらずアルコール性肝障害と同様の病理所見が認められる疾患をいう。従来、脂肪肝は両性の可逆性疾患であると考えられてきたが、脂肪肝の中でも、NASHのように肝硬変、肝がんへと進行する可能性のあるものがあることが分かり、生活習慣病の1つとして重要性が認識されている。NASHの診断は、一般に下記3項目を満たすことが条件とされる;1)非飲酒者である(例えば、エタノール換算で1日20g未満)、2)肝組織所見が脂肪肝炎(大滴性の脂肪沈着、炎症細胞浸潤、肝細胞の風船様腫大など)である、3)他の原因による肝疾患の除外。
【0016】
すなわち、現時点ではNASHの診断における肝生検はゴールドスタンダードである。しかし、肝生検は、患者に負担がかかる(侵襲的である)と言える。よって、肝生検を回避して臨床情報を得ることができれば、患者の負担を軽減できる。一又は複数の実施形態において、本開示は、テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量又は発現パターンに基づいて、テスト体液サンプルを、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)、及び正常肝臓からなる4つのグループから選択される2つのグループのどちらかに分類できるという知見に基づく。
【0017】
本明細書において「正常肝臓」とは、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)には診断されない肝臓をいい、一又は複数の実施形態において、血液検査(例えば、ASTやALTの測定)において肝炎又は肝機能異常の検出がされない肝臓をいう。以下、正常肝臓を「NL」と表すこともある。
【0018】
[分類方法]
一又は複数の実施形態において、本開示は、テスト体液サンプルを、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)、及び正常肝臓からなる4つのグループから選択されうる2つのグループのどちらかに分類する方法(以下、「本開示の分類方法」ともいう。)に関する。本開示の分類方法は、一態様において、客観的又は統計学的な分類方法であって、診断には該当しない、或いは、診断を含まない。本開示の分類方法による結果は、診断の基礎となるデータとなる場合もある。
【0019】
第1実施形態の分類方法として、テスト体液サンプルを、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か正常肝臓かに分類する方法が挙げられる。第2実施形態の分類方法として、テスト体液サンプルを、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か慢性C型肝炎かに分類する方法が挙げられる。第3実施形態の分類方法として、テスト体液サンプルを、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か慢性B型肝炎かに分類する方法が挙げられる。第4実施形態の分類方法として、テスト体液サンプルを、慢性C型肝炎か正常肝臓かに分類する方法が挙げられる。第5実施形態の分類方法として、テスト体液サンプルを、慢性B型肝炎か正常肝臓かに分類する方法が挙げられる。第6実施形態の分類方法として、テスト体液サンプルを、慢性B型肝炎か慢性C型肝炎かに分類する方法が挙げられる。なお、第1〜第6の実施形態の分類方法には、「慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)、及び正常肝臓からなる4つのグループから2つのグループを選択する工程」が含まれなくてもよく、含まれてもよい。第7実施形態の分類方法として、第1〜第6の実施形態の分類方法の結果の全部又は一部から、テスト体液サンプルを、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)、及び正常肝臓のいずれかに分類する方法が挙げられる。
【0020】
本開示の分類方法は、テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定することを含む。本明細書において、「体液サンプル中のノンコーディングRNAの発現量の測定」とは、体液サンプル中に含まれる所定の配列のRNAの量を求めることをいう。RNAの量は、一又は複数の実施形態において、絶対値であってもよく、内部標準に対する相対値であってもよい。ノンコーディングRNAの量の測定方法は、公知の方法及び今後開発される方法で行ってよく、適宜市販のキットを利用できる。限定されない具体例としては、体液サンプル中のRNAからcDNAを合成した後、定量PCR、リアルタイム定量PCR、又はマイクロアレイ等で測定することが挙げられる。なお、本明細書において「分類方法に用いるノンコーディングRNA」とは、発現量を測定する対象の1又は複数のノンコーディングRNAをいい、分類方法においてその(それらの)ノンコーディングRNAの発現量を測定することをいう。
【0021】
本開示の分類方法は、一又は複数の実施形態において、さらに、前記テスト体液サンプル中の前記1又は複数のノンコーディングRNAの発現量と、前記2つのグループの標本体液サンプルから得られた標本データ情報とを使用して、前記テスト体液サンプルが前記2つのグループのいずれに属するか判別することを含む。
【0022】
上述のとおり、標本体液サンプルは、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)、又は正常肝臓のいずれかのグループに属することが既知の個体から得られた体液サンプルをいう。個体が前記グループに属するか否かは、医師の診断に基づくことができる。一又は複数の実施形態において、各グループに属する個体には、複数のグループに属する個体、1型又は2型HIVの重感染、非代償性肝疾患、臓器移植、免疫抑制、自己免疫疾患、20g/日を超えるアルコール摂取、又は静注薬物乱用の既往歴のいずれかに該当する個体は含まれないとすることができる。
