(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092719
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 19/00 20060101AFI20170227BHJP
【FI】
F25D19/00 550B
F25D19/00 560A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-126628(P2013-126628)
(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公開番号】特開2015-1344(P2015-1344A)
(43)【公開日】2015年1月5日
【審査請求日】2016年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 敬
(72)【発明者】
【氏名】山川 貴志
(72)【発明者】
【氏名】倉谷 利治
(72)【発明者】
【氏名】青木 均史
【審査官】
関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−130531(JP,A)
【文献】
特開2003−262462(JP,A)
【文献】
特開2001−159251(JP,A)
【文献】
特開2007−139310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵庫本体の背面側下部に設けられ、前記冷蔵庫本体の底板及び側面板と、圧縮機、送風機及び凝縮器を搭載したベース板と、背面を覆う機械室カバーとで囲まれて構成された機械室と、
前記機械室に位置する前記冷蔵庫本体の側面板に形成された通風用開口と、
前記機械室の外周縁に沿って、前記冷蔵庫本体の側面板の内側に取付けられた補強用アングルと、
前記通風用開口の外周を囲むように前記冷蔵庫本体の側面板の内側に取付けられた補強板とを備え、
前記補強板はその周縁部が前記補強用アングルに固定され、前記補強板は前記機械室に位置する前記冷蔵庫本体の側面板の前記通風用開口を除く全体を内側から覆う大きさを有していることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記補強板は前記機械室の側面よりも上方及び前方に延在した状態で前記冷蔵庫本体の側面板の内側に取付けられていることを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫本体の背面側下部に設けられた機械室に、圧縮機、送風機及び凝縮器を配置し、機械室に位置する冷蔵庫本体の側面板に通風用開口を有する冷蔵庫の放熱性と強度の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の冷蔵庫は、断熱性を有する冷蔵庫本体の背面側下部に機械室が設けられており、機械室は冷蔵庫本体の底板及び側面板と、圧縮機、送風機及び凝縮器を搭載したベース板と、背面を覆う機械室カバーとで囲まれて構成されている。また、機械室における通風性を良好にして、圧縮機及び凝縮器の放熱性を高めるために、機械室に位置する冷蔵庫本体の側面板に通風用開口を設けるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、冷蔵庫本体の側面板に通風用開口を設けると、その部分の機械的強度が低下し、長期の使用の間に側面板に歪が発生する心配があった。
【0004】
そこで、機械室に位置する側面板に、機械室内方側へ窪んだ凹部を設け、この凹部に通風用開口を設けることにより、通風用開口を有する側面板の剛性を高め、冷蔵庫本体の強度低下を補うようにしたもの(例えば、特許文献2参照。)や、機械室に位置する側面板の下部から背部にわたって補強材を取付けるとともに、側面板に開口する通風用開口を補強材寄りに配置して冷蔵庫本体の強度低下を補うようにしたもの(例えば、特許文献3参照。)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−285439号公報(第3−4頁、
図1)
【特許文献2】特開2003−130531号公報(第3−4頁、
図1)
【特許文献3】特許第5081880号公報(第3−4頁、
図1−
