(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092767
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】管状ピボットを有する過酷作業用グラップル
(51)【国際特許分類】
E02F 3/30 20060101AFI20170227BHJP
B66C 1/68 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
E02F3/30 Z
B66C1/68 B
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-501370(P2013-501370)
(86)(22)【出願日】2011年3月22日
(65)【公表番号】特表2013-522509(P2013-522509A)
(43)【公表日】2013年6月13日
(86)【国際出願番号】US2011029334
(87)【国際公開番号】WO2011119542
(87)【国際公開日】20110929
【審査請求日】2014年3月24日
(31)【優先権主張番号】12/728,669
(32)【優先日】2010年3月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512247348
【氏名又は名称】ジェネシス アタッチメンツ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ライハラ,ダニエル,ジェイ.
【審査官】
石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−046033(JP,A)
【文献】
特開平06−057970(JP,A)
【文献】
実公平06−048058(JP,Y2)
【文献】
実開平01−098251(JP,U)
【文献】
国際公開第2006/120016(WO,A1)
【文献】
特開平11−182062(JP,A)
【文献】
特開2007−302232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/28− 3/413
B66C 1/68
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックホウのディッパアームの端部に取付けるための改良された過酷作業用グラップルであって、
(a)内端と背面とを有する弓形の上顎が、その背面の内端付近で、前記ディッパアームの端部と、前記ディッパアームに対するこの上顎の回動動作のための複動式アクチュエータとに取付けられており、
(b)内端と背面とを有する弓形の下顎が、その背面の内端付近で、この下顎に対する前記上顎の回動動作のためのリンクを介してディッパアームに取付けられており、
(c)上下のうち一方の顎の内端に2つの間隔を開けたラグプレートが取付けられ、各ラグプレートがハトメを有しており、
(d)中空の管状ピボットが他方の顎の内端に沿って1本だけ取付けられ、この1本の中空の管状ピボットが2つの間隔の開いたラグプレートのハトメの間でハトメと同軸に設けられており、
(e)2つの間隔の開いたラグプレートのハトメと1本の中空の管状ピボットとにわたってピボットピンが1本だけ通されていることにより、上顎と下顎がいずれもこの1本のピボットピンの周りで互いに対して回動できるようになっているとともに、上顎と下顎の内端どうしが互いに近接してそれらの間の喉部が閉じており、使用中にグラップルを破損させる可能性のある瓦礫が上顎と下顎の間に入るのを防げるようになっている
ことを特徴とするグラップル。
【請求項2】
前記管状ピボットの第一と第二の端にそれぞれ外側フランジを有する第一と第二のピボットブッシュが差し込まれている、請求項1の改良された過酷作業用グラップル。
【請求項3】
前記第一と第二のピボットブッシュはマンガン及び青銅で製造されている、請求項2の改良された過酷作業用グラップル。
【請求項4】
前記各顎がその内端の反対側にレーキ先端を備えている、請求項1の改良された過酷作業用グラップル。
【請求項5】
前記各顎の内端と前記レーキ先端との間に荷重受けプレートを備えている、請求項4の改良された過酷作業用グラップル。
【請求項6】
当該グラップルのラグプレートは2つのみである、請求項1の改良された過酷作業用グラップル。
【請求項7】
