特許第6092685号(P6092685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092685
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】冷却液組成物
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/10 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
   C09K5/10 F
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-69016(P2013-69016)
(22)【出願日】2013年3月28日
(65)【公開番号】特開2014-189736(P2014-189736A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2016年3月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000106771
【氏名又は名称】シーシーアイ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】江川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】牧田 直大
(72)【発明者】
【氏名】児玉 幸多
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 智一
【審査官】 中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−270256(JP,A)
【文献】 特開2010−132487(JP,A)
【文献】 特開2011−079872(JP,A)
【文献】 特開平03−095299(JP,A)
【文献】 特開2013−032456(JP,A)
【文献】 特開昭61−213294(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/00−5/20、
C23F11/00−11/18、
C23F14/00−17/00、
F28D17/00−21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるアルキルエーテルと、水及び/又は水溶性有機溶媒を含有し、冷却液組成物中に該アルキルエーテルを0.3〜5.8重量%含有する冷却液組成物。
R−O−An−H (1)
式中、Rは直鎖状又は分岐構造の飽和脂肪族炭化水素基、又は直鎖状又は分岐構造の不飽和脂肪族炭化水素基を示し、Aはエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを示し、nはエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの平均付加モル数を示す。
【請求項2】
一般式(1)において、Rが炭素数8〜30の直鎖状又は分岐構造の飽和脂肪族炭化水素基、又は直鎖状又は分岐構造の不飽和脂肪族炭化水素基を示し、nが3〜20であることを特徴とする請求項1に記載の冷却液組成物。
【請求項3】
25℃における動粘度が8.5mm/s以上、かつ100℃における動粘度が1.2mm/s以下である請求項1又は2に記載の冷却液組成物。
【請求項4】
防錆剤として、無機酸、有機酸、トリアゾールの中から選ばれる少なくとも1種以上を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の冷却液組成物。
【請求項5】
無機酸が、リン酸、硝酸、硼酸、珪酸、モリブデン酸又はその塩である請求項4に記載の冷却液組成物。
【請求項6】
有機酸が、脂肪族一塩基酸、脂肪族二塩基酸、芳香族一塩基酸、芳香族二塩基酸又はその塩である請求項4に記載の冷却液組成物。
【請求項7】
少なくとも1種以上の消泡剤を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の冷却液組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の内燃機関を冷却するための冷却液組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関のラジエータや、電池を使用する装置における電池等の発熱装置を冷却するために、これらから発生する熱を速やかに外部に放出させることを目的としてクーラント等の各種冷却液組成物を使用した放熱装置が使用されている。
これらの放熱装置にてこれまで使用されている冷却液組成物は、他の液体と同様に低温よりもより高温において粘度は低くなるという物性を備えている。
