【実施例1】
【0016】
図1に示されるように、半導体装置1は、縦型のIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であり、半導体層20、半導体層20の第1主面20aを被膜するコレクタ電極12、半導体層20の第2主面20bを被膜するエミッタ電極14及び絶縁ゲート部17を備えている。一例では、半導体層20の材料がシリコンである。
【0017】
図1及び
図2に示されるように、半導体層20は、p
+型のコレクタ層21、バッファ層23、n型のドリフト層25、p型のベース層27及びn
+型のエミッタ領域29を有している。
【0018】
コレクタ層21は、半導体層20の裏層部に位置しており、コレクタ電極12に接触している。一例では、コレクタ層21は、1×10
17〜5×10
20cm
-3の不純物濃度を有している。
【0019】
バッファ層23は、コレクタ層21上に位置しており、コレクタ層21とドリフト層25を隔てている。バッファ層23は、第1バッファ領域23a及び第2バッファ領域23bを有する。第1バッファ領域23aは、バッファ層23のうちのドリフト層25側に位置しており、ドリフト層25に接している。第2バッファ領域23bは、バッファ層23のうちのコレクタ層21側に位置しており、コレクタ層21に接している。
【0020】
第1バッファ領域23aは、半導体層20の第1主面20aから第1深さD1に不純物濃度のピークを有する。一例では、第1バッファ領域23aの不純物濃度のピーク値は、1×10
16〜1×10
19cm
-3である。ここで、第1バッファ領域23aは、不純物濃度のピーク値が1桁低下するまでの範囲によって規定される。一例では、第1バッファ領域23aの厚みは、0.5〜5.0μmである。第1バッファ領域23aは、半導体層20の第1深さD1の面内に開口24aを画定している。換言すれば、半導体層20の第1深さD1の面内には、不純物濃度が濃い高濃度部分と不純物濃度が低い低濃度部分が存在しており、高濃度部分が第1バッファ領域23aに対応しており、低濃度部分が開口24aに対応している。一例では、半導体層20の厚み方向に沿って観測したときに、複数の第1バッファ領域23aが、ストライプ状に配置されていてもよく、ドット状に分散配置されていてもよい。あるいは、半導体層20の厚み方向に沿って観測したときに、1つの第1バッファ領域23a内に複数の開口24aが分散配置されていてもよい。この例では、複数の第1バッファ領域23aが、ストライプ状に配置されている。一例では、第1バッファ領域23aの面方向の幅23Waは、0.5〜50μmである。一例では、第1バッファ領域23aで画定される開口24aの幅24Wa(隣合う第1バッファ領域23aの間の距離)は、0.5〜5μmである。
【0021】
第2バッファ領域23bは、半導体層20の第1主面20aから第2深さD2に不純物濃度のピークを有する。第1主面20aから計測すると、第2深さD2は、第1深さD1よりも浅い。一例では、第2バッファ領域23bの不純物濃度のピーク値は、1×10
16〜1×10
19cm
-3である。ここで、第2バッファ領域23bは、不純物濃度のピーク値が1桁低下するまでの範囲によって規定される。一例では、第2バッファ領域23bの厚みは、0.5〜5.0μmである。第2バッファ領域23bは、半導体層20の第2深さD2の面内に開口24bを画定している。換言すれば、半導体層20の第2深さD2の面内には、不純物濃度が濃い高濃度部分と不純物濃度が低い低濃度部分が存在しており、高濃度部分が第2バッファ領域23bに対応しており、低濃度部分が開口24bに対応している。一例では、半導体層20の厚み方向に沿って観測したときに、複数の第2バッファ領域23bが、ストライプ状に配置されていてもよく、ドット状に分散配置されていてもよい。あるいは、半導体層20の厚み方向に沿って観測したときに、1つの第2バッファ領域23b内に複数の開口24bが分散配置されていてもよい。この例では、複数の第2バッファ領域23bが、ストライプ状に配置されている。一例では、第2バッファ領域23bの面方向の幅23Wbは、0.5〜50μmである。一例では、第2バッファ領域23bの開口24bの幅24Wb(隣合う第2バッファ領域23bの間の距離)は、0.5〜5μmである。
