特許第6092778号(P6092778)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092778
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】有害生物防除剤の製造法
(51)【国際特許分類】
   C07D 213/74 20060101AFI20170227BHJP
   C07D 401/06 20060101ALI20170227BHJP
   C07D 417/06 20060101ALI20170227BHJP
   A01P 7/04 20060101ALN20170227BHJP
   A01N 43/40 20060101ALN20170227BHJP
   A01N 43/78 20060101ALN20170227BHJP
   A01P 7/02 20060101ALN20170227BHJP
   A01N 43/54 20060101ALN20170227BHJP
【FI】
   C07D213/74
   C07D401/06
   C07D417/06
   !A01P7/04
   !A01N43/40 101Q
   !A01N43/78 A
   !A01P7/02
   !A01N43/54 A
【請求項の数】11
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2013-531274(P2013-531274)
(86)(22)【出願日】2012年8月24日
(86)【国際出願番号】JP2012071399
(87)【国際公開番号】WO2013031671
(87)【国際公開日】20130307
【審査請求日】2015年5月1日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2011/069352
(32)【優先日】2011年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-43880(P2012-43880)
(32)【優先日】2012年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006091
【氏名又は名称】Meiji Seikaファルマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001047
【氏名又は名称】特許業務法人セントクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 希
(72)【発明者】
【氏名】福田 芳正
(72)【発明者】
【氏名】橘田 繁輝
(72)【発明者】
【氏名】大野 育也
【審査官】 安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−150275(JP,A)
【文献】 特開平05−078323(JP,A)
【文献】 特開平03−190859(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/051704(WO,A1)
【文献】 特開2006−225331(JP,A)
【文献】 特開2012−176900(JP,A)
【文献】 特表2012−530763(JP,A)
【文献】 特許第4993641(JP,B2)
【文献】 KROHNKE,F. et al,Imidazopyridines and related ring systems. II. Syntheses of imidazopyridines. 2,Chemische Berichte,1955年,Vol.88,p.ll03-8
【文献】 PIETRZYCKI,W. et al,Tautomerism and rotamerism in 2-(methylamino)-, 2-anilino-, 2-acetamido-, and 2-benzamidopyridine,Bulletin des Societes Chimiques Belges,1993年,Vol.102, No.11-12,p.709-17
【文献】 Abarghaz, M.,Regioselective Alkylation of the Exocyclic Nitrogen of Heterocyclic Amidines via the Mitsunobu Reaction,Tetrahedron Letters,1995年,Vol.36, No.36,p.6463-6466
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A01N
CAplus/CASREACT/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物の製造方法であって、
【化1】
[式中、Arは、置換されていてもよいフェニル基、または置換されていてもよい5〜6員のヘテロ環を示し、Rは置換されていてもよいC1−6のアルキル基、Yは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルキルオキシ基、シアノ基、ホルミル基、ニトロ基を示す]、
下記反応式に示されるように、
【化2】
式(A)で表される化合物(Yは上記と同じ意味を表す)の2位アミノ基を、RCOR(ここで、Rは上記と同じ意味を表し、Rは、(1)トリフルオロアセトキシ基、(2)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルオキシ基、またはフェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基により置換されていてもよいベンジルオキシ基、(3)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基(但し、トリフルオロアセトキシ基を除く)、フェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基により置換されていてもよいフェニルカルボニルオキシ基、(4)水酸基、(5)ハロゲン原子を表す)で示されるアシル化剤を用いて、塩基の非存在下で、縮合剤、五酸化リン、硫酸、ポリリン酸、チオニルクロリド、オキシ塩化リンまたはシュウ酸ジクロライドの存在下又は非存在下で、アシル化することによって式(B)で表される化合物を製造する工程、および
式(B)で表される化合物の1位窒素原子をさらにAr−CH−R(ここで、Arは上記と同じ意味を表し、Rはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルスルホキシ基、ハロゲン原子またはメチル基で置換されていてもよいフェニルスルホキシ基を表す)を用いてアルキル化する工程を含んでなる、方法。
【請求項2】
Arが6-クロロ-3-ピリジル基であり、Yが水素原子である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
下記式(Ia)で表される化合物の製造方法であって
【化3】
[式中、Rは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基を示し、Xは炭素原子または窒素原子を示し、R1aはハロゲンに置換されたC1−6アルキル基を示す]、
下記反応式に示されるように、
【化4】
式(Aa)で表される化合物の1位窒素原子を、式(Ca)で表される化合物(ここで、R3、Xは上記と同じ意味を表し、Rはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルスルホキシ基、ハロゲン原子またはメチル基で置換されていてもよいフェニルスルホキシ基を表す)を用いてアルキル化することによって式(Ba)で表される化合物を製造する工程、および
式(Ba)で表される化合物のイミノ基を、R1aCOR2a(ここで、R1aは上記と同じ意味を表し、R2aは、(1)トリフルオロアセトキシ基、(2)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルオキシ基、またはフェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基により置換されていてもよいベンジルオキシ基、(3)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基(但し、トリフルオロアセトキシ基を除く)、フェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基により置換されていてもよいフェニルカルボニルオキシ基、(4)水酸基、(5)ハロゲン原子を表す)で示されるアシル化剤を用いて、塩基の非存在下で、縮合剤、五酸化リン、硫酸、ポリリン酸、チオニルクロライド、オキシ塩化リンまたはシュウ酸ジクロライドの存在下又は非存在下で、アシル化する工程を含んでなる、方法。
【請求項4】
が6-クロロ基であり、Xが炭素原子である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
またはR1aがトリフルオロメチル基である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
またはR1aがトリフルオロメチル基であり、RまたはR2aがトリフルオロアセトキシ基、エトキシ基、水酸基、塩素原子である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
CORまたはR1aCOR2aは、無水トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸クロライド及び混合酸無水物からなる群から選択される少なくとも一のアシル化剤であり、式(A)で表される化合物または式(Ba)で表される化合物に対して、1.0〜5.0当量を用いる請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
CORまたはR1aCOR2aが無水トリフルオロ酢酸であり、式(A)で表される化合物または式(Ba)で表される化合物に対して、1.0〜1.5当量を用いる請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
CORまたはR1aCOR2aがトリフルオロ酢酸エチルであり、式(A)で表される化合物または式(Ba)で表される化合物に対して、1.0〜5.0当量を用いる請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
CORまたはR1aCOR2aがトリフルオロ酢酸クロライドであり、式(A)で表される化合物または式(Ba)で表される化合物に対して、1.0〜3.0当量を用いる請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
CORまたはR1aCOR2aがトリフルオロ酢酸であり、式(A)で表される化合物または式(Ba)で表される化合物に対して、1.0〜3.0当量を用い、
さらにチオニルクロリド、オキシ塩化リン、パラトルエンスルホン酸、三フッ化ホウ素、および鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、リチウムまたはマグネシウムのハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩または酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物を、前記トリフルオロ酢酸と同時に用いる請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2−アシルイミノピリジン構造を有する新規有害生物防除剤の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
これまでに多くの有害生物防除剤が見出されてきているが、薬剤感受性の低下の問題、効果の持続性、使用時の安全性などにより、いまなお新規の薬剤が求められている。
【0003】
とりわけ、東アジア、東南アジアの水稲栽培においては、非特許文献1において示されるように、イミダクロプリドに代表されるネオニコチノイド類、およびフィプロニルに代表されるフェニルピラゾール系薬剤等を含む主要殺虫剤に対して薬剤抵抗性を発達させたウンカ類による被害が顕在化しており、抵抗性を発達させたウンカ類に対する特効薬が期待されている。また、それら新規薬剤の有害生物防除剤として求められる量を安定に、安価に提供することが求められている。
【0004】
2−アシルイミノピリジン構造を有する有害生物防除剤の製造方法としては特許文献1〜3、非特許文献2が知られている。特許文献1には、後述の式(I)で示される化合物と同様の環構造を有する除草剤が開示されている。特許文献2、並びに特許文献3には、式(I)で示される化合物と同様の環構造を有する殺虫剤が開示されている。非特許文献2には、式(I)で示される化合物と類似の環構造を有する化合物が、合成中間体として開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献2に記載されている製造方法は、後述の式(Ba)で示される化合物を中間体とする製造方法であり、後述の式(B)で示される化合物を中間体とする製造については記載がない。また、特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献2には、式(Ba)で示される化合物を中間体とする製造方法が開示されているが、後述の式(Ia)で示される化合物の製造に関する具体的な記載はない。また、N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドについては、構造式は開示され、その化合物の物性値として屈折率がnD(25.5)=1.4818であると記載されているが(特許文献2の第1表 化合物番号3)、有害生物防除活性が認められた化合物群のリストに含まれていない(特許文献2の第2表、第3表)。
【0006】
さらに、特許文献3には、N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの構造式は開示され、その化合物の物性値として融点が60〜62℃であると記載されているが(特許文献3の表7の実施例番号12)、実施例において有害生物防除活性があった化合物の例に挙げられていない。特許文献2および特許文献3には、N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの具体的な製造方法の開示はない。
【0007】
また、非特許文献3には、2−アセタミドピリジンの互変異性体としてN−(ピリジン−2(1H)−イリデン〕−アセタミドが開示されているが、その具体的な製造方法や、ハロアシル誘導体の製造方法は記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第432600号明細書
【特許文献2】特開平05−78323号公報
【特許文献3】欧州特許出願公開第268915号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Masaya Matsumuraら、Pest Management Science、2008年、64巻、11号、1115〜1121ページ
【非特許文献2】Botho Kickhofenら、Chemische Berichte、1955年、88巻、1103〜1108ページ
【非特許文献3】Wladysl,aw Pietrzyckiら、Bulletin des Societes Chimiques Belges、1993年、102巻、11−12号、709〜717ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
後述の式(I)で示される2−アシルイミノピリジン構造を有する有害生物防除剤、特にはN−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドを有害生物防除剤として求められる量を安定して、安価に提供する製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、第一の発明によれば、本発明者らは、式(A)で表わされる化合物を出発物質として式(B)で表わされる化合物を中間体とすることで、目的とする有用な下記式(I)で示される化合物を得ることにより、本発明を完成させた。
【0012】
下記式(I)で表される化合物の製造方法であって、
【0013】
【化1】
【0014】
[式中、Arは、置換されていてもよいフェニル基、または置換されていてもよい5〜6員のヘテロ環を示し、Rは置換されていてもよいC1−6のアルキル基、Yは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルキルオキシ基、シアノ基、ホルミル基、ニトロ基を示す]、
下記反応式
【0015】
【化2】
【0016】
[式中、RおよびYは上記と同じ意味を表し、Rは、(1)トリフルオロアセトキシ基、(2)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルオキシ基、またはフェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基により置換されていてもよいベンジルオキシ基、(3)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基(但し、トリフルオロアセトキシ基を除く)、フェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基により置換されていてもよいフェニルカルボニルオキシ基、(4)水酸基、または(5)ハロゲン原子を表し、Rはハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルスルホキシ基、ハロゲン原子またはメチル基で置換されていてもよいフェニルスルホキシ基を表す]
に示されるように、
【0017】
【化3】
【0018】
式(A)で表される化合物の2位アミノ基に、RCORで示されるアシル化剤を用いてアシル化することによって、式(B)で表わされる化合物を製造する工程、および
式(B)で表される化合物の1位窒素原子をさらにAr−CH−Rを用いてアルキル化する工程を含む、方法を提供するものである。
【0019】
