特許第6092772号(P6092772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092772
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】バンパー組立体
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/24 20060101AFI20170227BHJP
   B60R 19/34 20060101ALI20170227BHJP
   B60R 19/03 20060101ALI20170227BHJP
   B21D 53/88 20060101ALI20170227BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   B60R19/24 P
   B60R19/34
   B60R19/03 B
   B21D53/88 E
   B21D22/20 H
   B21D22/20 Z
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-522133(P2013-522133)
(86)(22)【出願日】2011年8月3日
(65)【公表番号】特表2013-535369(P2013-535369A)
(43)【公表日】2013年9月12日
(86)【国際出願番号】EP2011003893
(87)【国際公開番号】WO2012016692
(87)【国際公開日】20120209
【審査請求日】2014年6月17日
(31)【優先権主張番号】61/370,142
(32)【優先日】2010年8月3日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509161026
【氏名又は名称】コスマ エンジニアリング ユーロープ アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】ブリュメル ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ヘンフスト クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】リンドトナー エルンスト
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−276802(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0045638(US,A1)
【文献】 特開2007−290581(JP,A)
【文献】 実開昭61−134457(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/24
B21D 22/20
B21D 53/88
B60R 19/03
B60R 19/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームボックス型クラッシュマネージメントシステムを形成する方法であって、
熱成形法により第1のシート状金属ブランクから第1のシェルを形成するステップを有し、前記第1のシェルは、高抗張力ビーム部分と、該ビーム部分と一体に形成され前記ビーム部分の第1の端部の近くに位置する第1の低降伏強度クラッシュボックス部分と、前記ビーム部分と一体に形成され前記ビーム部分の第2の端部の近くに位置する第2の低降伏強度クラッシュボックス部分とを有し、前記第1のシェルは、前記ビーム部分と前記第1及び前記第2のクラッシュボックス部分の各々とに沿って連続的に延びる開放フェースを有し、
前記方法は、さらに、
第2のシート状金属ブランクから閉鎖要素を形成するステップを有し、前記閉鎖要素の形成ステップは、熱成形法により第2のシェルを形成するステップを含み、前記第2のシェルは、高抗張力ビーム部分と、該ビーム部分と一体に形成され前記ビーム部分の第の端部の近くに位置する第の低降伏強度クラッシュボックス部分と、前記ビーム部分と一体に形成され前記ビーム部分の第2の端部の近くに位置する第2の低降伏強度クラッシュボックス部分とを有し、前記第2のシェルは、前記ビーム部分並びに前記第及び前記第2のクラッシュボックス部分の各々に沿って連続的に延びる開放フェースを有し、
前記方法は、さらに、
前記閉鎖要素を前記第1のシェルの第1の開放フェースに隣接してしっかりと固定するステップを備えている、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ビーム部分の引張強度は、約1300N/mm2〜約1600N/mm2である、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び前記第2のクラッシュボックス部分の降伏強度は、約200N/mm2〜450N/mm2である、