このため、発熱装置から冷却液組成物が受熱して、該冷却液組成物の温度が上昇するにつれて、より低粘度となり冷却液組成物が循環する回路をよりスムーズに流れることになる。この結果、これらの発熱装置をある程度は冷却することができた。
【0003】
加えて、特許文献1に記載されているように、表面処理された微小粒子を冷却液組成物に配合することにより、冷却液組成物自体の熱伝導率を向上させて、熱輸送能力を向上させることが知られている。
確かに、この方法によれば、熱輸送能力が向上するものの、分散された微小粒子の沈殿防止等の冷却液組成物自体の系の安定化を考慮する必要があるし、冷却液組成物の温度に冷却液組成物自体の熱輸送能力が依存しないので、特に温度に応じた熱輸送を行うことが困難であった。
【0004】
他方、装置の通常運転中には、オーバーヒート防止を目的に冷却液組成物を円滑に循環させて装置を冷却させることが必要であるが、そのためには冷却液組成物が加熱されることにより十分に低粘度化されることが必要である。
しかしながら、従来は、装置の運転開始直後の温度条件において冷却液組成物は高粘度化であるため、装置をある程度の温度まで速やかに上昇させると、定常運転時に装置が過熱されてオーバーヒートを発生する可能性が高くなり、逆に定常運転時に十分に放熱をさせようとすると、運転開始直後の冷却液組成物が低粘度化するので、運転開始後速やかに装置を定常状態として安定運転させることが困難であった。
このように、運転開始直後の冷却液組成物による放熱を抑制し、かつ通常運転時において冷却液組成物を十分に低粘度化させて、十分に放熱させることのバランスをとることが困難であった。
【0005】
【特許文献1】特開2008−88240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のエンジン冷却液と比較して、本発明はエンジンの運転直後における冷却液の動粘度をより高くすることで、冷却損失を低減し速やかにエンジンを最適温度まで上昇させることができ、また、定常運転時の動粘度をより低くすることで、効率的にエンジンを冷却しオーバーヒートを防止することができる冷却液を提供することにより、エンジンの運転を円滑化させる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決のために本発明者は以下の方法を発明した。
1.一般式(1)で表されるアルキルエーテルと、水及び/又は水溶性有機溶媒を含有する冷却液組成物。
R−O−An−H (1)
式中、Rは直鎖状又は分岐構造の飽和脂肪族炭化水素基、又は直鎖状又は分岐構造の不飽和脂肪族炭化水素基を示し、Aはエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを示し、nはエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの平均付加モル数を示す。
2.一般式(1)において、Rが炭素数8〜30の直鎖状又は分岐構造の飽和脂肪族炭化水素基、又は直鎖状又は分岐構造の不飽和脂肪族炭化水素基を示し、nが3〜20であることを特徴とする1に記載の冷却液組成物。
3.25℃における動粘度が8.5mm/s以上、かつ100℃における動粘度が1.2mm/s以下である1又は2に記載の冷却液組成物。
4.防錆剤として、無機酸、有機酸、トリアゾールの中から選ばれる少なくとも1種以上を含有する1〜3のいずれかに記載の冷却液組成物。
5.無機酸が、リン酸、硝酸、硼酸、珪酸、モリブデン酸又はその塩である4に記載の冷却液組成物。
6.有機酸が、脂肪族一塩基酸、脂肪族二塩基酸、芳香族一塩基酸、芳香族二塩基酸又はその塩である4に記載の冷却液組成物。
7.少なくとも1種以上の消泡剤を含有する1〜6に記載の冷却液組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置の運転開始直後においては冷却液組成物による放熱を抑制し、定常運転時においては、冷却液組成物を十分に循環させることにより放熱を確実に行うという効果を奏する。この結果、装置の運転開始後、定常運転に至る時間を短縮し、かつ定常運転時には安定的に装置から放熱させることによって、いわゆるオーバーヒートの発生を防止するものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】温度と動粘度の関係を示す図
図2】温度と動粘度の関係を示す図
図3】温度と動粘度の関係を示す図
図4】温度と動粘度の関係を示す図
図5】温度と動粘度の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
従来の冷却液組成物は、温度上昇につれて動粘度を低下させる性質を有しており、そのような性質を利用して熱を輸送するために使用されてきた。