第二の発明によれば、前記式(B)で示される有用中間体(ただし、Rがメチル基またはフェニル基であって、Yが水素原子である化合物は除く)、及びその塩が提供される。
【0020】
第三の発明によれば、下記式(Ia)で示される化合物の製造方法であって、
【0021】
【化4】
【0022】
[式中、Rは、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基を示し、Xは炭素原子または窒素原子を示し、R1aはハロゲンに置換されたC1−6アルキル基を示す]
下記反応式
【0023】
【化5】
【0024】
[ここで、R1a、R、RおよびXは、上記と同じ意味を表し、R2aは(1)トリフルオロアセトキシ基、(2)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルオキシ基、またはフェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基により置換されていてもよいベンジルオキシ基、(3)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基(但し、トリフルオロアセトキシ基を除く)、フェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基により置換されていてもよいフェニルカルボニルオキシ基、(4)水酸基、または(5)ハロゲン原子を示す]、によって示される製造方法が提供される。
【0025】
第四の発明によれば、下記反応式により製造された、式(I’)で示される化合物が提供される
【0026】
【化6】
【0027】
[ここで、式(I’)で示される化合物は、以下の(a)あるいは(b)、または(a)および(b)の物性を有するN−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドである。(a)粉末X線回折において、少なくとも下記回折角(2θ)に回折角ピークを有する。回折角:8.6±0.2°、14.2±0.2°、17.5±0.2°、18.3±0.2°、19.7±0.2°、22.3±0.2°、30.9±0.2°、35.3±0.2°
(b)示差走査熱量分析(DSC)において、融点が155〜158℃を示す。]。
【発明の効果】
【0028】
本発明によって、有害生物防除剤として有用な2−アシルイミノピリジン誘導体を必要に応じてワンポットで効率的に収率良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】第一の製法で調製した、N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの結晶の粉末X線結晶解析の結果を示すグラフである。
図2】第一の製法で調製した、N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの結晶の示差走査熱量分析の結果を示すグラフである。
図3】第二の製法で調製した、N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの結晶の粉末X線結晶解析の結果を示すグラフである。
図4】第二の製法で調製した、N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの結晶の示差走査熱量分析の結果を示すグラフである。
図5】第三の製法で調製した、N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの結晶の示差走査熱量分析の結果を示すグラフである。
図6】第四の製法で調製した、N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの結晶の粉末X線結晶解析の結果を示すグラフである。
図7】第四の製法で調製した、N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの結晶の示差走査熱量分析の結果を示すグラフである。
図8】第五の製法で調製した、N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの結晶の示差走査熱量分析の結果を示すグラフである。
図9】合成例4で合成した、N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの結晶の粉末X線結晶解析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書において、置換基または置換基の一部としての「アルキル」という用語はそれぞれ、特に定義されていない限り、直鎖状、分岐鎖状、環状またはそれらの組み合わせのアルキルを意味する。
【0031】
本明細書において、「ハロゲン原子」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、ヨードから選択される原子を意味する。
【0032】
本明細書において、塩基の「当量」とは、例えば式(A)で表される化合物1モルに対して炭酸カリウム1モルを用いた場合は2当量であり、水酸化ナトリウムや炭酸水素ナトリウム1モルを用いた場合は1当量であり、有機塩基1モルを用いた場合は1当量である。
【0033】
本明細書において、「塩」とは、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの無機酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ジフルオロ酢酸塩、ジクロロ酢酸塩などの有機酸塩などを示す。
【0034】
本明細書において、Rが水酸基を示す場合、アシル化剤RCORと同時に用いられる「試薬」は、その水和物であってもよい。
【0035】
本明細書において、「縮合剤」とは、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、1,1’−カルボニルジイミダゾール、ジピリジルジスルフィド、ジイミダゾリルジスルフィド、1,3,5−トリクロロベンゾイルクロリド、1,3,5−トリクロロベンゾイル無水物、PyBop(登録商標、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム)、PyBrop(登録商標、ヘキサフルオロリン酸ブロモトリ(ピロリジノ)ホスホニウム)等のエステル・アミド等のカルボン酸誘導体を合成するための反応試剤を示す。
【0036】
本明細書において、置換基に付される「Ca−b」との記号は、その置換基に含まれる炭素原子の数がa個からb個までであることを意味する。また、例えば、「Ca−bアルキルカルボニルオキシ」という場合の「Ca−b」とは、カルボニルオキシ部分の炭素原子を除いた、アルキル部分の炭素原子の数がa個からb個までであることを意味する。
【0037】
Arは、置換されていてもよいフェニル基、または置換されていてもよい5〜6員のヘテロ環を示し、5〜6員のヘテロ環としては、ピリジン、ピリミジン、チアゾール、テトラヒドロフラン、フランなどが挙げられ、好ましくは、3-ピリジル基、5-ピリミジル基、3-チアゾリル基、5-チアゾリル基が挙げられ、より好ましくは3-ピリジル基である。前記フェニル基又はヘテロ環に導入されていてもよい置換基としては、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキルオキシ基、水酸基、シアノ基、ニトロ基が挙げられ、好ましくは、ハロゲン原子、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−4アルキル基、特に好ましくは塩素原子である。置換されていてもよいフェニル基、および置換されていてもよい5〜6員のヘテロ環としては、具体的にはフェニル基、3-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、3-シアノフェニル基、4-シアノフェニル基、3-ニトロフェニル基、4-ニトロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、4-メチルフェニル基、4-メトキシフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、2,4-ジブロモフェニル基、4-フルオロフェニル基、4-ブロモフェニル基、3-ニトロ-5-ブロモフェニル基、3,5-ビストリフルオロメチルフェニル基、6-クロロ-3-ピリジル基、2-クロロ-5-チアゾリル基、6-クロロ-5-フルオロ-3-ピリジル基、6-ブロモ-3-ピリジル基、6-フルオロ-3-ピリジル基、5,6-ジクロロ-3-ピリジル基、6-トリフルオロメチル-3-ピリジル基であり、好ましくは6-クロロ-3-ピリジル基、6-フルオロ-3-ピリジル基、6-クロロ-5-フルオロ-3-ピリジル基、6-ブロモ-3-ピリジル基であり、特に好ましくは6-クロロ-3-ピリジル基である。
【0038】
は、置換されていてもよいC1−6アルキル基を示し、前記C1−6アルキル基に導入されていてもよい置換基とは、ハロゲン原子、C1−6ハロゲン化アルキルオキシ基、シアノ基、ニトロ基、水酸基が挙げられ、具体的にはトリフルオロメチル基、ジフルオロクロロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、クロロメチル基、ジフルオロエチル基、ジクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ジフルオロシクロプロピル基、ブロモジフルオロメチル基、トリフルオロメトキシメチル基等を示し、好ましくはトリフルオロメチル基、ジフルオロクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基を示し、より好ましくはトリフルオロメチル基を示す。
【0039】
1aは、ハロゲンによって置換されたC1−6アルキル基を示し、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ジフルオロクロロメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、ジブロモメチル基、クロロメチル基、ジフルオロエチル基、ジクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ジフルオロシクロプロピル基等が挙げられ、好ましくはトリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、ジフルオロクロロメチル基、クロロメチル基、ペンタフルオロエチル基であり、より好ましくはトリフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、ジフルオロクロロメチル基、クロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、特に好ましくはトリフルオロメチル基である。
【0040】
Yは、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルキル基、ハロゲン原子により置換されていてもよいC1−6アルキルオキシ基、シアノ基、ホルミル基、ニトロ基を示し、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、水酸基を示し、より好ましくは水素原子を示す。
【0041】
およびR2aは、(1)トリフルオロアセトキシ基、(2)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルオキシ基、またはフェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基により置換されていてもよいベンジルオキシ基、(3)ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基(但し、トリフルオロアセトキシ基を除く)、フェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基で置換されていてもよいフェニルカルボニルオキシ基、(4)水酸基、または(5)ハロゲン原子を示す。
【0042】
は、ピリジン環またはピリミジン環の炭素原子に置換する置換基を示し、その数はピリジンの場合、0から4であり、ピリミジン環の場合、0から3であることは明らかである。Rで示される置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基であり、それぞれが同一でも異なっていてもよい。
【0043】
はハロゲン、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルスルホキシ基、ハロゲン原子、メチル基で置換されていてもよいフェニルスルホキシ基を表す。
【0044】
式(I)および(Ia)で示される化合物としては、好ましくは化合物番号1:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミド、化合物番号2:N−〔1−((6−クロロ−5−フルオロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミド、化合物番号19:N−〔1−((6−フルオロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミド、化合物番号3:N−〔1−((6−ブロモピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミド、化合物番号8:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2−ジフルオロアセタミド、化合物番号4:2−クロロ−N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2−ジフルオロアセタミド、化合物番号7:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパナミド、化合物番号6:N−〔1−((2−クロロピリミジン−5−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドである。
【0045】
式(I)および式(Ia)で示される化合物の中で、特に好ましい例としては、式(I’)で示される化合物、すなわち、以下(a)あるいは(b)、または(a)および(b)の物性を有するN−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミド(ただし、特許文献2に記載のnD(25.5)=1.4818を示す化合物を除く)である。
(a)粉末X線回折において、少なくとも下記回折角(2θ)に回折角ピークを有する。回折角:8.6±0.2°、14.2±0.2°、17.5±0.2°、18.3±0.2°、19.7±0.2°、22.3±0.2°、30.9±0.2°、35.3±0.2°
(b)示差走査熱量分析(DSC)において、融点が155〜158℃を示す。
【0046】
式(B)で表される化合物の好ましい例としては、2,2,2−トリフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミド、2−クロロ−2,2−ジフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミド、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)プロパナミド、2,2−ジフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミドが挙げられ、より好ましい例としては次式(B1)で示される2,2,2−トリフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミドである。
【0047】
【化7】
【0048】
製造方法
本発明を以下のスキームに沿ってさらに詳細に説明する。
【0049】
【化8】
【0050】
[上記のスキームにおいて、Ar、Y、R、R、Rは、上記と同じ意味を表す]
また、上記スキームに示される、式(B)で表される化合物は、後処理または単離することなく、次の工程に用いても良い。
【0051】
1-1:式(A)で表される化合物からの式(B)で表される化合物の製造
式(A)で表される化合物は、市販されている化合物または例えば、Journal of labeled compounds &
radiopharmaceuticals(1987),24(2)119-123に記載の方法で得ることができる。
【0052】
式(A)で表される化合物から式(B)で表される化合物を製造する方法としては、無溶媒あるいは反応に影響しない溶媒中で、式(A)で表される化合物に塩基存在下または非存在下、アシル化剤RCOR(R、Rは上記で定義したことと同じ意味を示す)と反応させることで得ることができる。
【0053】
ここで言う試薬の当量数とは全て式(A)で表される化合物に対する当量数である。
【0054】
使用可能な溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、アセトニトリルなどの非プロトン性極性有機溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、水、または、これらの混合溶媒が挙げられる。
【0055】
使用可能な塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなどの無機塩基、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、tert-ブトキシカリウムなどのアルコラートが挙げられる。塩基は使用しなくてもよいが、塩基存在下に行う場合の使用量は、0.01〜20.0当量用いることができる。
【0056】
