特許第6092779号(P6092779)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092779
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】注射デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20170227BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   A61M5/32 510K
   A61M5/20 510
   A61M5/20 570
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-533277(P2013-533277)
(86)(22)【出願日】2011年9月19日
(65)【公表番号】特表2013-540016(P2013-540016A)
(43)【公表日】2013年10月31日
(86)【国際出願番号】GB2011051754
(87)【国際公開番号】WO2012049468
(87)【国際公開日】20120419
【審査請求日】2014年9月17日
(31)【優先権主張番号】61/394,896
(32)【優先日】2010年10月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1017363.1
(32)【優先日】2010年10月14日
(33)【優先権主張国】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501410160
【氏名又は名称】オウエン マンフォード リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】トビー コウェ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー マーシャル
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/076569(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0086089(US,A1)
【文献】 国際公開第2009/141650(WO,A2)
【文献】 特開2010−000300(JP,A)
【文献】 特開2002−119589(JP,A)
【文献】 特表2011−520545(JP,A)
【文献】 特開2008−000554(JP,A)
【文献】 特表2010−532189(JP,A)
【文献】 特開昭52−131684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20− 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長いハウジング(10)と、
前端の針(16)から1回分の投与量を放出するための内部ピストン(20)を有していて、前記ハウジング内に配置されるシリンジ(12)と、
使用後の前記針を覆うように前記シリンジに対して前方に移動可能なシュラウド要素(24)と、
前記シュラウド要素の後方への移動を制限するラッチ状態と解放状態との間を移動可能なラッチ(74)と、を有する注射デバイスであって、
前記ラッチ(74)は、磁力(56)によって前記ラッチ状態に移動され
前記注射デバイスは、前記内部ピストンを駆動する、長手方向に移動可能なプランジャ(48)をさらに含んでおり、
前記ラッチ(76)は、前記ラッチ又は前記ラッチに関連付けられる部分と、前記プランジャと、の間に作用する磁力(56)によって移動されることを特徴とする注射デバイス。
【請求項2】
前記プランジャ(48)及び前記ラッチ(74)の一方は、磁石を備えているか又は磁化されており、
前記プランジャ(48)及び前記ラッチ(74)の他方は、前記プランジャ(48)及び前記ラッチ(74)の一方に対して磁気的に駆動される強磁性部分を有する、請求項に記載の注射デバイス。
【請求項3】
前記プランジャ(4)は、磁石(56)を内蔵しているか又は磁化されており、
前記ラッチ(74)は、強磁性材料から形成された部分(76)を含む、請求項に記載の注射デバイス。
【請求項4】
前記ラッチ(74)は、後端部分において前記ハウジング(10)内に固定されるとともに、前方領域においてラッチ面を形成するように前方に延在している、請求項1〜のいずれか1つに記載の注射デバイス。
【請求項5】
前記シュラウド要素(24)は、前記ハウジングに対して入れ子状に移動するように装着された円筒部分を有する、請求項1〜のいずれか1つに記載の注射デバイス。