本発明は、特定のアルキルエーテルを含有させた冷却液組成物とすることにより温度変化に対してこれまでにない動粘度の挙動を示すという性質を備え、それにより、冷却液組成物を使用する装置のより安定的な運転を実現する発明である。
本発明における動粘度はJIS K 2283に基づき、ウベローデ粘度計を用いて0℃〜100℃まで各温度毎に求めた。
【0011】
その動粘度の挙動とは、動粘度の温度依存性をJIS K2283附属書1に示される動粘度−温度チャートに基づき作図すると、ある中間温度域(つまり、最も急激に動粘度が低下する温度領域)よりも低温域及び高温域においては、おおよそ、温度の対数の値に反比例して動粘度の対数の対数の値が減少する傾向を有するが、低温域と高温域の中間である40〜70℃付近の中間温度域においてはその比例定数がより小さくなる。つまり反比例の傾きが大きくなるという挙動である。
この結果、本発明の冷却液組成物は低温域及び高温域の間の中間温度域において、低温域および高温域の挙動から予測される動粘度よりも明らかに低い動粘度を示す。
【0012】
このため、例えば40℃以下の低温下においては、冷却液組成物の動粘度は十分に高いので流動性が小さいものである。このため、25℃における冷却液組成物の動粘度を8.5mm2/s以上、好ましくは10mm2/s以上、より好ましくは12mm2/s以上、更に好ましくは15mm2/s以上とすることができる。このような状態において装置の運転を開始すると、発生した熱が装置自身の温度上昇と冷却液組成物の温度上昇に費やされる。特に装置が一定温度にまで速やかに温度上昇することにより、装置の安定的な運転状態、より高効率の運転状態に速やかに到達できるという効果を発揮できる。
【0013】
その後、運転を継続させることにより、装置自体は高温となり、さらに高温下において冷却液組成物はさらに流動性が向上するので、より多くの熱量を輸送することができ、例えば内燃機関であれば、運転により発生した熱量が、冷却液組成物によってさらに多く輸送されるので、内燃機関の冷却効率が向上し、そのための装置の小型化や、より過酷な運転状況への対応が可能になり、オーバーヒートの発生を防止することができる。
そのような効果を得るためには、冷却液組成物の100℃における動粘度を1.2mm2/s以下、好ましくは1.0mm2/s以下、さら好ましくは0.9mm2/s以下とすることもできる。
また、温度が上昇するにつれて最も急激に動粘度が低下する温度領域が25℃〜50℃の範囲にある場合、その中間温度領域における動粘度の変化を示す指標として、(50℃における動粘度(mm2/s)/25℃における動粘度(mm2/s))の値が0.34以下であることが好ましく、更に好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下であり、この値が小さい程好ましい。
さらに、中間温度領域が50〜75℃の範囲にある場合においても、その粘度の変化を示す指標として、(75℃における動粘度(mm2/s)/50℃における動粘度(mm2/s))の値が0.34以下であることが好ましく、更に好ましくは0.30以下、より好ましくは0.25以下であり、この値が小さい程好ましい。
【0014】
本発明の冷却液組成物は、廃熱源から廃熱を熱交換器へ輸送する用途、及び加熱源から熱を輸送して加熱対象物を加熱する用途に利用することができる。冷却液組成物は、具体的には、例えば自動車用内燃機関及びモーターの冷却液として用いることができる。
【0015】
以下、具体的に本発明について述べる。
本発明の冷却液組成物は、水溶性有機溶媒又は水溶性有機溶媒と水からなる基材に、一般式(1)で表されるアルキルエーテルを添加してなるものであり、熱の発生源である内燃機関用、加熱装置用等、積極的に熱を輸送させる装置内を循環させる用途に使用するものである。
【0016】
(水溶性有機溶媒)
本発明にて使用できる水溶性有機溶媒としては、従来から冷却液組成物に使用されてきた水溶性有機溶媒を採用することができる。
このような水溶性有機溶媒としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、グリセリン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、及びテトラエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類が例示され、これらより選択される1 種以上を単独又は組み合わせて用いることができる。
これらの内のどの水溶性有機溶媒を選択して使用するかは、使用時の水溶性有機溶媒の濃度、各温度における冷却液組成物の動粘度、一般式(1)のアルキルエーテルの濃度等を考慮して決定することができる。