【0022】
第1バッファ領域23a及び第2バッファ領域23bは、イオン注入技術を利用して、半導体層20の第1主面20aから異なる飛程距離となるように不純物を導入することで形成することができる。このため、不純物が導入されなかったバッファ層23の一部は、半導体層20に初めから含まれる不純物濃度を有しており、その不純物濃度が1×10
12〜1×10
15cm
-3である。一例では、第1バッファ領域23aの不純物濃度のピークの深さD1と第2バッファ領域23bの不純物濃度のピークの深さD2の間の距離D3は、0.5〜5.0μmである。また、第1バッファ領域23aを形成するためのマスクのパターン(開口24aのパターンに対応する)と第2バッファ領域23bを形成するためのマスクのパターン(開口24bのパターンに対応する)が一致していない。このため、半導体層20の厚み方向に沿って観測したときに、第1バッファ領域23aで画定される開口24aの範囲と第2バッファ領域23bで画定される開口24bの範囲が重複していない。
【0023】
ドリフト層25は、バッファ層23上に位置しており、バッファ層23とベース層27を隔てている。ドリフト層25は、半導体層20に各拡散領域を形成した残部である。一例では、ドリフト層25は、半導体層20に初めから含まれる不純物濃度を有しており、その不純物濃度が1×10
12〜1×10
15cm
-3である。なお、ドリフト層25は、特許請求の範囲に記載の第1半導体層の一例である。
【0024】
ベース層27は、ドリフト層25上に位置しており、コンタクトベース領域27aとメインベース領域27bを有する。コンタクトベース領域27aは、ベース層27のうちのエミッタ電極14側に位置しており、エミッタ電極14に接している。メインベース領域27bは、ベース層27のうちのドリフト層25側に位置しており、ドリフト層25に接している。コンタクトベース領域27aとメインベース領域27bは、イオン注入技術を利用して、半導体層20の第2主面20bから異なる飛程距離となるように不純物を導入することで形成することができる。一例では、コンタクトベース領域27aは、1×10
17〜5×10
20cm
-3の不純物濃度を有している。一例では、メインベース領域27bは、1×10
16〜1×10
19cm
-3の不純物濃度を有している。なお、ベース層27は、特許請求の範囲に記載の第2半導体層の一例である。
【0025】
エミッタ領域29は、半導体層20の第2主面20bに位置している。エミッタ領域29は、イオン注入技術を利用して、ベース層27の表面に形成されてもよい。一例では、エミッタ領域29は、1×10
17〜5×10
20cm
-3の不純物濃度を有している。
【0026】
コレクタ電極12は、半導体層20の第1主面20aを被膜している。一例では、コレクタ電極12の材料がアルミニウムである。コレクタ電極12は、コレクタ層21にオーミック接触している。
【0027】
エミッタ電極14は、半導体層20の第2主面20bを被膜している。一例では、エミッタ電極14の材料がアルミニウムである。エミッタ電極14は、コンタクトベース領域27a及びエミッタ領域29にオーミック接触している。
【0028】
絶縁ゲート部17は、半導体層20の第2主面20bからエミッタ領域29、メインベース領域27bを貫通してドリフト層25に達するトレンチ内に形成されている。絶縁ゲート部17は、ドリフト層25とエミッタ領域29を隔てているメインベース領域27bに対向している。絶縁ゲート部17は、ゲート絶縁膜15及びゲート絶縁膜15に被覆されているトレンチゲート電極16を有している。一例では、ゲート絶縁膜15の材料がシリコン酸化膜である。一例では、トレンチゲート電極16の材料がポリシリコンである。
【0029】