アシル化剤RCORとしては、無水トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸クロライド、または混合酸無水物が挙げられる。また、このようなアシル化剤は単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、好ましくは、無水トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸エチル、またはトリフルオロ酢酸クロライドを使用することができる。また、Rが水酸基を示すときは、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、1,1’−カルボニルジイミダゾール、ジピリジルジスルフィド、ジイミダゾリルジスルフィド、1,3,5−トリクロロベンゾイルクロリド、1,3,5−トリクロロベンゾイル無水物、PyBop(登録商標、ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム)、PyBrop(登録商標、ヘキサフルオロリン酸ブロモトリ(ピロリジノ)ホスホニウム)等の縮合剤、五酸化リン、硫酸、ポリリン酸、塩化チオニル、オキシ塩化リン、シュウ酸ジクロライド、三フッ化ホウ素、パラトルエンスルホン酸、または鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、リチウム若しくはマグネシウムのハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩若しくは酸化物等の試薬を同時に用いることによって行うことができる。また、これら試薬は単独又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、リチウムまたはマグネシウムのハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩または酸化物の好ましい例としては、塩化亜鉛、塩化銅、塩化マグネシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウムが挙げられる。また、これら金属化合物は、その無水和物であってもよく、水和物であってもよい。アシル化剤の使用量は、0.5〜10.0当量が好ましく、1.0〜5.0当量がより好ましい。
【0057】
反応温度は、−80℃〜200℃の範囲とすることが好ましい。反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましい。
【0058】
好ましい態様としては、
(1)Rがトリフルオロアセトキシ基を示す場合、具体的にはアシル化剤として無水トリフルオロ酢酸を用いる場合、好ましい溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒が挙げられ、より好ましくはトルエンである。反応は塩基非存在下で行うことが好ましいが、塩基を用いる場合に好ましい塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられ、より好ましくは炭酸カリウムである。アシル化剤の使用量は、好ましくは1.0〜5.0当量であり、より好ましくは1.0〜1.5当量である。塩基を使用する場合の塩基の使用量は、好ましくは1.0〜4.5当量であり、より好ましくは1.0〜3.0当量である。反応温度は、−20℃〜50℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは−10℃〜30℃である。反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましく、0.5時間〜4時間の範囲とすることがより好ましい。特に好ましい条件は、アシル化剤として無水トリフルオロ酢酸、溶媒としてトルエンを用い、アシル化剤の使用量は1.0〜1.5当量であり、反応温度は−10℃〜30℃、反応時間は0.5〜4時間の条件である。塩基は非存在下であるか、塩基を用いる場合は炭酸カリウムを用い、その当量数は1.0〜3.0当量を用いる条件である。
【0059】
(2)Rがハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルオキシ基、またはフェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基により置換されていてもよいベンジルオキシ基を示す場合、具体的にはトリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸プロピル、特に好ましくはトリフルオロ酢酸エチル等を用いる場合、好ましい溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、アセトニトリルなどの非プロトン性極性有機溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、および、これらの溶媒とトルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒との混合溶媒であり、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、またはN,N−ジメチルホルムアミドとトルエンの混合溶媒である。反応は塩基非存在下で行うことが好ましいが、塩基を用いる場合に好ましい塩基としては、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられ、より好ましくは炭酸カリウム、ジメチルアミノピリジンである。アシル化剤の使用量は、好ましくは1.0〜5.0当量であり、より好ましくは1.5〜5.0当量である。塩基を使用する場合の塩基の使用量は、好ましくは0.01〜3.0当量であり、より好ましくは0.01〜2.0当量である。反応温度は、20℃〜100℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは40℃〜80℃である。反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましく、1時間〜2日間の範囲とすることがより好ましい。
【0060】
特に好ましい条件は、アシル化剤としてトリフルオロ酢酸エチル、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド、またはN,N−ジメチルホルムアミドとトルエンの混合溶媒を用い、アシル化剤の使用量は1.5〜5.0当量であり、反応温度は40℃〜80℃、反応時間は2時間〜2日間の条件である。塩基は非存在下であるか、塩基を用いる場合は炭酸カリウムまたはジメチルアミノピリジンを用い、その当量数は0.01〜2.0当量を用いる条件である。
【0061】
(3)Rが、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基(但し、トリフルオロアセトキシ基を除く)、フェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基で置換されていてもよいフェニルカルボニルオキシ基を示す場合、具体的にはピバロイル基が挙げられる。反応温度は、−20℃〜50℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは−10℃〜30℃である。反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましく、0.5時間〜4時間の範囲とすることがより好ましい。
【0062】
(4)Rが水酸基を示す場合、具体的なアシル化剤としてはトリフルオロ酢酸、ジフルオロクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジブロモ酢酸、クロロ酢酸、ジフルオロプロピオン酸、ジクロロプロピオン酸、2,2,2-トリフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ジフルオロシクロプロパンカルボン酸等が挙げられ、好ましくはトリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸、ジフルオロクロロ酢酸、クロロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸であり、より好ましくはトリフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、ジフルオロクロロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸であり、特に好ましくはトリフルオロ酢酸である。トリフルオロ酢酸を用いる場合、好ましい溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒およびN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、アセトニトリルなどの非プロトン性極性有機溶媒が挙げられ、より好ましくはトルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエンとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、キシレンとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、キシレンとN−メチル−2−ピロリジノンの混合溶媒またはキシレンとN,N−ジメチルアセトアミドの混合溶媒である。同時に用いられる試薬としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、五酸化リン、硫酸、ポリリン酸、チオニルクロライド、オキシ塩化リン、シュウ酸ジクロライド等が挙げられ、これらは0.2〜5.0当量を用いることが好ましい。また、同時に用いられる試薬として、塩化亜鉛、塩化銅、塩化マグネシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、三フッ化ホウ素、パラトルエンスルホン酸等を用いる場合は、0.0001〜1.0当量を用いることが好ましい。反応は、五酸化リン、硫酸、ポリリン酸、チオニルクロライド、オキシ塩化リン、シュウ酸ジクロライド、塩化亜鉛、塩化銅、塩化マグネシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、三フッ化ホウ素、パラトルエンスルホン酸を用いる場合は非塩基存在下が好ましく、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いる場合は塩基存在下が好ましい。塩基を用いる場合に好ましい塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられ、より好ましくはトリエチルアミンである。アシル化剤の使用量は、好ましくは1.0〜5.0当量であり、より好ましくは1.0〜3.0当量である。チオニルクロライド、オキシ塩化リン、シュウ酸ジクロライドを用いる場合は、これらの試薬を0.2〜5.0当量用い、反応温度は−30℃〜80℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは−10℃〜40℃である。五酸化リン、硫酸、ポリリン酸を用いる場合は、これらの試薬を0.2〜5.0当量用い、反応温度は−30℃〜200℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは−10℃〜160℃である。N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いる場合は、これらの試薬を0.2〜5.0当量用い、反応温度は−30℃〜80℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは−10℃〜40℃であり、トリエチルアミンを塩基として、0.2〜5.0当量用いる条件が好ましい。塩化亜鉛、塩化銅、塩化マグネシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、三フッ化ホウ素、パラトルエンスルホン酸を用いる場合は、これらの試薬を0.0001〜1.0当量用い、反応温度は20℃〜200℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは80℃〜160℃である。反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましく、0.5時間〜2日間の範囲とすることがより好ましい。
【0063】
特に好ましい条件は、アシル化剤としてトリフルオロ酢酸、溶媒としてトルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、キシレン、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドとトルエンの混合溶媒、N,N−ジメチルホルムアミドとキシレンの混合溶媒、キシレンとN−メチル−2−ピロリジノンの混合溶媒またはキシレンとN,N−ジメチルアセトアミドの混合溶媒を用い、アシル化剤の使用量は1.0〜3.0当量である。チオニルクロライド、オキシ塩化リン、シュウ酸ジクロライドを用いる場合の特に好ましい条件は、これらの試薬を0.3〜3.0当量用い、非塩基存在下、反応温度は−10℃〜40℃、反応時間は0.5時間〜1日間の条件である。五酸化リン、硫酸、ポリリン酸を用いる場合の特に好ましい条件は、これらの試薬を0.2〜2.0当量用い、反応温度は−10℃〜160℃、反応時間は0.5時間〜1日間の条件である。N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いる場合の特に好ましい条件は、これらの試薬を0.5〜3当量用い、反応温度は−10℃〜40℃であり、トリエチルアミンを塩基として、0.5〜3.0当量用い、反応時間は0.5〜1日間の条件である。塩化亜鉛、塩化銅、塩化マグネシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、三フッ化ホウ素、パラトルエンスルホン酸を用いる場合の特に好ましい条件は、これらの試薬を0.0001〜0.5当量用い、非塩基存在下、反応温度は80℃〜160℃、反応時間は2時間〜2日間の条件である。
【0064】
(5)Rがハロゲン原子を示す場合、具体的にはトリフルオロ酢酸クロリド、トリフルオロ酢酸ブロミド、好ましくはトリフルオロ酢酸クロリドを用いる場合、好ましい溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン系溶媒、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、およびN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、アセトニトリルなどの非プロトン性極性有機溶媒が挙げられ、より好ましくはトルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N―メチル−2−ピロリジノン、またはこれらの混合溶媒である。反応は塩基非存在下で行うことが好ましいが、塩基を用いる場合に好ましい塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられ、より好ましくは炭酸カリウムである。アシル化剤の使用量は、好ましくは1.0〜5.0当量であり、より好ましくは1.0〜3.0当量である。塩基を使用する場合の塩基の使用量は、好ましくは1.0〜5.0当量であり、より好ましくは1.0〜3.0当量である。反応温度は、−80℃〜40℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは−30℃〜30℃である。反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましく、0.5時間〜8時間の範囲とすることがより好ましい。また、Rが塩素原子を示す場合、トリフルオロ酢酸と、チオニルクロリド、オキシ塩化リン、シュウ酸ジクロリド等を、式(A)で表される化合物に反応させる系外で同時に使用して、あらかじめ生成させたRCOClを使用することもできる。
【0065】
特に好ましい条件は、 アシル化剤としてトリフルオロ酢酸クロリド、溶媒としてトルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N―メチル−2−ピロリジノンまたはこれらの混合溶媒を用い、アシル化剤の使用量は1.0〜3.0当量であり、反応温度は−30℃〜30℃、反応時間は0.5時間〜8時間の条件である。塩基は非存在下であるか、塩基を用いる場合は炭酸カリウムを用い、その当量数は1.0〜3.0当量を用いる条件が特に好ましい。
【0066】
式(A)で表される化合物から式(B)で表される化合物を合成した後に、塩基を用いて中和することが可能である。使用可能な塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなどの無機塩基、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、tert-ブトキシカリウムなどのアルコラートが挙げられ、炭酸カリウム、ナトリウムエトキシド、トリエチルアミンが好ましい。
【0067】
1-2:式(B)または式(B’)で表される化合物からの式(I)または式(I’)で表される化合物の製造
式(B)または式(B’)で表される化合物から式(I)または式(I’)で表される化合物を製造する方法としては、無溶媒あるいは反応に影響しない溶媒中で、式(B)または式(B’)で表される化合物に塩基存在下、Ar−CH−R(Ar、Rは上記で定義したことと同じ意味を表す)と反応させることで得ることができる。
【0068】
使用可能な溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリジノン、N−メチル−2−ピペラジノン、N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリルなどの非プロトン性極性有機溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、およびこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくは非プロトン性極性有機溶媒が挙げられる。より好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、または、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリルと芳香族炭化水素系溶媒の混合溶媒であり、特に好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、またはN,N−ジメチルホルムアミドとトルエンの混合溶媒である。
【0069】
