(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エライジン酸0.01〜0.2質量%と、オレイン酸0.01〜0.2質量%とを含有する乳化剤の存在下で、クロロプレン単独又はクロロプレンと他の単量体とを乳化重合し、
全質量中、エライジン酸0.0005〜0.1質量%とオレイン酸0.0005〜0.1質量%とを含有するクロロプレンゴムを得るクロロプレンゴムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
<クロロプレンゴム組成物>
まず、本発明の第1の実施形態のクロロプレンゴム組成物について説明する。本発明の第1の実施形態のクロロプレンゴム組成物は、(1)クロロプレン重合体と、(2)エライジン酸0.0005〜4質量%と、(3)オレイン酸0.0005〜4質量%とを含有する。このクロロプレンゴム組成物は、エライジン酸とオレイン酸を含有するクロロプレンゴムや、これらの化合物を含有しないクロロプレンゴムに、エライジン酸とオレイン酸を含む不均化トール油石鹸を添加して得られるものである。
【0014】
(1)クロロプレン重合体
クロロプレン重合体は、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下、クロロプレンと記す。)の単独重合体、又は、クロロプレンと他の単量体との共重合体である。クロロプレンと共重合可能な単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸のエステル類や、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸のエステル類、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ(メタ)アクリレート類、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、エチレン、スチレン、アクリロニトリルなどがある。これらの単量体は併用することもできる。
【0015】
(2)エライジン酸
本実施形態のクロロプレンゴム組成物に含まれるエライジン酸は、化学式1で表される化合物であり、クロロプレンゴム組成物の加硫速度を遅くするために添加するものである。
【0017】
クロロプレンゴム組成物中のエライジン酸の含有量は0.0005〜4質量%の範囲に設定する。好ましくは0.0005〜2.5質量%の範囲がよい。クロロプレンゴム組成物中のクロロプレンゴムとしては、エライジン酸を含有しているもの及びエライジ酸を含有していないもののうちの何れを用いてもよい。
【0018】
クロロプレンゴムとしてエライジン酸とオレイン酸を含有するものを用いる場合、クロロプレンゴム中に0.0005〜0.1質量%のエライジン酸が含まれており、クロロプレンゴム組成物中のエライジン酸の含有量を0.0006〜4質量%の範囲に設定する。好ましくは0.0006〜2.5質量%の範囲がよい。
【0019】
クロロプレンゴム組成物中のエライジン酸の含有量が前述した範囲に満たないと、クロロプレンゴム組成物の加硫速度を遅くする効果が得られない。また、4質量%を超えて含有させると、クロロプレンゴム組成物を用いて得られる加硫成形体の表面にブリードアウトしてしまう可能性がある。
【0020】
なお、クロロプレンゴム組成物中のエライジン酸の含有量とは、クロロプレンゴムに含まれるエライジン酸の量と後から添加した不均化トール油石鹸に由来するエライジン酸の量の合計量である。
【0021】
(3)オレイン酸
本実施形態のクロロプレンゴム組成物に含まれるオレイン酸は、化学式2で表される化合物であり、前記エライジン酸との相互作用によりクロロプレンゴム組成物の加硫速度を遅くするために添加するものである。また、クロロプレンゴム組成物を加硫成形体とした際にその風合いを保ち、かつ成形金型へのゴム堆積物の付着を減らす効果も有するものである。
【0023】
クロロプレンゴム組成物中のオレイン酸の含有量は0.0005〜4質量%の範囲に設定する。好ましくは0.0005〜2.5質量%の範囲がよい。クロロプレンゴム組成物中のクロロプレンゴムとしては、オレイン酸を含有しているもの及びエライジ酸を含有していないもののうちの何れを用いてもよい。