【0023】
本明細書において「標本データ情報」は、一又は複数の実施形態において、分類するグループの標本体液サンプルの1又は複数のノンコーディングRNAの発現量のデータ及び/又は該データから得られた情報をいう。前記標本データ情報に含まれうる標本体液サンプル数は、グループごとに1以上であり、分類の正確性の向上の点から2以上が好ましく、より好ましくは4以上、さらに好ましくは7以上であり、多いほど好ましい。標本体液サンプル数の上限は特に制限されず、判別の計算が可能な数が挙げられる。また、一又は複数の実施形態において、テスト体液サンプルの1又は複数のノンコーディングRNAと標本体液サンプルの1又は複数のノンコーディングRNAは共通する。
【0024】
前記判別は、一又は複数の実施形態において、判別分析で行うことができる。前記判別分析は、一又は複数の実施形態において、判別関数を用いた判別であってもよく、又は、距離による判別であってもよい。前記判別関数は、一又は複数の実施形態において、線形関数であってもよく、非線形関数であってもよい。前記距離による判別は、一又は複数の実施形態において、マハラノビス距離を使用できる。前記判別分析は、一又は複数の実施形態において、R等の統計解析ソフトを用いて行うことができる。したがって、前記「標本データ情報」は、一又は複数の実施形態において、前記判別分析の変数となる発現量をもたらすノンコーディングRNAの種類及びその発現量のデータに加えて、或いは換えて、判別のための判別関数や判別閾値を含んでもよい。
【0025】
分類の正確性の向上の点から、テスト体液サンプルのノンコーディングRNAの発現量の測定方法と、標本データ情報に含まれる或いは用いられるノンコーディングRNAの発現量の測定方法は、共通していることが好ましい。
【0026】
[分類に用いるノンコーディングRNA]
本開示の分類方法は、一又は複数の実施形態において、分類に用いるノンコーディングRNAとして、少なくともhsa-miR-451aを含む。また、本開示の分類方法は、一又は複数の実施形態において、下記表1で示すノンコーディングRNAの全部又は一部を分類に用いるノンコーディングRNAとすることができる。なお、下記表1に示すノンコーディングRNAは、has-miR-1974を除き、miRBase (http://www.miRbase.org/)のRelease 18(2011年11月)のデータに登録されるマイクロRNAである。一方、has-miR-1974は、現在はミトコンドリアtRNAであるとされている。したがって、本開示の分類方法は、一又は複数の実施形態において、has-miR-1974を含む「ノンコーディングRNAを用いる実施形態」が挙げられ、その他の一又は複数の実施形態において、has-miR-1974を用いない「マイクロRNAを用いる実施形態」が挙げられる。
【0028】
第1実施形態の分類方法である、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か正常肝臓かに分類する方法におけるノンコーディングRNAを用いる実施形態として、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1202、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-320d、hsa-miR-1271-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-1、hsa-miR-16-5p、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるノンコーディングRNAを用いる方法が挙げられる。分類の正確性の向上の点からは、前記20個のノンコーディングRNAのうち複数個を用いることが好ましく、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、及びhsa-miR-1246の5つの組み合わせ又は前記20個全部を用いることがより好ましい(下記表3参照)。なお、本明細書において「x
1、x
2、・・・x
n、及び、これらの組み合わせ」における組み合わせは、x
1、x
2、・・・及びx
nからなる群から選択される2〜n個の要素からなる組み合わせを含むことを意味する。
【0029】
第1実施形態の分類方法におけるマイクロRNAを用いる実施形態として、hsa-miR-451、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-92a、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1246、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1202、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-22、hsa-miR-1915、hsa-miR-1、hsa-miR-16、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるマイクロRNAを用いる方法が挙げられる。分類の正確性の向上の点からは、前記18個のマイクロRNAのうち複数個を用いることが好ましく、全部用いることがより好ましい(下記表6参照)。
【0030】