【請求項6】
前記シュラウド要素(24)は、一体的に形成された部品の前方部分を有しており、該部品は、前記シリンジが受容されるキャリア部分(28)を備えるとともに、前記シュラウド要素から後方に延在しているばね部分(26)を含む、請求項1〜のいずれか1つに記載の注射デバイス。
【請求項7】
前記ラッチ(74)と前記プランジャ(48)との間に作用する前記磁力の少なくとも一成分は、前記プランジャのストロークの終端に向かって前記ピストン(20)を前方に付勢する付勢作用を助勢する方向を向いている、請求項1〜6のいずれか1つに記載の注射デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射デバイスに関し、特に、限定されないものの、シリンジが細長いハウジング内に配置されており、シュラウド要素が使用後のシリンジに対して前方に移動して針を覆うようになっており、それによって偶発的な針刺し損傷のリスクが最小限に抑えられるタイプの注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ラッチ機構は、信頼性の高いものであることが重要であり、特に注射デバイスが再利用可能である場合には、長期間の保管中であっても、例えばばね特性や塑性クリープ等の変化に起因してラッチ特性が顕著に変化しないことが重要である。従来技術には、シュラウド要素が、可撓性を有するプラスチック製のフィンガー等を通り越してスナップ留めされることによってラッチされるようになっているデバイスの多くの例が含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2005/002653号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、ラッチを作動させるのに磁力が用いられるようなデバイスの代替品を発明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明は、一態様において、細長いハウジングと、前端の針から1回分の投与量を放出するための内部ピストンを有していて、前記ハウジング内に配置されるシリンジと、使用後の針を覆うように前記シリンジに対して前方に移動可能なシュラウド要素と、前記シュラウド要素の後方の移動を制限するラッチ状態と解放状態との間を移動可能なラッチと、を有する注射デバイスを提供する。前記ラッチは、磁力によってラッチ状態に移動される。
【0006】
磁力が付与される態様は、適用例ごとに大きく異なりうる。シリンジがピストン駆動用の長手方向に移動可能なプランジャを有する一装置では、ラッチ(又はラッチと関連付けられる部分)と前記プランジャとの間に作用する磁力によってラッチが移動されうる。この装置では、プランジャがストロークの終端又はその近傍に到達することによって、引力又は斥力によってラッチをラッチ状態まで磁気的に駆動できる。そのような装置において、プランジャ及びラッチの一方は磁石を備えうるか又は磁性を有しうる。そして、プランジャ及びラッチの他方は強磁性部分を有しうる。或いは、プランジャ及びラッチは、一緒の極性又は別々に向けられた極性を有する複数の磁石をそれぞれ備えうる。
【0007】
特定の一装置において、ラッチは強磁性金属で形成されうる。ラッチはラッチ状態と解放状態との間を前後に往復移動する要素でありうるものの、特定の一装置において、ラッチの後端部分は、注射デバイスのハウジング内に固定されており、かつ、固定箇所の前方領域にラッチ面を形成するように固定箇所から前方に延在している。シュラウド要素は、多くの形態を取りうるものの、ハウジングに対して入れ子状に移動可能な円筒部分を有しうることが好都合である。
【0008】
ラッチ及び前記プランジャの間に作用する前記磁力の少なくとも一成分は、プランジャのストロークの終端に向かってピストンを前方に付勢する付勢作用を助勢する方向を向いていることが好ましい。
【0009】
より一般的には、本発明は、注射段階における所定の動作が磁力によって実現され、開始され、又は増強される注射デバイスにも及ぶ。
【0010】
注射デバイスのデザインにおいて認められる潜在的な問題は、シリンジの内部ボアの長さ部の前方においてシリコーン処理(siliconisation)が劣化することに起因して、1回分の投与量を一定速度でシリンジから放出するのに必要な力がストロークの終端に向かって増大することである。多くのばね駆動式システムにおいて、ばねはフックの法則に従うので、力によって生じる力は、ばねが延伸するほど小さくなる。従って、力が増大することが実際には望ましい場合であっても、ストローク中に付与される力は低下する。この問題は、定力ばねの使用によって部分的に対処可能であるものの、それら定力ばねは高価であるし、必要とされるような増大する力を依然として付与しない。従って、本発明者らは、ストロークの終端に向けてピストンに加えられる力が磁力を付加することによって増強される注射デバイスを発明した。