【0024】
クロロプレンゴムとしてエライジン酸とオレイン酸を含有するものを用いる場合、クロロプレンゴム中に0.0005〜0.1質量%のオレイン酸が含まれており、クロロプレンゴム組成物中のオレイン酸の含有量を0.0006〜4質量%の範囲に設定する。好ましくは0.0006〜2.5質量%の範囲がよい。
【0025】
クロロプレンゴム組成物中のオレイン酸の含有量が前述した範囲に満たないと、クロロプレンゴム組成物の加硫速度を遅くする効果が得られない場合がある。また、4質量%を超えて含有させると、クロロプレンゴム組成物を用いて得られる加硫成形体の風合いの劣化や成形金型へのゴム堆積物の付着を減らす効果が得られない場合がある。
【0026】
なお、クロロプレンゴム組成物中のオレイン酸の含有量とは、クロロプレンゴムに含まれるオレイン酸の量と後から添加した不均化トール油石鹸に由来するオレイン酸の量の合計量である。
【0027】
クロロプレンゴム組成物に含まれるエライジン酸及びオレイン酸の含有量は、JIS K 6229に準拠して定量することができる。具体的には、クロロプレンゴム組成物を裁断してコンデンサー付属のナス形フラスコに入れ、JIS K 6229(4.5)に規定されたエタノール−トルエン共沸混合物(ETA)を用いて抽出したクロロプレン抽出樹脂を、メチル化試薬によりメチルエステル化した後、ガスクロマトグラフを用いて定量すればよい。
【0028】
クロロプレンゴム組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、加硫剤、加硫促進剤、充填剤、補強剤、軟化剤、可塑剤、滑剤、老化防止剤、安定剤、シランカップリング剤及び受酸剤などを配合することもできる。
【0029】
クロロプレンゴム組成物及び後述するクロロプレンゴムは、加硫剤や加硫促進剤などを添加した後、プレス加硫、射出成形加硫、加硫缶加硫、UHF加硫、LCM加硫、HFB加硫などの方法で加硫して加硫成形体とすることができる。その際の加硫温度は、クロロプレンゴム組成物の組成や加硫剤の種類によって適宜設定することができる。通常は130〜190℃の範囲が好ましく、140〜180℃の範囲がより好ましい。
【0030】
(第2の実施形態)
<クロロプレンゴム>
次に、本発明の第2の実施形態のクロロプレンゴムについて説明する。本発明の第2の実施形態のクロロプレンゴムは、前述した第1の実施形態のクロロプレンゴム組成物に含まれていてもよく、(1)クロロプレン重合体と(2)エライジン酸と(3)オレイン酸を含有するものである。
【0031】
(1)クロロプレン重合体
クロロプレン重合体は、クロロプレンの単独重合体、又は、クロロプレンと他の単量体との共重合体であり、前述した第1の実施形態のクロロプレンゴム組成物に含まれるクロロプレン重合体と同様の構成とすることができる。
【0032】
(2)エライジン酸
エライジン酸は、クロロプレンゴムの加硫速度を遅くする効果を有するものである。クロロプレンゴム中のエライジン酸の含有量は、クロロプレンゴム100質量%中に0.0005〜0.1質量%の範囲である。エライジン酸の含有量が0.0005質量%に満たないと、クロロプレンゴムの加硫速度を遅くする効果が得られない。また、0.1質量%を超えて含有させるとクロロプレンゴムやクロロプレンゴム組成物を用いて得られる加硫成形体の表面にブリードアウトしてしまう可能性がある。エライジン酸の含有量は、0.01〜0.1質量%の範囲がより好ましい。
【0033】
(3)オレイン酸
オレイン酸は、前記エライジン酸との相互作用によりクロロプレンゴムの加硫速度を遅くするものである。また、クロロプレンゴムを加硫成形体とした際にその風合いを保ち、かつ成形金型へのゴム堆積物の付着を減らす効果も有するものである。
【0034】
クロロプレンゴム中のオレイン酸の含有量は、クロロプレンゴム100質量%中に0.0005〜0.1質量%の範囲である。オレイン酸の含有量が0.0005質量%に満たないと、クロロプレンゴムの加硫速度を遅くする効果が得られない。また、0.1質量%を超えて含有させるとクロロプレンゴムやクロロプレンゴム組成物を用いて得られる加硫成形体の風合いの劣化や成形金型へのゴム堆積物の付着を減らす効果が得られない場合がある。オレイン酸の含有量は、0.001〜0.1質量%の範囲がより好ましい。