第2実施形態の分類方法である、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か慢性C型肝炎かに分類する方法におけるノンコーディングRNAを用いる実施形態として、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1202、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-320d、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268a、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるノンコーディングRNAを用いる方法が挙げられる。分類の正確性の向上の点からは、前記19個のノンコーディングRNAのうち複数個を用いることが好ましく、全部用いることがより好ましい(下記表3参照)。
【0031】
第2実施形態の分類方法におけるマイクロRNAを用いる実施形態として、hsa-miR-451、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-92a、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1246、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1202、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-22、hsa-miR-1915、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるマイクロRNAを用いる方法が挙げられる。分類の正確性の向上の点からは、前記19個のマイクロRNAのうち複数個を用いることが好ましく、全部用いることがより好ましい(下記表6参照)。
【0032】
第3実施形態の分類方法である、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)か慢性B型肝炎かに分類する方法におけるノンコーディングRNAを用いる実施形態として、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-720、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるノンコーディングRNAを用いる方法が挙げられる。分類の正確性の向上の点からは、前記10個のノンコーディングRNAのうち複数個を用いることが好ましく、全部用いることがより好ましい(下記表3参照)。
【0033】
第3実施形態の分類方法におけるマイクロRNAを用いる実施形態として、hsa-miR-451を用いる方法が挙げられる(下記表6参照)。
【0034】
第4実施形態の分類方法である、慢性C型肝炎か正常肝臓かに分類する方法におけるノンコーディングRNAを用いる実施形態として、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-1207-5p、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるノンコーディングRNAを用いる方法が挙げられる。分類の正確性の向上の点からは、前記9個のノンコーディングRNAのうち複数個を用いることが好ましく、全部用いることがより好ましい(下記表3参照)。
【0035】
第4実施形態の分類方法におけるマイクロRNAを用いる実施形態として、hsa-miR-451、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-92a、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1246、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1202、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-483-5p、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるマイクロRNAを用いる方法が挙げられる。分類の正確性の向上の点からは、前記15個のマイクロRNAのうち複数個を用いることが好ましく、全部用いることがより好ましい(下記表6参照)。
【0036】
第5実施形態の分類方法である、慢性B型肝炎か正常肝臓かに分類する方法におけるノンコーディングRNAを用いる実施形態として、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1271-5p、hsa-miR-22-3p、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるノンコーディングRNAを用いる方法が挙げられる。分類の正確性の向上の点からは、前記11個のノンコーディングRNAのうち複数個を用いることが好ましく、全部用いることがより好ましい(下記表3参照)。
【0037】
第5実施形態の分類方法におけるマイクロRNAを用いる実施形態として、hsa-miR-451、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-92a、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1246、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるマイクロRNAを用いる方法が挙げられる。分類の正確性の向上の点からは、前記8個のマイクロRNAのうち複数個を用いることが好ましく、全部用いることがより好ましい(下記表6参照)。
【0038】