請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記閉鎖要素を前記第1のシェルの前記開放フェースに隣接してしっかりと固定する前記ステップは、前記閉鎖要素を前記第1のシェルに熱的に接合するステップと、前記閉鎖要素を前記第1のシェルに接着するステップと、前記閉鎖要素を前記第1のシェルに機械的に結合するステップの1つを含む、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ビームボックス型クラッシュマネージメントシステムを形成する方法であって、
第1のシート状金属ブランクを少なくとも前記金属のオーステナイト化温度まで加熱するステップと、
前記オーステナイトブランクを1対の冷却ツールで熱成形して1つの開放側部を備えた全体として3つの側部付きのチャネル構造体を有する第1の一体形ビームボックスコンポーネントを形成するステップと、
前記熱成形プロセス中、前記形成されたコンポーネントのビーム部分を、該ビーム部分を引張強度が約1300N/mm2〜約1600N/mm2の本質的にマルテンサイトの組織に焼入れするほど十分迅速な第1の速度で冷却するステップ及び前記形成されたコンポーネントのクラッシュボックス部分を、該クラッシュボックス部分が約200N/mm2〜450N/mm2の降伏強度を達成するよう前記第1の速度よりも遅い第2の速度で冷却するステップと、
第2のシート状金属ブランクから閉鎖要素を形成するステップと、を備え、
前記閉鎖要素を形成する前記ステップは、
第2のシート状金属ブランクを少なくとも前記金属のオーステナイト化温度まで加熱するステップと、
前記オーステナイトブランクを1対の冷却ツールで熱成形して1つの開放側部を備えた全体として3つの側部付きのチャネル構造体を有する第2の一体形ビームボックスコンポーネントを形成するステップと、
前記熱成形プロセス中、前記形成されたコンポーネントのビーム部分を、該ビーム部分を引張強度が約1300N/mm2〜約1600N/mm2の本質的にマルテンサイトの組織に焼入れするほど十分迅速な第1の速度で冷却するステップ及び前記形成されたコンポーネントのクラッシュボックス部分を、該クラッシュボックス部分が約200N/mm2〜450N/mm2の降伏強度を達成するよう前記第1の速度よりも遅い第2の速度で冷却するステップと、を備えており、
前記方法は、さらに、
前記閉鎖要素を前記第1の一体形ビームボックスコンポーネントの前記開放側部に沿ってしっかりと固定するステップを備えている、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
前記クラッシュボックス部分は、前記ビーム部分の前記第1の端部の近くで前記ビーム部分と一体に形成された第1のクラッシュボックス部分と、前記ビーム部分の前記第2の端部の近くで前記ビーム部分と一体に形成された第2のクラッシュボックス部分とを有し、前記第1の端部は、前記第2の端部と反対側に位置している、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記閉鎖要素を前記第1の一体形ビームボックスコンポーネントの前記開放側部に沿ってしっかりと固定する前記ステップは、前記閉鎖要素を前記第1のシェルに熱的に接合するステップ、前記閉鎖要素を前記第1のシェルに接着するステップ及び前記閉鎖要素を前記第1のシェルに機械的に結合するステップのうちの1つを含む、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
ビームボックス型クラッシュマネージメントシステムであって、第1の一体形シェルを有し、前記第1の一体形シェルは、高抗張力ビーム部分と、該ビーム部分と一体に形成され前記ビーム部分の第1の端部の近くに位置する第1の低降伏強度クラッシュボックス部分と、前記ビーム部分と一体に形成され前記ビーム部分の第2の端部の近くに位置する第2の低降伏強度クラッシュボックス部分とを有し、前記第1の一体形シェルは、前記ビーム部分と前記第1及び前記第2のクラッシュボックス部分の各々に沿って連続的に延びる開放フェースを有し、
前記第1の一体形シェルの前記開放フェースに隣接してしっかりと固定された閉鎖要素を備え、前記閉鎖要素は、第2の一体形シェルを有し、前記第2の一体形シェルは、高抗張力ビーム部分と、該ビーム部分と一体に形成され前記ビーム部分の第1の端部の近くに位置する第1の低降伏強度クラッシュボックス部分と、前記ビーム部分と一体に形成され前記ビーム部分の第2の端部の近くに位置する第2の低降伏強度クラッシュボックス部分を有し、前記第2の一体形シェルは、前記ビーム部分並びに前記第1及び前記第2のクラッシュボックス部分の各々に沿って連続的に延びる開放フェースを有する、