【0035】
クロロプレンゴムに含まれるエライジン酸及びオレイン酸の含有量は、上述したクロロプレンゴム組成物に含まれるこれら化合物を測定する方法と同一の手順で測定することができる。
【0036】
その他の成分
クロロプレンゴムには、前記エライジン酸や前記オレイン酸以外に、乳化剤に含まれる成分として、セコデヒドロアビエチン酸、8,15−イソピマリン酸、ジヒドロピマリン酸、8,15−ピマリン酸、ジヒドロイソピマリン酸、ピマリン酸、ジヒドロアビエチン酸、サンダラコピマル酸、ジヒドロ8(9)−アビエチン酸、7−ジヒドロイソピマリン酸、パルストリン酸、ジヒドロ7−アビエチン酸、7,15−イソピマリン酸、デイソプロピルデヒドロアビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、6−デヒドロデヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、デメチルデヒドロアビエチン酸及びその他のロジン酸などが含まれる場合がある。また、本実施形態のクロロプレンゴムには、更に、オクタデセン酸、マルガリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ジエチルカルバミン酸メチル、アラキドン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、リノール酸、ピノレン酸、リノレン酸、エイコサジエン酸などの脂肪酸が含まれる場合もある。
【0037】
<クロロプレンゴムの製造方法>
クロロプレンゴムは、クロロプレンを含む原料単量体を(A)エライジン酸とオレイン酸を含有する乳化剤の存在下で、(B)重合触媒、(C)連鎖移動剤を用いて乳化重合させ、目的とする重合度に達した後(D)重合停止剤を添加して重合を停止させ、その後、未反応の単量体を除去して製造することができる。
【0038】
(A)エライジン酸とオレイン酸を含有する乳化剤
乳化剤は、クロロプレンを含む原料単量体を、溶媒である水中に乳化させるために用いるものである。本実施形態では、乳化剤として、エライジン酸とオレイン酸を含有する乳化剤を用いる。
【0039】
乳化剤に含まれるエライジン酸の含有量は、乳化剤100質量%中に0.01〜0.2質量%の範囲であり、0.01〜0.1質量%含まれていることが好ましい。エライジン酸の含有量がこの範囲の乳化剤を用いることによって、通常の乳化重合条件でエライジン酸0.0005〜0.1質量%を含有したクロロプレンゴムを得ることができる。
乳化剤に含まれるエライジン酸が0.01質量%に満たないと、得られるクロロプレンゴムに含まれるエライジン酸の量が不足して加硫速度を遅くすることができない。また、0.2質量%を超えてしまうと得られるクロロプレンゴムやクロロプレンゴム組成物の加硫成形体の表面にエライジン酸がブリードアウトしてしまう可能性がある。
【0040】
乳化剤に含まれるオレイン酸の含有量は、乳化剤100質量%中に0.01〜0.2質量%の範囲であり、0.01〜0.1質量%含まれていることがより好ましい。オレイン酸の含有量がこの範囲の乳化剤を用いることによって、通常の乳化重合条件でオレイン酸0.0005〜0.1質量%を含有したクロロプレンゴムを得ることができる。
乳化剤に含まれるオレイン酸が0.01質量%に満たないと、得られるクロロプレンゴムに含まれるオレイン酸の量が不足して加硫速度を遅くすることができない。また、0.1質量%を超えて含有させるとクロロプレンゴム及びクロロプレンゴム組成物を加硫成形体とした際にその風合いの劣化や成形金型へのゴム堆積物の付着を減らす効果が得られない場合がある。
【0041】
乳化剤には、エライジン酸及びオレイン酸以外の脂肪酸が含有されていてもよい。また乳化剤として、クロロプレンの乳化重合で一般的に使用されているロジン酸を併用してもよい。
【0042】
(B)重合触媒
