(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1について図を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施の形態に係る設備機器Aの三面図であり、図中(a)は正面図を、(b)は平面図を、そして(c)は右側面図をそれぞれ示している。
図2は、本発明の実施の形態に係る設備機器Aから後述する前パネル、プレフィルター、HEPAフィルターを取り外した状態の三面図であり、図中(a)は正面図を、(b)は平面図を、そして(c)は右側面図をそれぞれ示している。また、
図3は、設備機器Aの分解斜視図である。また、
図4は、
図1における設備機器AをY−Yで切断した縦断面図である。また、
図5は、設備機器Aを前方から見た斜視図である。更に、
図6は、設備機器Aを後方から見た斜視図である。以下、
図1乃至
図6を適宜参照して、設備機器Aの外郭に関連する構成について説明する。
【0012】
本実施の形態に係る空気清浄機としての設備機器Aは、外郭を成す本体ケースCと、この本体ケースCに設けられる脱臭部60などの各種機能部品により構成されている。本体ケースCは、樹脂により形成された箱型形状を成しており、前パネル10、前ケース20、及び後ケース40などの複数の部品により構成されている。以下、これらの部品の構成について詳細に説明する。
【0013】
前ケース20は、正面視形状が長方形であり、所定の奥行き幅がある枠状のフレーム21が基体となり構成されている。フレーム21の前面には、長方形の前開口22が形成されており、後面の開口は仕切板23により覆われている。仕切板23には、後方に向いて開口する円形の後開口24が形成されている。つまり、前ケース20は、前開口22と後開口24とが連通した状態となっている。尚、仕切板23の後開口24は、後述する送風ファン44のファン開口44dの周囲にベルマウスを形成している。
【0014】
前ケース20のフレーム21の下辺には、左右の2辺より前方に全体的に突出することで、下突出部25が形成されている。また、フレーム21の上辺には、左右の2辺より前方に突出した上突出部28が形成されている。フレーム21の上辺の上部前側には、複数の操作ボタンや表示部を形成するLEDなどからなる操作部26が設けられている。
【0015】
前パネル10は、正面視形状が長方形であり、前ケース20の前開口22を正面から覆うことが可能な形状に構成されている。また、前パネル10の前面には、左右方向に延びるスリットを形成することにより、前パネル10の前後方向に連通する空気の吸込口11が形成されている。つまり、前パネル10は、前後方向に貫いて空気が流れることが可能なように、通気性が確保されている。
【0016】
後ケース40は、正面視形状が長方形であり、前面に前開口41が開口し、上面に空気の吹出口42となる開口が形成され、後面43が閉鎖された箱型形状を成している。後面43には、室内空気を空気清浄機内部に取り込むための送風手段である送風ファン44と、この送風ファン44から流下する空気を吹出口42へと導く風路を形成するスワロール形状の仕切板45とが設けられている。また、仕切板45の下側且つ後ケース40と仕切板45とで形成された空間には、設備機器Aの各部を所定のプログラムに基づき制御する制御部47が設けられている。更に、後ケース40の内側の上部であって、吹出口42の近傍には、吹出口42から室内に向けて吹き出す空気の風向を変化させる又は吹出口42を閉じるためのルーバー46が設けられている。尚、吹出口42の開口部分は、ルーバー46が直接触れられないように、格子が取付けられている。
【0017】
送風ファン44は、回転方向に対して所定の幅を有する多数の羽44aが回転軸から所定の半径の位置に取付けられた多翼式ファン(シロッコファン)として構成されている。送風ファン44には、羽44aを回転駆動させるためのモーター44bが、回転軸44cの向きが前方を向き且つ水平方向に伸びるように、後ケース40の後面43に取付けられている。
【0018】