ことを特徴とするビームボックス型クラッシュマネージメントシステム。
【請求項9】
前記ビーム部分の引張強度は、約1300N/mm2〜約1600N/mm2である、
請求項8記載のビームボックス型クラッシュマネージメントシステム。
【請求項10】
前記第1及び前記第2のクラッシュボックス部分の降伏強度は、約200N/mm2〜450N/mm2である、
請求項8又は9記載のビームボックス型クラッシュマネージメントシステム。
【請求項11】
ビームボックス型クラッシュマネージメントシステムであって、
1のビームボックスシェルを有し、前記第1のビームボックスシェルは、高抗張力ビーム部分と、該ビーム部分と一体に形成され前記ビーム部分の第1の端部の近くに位置する第1の低降伏強度クラッシュボックス部分と、前記ビーム部分と一体に形成され前記ビーム部分の第2の端部の近くに位置する第2の低降伏強度クラッシュボックス部分とを有し、前記第1の端部は、前記第2の端部と反対側に位置し、前記第1のビームボックスシェルは、第1のリムを構成する1つの開放側部を有し、
2のビームボックスシェルを有し、前記第2のビームボックスシェルは、高抗張力ビーム部分と、該ビーム部分と一体に形成されていて、前記ビーム部分の第1の端部の近くに位置する第1の低降伏強度クラッシュボックス構造体及び前記ビーム部分と一体に形成されていて、前記ビーム部分の第2の端部の近くに位置する第2の低降伏強度クラッシュボックス構造体を有し、前記第1の端部は、前記第2の端部と反対側に位置し、前記第2のビームボックスシェルは、第2のリムを構成する1つの開放側部を有し、
前記第1のビームボックスシェルは、前記第1のリムが前記第2のリムに当接すると共に前記第1のビームボックスシェルの前記ビーム部分が前記第2のビームボックスシェルの前記ビーム部分と整列し、前記第1のビームボックスシェルの前記第1及び前記第2のクラッシュボックス部分が前記第2のビームボックスシェルの前記第1及び前記第2のクラッシュボックス構造体とそれぞれ整列するように前記第2のビームボックスシェルにしっかりと固定されている、
ことを特徴とするビームボックス型クラッシュマネージメントシステム。
【請求項12】
前記第2のリムは、前記第1のビームボックスシェルが前記第2のビームボックスシェルにしっかりと固定されると、前記第1のリム内に入れ子関係をなして受け入れられる、
請求項11記載のビームボックス型クラッシュマネージメントシステム。
【請求項13】
前記ビーム部分の引張強度は、約1300N/mm2〜約1600N/mm2である、
請求項11又は12記載のビームボックス型クラッシュマネージメントシステム。
【請求項14】
前記第1及び前記第2のクラッシュボックス部分の降伏強度は、約200N/mm2〜450N/mm2である、
請求項11ないし13のいずれか1項に記載のビームボックス型クラッシュマネージメントシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、車両に用いられるバンパー組立体に関し、特に、目的に合わせて調整してある焼戻しプロセスにより形成されたコンポーネントを有するバンパー型クラッシュマネージメント又は衝突時被害軽減システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、衝突の際の衝撃を吸収し、車両の部分に対する損傷をできる限り制限するためにその各端に取り付けられたバンパーを備えている。低速、例えば約15〜16km/h以下の速度での衝突の際に車両の損傷を最小限に抑えるために、自動車製造業者は、クラッシュボックスと呼ばれる「犠牲要素」を提供しており、このようなクラッシュボックスは、衝突の際に、衝撃エネルギーの大部分を吸収し、変形するが車両シャーシの変形を阻止する。事実、車両シャーシの変形の結果として、高い補修費が必要になり、それにより望ましくないほど高い保険料等が生じる。
【0003】
典型的には、犠牲要素を備えたバンパー組立体は、1対のクラッシュボックス、クロスメンバ、発泡体のような緩衝要素、及びバンパーシールドを含む。先行技術のバンパー組立体では、2つのクラッシュボックスが2つのそれぞれのプレートを介して車両シャーシの2つのそれぞれの長手方向部材の端部に固定される。クロスメンバは、クラッシュボックスの反対側に接合され、一方のクラッシュボックスから他方クラッシュボックスまで連続的に延びている。フォーム等で作られた緩衝要素は、典型的には、クロスメンバの外部に拘束されている。主として美的機能及び空気力学的機能を有するバンパーシールドがバンパー組立体を覆っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、クラッシュボックスとクロスメンバの両方は、金属材料、例えばスチール又はアルミニウムで作られている。クラッシュボックスを車両に固定する先行技術の手段である金属クラッシュボックス、クロスメンバ及びプレートは、組み立てるのが幾分厄介であり、重く、コスト高であり、しかも新型車両モデルに容易には適合できないと考えられる。