重合触媒は、クロロプレンを含む原料単量体の乳化重合反応を効率的に行うために添加するものである。重合触媒としては、通常のクロロプレンの乳化重合に使用されるものを使用することができる。具体的には、無機過酸化物、過硫酸塩、ケトンパーオキサイド類、パーオキシケタール類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類などの有機過酸化物がある。
【0043】
(C)連鎖移動剤
連鎖移動剤は、クロロプレンを含む原料単量体の乳化重合反応を促進させるために添加するものである。連鎖移動剤としては、通常のクロロプレンの乳化重合に使用されるものを使用できる。具体的には、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタンなどの長鎖アルキルメルカプタン類、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドやジエチルキサントゲンジスルフィドなどのジアルキルキサントゲンジスルフィド類、ヨードホルムがある。
【0044】
(D)重合停止剤
重合停止剤は、クロロプレンを含む原料単量体の乳化重合反応を停止させるために添加するものでる。重合停止剤としては、通常のクロロプレンの乳化重合に使用されているものを使用することができる。具体的には、フェノチアジン、パラ−t−ブチルカテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジエチルヒドロキシルアミン、チオジフェニルアミン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンがある。
【0045】
クロロプレンの乳化重合反応の反応温度は、通常の乳化重合が行われる範囲とすればよい。また、クロロプレンの最終重合率は50〜100%の範囲内で任意に調節することができる。
【0046】
以上詳述したように、本発明の第1実施形態のクロロプレンゴム組成物及び第2実施形態のクロロプレンゴムは、特定量のエライジン酸及びオレイン酸を含有しているため、加硫速度を遅く調整することができる。より具体的には、例えば、一般的な工業用ゴム製品に用いられるクロロプレンゴムに比べて、10〜50%加硫速度を遅く調整することができる。また、このクロロプレンゴム組成物及びクロロプレンゴムでは、スルフェンアミド系化合物を添加剤として用いずに加硫速度を遅く調整することができるため、発泡の阻害を防止することができる。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
<クロロプレンゴムの作製>
内容積5リットルの4つ口フラスコに、純水90質量部と、エライジン酸0.04質量%とオレイン酸0.03質量%を含有する乳化剤3.5質量部を仕込み、窒素気流下で撹拌しながらクロロプレン単量体100質量部と硫黄0.6質量部を加えて重合液を調整した。重合液に過硫酸カリウム0.1質量部を触媒として加えて、窒素雰囲気下40℃で重合させ、最終重合率が73%に達したところでフェノチアジンを0.07質量部含む乳濁液を加えて重合を停止し、減圧下で未反応単量体を除去した。重合を停止させた重合液に希酢酸を加えて、そのpHを6.0に調整し、凍結凝固乾燥法により、シート状のクロロプレンゴムを得た。
【0048】
<クロロプレンゴム組成物(評価用組成物)の作製>
実施例1のクロロプレンゴム組成物は、前述した方法で作製したクロロプレンゴム100質量部に、エライジン酸を15.2質量%とオレイン酸を14.3質量%含有する不均化トール油石鹸を0.5質量部加え、ステアリン酸0.5質量部、酸化マグネシウム4.0質量部、酸化亜鉛5.0質量部を、JIS K 6299に準拠して練りロール機を用いて混練したものである。
【0049】
<クロロプレンゴム組成物の評価>
上述の方法で得られた評価用組成物につき、以下に示すスコーチタイムt5と、スコーチタイムts0.2を測定した。
【0050】
(スコーチタイムt5)
上述の方法で得られた測定用のクロロプレンゴム組成物を、JIS−K 6300−1に準拠して、125℃におけるムーニースコーチ試験を行って「スコーチタイムt5」を測定した。実際の製品使用を考慮して「スコーチタイムt5」は、25分以上40分以下の値を示したものを合格とした。
