特許第6092743号(P6092743)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーエヌリサウンドジャパン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6092743-耳あな式補聴器 図000002
  • 特許6092743-耳あな式補聴器 図000003
  • 特許6092743-耳あな式補聴器 図000004
  • 特許6092743-耳あな式補聴器 図000005
  • 特許6092743-耳あな式補聴器 図000006
  • 特許6092743-耳あな式補聴器 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092743
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】耳あな式補聴器
(51)【国際特許分類】
   H04R 25/00 20060101AFI20170227BHJP
   H04R 25/02 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   H04R25/00 G
   H04R25/02 C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-200666(P2013-200666)
(22)【出願日】2013年9月26日
(62)【分割の表示】特願2009-278078(P2009-278078)の分割
【原出願日】2009年12月8日
(65)【公開番号】特開2014-42281(P2014-42281A)
(43)【公開日】2014年3月6日
【審査請求日】2013年9月26日
【審判番号】不服2016-3857(P2016-3857/J1)
【審判請求日】2016年3月14日
(31)【優先権主張番号】特願2008-313032(P2008-313032)
(32)【優先日】2008年12月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】506106095
【氏名又は名称】ジーエヌリサウンドジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100153268
【弁理士】
【氏名又は名称】吉原 朋重
(72)【発明者】
【氏名】大山 清和
【合議体】
【審判長】 井上 信一
【審判官】 関谷 隆一
【審判官】 國分 直樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−189397(JP,A)
【文献】 特開平10−66196(JP,A)
【文献】 特表2005−525715(JP,A)
【文献】 特開2007−228580(JP,A)
【文献】 特開平10−314213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外耳道入口の形状に適合するように先細短筒状に形成され、鼓膜側を指向する先端部に音孔が設けられた中空のシェル部材と、前記音孔とは反対側の端面を塞ぐフェースプレートと、を有し、一対の電池接片及びマイクを前記フェースプレート内面に配置し、アンプ及びレシーバを前記シェル部材内部に収容してなる耳あな式補聴器であって、
こもり感を改善させ、かつ、ハウリングの危険を回避するために、前記シェル部材の表面に複数のディンプルを一様に分布させて設け、
各前記ディンプルが、前記シェル部材の表面から内部へ落ち込む浅い凹面をなし、
当該耳あな式補聴器の装着時、前記シェル部材が、前記外耳道内に、該シェル部材表面の前記ディンブルが形成されていない部位と該外耳道表面とが接するように収まり、前記ディンプルどうしが溝によって結ばれていないことを特徴とする耳あな式補聴器。
【請求項2】
ベントが形成されないことを特徴とする請求項1に記載の耳あな式補聴器。
【請求項3】
前記シェル部材の内面には、前記音孔の近傍及び前記フェースプレートの近傍においてそれぞれ外部へ開口する通気孔が設けられ、かつ、該通気孔を前記シェル部材内部から隔離しつつ連通させる通気管が、該シェル部材の内面に沿って配置されることを特徴とする請求項1に記載の耳あな式補聴器。
【請求項4】
前記シェル部材の外形を、当該耳あな式補聴器を装着する者の外耳道よりも大き目に形成することを特徴とする請求項3に記載の耳あな式補聴器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シェル部材の表面形状に特徴を有する耳あな式補聴器に関する。