仕切板45は、送風ファン44の周囲を囲むように、後ケース40の後面43から略垂直に立設され、一端が吹出口42の右端42aに、他端が吹出口42の左端42bにそれぞれ接続されている。つまり仕切板45は、送風ファン44の周囲を囲み、端部が吹出口42から外部へ開口するように後ケース40に配置されている。
【0019】
次に、
図7を参照して、脱臭部60に関連する構成について説明する。
図7は、本発明の実施の形態に係る設備機器の脱臭部の斜視図であり、図中(a)は脱臭部を前方から見た斜視図を、(b)は脱臭部を後方から見た斜視図を、それぞれ示している。
図7に示すように、脱臭部60は、設備機器Aの内部に取り込んだ室内空気を通過させることにより、空気内部から臭気を取り除く部位である。脱臭部60は、各種部品が設けられる基体となる枠体61と、脱臭エレメント62と、この脱臭エレメント62を局部的に加熱する加熱ユニット63と、脱臭エレメント62を動かして加熱ユニット63と脱臭エレメントの対向する部位の相対的位置関係を変更する位置変更手段である駆動手段64と、を有している。
【0020】
次に、本発明の要部である脱臭エレメント62の構成について説明する。脱臭エレメント62は、円盤形状の基材にゼオライト等の吸着材及び酸化亜鉛を塗布又は含浸することにより構成された脱臭フィルターである。ゼオライトはN系成分やVOCといった炭素化合物を物理吸着するのに優れ、加熱によって吸着したガス成分を脱離する性能を有している。また、加熱によって吸着ガスの酸化分解が生じないため、アルコールを吸着した場合であっても、これらが酢酸となって放出されることを有効に抑制することができる。また、酸化亜鉛は、ゼオライトに比べて表面積が小さいために吸着容量は小さいものの、硫化水素やメチルメルカプタンなどの硫黄化合物の吸着材として有効に機能する。また、ゼオライトと同様に加熱によって吸着ガスの酸化分解が生じないため、酢酸の放出も抑制することができる。したがって、この2つを組み合わせて混合することにより、酸化分解能を有する白金や酸化マンガン等の触媒を必ずしも使用せずとも、硫黄化合物を除去するとともに加熱再生が可能な脱臭フィルターを形成することができる。
【0021】
なお、脱臭エレメント62に用いる基材は、蜂の巣の開口のように複数の開口が形成されたハニカムコアやコルゲートの形状が好ましい。また、基材の材料にはセラミック、アルミニウム、ステンレス等の加熱による燃焼や発火が起きない材料が好ましい。これは、本実施の形態に係る脱臭エレメント62が加熱による脱臭性能回復動作を行うことを前提としているからである。また、複数の開口を有することで、加熱空気を中に搬送し、中の部分も温めることが出来ると共に、体積当たりの表面積を増加させ、吸着材や触媒、酸化亜鉛の担持量を増加させることが出来る。
【0022】
また、吸着材には、無機バインダーで、ゼオライトやシリカ等を原材料とする吸着材が好ましい。本発明に用いる吸着材として特に好適なのは、シリカとアルミナの比率が調整されたゼオライトであり、アルミナよりもシリカのほうが多く配合されていることが好ましい。また、吸着材は疎水性の特性を有していることが好ましい。酢酸は主として水に溶解する性質を有しているため、脱臭エレメント62自体に水が付着した場合に酢酸が水と共に放出されてしまうおそれがある。従って、吸着材であるゼオライトを疎水性とすることにより、酢酸の再放出を有効に抑制することができる。更に、吸着材に関しても基材と同様に、加熱による燃焼や発火が起きない材料とすることが好ましい。
【0023】
酸化亜鉛は、重量比で全担持物の1%以上の割合を占めることが好ましい。人間の感覚において臭気の差を感じるためには、臭気強度(悪臭防止法にて定められる人間の感覚量を数値化した値)の値で少なくとも0.5低減させる必要がある。この指標としては、例えば硫化水素では、30〜40%の確率で気中に存在する硫化水素を除去できればよい。これはガス成分によっても異なるが、代表的な悪臭成分とされる硫黄化合物にて考えたとき、少なくとも60%の確率で除去が可能であれば、人の感覚として、臭いが薄れたと感じさせることができる。酸化亜鉛の担持量の割合が1%(重量比)以上であれば、上記臭気低減の指標を達成することができる。