【0011】
従って、別の態様によると、本発明は、1回分の投与量を注射する注射装置を提供する。前記装置は、1回分の投与量を前端から放出するための内部ピストンを有するシリンジと、1回分の投与量が放出されるようにピストンをシリンジ内において前方に付勢する駆動手段と、を有する。そして、前記装置は、ピストンの前進ストロークの終端に少なくとも向かう前方移動を助勢するように、磁力を前記ピストンに直接的又は間接的に付与する付与手段をさらに含む。
【0012】
多くの注射デバイスでは、シリンジが前方に移動することによって、注射部位が穿刺されるように針を延伸させることを目的として、駆動プランジャの運動がシリンジの本体に最初に付与される。駆動プランジャは、シリンジに対する前方移動が抑止された状態にある。シリンジが一旦既定の前方位置に到達すると、プランジャが解放されてシリンジに対して移動することによってピストンを付勢し、1回分の投与量が放出される。このような一連の手順を実行する種々のシステムが実在するものの、それらの一部は非常に複雑であって、入り組んだラッチ解除機構を必要とするので、結果的に部品数が多くなるとともに付随する金型費用及び組立費用が高くなる。本発明者らは、摩擦結合部としてOリングを使用する部品数の少ないデバイスについて特許文献1に既に記載した。今回、本発明者らは、摩擦作用を利用することなく少ない部品数を維持する追加のデザインを発明した。さらに、結合部が一旦降伏すると、結合部には、固有の摩擦作用がほとんど残存しないか又は全く残存しない。
【0013】
この態様において、本発明は、ハウジングと、針を前端に備えていて、前記針を介して1回分の投与量を放出するための内部ピストンをスライド可能に受容するボアを備えている概ね中空円筒状の本体を有するとともに、後方位置と前方限界位置との間を移動するように本体内に装着されるシリンジと、前方に移動するように解放可能であって、それにより前記シリンジが前方に移動されるとともに次いで1回分の投与量が放出されるようになっている、解放可能な駆動プランジャと、プランジャと前記シリンジの本体との間に作用する磁気結合部と、を有する注射デバイスを提供する。磁気結合部は、プランジャの前方移動を前記シリンジの本体に伝達する一方、前記シリンジが前記前方限界位置又はその近傍に到達するときに降伏することで、前記プランジャの前端がシリンジのボア内で前記ピストンを前方に付勢して前記1回分の投与量を放出できるようにする。
【0014】
このように、プランジャとシリンジ本体との間の磁気結合部が一旦降伏すると、プランジャと前記シリンジ本体との間に摩擦力又は抗力による相互作用がほとんど生じないか又は全く生じないので、プランジャの最初の力の概ね全体がピストンに加えられる。
【0015】
磁気結合部は種々の形態を取りうるが、典型的には、前記シリンジと係合しかつ前記シリンジを前方に付勢するスラスト部材を有しうる。スラスト部材は、前記プランジャと磁気的に結合される。従って、スラスト部材及びプランジャの一方が磁化された部分を含み、かつ、他方が強磁性部分を含みうるか、又は前記スラスト部材及び前記プランジャの各々が磁化された部分を含みうる。
【0016】
本発明は上記のように説明されたが、本発明は上記に示されているか又は本明細書若しくは添付図面に記載されている任意の発明的な組み合わせにも及ぶ。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る第1実施形態の自己注射器の分解図である。
図2】組み立て後かつ使用前の状態の図1の自己注射器の側断面図である。
図3】(a)は、キャップが所定位置にある状態の自己注射器の側断面図であり、(b)は、キャップが取り外された状態の自己注射器の水平断面図である。
図4】(a)は、プランジャの解放直前であって起動ボタンが部分的に押された状態の自己注射器の側断面図であり、(b)は、プランジャの解放直前であって起動ボタンが部分的に押された状態の自己注射器の水平断面図である。
図5】(a)は、シリンジが最前位置にある状態の自己注射器の側断面図であり、(b)は、ピストンの始動後間もない自己注射器の側断面図であり、(c)は、注射完了段階における自己注射器の側断面図である。
図6】シュラウドが延出されかつ磁気作動式のラッチによって係止された状態における使用後のデバイスを示す図である。
図7】第2実施形態の自己注射器の側断面図である。
