特許第6092730号(P6092730)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092730
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】電力制御システムおよび電力制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/32 20060101AFI20170227BHJP
   B61L 27/00 20060101ALI20170227BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H02J3/32
   B61L27/00 Z
   H02J3/46
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-150376(P2013-150376)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-23689(P2015-23689A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000153443
【氏名又は名称】株式会社 日立産業制御ソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂口 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】小田 雅寛
(72)【発明者】
【氏名】中村 映
(72)【発明者】
【氏名】武井 晃
(72)【発明者】
【氏名】中木 康幸
【審査官】 宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−132980(JP,A)
【文献】 特開2013−023074(JP,A)
【文献】 特開平11−299100(JP,A)
【文献】 特開2011−061970(JP,A)
【文献】 特開2013−095398(JP,A)
【文献】 特開平11−011185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00−3/12、
7/00−13/00、
15/00−15/42
B60M1/00−7/00
B61L1/00−99/00
H02J3/00−7/12、
7/34−7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の変電所の夫々を指定して対象変電所とし、電力系統から前記対象変電所へ供給される電力を示す受電情報を取得し、前記対象変電所から架線へ供給される電力を示すき電情報を取得し、前記対象変電所に接続されている蓄電装置の充放電を示す充放電情報を取得し、前記架線からの電力による列車の運行を示す運行情報を取得し、前記受電情報と前記き電情報と前記充放電情報と前記運行情報とに基づいて、前記対象変電所における電力の予測値である予測電力を算出する予測部と、
前記複数の変電所の中の第1変電所の予測電力に基づいて、前記第1変電所に対応する第1蓄電装置の第1動作を決定し、前記複数の変電所の中の第2変電所の予測電力と前記第1動作とに基づいて、前記第2変電所に対応する第2蓄電装置の第2動作を決定する決定部と、
を備える電力制御システム。
【請求項2】
前記決定部は、前記第2変電所の予測電力が特定値を超えるか否かを判定し、前記判定の結果と前記第1動作とに基づいて前記第2動作を決定する、
請求項1に記載の電力制御システム。
【請求項3】
前記決定部は、前記第2変電所の予測電力が前記特定値を超えないと判定された場合、前記第1動作が前記第1蓄電装置の放電であるか否かを判定し、前記第1動作が前記第1蓄電装置の放電でないと判定された場合、前記第2蓄電装置の充電を前記第2動作として決定する、
請求項2に記載の電力制御システム。
【請求項4】
前記決定部は、前記第2変電所の予測電力が前記特定値を超えないと判定され、且つ前記第1動作が前記第1蓄電装置の放電であると判定された場合、前記第2蓄電装置の放電を前記第2動作として決定する、
請求項3に記載の電力制御システム。
【請求項5】
前記決定部は、前記第2変電所の予測電力が前記特定値を超えると判定された場合、前記第2蓄電装置の放電を前記第2動作として決定する、
請求項4に記載の電力制御システム。
【請求項6】
前記決定部は、前記第1変電所の予測電力が前記特定値を超えると判定された場合、前記第1蓄電装置の放電を前記第1動作として決定する、
請求項5に記載の電力制御システム。
【請求項7】
前記予測部は、前記複数の変電所の中の特定の変電所に接続されている分散型発電により発電される電力を示す発電情報を取得し、前記受電情報と前記き電情報と前記充放電情報と前記発電情報と前記運行情報とに基づいて前記特定の変電所の予測電力を算出する、