【0024】
上述したとおり、本実施の形態の脱臭エレメント62では触媒が必ずしも必要ではないが、更なる脱臭効果を得るために触媒が塗布又は含浸されている構成でもよい。この場合、触媒は、白金系やマンガンを用いたものなど、臭気成分(特に、アンモニア臭)を吸着し、加熱により臭気成分を酸化分解する性質を有する触媒を用いる。このような触媒としては、例えば、二酸化マンガン等のマンガン酸化物が好ましい。
【0025】
なお、マンガン酸化物は加熱により吸着物を酸化分解する触媒作用のほか、吸着材としても機能する。このため、吸着した物質を無臭物質に酸化分解させることで加熱時における吸着臭気の再放出を抑制することができる。ただし、脱臭エレメント62にアルコール成分が吸着している場合、加熱される温度条件等によってはこれらが高い割合で酢酸に転化してしまう。この場合、酢酸が高い濃度で外部へ放出されてしまい、設備機器自体が酸っぱい臭の発生源となってしまう場合がある。そこで、触媒の担持量はその酸化分解性能に応じて調整されることが好ましい。具体的には、脱臭エレメント62において加熱時に起きる酸化反応による酢酸転化効率が、所定の加熱条件において15%以下に抑制されるようにその量が調整されることが好ましい。ここで、酢酸転化率は下記の式にて定義される。
(酢酸転化率)=(加熱時に生成された酢酸の量)/(吸着させたエタノールの量)
【0026】
これらの値は、脱臭エレメント62に対してエタノールを吸着させた後、所定の加熱再生プログラムにおいて加熱再生動作をした時に発生する酢酸の量を測定したものを用いることができる。酢酸の加熱再生プログラムを数十回〜数百回行うことにより、吸着と脱着、再生を特定の割合で繰り返すと、酢酸を再放出する量は一定値に収束する。この収束した酢酸の量が脱臭エレメント62の体積に対し、1ppm、すなわち臭気強度2(悪臭防止法にて定められる人間の感覚量を数値化した値)を超えると、脱臭エレメント62から酸っぱい臭が感じられ始める。本数値を15%以下に定めることで、前述する収束する酢酸量を臭気強度2以下に抑えることが可能となるのである。なお、ここで、酢酸転化率で担持量を定義したのは、酢酸転化率によってユーザの不快感を示す値が決定されるためであり、「酢酸を再放出させずに硫化水素を主とする硫黄化合物を除去する」ことが本発明の目的であるからである。加熱時に生成される酢酸の量やアルコールの吸着量は、触媒の種類や担持量、加熱の条件等のユーザの使用条件によって変動する。従って、固定化することは困難である。しかし、上記のように使用条件に合わせた酢酸転化率を定義することで、脱臭エレメント62、ひいてはそれを搭載した設備機器として、酸っぱい臭い、即ち酢酸の発生による不快感を取り除くことが可能となる。
【0027】
脱臭エレメント62の中心部には開口部62cが形成され、前面には脱臭エレメント62を保持するステンレスにより形成されたエレメントフレーム62aが設けられている。ここで、上記のように脱臭エレメント62は、ハニカムコア形状を有し、前面に設けられたエレメントフレーム62aには所定の開口が形成されているので、脱臭エレメント62の内部を前後方向に貫いて空気が流れることができる。
【0028】
次に、
図8及び
図9を参照して、加熱ユニット63の構成について説明する。
図8は、本発明の実施の形態に係る設備機器の加熱ユニットを示す図であり、図中(a)は裏面図を、(b)は(a)における加熱ユニットをZ−Z断面で切断した縦断面図をそれぞれ示している。また、
図9は、本発明の実施の形態に係る設備機器の加熱ユニットの斜視図であり、図中(a)は加熱ユニットを裏面から見た斜視図を、(b)は加熱ユニットを表面から見た斜視図をそれぞれ示している。
【0029】