塩基存在下に行う場合の使用可能な塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなどの無機塩基、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0] ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0] ノナ−5−エン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ルチジン、コリジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリンなどの有機塩基が挙げられ、好ましくは、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、ピリジン、トリエチルアミンなど挙げられ、より好ましくは、炭酸カリウム、トリエチルアミンが挙げられる。
【0070】
Ar−CH−R(Ar、Rは上記で定義したことと同じ意味を示す)の使用量は、好ましくは式(B)または式(B’)で表わされる化合物に対して0.7〜2.0当量であり、より好ましくは0.8〜1.5当量である。塩基を使用する場合の塩基の使用量は、好ましくは式(B)または式(B’)で表わされる化合物に対して1.0〜10.0当量であり、より好ましくは1.0〜5.0当量である。
【0071】
反応温度は、20℃〜100℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは40℃〜80℃である。反応時間は、0.1時間〜3日間の範囲とすることが好ましく、1時間〜2日間の範囲とすることがより好ましい。
【0072】
特に好ましい条件は、Rが塩素原子、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド、N―メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドとトルエンの混合溶媒、N,N−ジメチルホルムアミドとキシレンの混合溶媒、キシレンとN−メチル−2−ピロリジノンの混合溶媒またはキシレンとN,N−ジメチルアセトアミドの混合溶媒を用い、Ar−CH−Rの使用量は、式(B)または式(B’)で表わされる化合物に対して0.8〜1.5当量であり、反応温度は40℃〜80℃、反応時間は1時間〜2日間の条件であり、塩基は炭酸カリウムまたはトリエチルアミンを1.0〜5.0当量を用いる条件である。
【0073】
式(A)または式(A’)で表される化合物から式(B)または(B’)で表される化合物を経て式(I)または式(I’)で表される化合物を得るワンポット製造
式(A)または式(A’)で表される化合物から式(I)または式(I’)で表される化合物を合成する際、式Bまたは式(B’)で表される化合物を単離することなく、次工程を行い、式(I)または式(I’)で表される化合物を得ることが可能である。
【0074】
具体的には、式(B)または式(B’)で表される反応物をそのまま、または、過剰の試薬を減圧下除去した後、Ar−CH−R(Ar、Rは上記と同じ意味を表す)と塩基を添加し、上記条件で反応させることにより、式(I)または式(I’)で表される化合物が得られる。
【0075】
式(A)または式(A’)で表される化合物から式(B)または式(B’) で表される化合物を経て式(I)または式(I’)で表される化合物を得る方法の好ましい例としては、非塩基存在下で、式(A)または式(A’)で表される化合物を芳香族炭化水素系溶媒または非プロトン性極性溶媒、またはその混合溶媒を用いて、アシル化剤RCORと反応させて式(B)または式(B’)で表される化合物を得た後、芳香族炭化水素系溶媒、または非プロトン性極性有機溶媒、またはこれらの混合溶媒、Ar-CH-Rと塩基を加えて、そのまま、または減圧下芳香族炭化水素系溶媒を留去しながら反応させて式(I)または式(I’)で表される化合物を得る方法である。
【0076】
ワンポット製造における式(A)または式(A’)で表される化合物から式(B)または(B’)で表される化合物の製造
ここで言う試薬の当量数とは、全て式(A)または式(A’)で表される化合物に対する当量数である。式(A)または式(A’)で表される化合物から式(B)または式(B’)で表される化合物を得るためには、RがCFCOO基、OEt基、水酸基または塩素原子であるRCOR、またはCFCORを用いるのが特に好ましい。
【0077】
がCFCOO基(例えば、無水トリフルオロ酢酸)の場合は、溶媒としてトルエンを用い、アシル化剤の使用量は1.0〜1.5当量であり、反応温度は−10℃〜30℃、反応時間は0.5〜4時間の条件であり、塩基は非存在下であるか、塩基を用いる場合は炭酸カリウムを用い、その当量数は1.0〜3.0当量を用いる条件が特に好ましい。RがOEt基(トリフルオロ酢酸エチル)の場合は、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド、またはN,N−ジメチルホルムアミドとトルエンの混合溶媒を用い、アシル化剤の使用量は1.5〜5.0当量であり、反応温度は40〜80℃、反応時間は2時間〜2日間の条件であり、塩基は非存在下であるか、塩基を用いる場合は炭酸カリウムまたはジメチルアミノピリジンを用い、その当量数は0.01〜2.0当量を用いる条件が特に好ましい。
【0078】
が水酸基(例えば、トリフルオロ酢酸)の場合の特に好ましい条件は、溶媒としてトルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、キシレン、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドとトルエンの混合溶媒、N,N−ジメチルホルムアミドとキシレンの混合溶媒、キシレンとN−メチル−2−ピロリジノンの混合溶媒またはキシレンとN,N−ジメチルアセトアミドの混合溶媒を用い、アシル化剤の使用量は1.0〜3.0当量である。チオニルクロライド、オキシ塩化リン、シュウ酸ジクロライドを用いる場合の特に好ましい条件は、これらの試薬を0.3〜3.0当量用い、非塩基存在下、反応温度は−10℃〜40℃、反応時間は0.5時間〜1日間の条件である。五酸化リン、硫酸、ポリリン酸を用いる場合の特に好ましい条件は、これらの試薬を0.5〜2.0当量用い、反応温度は−10℃〜160℃、反応時間は0.5時間〜1日間の条件である。N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いる場合の特に好ましい条件は、これらの試薬を0.5〜3.0当量用い、反応温度は−10℃〜40℃であり、トリエチルアミンを塩基として、0.5〜3.0当量用い、反応時間は0.5〜1日間の条件である。塩化亜鉛、塩化銅、塩化マグネシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、三フッ化ホウ素、パラトルエンスルホン酸を用いる場合の特に好ましい条件は、これらの試薬を0.0001〜0.5当量用い、非塩基存在下、反応温度は80℃〜160℃、反応時間は2時間〜2日間の条件である。
【0079】
が塩素原子(例えば、トリフルオロ酢酸クロリド)の場合は、溶媒としてトルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N―メチル−2−ピロリジノンまたはこれらの混合溶媒を用い、アシル化剤の使用量は1.0〜3.0当量であり、反応温度は−30℃〜30℃、反応時間は0.5時間〜8時間の条件である。塩基は非存在下であるか、塩基を用いる場合は炭酸カリウムを用い、その当量数は1.0〜3.0当量を用いる条件が特に好ましい。
【0080】
ワンポット製造における式(B)または式(B’)で表される化合物から式(I)または(I’)で表される化合物の製造
式(B)または式(B’)で表される化合物から式(I)または式(I’)で表される化合物を得るための特に好ましい条件は、Rが塩素原子、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド、N―メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドとトルエンの混合溶媒、N,N−ジメチルホルムアミドとキシレンの混合溶媒、キシレンとN−メチル−2−ピロリジノンの混合溶媒またはキシレンとN,N−ジメチルアセトアミドの混合溶媒を用い、Ar−CH−Rの使用量は、式(B)または式(B’)で表される化合物に対して0.8〜1.5当量であり、反応温度は40℃〜80℃、反応時間は1時間〜2日間の条件であり、塩基は炭酸カリウムまたはトリエチルアミンを1.0〜5.0当量を用いる条件である。
【0081】
式(Ba)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物を製造する工程
式(Ba)で表される化合物から式(Ia)で表される化合物を得る方法としては、無溶媒あるいは反応に影響しない溶媒中で、式(Ba)で表される化合物に塩基存在下または非存在下、アシル化剤R1aCOR2a(R1a、R2a上記で定義したことと同じ意味を表す)と反応させることで得ることができる。ここで言う試薬の当量数とは、全て式(Ba)で表される化合物に対する当量数である。
【0082】
使用可能な溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、アセトニトリルなどの非プロトン性極性有機溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、水、または、これらの混合溶媒が挙げられる。
【0083】
使用可能な塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなどの無機塩基、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、tert-ブトキシカリウムなどのアルコラートが挙げられる。塩基は使用しなくてもよいが、塩基存在下に行う場合の使用量は、0.01〜20.0当量用いることができる。
【0084】
アシル化剤RCORとしては無水トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸クロライド、または混合酸無水物が挙げられる。また、このようなアシル化剤は単独で又は2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、好ましくは、無水トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸エチル、またはトリフルオロ酢酸クロライドを使用することができる。また、Rが水酸基を示すときは、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、1,1’−カルボニルジイミダゾール、ジピリジルジスルフィド、ジイミダゾルジスルフィド、1,3,5−トリクロロベンゾイルクロリド、1,3,5−トリクロロベンゾイル無水物、PyBop(登録商標)、PyBrop(登録商標)、五酸化リン、硫酸、ポリリン酸、塩化チオニル、オキシ塩化リン、シュウ酸ジクロライド、塩化亜鉛、塩化銅、塩化マグネシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、三フッ化ホウ素、パラトルエンスルホン酸等の試薬を同時に用いることによって行うことができる。アシル化剤の使用量は、0.5〜10.0当量が好ましい。
【0085】
反応温度は、−80℃〜200℃の範囲とすることが好ましい。反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましい。
【0086】
好ましい態様としては、
(1)Rがトリフルオロアセトキシ基を示す場合、具体的にはアシル化剤として無水トリフルオロ酢酸を用いる場合、好ましい溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒が挙げられ、より好ましくはトルエンである。反応は塩基非存在下で行うことが好ましいが、塩基を用いる場合に好ましい塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられ、より好ましくは炭酸カリウムである。アシル化剤の使用量は、好ましくは1.0〜5.0当量であり、より好ましくは1.0〜1.5当量である。塩基を使用する場合の塩基の使用量は、好ましくは1.0〜4.5当量であり、より好ましくは1.0〜3.0当量である。反応温度は、−20℃〜50℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは−10℃〜30℃である。反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましく、0.5時間〜4時間の範囲とすることがより好ましい。
【0087】
特に好ましい条件は、アシル化剤として無水トリフルオロ酢酸、溶媒としてトルエンを用い、アシル化剤の使用量は1.0〜1.5当量であり、反応温度は−10℃〜30℃、反応時間は0.5〜4時間の条件である。塩基は非存在下であるか、塩基を用いる場合は炭酸カリウムを用い、その当量数は1.0〜3.0当量を用いる条件である。
【0088】
(2)Rがハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルオキシ基、またはフェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基により置換されていてもよいベンジルオキシ基を示す場合、具体的にはトリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸プロピル、特に好ましくはトリフルオロ酢酸エチル等を用いる場合、好ましい溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、アセトニトリルなどの非プロトン性極性有機溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、および、これらの溶媒とトルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒との混合溶媒であり、より好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド、またはN,N−ジメチルホルムアミドとトルエンの混合溶媒である。反応は塩基非存在下で行うことが好ましいが、塩基を用いる場合に好ましい塩基としては、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられ、より好ましくは炭酸カリウム、ジメチルアミノピリジンである。アシル化剤の使用量は、好ましくは1.0〜5.0当量であり、より好ましくは1.5〜5.0当量である。塩基を使用する場合の塩基の使用量は、好ましくは0.01〜3.0当量であり、より好ましくは0.01〜2.0当量である。反応温度は、20℃〜100℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは40℃〜80℃である。反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましく、1時間〜2日間の範囲とすることがより好ましい。
【0089】
特に好ましい条件は、アシル化剤としてトリフルオロ酢酸エチル、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド、またはN,N−ジメチルホルムアミドとトルエンの混合溶媒を用い、アシル化剤の使用量は1.0〜5.0当量であり、反応温度は40℃〜80℃、反応時間は2時間〜2日間の条件である。塩基は非存在下であるか、塩基を用いる場合は炭酸カリウムまたはジメチルアミノピリジンを用い、その当量数は0.01〜2.0当量を用いる条件である。
【0090】
(3)Rが、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルキルカルボニルオキシ基(但し、トリフルオロアセトキシ基を除く)、フェニル基がハロゲン原子、メチル基、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基で置換されていてもよいフェニルカルボニルオキシ基を示す場合、具体的にはピバロイル基が挙げられる。 反応温度は、−20℃〜50℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは−10℃〜30℃である。反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましく、0.5時間〜4時間の範囲とすることがより好ましい。
【0091】