請求項6に記載の電力制御システム。
【請求項8】
前記対象変電所の予測電力は、前記対象変電所における前記電力系統からの需要電力の予測値である、
請求項1乃至7の何れか一項に記載の電力制御システム。
【請求項9】
前記決定部は、前記複数の変電所の中で、前記第2変電所から所定距離以内に位置する変電所を前記第1変電所として選択する、
請求項8に記載の電力制御システム。
【請求項10】
前記決定部は、前記複数の変電所の中で、前記第2変電所に隣接する変電所を前記第1変電所として選択する、
請求項8に記載の電力制御システム。
【請求項11】
複数の変電所の夫々を指定して対象変電所とし、電力系統から前記対象変電所へ供給される電力を示す受電情報を取得し、前記対象変電所から架線へ供給される電力を示すき電情報を取得し、前記対象変電所に接続されている蓄電装置の充放電を示す充放電情報を取得し、前記架線からの電力による列車の運行を示す運行情報を取得し、
前記受電情報と前記き電情報と前記充放電情報と前記運行情報とに基づいて、前記対象変電所における電力の予測である予測電力を算出し、
前記複数の変電所の中の第1変電所の予測電力に基づいて、前記第1変電所に対応する第1蓄電装置の第1動作を決定し、
前記複数の変電所の中の第2変電所の予測電力と前記第1動作とに基づいて、前記第2変電所に対応する第2蓄電装置の第2動作を決定する、
ことを備える電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
運転ダイヤに基づいて列車の運行のための所要電力を予測し、電力供給設備の間で電力を最適に配分する電力管理システムが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−024206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転ダイヤに基づいて電力配分を最適化しても、実際の所要電力との間に偏差が生じることにより、需要電力が増大する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様である電力制御システムは、複数の変電所の夫々を指定して対象変電所とし、電力系統から対象変電所へ供給される電力を示す受電情報を取得し、対象変電所から架線へ供給される電力を示すき電情報を取得し、対象変電所に接続されている蓄電装置の充放電を示す充放電情報を取得し、架線からの電力による列車の運行を示す運行情報を取得し、受電情報とき電情報と充放電情報と運行情報とに基づいて、対象変電所における電力の予測値である予測電力を算出する予測部と、複数の変電所の中の第1変電所の予測電力に基づいて、第1変電所に対応する第1蓄電装置の第1動作を決定し、複数の変電所の中の第2変電所の予測電力と第1動作とに基づいて、第2変電所に対応する第2蓄電装置の第2動作を決定する決定部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、或る変電所に接続された蓄電装置が別の変電所の蓄電装置の動作に基づいて電力を融通することにより、需要電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電気鉄道監視制御システムの構成を示す。
図2】電力消費最適化システムの構成を示す。
図3】蓄電装置制御処理を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。
【0009】
図1は、電気鉄道監視制御システムの構成を示す。
【0010】
電気鉄道監視制御システムは、複数の蓄電装置1a、1bと、電力消費最適化システム2と、電力管理システム3と、運行管理システム4と、複数の変電所5a、5bと、列車6と、架線10とを有する。以下の説明において、符号のアルファベットによって要素を区別する必要がない場合、アルファベットを省略することがある。
【0011】
電力管理システム3は、変電所5内の機器を監視制御する。運行管理システム4は、列車6を監視制御する。電力消費最適化システム2は、蓄電装置1を監視制御する。電力消費最適化システム2は、電力管理システム3および運行管理システム4に接続されている。
【0012】
変電所5は、電力系統9に接続されている。変電所5は、変電設備41と、開閉器42、43とを有する。変電設備41は、電気鉄道用の変電設備であり、電力系統9と架線10の間で変圧などを行う。変電設備41は、開閉器42、43を有する。開閉器42、43は、遮断器であっても良い。開閉器42は、電力管理システム3からの指示に従って、電力系統9と変電設備41の間を開閉する。開閉器43は、電力管理システム3からの指示に従って、変電設備41と架線10の間を開閉する。
【0013】