これらの図に示すように、加熱ユニット63は、脱臭エレメント62を加熱する加熱手段であるヒーターユニット63aと、ヒーターユニット63aを内部に収納するための所定の内部空間を形成するケース63bとから構成されている。ヒーターユニット63aは、制御部47に電気的に接続されており、設備機器Aの運転状態に応じて通電制御されるものである。また、ヒーターユニット63aは、板状の発熱部63fと、この発熱部63fを加熱するためのヒーター部63gとから構成されている。なお、ヒーター部63gは、当該ヒーター部63gへの通電をオンオフすることで加熱停止が切り替えられるものが使用される。ヒーターユニット63aは、ヒーターユニット63aから所定の隙間を介在して対向配置された脱臭エレメント62の対向部位を、脱臭エレメント62に吸着した臭気を除去可能な所定の温度まで上昇させることができるように、その加熱能力及び通電時間等が設定されている。
【0030】
ケース63bには、ヒーターユニット63aを内部に保持するための凹部63cと、この凹部63cの開口周縁から広がるフランジ部63dとが形成されている。凹部63cは、ヒーターユニット63aの平面形状と一致した扇形状を成しており、内部にヒーターユニット63aを凹部63cの開口に臨ませた状態でヒーターユニット63aが設けられている。フランジ部63dには、加熱ユニット63を所定の位置に取り付ける際に螺子を貫通させるための螺子穴63eが形成されている。
【0031】
以上のように各部が構成された前パネル10、前ケース20、後ケース40、及び脱臭部60は、次のように他の機能部品と共に組み立てられることで、設備機器Aが構成される。
【0032】
図3に示すように、後ケース40は、前開口41を前方に向けて前ケース20の後面に取付けられる。この時、後ケース40に設けられた送風ファン44のファン開口44dは、前ケース20に設けられた仕切板23に形成された後開口24と対向した位置関係となっている。また、後開口24の開口中心は、送風ファン44の回転軸の軸心と前後に一致している。
【0033】
また、脱臭部60は、枠体61が前ケース20の前開口22から前ケース20の内部に挿入されて、枠体61の外周が前ケース20の内部に保持されることにより、前ケース20に取付けられる。このように、脱臭部60が前ケース20に取付けられた状態において、脱臭部60の後面側(加熱ユニット63が取付けられている位置側)が、前ケース20の後開口24を向くように配置される。これにより、脱臭エレメント62と後開口24との間に、加熱ユニット63が位置することになる。
【0034】
ここで、
図4に示すように、送風ファン44のファン開口44dの周囲にベルマウスを形成する前ケース20の仕切板23及び後開口24は、脱臭エレメント62から後開口24へと流れ空気の流れを妨げないために、脱臭エレメント62との間に所定の間隔Dを空けて対向している。加熱ユニット63は、このようにして形成された間隔Dの部位に位置している。
【0035】
また、
図3に示すように、前ケース20に取付けられた脱臭部60の枠体61の内方には、枠体61の開口と同程度の大きさであるHEPAフィルター12が設けられている。HEPAフィルター12は、空気中に含まれる花粉、ダニの糞、カビの胞子、ハウスダストなどの微細な塵埃を取り除くためのフィルターである。また、このHEPAフィルター12の前面側には、当該HEPAフィルター12を覆うようにプレフィルター13が設けられている。プレフィルター13は、HEPAフィルターで空気をろ過する前に、あらかじめ空気に含まれる大きな塵埃を取り除くための目の粗いフィルターであり、HEPAフィルターの効果を長期間保つ為のものである。そして、プレフィルター13の前面側には、前ケース20の上突出部28と下突出部25とに挟まれて、前パネル10が設けられている。このように、前パネル10、プレフィルター13、HEPAフィルター12、脱臭部60、前ケース20および後ケース40が組み立てられることにより設備機器Aが構成される。
【0036】
次に、上記のように構成された設備機器Aによる空気清浄運転の動作について説明する。
図4に示すように、設備機器Aの内部には、室内空気を取り込み、この空気の清浄および脱臭を行い、そして室内へ放出する通風路Rが形成されている。この通風路Rについて、設備機器Aの空気清浄運転状態と、内部に取り込まれた空気の流れに沿って説明する。
【0037】