【背景技術】
【0002】
軟質のシェル部材を介して外耳道(耳の穴)へ挿入して用いる耳あな式補聴器が1990年頃から出現した。これはシェル内に受信部、マイク、電池などが内蔵され、受信部の音の出る先端を鼓膜側へ向けて全体を外耳道内に保持する形式の補聴器である。
耳あな式補聴器の一つの問題点は、外耳道がシェルで塞がれると400Hz付近の低い音が共鳴して「こもり感」や「閉塞感」を生じる点である。
【0003】
これを改善するために、特許文献1のように、シェル内外を連絡する通気管(ベント)を設ける例があるが、ハウリングが起こり易くなるという危険がある。本発明者はハウリングを防止するためシェルの外形を外耳道のサイズより大きくすることを試みたが、皮膚に不快な圧迫感を生じるという問題点を生じた。
発明者が調べた特許文献1乃至3の範囲では、上記の問題に関連して、シェルの表面構造について特に工夫した発明・考案は見当たらないようである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−199193号公報
【特許文献2】特開平10−066196号公報
【特許文献3】特開平10−098797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、耳あな式補聴器に特有のこもり感を改善させ、かつ、ハウリングの危険を回避する耳あな式補聴器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示する耳あな式補聴器の一形態は、外耳道入口の形状に適合するように先細短筒状に形成され、鼓膜側を指向する先端部に音孔が設けられた中空のシェル部材と、前記音孔とは反対側の端面を塞ぐフェースプレートと、を有し、一対の電池接片及びマイクを前記フェースプレート内面に配置し、アンプ及びレシーバを前記シェル部材内部に収容してなる耳あな式補聴器であって、こもり感を改善させ、かつ、ハウリングの危険を回避するために、前記シェル部材の表面に複数のディンプルを一様に分布させて設け、各前記ディンプルが、前記シェル部材の表面から内部へ落ち込む浅い凹面をなし、当該耳あな式補聴器の装着時、前記シェル部材が、前記外耳道内に、該シェル部材表面の前記ディンブルが形成されていない部位と該外耳道表面とが接するように収まり、前記ディンプルどうしが溝によって結ばれていないことを特徴とする。
また、開示する耳あな式補聴器の一形態は、上記構成に加え、ベントが形成されないことを特徴とする。
【0007】
また、開示する耳あな式補聴器の一形態は、上記構成に加え、前記シェル部材の内面には、前記音孔の近傍及び前記フェースプレートの近傍においてそれぞれ外部へ開口する通気孔が設けられ、かつ、該通気孔を前記シェル部材内部から隔離しつつ連通させる通気管が、該シェル部材の内面に沿って配置されることを特徴とする。
【0008】
また、開示する耳あな式補聴器の一形態は、上記構成に加え、前記シェル部材の外形を、当該耳あな式補聴器を装着する者の外耳道よりも大き目に形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
開示する耳あな式補聴器は、耳あな式補聴器に特有のこもり感を改善させ、かつ、ハウリングの危険を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ディンプルを具える耳あな式補聴器を外耳道へ挿入、装着した状態を示すカットアウト図である。
図2】ディンプルを具える耳あな式補聴器の分解図である。
図3】シェル部材表面のディンプルを示す部分拡大図及び断面図を伴う斜視図である。
図4】ディンプル及びベントを具えるシェル部材の断面を示す側面図である。
図5】各種形状のディンプルを混合して具えるシェル部材の斜視図である。
図6】各ディンプルの間を溝で連ねたシェル部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好適な実施の形態を以下の実施例により説明する。
【実施例1】
【0012】
図1は本実施例に係るディンプルを具える耳あな式補聴器を外耳道へ挿入、装着した状態を示すカットアウト図、図2はディンプルを具える耳あな式補聴器の分解図、図3はシェル部材表面のディンプルを示す部分拡大図及び断面図を伴う斜視図である。
【0013】
本実施例に係る耳あな式補聴器10は、外耳道2の入口の形状に適合するように先細短筒状に形成され、鼓膜側を指向する先端部に音孔112が設けられた中空のシェル部材11と、このシェル部材の音孔とは反対側の端面を塞ぐフェースプレート12とを具え、一対の電池接片13及びマイク14がフェースプレート12の内面に配置され、アンプ15及びレシーバ16がシェル部材11の内部に収容される。