複数の蓄電装置1は、複数の変電所5に夫々接続されている。蓄電装置1は、電力消費最適化システム2からの指示を受信し、その指示に応じて変電所5からの電力により充電したり変電所5へ放電したりする。蓄電装置1a、1bは、変電所5a、5bに夫々接続されている。蓄電装置1は、対応する変電所5の内部に設けられていても良い。
【0014】
図2は、電力消費最適化システムの構成を示す。
【0015】
電力管理システム3は、受電制御装置31と、き電制御装置32とを有する。受電制御装置31は、電力系統9から変電所5への受電状態を監視し制御し、その受電状態を示す受電情報を出力する。き電制御装置32は、変電所5から架線10へのき電状態を監視し制御し、そのき電状態を示すき電情報を出力する。
【0016】
電力消費最適化システム2は、例えばコンピュータである。コンピュータは、プログラム及びデータを格納するメモリと、メモリに接続されたマイクロプロセッサとを有する。このプログラムは、マイクロプロセッサを電力消費最適化システム2として機能させるプログラムである。このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な媒体に格納されても良く、その媒体からコンピュータにより読み出されても良い。
【0017】
電力消費最適化システム2は、運行情報取得装置21と、電力供給予測装置22と、電力消費予測装置23と、制御パターンデータベース24と、制御実績データベース25とを有する。更に電力消費最適化システム2には、自然エネルギー発電装置7と、環境情報取得装置8とが接続されている。自然エネルギー発電装置7は、変電所5に接続されており、太陽光発電や風力発電など、自然エネルギーを用いる発電を行うことにより、架線10へ電力を供給する。自然エネルギー発電装置7は、発電状況を示す発電情報を出力する。環境情報取得装置8は、今後の天候の変動を示す天候変動情報を提供する。天候の変動は、自然エネルギー発電装置7の発電電力に影響を与える。
【0018】
電力供給予測装置22は、受電制御装置31から受電情報を受け取る。更に電力供給予測装置22は、自然エネルギー発電装置7から発電情報を受け取り、環境情報取得装置8から天候変動情報を受け取り、発電情報と天候変動情報とに基づいて、自然エネルギー発電装置7の今後の発電電力を予測する。なお、ガスタービン発電など、自然エネルギー発電装置7以外の分散型電源が変電所5に接続されていても良い。この場合、電力供給予測装置22は、その分散型電源の発電情報を受け取り、その分散型電源の今後の発電電力を予測しても良い。自然エネルギー発電装置7などの分散型電源の電力を予測することにより、列車6に供給する電力の予測の精度を向上させることができる。
【0019】
運行情報取得装置21は、運行管理システム4から運行情報を取得する。運行情報は、路線上の現在の列車6の位置を示す列車位置情報と、列車6の運行の実績を示す運行実績情報とを含む。例えば、運行実績情報は、時間帯と、その時間帯の列車6による電力消費を示す電力消費情報とを含む。時間帯は、季節、曜日、時刻などを含んでも良い。電力消費情報は、路線における列車6の在線本数、列車6の車両重量、天候、温度、沿線のイベント、路線や駅の混雑状況、列車6の速度、路線の勾配、ランカーブなどを含んでも良い。制御実績データベース25は、変電所5毎の制御実績情報を記録する。制御実績情報は、運行実績情報と、蓄電装置1の充放電を示す充放電情報とを含む。これにより、制御実績データベース25には、過去の制御実績情報が蓄積される。
【0020】
電力消費予測装置23は、予測部51と決定部52とを有する。
【0021】
予測部51は、運行情報取得装置21により取得された列車位置情報を受け取る。更に予測部51は、制御実績データベース25に記録された制御実績情報を取得する。更に予測部51は、き電制御装置32からき電情報を受け取る。更に予測部51は、制御実績情報と列車位置情報とき電情報に基づいて、列車6による消費電力である列車消費電力を予測する。更に予測部51は、制御実績情報と列車位置情報に基づいて、列車6による今後の回生電力を予測する。更に予測部51は、蓄電装置1の充電に用いる電力である充電電力と、蓄電装置1から放電される電力である放電電力とについて、制御実績情報と列車位置情報と充放電情報に基づいて、蓄電装置1による今後の充電電力および放電電力を予測する。
【0022】
決定部52は、予測結果に基づいて、変電所5に接続されている蓄電装置1の動作を示す制御パターンを作成し、制御パターンを制御パターンデータベース24に記録し、制御パターンを蓄電装置1へ送信することにより蓄電装置1を制御する。制御パターンは、蓄電装置1の充電、放電、待機などを示す。なお、制御パターンは、充電時間、放電時間、充放電の電圧範囲、充電率の範囲、放電率の範囲などを含んでも良い。
【0023】