まず、使用者が操作部26を操作して制御部47に対して入力が行われると、設備機器Aの運転を行う所定のプログラムが実行される。上記の運転が開始されると、送風ファン44が駆動され、吸込口11から設備機器Aの内部に室内空気を取り込む吸込み力が生じ、室内空気が吸込口11へと流入する。吸込口11から取り込まれた空気は、設備機器Aの内部を後方へと流れ、プレフィルター13で大きな塵埃が取り除かれた後、HEPAフィルター12で微細な塵埃が取り除かれる。
【0038】
次に、塵埃が取り除かれた空気は、更に後方へと流れて脱臭部60へと到達し、開口65aを通過して、この開口65aに臨む位置に配置された脱臭エレメント62に至る。この脱臭エレメント62は、表面から裏面に至るハニカム形状の多数の開口が形成されており、表面に臭気を吸着する吸着材としてゼオライトおよび酸化亜鉛が塗布または含浸されている。
【0039】
したがって、臭気を含んだ空気は、脱臭エレメント62の表側から裏側へと通過する際に、ハニカム形状の開口を通過し、脱臭エレメント62に塗布された吸着材が、空気に含まれる臭気を吸着することにより、空気から臭気が取り除かれる。なお、「空気から臭気が取り除かれる」とは、空気から完全に臭気が無くなる状態のみならず、空気の脱臭エレメント62を通過する前の状態から臭気が減少した状態も含む。ここで、上記のように設備機器Aを運転し続けることにより、脱臭エレメント62には、吸着した臭気が蓄積されていくことになり、吸着した臭気が増えるに従って、脱臭エレメント62の脱臭能力が低下していく。
【0040】
次に、塵埃と臭気が取り除かれた空気は、脱臭エレメント62から更に後方に流れ、前ケース20の仕切板23に開口する後開口24を通過して、この後開口24に対向して配置されている送風ファン44へと流れる。送風ファン44へと流れる空気は、送風ファン44の軸方向前方から周囲を羽44aに囲まれたファン開口44dの内部へと流下し、送風ファン44の上方を含む送風ファン44の径方向へと送風ファン44の外部に吐き出される。
【0041】
送風ファン44から吐き出された空気は、後ケース40の仕切板45により吹出口42へと導かれ、ルーバー46を通過する際に風向が整えられた上で、吹出口42から設備機器Aの上方向に向けて、設備機器Aの内部からの清浄空気として吹き出される。
【0042】
なお、脱臭エレメント62、プレフィルター13、HEPAフィルター12、および送風ファン44のファン開口44dの前面は、通風路Rを流れる空気の向きに対して、垂直な向きに配置されている。これにより、脱臭エレメント62tを通過するまでの空気の流れが真っ直ぐとなるので、各フィルター面に空気が垂直に当たり空気の流れがよい構成となっている。
【0043】
空気清浄運転(脱臭運転)を長時間行うと、脱臭エレメント62は多くの臭気を吸着してその脱臭性能が次第に低下する。本実施の形態の設備機器Aでは、脱臭エレメント62の脱臭性能が低下した場合に、これを回復させるための脱臭性能回復動作が行われる。以下、この脱臭性能回復動作について更に詳しく説明する。
【0044】
制御部47は、所定のタイミングで脱臭エレメント62の脱臭性能回復動作を行う。所定のタイミングとしては、例えば、運転開始又は前回の脱臭性能回復動作の完了時からの累積運転時間が所定の時間を超えたタイミング(好ましくは24時間に1回以上のタイミング)が考えられる。
【0045】
脱臭性能回復動作が開始されると、制御部47は、加熱ユニット63のヒーターユニット63aに対して通電を行う。これにより、ヒーターユニット63aが発熱し、当該ヒーターユニット63aと対向している脱臭エレメント62の部位の温度が所定温度に所定時間維持される。なお、脱臭性能回復動作における脱臭エレメント62の温度及び時間は、脱臭エレメント62に吸着した臭気を除去させるのに十分な温度と時間に設定することが好ましい。この際、加熱ユニット63と脱臭エレメント62とは空気を介して対向しているため、加熱ユニット63に入力する温度と脱臭エレメント62の温度との間には差異が生じる。これは空気層で冷却されるためであり、この分を加味した上でその温度を設定する必要がある。なお、脱臭性能回復動作における脱臭エレメント62の温度は、80℃以上とすることが最低限の条件となる。この条件を満たさなければ、本設備機器A内にて脱臭エレメント62の再生を行うことはできないからである。