【0017】
冷却液組成物中の水溶性有機溶媒の含有量は、水を含有しない場合には、一般式(1)のアルキルエーテルを除く全ての量を水溶性有機溶媒とすることができ、このときの水溶性有機溶媒の濃度は90〜99重量%である。
また本発明の冷却液組成物が水を含有する場合には、水溶性有機溶媒の含有量としては10〜95重量%とすることができる。
【0018】
(一般式(1)で表されるアルキルエーテル)
本発明にて用いることができる一般式(1)R−O−An−Hで表されるアルキルエーテルは、一般式(1)において、Rが炭素数8〜30、好ましくは12〜24の飽和脂肪族炭化水素基又は不飽和脂肪族炭化水素基を示し、ラウリル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、オレイル、アラキル、ベヘニル、リグノセリル等が挙げられる。そしてRは直鎖状であっても分岐構造であってもよい。
Aはエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを示しており、エチレンオキシドのみが付加してなる基、又はプロピレンオキシドのみが付加してなる基でも良く、1分子中にエチレンオキシド及びプロピレンオキシドが共に付加してなる基でもよい。
nはエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの平均付加モル数を示し、その範囲は3〜20、好ましくは4〜10である。
【0019】
(その他成分)
本発明の冷却液組成物には、上述の成分の他、冷却液組成物を使用する装置を構成する金属部分の発錆を防止することを目的として、防錆剤を含有させることが好ましい。防錆剤として、リン酸、硼酸、ケイ酸、亜硝酸、硝酸、モリブデン酸、脂肪族一塩基酸、脂肪族二塩基酸、芳香族一塩基酸、芳香族二塩基酸及びそれらの塩、トリアゾール、及びチアゾールが挙げられる。
【0020】
リン酸塩としては、例えばリン酸、ピロリン酸及びポリリン酸のアルカリ金属塩が挙げられる。硼酸塩としては、例えばアルカリ金属塩が挙げられる。ケイ酸塩としては、例えばアルカリ金属塩が挙げられる。亜硝酸塩及び硝酸塩としては、例えばアルカリ金属塩が挙げられる。モリブデン酸塩としては、例えばアルカリ金属塩が挙げられる。
【0021】
脂肪族一塩基酸は、脂肪族一塩基酸塩であってもよい。脂肪族一塩基酸としては、例えばペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸及びステアリン酸が挙げられる。脂肪族一塩基酸塩としては、例えばナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0022】
脂肪族二塩基酸は、脂肪族二塩基酸塩であってもよい。脂肪族二塩基酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピペリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン2酸、ドデカン2酸、ブラシル酸、及びタプチン酸が挙げられる。脂肪族二塩基酸塩としては、例えばナトリウム塩及びカリウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0023】
芳香族一塩基酸は、芳香族一塩基酸塩であってもよい。芳香族一塩基酸としては、例えば安息香酸、ニトロ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸等の安息香酸類、p−トルイル酸、p−エチル安息香酸、p−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−tertブチル安息香酸などのアルキル安息香酸、一般式RO−C−COOH(Rは炭素数1〜5のアルキル基)で表されるアルコキシ安息香酸、及び、一般式R−C−CH=COOH(Rは炭素数1〜5のアルキル基又はアルコキシ基)で表されるケイ皮酸類(ケイ皮酸、アルキルケイ皮酸及びアルコキシケイ皮酸)が挙げられる。芳香族一塩基酸塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0024】
芳香族二塩基酸は、芳香族二塩基酸塩であってもよい。芳香族二塩基酸としては、例えばフタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸が挙げられる。芳香族二塩基酸塩としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0025】