「スコーチタイムt5」とは、スコーチタイムを測定した際に、クロロプレンゴム組成物の粘度が最低粘度から5%まで上昇するまでにかかる時間(分)を表す。
【0051】
(スコーチタイムts0.2)
上述の方法で得られた測定用のクロロプレンゴム組成物を、株式会社東洋精機製作所製の振動式加硫試験機(AUTOMATIC ROTORLESS RHEOMETER ALR−2)を用いて、JIS K6300−2に準拠して150℃で加硫試験を行い「スコーチタイムts0.2」を測定した。実際の製品使用を考慮して「スコーチタイムts0.2」は3.5分以上5.0分以下の値を示したものを合格とした。この値は、一般的な工業用ゴム製品に用いられるクロロプレンゴム(比較例1や比較例2のクロロプレンゴム)にくらべて、10〜50%加硫速度が遅くなったことを表す。
「スコーチタイムts0.2」とは、振動式加硫試験機による加硫試験を行った際に、測定トルクが最小トルクMLから最大トルクMHの0.2%まで上昇するまでの時間(分)を表す。
【0052】
実施例1のクロロプレンゴム組成物は、クロロプレンゴム組成物100質量%中に、エライジン酸を2.9質量%とオレイン酸を2.9質量%含有するものであり、スコーチタイムt5が31分、スコーチタイムts0.2が4.5分であった。
後述する比較例1のクロロプレンゴム組成物に比べて、スコーチタイムts0.2が約36%長くなった。
【0053】
次に、以下の表1に示す実施例2、3及び比較例1、2のクロロプレンゴム組成物と、表2に示す実施例4〜7及び比較例3のクロロプレンゴムについて説明する。これらのクロロプレンゴム組成物又はクロロプレンゴムは、クロロプレンゴムを作製する際の条件又は得られたクロロプレンゴムに配合する添加剤を以下に示すとおり変更して実施例1と同様に作製し、実施例1と同様に評価したものである。
【0054】
(比較例1)
比較例1のクロロプレンゴム組成物は、エライジン酸とオレイン酸を含まないクロロプレンゴム組成物である。また、比較例1のクロロプレンゴムは一般的な工業用ゴム製品に用いられるクロロプレンゴムである。実施例1と同様にクロロプレンゴム組成物を得てその加硫特性を測定したところ、スコーチタイムt5が28分、スコーチタイムts0.2が3.3分であった。
比較例1のクロロプレンゴム組成物に含まれるクロロプレンゴムは、実施例1でクロロプレンゴムを作製する際に、乳化剤としてエライジン酸とオレイン酸を含まないロジン酸を用いて得られたものである。
【0055】
(実施例2)
実施例2のクロロプレンゴム組成物は、クロロプレンゴム組成物100質量%中に、エライジン酸を0.001質量%とオレイン酸を0.0009質量%含有するものであり、スコーチタイムt5が28分、スコーチタイムts0.2が3.8分であった。
比較例1のクロロプレンゴム組成物に比べて、スコーチタイムts0.2が約15%長くなった。
実施例2のクロロプレンゴム組成物は、比較例1のクロロプレンゴム100質量部に、エライジン酸を15.2質量%とオレイン酸を14.3質量%含有する不均化トール油石鹸を0.001質量部加えたものである。
【0056】
(実施例3)
実施例3のクロロプレンゴム組成物は、クロロプレンゴム組成物100質量%中に、エライジン酸を2.8質量%とオレイン酸を2.8質量%含有するものであり、スコーチタイムt5が30分、スコーチタイムts0.2が4.2分であった。
比較例1のクロロプレンゴムに比べて、スコーチタイムts0.2が約27%長くなった。
実施例3のクロロプレンゴム組成物は、比較例1のクロロプレンゴム100質量部に、エライジン酸を15.2質量%とオレイン酸を14.3質量%含有する不均化トール油石鹸を0.5質量部加えたものである。
【0057】
(比較例2)
比較例2のクロロプレンゴム組成物は、クロロプレンゴム組成物100質量%中に、エライジン酸を4.2質量%とオレイン酸を4.2質量%含有するものであり、スコーチタイムt5が50分、スコーチタイムts0.2が10.1分であった。
比較例1のクロロプレンゴムに比べて、スコーチタイムts0.2が約200%長くなった。