蓄電装置1は、制御機器11と、蓄電機器12と、制御パターンデータベース13とを有する。蓄電機器12は、蓄電池やフライホイール・バッテリなどである。
【0024】
制御機器11は、電力消費最適化システム2から制御パターンを受信し、制御パターンデータベース13へ記録し、記録された制御パターンに従って蓄電機器12の動作を制御する。制御パターンが充電を示す場合、制御機器11は、変電所5からの電力の供給を受けることにより、蓄電機器12を充電する。制御パターンが放電を示す場合、制御機器11は、蓄電機器12を放電することにより、変電所5へ電力を供給する。制御パターンが待機を示す場合、制御機器11は、充電や放電を行わずに待機する。
【0025】
更に制御機器11は、蓄電機器12の状態を示す充放電情報を電力消費最適化システム2へ送信する。充放電情報は、例えば充電量や充電率である。電力消費最適化システム2は、制御機器11からの充放電情報を制御実績データベース25へ記録する。
【0026】
以下、電力消費最適化システム2が複数の蓄電装置1を制御する蓄電装置制御処理について説明する。
【0027】
図3は、蓄電装置制御処理を示す。
【0028】
電力消費最適化システム2は、一定時間毎に蓄電装置制御処理を繰り返し実行する。
【0029】
まず、運行情報取得装置21は、運行管理システム4から運行情報を受信し、運行情報内の列車位置情報を予測部51へ出力し、運行情報内の運行実績情報を制御実績データベース25へ記録する(S210)。
【0030】
その後、予測部51は、運行情報取得装置21からの列車位置情報と、制御実績データベース25内の制御実績情報と、き電制御装置32からのき電情報とに基づいて、複数の変電所5の夫々に対し、今後の列車消費電力である予測列車消費電力を算出する(S220)。例えば、予測部51は、現在時刻の時間帯を認識し、認識された時間帯と変電所5とに対応する制御実績情報を制御実績データベース25から取得する。
【0031】
その後、予測部51は、運行情報取得装置21からの列車位置情報と、制御実績データベース25内の制御実績情報とに基づいて、列車6による今後の電力の回生電力を示す予測回生電力を算出する(S230)。
【0032】
その後、決定部52は、運行情報取得装置21からの列車位置情報と、制御実績データベース25内の制御実績情報とに基づいて、今後の充電電力を示す予測充電電力と、今後の放電電力を示す予測放電電力とを算出する(S240)。
【0033】
その後、電力供給予測装置22は、自然エネルギー発電装置7からの発電情報と、環境情報取得装置8からの天候変動情報とに基づいて、自然エネルギー発電装置7による今後の発電電力を示す予測発電電力を算出する(S250)。
【0034】
その後、決定部52は、複数の変電所5の一つを順番に選択して対象変電所とし、予測列車消費電力と、予測回生電力と、予測充電電力と、予測放電電力と、予測発電電力とに基づいて、現在の対象変電所がピーク時間帯であるか否かを判定する(S320)。例えば、決定部52は、対象変電所が電力系統9から受電する電力である需要電力の予測を予測需要電力として算出し、更に決定部52は、予測需要電力が所定の需要電力閾値を超える場合、ピーク時間帯であると判定する。ここで決定部52は、特定値として需要電力閾値を用いる。例えば、列車消費電力と充電電力との合計を内部需要電力とし、回生電力と放電電力と発電電力との合計を内部供給電力とすると、需要電力は、内部需要電力から内部供給電力を減じた値である。
【0035】
現在がピーク時間帯であると判定された場合(S320:Y)、決定部52は、対象変電所の蓄電装置1を放電させることを対象変電所の制御パターンとして決定する(S330)。現在がピーク時間帯でないと判定された場合(S320:N)、決定部52は、対象変電所の蓄電装置1を充電させることを対象変電所の制御パターンとして決定する(S340)。
【0036】
その後、決定部52は、全ての変電所5についてピーク時間帯の判定を行ったか否かを判定する(S350)。全ての変電所5についてピーク時間帯の判定を行っていないと判定された場合(S350:N)、決定部52は、処理をS310へ移行させ、次の対象変電所を選択する。全ての変電所5についてピーク時間帯の判定を行ったと判定された場合(S350:Y)、決定部52は、全ての変電所5の制御パターンを制御パターンデータベース24へ記録する(S360)。
【0037】
その後、決定部52は、複数の変電所5の一つを順番に選択して対象変電所とし、架線10に沿って対象変電所に隣接する変電所5を隣接変電所として選択し、制御パターンデータベース24から隣接変電所の制御パターンを取得し、対象変電所および隣接変電所の制御パターンが所定の制御パターン条件を満たすか否かを判定する(S420)。ここで、決定部52は、対象変電所の制御パターンが放電以外を示しており、且つ隣接変電所の制御パターンが放電を示している場合、対象変電所および隣接変電所の制御パターンが制御パターン条件を満たすと判定する。