【0005】
したがって、上述の問題のうちの少なくとも幾つかを解決するクラッシュマネージメントシステムを提供することが有利である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、ビームボックス型クラッシュマネージメントシステムを構築する方法であって、熱成形法により第1のシート状金属ブランクから第1のシェルを形成するステップを有し、第1のシェルは、高抗張力ビーム部分と、このビーム部分と一体に形成されビーム部分の第1の端部の近くに位置する第1の低降伏強度クラッシュボックス部分と、ビーム部分と一体に形成されビーム部分の第2の端部の近くに位置する第2の低降伏強度クラッシュボックス部分とを有し、第1のシェルは、ビーム部分並びに第1及び第2のクラッシュボックス部分の各々に沿って連続的に延びる開放フェースを有し、この方法は、第2のシート状金属ブランクから閉鎖要素を形成するステップと、閉鎖要素を第1のシェルの第1の開放フェースに隣接してしっかりと固定するステップとを更に有することを特徴とする方法が提供される。
【0007】
本発明の一態様によれば、ビームボックス型クラッシュマネージメントシステムを構築する方法であって、第1のシート状金属ブランクを少なくとも金属のオーステナイト化温度まで加熱するステップと、オーステナイトブランクを1対の冷却ツールで熱成形して1つの開放側部を備えた全体として3つの側部付きのチャネル構造体を有する第1の一体形ビームボックスコンポーネントを形成するステップと、熱成形プロセス中、形成されたコンポーネントのビーム部分を、このビーム部分を引張強度が約1300N/mm2〜約1600N/mm2の本質的にマルテンサイトの組織に焼入れするほど十分迅速な第1の速度で冷却するステップと、形成されたコンポーネントのクラッシュボックス部分を、このクラッシュボックス部分が約200N/mm2〜450N/mm2の降伏強度を達成するよう第1の速度よりも遅い第2の速度で冷却するステップと、第2のシート状金属ブランクから閉鎖要素を形成するステップと、閉鎖要素を第1の一体形ビームボックスコンポーネントの開放側部に沿ってしっかりと固定するステップとを有することを特徴とする方法が提供される。
【0008】
本発明の一態様によれば、ビームボックス型クラッシュマネージメントシステムであって、第1の一体形シェルを有し、第1の一体形シェルは、高抗張力ビーム部分と、このビーム部分と一体に形成されビーム部分の第1の端部の近くに位置する第1の低降伏強度クラッシュボックス部分と、ビーム部分と一体に形成されビーム部分の第2の端部の近くに位置する第2の低降伏強度クラッシュボックス部分とを有し、第1の一体形シェルは、ビーム部分並びに第1及び第2のクラッシュボックス部分の各々に沿って連続的に延びる開放フェースを有し、ビームボックス型クラッシュマネージメントシステムは、第1の一体形シェルの開放フェースに隣接してしっかりと固定された閉鎖要素を更に有することを特徴とするビームボックス型クラッシュマネージメントシステムが提供される。
【0009】
本発明の一態様によれば、ビームボックス型クラッシュマネージメントシステムであって、第1のシート状金属ブランクから製作された第1のビームボックスシェルを有し、第1のビームボックスシェルは、高抗張力ビーム部分と、このビーム部分と一体に形成されビーム部分の第1の端部の近くに位置する第1の低降伏強度クラッシュボックス部分と、ビーム部分と一体に形成されビーム部分の第2の端部の近くに位置する第2の低降伏強度クラッシュボックス部分とを有し、第1の端部は、第2の端部と反対側に位置し、第1のビームボックスシェルは、第1のリムを構成する1つの開放側部を有し、ビームボックス型クラッシュマネージメントシステムは、第2のシート状金属ブランクから製作された第2のビームボックスシェルを更に有し、第2のビームボックスシェルは、高抗張力ビーム部分と、このビーム部分と一体に形成されビーム部分の第1の端部の近くに位置する第1の低降伏強度クラッシュボックス構造体と、ビーム部分と一体に形成されビーム部分の第2の端部の近くに位置する第2の低降伏強度クラッシュボックス構造体とを有し、第1の端部は、第2の端部と反対側に位置し、第2のビームボックスシェルは、第2のリムを構成する1つの開放側部を有し、第1のビームボックスシェルは、第1のリムが第2のリムに当接すると共に第1のビームボックスシェルのビーム部分が第2のビームボックスシェルのビーム部分と整列し、第1のビームボックスシェルの第1及び第2のクラッシュボックス部分が第2のビームボックスシェルの第1及び第2のクラッシュボックス構造体とそれぞれ整列するように第2のビームボックスシェルにしっかりと固定されていることを特徴とするビームボックス型クラッシュマネージメントシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態としてのクラッシュマネージメントシステムの後ろから見た斜視図である。