第6実施形態の分類方法である、慢性B型肝炎か慢性C型肝炎かに分類する方法におけるノンコーディングRNAを用いる実施形態として、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1202、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-320d、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268a、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるノンコーディングRNAを用いる方法が挙げられる。分類の正確性の向上の点からは、前記19個のノンコーディングRNAのうち複数個を用いることが好ましく、全部用いることがより好ましい(下記表3参照)。
【0039】
第6実施形態の分類方法におけるマイクロRNAを用いる実施形態として、hsa-miR-451、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-92a、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1246、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1202、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-22、hsa-miR-1915、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるマイクロRNAを用いる方法が挙げられる。分類の正確性の向上の点からは、前記19個のマイクロRNAのうち複数個を用いることが好ましく、全部用いることがより好ましい(下記表6参照)。
【0040】
上記第1〜第6実施形態の分類方法は、一又は複数の実施形態において、上記表1以外のマイクロRNAを使用してもよい。
【0041】
第7実施形態の分類方法は、上述のとおり、第1〜第6の実施形態の分類方法の結果の全部又は一部から、テスト体液サンプルを、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)、及び正常肝臓のいずれかに分類する方法である。
【0042】
[マーカー]
体液における表1に示すノンコーディングRNAの発現量は、上述のとおり、テスト体液サンプルの慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)、及び正常肝臓の分類に使用できる。したがって、本開示は、その他の態様において、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1202、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-320d、hsa-miR-1271-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268a、hsa-miR-1、hsa-miR-16-5p、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるノンコーディングRNAの使用であって、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、及び/又は非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)のマーカーとしての使用に関する。これらのマーカーは、一又は複数の実施形態において、上述の第1〜第7実施形態の分類方法のノンコーディングRNAを用いる実施形態に使用できる。
【0043】
また、本開示は、さらにその他の態様において、hsa-miR-451、hsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-92a、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1246、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1202、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-320d、hsa-miR-22、hsa-miR-1915、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268、hsa-miR-1、hsa-miR-16、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるマイクロRNAの使用であって、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、及び/又は非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)のマーカーとしての使用に関する。これらのマーカーは、一又は複数の実施形態において、上述の第1〜第7実施形態の分類方法のマイクロRNAを用いる実施形態に使用できる。
【0044】
[キット]
本開示は、その他の態様において、本開示の分類方法に使用する定量PCRキットであって、テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定できるプライマー及び試薬を含むキットに関する。前記1又は複数のノンコーディングRNAは、一又は複数の実施形態において、前記表1に記載の全部又は一部が挙げられる。前記プライマーは、一又は複数の実施形態において、上述の第1〜第7実施形態の分類方法に応じて適宜選択できる。本開示のキットは、一又は複数の実施形態において、さらに、本開示の分類方法が記載された説明書を含むキットに関する。なお、本開示のキットは、説明書が本開示のキットの同梱されることなくウェブ上で提供される場合も含みうる。本開示のキットは、一又は複数の実施形態において、cDNAを合成するためのプライマー及び試薬を含んでもよい。本開示は、さらにその他の態様において、前記キットの本開示の分類方法における使用に関し、具体的は、1又は複数のノンコーディングRNAの測定における使用に関する。