半導体装置1は、コレクタ電極12にエミッタ電極14よりも高い電圧が印加され、且つトレンチゲート電極16に閾値電圧よりも高い電圧が印加されると、オン状態となる。オン状態では、絶縁ゲート部17が対向するメインベース領域27bに反転層が形成され、コレクタ電極12とエミッタ電極14の間が導通する。一方、半導体装置1は、コレクタ電極12にエミッタ電極14よりも高い電圧が印加され、且つトレンチゲート電極16に閾値電圧以下の電圧が印加されると、反転層が消失し、オフ状態となる。このように、半導体装置1は、トレンチゲート電極16に印加する電圧に基づいてオンとオフが切り換えられるスイッチング素子として機能する。
【0030】
次に、
図3〜6を参照し、本実施例の半導体装置1の特性を説明する。なお、以下で説明する比較例において、本実施例の半導体装置1と対応する構成要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0031】
図3Aは、第1比較例を示しており、バッファ層23の厚み方向のピーク濃度が1つの例を示している。
図4Aは、第2比較例を示しており、バッファ層23の厚み方向のピーク濃度が2つの例を示している。第2比較例のバッファ層23は、厚み方向に離れて配置されている第1バッファ領域23aと第2バッファ領域23bを有する。
図5Aは、第3比較例を示しており、バッファ層23の厚み方向のピーク濃度が2つの例を示している。第3比較例のバッファ層23は、厚み方向に離れて配置されている第1バッファ領域23aと第2バッファ領域23bを有する。さらに、第1バッファ領域23aは、開口24aを画定している。
図6Aは、本実施例を示しており、バッファ層23の厚み方向のピーク濃度が2つの例を示している。本実施例のバッファ層23は、厚み方向に離れて配置されている第1バッファ領域23aと第2バッファ領域23bを有する。さらに、第1バッファ領域23aが開口24aを画定しており、第2バッファ領域23bが開口24bを画定している。
【0032】
図3Bに示されるように、第1比較例では、ターンオフ時に伸展する空乏層がバッファ層23に達し、ドリフト層25内のキャリアが瞬時に枯渇し、電流が急速に減少する。このため、第1比較例のターンオフ時には、コレクタ・エミッタ間電圧が大きく発振する。
【0033】
図4Bに示されるように、第2比較例では、ターンオフ時に伸展する空乏層が第1バッファ領域23aで停止するので、第1バッファ領域23aと第2バッファ領域23bの間にキャリアが残存する。このため、第2比較例のターンオフ時には、電流の減少が緩やかになり、コレクタ・エミッタ間電圧の発振が抑えられる。しかしながら、第2比較例のターンオフ時には、コレクタ・エミッタ間電圧の発振が観測される。
【0034】
図5Bに示されるように、第3比較例では、ターンオフ時に伸展する空乏層が第1バッファ領域23aで停止するので、第1バッファ領域23aと第2バッファ領域23bの間にキャリアが残存する。さらに、第3比較例のターンオフ時には、残存キャリアが第1バッファ領域23aで画定される開口24aを介して適度にドリフト層25内に流入するので、電流の減少が緩やかになり、コレクタ・エミッタ間の発振が抑えられる。しかしながら、第3比較例のターンオフ時には、コレクタ・エミッタ間電圧の発振が観測される。
【0035】
図6Bに示されるように、本実施例では、ターンオフ時に伸展する空乏層が第1バッファ領域23aで停止するので、第1バッファ領域23aと第2バッファ領域23bの間にキャリアが残存する。さらに、本実施例のターンオフ時には、残存キャリアが第1バッファ領域23aで画定される開口24aを介して適度にドリフト層25内に流入するので、電流の減少が緩やかになり、コレクタ・エミッタ間の発振が抑えられる。さらに、本実施例では、第2バッファ領域23bが開口24bを画定しているので、ターンオフ時に、第2バッファ領域23bの開口24bにもキャリアが残留することができる。このため、本実施例では、ターンオフ時に多量のキャリアが残存するので、コレクタ・エミッタ間電圧の発振がさらに抑えられる。本実施例のターンオフ時には、コレクタ・エミッタ間電圧の発振がほぼ観測されない。
【0036】