図2図1の平面Aに沿った拡大断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態としてのクラッシュマネージメントシステムの前から見た斜視図である。
図4a図3のクラッシュマネージメントシステムの後ろから見た斜視図である。
図4b】破線の円の1つの中に位置する図4aの一部分の拡大詳細図である。
図4c】破線の円の他の1つの中に位置する図4aの一部分の拡大詳細図である。
図5】本発明の一実施形態としての方法の単純化されたフローチャートである。
図6】本発明の一実施形態としての方法の単純化されたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の例示の実施形態について以下の図面と関連して説明する。
【0012】
以下の説明は、当業者が本発明を構成すると共に利用することができるようにするために提供されており、この説明は、特定の用途及びその要件との関連で提供されている。開示する実施形態の種々の改造例は、当業者には容易に明らかであり、本発明の一般的な原理は、本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態及び用途に利用できる。かくして、本発明は、開示する実施形態には限定されず、本明細書において開示する原理及び特徴と一致した最も広い範囲が本発明に与えられるべきである。
【0013】
図1を参照すると、本発明の第1の実施形態としてのクラッシュマネージメント又は衝突時被害軽減システムの後ろから見た斜視図が示されている。クラッシュマネージメントシステムは、第1のシェル100aは第1のシート状金属ブランクから作られ、第2のシェル100bは第2のシート状金属ブランクから別個に作られている。特定の且つ非限定的な例を挙げると、第1及び第2のシート状金属ブランクは、各々、22MnB5ボロンスチール(硼素鋼)から成る。特に、第1のシェル100a及び第2のシェル100bは、以下のセクションにおいて詳細に説明するように、目的に合わせて調整してある焼戻し熱成形法を用いて形成される。
【0014】
第1のシェル100aは、高抗張力ビーム部分102aを有する。第1の低降伏強度クラッシュボックス部分104aがビーム部分の第1の端部の近くでビーム部分102aと一体に形成され、第2の低降伏強度クラッシュボックス部分106aがビーム部分の第2の端部の近くでビーム部分102aと一体に形成されており、第2の端部は、第1の端部と反対側に位置している。同様に、第2のシェル100bは、高抗張力ビーム部分102bを有する。第1の低降伏強度クラッシュボックス部分104bがビーム部分の第1の端部の近くでビーム部分102bと一体に形成され、第2の低降伏強度クラッシュボックス部分106bがビーム部分の第2の端部の近くでビーム部分102bと一体に形成されており、第2の端部は、第1の端部と反対側に位置している。
【0015】
ビーム部分102a,102bの引張強度の代表的な値は、約1300N/mm2〜約1600N/mm2である。第1のクラッシュボックス部分104a,104b及び第2のクラッシュボックス部分106a,106bの降伏強度の代表的な値は、約200N/mm2〜約450N/mm2である。クラッシュボックス部分の降伏強度は、性能要件に応じて所望の値を達成するよう熱成形プロセスの間に調節可能である。第1のシェル100a及び第2のシェル100bを形成するために用いられる熱成形プロセスの性状に起因して、ビーム部分102a,102bの高抗張力材料と第1のクラッシュボックス部分104a,104b及び第2のクラッシュボックス部分106a,106bの低降伏強度材料との間には移行ゾーンが存在する。
【0016】