本開示は、その他の態様において、本開示の分類方法を次世代シーケンサーで行うためのキットであって、テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定できるプライマー及び試薬を含むキットに関する。本態様は、一又は複数の実施形態において、本開示の分類方法を次世代シーケンサーで行うためのサンプル調製用キットである。前記1又は複数のノンコーディングRNAは、一又は複数の実施形態において、前記表1に記載の全部又は一部が挙げられる。前記プライマーは、一又は複数の実施形態において、上述の第1〜第7実施形態の分類方法に応じて適宜選択できる。本開示のキットは、一又は複数の実施形態において、さらに、本開示の分類方法が記載された説明書を含むキットに関する。なお、本開示のキットは、説明書が本開示のキットの同梱されることなくウェブ上で提供される場合も含みうる。本開示の試薬としては、酵素、標識配列、及び/又はバッファーなどが挙げられる。本開示は、さらにその他の態様において、次世代シーケンサーの本開示の分類方法における使用に関し、具体的は、次世代シーケンサーを用いて前記テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定することを含む次世代シーケンサーの使用に関する。本開示において、次世代シーケンサーとは、“第一世代シーケンサー”であるSangerシーケンス法を利用した蛍光キャピラリーシーケンサーに対比して分類されるシーケンサーをいい、Sangerシーケンス法を利用しない第二世代、第三世代、第四世代、及び今後開発されるシーケンサーを含む。
【0045】
[マイクロアレイ]
本開示は、その他の態様において、本開示の分類方法に使用するマイクロアレイであって、テスト体液サンプル中の1又は複数のノンコーディングRNAの発現量を測定できるプローブを含むマイクロアレイに関する。前記1又は複数のノンコーディングRNAは、一又は複数の実施形態において、前記表1に記載の全部又は一部が挙げられる。前記プローブは、一又は複数の実施形態において、上述の第1〜第7実施形態の分類方法に応じて適宜選択できる。本開示は、さらにその他の態様において、前記マイクロアレイの本開示の分類方法における使用に関し、具体的には、1又は複数のノンコーディングRNAの測定における使用に関する。
【0046】
[データセット]
本開示は、その他の態様において、体液サンプルにおけるhsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-320c、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、hsa-miR-1246、hsa-miR-92a-3p、hsa-miR-486-5p、hsa-miR-630、hsa-miR-1225-5p、hsa-miR-1275、hsa-miR-720、hsa-miR-1207-5p、hsa-miR-1202、hsa-miR-1915-3p、hsa-miR-320d、hsa-miR-1271-5p、hsa-miR-22-3p、hsa-miR-483-5p、hsa-miR-320b、hsa-miR-1268a、hsa-miR-1、hsa-miR-16-5p、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1又は複数のノンコーディングRNAの発現データを含むデータセットであって、慢性C型肝炎、慢性B型肝炎、非アルコール型脂肪性肝炎(NASH)、及び正常肝臓からなる4つのグループから選択される1つ以上のグループに属する個体の標本体液サンプルから得られた前記ノンコーディングRNAの発現データを含むデータセットに関する。本開示のデータセットは、一又は複数の実施形態において、本開示の分類方法における前記標本データ情報として使用できる。
【実施例】
【0047】
末梢血のmiRNA発現パターンを使用し、以下の方法及び条件により、CHC(慢性C型肝炎)、CHB(慢性B型肝炎)、NASH(非アルコール型脂肪性肝炎)及びNL(正常肝臓)の分類できるマイクロRNAの組み合わせを探索した。
【0048】
1.血液(末梢血)サンプル
64人のCHC患者、4人のCHB患者、7人のNASH患者、及び20人の正常肝臓者から末梢血サンプルを得た。前記患者らには、1型又は2型HIVの重感染、非代償性肝疾患、臓器移植、免疫抑制、自己免疫疾患、20g/日を超えるアルコール摂取、又は静注薬物乱用の既往歴のいずれかに該当する者は含まれていない。また、前記患者らは、肝臓のバイオプシーを受けている。NASH患者は組織学的に判断された。CHC及びCHBは、ウイルス感染と肝機能検査等により判断された。すべての前記患者又はその保護者はインフォームドコンセント書面を提出した。また、本研究に関するすべての態様が、ヘルシンキ宣言に従って、大垣市民病院、京都大学大学院医学研究科、及び同学医学部の倫理委員会により承認されている。
【0049】
末梢血は、抗ウイルス処理をする前に各個体から直接血清チューブに回収した。前記血清チューブを4℃、1500gで10分間遠心分離を行った。回収した血清部分をさらに2000gで遠心分離を行って細胞を完全に除去し、血清サンプルとした。前記血清サンプルは−80℃で保存した。
【0050】
2.RNAの調製