(4)Rが水酸基を示す場合、具体的なアシル化剤としてはトリフルオロ酢酸、ジフルオロクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジブロモ酢酸、クロロ酢酸、ジフルオロプロピオン酸、ジクロロプロピオン酸、2,2,2-トリフルオロプロピオン酸、ペンタフルオロプロピオン酸、ジフルオロシクロプロパンカルボン酸等が挙げられ、好ましくはトリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ジフルオロ酢酸、ジフルオロクロロ酢酸、クロロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸であり、より好ましくはトリフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸、ジフルオロクロロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸であり、特に好ましくはトリフルオロ酢酸である。トリフルオロ酢酸を用いる場合、好ましい溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒およびN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、アセトニトリルなどの非プロトン性極性有機溶媒が挙げられ、より好ましくはトルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、トルエンとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、キシレンとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒またはキシレンとN−メチル−2−ピロリジノンの混合溶媒である。同時に用いられる試薬としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、五酸化リン、硫酸、ポリリン酸、チオニルクロライド、オキシ塩化リン、シュウ酸ジクロライド等が挙げられ、これらは0.2〜5.0当量を用いることが好ましい。また、同時に用いられる試薬として、塩化亜鉛、塩化銅、塩化マグネシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、三フッ化ホウ素、パラトルエンスルホン酸等を用いる場合は、0.0001〜1.0当量を用いることが好ましい。反応は、五酸化リン、硫酸、ポリリン酸、チオニルクロライド、オキシ塩化リン、シュウ酸ジクロライド、塩化亜鉛、塩化銅、塩化マグネシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、三フッ化ホウ素、パラトルエンスルホン酸を用いる場合は非塩基存在下が好ましく、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いる場合は塩基存在下が好ましい。塩基を用いる場合に好ましい塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン等が挙げられ、より好ましくはトリエチルアミンである。アシル化剤の使用量は、好ましくは1.0〜5.0当量であり、より好ましくは1.0〜3.0当量である。チオニルクロライド、オキシ塩化リン、シュウ酸ジクロライドを用いる場合は、これらの試薬を0.2〜5.0当量用い、反応温度は−30℃〜80℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは−10℃〜40℃である。五酸化リン、硫酸、ポリリン酸を用いる場合は、これらの試薬を0.2〜5.0当量用い、反応温度は−30℃〜200℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは−10℃〜160℃である。N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いる場合は、これらの試薬を0.2〜5.0当量用い、反応温度は−30℃〜80℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは−10℃〜40℃であり、トリエチルアミンを塩基として、0.2〜5.0当量用いる条件が好ましい。塩化亜鉛、塩化銅、塩化マグネシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、三フッ化ホウ素、パラトルエンスルホン酸を用いる場合は、これらの試薬を0.0001〜1.0当量用い、反応温度は20℃〜200℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは80℃〜160℃である。反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましく、0.5時間〜2日間の範囲とすることがより好ましい。
【0092】
特に好ましい条件は、アシル化剤としてトリフルオロ酢酸、溶媒としてトルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、キシレン、N−メチル−2−ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドとトルエンの混合溶媒、キシレンとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒、キシレンとN−メチル−2−ピロリジノンの混合溶媒またはキシレンとN,N−ジメチルアセトアミドの混合溶媒を用い、アシル化剤の使用量は1.0〜3.0当量である。チオニルクロライド、オキシ塩化リン、シュウ酸ジクロライドを用いる場合の特に好ましい条件は、これらの試薬を0.3〜3.0当量用い、非塩基存在下、反応温度は−10℃〜40℃、反応時間は0.5時間〜1日間の条件である。五酸化リン、硫酸、ポリリン酸を用いる場合の特に好ましい条件は、これらの試薬を0.2〜2.0当量用い、反応温度は−10℃〜160℃、反応時間は0.5時間〜1日間の条件である。N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を用いる場合の特に好ましい条件は、これらの試薬を0.5〜3.0当量用い、反応温度は−10℃〜40℃であり、トリエチルアミンを塩基として、0.5〜3.0当量用い、反応時間は0.5〜1日間の条件である。塩化亜鉛、塩化銅、塩化マグネシウム、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化第二鉄、塩化アルミニウム、硫酸鉄、硫酸アルミニウム、三フッ化ホウ素、パラトルエンスルホン酸を用いる場合の特に好ましい条件は、これらの試薬を0.0001〜0.5当量用い、非塩基存在下、反応温度は80℃〜160℃、反応時間は2時間〜2日間の条件である。
【0093】
(5)Rがハロゲン原子を示す場合、具体的にはトリフルオロ酢酸クロリド、トリフルオロ酢酸ブロミド、好ましくはトリフルオロ酢酸クロリドを用いる場合、好ましい溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、およびN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、アセトニトリルなどの非プロトン性極性有機溶媒が挙げられ、より好ましくはトルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N―メチル−2−ピロリジノン、またはこれらの混合溶媒である。反応は塩基非存在下で行うことが好ましいが、塩基を用いる場合に好ましい塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられ、より好ましくは炭酸カリウムである。アシル化剤の使用量は、好ましくは1.0〜5.0当量であり、より好ましくは1.0〜3.0当量である。塩基を使用する場合の塩基の使用量は、好ましくは1.0〜5.0当量であり、より好ましくは1.0〜3.0当量である。反応温度は、−80℃〜40℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは−30℃〜30℃である。反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましく、0.5時間〜8時間の範囲とすることがより好ましい。
【0094】
また、Rが塩素原子を示す場合、トリフルオロ酢酸と、チオニルクロライド、オキシ塩化リン、シュウ酸ジクロリド等を、式(Aa)で表される化合物に反応させる系外で同時に使用して、あらかじめ生成させたRCOClを使用することもできる。
【0095】
特に好ましい条件は、アシル化剤としてトリフルオロ酢酸クロライド、溶媒としてトルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、N―メチル−2−ピロリジノンまたはこれらの混合溶媒を用い、アシル化剤の使用量は1.0〜3.0当量であり、反応温度は−30℃〜30℃、反応時間は0.5時間〜8時間の条件である。塩基は非存在下であるか、塩基を用いる場合は炭酸カリウムを用い、その当量数は1.0〜3.0当量を用いる条件が特に好ましい。
【0096】
式(Ba)で表される化合物は、特許文献3等に記載の方法で得ることができる。すなわち、式(Aa)で表される化合物から式(Ba)で表される化合物を製造する方法としては、無溶媒あるいは反応に影響しない溶媒中で、式(Aa)で表される化合物に塩基存在下または非存在下、式(Ca)で表される化合物(X、R、Rは上記で定義したことと同じ意味を表す)で示される化合物と反応させることで得ることができる。
【0097】
【化9】
【0098】
使用可能な溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリジノン、N−メチル−2−ピペラジノン、N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの非プロトン性極性有機溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、およびこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくは非プロトン性極性有機溶媒が挙げられる。より好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエンである。
【0099】
塩基は用いなくても反応を実施することはできるが、塩基を用いる場合の使用可能な塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなどの無機塩基、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0] ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0] ノナ−5−エン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ルチジン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基が挙げられ、好ましくは、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ピリジンなど挙げられ、より好ましくは、トリエチルアミン、炭酸カリウムが挙げられる。
【0100】
塩基を使用する場合の塩基の使用量は、好ましくは式(Aa)で表される化合物に対して1.0〜3.0当量であり、より好ましくは1.1〜2.5当量である。反応温度は、−20℃〜150℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは-10℃〜100℃である。
【0101】
反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1時間〜2日間である。
【0102】
【化10】
【0103】
また、式(Ba)で表される化合物を得る別の方法としては、前記式(Ib) で表される化合物を加水分解して式(Ba)で表される化合物を製造する方法も挙げられる(式中、R、R、Xは前述の定義と同じ意味を表す)。
【0104】
使用可能な溶媒としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリジノン、N−メチル−2−ピペラジノン、N,N−ジメチル−2−イミダゾリジノンなどの非プロトン性極性有機溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、水、およびこれらの混合溶媒が挙げられ、好ましくは芳香族炭化水素系溶媒、または非プロトン性極性有機溶媒、またはアルコール系溶媒と水の混合溶媒が挙げられ、より好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミドと水、メタノールと水、またはトルエンと水の混合溶媒である。酸としては、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などの鉱酸を用いることができ、塩基としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなどの無機塩基を用いることができる。反応温度は、−20℃〜150℃の範囲とすることが好ましく、より好ましくは70℃〜100℃である。反応時間は、0.1時間〜7日間の範囲とすることが好ましく、より好ましくは1時間〜8時間である。
【0105】
式(Aa)で表される化合物から式(Ba)で表される化合物を経て、式(Ia)で表される化合物を合成する際、式(Ba)で表される化合物を単離することなく、次工程を行い、式(Ia)で表される化合物を得ることが可能である。
【0106】
式(A)または式(Aa)で表される化合物から式(I)または式(Ia)で表わされる化合物を合成する際、アシル化剤、溶媒、Ar-CH−R、塩基を一度に反応させて、式(I)または式(Ia)で表される化合物を得ることが可能である。
【0107】
式(A)または式(Aa)で表される化合物からアシル化剤、溶媒、Ar-CH−R、塩基を一度に反応させて、式(I)または式(Ia)で表される化合物を得る場合の好ましい例としては、式(A)または式(Aa)で表される化合物をトルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリジノン等の非プロトン性溶媒またはその混合溶媒を用い、Rがハロゲン原子で置換されていてもよいC1−6アルコキシ基を示すアシル化剤、具体的にはトリフルオロ酢酸エチル、トリフルオロ酢酸メチル、トリフルオロ酢酸プロピル等を式(A)または(Aa)で表される化合物に対して1.0〜5.0当量用い、塩基に炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウムなどの無機塩基、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、ピコリン、ジメチルアミノピリジンなどの有機塩基、ナトリウムエトキシド、ナトリウムメトキシド、tert-ブトキシカリウムなどのアルコラートを式(A)または(Aa)で表される化合物に対して1.0〜10.0当量用い、Ar-CH-Rを式(A)または(Aa)で表される化合物に対して0.8〜1.5当量加えて20℃〜100℃で2時間〜3日間反応させ、式(I)または式(Ia)で表される化合物を得る方法である。
【0108】
特に好ましくは、溶媒としてトルエン、N,N−ジメチルホルムアミド、またはトルエンとN,N−ジメチルホルムアミドの混合溶媒を用い、アシル化剤としてトリフルオロ酢酸エチルを用い、Ar−CH−RのRが塩素原子であり、塩基として炭酸カリウムを用い、式(I)または式(Ia)で表される化合物に対して、アシル化剤の当量数は、好ましくは1.0〜5.0当量であり、より好ましくは1.5〜5.0当量、Ar−CH−Rの当量数は0.8〜1.5当量、塩基の当量数は1.0〜5.0当量、反応温度は40℃〜80℃、反応時間は4時間〜2日間の条件である。
【0109】
粗生成物から式(I)で表わされる化合物および式(Ia)で表される化合物の精製単離の方法
式(I)で表わされる化合物および式(Ia)で表される化合物は、通常用いられる結晶化法、溶媒抽出法、カラムクロマトグラフィー等を単独、または、組み合わせることによって精製単離することができる。溶媒抽出法に用いられる溶媒は、水と混和しない溶媒であれば特に選ばないが、具体的には酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、エチルベンゼン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム等が挙げられる。結晶化法に用いられる溶媒は、水、ヘキサン、トルエン、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール、2−プロパノール、ジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、ジエチルエーテル、キシレン、N-メチル-2-ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド等およびそれらの混合溶媒が挙げられる。
【0110】
式(I)で表わされる化合物および式(Ia)で表される化合物の好ましい精製単離方法は、結晶化法であり、結晶化溶媒としてはアセトン、トルエン、水、N,N-ジメチルホルムアミド、メタノール、キシレン、N-メチル-2-ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミドを単独、または組み合わせて用いることが好ましく、より好ましくは水、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミドの組み合わせである。
【実施例】
【0111】
本発明の具体例を以下に示すが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0112】
合成例1:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミド(化合物1)の合成
(1)2−アミノピリジン25g(270mmol)を無水ジクロロメタン200mlに溶解し、トリエチルアミン41ml(30g,300mmol)を加えて0℃に冷却した。ここに無水トリフルオロ酢酸38ml(57g,270mmol)を15分間かけて滴下し、室温で2時間攪拌した。反応終了後、反応液を約100mlの氷水に注ぎ込み、10分間攪拌した。分液ロートに移して分液を行い、有機層を150mlの水で2回、150mlの1%HCL水溶液で2回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮して2,2,2−トリフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミド36g(収率71%)を得た。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):7.20(1H,m),7.83(1H,m),8.20(1H,d),8.35(1H,d),10.07(1H,brs)
13C-NMR(CDCl3,δ,ppm):115.3,115.5(q),121.6,139.1,147.9,149.5,155.3(q)
MS:m/z=191(M+H)。
【0113】
(2)2−クロロ−5−クロロメチルピリジン20g(126mmol)を無水アセトニトリル200mlに溶解し、前述の方法で得られた2,2,2−トリフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミド24g(126mmol)、炭酸カリウム21g(151mmol)を加えて、6時間加熱還流したのち、室温で10時間攪拌した。反応終了後、反応液をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。これにジエチルエーテルを加えて結晶化し、得られた結晶をろ取し、ジエチルエーテルと水でよく洗浄した。得られた結晶を60℃で1時間減圧乾燥し、目的物を得た。収量26g(収率66%)。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):5.57(2H,s),6.92(1H,td),7.31(1H,d),7.80(1H,td),7.87(1H,dd),7.99(1H,dd),8.48(2H,m)