【0046】
また、送風ファン44は脱臭性能回復動作時も動作し続けることが好ましい。加熱ユニット63が動作している間に、脱着する臭気成分の一部は加熱ユニット63内に残留して、脱臭エレメント62に再吸着してしまう。ここで送風ファン44を動作させながら加熱ユニット63を動かすことで、加熱ユニット63による加熱再生をより効率よく行うことができ、結果的に酢酸の再放出を防いで硫化水素の除去性能を高めることができる。さらに、送風によって、脱臭エレメント62の内部まで加熱空気を搬送することもでき、加熱効率を向上することが出来る。
【0047】
なお、脱臭性能回復動作においては、脱臭エレメント62の温度が、吸着材に吸着された臭気成分を除去するのに適した温度域の最低温度(以下、注目温度と称する)を越えた場合においても、吸着材の機能を効率良く回復させるために、以下のような制御を行うことが好ましい。
図10は、脱臭エレメント62の脱臭性能回復動作における加熱温度およびヒーターユニット63aの動作状態を示すタイムチャートである。
【0048】
この図に示す動作では、脱臭性能回復動作において脱臭エレメント62の加熱部の温度を所定温度αまで上昇させる場合に、脱臭エレメント62の温度を所定温度αまで上昇させるまでの間に、ヒーターユニット63aへの通電を複数回に渡って一時的に停止させて脱臭エレメント62への加熱を中断することとしている。通電の停止は、例えば、所定温度αに至るまでの間で予め設定した設定温度a、bに到達した際に実施される。そして、加熱を中断した際、加熱ユニット63に配置されるサーミスタ等の温度検出手段(図示せず)により温度を検出し、急激な温度上昇がないことを確認する。
【0049】
なお、ここでいう急激な温度上昇とは、例えば10秒あたり3〜5℃上昇するヒーターユニット63aを用いた場合に、温度検出手段の検出温度が上記と同等あるいはそれ以上の速度で温度が上昇することを指している。脱臭エレメント62はヒーターユニット63aにより加熱されるため、通常であれば、ヒーターユニット63aへの通電が停止した段階で余熱による温度上昇は起こりうるが、ヒーターユニット63aへの通電時以上の速度で昇温することは起こりにくい。従って、このような温度上昇が検出された場合には、直ちに加熱ユニット63を停止させて再生動作を終了し、使用者にエラーメッセージを発信するなどして報知する。急激な温度上昇を検出しなかった場合には、ヒーターユニット63aへの通電を再開する。所定温度α到達後も、所定時間α´経過までヒーターユニット63aへの通電と通電停止、及び急激な温度上昇の検知動作(ヒーターユニット63aへの通電を停止した後、急激な温度上昇の有無を検知する動作)を繰り返す。このように、加熱温度を規定の温度に抑えることで、酸化反応を抑制すると共に、過剰に酢酸が再放出されるのを抑制することができる。
【0050】
尚、所定時間α´の長さは、設備機器Aの使用環境の温度や脱臭対象臭気、脱臭エレメント62への触媒の添着有無やその種類などを鑑みて決定するものであり、その開始時間は脱臭性能回復動作開始時、あるいは所定温度α到達時とし、その終了時間は脱臭性能回復動作終了時とする。
【0051】
なお、上述した実施の形態では、設備機器Aとして空気清浄機を例に説明したが、本発明を適用可能な設備機器は空気清浄機に限らず、脱臭エレメントを備える機器であれば、他の条件で動作する設備機器に用いることとしてもよい。
【0052】
また、上述した実施の形態では、ヒーターユニット63aのヒーター部63gへの通電をオンオフすることにより脱臭エレメント62の温度を所定の設定温度に制御することとしているが、ヒーター部63gにチタン酸バリウムを主成分とする半導体セラミックであるPTCヒーターを用いることとしてもよい。PTCヒーターは、自己温度制御性があり、外部からの温度制御を必要としないことから、サーモスタットのように断続的制御を行うことなく安定した温度制御を実現することができる。