トータルRNAは、200μlの血清サンプルからmiRNeasy mini kit (Qiagen社製)を用い取扱説明書に従って調製した。エキソソームリッチ分画RNAは、Exoquick(System Biosciences社製)を用いて調製した。具体的には、900μlの血清サンプルを250μlのExoquickと混合し、4℃で12時間インキュベートする。その後、室温、1500gで30分間遠心分離を行い、上清を捨てる。残ったペレットを200μlのPBSで溶解し、RNAをmiRNeasy mini kit (Qiagen社製)を用い取扱説明書に従って調製した。
【0051】
3.miRNAマイクロアレイ
血清サンプル中のmiRNAのマイクロアレイによる検出は、Human microRNA Microarray Kit (Rel 14.0)(Agilent Technologies社製)を用い、取扱説明書(Agilent microRNA microarrays Version 1.0用)に従って、60ngのRNAを標識し、ハイブリダイズした。ハイブリダイゼーションのシグナルはDNA microarray scanner G250B(Agilent Technologies社製)を用いて検出した。スキャンイメージはAgilent feature extraction software (v9.5.3.1)を用いて分析した。生データ(gProcessedSignal)を使用し、各発現をゼロ平均及び単位標本分散を持つようにノーマライズした。このプロセスはRを用いて行った。
【0052】
4.リアルタイムqPCR
血清サンプル中のmiRNAのリアルタイム定量PCRによる検出は、TaqMan(商標)microRNA assay(Applied Biosystems社製)を用いて行った。miR-16の発現量を内部コントロールとして使用した。cDNAはTaqMan(商標)miRNA RT Kit(Applied Biosystems社製)を使用して作製した。miRNAの発現の検出は、Chromo 4 detector(BIO-RAD社製)で行った。
【0053】
5.統計解析
離散値を持つ症状について、2つの組み合わせを、ウイルコクスン順位和検定(片側)で比較し、或いは、相関係数からP値を計算した。いずれの場合も、FDR(false discovery rate)が0.05未満の場合に有意とした。
【0054】
〔肝臓疾患にユニークな特徴を示すmiRNAの選択〕
肝臓疾患(CHC,CHB,NASH)及び正常肝臓から選ばれるペアについて、ノーマライズしたmiRNAの発現量を主成分分析によって主成分スコアに変換した。より大きな第1主成分スコア及び第2主成分スコアを持つmiRNAを選択した。次に、各サンプルの前記第1主成分スコアを選択したmiRNAのみの発現量に基づいて計算した。これらから最適な数の第1主成分スコアを使用して肝臓疾患及び正常肝臓を分類した。これらの作業はRで行った。
【0055】
6.結果
(1)血清サンプル中のmiRNAの発現量は、再現性の点から、血清サンプルから回収したトータルRNAよりも、血清サンプルからエキソソームリッチ分画を調製し、そこから回収したRNAの方が優れることが分かった(データ示さず)。
(2)肝臓疾患(CHC,CHB,NASH)及び正常肝臓(NL)から選ばれる6つのペアについて、上述のとおりにそれぞれ適切なmiRNAを選択することにより、下記表2に示すとおり、良好な正確性で判別できることが示された(表2−1〜2−6)。
【0056】
【表2】
【0057】
表2における6つの2群判別に使用したmiRNAを下記表3に示す。下記表3において「*」で示されたmiRNAの発現量を使用した。
【0058】
【表3】
【0059】
また、表2の結果を4分割表にまとめて正確性を計算した結果を下記表4に示す。
【0060】
【表4】
【0061】
表2〜4に示す通り、血液サンプル中の表2に示されるmiRNAの発現量から肝臓疾患(CHC,CHB,NASH)及び正常肝臓の分類ができることが示された。
【0062】
7.has-miR-1974を使用しない形態
表3のmiRNAは、has-miR-1974を除き、miRBase (www.mirbase.org)のRelease 18のデータを参照する。一方、has-miR-1974は、Release 18データでは、dead entryであり、ミトコンドリアtRNAであるとされている。そこで、has-miR-1974を使用せずに、肝臓疾患(CHC,CHB,NASH)及び正常肝臓から選ばれる6つのペアについて、良好な正確性で判別できるmiRNAの選択を行った。その結果を下記表5(表5−1〜5−6)に示す。
【0063】
【表5】
【0064】
表5における6つの2群判別に使用したmiRNAを下記表6に示す。下記表6において「*」で示されたmiRNAの発現量を使用した。
【0065】
【表6】
【0066】
また、表5の結果を4分割表にまとめて正確性を計算した結果を下記表7に示す。
【0067】
【表7】
【0068】
表5〜7に示す通り、血液サンプル中の表5に示されるmiRNAの発現量から肝臓疾患(CHC,CHB,NASH)及び正常肝臓の分類ができることが示された。
【0069】
8.NASH患者からのサンプルを増やした場合の解析結果
20人のNASH患者及び24人の正常肝臓者から末梢血サンプルを得て、NASHと正常肝臓(NL)のペアについて、解析を行った。ノンコーディングRNAとしてhsa-miR-638、hsa-miR-762、hsa-miR-451a、hsa-miR-1974、及びhsa-miR-1246からなる5つの組み合わせを使用する他は、上記表2−1と同様に行った。その結果を下記表8に示す。
【0070】
【表8】
【0071】
上記表8に示す通り、NASHと正常肝臓(NL)とが良好な正確性で判別できることが示された。