【0014】
シェル部材11の表面には複数のディンプル111が一様に分布するように設けられ、それぞれのディンプル111は、シェル部材11の表面から内部へ落ち込む凹状の浅い球面をなす。
【0015】
本実施例では、ディンプル111を設けることにより、シェル部材11の表面と皮膚との間にわずかな隙間ができ通気性が付与されるので、こもり感や閉塞感を改善することができる。
【実施例2】
【0016】
図4は第2実施例としての、ディンプル及びベントを具えるシェル部材の断面を示す側面図である。
【0017】
本実施例に係る耳あな式補聴器10のシェル部材11の内面には、音孔112の近傍及びフェースプレート12の近傍においてそれぞれ外部へ開口する通気孔113、113が設けられ、かつこれら通気孔をシェル部材11内部から隔離しつつ連通させる通気管114が、シェル部材11の内面に沿って配置される。
【0018】
シェル部材11の表面には実施例1と同様に複数のディンプル111が一様に分布するように設けられており、ハウリングを防止するためシェル部材11の外形を外耳道2よりもやや大き目に形成する場合にも、シェルの外面と皮膚との接触面積が減少するため皮膚への圧迫感が軽減され、快適な装着感が得られる。
【実施例3】
【0019】
図5及び図6は、第3実施例としてのディンプルを具えるシェル部材の斜視図である。
本実施例の場合も、第2実施例と同様に、シェル部材11の内面に通気孔113、113及びこれら通気孔を連通させる通気管114を設けても良い。
【0020】
本実施例では、第1及び第2実施例と異なり、ディンプル111が同形ではなく、円形、楕円形又はn角形(nは3〜6)から選択される任意の平面形状を有し、隣合う個々のディンプル、又は複数個のディンプルからなる隣合う群が、互いに異なる平面形状を有し、或いは隣合うディンプル111の間が幅の細い溝110で結ばれても良い。
(総括)
【0021】
本発明の課題は、耳あな式補聴器に特有のこもり感や閉塞感を、可及的に通気管によらないで緩和することである。また通気管を設ける場合にもハウリングの危険度を低く保つことができ、かつ装着時に耳道への圧迫感の少ないシェルの構造を提供することである。
【0022】
本発明ではディンプルを設けることにより、シェル部材の表面と皮膚との間にわずかな隙間ができ通気性が付与されるので、ベントと同様な効果、すなわちこもり感や閉塞感を改善することができる。これによりベントを形成する必要性が低下するので、ベントによるハウリングの危険を回避することができる。
【0023】
またベントを形成し、かつシェルの外形を外耳道のサイズに対してやや大き目に形成してハウリングを防止しようとする場合にも、ディンプルを設けることにより、シェルの外面と皮膚との接触面積が減少するため、皮膚への圧迫感が軽減され、快適な装着感が得られる。
(付記1)
【0024】
外耳道入口の形状に適合するように先細短筒状に形成され、鼓膜側を指向する先端部に音孔が設けられた中空のシェル部材と、前記音孔とは反対側の端面を塞ぐフェースプレートと、を有し、一対の電池接片及びマイクを前記フェースプレート内面に配置し、アンプ及びレシーバを前記シェル部材内部に収容してなる耳あな式補聴器において、
当該耳あな式補聴器の装着時、前記シェル部材が、前記外耳道内に、該シェル部材表面と該外耳道表面とが接するように収まり、
前記シェル部材の表面に複数のディンプルを一様に分布させて設け、
各前記ディンプルが、前記シェル部材の表面から内部へ落ち込む浅い凹面をなす耳あな式補聴器であって、
前記各ディンプルが、円形、楕円形又はn角形(nは3〜6)から選択される平面形状を有することを特徴とする耳あな式補聴器。
(付記2)
【0025】
隣合う個々の前記ディンプル、又は複数個の前記ディンプルからなる隣合う群が、互いに異なる平面形状を有することを特徴とする付記1に記載の耳あな式補聴器。
(付記3)
隣合う前記ディンプルの間が、幅の細い溝で結ばれることを特徴とする付記3に記載の耳あな式補聴器。
【符号の説明】
【0026】
1 耳殻、2 外耳道、10 耳あな式補聴器、11 シェル部材、110 ディンプル間を結ぶ溝、111 ディンプル、112 音孔、113 通気孔、114 通気管(ベント)、12 フェースプレート、13 電池接片、14 マイク、15 アンプ、16 レシーバ、17 配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6