【0038】
制御パターンが制御パターン条件を満たす場合(S420:Y)、決定部52は、対象変電所の制御パターンを、対象変電所の蓄電装置1を放電させることに変更する(S430)。制御パターンが制御パターン条件を満たしていない場合(S420:N)、決定部52は、処理をS450へ移行させる。
【0039】
その後、決定部52は、全ての変電所5について隣接変電所の判定を行ったか否かを判定する(S450)。全ての変電所5について隣接変電所の判定を行っていないと判定された場合(S450:N)、決定部52は、処理をS420へ移行させ、次の対象変電所および隣接変電所を選択する。全ての変電所5について隣接変電所の判定を行ったと判定された場合(S450:Y)、決定部52は、変更された制御パターンを制御パターンデータベース24へ記録し、その制御パターンを対応する蓄電装置1へ送信し(S460)、このフローを終了する。
【0040】
以上が蓄電装置制御処理である。
【0041】
なお、決定部52は、時間帯毎の制御パターンを決定し、制御パターンデータベース24へ記録しても良い。この場合、決定部52は、現在時刻の時間帯を認識し、認識された時間帯に対応する制御パターンを制御パターンデータベース24から取得し、蓄電装置1へ送信しても良い。また、蓄電装置1の制御機器11は、時間帯毎の制御パターンを決定し、制御パターンデータベース24へ記録しても良い。また、電力供給予測装置22および予測部51は、電力に代えて電力量を予測しても良い。
【0042】
S420において隣接変電所を第1変電所と呼ぶことができ、対象変電所を第2変電所と呼ぶことができる。決定部52は、複数の変電所の中で対象変電所から所定距離以内にある変電所5を、隣接変電所に代えて選択しても良い。
【0043】
なお、S320において、決定部52は、内部需要電力の予測値に対し、需要電力と内部供給電力との合計の予測値の余裕が所定の余裕閾値を下回るか否かを判定しても良い。余裕が余裕閾値を下回る場合、決定部52は、処理をS330へ移行させ、余裕が余裕閾値を下回らない場合、決定部52は、処理をS340へ移行させる。この場合、決定部52は、特定値として、予め設定された需要電力の上限から所定の余裕を減じた値であっても良い。予測需要電力と特定値を比較することにより、需要電力が過大になることを防ぐことができる。決定部52は、予測需要電力の代わりに予測列車消費電力を用いても良い。予測需要電力または予測列車消費電力を予測電力と呼ぶことができる。
【0044】
なお、決定部52は、複数の変電所5の中から特定の変電所5を選択し、S320〜S360の処理により、選択された変電所5の制御パターンを決定し、複数の変電所5の中から特定の変電所5以外の変電所5を選択し、S420〜S450の処理により、選択された変電所5の制御パターンを決定しても良い。
【0045】
対象変電所の予測需要電力が需要電力閾値を超えず、且つ隣接変電所の制御パターンが放電でない場合、対象変電所が隣接変電所へ電力を融通する必要がないと判定することにより、需要電力を過大にすることなく、蓄電装置1を充電することができる。対象変電所の予測需要電力が需要電力閾値を超えず、且つ隣接変電所の制御パターンが放電である場合、対象変電所が隣接変電所へ電力を融通するために放電することにより、需要電力を低減することができる。対象変電所の予測需要電力が需要電力閾値を超える場合、対象変電所が放電することにより、最大需要電力を低減することができる。
【0046】
路線の全体に亘って、電気鉄道監視制御システムの内部で消費される電力と、電気鉄道監視制御システムの内部および外部から供給される電力とを予測し、予測結果に基づいて、複数の蓄電装置1の動作を決定することができる。
【0047】
複数の変電所5において、変電所5の位置(線区)によってピーク時間帯は異なる。例えば、路線が郊外と都市を結んでいる場合、都市から遠いほど、朝のラッシュによるピーク時間帯は早くなる。また、都市から遠いほど、夕方のラッシュによるピーク時間帯は遅くなる。蓄電装置制御処理によれば、夫々の変電所5の位置のピーク時間帯に応じて、対応する蓄電装置1の動作を決定することができる。
【0048】
また、或る変電所5aの蓄電装置1aの動作に応じて、別の変電所5bの蓄電装置1bの動作を決定することができる。変電所5bの蓄電装置1bが隣接する変電所5aの蓄電装置1aの放電に伴って放電することにより、変電所5bが隣接する変電所5aへ電力を融通することができる。これにより、夫々の変電所5の最大需要電力を低減することができる。これにより、路線全体の電力コストを削減することができる。また、変電所5が受電する電力を抑えることにより変電所5の設備のコストを抑えることができる。また、或る変電所5から隣接する変電所5へ電力を融通することにより、送電損失をできるだけ小さくすることができる。また、或る変電所5から所定距離以内の変電所5へ電力を融通することにより、送電損失をできるだけ小さくすることができる。