図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の構造では、単に通風用開口の周囲を窪ませただけの構造であるため、冷蔵庫の強度の信頼性を確保するには十分といえず、凹部を形成することによって冷蔵庫の外観を損なう欠点があった。
【0007】
特許文献3に記載の構造では、通風用開口を補強材寄りに配置するという制約があるため、通風用開口の開口面積を小さくしなければならず、冷蔵庫の放熱の信頼性を十分に確保できない問題があった。また、通風用開口を設ける側面板には冷蔵庫本体のみならず、圧縮機等を配置した機械室の荷重が掛るため、機械室に位置する側面板の一部に補強材を取付けるだけでは、冷蔵庫の強度の信頼性を十分に確保できない問題があった。
【0008】
本発明は、冷蔵庫本体の背面側下部に設けられた機械室に、圧縮機、送風機及び凝縮器を配置し、機械室に位置する冷蔵庫本体の側面板に通風用開口を設けるようにした冷蔵庫において、外観を損なったり、通風用開口の開口面積に制約を受けることなく冷蔵庫の放熱性と強度の信頼性を十分に確保できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の冷蔵庫は、冷蔵庫本体の背面側下部に設けられ、前記冷蔵庫本体の底板及び側面板と、圧縮機、送風機及び凝縮器を搭載したベース板と、背面を覆う機械室カバーとで囲まれて構成された機械室と、前記機械室に位置する前記冷蔵庫本体の側面板に形成された通風用開口と、前記機械室の外周縁に沿って、前記冷蔵庫本体の側面板の内側に取付けられた補強用アングルと、前記通風用開口の外周を囲むように前記冷蔵庫本体の側面板の内側に取付けられた補強板とを備え、 前記補強板の周縁部が前記補強用アングルに固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の冷蔵庫では、機械室に位置する側面板に通風用開口を設け、通風用開口の外周を囲むように補強板を側面板の内側から取付ける。この補強板の周縁部は、機械室の外周縁に沿って、冷蔵庫本体の側面板の内側に取付けられた補強用アングルに固定される。
【0011】
この構造により、開口の周囲の側面板を補強する補強板と、機械室の外周縁の側面板を補強する補強用アングルとが一体化された強固な補強構造となる。そして、冷蔵庫本体や機械室の荷重が掛る側面板に通風用開口を設けたにもかかわらず、冷蔵庫本体の側面板に歪が発生しないようにでき、冷蔵庫の強度の信頼性を十分に確保できることになる。
【0012】
しかも、このような補強構造は冷蔵庫の外から見えないので、冷蔵庫の外観を損なう心配がなく、通風用開口の位置や大きさに制約を受けることがない。そして、通風用開口を適度な大きさとし、かつ、通風に適した位置に設定して機械室内の通風を良好にし、冷蔵庫の放熱性を十分に確保して消費電力を低減することができる。
【0013】
また、補強板は機械室に位置する冷蔵庫本体の側面板の全体(但し、通風用開口を除く)を内側から覆う大きさに設定する。この構造により、機械室に位置する側面板全体が補強板と補強用アングルとによって内側から補強され、より強固な補強構造となる。
【0014】
このため、通風用開口を通風に適した機械室側面の中央位置とし、かつ、通風用開口の高さを機械室の高さの2分の1程度に設定して通風用開口の開口面積を十分に確保することができ、冷蔵庫の放熱性及び強度の信頼性が大幅に向上する。
【0015】
さらにまた、補強板は機械室の側面よりも上方及び前方に延在した状態で、冷蔵庫本体の側面板の内側に取付けられている。この構造により、側面板の機械室に沿った部分が補強板によって補強され、冷蔵庫本体の外箱と内箱との間に注入される断熱材の発泡圧力によって側面板の機械室に沿った部分が膨出し、側面板の外観を損なうことも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の概略構造を説明する図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の概略構造を説明する図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の要部概略構造を説明する図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る冷蔵庫の補強構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る冷蔵庫を図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