前記リンクは、バックホウアームに対する前記下顎の回動動作のための複動式アクチュエータである、請求項1の改良された過酷作業用グラップル。
【請求項8】
バックホウのディッパアームの端部に取付けるための、改良された過酷作業用グラップルであって、
(a)内端と背面とを有する弓形の上顎が、その背面の内端付近で、前記ディッパアームの端部と、前記ディッパアームに対するこの上顎の回動動作のための複動式アクチュエータとに取付けられており、
(b)内端と背面とを有する弓形の下顎が、その背面の内端付近で、この下顎に対する前記上顎の回動動作のためのリンクを介してディッパアームに取付けられており、
(c)各顎がその内端の反対側にレーキ先端を備え、前記各顎の内端と前記レーキ先端との間に荷重受けプレートを備えており、
(d)前記下顎の内端に2つの間隔を開けたラグプレートが取付けられ、各ラグプレートがハトメを有しており、
(e)中空の管状ピボットが前記上顎の内端に沿って1本だけ取付けられ、この1本の管状ピボットが2つの間隔の開いたラグプレートのハトメの間でハトメと同軸に設けられており、
(f)2つの間隔の開いたラグプレートのハトメと1本の中空の管状ピボットとにわたってピボットピンが1本だけ通されていることにより、上顎と下顎がいずれもこの1本のピボットピンの周りで互いに対して回動できるようになっているとともに、上顎の内端と下顎の内端どうしが互いに近接してそれらの間の喉部が閉じており、使用中にグラップルを破損させる可能性のある瓦礫が上顎と下顎の間に入るのを防げるようになっている
ことを特徴とするグラップル。
【請求項9】
1本の中空の管状ピボットの第一と第二の端部に外側フランジを有する第一と第二のピボットブッシュが差し込まれており、各ピボットブッシュが黄銅及びマンガンで製造されている、請求項8の改良された過酷作業用グラップル。
【請求項10】
前記リンクは、バックホウアームに対する前記下顎の回動動作のための複動式アクチュエータである、請求項8の改良された過酷作業用グラップル。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、バックホウに、より具体的には管状ピボットを有する改良された過酷作業用グラップルに関する。
【0002】
ブルドーザー、フロントエンド・ローダー、及び、トラックは長い間、道路工事、やぶの除去、及び、危険判定を受けた建物の解体のために使用されてきた。1970年代初期に、バックホウのブームに搭載されたグラップルアセンブリが発達し、様々な使用方法、特に建物の解体に対して非常に有益であることが分かった。一般的にグラップルアセンブリは、回転する上顎と固定された下顎とを備えている。グラップルは瓦礫の破砕、収集、及び、荷役に使用できる。このような初期のグラップルの例は、米国特許第3,802,731号、第4,017,114号、第4,248,471号、及び、第4,413,945号で開示されている。
【0003】
1970年代初期から何年にも渡って、グラップルは
図1〜3に描かれるようにほとんど同じ形態のままである。一般的にバックホウグラップルアセンブリ10はアームに回動可能に連結しており、さらにアクチュエータ又はシリンダ14及び、任意で堅固なリンク16を介してアームと連結している。アーム12は、グラップルを使用するバックホウに連結したブームに連結している。
【0004】
従来のグラップルアセンブリは一般的に、レーキ先端(rake tips)20を備え、アーム取付けプレート28を有する背面26を持つ、弓形の上顎又はクラムシェル18を含む。レーキ先端20の反対側には内端22がある。荷重係合プレート
(荷重受けプレート)24は一般的にレーキ先端20と内端22の間にある。弓形の下顎又はクラムシェル32は同様に、内端36の反対側にレーキ先端34を持ち、2つの間には荷重係合プレート38が存在する。下顎32の背面40上には、アーム取付けプレート42がある。アーム取付けプレート28及び42はバックホウのアーム12に適切に連結されており、さらにシリンダ14及びリンク16によって、あるいは、下顎32が可動であることが望まれる場合、代替として別のシリンダ14によって連結される。
【0005】
見て明らかなとおり、従来のバックホウグラップルアセンブリ10は大きく開いたスロート部