また、図2を参照すると、図1の平面Aに沿った拡大断面図が示されている。第1のシェル100aは、1つの開放側部を備えた全体として3つの側部付きチャネル構造体を有する一体形コンポーネントである。第1のシェル100aの頂面200aが2つの反対側の側壁202a,204a内に延びている。第1のシェルの開放側部に沿う2つの反対側の側壁の縁部は、第1のリム108aを構成している。同様に、第2のシェル100bは、1つの開放側部を備えた全体として3つの側部付きチャネル構造体を有する一体形コンポーネントである。第2のシェル100bの底面200bが2つの反対側の側壁202a,204b内に延びている。第1のシェルの開放側部に沿う2つの反対側の側壁202a,204bの縁部は、第2のリム108bを構成している。第2のリム108bは、第1のシェル100aが第2のシェル100bにしっかりと固定されると、第1のリム108a内に入れ子状に嵌まり込むよう形作られている。全体として3つの側部付きチャネル構造体は、ビーム部分102a,102bの長さに沿って延びて第1のクラッシュボックス部分104a,104b及び第2のクラッシュボックス部分106a,106bを貫通している。当然のことながら、本明細書において用いられている「頂」及び「底」という用語は、図2との関連で定められており、これらの用語は、取り付け状態にあるときにクラッシュマネージメントシステムの所要の向きを意味しているものではないことは理解されるべきである。
【0017】
オプションとして、第1のクラッシュボックス部分104a,104b及び第2のクラッシュボックス部分106a,106bは、衝突の際にホールディング(折り畳み)挙動を最適化するよう「ビード」(図示せず)を備えている。
【0018】
図1のクラッシュマネージメントシステムを形成する方法は、平べったいシート鋼の第1のブランクを炉内で加熱してオーステナイト状態にするステップ、第1のブランクを冷却状態の1対の付形ツール内に移動させるステップ及び次に高温状態の第1のブランクを第1のシェル100aの形状にプレス加工するステップを有する。付形された第1のシェル100aをビーム部分102aが硬化して引張強度が約1300N/mm2〜約1600N/mm2の本質的にマルテンサイト組織になるまでツール内に維持する。第1のシェル100aがツール内に維持されている時間の間、第1のクラッシュボックス部分104a及び第2のクラッシュボックス部分106aに隣接して位置する各ツールの一部分を第1のクラッシュボックス部分104a及び第2のクラッシュボックス部分106aが迅速に冷えるのが阻止されて約200N/mm2〜約450N/mm2の降伏強度に達するに過ぎないような温度に維持する。特定の且つ非限定的な例を挙げると、熱を第1のクラッシュボックス部分104a及び第2のクラッシュボックス部分106aに隣接して位置する各ツールの部分に加える(例えば、カートリッジ型ヒータを用いて)と共に/或いは第1のクラッシュボックス部分104a及び第2のクラッシュボックス部分106aに隣接して位置する各ツールの部分をこれらクラッシュボックス部分からの放熱速度が非断熱部分の放熱速度に対して減少するよう断熱する。
【0019】
同様に、平べったいシート鋼の第2のブランクを炉内で加熱してオーステナイト状態にし、第2のブランクを冷却状態の1対の付形ツール内に移動させ、そして第1のブランクが高温のままの状態で第2のブランクを第2のシェル100bの形状にプレス加工する。付形された第2のシェル100bをビーム部分102bが硬化して引張強度が約1300N/mm2〜約1600N/mm2の本質的にマルテンサイト組織になるまでツール内に維持する。第2のシェル100bがツール内に維持されている時間の間、第1のクラッシュボックス部分104b及び第2のクラッシュボックス部分106bに隣接して位置する各ツールの一部分を第1のクラッシュボックス部分104b及び第2のクラッシュボックス部分106bが迅速に冷えるのが阻止されて約200N/mm2〜約450N/mm2の降伏強度に達するに過ぎないような温度に維持する。特定の且つ非限定的な例を挙げると、熱を第1のクラッシュボックス部分104b及び第2のクラッシュボックス部分106bに隣接して位置する各ツールの部分に加える(例えば、カートリッジ型ヒータを用いて)と共に/或いは第1のクラッシュボックス部分104b及び第2のクラッシュボックス部分106bに隣接して位置する各ツールの部分をこれらクラッシュボックス部分からの放熱速度が非断熱部分の放熱速度に対して減少するよう断熱する。
【0020】
別々に形成された第1のシェル100aと第2のシェル100bを互いに整列させ、次に互いにしっかりと固定する。第1のシェル100aを第2のシェル100bにしっかりと固定する幾つかの非限定的な技術としては、熱的接合(例えば、スポット溶接、金属溶接棒と不活性ガスによる(MIG)溶接(ミグ溶接)、レーザ溶接等)、接着及び機械的結合(例えば、折り曲げ又はリベット止め)が挙げられる。第1の実施形態によれば、第2のシェル100bは、第1のシェル100aにしっかりと固定される閉鎖要素である。
【0021】