13C-NMR(CDCl3,δ,ppm):53.8,115.5,117.2(q),122.1,124.7,130.0,139.2,140.0,142.5,149.7,151.8,158.9,163.5(q)
MS:m/z=316(M+H)。
【0114】
(3)粉末X線結晶解析
粉末X線回折においては、以下の条件で測定した。
装置名:RINT−2200(株式会社リガク)
X線:Cu−Kα(40kV、20mA)
走査範囲:4〜40° サンプリング幅:0.02° 走査速度:1°/分
結果は、以下の通りである(図1)。
回折角(2θ)8.7°、14.2°、17.5°、18.3°、19.8°、22.4°、30.9°、35.3°。
【0115】
(4)示差走査熱量分析(DSC)
示差走査熱量分析においては、以下の条件で測定した。
装置名:DSC−60
試料セル:アルミニウム
温度範囲:50℃〜250℃(昇温:10℃/分)
結果を、図2に示した。
【0116】
(5)また、以下の(i)から(iv)に記載の方法(第二〜五の製法)で再結晶することによって同等の結晶を得た。これら結晶に対し、上記と同様の測定条件で、粉末X線結晶解析および示差走査熱量分析を行った。
【0117】
(i)第二の製法
化合物1(700mg)にヘキサン約25ml、酢酸エチル約25mlを加えて、湯浴で65℃に加熱して完全に溶解させた。これをゆっくり室温に戻して一晩放置した。析出した結晶をろ集し、少量のヘキサン:酢酸エチル=95:5の溶液で結晶を洗浄した。これをデシケーターに入れて2時間減圧下で乾燥させて、白色結晶349mgを得た。
【0118】
粉末X線結晶解析結果は、以下の通りである(図3)。
回折角(2θ)8.5°、14.0°、17.3°、18.1°、19.6°、22.2°、30.8°、35.2°
示差走査熱量分析の結果は、図4に示した。
【0119】
(ii)第三の製法
化合物1(1.0g)に2−プロパノール28 mlを加え、湯浴で65℃に加熱して完全に溶解させた。これをゆっくり室温に戻して一晩放置した。析出した結晶をろ集し、少量の2−プロパノールで洗浄後、デシケーターに入れて2時間減圧下で乾燥させて、白色結晶695mgを得た。
【0120】
示差走査熱量分析の結果は、図5に示した。
【0121】
(iii)第四の製法
化合物1(700mg)にトルエン約30mlを加え、湯浴で65℃に加熱して完全に溶解させた。これをゆっくり室温に戻して一晩放置した。析出した結晶をろ集し、少量のトルエンで洗浄後、デジケーターに入れて2時間減圧下で乾燥させて、白色結晶440 mgを得た。
【0122】
粉末X線結晶解析結果は、以下の通りである(図6)。
回折角(2θ)8.6°、14.2°、17.5°、18.3°、19.7°、22.3°、30.9°、35.3°
示差走査熱量分析の結果は、図7に示した。
【0123】
(iv)第五の製法
化合物1(50mg)にメタノール約2ml、水約2mlを加え、湯浴で65℃に加熱して溶解させた。これを室温に戻して一晩放置した。析出した結晶をろ集して白色結晶16mgを得た。
【0124】
示差走査熱量分析の結果は、図8に示した。
表1に合成例1の方法に準じて製造された式(I)で示される有害生物防除剤の具体的な化合物例とその物性値を示す。
【0125】
【表1】
【0126】
合成例2:2,2,2−トリフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミドの合成
2−アミノピリジン1.0g(10.6mmol)を酢酸エチル10mlに溶解し、トリエチルアミン1.78ml(12.7mmol)を加えて、氷冷下、無水トリフルオロ酢酸1.62ml(11.7mmol)を添加した。その後室温で2時間攪拌後、酢酸エチル10mlと水10mlを加えて攪拌後分液した。酢酸エチル層をさらに水10mlで二回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して、2,2,2−トリフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミド 1.56g(77.2%)を得た。
【0127】
合成例3:2,2,2−トリフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミドの合成
2−アミノピリジン4.7g(50mmol)をN,N−ジメチルホルムアミド25mlに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル35.5g(250mmol)を添加した。その後55〜60℃で15時間攪拌後、酢酸エチル100mlと水100mlを加えて攪拌後分液した。酢酸エチル層をさらに水100mlおよび食塩水100mLで洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧濃縮して、2,2,2−トリフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミド 9.05g(95.6%)を得た。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):
7.20(1H,ddd),7.83(1H,td),8.20(1H,d),8.35(1H,d),10.07(1H,brs)。
【0128】
合成例4:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 50.0g(0.53mol)をトルエン400mlに溶解後、5℃に冷却下、トリフルオロ酢酸無水物 88.6ml(0.64mol)を30分で滴下した。滴下後室温で30分攪拌し、減圧下トルエンを20ml蒸留した。反応液に、ジメチルホルムアミド250mlを加え、氷冷下、粉末炭酸カリウム88.2(0.64mol)gを徐々に加えた。その後、2−クロロ−5−クロロメチルピリジン89.2g(0.557mol)を加え、減圧(50-60hPa)下、40-45℃でトルエンを徐々に蒸留し、1時間加熱した。60-70℃、35hPaでさらに2.5時間加熱蒸留後、粉末炭酸カリウムを5.0g(0.036mol)加え、50-60℃、35hPaでさらに1時間水を除いた。反応液を、50℃の水2Lに添加し、添加終了後、30分攪拌した。その後、ろ過し、水200ml、続いて、水500mlでスラリー洗浄した。ろ過後、トルエン100mlで押し洗いをし、さらにトルエン400mlでスラリー洗浄した。得られた結晶を、60℃、一晩真空ポンプで減圧下乾燥し、目的とするN−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミド 147.78g(88.1%)を得た。得られた表題化合物8.21gを取り、アセトン100mLに溶解し、これに水300mLを加えた。室温で撹拌して析出した結晶をろ取し、得られた結晶を60℃、一晩真空ポンプで減圧下乾燥し、7.28gを得た。得られた結晶の粉末X線結晶解析結果は、以下の通りである(図9)。
回折角(2θ)8.8°、14.3°、17.6°、18.3°、19.9°、22.5°、31.0°、35.4°
合成例5:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 50.0g(0.53mol)をトルエン250mlに溶解後、5℃に冷却下、トリフルオロ酢酸無水物 88.6ml(0.64mol)を30分で滴下した。滴下後室温で30分攪拌し、減圧下トルエンを20ml蒸留した。反応液に、ジメチルホルムアミド250mlを加え、氷冷下、粉末炭酸カリウム88.2g(0.64mol)を徐々に加えた。その後、2−クロロ−5−クロロメチルピリジン87.0g(0.54mol)を加え、減圧(50-60hPa)下、50-60℃でトルエンを徐々に蒸留し、さらに35hPaで加熱した。1時間後、粉末炭酸カリウムを5.0g(0.036mol)加え、50-60℃、35hPaで水を除いた。4時間後、反応液を、50℃の水1.1Lに添加し、反応容器をメタノール150mlで洗浄し追加添加した。添加終了後、50℃で10分加熱し、徐々に冷却し、15-20℃で30分攪拌後、ろ過し、水150ml、続いて、トルエン150mlで洗浄した。得られた結晶を、60℃、11時間真空ポンプで減圧下乾燥し、目的とするN−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミド 147.32g(87.8%)を得た。
【0129】
合成例6: N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 1.0g(10.6mmol)をトルエン10mlに溶解し、5℃に冷却後、トリフルオロ酢酸1.18ml(15.9mmol)、そして、オキシ塩化リン0.99ml(10.6mmol)を加え、室温下6.5時間攪拌した。反応液にジメチルホルムアミド5.0mlと粉末炭酸カリウム5.87g(42.5mmol)および2-クロロ-5-クロロメチルピリジン1.72g(10.6mmol)を加えて、減圧下(60-35hPa)、50-60℃で蒸留した。2.5時間後、反応液を100mlの水に添加し、結晶をろ過し、水30mlとトルエン15mlで洗浄した。得られた結晶を減圧下60℃乾燥して、目的とする化合物N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドを2.09g(62.3%)得た。
【0130】
合成例7:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 10.0g(0.106mol)をトルエン100mlに溶解し、5℃に冷却後、トリフルオロ酢酸11.8ml(0.159mol)、そして、オキシ塩化燐9.9ml(0.106mol)を加え、室温下一晩攪拌し、減圧下、トルエンを20ml溜去した。反応液に氷冷下、ジメチルホルムアミド50mlと粉末炭酸カリウム35.28g(0.256mol)、および、2-クロロ-5-クロロメチルピリジン17.22g(0.106mol)を加えて、減圧下(60-35hPa)、50-60℃で蒸留した。2時間後、さらに、ジメチルホルムアミド25ml、トルエン20mlと粉末炭酸カリウム7.35g(0.053mol)を加えて、減圧下(60-35hPa)、50-60℃で2時間蒸留した。反応液にメタノール60mlと水50mlを加え、容器共に洗浄しながら反応液を、300mlの水に添加し、30分後、結晶をろ過し、水70mlとトルエン40mlで洗浄した。得られた結晶を減圧下60℃乾燥して、目的とする化合物を25.75g(76.9%)得た。
【0131】
合成例8:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 10.0g(0.106mol)をトルエン100mlに溶解し、5℃に冷却後、トリフルオロ酢酸11.8ml(0.159mol)、そして、チオニルクロライド7.7ml(0.106mol)を加え、室温下一晩攪拌し、減圧下、トルエンを20ml溜去した。反応液に氷冷下、ジメチルホルムアミド50ml、粉末炭酸カリウム35.28g(0.256mol)と2−クロロ−5−クロロメチルピリジン17.22g(0.106mol)を加えて、減圧下(36hPa)、50-60℃、一時間で蒸留した。反応液にメタノール60mlと水50mlを加え、容器共に洗浄しながら反応液を、300mlの水に添加し、30分後、結晶をろ過し、水70mlとトルエン40mlで洗浄した。得られた結晶を減圧下60℃で乾燥して、目的とする化合物を22.31g(66.6%)得た。
【0132】
合成例9:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 5.0g(0.053mol)をトルエン50mlに溶解後、5℃に冷却下、トリフルオロ酢酸無水物 8.86ml(0.064mol)を10分で滴下した。滴下後室温で30分攪拌し、減圧下トルエンを10ml蒸留した。反応液に、ジメチルホルムアミド25mlを加え、氷冷下、粉末炭酸カリウム8.82gを徐々に加えた。その後、2−クロロ−5−メタンスルホニルオキシメチルピリジン11.78g(0.053mol)を加え、減圧(50-60hPa)下、50-60℃でトルエンを徐々に蒸留し、さらに35hPaで加熱した。30分後、ジメチルホルムアミド30ml、トルエン30mlと2−クロロ−5−メタンスルホニルオキシメチルピリジン1.18g(0.0053mol)を加え、50-60℃、55hPaで減圧蒸留した。4時間後、反応液を、水250mlに添加し、反応容器をメタノール30mlと水20mlで洗浄し追加添加した。添加終了後、室温で30分攪拌した後、ろ過し、水50ml、続いて、トルエン40mlで洗浄した。得られた結晶を、80℃、11時間真空ポンプで減圧下乾燥し、目的とするN−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミド11.63g(69.4%)を得た。
【0133】
合成例10:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 10.0g(0.106mol)をトルエン100mlに溶解し、5℃に冷却後、トリフルオロ酢酸11.84ml(0.159mol)、そして、オキシ塩化リン5.94ml(0.064mol)を加え、室温下一晩攪拌し、減圧下、トルエンを20ml溜去した。反応液に氷冷下、ジメチルホルムアミド50mlと粉末炭酸カリウム22.03g(0.16mol) 、および、2-クロロ-5-クロロメチルピリジン17.56g(0.108mol)を加えて、減圧下(60-35hPa)、50-60℃で蒸留した。1時間後、さらに、ジメチルホルムアミド20ml、トルエン20mlと粉末炭酸カリウム4.41g(0.032mol)を加えて、減圧下(60-35hPa)、50-60℃で1.5時間蒸留した。50℃の水250mlに、反応液にメタノール30mlを加えたものを添加し、そして水50mlを加え、容器も洗浄しながら添加し、室温に冷却後30分攪拌し、結晶をろ過し、水50mlとトルエン30mlで洗浄した。得られた結晶を減圧下60℃乾燥して、目的とする化合物を23.69g(70.6%)得た。
【0134】
合成例11:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 10.0g(0.106mol)をトルエン100mlに溶解し、5℃に冷却後、トリフルオロ酢酸11.8ml(0.159mol)、そして、チオニルクロライド7.76ml(0.106mol)を分割して加え、室温下一晩攪拌し、減圧下、トルエンを50ml溜去した。反応液にトルエン50mlを加え、氷冷下、ジメチルホルムアミド50ml、粉末炭酸カリウム22.03g(0.16mol)と2−クロロ−5−クロロメチルピリジン17.56g(0.108mol)を加えて、減圧下(90-36hPa)、60℃で、1.5時間で蒸留した。反応液にメタノール30mlと水20mlを加え、容器共に洗浄しながら反応液を、50℃の300mlの水に添加し、室温で30分攪拌後、結晶をろ過し、水50mlとトルエン30mlで洗浄した。得られた結晶を減圧下60℃で乾燥して、目的とする化合物を21.45g(64.1%)得た。
【0135】
合成例12: N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 94g(1mol)をジメチルホルムアミド500mLに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル284g(2mol)を加えて、55-60℃で24時間撹拌した。反応液に粉末炭酸カリウム82.8g(0.6mol)と2−クロロ−5−クロロメチルピリジン153.9g(0.95mol)及びトルエン300mLを加えて、減圧下(36hPa)、50-60℃、3時間撹拌した。反応液にメタノール200mLを添加した後、50℃の温水2Lに反応液を添加し、室温まで放冷した後、3時間撹拌した。結晶をろ過し、水400mL及びトルエン450mLで洗浄した。得られた結晶を減圧下45℃で乾燥して、目的とする化合物を228.9g(収率72.7%)得た。
【0136】
合成例13:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 9.4g(0.1mol)をジメチルホルムアミド30mL及びトルエン20mLの混合溶媒に溶解し、トリフルオロ酢酸エチル28.4g(0.2mol)を加えて、60-65℃で8時間撹拌した。反応液に粉末炭酸カリウム16.6g(0.12mol)と2−クロロ−5−クロロメチルピリジン16.2g(0.1mol)を加えて、60-65℃で15時間撹拌した。反応液にメタノール15mLを添加した後、50℃の温水120mLに反応液を添加し、室温まで放冷した後、2時間撹拌した。結晶をろ過し、水50mL及びトルエン100mLで洗浄した。得られた結晶を減圧下45℃で乾燥して、目的とする化合物を25.6g(収率81.2%)得た。
【0137】
合成例14:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
トリフルオロ酢酸13.68g(0.12mol)にジメチルホルムアミド1.5mLを添加し、65℃に加温しながらチオニルクロライド14.28g(0.12mol)を加えた。ここから発生するトリフルオロ酢酸クロライドを2-アミノピリジン9.4g(0.1mol)をN-メチルピロリジノン50mLに溶解して−10℃に冷却した溶液にバブリングし、1時間撹拌した。この反応液にトルエン100mLと粉末炭酸カリウム48.3g(0.35mol)と2−クロロ−5−クロロメチルピリジン16.52g(0.102mol)を加えて、減圧下(36hPa)、50-60℃、3時間で蒸留した。反応液にメタノール20mLを加え、容器共に洗浄しながら、50℃に加温した300mLの水に添加した。室温で1.5時間撹拌した後、結晶をろ過し、水100mL及びトルエン150mLで洗浄した。得られた結晶を減圧下45℃で乾燥して、目的とする化合物を16.8g(収率53.3%)得た。
【0138】
合成例15:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