トリアゾールは、トリアゾール塩であってもよい。トリアゾールとしては、例えばベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、4−フェニル−1,2,3−トリアゾール、2−ナフトトリアゾール、及び4−ニトロベンゾトリアゾールが挙げられる。トリアゾール塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0026】
チアゾールは、チアゾール塩であってもよい。チアゾールとしては、ベンゾチアゾール、及びメルカプトベンゾチアゾールが挙げられる。チアゾール塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩及びリチウム塩等のアルカリ金属塩が挙げられる。
【0027】
防錆剤は、冷却液組成物中に単独で含有させてもよいし、複数種を組み合わせて含有させてもよい。防錆剤の使用量としては冷却液組成物の0.1〜10重量%となるように使用することが望ましい。
【0028】
また本発明の冷却液組成物には、上述の成分の他に、例えば消泡剤、着色剤、酸化防止剤、pH調整剤、安定剤、湿潤剤、金属不活性剤、粘度指数向上剤、流動点低下剤、耐摩耗剤、紫外線吸収剤、洗浄剤等を必要に応じて適宜加えることができる。
【実施例】
【0029】
以下に本発明の実施例と比較例を示して説明する。
実施例及び比較例
下記表1に、防錆剤を含有する冷却液(I)の組成を示す。この冷却液(I)を用いて下記表2〜3に示すように、アルキルエーテル、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリカルボン酸(PAA)、ポリビニルピロリドン(PVP)及び水を含有するように混合して実施例及び比較例の冷却液組成物を作成した。
得られた各冷却液組成物について温度を変化させながらJIS K2283に基づき動粘度を測定した。各実施例及び比較例の冷却液組成物の動粘度の温度依存性を表2〜3に示し、この結果をさらに図1〜5にて図示する。この図は、JIS K2283附属書1に示される動粘度−温度チャートに基づき作図されたものであり、縦軸がloglog(動粘度)、横軸がlog(273.15+温度(℃))の目盛りである。
【0030】
図1によれば、比較例1および2である冷却液(I)と水、冷却液(I)のみからなる冷却液は温度上昇につれて直線的に動粘度が低下する。しかしながら、本発明の範囲のアルキルエーテルを添加した実施例1の冷却液は、0℃から温度を上昇させることにより、低温域では一定の負の傾きにより直線的に動粘度が低下する。ここで、低温域では比較例2の冷却液(I)のみからなる冷却液と同等の高い動粘度を有するため、冷却損失が低減し、速やかにエンジンの最適温度まで上昇させることができる。
さらに加熱を行い50℃から60℃になると、その傾きが小さくなり急激に動粘度が低下する傾向が現れ、さらに高温になると再び低温域での温度変化に対する動粘度の傾きと同程度となる。この高温域では比較例1の冷却液(I)と水からなる冷却液と同等の動粘度の特性を示すため、エンジンを効率的に冷却することが可能となり、オーバーヒートを防止できる。
【0031】
図2によれば、比較例3〜5である一般的に増粘剤として使用されるCMC、PAA、PVPを添加した冷却液の低温域での動粘度は、本発明のアルキルエーテルを添加した実施例2とほぼ同等の動粘度挙動を示すが、50℃をこえても動粘度が低下する傾向は現れず、高温域まで同じ傾きのまま、動粘度が低下する。
他方、実施例2によると、低温域においては比較例3〜5による動粘度と同様の温度特性を示すが、40〜55℃程度の温度域においては動粘度が急激に低下し、55℃程度以上の温度域においては、比較例1と同様の動粘度特性を示す。
【0032】
図3〜5によれば、実施例3〜11である本発明の範囲の一般式(1)で表されるアルキルエーテルを添加した冷却液は、低温域では高い動粘度を有し、高温域では急激に低い動粘度に変化するため、上述のようにエンジンを円滑に作動させることが可能となる。
【0033】
表2及び表3によれば、本発明に沿った例である実施例1〜11は、25℃での動粘度に対する50℃での動粘度の比が十分に小さい。アルキルエーテルを含有しない比較例1〜5によると、25℃での動粘度に対する50℃での動粘度の比は大きい値となる。
【0034】
【表1】
EG:エチレングリコール
※:pH7.6相当まで中和するのに必要な量
【0035】
【表2】
一般式(1)で表されるアルキルエーテルをアルキルエーテル(1)とした。
実施例7の75℃における動粘度は1.3mm2/sであり、50℃での動粘度に対する75℃の動粘度の比は0.19である。
【0036】
【表3】
CMC:カルボキシメチルセルロースNa塩(重量平均分子量30,000)
PAA:ポリカルボン酸(重量平均分子量6,000)
PVP:ポリビニルピロリドン(重量平均分子量1,200,000)
図1
図2
図3
図4
図5