図7に、第1バッファ領域23aの開口幅24Wa及び第2バッファ領域23bの開口幅24Wbをパラメータとしたときの発振時間の結果を示す。なお、第1バッファ領域23aの幅23Waと開口幅24Waの合計が8μmに設定されており、第2バッファ領域23bの幅23Wbと開口幅24Wbの合計が8μmに設定されている。したがって、開口幅24Wa,24Wbが「0」とは、第1バッファ領域23a及び第2バッファ領域23bの双方に開口が形成されていない例(上記の第2比較例に相当する)である。開口幅24Wa,24Wbが「1」とは、第1バッファ領域23aの開口幅24Wa及び第2バッファ領域23bの開口幅24Wbの各々が1μmであり、第1バッファ領域23aの幅23Wa及び第2バッファ領域23bの幅23Wbの各々が7μmの例である。さらに、
図7では、第1バッファ領域23aの不純物濃度のピークの深さD1と第2バッファ領域23bの不純物濃度のピークの深さD2の間の距離D3もパラメータとしている。
【0037】
図7に示されるように、開口幅24Wa,24Wbが広がると発振時間が低下する。ただし、開口幅24Wa,24Wbが広すぎると、発振時間の低下効果が小さくなる。これは、開口幅24Wa,24Wbが広すぎると、ターンオフ時に伸展する空乏層が第1バッファ領域23aを越えて伸びることで、残存キャリア量が減少するからだと考えられる。このため、開口幅24Wa,24Wbは、1〜3μmが望ましい。換言すると、半導体層20の厚み方向に沿って観測したときに、第1バッファ領域23a及び第2バッファ領域23bに対する開口24a,24bの割合は、15〜60%であるのが望ましい。
【0038】
第1バッファ領域23aの不純物濃度のピークの深さD1と第2バッファ領域23bの不純物濃度のピークの深さD2の間の距離D3については、大きいほど発振時間が低下する。しかしながら、第1バッファ領域23a及び第2バッファ領域23bを半導体層20の第1主面20aからレーザーアニールで活性化させる場合を考慮すると、第1バッファ領域23aの深さD1は3μm以下が望ましい。また、コレクタ層21の厚みに少なくとも0.5μm程度が必要だとすると、第2バッファ領域23bの深さD2は0.5μm以上となる。この場合でも、距離D3を十分に確保することができるので、発振時間は低下することが確認できる。
【0039】
本実施例の半導体装置1は、さらに以下の特徴を有する。
(1)
図1に示されるように、半導体装置1では、半導体層20の厚み方向に観測したときに、第1バッファ領域23aで画定される開口24aの範囲と第2バッファ領域23bで画定される開口24bの範囲が重複していない。このため、半導体装置1がターンオフしたときに、ドリフト層25とベース層27の接合面から伸びる空乏層がコレクタ層21に達することが確実に防止される。これにより、ベース層27とコレクタ層21の間のパンチスルーの発生が防止され、リーク電流の増大が抑制される。
【0040】
(2)第1バッファ領域23aで画定される開口24aの開口幅24Waが、第2バッファ領域23bで画定される開口24bの開口幅24Wbよりも小さいのが望ましい。この形態によると、ターンオフ時に伸展する空乏層が第1バッファ領域23aを越えて伸びることが抑えられるとともに、第2バッファ領域23bの開口24bにキャリアを多量に残留させることができ、コレクタ・エミッタ間電圧の発振が効果的に抑えられる。
【0041】
(3)
図8に示されるように、本実施例の技術は、逆導通IGBTである半導体装置2に適用することができる。半導体装置2では、コレクタ層21の一部がn
+型のカソード層22に置換されている。半導体装置2では、IGBT構造のターンオフ時及びダイオード構造の逆バイアス時の双方において、発振現象が抑えられる。
【実施例2】
【0042】
図9に示されるように、半導体装置3は、縦型のダイオードであり、半導体層120、半導体層120の第1主面120aを被膜するカソード電極112及び半導体層120の第2主面120bを被膜するアノード電極114を備えている。一例では、半導体層120の材料がシリコンである。
【0043】
半導体層120は、n
+型のカソード層121、バッファ層123、n型のドリフト層125及びp型のアノード層127を有している。
【0044】
カソード層121は、半導体層120の裏層部に位置しており、カソード電極112に接触している。一例では、カソード層121は、1×10