トリフルオロ酢酸18.24g(0.16mol)にジメチルホルムアミド8.76g(0.12mol)を添加し、65℃に加温しながらオキシ塩化リン12.26g(0.08mol)を加えた。ここから発生するトリフルオロ酢酸クロライドを2-アミノピリジン9.4g(0.1mol)をN-メチルピロリジノン80mLに溶解して−15℃に冷却した溶液にバブリングし、2時間撹拌した。−10℃に冷却しながら、この反応液に粉末ナトリウムエトキシド14.9g(0.22mol)を加えて、中和した。この反応液に粉末炭酸カリウム13.8g(0.1mol)、及び2−クロロ−5−クロロメチルピリジン16.2g(0.1mol)を加えて、減圧下(36hPa)、50-60℃、2時間で蒸留した。反応液にメタノール20mLを加え、容器共に洗浄しながら、50℃に加温した400mLの水に添加した。室温で30分撹拌した後、結晶をろ過し、水100mL及びトルエン50mLで洗浄した。得られた結晶を減圧下45℃で乾燥して、目的とする化合物を22.5g(収率71.4%)得た。
【0139】
合成例16:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2−クロロ−5−クロロメチルピリジン3.00g(18.6mmol)をジメチルホルムアミド20mlに溶解し、2−アミノピリジン1.75g(18.6mmol)を加えて80℃で8時間、室温で5時間攪拌した。反応終了後、ジメチルホルムアミドを減圧留去し、アセトニトリルを加えたところ固体が析出したので、ろ集し、アセトニトリルでよく洗浄後乾燥して1−〔(6−クロロピリジン−3−イル)メチル〕ピリジン−2(1H)−イミン塩酸塩2.07g(収率44%)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6,δ,ppm):5.65(2H,s),6.96(1H,t),7.23(1H,m),7.57(1H,d),7.80(1H,m),7.91(1H,m),8.28(1H,m),8.49(1H,d)。
【0140】
前述の方法で得られた1−〔(6−クロロピリジン−3−イル)メチル〕ピリジン−2(1H)−イミン塩酸塩50mg(0.20mmol)を無水ジクロロメタン5mlに懸濁し、氷冷下でジメチルアミノピリジン 122mg(1.00mmol)、無水トリフルオロ酢酸50mg(0.24mmol)の順に加えて、室温で1時間攪拌した。反応終了後、反応液をジクロロメタンで薄め、1%塩酸で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ジクロロメタンを減圧留去することで目的物を得た。収量42mg(収率67%)。
【0141】
合成例17:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
合成例16の方法に従って合成した後、中和して得た1-((6-クロロピリジン-3-イル)メチル)ピリジン-2(1H)-イミン4.6g(0.02mol)をN,N-ジメチルホルムアミド15mLに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル5.7g(0.04mol)を加えた。56℃で終夜撹拌した後、水60mLを加えて析出した結晶をろ取した。得られた結晶を減圧下45℃で乾燥して、目的とする化合物を5.85g(収率92.8%)得た。
【0142】
合成例18: N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
合成例16の方法に従って合成した後、中和して得た1-((6-クロロピリジン-3-イル)メチル)ピリジン-2(1H)-イミン2.2g(0.01mol)をN,N-ジメチルホルムアミド6mLに溶解し、氷冷下、炭酸カリウム828mg(0.006mol)及び無水トリフルオロ酢酸2.52g(0.012mol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、水30mLを加えて析出した結晶をろ取した。得られた結晶を水20mLで洗浄した後、減圧下45℃で乾燥して、目的とする化合物を2.38g(収率75.6%)得た。
【0143】
合成例19:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
トリフルオロ酢酸4.56g(0.04mol)にN,N-ジメチルホルムアミド3mLを添加し、60℃に加温しながらオキシ塩化リン3.12g(0.02mol)を加えた。ここから発生するトリフルオロ酢酸クロライドを、合成例16の方法に従って合成した後、中和して得た1-((6-クロロピリジン-3-イル)メチル)ピリジン-2(1H)-イミン4.38g(0.02mol)をN-メチル-2-ピロリジノン25mLに溶解した溶液にバブリングし、−10℃で45分間反応させた。水125mLを加えて析出した結晶をろ取した。得られた結晶を減圧下45℃で乾燥して、目的とする化合物を2.58g(収率40.9%)得た。
【0144】
合成例20:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
合成例16の方法に従って合成した後、中和して得た1-((6-クロロピリジン-3-イル)メチル)ピリジン-2(1H)-イミン4.38g(0.02mol)をN,N-ジメチルホルムアミド3mLに溶解し、トリフルオロ酢酸2.7g(0.024mol)および五酸化リン2.8g(0.02mol)を加えた。120℃で3時間撹拌した後、室温に戻し、水50mLを加えて析出した結晶をろ取した。得られた結晶を減圧下45℃で乾燥して、目的とする化合物を2.12g(収率33.7%)得た。
【0145】
合成例21: N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 9.4g(0.1mol)をジメチルホルムアミド50mLに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル28.8g(0.2mol)と2−クロロ−5−クロロメチルピリジン16.2g(0.1mol)、および炭酸カリウム13.8g(0.1mol)を加えて、55-60℃で20時間撹拌した。反応液に更に粉末炭酸カリウム1.38g(0.1mol)と2−クロロ−5−クロロメチルピリジン3.24(0.02mol)、およびトリフルオロ酢酸エチル5.68g(0.04mol)を加えて、55-60℃で6時間撹拌した。反応液にメタノール40mLを添加した後、50℃の温水300mLに反応液を添加し、室温まで放冷した後、1時間撹拌した。結晶をろ過し、水100mL及びトルエン75mLで洗浄した。得られた結晶を減圧下45℃で乾燥して、目的とする化合物を24.0g(収率76%)得た。
【0146】
合成例22:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 9.4g(0.1mol)をジメチルホルムアミド30mLおよびトルエン20mLに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル28.8g(0.2mol)と2−クロロ−5−クロロメチルピリジン16.2g(0.1mol)、および炭酸カリウム16.6g(0.12mol)を加えて、60-65℃で18時間撹拌した。反応液にメタノール15mLを添加した後、50℃の温水120mLに反応液を添加し、室温まで放冷した後、1時間撹拌した。結晶をろ過し、水50mL及びトルエン100mLで洗浄した。得られた結晶を減圧下45℃で乾燥して、目的とする化合物を23.9g(収率75.9%)得た。
【0147】
合成例23:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 4.7g(0.05mol)をN,N−ジメチルホルムアミド25mLとトルエン10mLの混合溶媒に溶解し、トリフルオロ酢酸エチル35.5g(0.25mol)と2−クロロ−5−クロロメチルピリジン9.72g(0.06mol)、および粉末炭酸カリウム8.28g(0.06mol)を加えて、65℃で18時間撹拌した。反応液にメタノール10mLを添加した後、50℃の温水150mLに反応液を添加し、室温まで放冷した後、1時間撹拌した。結晶をろ過し、水50mL及びトルエン50mLで洗浄した。得られた結晶を減圧下45℃で乾燥して、目的とする化合物を13.78g(収率87.5%)得た。
【0148】
合成例24:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2−アミノピリジン 9.4g(0.1mol)をジメチルホルムアミド30mLおよびトルエン20mLに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル14.2g(0.1mol)を加えて60-65℃で7時間撹拌した。続いて、2−クロロ−5−クロロメチルピリジン16.2g(0.1mol)、および炭酸カリウム16.6g(0.12mol)を加えて、60-65℃で18時間撹拌した。反応液にメタノール15mLを添加した後、50℃の温水150mLに反応液を添加し、室温まで放冷した。結晶をろ過し、水50mL及びトルエン75mLで洗浄した。得られた結晶を減圧下60℃で乾燥して、目的とする化合物を20.6g(収率65.4%)得た。
【0149】
合成例25:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 9.4g(0.1mol)をジメチルホルムアミド30mLおよびトルエン20mLに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル7.1g(0.05mol)を加えて60-65℃で7.5時間撹拌した。減圧濃縮(90hPa、40℃)した後、氷冷し、トルエン20mL及び無水トリフルオロ酢酸10.5g(0.05mol)を加え、室温で1時間撹拌した。続いて、2−クロロ−5−クロロメチルピリジン16.2g(0.1mol)、ジメチルホルムアミド20mL、および炭酸カリウム16.6g(0.12mol)を加えて、110hPaの減圧下、60-65℃で4時間撹拌した。減圧濃縮(90hPa、50℃)した後、反応液にメタノール25mLを添加し、これを50℃の温水250mLに加えて、室温まで放冷しながら撹拌した。結晶をろ過し、水90mL及びトルエン90mLで洗浄した。得られた結晶を減圧下60℃で乾燥して、目的とする化合物を19.8g(収率62.9%)得た。
【0150】
合成例26:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 9.4g(0.1mol)をジメチルホルムアミド30mLおよびトルエン20mLに溶解し、トリフルオロ酢酸エチル21.3g(0.15mol)を加えて60-65℃で7.5時間撹拌した。減圧濃縮(90hPa、40℃)した後、氷冷し、トルエン20mL及び無水トリフルオロ酢酸10.5g(0.05mol)を加え、室温で1時間撹拌した。続いて、2−クロロ−5−クロロメチルピリジン16.2g(0.1mol)、ジメチルホルムアミド20mL、および炭酸カリウム16.6g(0.12mol)を加えて、110hPaの減圧下、60-65℃で4時間撹拌した。減圧濃縮(90hPa、50℃)した後、反応液にメタノール25mLを添加し、これを50℃の温水250mLに加えて、室温まで放冷しながら撹拌した。結晶をろ過し、水90mL及びトルエン90mLで洗浄した。得られた結晶を減圧下60℃で乾燥して、目的とする化合物を22.68g(収率72.0%)得た。
【0151】
合成例27:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミドの合成
2-アミノピリジン 2.35g(0.025mol)をキシレン40mLに懸濁し、トリフルオロ酢酸2.85g(0.025mol)および塩化第二鉄6水和物135mgを加え、Dean-stark還流装置を付けて生成する水を除きながら150℃で16時間撹拌した。60℃まで冷却後、2−クロロ−5−クロロメチルピリジン4.05g(0.025mol)、ジメチルホルムアミド16mL、および炭酸カリウム2.42g(0.0175mol)を加えて、60-110hPaの減圧下、60-65℃で3時間撹拌した。反応液にメタノール10mLを添加し、これを50℃の温水80mLに加えて、室温まで放冷しながら撹拌した。結晶をろ過し、水20mL及びトルエン20mLで洗浄した。得られた結晶を減圧下60℃で乾燥して、目的とする化合物を 6.32g(収率80.3%)得た。
【0152】
合成例28:N−〔1−((6−クロロ−5−フルオロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミド(化合物2)の合成
2−クロロ−3−フルオロ−5−メチルピリジン4.00g(27.6 mmol)を四塩化炭素80 mlに溶かし、N−ブロモスクシンイミド7.37g(41.4 mmol)、過酸化ベンゾイル20mgを加えて一晩加熱還流した。反応終了後、反応液を室温に戻して減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=19:1)で精製して5−(ブロモメチル)−2−クロロ−3−フルオロピリジン3.06g(収率51%)を得た。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):4.45(2H,s),7.54(1H,dd),8.23(1H,s)。
【0153】
上記の方法で得た5−(ブロモメチル)−2−クロロ−3−フルオロピリジン50 mg(0.22 mmol)を無水アセトニトリル5 mlに溶かし、前述の方法で得られた2,2,2−トリフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミド42 mg(0.22 mmol)、炭酸カリウム36 mg(0.26 mmol)の順に加えて7時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温に戻して不溶物をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。これにジエチルエーテルを加えたところ固体が析出したので、ろ取し、ジエチルエーテルで洗浄後デシケーターで減圧乾燥して目的物を得た。収量29 mg(収率40%)。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):5.54(2H,s),6.89(1H,td),7.76(1H,dd),7.80(1H,td),7.85(1H,d),8.29(1H,d),8.57(1H,d)
MS:m/z=334(M+H)。
【0154】
合成例29:N−〔1−((6−ブロモピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2,2−トリフルオロアセタミド(化合物3)の合成
2−ブロモ−5−メチルピリジン500 mg(2.92 mmol)を四塩化炭素15 mlに溶解し、N−ブロモスクシンイミド623 mg(3.50 mmol)、過酸化ベンゾイル10 mgを加えて19時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温に戻して減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン;酢酸エチル=19:1)で精製して2−ブロモ−5−ブロモメチルピリジン143 mg(収率20%)を得た。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):4.42(2H,s),7.47(1H,d),7.59(1H,dd),8.38(1H,d)。
【0155】
上記の方法で得た2−ブロモ−5−ブロモメチルピリジン70mg(0.28mmol)を無水アセトニトリル10mlに溶かし、前述の方法で合成した2,2,2−トリフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミド54mg(0.28mmol)、炭酸カリウム46mg(0.34mmol)の順に加えて、6時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温に戻して不溶物をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。これにジエチルエーテルを加えたところ固体が析出したので、ろ取し、ジエチルエーテルで洗浄後デシケーターで減圧乾燥して目的物を得た。収量81mg(収率82%)。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):5.52(2H,s),6.88(1H,t),7.48(1H,d),7.78(2H,m),7.84(1H,d),8.44(1H,d),8.53(1H,d)
MS:m/z=360(M+H)。
【0156】
合成例30:2−クロロ−N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2−ジフルオロアセタミド(化合物4)の合成
2−アミノピリジン200mg(2.13 mmol)をジクロロメタン5mlに溶解し、EDC-HCl491mg(2.55mmol)、ジメチルアミノピリジン 311 mg(2.55mmol)、クロロジフルオロ酢酸187μl(2.23mmol、290mg)の順に加えて一晩攪拌した。反応終了後、反応液をジクロロメタンで薄め、水、1%塩酸で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥して2−クロロ−2,2−ジフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミド105mg(収率24%)を得た。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):7.19(1H,dd),7.82(1H,m),8.18(1H,d),8.36(1H,d),9.35(1H,brs)。
【0157】