図8】陰影付き側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は種々の態様で実施されうるものであり、以下では、添付図面を参照して、本発明の2つの実施形態が例示のみの目的で説明される。
【0019】
最初に図1〜3を参照すると、自己注射器は、円筒形状を有する外部ハウジング10を有し、外部ハウジング10のボアには、公知の形態を有するシリンジ12が配置される。シリンジ12は、胴部14と、前端から延在する針16と、シリンジ12の後端に設けられたフランジ18と、を備えている。シリンジ内には薬剤が含まれており、薬剤は胴部内のピストン20によって針を介して放出可能である。シリンジは、成形プラスチックのシュラウド/キャリア組立体22によって支持されかつ包囲されている。シュラウド/キャリア組立体22は、直径方向において対向しているばね26が両側に一体的に形成された前方の中空円筒部分24と、シリンジのフランジの前面と係合するようにされたカラー28と、を有する。カラーの後方には、直径方向において互いに対向している2つの空隙形成フィンガー(clearance finger)30が延在している。空隙形成フィンガー30は、後述するように中間部材に係合する返し付きの歯部32を備える。図3(a)に示される使用前の位置では、ハウジングの後部の内面に設けられていて、直径方向において互いに対向する溝34のそれぞれの底部によって、返し付きフィンガーの外向きの傾斜移動(splaying movement)が防止される。使用前の位置において、シュラウド部分24は、ハウジングの前端の内部に入れ子状に受容されており、かつ、ハウジングの前端と隣接している。
【0020】
ハウジングの後部には、ハウジングの後部における横断内壁部38の前面と、シルクハット形状を有する中間部材42の前方フランジ40と、の間において作用する外側の第1ばね36を有する駆動機構が設けられる。内側の第2ばね44は、中間部材42の円筒部分の内部に受容されていて、中間部材42の後端壁部の内面とプランジャ48の前方部分の周方向リブ46との間において作用している。プランジャは、弾性を有するフック状アーム50(図1図3(b)参照)を後端に有する。フック状アーム50は、ハウジングの横断内壁部38の開口部の縁部の周囲において係止される。ハウジングの後端からは、軸線方向にスライド可能な拘束型のトリガボタン52が突出している。トリガボタン52は、解放フィンガー54がフック状アーム50の後方に離間して位置する、例えば図3(b)に示される位置から、壁部38による保持作用を解放するようにフィンガー54がフック状アームにカム係合する前方部分まで、後方への付勢作用に対抗して移動可能である。それにより、トリガボタン52は、ばね36,44によってプランジャ48を前方に駆動することができる。プランジャは、シリンジ胴部14の内部ボアに進入して前進するとともに、1回分の投与量が放出されるようにピストン20を付勢できるように形成され、寸法決めされる。プランジャの前端には、小型の強力磁石56が設置される円筒状の凹部が設けられる。
【0021】
トリガボタン52は、前方に延在する2つの一体型のばね式アーム58によって後方に付勢されている。ばねアーム58は、ハウジング後部の内部において当接部62に跨るようにそれぞれに接触するカム面60を備えている。ただし、最初は、キャップ66の後端から後方に延在する2つの係止アーム64によって、トリガボタンの前方移動が防止されている。キャップはハウジングの前端の全体を覆っており、爪機能部(claw features)70を備える内方に向けられた円筒部分68を有している。爪機能部70は、製造時に針の前端に取り付けられる針シールド72の後端にすべり嵌合している。従って、キャップ66は、トリガボタン52の安全捕捉部としての機能を発揮するとともに、シールドのリムーバとしての役割を果たす。ハウジングの前端の内部には、プレス加工された鋼又は他の強磁性材料から形成されており、2つのラッチアーム76を具備しているラッチ74が固定される。2つのラッチアーム76は、固定箇所から前方に延在しており、シュラウド24とハウジング壁部の内側部との間の環状空間に通常は配置されている。
【0022】
作動時に、ユーザは、キャップ66を前方に引き抜き、針シールド22をシリンジから取り外し、トリガボタン52を作動状態にすることによってデバイスを起動可能にする。その後、ユーザは、注射デバイスを注射部位に付与し、そして、トリガボタン52を押圧する。これによって、図4(b)においてより具体的に示されるように、プランジャ48のフック状アーム50が解放される。プランジャが一旦解放されると、第1ばね36が伸長することによってシリンジ20が延出され、それにより針が体内に穿刺されるようになる。このとき(図5(a)参照)、第2ばね44は概ね完全に圧縮されたままであり、プランジャ48はシリンジ内でピストン20に対して圧接しているものの、ピストン20をシリンジに対して移動させることはない。穿刺の初期段階において、シリンジ支持カラー28の空隙形成フィンガー32は、外向きの傾斜移動に対して溝34によって拘束されているので、シリンジのフランジ18と中間部材42のフランジ40との間の空隙は、それらフィンガーが拘束作用を有する溝と係合状態にある間は維持される。