次に図3を参照すると、本発明の第2の実施形態としてのクラッシュマネージメントシステムの前から見た斜視図が示されている。クラッシュマネージメントシステムは、第1のシート状金属ブランクから作られた一体形シェル300及び図示しない閉鎖要素を有している。特定の且つ非限定的な例を挙げると、第1及び第2のシート状金属ブランクは、各々、22MnB5ボロンスチール(硼素鋼)から成る。特に、一体形シェル300は、以下のセクションにおいて詳細に説明するように目的に合わせて調整してある焼戻し熱成形法を用いて形成される。
【0022】
一体形シェル300は、高抗張力ビーム部分302を有する。第1の低降伏強度クラッシュボックス部分304がビーム部分の第1の端部の近くでビーム部分302と一体に形成され、第2の低降伏強度クラッシュボックス部分306がビーム部分の第2の端部の近くでビーム部分302と一体に形成されており、第2の端部は、第1の端部と反対側に位置している。ビーム部分302の引張強度の代表的な値は、約1300N/mm2〜約1600N/mm2である。第1及び第2のクラッシュボックス部分304,306の降伏強度の代表的な値は、約200N/mm2〜約450N/mm2である。クラッシュボックス部分の降伏強度は、性能要件に応じて所望の値を達成するよう熱成形プロセスの間に調節可能である。一体形シェル300を形成するために用いられる熱成形プロセスの性状に起因して、ビーム部分302の高抗張力材料と第1のクラッシュボックス部分304,306の低降伏強度材料との間には移行ゾーンが存在する。
【0023】
次に図4aを参照すると、図3のクラッシュマネージメントシステムの後ろから見た斜視図が示されている。図4aにも又、閉鎖要素400が示されている。具体的に説明すると、閉鎖要素400は、中間(ミッドレンジ)強度を有する冷間型打ち部品である。具体的に説明すると、閉鎖要素の特性は、クラッシュボックス部分304,306の特性とほぼ同じである。
【0024】
また、図4bを参照すると、破線の円内に位置する図4aの部分の拡大詳細図が示されている。一体形シェル300は、1つの開放側部を備えた全体として3つの側部付きチャネル構造体を有する一体形コンポーネントである。一体形シェル300の頂面402が2つの反対側の側壁404,406内に延びている。第1のシェルの開放側部に沿う2つの反対側の側壁の縁部は、リム408を構成している。全体として3つの側部付きチャネル構造体は、ビーム部分302の長さに沿って延びて第1及び第2のクラッシュボックス部分304,30を貫通している。また、図4bに示されているように、閉鎖要素400は、閉鎖要素400を一体形シェル300のリム408にしっかりと固定する際に用いられる周辺フランジ410を有している。当然のことながら、ここで用いられている「頂」という用語は、図4との関連で定められており、これらの用語は、取り付け状態にあるときにクラッシュマネージメントシステムの所要の向きを意味しているものではないことは理解されるべきである。
【0025】
また、図4cを参照すると、他の破線の円内に位置する図4aの一部分の拡大詳細図が示されている。図4cは、クラッシュボックスとビーム部分との間のコーナー部にオプションとして成形性の理由で切り欠かれる(切り欠き412)のが良いことを示している。
【0026】
オプションとして、第1及び第2のクラッシュボックス部分304,306は、衝突の際にホールディング(折り畳み)挙動を最適化するよう「ビード」(図示せず)を備えている。
【0027】
図3のクラッシュマネージメントシステムを形成する方法は、平べったいシート鋼の第1のブランクを炉内で加熱してオーステナイト状態にするステップ、第1のブランクを冷却状態の1対の付形ツール内に移動させるステップ及び次に高温状態の第1のブランクを一体形シェル300の形状にプレス加工するステップを有する。付形された一体形シェル300をビーム部分302が硬化して引張強度が約1300N/mm2〜約1600N/mm2の本質的にマルテンサイト組織になるまでツール内に維持する。一体形シェル300がツール内に維持されている時間の間、第1及び第2のクラッシュボックス部分304,306に隣接して位置する各ツールの一部分を第1及び第2のクラッシュボックス部分304,306が迅速に冷えるのが阻止されて約200N/mm2〜約450N/mm2の降伏強度に達するに過ぎないような温度に維持する。特定の且つ非限定的な例を挙げると、熱を第1及び第2のクラッシュボックス部分304,306に隣接して位置する各ツールの部分に加える(例えば、カートリッジ型ヒータを用いて)と共に/或いは第1及び第2のクラッシュボックス部分304,306に隣接して位置する各ツールの部分をこれらクラッシュボックス部分からの放熱速度が非断熱部分の放熱速度に対して減少するよう断熱する。