17〜5×10
20cm
-3の不純物濃度を有している。
【0045】
バッファ層123は、カソード層121上に位置しており、カソード層121とドリフト層125を隔てている。バッファ層123は、第1バッファ領域123a及び第2バッファ領域123bを有する。第1バッファ領域123aは、バッファ層123のうちのドリフト層125側に位置しており、ドリフト層125に接している。第2バッファ領域123bは、バッファ層123のうちのカソード層121側に位置しており、カソード層121に接している。
【0046】
第1バッファ領域123aは、半導体層120の第1主面120aから第1深さD11に不純物濃度のピークを有する。一例では、第1バッファ領域123aの不純物濃度のピーク値は、1×10
16〜1×10
19cm
-3である。ここで、第1バッファ領域123aは、不純物濃度のピーク値が1桁低下するまでの範囲によって規定される。一例では、第1バッファ領域123aの厚みは、0.5〜5.0μmである。第1バッファ領域123aは、半導体層120の第1深さD11の面内に開口124aを画定している。換言すれば、半導体層120の第1深さD11の面内には、不純物濃度が濃い高濃度部分と不純物濃度が低い低濃度部分が存在しており、高濃度部分が第1バッファ領域123aに対応しており、低濃度部分が開口124aに対応している。一例では、半導体層120の厚み方向に沿って観測したときに、複数の第1バッファ領域123aが、ストライプ状に配置されていてもよく、ドット状に分散配置されていてもよい。あるいは、半導体層120の厚み方向に沿って観測したときに、1つの第1バッファ領域123a内に複数の開口124aが分散配置されていてもよい。この例では、複数の第1バッファ領域123aが、ストライプ状に配置されている。一例では、第1バッファ領域123aの面方向の幅123Waは、0.5〜50μmである。一例では、第1バッファ領域123aの開口124aの幅124Wa(隣合う第1バッファ領域123aの間の距離)は、0.5〜5μmである。
【0047】
第2バッファ領域123bは、半導体層120の第1主面120aから第2深さD12に不純物濃度のピークを有する。第1主面20aから計測すると、第2深さD12は、第1深さD11よりも浅い。一例では、第2バッファ領域123bの不純物濃度のピーク値は、1×10
16〜1×10
19cm
-3である。ここで、第2バッファ領域123bは、不純物濃度のピーク値が1桁低下するまでの範囲によって規定される。一例では、第2バッファ領域123bの厚みは、0.5〜5.0μmである。第2バッファ領域123bは、半導体層120の第2深さD12の面内に開口124bを画定している。換言すれば、半導体層120の第2深さD12の面内には、不純物濃度が濃い高濃度部分と不純物濃度が低い低濃度部分が存在しており、高濃度部分が第2バッファ領域123bに対応しており、低濃度部分が開口124bに対応している。一例では、半導体層120の厚み方向に沿って観測したときに、複数の第2バッファ領域123bが、ストライプ状に配置されていてもよく、ドット状に分散配置されていてもよい。あるいは、半導体層120の厚み方向に沿って観測したときに、1つの第2バッファ領域123b内に複数の開口124bが分散配置されていてもよい。この例では、複数の第2バッファ領域123bが、ストライプ状に配置されている。一例では、第2バッファ領域123bの面方向の幅123Wbは、0.5〜50μmである。一例では、第2バッファ領域123bの開口124bの幅124Wb(隣合う第2バッファ領域123bの間の距離)は、0.5〜5μmである。
【0048】
第1バッファ領域123a及び第2バッファ領域123bは、イオン注入技術を利用して、半導体層120の第1主面120aから異なる飛程距離となるように不純物を導入することで形成することができる。このため、不純物が導入されなかったバッファ層123の一部は、半導体層120に初めから含まれる不純物濃度を有しており、その不純物濃度が1×10
12〜1×10
15cm