(喉部)50を持っている。上顎18は、ピボットブッシュ60が取付けられた2つの機械加工のスリーブ58が中に溶接されたハトメを有する、2つの上部ラグプレート(lug plate)56を持っている。下顎32上には、ハトメを備えた4つの下部ラグプレート62が存在し、各ハトメは該ハトメの各々に溶接された溶接機械スリーブ64を有する。
図2及び3の従来のグラップルアセンブリでは2本のピボットピン66が使用されるが、
図1のグラップルアセンブリでは1本のピボットピン68が使用されている。ピボットピン68又は66は保持具70などによって位置保持される。
【0006】
従来の既知のグラップルアセンブリ10における最も重大な問題は、スロート部50が十分に開いているため瓦礫Dがスロート部50内に入ってくることがあり、ラグプレート56及び62に磨耗や切り込みを与えるのと同様にピボットピン66又は68への磨耗を与え、時にはアクチュエータ又はシリンダ14のラムに傷を付けたり損傷を及ぼす可能性があり、これらは全て結果としてグラップルアセンブリ10を動作不能にし、交換、再組み立て、または大規模な修理が必要になることである。
【0007】
他の重大な問題は、上顎及び下顎、18及び32の、ラグプレート56と62とは互いに磨耗し合い、最終的には、顎18及び32の互いに対する作動において、大きな遅れと不確実性をもたらすことである。このことはまた、グラップルの作動中の騒音が非常に大きくなり、さらに大きな磨耗を伴うことを意味する。
【0008】
従来の既知のグラップルアセンブリにおける他の重大な欠点は、6つのラグプレート56及び62と、6つの機械加工されたスリーブ58及び64とを含む多数の部品が、これらの部品の全てに関連する磨耗に倣った位置に溶接されることを含む。
【0009】
ラグプレート及び機械加工されたスリーブをあまり多く使用せず、アーム取付け、ラグプレート及び、ピボットピンが全て、瓦礫による損傷、そうでなければ開いたスロート部50で発生する損傷から保護された状態で、円滑な方法で再組み立てなく改良された作動をもたらす十分に閉じられたスロート部を持つ、過酷作業用グラップルに対する要求が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3,802,731号
【特許文献2】米国特許第4,017,114号
【特許文献3】米国特許第4,248,471号
【特許文献4】米国特許第4,413,945号
【発明の概要】
【0011】
バックホウのディッパアーム(dipper stick)の端部に取付けるための改良された過酷作業用グラップルは、内端と背面とを有する弓形の上顎を持っている。上顎はその背面上の内端付近で、ディッパアームの端部及び、ディッパアームに対する上顎の回動動作のための複動式アクチュエータまたはシリンダに取付けられている。弓形の下顎は内端と背面とを備えている。下顎はその背面上の内端付近で、下顎に対する上顎の回動動作のためのリンクによってディッパアームに取付けられている。中空の管状ピボットは、開口した両端を有していて、一方の顎の内端に取付けられる。2つのラグプレートはハトメを各々有し、他方の顎の内端に取付けられる。ハトメは管状ピボットの開口端と共に一直線に並ぶ。ピボットピンは管状ピボット及びハトメを貫通し、そこで固定される。
【0012】
本発明の主な目的及び利点は、本発明のグラップルは従来のグラップルアセンブリより構成部品が少ないことである。すなわち、従来の既知のグラップルアセンブリは6つのラグプレートを使用していたが、本発明では2つのみ使用する。
【0013】
本発明の他の目的及び利点は、改良された過酷作業用グラップルは、回動部、ラグプレート、ピボットピン、リンク及びシリンダを瓦礫が部品を摩擦することで発生する磨耗や損傷から保護する、十分に閉じられたスロート部
(喉部)を持っていることである。
【0014】
本発明としての他の目的及び利点は、回動部は本明細書で既知のものよりはるかに堅固で、それゆえに従来の既知のグラップルアセンブリより長期にわたって強度と耐久性を有することである。
【0015】
本発明の他の目的及び利点は、回動部の構成部品が少ないため、既知のグラップルアセンブリと比べて、本発明はかなり安価に製造され、メンテナンスも容易なことである。
【0016】
本発明の他の目的及び利点は、上顎及び下顎の構成部品は互いに接触していないため早期磨耗が発生しないが、むしろ、マンガン青銅から適切に製造された特有のピボットブッシュとフランジによって互いから保護されていることである。
【0017】