比較例2のクロロプレンゴム組成物は、実施例1でクロロプレンゴムを作製する際に、乳化剤を、エライジン酸0.06質量%とオレイン酸0.047質量%を含有する乳化剤30質量部に変更するとともに、硫黄の添加量を0.5質量部に変更してクロロプレンゴムを得、得られたクロロプレンゴムに、エライジン酸を15.2質量%とオレイン酸を14.3質量%含有する不均化トール油石鹸を1.5質量部加えたものである。
【0058】
【表1】
【0059】
(実施例4)
実施例4のクロロプレンゴムは、クロロプレンゴム100質量%中に、エライジン酸を0.0007質量%とオレイン酸を0.0005質量%含有するものである。実施例4では、クロロプレンゴム100質量部に、ステアリン酸0.5質量部、酸化マグネシウム4.0質量部、酸化亜鉛5.0質量部を、JIS K 6299に準拠して練りロール機を用いて混練して、評価用組成物を得た。この評価用組成物について、その加硫特性を測定したところ、スコーチタイムt5が28分、スコーチタイムts0.2が3.7分であった。
一般的な工業用ゴム製品に用いられるクロロプレンゴム(比較例1のクロロプレンゴム)に比べて、スコーチタイムts0.2が約12%遅くなった。
【0060】
(実施例5)
実施例2のクロロプレンゴムは、クロロプレンゴム100質量%中に、エライジン酸を0.001質量%とオレイン酸を0.0009質量%含有するものであり、スコーチタイムt5が29分、スコーチタイムts0.2が4.2分であった。
比較例1のクロロプレンゴムに比べて、スコーチタイムts0.2が約27%長くなった。
実施例5のクロロプレンゴムは、クロロプレンゴムを作製する際に、実施例4で用いた乳化剤を、エライジン酸0.03質量%とオレイン酸0.026質量%を含有する乳化剤4.75質量部に変更するとともに、硫黄の添加量を0.5質量部に変更したものである。
【0061】
(実施例6)
実施例6のクロロプレンゴムは、クロロプレンゴム100質量%中に、エライジン酸を0.01質量%とオレイン酸を0.009質量%含有するものであり、スコーチタイムt5が30分、スコーチタイムts0.2が4.5分であった。
比較例1のクロロプレンゴムに比べて、スコーチタイムts0.2が約36%長くなった。
実施例6のクロロプレンゴムは、クロロプレンゴムを作製する際に、実施例4で用いた乳化剤を、エライジン酸0.06質量%とオレイン酸0.047質量%を含有する乳化剤8.0質量部に変更するとともに、硫黄の添加量を0.5質量部に変更したものである。
【0062】
(実施例7)
実施例7のクロロプレンゴムは、クロロプレンゴム100質量%中に、エライジン酸を0.1質量%とオレイン酸を0.1質量%含有するものであり、スコーチタイムt5が35分、スコーチタイムts0.2が5.0分であった。
比較例1のクロロプレンゴムに比べて、スコーチタイムts0.2が約50%長くなった。
実施例7のクロロプレンゴムは、クロロプレンゴムを作製する際に、実施例4で用いた乳化剤を、エライジン酸0.20質量%とオレイン酸0.18質量%を含有する乳化剤3.5質量部に変更するとともに、硫黄の添加量を0.5質量部に変更したものである。
【0063】
(比較例3)
比較例3のクロロプレンゴムは、クロロプレンゴム100質量%中に、エライジン酸を0.15質量%とオレイン酸を0.15質量%含有するものである。実施例4と同様に評価用組成物を得てその加硫特性を測定したところ、スコーチタイムt5が45分、スコーチタイムts0.2が8.2分であった。この値は、加硫時間が長くなりすぎたことを示す。
比較例3のクロロプレンゴムは、実施例1でクロロプレンゴムを作製する際に、乳化剤を、エライジン酸0.06質量%とオレイン酸0.047質量%を含有する乳化剤30質量部に変更するとともに、硫黄の添加量を0.5質量部に変更したものである。
【0064】
【表2】
【0065】
表1や表2に示されたとおり、本発明の範囲にある各実施例のクロロプレンゴム組成物及びクロロプレンゴムは、一般的な工業用ゴム製品に用いられるクロロプレンゴム及びその組成物(比較例1)に比べて、10〜50%加硫速度を遅く調整されたことが確認できた。