図1ないし
図4は本発明の実施形態に係る冷蔵庫を示すものであり、
図1は本発明の実施形態に係る冷蔵庫の概略構造を示す背面側から見た斜視図である。
図2は
図1の冷蔵庫の機械室部分を含む横断面図である。
図3は
図1の冷蔵庫の機械室カバーを外した状態を示す要部拡大斜視図である。また、
図4は
図1の冷蔵庫の補強構造を説明するための分解斜視図である。
【0019】
冷蔵庫本体1は、
図1ないし
図3に示すように、外面を形成する天板2、天板2と一体の側面板3、4、背面板5、底板6等よりなる外箱7と、貯蔵室8を形成する内箱9と、外箱7及び内箱9間に充填された発泡ウレタンフォームなどの断熱材10とから構成されている。外箱7は鋼板等の厚さが0.4〜0.5mmの金属板で構成され、内箱9はABS樹脂などの合成樹脂で構成されている。冷蔵庫本体1の前面には、複数の貯蔵室8を開閉する複数の扉11が設けられている。
【0020】
機械室12は、本体背面側下部に位置しており、底板6と、凝縮器13、送風機14及び圧縮機15を搭載したベース板16と、背面を覆う機械室カバー17と、冷蔵庫本体1の側面板3、4とで囲まれて構成されている。この機械室12は、冷蔵庫本体1の横幅全体にわたって横長の空間に構成されている。ベース板16には、凝縮器13、送風機14及び圧縮機15がこの順で機械室2の長手方向(左右方向)に配置されている。
【0021】
送風機14は機械室12内部を左右に仕切る仕切り板18の中央開口にファン14Aを臨ませて取付けられている。また、機械室カバー17の両端部にはスリット状の通風口19、20が縦(上下)に並べて複数設けられている。
【0022】
機械室12に位置する側面板3、4には長方形の通風用開口21、22が設けられている。また、通風用開口21、22の外周を囲むように、通風用開口21、22と同じ形状で、同じ大きさの開口23を有する補強板24が側面板3、4の内側にそれぞれ取付けられている。
【0023】
補強板24は、
図3及び
図4に示すように、機械室12の側面と同じ五角形状であり、かつ、機械室に位置する冷蔵庫本体1の側面板3、4の全体(但し、通風用開口21,22を除く)を内側から覆うように機械室12の側面よりも大きくしてある。また、補強板24は厚さが1.2mmで、側面板3、4よりも厚い鋼板等の金属板でできている。
【0024】
補強板24を機械室12の側面よりも大きめにし、機械室12の側面よりも上方及び前方へ延在した状態で側面板3、4の内側に取り付けておくことは、機械室12に位置する側面板3、4の補強だけでなく、側面板3、4の美観向上も兼ねている。
【0025】
すなわち、冷蔵庫本体1の外箱7と内箱9との間に断熱材10を発泡成形する際に、側面板3、4の機械室12に沿った部分が外側に膨出してラインを形成し、側面板3、4の外観を損なう心配がある。そこで、側面板3、4の機械室12に沿った部分を補強板24で覆うことにより、この部分も補強して、断熱材10の発泡成形に伴うラインが側面板3、4に現れないようにしている。
【0026】
通風用開口21、22には化粧カバー25が外側からそれぞれ取付けられている。化粧カバー25は前後に傾斜した複数の横ルーバー26を有するとともに、複数の横ルーバー26間に通風口27を形成したものであり、側面板3、4の通風用開口21、22が外から直接見えないようにしている。
【0027】
冷蔵庫本体1の側面板3、4には、
図3及び
図4に示すように、端部に内側折り曲げ片3A、4Aが一体形成されている。そして、側面板3、4の内側折り曲げ片3A、4Aの下部と背部には、機械室12の外周縁に沿うように、L型の補強用アングル28がビスやスポット溶接でそれぞれ固定して取付けられている。
【0028】
上述した補強板24はその周縁部(少なくとも下部及び背部)が補強用アングル28にスポット溶接によって固定されており、補強板24と補強用アングル28とは連結した状態で、機械室12に位置する側面板3、4全体を内側から補強している。また、側面板3、4に取付けられた補強用アングル28には、機械室12のベース板16の両端部がビス等により取付けられている。
【0029】