本発明の他の目的及び利点は、その回動部が従来のグラップルアセンブリより堅固なため、寿命が長く、騒音が少なく、そして破砕や解体に使用にするのに強度容量が大きいことである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一部が切り取られたディッパアームに取付けられた、従来技術のバックホウグラップルアセンブリの正面斜視図である。
【
図2】開いたスロート部と6つのラグプレートとを示している従来技術のグラップルアセンブリの後面斜視図である。
【
図3】過多のラグプレート、機械加工されたスリーブ、及びピボットブッシュを多数示す、従来の弓形グラップルアセンブリの分解図である。
【
図4】本発明の管状ピボットを備えた過酷作業用グラップルの正面斜視図である。
【
図5】バックホウのディッパアームに取付けられた本発明の後面斜視図である。
【
図6】顎が大きく開いた状態でスロート部が十分に閉じられていることを示している、ディッパアームに取付けられた改良されたグラップルの正面斜視図である。
【
図7】顎が完全に閉じた状態でディッパアームに取付けられた本発明のグラップルの正面斜視図である。
【
図8】それぞれの取付けプレートの全て及び2つのみのラグプレートを備えた、本発明のグラップルの後面斜視図である。
【
図9】本発明の過酷作業用グラップルのアセンブリ分解図である。
【
図10】上顎の反対側の下顎に管状ピボットを備えた本発明の過酷作業用グラップルの、第二実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
詳細な仕様
図4から9を参照すると、本発明の管状ピボット88を備えた過酷作業用グラップル80について理解されるであろう。
【0020】
グラップル80は、相互間に荷重係合プレート
(荷重受けプレート)87が設けられる前側レーキ先端84と内端86とを備えた弓形の上顎又はクラムシェル82を備えている。内端86に隣接して、上顎82上のラグプレートが不要な、溶接された中空の管状ピボット88がある。管状ピボット88は、設計上円筒形または正方形であり得る。
【0021】
管状ピボット88は、外側フランジ94を各々備えたピボットブッシュ92を受ける機械加工された開口端90を持っている。ブッシュ92はマンガン及び青銅から適切に製造されている。上顎82の背面96上にはアーム取付けプレート98がある。
【0022】
弓形の下顎又はクラムシェル100もまた、相互間に荷重係合プレート105が設けられる外向きのレーキ先端102及び、内端104を適切に備えている。下顎100はハトメ108を各々有する2つの下部ラグプレート107を備えた背面106を持っている。ラグプレートは下顎の内端104に溶接されている。機械加工されたスリーブ109は、ハトメ108内に適切に溶接されている。ピボットピン110はラグプレート107のハトメ108、2つのピボットブッシュ92、及び管状ピボット88を適切に貫通する。ピボットピン110はピボットブッシュ92によって適切に支持されており、同じくマンガン及び青銅から適切に製造されている。保持装置112はピボットピン110を適正な位置に保つために、適切に使用されている。下顎100の背面106上にはアーム取付けプレート114がある。
【0023】
本発明は利点として瓦礫が回動部、リンク、アーム又はシリンダのいずれにも容易に接触しないようにするほぼ閉じられたスロート部116を持っており、さもないと、グラップルアセンブリ80またはアーム12に損傷を引き起こす可能性がある。また、フランジ94を備えたピボットブッシュ92は、上顎82及び下顎100が互いに摩擦係合するのではなく、多くの中断時間及び溶接なしで容易に交換できるピボットブッシュ92及びフランジ94の上に共に載せられていることもわかるであろう。
【0024】
図10を参照すると、過酷作業用グラップル120の第二実施形態が図示されている。弓形上顎122はハトメ127を各々有する上部ラグプレート126が溶接された内端124を持っている。弓形下顎はまた、ピボットピン134を受ける中空の管状ピボット132が溶接されている内端130を適切に持っており、アセンブリとして第一実施形態の重作業用グラップル80に類似している。第二実施形態の目的は、管状ピボットが設けられる内端は、上顎または下顎のどちらにもなり得ることを示すためである。
【0025】
本発明は例示のみを目的として上記の説明と図とで示されており、実際の本発明の範囲は特許請求の範囲を読むことで理解されるであろう。