-3である。一例では、第1バッファ領域123aの不純物濃度のピークの深さD11と第2バッファ領域123bの不純物濃度のピークの深さD12の間の距離D13は、0.5〜5.0μmである。また、第1バッファ領域123aを形成するためのマスクのパターン(開口124aのパターンに対応する)と第2バッファ領域123bを形成するためのマスクのパターン(開口124aのパターンに対応する)が一致していない。このため、半導体層120の厚み方向に沿って観測したときに、第1バッファ領域123aで画定される開口124aの範囲と第2バッファ領域123bで画定される開口124bの範囲が重複していない。
【0049】
ドリフト層125は、バッファ層123上に位置しており、バッファ層123とアノード層127を隔てている。ドリフト層125は、半導体層120に各拡散領域を形成した残部である。一例では、ドリフト層125は、半導体層120に初めから含まれる不純物濃度を有しており、その不純物濃度が1×10
12〜1×10
15cm
-3である。
【0050】
アノード層127は、ドリフト層125上に位置しており、高濃度アノード領域127aと低濃度アノード領域127bを有する。高濃度アノード領域127aは、アノード層127のうちのアノード電極114側に位置しており、アノード電極114に接している。低濃度アノード領域127bは、アノード層127のうちのドリフト層125側に位置しており、ドリフト層125に接している。高濃度アノード領域127aと低濃度アノード領域127bは、イオン注入技術を利用して、半導体層120の第2主面120bから異なる飛程距離となるように不純物を導入することで形成することができる。一例では、高濃度アノード領域127aは、1×10
17〜5×10
20cm
-3の不純物濃度を有している。一例では、低濃度アノード領域127bは、1×10
16〜1×10
19cm
-3の不純物濃度を有している。
【0051】
カソード電極112は、半導体層120の第1主面120aを被膜している。一例では、カソード電極112の材料がアルミニウムである。カソード電極112は、カソード層121にオーミック接触している。
【0052】
アノード電極114は、半導体層120の第2主面120bを被膜している。一例では、アノード電極114の材料がアルミニウムである。アノード電極114は、高濃度アノード領域127aにオーミック接触している。
【0053】
半導体装置3は、アノード電極114にカソード電極112よりも高い電圧が印加されて順バイアスされると、オン状態となる。一方、半導体装置3は、カソード電極112にアノード電極114よりも高い電圧が印加されて逆バイアスされると、オフ状態となる。このように、半導体装置3は、整流素子として機能する。
【0054】
半導体装置3では、逆バイアス時にドリフト層125とアノード層127の接合面から伸展する空乏層が第1バッファ領域123aで停止するので、第1バッファ領域123aと第2バッファ領域123bの間にキャリアが残存する。さらに、半導体装置3の逆バイアス時には、残存キャリアが第1バッファ領域123aで画定される開口124aを介して適度にドリフト層125内に流入するので、電流の減少が緩やかになり、アノード・カソード間の発振が抑えられる。さらに、半導体装置3では、第2バッファ領域123bが開口124bを画定しているので、逆バイアス時に、第2バッファ領域123bの開口124bにもキャリアが残留することができる。このため、半導体装置3では、逆バイアス時に多量のキャリアが残存するので、アノード・カソード間電圧の発振がさらに抑えられる。
【0055】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0056】
例えば、上記実施例で開示されるバッファ層に係る技術をMOSFETに適用することができる。MOSFETは、n型のドリフト層とp型のボディ層によって寄生ダイオードを内蔵している。この寄生ダイオードが還流ダイオードとして動作する場合、上記バッファ層に係る技術が適用されていると、発振が抑えられる。
【0057】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。