【0028】
閉鎖要素400を別個に、適当な中間強度を鋼材から冷間型打ちする。次に、閉鎖要素400のフランジ410を一体形シェル300の開放側部に沿ってリム408と整列させ、そして閉鎖要素400を一体形シェル300にしっかりと固定する。一体形シェル300を閉鎖要素にしっかりと固定する幾つかの非限定的な技術としては、熱的接合(例えば、スポット溶接、金属溶接棒と不活性ガスによる(MIG)溶接(ミグ溶接)、レーザ溶接等)、接着及び機械的結合(例えば、折り曲げ又はリベット止め)が挙げられる。
【0029】
図5を参照すると、本発明の実施形態としての方法の単純化されたフローチャートが示されている。ステップ500において、第1のシェルを熱成形プロセスにより第1のシート状金属ブランクから形成し、第1のシェルは、高抗張力ビーム部分並びにこのビーム部分と一体に形成されていて、ビーム部分の第1の端部の近くに位置する第1の低降伏強度クラッシュボックス部分及びビーム部分と一体に形成されていて、ビーム部分の第2の端部の近くに位置する第2の低降伏強度クラッシュボックス部分を有し、第1のシェルは、ビーム部分並びに第1及び第2のクラッシュボックス部分の各々に沿って連続的に延びる開放フェースを有する。ステップ502において、閉鎖要素を第2のシート状金属ブランクから形成する。ステップ504において、閉鎖要素を第1のシェルの開放フェースに隣接してしっかりと固定する。
【0030】
図6を参照すると、本発明の実施形態としての方法の単純化されたフローチャートが示されている。ステップ600において、第1のシート状金属ブランクを少なくとも金属のオーステナイト化温度まで加熱する。ステップ602において、オーステナイト状態のブランクを1対の冷却されたツールで熱成形して1つの開放側部を備えた全体として3つの側部付きチャネル構造体を有する第1の一体形ビームボックスコンポーネントを形成する。ステップ604において、熱成形プロセス中、形成されたコンポーネントのビーム部分を、このビーム部分を引張強度が約1300N/mm2〜約1600N/mm2の本質的にマルテンサイトの組織に焼入れするほど十分迅速な第1の速度で冷却するステップ及び形成されたコンポーネントのクラッシュボックス部分を、このクラッシュボックス部分が約200N/mm2〜450N/mm2の降伏強度を達成するよう第1の速度よりも遅い第2の速度で冷却する。ステップ606において、閉鎖要素を第2のシート状金属ブランクから形成する。ステップ608において、閉鎖要素を第1の一体形ビームボックスコンポーネントの開放側部に沿ってしっかりと固定する。
【0031】
本発明の種々の実施形態としてのクラッシュマネージメントシステムの説明では、このクラッシュマネージメントシステムを車両シャーシの長手方向部材に固定するため又は緩衝要素又はバンパーカバーをクラッシュマネージメントシステムに固定するために用いられる慣例の取り付け構造体についての言及が省かれている。それにもかかわらず、当業者であれば、添付の図面に提供されている種々の図に基づいてこのような取り付け構造体に関する要件を理解するであろう。
【0032】
更に、目的に合わせて定めた強度特性を最終のコンポーネントに与える方法について1つの特定の且つ非限定的な方法としてのみ説明するが、この場合、ブランクをオーステナイト状態に一様に加熱し、選択した部分を成形中、結果としてこれら選択した部分の方が他の部分よりも強度が低くなるような速度で冷却する。オプションとして、ブランクの幾つかの部分だけを当初オーステナイト状態に加熱し、選択した部分を加熱から遮蔽するか或いは低温環境(例えば、炉の外部又は低温の炉部分内に)位置させたままにし、その結果、選択した部分の材料のオーステナイト化温度を超えないようにする。さらにオプションとして、ブランクを形成し、選択した部分を次にオーステナイト状態に加熱し(例えば、誘導加熱によって)、次に、急冷してこのような選択した部分に高い強度が達成されるようにする。さらにオプションとして、コンポーネント全体を急冷により形成し、次に、選択した部分をこれら選択した部分に相変化を引き起こすのに十分高い温度まで加熱し、次に、結果的に非加熱部分に対して選択した部分の材料の軟化が生じるようにする速度での制御された冷却を行う。
【0033】
性能要件に応じて、第1及び第2のクラッシュボックス部分の降伏強度は、約200N/mm2〜450N/mm2の範囲から外れていても良い。この範囲は、現在では、許容可能な性能を提供すると考えられているが、ビームボックス型クラッシュマネージメントコンポーネントの許容可能な性能を達成する厳格な要件としては見なされるべきでない。
【0034】
本発明の範囲から逸脱しないで多くの他の実施形態を想到することができる。
図1
図2
図3
図4a-4c】
図5
図6