【0023】
最下点に到達した圧縮ばね部分26によってシリンジの前方移動が捕捉されるのと概ね同時に、フィンガー32は、拘束作用を有する溝34から離脱する。皮膚表面との接触によって、シュラウド24は移動に対して保持されている。シリンジが捕捉されると、第1ばね36が伸長し続けることによって、中間部材のフランジ40が駆動されてシリンジのフランジ18に係合するので、シリンジ前方へのピストンの移動を開始するのに必要な力が付与される(図5(b))。この位置から第2ばね44が伸長することによって、ピストンがシリンジの胴部の前方に駆動され、1回分の投与量が放出される。注目すべきは、ピストンの行程が終了した時点で、プランジャの磁石56が、図5(c)に示されるように、ラッチ74のラッチアーム76どうしの間の空間内に配置されることである。1回分の投与量が放出された後は、ユーザが人体からデバイスを引き離すことによって、シュラウド部分24が圧縮ばね部分26による影響を受けて自由に伸長するようになる。シュラウド部分は、ばね26によってラッチアーム76の先端を越えて前方に駆動される。一旦そうなれば、ラッチアームは、磁石20による影響を受けて、図6に示されるラッチ位置に向かって自由に内向きに移動するようになる。従って、シュラウド部分24が係止され、それによってデバイスが安全な状態にされる。
【0024】
図示されない他の実施形態では、プランジャがストロークの終端に接近するときに磁気的な推進作用が発揮されるように、シリンジの周囲又は前方のハウジングの前端に1つ又は2つ以上の追加の磁石又は強磁性材料体が配設されうる。また、磁石(単数又は複数)及び相互作用する部品の正確な位置は変更可能であることが理解されるであろう。
【0025】
続いて図7及び図8を参照すると、第2実施形態は、多くの第1実施形態と同一の構成要素を有しており、それら構成要素は、同様の態様で作用する。それら構成要素には、同一の符号が付与されており、それらについて再度詳細に説明されることはない。この第2実施形態には、初期の穿刺段階の動作においてプランジャが強磁性材料からなるスラストカラー80と磁気的に結合されるように形成されている磁気結合部の実施形態が、プランジャ48及びシリンジの間に組み込まれている。強磁性材料からなるスラストカラー80は、シリンジのフランジ18の後面と接触するように位置決めされている。従って、プランジャ48及びシリンジ18は、相対移動に対して最初は保持されているので、針が注射部位に挿入された状態においてシリンジが最前端位置に到達することによって捕捉されるまでのこの段階において、プランジャ48及びシリンジ18は一体となって移動する。シリンジが捕捉されると、プランジャに作用するばねの力が磁気的な結合力に打ち勝ち、結合部が降伏する。それによりプランジャが解放され、プランジャがシリンジに対して前方に移動できるようになる。そして、プランジャがピストンと接触するように移動されるとともに、1回分の投与量が放出されるようにピストンが前方に付勢される。前述したのと同様に、プランジャが強磁性を有するラッチアーム76に沿って移動するときに、それらラッチアーム76が内向きに引き寄せられる。この作用は、本実施形態において2つの磁石82をラッチアームの前端に設けることによって増強される。それら磁石は、プランジャの磁石56に向かって取り付けられるとともに、プランジャの磁石56に引力を作用させるように配列されるので、磁気の影響による前方への推進作用をストロークの最前端に向かうプランジャに付与することができる。注射及び注射部位からのデバイスの取り外しが完了すると、ばね部分26が再び伸長するのに従ってシュラウド24が前方に延出するとともに、シュラウドの後方リップが磁石を通り越すのに従って、ラッチアームがシュラウドの後退移動を阻止するように内向きに移動する。それによってシュラウドが係止される。磁石82は、ハウジング壁部の貫通穴にスライド可能に収容されうるので、磁石82は、シュラウドの後方リップが磁石を通過するのに従って、ラッチアームと一緒に内向きに移動することができる。それによって、シュラウド24の係止状態が視覚及び触覚によって確認されるようになる。
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図6
図7
図8