【0049】
以上の実施例で説明された技術は、次のように表現することもできる。
(表現1)
複数の変電所の夫々を指定して対象変電所とし、電力系統から前記対象変電所へ供給される電力を示す受電情報を取得し、前記対象変電所から架線へ供給される電力を示すき電情報を取得し、前記対象変電所に接続されている蓄電装置の充放電を示す充放電情報を取得し、前記架線からの電力による列車の運行を示す運行情報を取得し、前記受電情報と前記き電情報と前記充放電情報と前記運行情報とに基づいて、前記対象変電所における電力の予測値である予測電力を算出する予測部と、
前記複数の変電所の中の第1変電所の予測電力に基づいて、前記第1変電所に対応する第1蓄電装置の第1動作を決定し、前記複数の変電所の中の第2変電所の予測電力と前記第1動作とに基づいて、前記第2変電所に対応する第2蓄電装置の第2動作を決定する決定部と、
を備える電力制御システム。
(表現2)
前記決定部は、前記第2変電所の予測電力が特定値を超えるか否かを判定し、前記判定の結果と前記第1動作とに基づいて前記第2動作を決定する、
表現1に記載の電力制御システム。
(表現3)
前記決定部は、前記第2変電所の予測電力が前記特定値を超えないと判定された場合、前記第1動作が前記第1蓄電装置の放電であるか否かを判定し、前記第1動作が前記第1蓄電装置の放電でないと判定された場合、前記第2蓄電装置の充電を前記第2動作として決定する、
表現2に記載の電力制御システム。
(表現4)
前記決定部は、前記第2変電所の予測電力が前記特定値を超えないと判定され、且つ前記第1動作が前記第1蓄電装置の放電であると判定された場合、前記第2蓄電装置の放電を前記第2動作として決定する、
表現3に記載の電力制御システム。
(表現5)
前記決定部は、前記第2変電所の予測電力が前記特定値を超えると判定された場合、前記第2蓄電装置の放電を前記第2動作として決定する、
表現4に記載の電力制御システム。
(表現6)
前記決定部は、前記第1変電所の予測電力が前記特定値を超えると判定された場合、前記第1蓄電装置の放電を前記第1動作として決定する、
表現5に記載の電力制御システム。
(表現7)
前記予測部は、前記複数の変電所の中の特定の変電所に接続されている分散型発電により発電される電力を示す発電情報を取得し、前記受電情報と前記き電情報と前記充放電情報と前記発電情報と前記運行情報とに基づいて前記特定の変電所の予測電力を算出する、
表現6に記載の電力制御システム。
(表現8)
前記対象変電所の予測電力は、前記対象変電所における前記電力系統からの需要電力の予測値である、
表現1乃至7の何れか一項に記載の電力制御システム。
(表現9)
前記決定部は、前記複数の変電所の中で、前記第2変電所から所定距離以内に位置する変電所を前記第1変電所として選択する、
表現8に記載の電力制御システム。
(表現10)
前記決定部は、前記複数の変電所の中で、前記第2変電所に隣接する変電所を前記第1変電所として選択する、
表現8に記載の電力制御システム。
(表現11)
複数の変電所の夫々を指定して対象変電所とし、電力系統から前記対象変電所へ供給される電力を示す受電情報を取得し、前記対象変電所から架線へ供給される電力を示すき電情報を取得し、前記対象変電所に接続されている蓄電装置の充放電を示す充放電情報を取得し、前記架線からの電力による列車の運行を示す運行情報を取得し、
前記受電情報と前記き電情報と前記充放電情報と前記運行情報とに基づいて、前記対象変電所における電力の予測である予測電力を算出し、
前記複数の変電所の中の第1変電所の予測電力に基づいて、前記第1変電所に対応する第1蓄電装置の第1動作を決定し、
前記複数の変電所の中の第2変電所の予測電力と前記第1動作とに基づいて、前記第2変電所に対応する第2蓄電装置の第2動作を決定する、
ことを備える電力制御方法。
【0050】
本発明は、以上の実施例に限定されるものでなく、その趣旨から逸脱しない範囲で、他の様々な形に変更することができる。
【符号の説明】
【0051】
1、1a、1b:蓄電装置、 2:電力消費最適化システム、 3:電力管理システム、 4:運行管理システム、 5、5a、5b:変電所、 6:列車、 7:自然エネルギー発電装置、 8:環境情報取得装置、 9:電力系統、 10:架線、 11:制御機器、 12:蓄電機器、 13:制御パターンデータベース、 21:運行情報取得装置、 22:電力供給予測装置、 23:電力消費予測装置、 24:制御パターンデータベース、 25:制御実績データベース、 31:受電制御装置、 32:き電制御装置、 41:変電設備、 42:開閉器、 43:開閉器、 51:予測部、 52:決定部
図1
図2
図3