なお、通風用開口21、22は、機械室12の側面の中央に位置し、機械室12内での通風が偏りなく行われるようにしている。そして、通風用開口21、22の高さは105mmであり、機械室12の高さ(ベース板16から機械室12の上壁を形成する底板6までの高さ)の約200mmに対して約2分の1に設定され、十分な開口面積が確保されている。また、冷蔵庫本体1の底板6と機械室12のベース板16には脚体29、30が取付けられており、冷蔵庫本体1及び機械室12と設置床面との間に隙間が確保されている。
【0030】
圧縮機15及び凝縮器13は、図示しない蒸発器とともに、冷凍サイクルを構成している。冷凍サイクルは、圧縮機15、送風機14等を運転させることにより、蒸発器で冷媒を蒸発させて貯蔵室8の空気を冷却し、凝縮器13で冷媒を凝縮させて貯蔵室8の空気から奪った熱を外部に放熱させるようにしている。
【0031】
機械室12に配置された送風機14を運転すると、側面板3の通風用開口21及び機械室カバー17の通風口19から機械室12に空気が流入し、送風機14の吸込み空気によって凝縮器13が冷却される。また、送風機14の吐出側には圧縮機15が配置されているため、送風機14の吐出空気により圧縮機15が冷却される。このようにして、凝縮器13及び圧縮機15を冷却して温まった空気は側面板4の通風用開口22及び機械室カバー17の通風口20から流出し、機械室12の放熱が行われることになる。
【0032】
本発明の実施態様の冷蔵庫では、機械室12に位置する側面板3、4に通風用開口21、22を設け、通風用開口21、22の外周を囲むように補強板24を側面板3、4の内側から取付ける。この補強板24の周縁部を、機械室12の外周縁に沿って、冷蔵庫本体1の側面板3、4の内側に取付けられた補強用アングル28に固定するようにしている。
【0033】
このため、通風用開口21、22の周囲の側面板3、4を補強する補強板24と、機械室12の外周縁の側面板3、4を補強する補強用アングル28とが一体化された強固な補強構造となる。冷蔵庫本体1や機械室12の荷重が掛る側面板3、4に通風用開口21、22を設けてあるにもかかわらず、冷蔵庫本体1の側面板3、4に歪が発生しないようにでき、冷蔵庫の強度の信頼性を十分に確保できる。
【0034】
また、このような補強構造は冷蔵庫の外から見えることがなく、しかも、通風用開口21、22が化粧カバー25で覆われているので、冷蔵庫の外観を損なう心配がない。
【0035】
また、補強材24と補強用アングル28を連結した補強構造であるので、通風用開口21、22の位置や大きさに制約を受けることがなくなり、通風用開口21、22が適度な開口面積に設定される。そして、通風用開口21、22が通風に適した位置に設定されることで、機械室12内の通風を良好にし、冷蔵庫の放熱性を十分に確保して消費電力を低減することができる。
【0036】
さらに、補強板24は機械室12の側面と同じ五角形状で、かつ、機械室12に位置する冷蔵庫本体1の側面板3,4の通風用開口21、22を除くほぼ全体を内側から覆う大きさを有している。そして、通風用開口21、22は機械室12の側面の中央位置に設定され、通風用開口21、22の高さは機械室12の高さの約2分の1に設定されている。
【0037】
この構造により、機械室12の側面に位置する側面板3、4全体が補強板24と補強用アングル26とによって内側からより強固に補強され、通風用開口21、22を有する機械室12部分の側面板3、4の強度を十分に保つことができる。そして、通風用開口21、22による通風に偏りがないようにしつつ、開口面積を十分に確保して冷蔵庫の放熱性を高めることができる。このため、冷蔵庫の放熱性及び強度の信頼性が大幅に向上する。
【0038】
さらにまた、補強板24は機械室12の側面よりも上方及び前方に延在した状態で、冷蔵庫本体1の側面板3、4の内側に取付けられている。
【0039】
この構造により、側面板3、4の機械室12に沿った部分が補強板24によって補強され、冷蔵庫本体1の外箱7と内箱9との間に注入される断熱材10の発泡圧力によって側面板3、4の機械室12に沿った部分が膨出し、側面板3、4の外観を損なうことも防止できる。
【0040】
以上、本発明の実施形態に係る冷蔵庫について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 冷蔵庫本体
3、4 側面板
6 底板
12 機械室
13 凝縮器
14 送風機
15 圧縮機
16 ベース板
17 機械室カバー
21、22 通風用開口
24 補強材
28 補強用アングル