前述の方法で合成した2−クロロ−2,2−ジフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミド68mg(0.33mmol)に、無水アセトニトリル6mlに溶解した2−クロロ−5−クロロメチルピリジン53mg(0.33mmol)を加え、続いて炭酸カリウム50mg(0.36mmol)を加えて1時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温に戻してから減圧濃縮した。これにジエチルエーテルを加えたところ固体が析出したので、ろ取し、乾燥することで目的物を得た。収量49mg(収率45%)。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):5.56(2H,s),6.92(1H,t),7.33(1H,d),7.82(1H,m),7.91(1H,dd),8.02(1H,d),8.45(1H,d),8.48(1H,d)
13C-NMR(CDCl3,δ,ppm):53.8,115.2,120.1(t),122.1,124.8,139.0,140.0,142.3,150.0,151.9,159.1,159.1,165.8(t)
MS:m/z=332(M+H)。
【0158】
合成例31:2,2,2−トリクロロ−N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕アセタミド(化合物5)の合成
合成例16の方法で得られた1−〔(6−クロロピリジン−3−イル)メチル〕ピリジン−2(1H)−イミン塩酸塩70mg(0.27mmol)を無水ジクロロメタン4mlに懸濁し、トリエチルアミン94μl(0.68mmol、68mg)、トリクロロアセチルクロリド33μg(0.27mmol、49mg)の順に加えて室温で1時間攪拌した。反応終了後、水を加えて反応停止し、ジクロロメタンと水で分液した。有機層を水で1回、1%塩酸で2回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮した。これにジエチルエーテルを加えたところ、固体が析出したので、ろ取、乾燥して目的物を得た。収量61mg(収率62%)。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):5.59(2H,s),6.86(1H,t),7.32(1H,d),7.78(1H,td),7.91(2H,m),8.43(1H,d),8.50(1H,d)
MS:m/z=364(M+H)。
【0159】
合成例32:N−[1−((2−クロロピリミジン−5−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン]―2,2,2−トリフルオロアセタミド(化合物6)の合成
2−クロロ−5−メチルピリミジン1.04g(8.13mmol)を四塩化炭素30mlに溶かし、N−ブロモスクシンイミド1.73g(9.75mmol)、過酸化ベンゾイル20mgを加えて、6時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温に戻して減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製して5−ブロモメチル−2−クロロピリミジン641mg(収率38%)を得た。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):4.42(2H,s),8.66(2H,s)。
【0160】
上記の方法で得た5−ブロモメチル−2−クロロピリミジン104 mg(0.50mmol)を無水アセトニトリル6mlに溶解し、前述の方法で得られた2,2,2−トリフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミド96 mg(0.50 mmol)、炭酸カリウム76mg(0.55mmol)を加えて1時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温に戻して不溶物をろ過して取り除き、ろ液を減圧濃縮した。これにジエチルエーテルを加えたところ固体が析出したので、ろ取し、ジエチルエーテルで洗浄後デシケーターに入れて減圧乾燥して目的物を得た。収量92mg(収率58%)。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):5.54(2H,s),6.98(1H,m),7.87(1H,m),8.18(1H,m),8.48(1H,m),8.83(2H,m)
13C-NMR(CDCl3,δ,ppm):60.0,115.6,117.1(q),122.1,127.5,139.2,142.9,158.8,160.3(2C),161.4,163.8(q)
MS:m/z=317(M+H)。
【0161】
合成例33:N−[1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン]−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパナミド(化合物7)の合成
2−アミノピリジン300mg(3.19mmol)を無水ジクロロメタン15mlに溶解し、EDC-HCl919mg(4.78mmol)、DMAP583mg(4.78mmol)、ペンタフルオロプロピオン酸397μl(628mg、3.83mmol)の順に加えて室温で一晩攪拌した。反応終了後、反応液をジクロロメタンで薄め、水で1回、1%塩酸で2回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮して2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)プロパナミド85mg(収率11%)を得た。
【0162】
上記の方法で得た2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)プロパナミド77mg(0.32mmol)に、無水アセトニトリル8mlに溶解した2−クロロ−5−クロロメチルピリジン52mg(0.32mmol)、炭酸カリウム49mg(0.35mmol)を加え、11時間加熱還流した。反応終了後、反応液を室温に戻して不溶物をろ過し、ろ液を減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:3)で精製して目的物を得た。収量12mg(収率10%)。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):5.56(2H,s),6.90(1H,td),7.32(1H,d),7.79(2H,m),7.84(1H,d),8.43(1H,d),8.56(1H,d)
MS:m/z=366(M+H)。
【0163】
合成例34:N−〔1−((6−クロロピリジン−3−イル)メチル)ピリジン−2(1H)−イリデン〕−2,2−ジフルオロアセタミド(化合物8)の合成
2−アミノピリジン400mg(4.26mmol)を無水ジクロロメタン10mlに溶解し、ジフルオロ酢酸322μl(490mg、5.11mmol)、EDC-HCl982 mg(5.10mmol)、DMAP622mg(5.11mmol)を加えて、室温で61時間攪拌した。反応終了後、反応液をジクロロメタンで薄め、水で1回、1%HClaq.で2回洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥、減圧濃縮して2,2−ジフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミド 102mg(収率14%)を得た。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):6.03(1H,t),7.15(1H,m),7.78(1H,td),8.20(1H,d),8.34(1H,dd),8.72(1H,brs)。
【0164】
前述の方法で得られた2,2−ジフルオロ−N−(ピリジン−2(1H)−イリデン)アセタミド100mg(0.58mmol)を無水アセトニトリル10mlに溶解し、2−クロロ−5−クロロメチルピリジン94mg(0.58mmol)を無水アセトニトリル5mlに溶解して加え、続いて炭酸カリウム84mg(0.63mmol)を加えて140分加熱還流した。反応終了後、反応液を室温に戻し、不溶物をろ過して取り除いて減圧濃縮した。これにエーテルを加えると固体が析出したので、ろ取し、よく乾燥して目的物を得た。収量63mg(収率37%)。
1H-NMR(CDCl3,δ,ppm):5.52(2H,s),5.90(1H,t),6.79(1H,td),7.33(1H,d),7.71(1H,m),7.77(1H,dd),7.85(1H,dd),8.45(1H,d),8.50(1H,d)
13C-NMR(DMSO-d6,δ,ppm):53.0,111.0(t),115.2,120.7,124.7,131.7,140.6,141.6,143.2,150.4,150.9,158.3,169.4(t)
MS:m/z=298(M+H)。
【0165】
試験例1
コナガ防除試験
ポット栽培のキャベツから直径5.0 cmのリーフディスクを切り抜き、これに50%アセトン水(0.05%Tween20加用)となるように調製した500 ppmの式(I)で表わされる化合物の薬液を散布した。風乾後、これに2令幼虫を放飼した。その後、これを25℃の恒温室(16時間明期-8時間暗期)に放置した。放飼3日後に虫の生死を観察し、次式に従って死虫率を算出した。試験は2連制により行った。
死虫率(%)={死亡虫数/(生存虫数十死亡虫数)}×100。
【0166】
試験例2
ワタアブラムシ防除試験
ポット栽培のキュウリから直径2.0 cmのリーフディスクを切り抜き、これに50%アセトン水(0.05%Tween20加用)となるように調製した500 ppmの式(I)で表わされる化合物の薬液を散布した。風乾後、これに1令幼虫を放飼した。その後、これを25℃の恒温室(16時間明期-8時間暗期)に放置した。放飼3日後に虫の生死を観察し、次式に従って死虫率を算出した。試験は2連制により行った。
死虫率(%)={死亡虫数/(生存虫数十死亡虫数)}×100。
【0167】
試験例3
ヒメトビウンカ防除試験
播種48時間後のコムギ苗根部を、10%アセトン水となるように調製した100 ppmの式(I)で表わされる化合物の薬液を200 μL処理した。72時間根部より薬剤を吸収させた後、これにヒメトビウンカ2令幼虫を10頭ずつ放飼した。その後、25℃の恒温室(16時間明期-8時間暗期)に放置した。放飼4日後に虫の生死を観察し、次式に従って死虫率を算出した。試験は2連制により行った。
死虫率(%)={死亡虫数/(生存虫数十死亡虫数)}×100。
【0168】
試験例1〜3の結果として表2に式(I)で示される有害生物防除剤の具体的な生物活性(死虫率(%))を示す。
【0169】
【表2】
【0170】
<薬剤低感受性害虫に対する効果>
参考例 トビイロウンカ防除試験
ポット栽培のイネ苗に、10%アセトン水となるように調製した所定濃度の本発明化合物の薬液を土壌潅注処理した。処理3日後、これに感受性、もしくは、薬剤低感受性トビイロウンカ2令幼虫を10頭ずつ放飼した。その後、25℃の恒温室(16時間明期-8時間暗期)に放置した。放飼3日後に虫の生死を観察し、次式に従って死虫率を算出した。試験は2連制により行った。
死虫率(%)={死亡虫数/(生存虫数十死亡虫数)}×100。
【0171】
なお、試験害虫は、長期間室内において累代飼育された虫(感受性系統)、(I)2007年熊本県内、(II)2005年福岡県内において、それぞれ採集された後、室内において累代飼育された虫(野外採集系統)を使用した。
【0172】
その結果、化合物1はいずれの系統に対しても0.05mg/苗の処理で死虫率100%、0.005mg/苗の処理で死虫率90%以上を示した。また、化合物2は、0.01mg/苗の処理で、死虫率が(感受性系統)72%、(II)70%であり、化合物19は、0.01mg/苗の処理で、死虫率が(感受性系統)100%、(II)93%であった。一方、イミダクロプリドは、0.05mg/苗の処理で死虫率(感受性系統)100%、(I)40%、(II)60%であった。
【0173】
この結果より、化合物1は、イミダクロプリド低感受性のトビイロウンカに対して、高い殺虫活性を有することが示された。
【0174】
参考例 ヒメトビウンカ防除試験
ポット栽培のイネ苗に、10%アセトン水となるように調製した所定濃度の本発明化合物の薬液を土壌潅注処理した。処理3日後、これに感受性、もしくは、薬剤低感受性ヒメトビウンカ2令幼虫を10頭ずつ放飼した。その後、25℃の恒温室(16時間明期-8時間暗期)に放置した。放飼3日後に虫の生死を観察し、次式に従って死虫率を算出した。試験は2連制により行った。
死虫率(%)={死亡虫数 /(生存虫数十死亡虫数)}×100。
【0175】
なお、試験害虫は、長期間室内において累代飼育された虫(感受性系統)、2006年熊本県内において採集された後、室内において累代飼育された虫(野外採集系統)を使用した。
【0176】
その結果、化合物1はいずれの系統に対しても0.01mg/苗の処理で死虫率100%、0.005mg/苗の処理で死虫率90%以上を示した。また、化合物3は、0.01mg/苗の処理で、死虫率が(感受性系統)100%、(野外採集系統)90%であった。一方、イミダクロプリドは、0.01 mg/苗の処理で死虫率(感受性系統)100%、(野外採集系統)50%であった。また、フィプロニルは、0.01mg/苗の処理で死虫率(感受性系統)100%、(野外採集系統)70%であった。
【0177】
この結果より、化合物1、3は、イミダクロプリド、および、フィプロニル低感受性のヒメトビウンカに対して、高い殺虫活性を有することが示された。
【0178】
参考例 化合物1及びイミダクロプリドのイエバエ粗酵素抽出液を用いたin vitro代謝試験
Pest Management
Science(2003),59(3),347-352、およびJournal of Pesticide
Science(2004),29(2),110-116に記載されているように、イミダクロプリドは酸化的な代謝を受け、不活化されることが知られており、抵抗性獲得の機構のひとつとしても考えられている。このような抵抗性を獲得した害虫に対する効果を確認するために以下の実験を行った。
【0179】
イエバエ成虫(0.645 g)に、10mLのリン酸カリウム緩衝液(pH7.4,1mM EDTA含有)を添加し、ヒスコトロン(日音医理科器械製作所)により十分に磨砕した。その後、10,000g、15分間の条件にて、磨砕物を遠心分離した。得られた上清液を、さらに、100,000g,60分間の条件で遠心分離を行い、沈殿物を得た。この沈殿物を1mLのリン酸カリウム緩衝液に溶解させ、これを粗酵素液として使用した。酵素抽出作業は、全て氷上、もしくは、4℃の条件で行った。
【0180】
1.5 mL容のチューブに以下の割合で試薬を混合し、25℃で40時間反応させた。反応後、アセトン1 mLを加えて撹拌し、生じた沈殿を12000rpmで5分間遠心除去した。上清のアセトンを留去し、LC/MSに注入して分析を行った。
【0181】
上記粗酵素抽出液:300μL
化合物1のDMSO溶液:5μL
グルコース6リン酸溶液:5μL
NADP+溶液:5μL
グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ溶液:5μL
リン酸カリウム緩衝液(pH7.4, 1 mM
EDTA含有):180μL。
【0182】
<分析条件>
カラム:カプセルパックC18 MG
移動相組成:
0〜3分:85%水、5%アセトニトリル、10%ギ酸水溶液(0.1v/v%)
3〜30分:85→25%水、5→65%アセトニトリル、10%ギ酸水溶液(0.1v/v%)
30.1〜36分:90%アセトニトリル、10%ギ酸水溶液(0.1v/v%)
カラム温度:40℃ 流速:0.35 mL/分 注入量:100 μL
UV波長:化合物1:325nm
:イミダクロプリド:300nm。
【0183】
その結果、代謝物の面積%の合計は、化合物1がO.08であるのに対し、イミダクロプリドは2.55であり、イミダクロプリドと比較して、化合物1の代謝物の量は少なかった。以上の結果により、イミダクロプリドを代謝不活化する抵抗性害虫に対しても、化合物1が有効に防除できることが示された。
【0184】
<動物寄生性害虫に対する防除効果>
参考例 フタトゲチマダニ防除試験
本発明の化合物の200ppm、10ppmのアセトン溶液30μLを、4mL容ガラスバイアルに入れた。これをシェーカーに載せて、回転させながら風乾してバイアル内壁に化合物のドライフィルムを形成させた。24時間以上、バイアルを乾燥させた後、これにフタトゲチマダニ幼ダニ10頭を放飼して、蓋をした。バイアルは、25℃、湿度85%、全暗条件の恒温室に静置した。放飼1日後に生死を観察し、次式に従って死虫率を算出した。試験は、2連制により行った。
死虫率(%)={死亡虫数/(生存虫数十死亡虫数)}×100。
【0185】
その結果、200 ppmの処理量において、化合物1、化合物9が死虫率80%以上の殺ダニ効果を示した。
【0186】
10 ppmの処理量において、化合物1、化合物9が死虫率80%以上の高い殺ダニ効果を示した。
【0187】
同様の試験において、イミダクロプリドは10 ppmの処理量において、死虫率4%であった。
【0188】
参考例 マウス体表でのフタトゲチマダニ防除効果
マウス(ICR、雄、5週令)の背面体毛を直径約2cm刈り、そこに高さ約1.5cmに切取った15mLポリスチレンコニカルチューブを、瞬間接着剤を用いて接着した。
【0189】
以下の処方で調製した有害生物防除剤の1000倍希釈液20μLを、接着したチューブ内のマウス体表に滴下した。十分に乾燥させた後、フタトゲチマダニ幼ダニ10頭以上をチューブ内に放飼して蓋をした。放飼3日後にフタトゲチマダニの生死を観察し、次式に従って吸血阻害率を算出した。
処方〔液化滴剤〕
化合物1 48重量%
エタノール 52重量%
上記成分を均一に混合して液化滴剤を得た。
吸血阻害率(%)=100−{吸血ダニ数/(生存ダニ数十死亡ダニ数)}×100。
【0190】
その結果、化合物1は、吸血阻害率91%というフタトゲチマダニ防除効果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0191】
以上説明したように、本発明によれば、有害生物防除剤として有用な、前記式(I)で示される2−アシルイミノピリジン誘導体を、必要に応じてワンポットで効率的に収率良く製造することができ、ひいては、有害生物防除剤として求められる量を安定して、安価に供給することができる。従って、本発明は、有害生物の防除の分野において大きく貢献しうるものである。
図1
図2
図3
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図7
図8
図9