(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(a) 少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤と、(b) 少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤と、(c) メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ぺンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、エチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、フェニルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも1種のアルコキシシラン化合物との反応生成物(A)であって、上記(a)、(b)及び(c)成分の合計量100質量部に基づき、(c)成分量は5〜70質量部の割合にある反応生成物(A);リン酸系酸化合物及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも1種の酸安定化剤(B)及び水を含有する、pH4.0〜10.0のバインダ組成物であって、
シランカップリング剤(a)は、シランカップリング剤(b)中のエポキシ基1当量に対し、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の活性水素の量が1.5〜4.0当量となる割合にあり、
反応生成物(A)の少なくとも一部は、上記アミノ基とエポキシ基とが化学結合しており、
反応生成物(A)は、シランカップリング剤(b)に基づく未反応のエポキシ基を実質的に有さず、かつ、シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)に基づく加水分解性基ならびにアルコキシシラン化合物(c)に基づくアルコキシシリル基の実質的に全てがシラノール基に加水分解されており、かつ、500〜20000の範囲内の重量平均分子量を有するものであり、そして
酸安定化剤(B)を、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の中和当量が0.1〜2.0の範囲内となる量で含有する
ことを特徴とする金属表面処理剤用水性バインダ組成物。
シランカップリング剤(a)がN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも1種の化合物であり、シランカップリング剤(b)がγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1に記載の水性バインダ組成物。
(a) 少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤と、(b) 少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤と、(c) メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、エチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、フェニルトリメトキシシラン及びフェニルトリエトキシシランから選ばれる少なくとも1種のアルコキシシラン化合物とを、上記(a)、(b)及び(c)成分の合計量100質量部に基づき、(c)成分量が5〜70質量部の割合で反応せしめることによりシラン反応生成物(A’)を生成し、ついで、シラン反応生成物(A’)に、リン酸系酸化合物及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも1種の酸安定化剤(B)を添加することによりシラン反応生成物の水性液を調製した後、脱溶剤することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水性バインダ組成物の製造方法。
水性媒体中で、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)を加水分解反応させ、ついでこの加水分解反応物と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)及びアルコキシシラン化合物(c)を、酸中和剤を含有する水性媒体中で混合し、加水分解反応及び付加反応させて、シラン反応生成物(A’)を生成せしめる請求項10に記載の水性バインダ組成物の製造方法。
有機溶剤中で又は無溶剤下で、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)と、アルコキシシラン化合物(c)とを付加反応させ、ついでその付加反応物を、酸中和剤を含有する水性媒体中に溶解ないし分散させ、加水分解反応させて、シラン反応生成物(A’)を生成せしめる請求項10に記載の水性バインダ組成物の製造方法。
(a) 少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤と、(b) 少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤と、(c) 式:(R)4-n−Si−(X)n[式中、Rは場合により反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Xはアルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す]で示される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物とを反応させることにより得られる反応生成物(A);リン酸系酸化合物及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも1種の酸安定化剤(B)及び水を含有する、pH4.0〜10.0のバインダ組成物であって、
シランカップリング剤(a)は、シランカップリング剤(b)中のエポキシ基1当量に対し、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の活性水素の量が1.5〜4.0当量となる割合で配合され、
反応生成物(A)の少なくとも一部は、上記アミノ基とエポキシ基とが化学結合しており、
反応生成物(A)は、シランカップリング剤(b)に基づく未反応のエポキシ基を実質的に有さず、かつ、シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)に基づく加水分解性基ならびにアルコキシシラン化合物(c)に基づくアルコキシシリル基の実質的に全てがシラノール基に加水分解されており、かつ、500〜20000の範囲内の重量平均分子量を有するものであり、そして
酸安定化剤(B)を、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の中和当量が0.1〜2.0の範囲内となる量で含有する、金属表面処理剤用水性バインダ組成物の製造方法であって、
アルコール溶剤中又は無溶剤下で、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)及びアルコキシシラン化合物(c)を加水分解反応させた後、その加水分解反応物を、酸中和剤を含有する水性媒体中に溶解ないし分散させ、ついで、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)を添加して加水分解反応及び付加反応させて、シラン反応生成物(A’)を生成せしめ、ついで、シラン反応生成物(A’)に、リン酸系酸化合物及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも1種の酸安定剤(B)を添加することによりシラン反応生成物の水性液を調製した後、脱溶剤することを特徴とする、製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
まず、金属表面処理剤用水性バインダ組成物について説明する。
金属表面処理剤用水性バインダ組成物
【0023】
本発明の金属材料表面処理用バインダ組成物は、少なくとも2種のシランカップリング剤、及び場合によりさらにアルコキシシラン化合物を反応させることにより得られる反応生成物(A)と特定の酸から選ばれる酸安定化剤(B)及び水を含有する、pH4.0〜10.0、好ましくは5.0〜10.0、さらに好ましくは6.0〜10.0の安定なバインダ組成物である。また、本発明のバインダ組成物は、脱溶剤により、有機溶剤含有量を3質量%以下にすることができ、その結果、引火点を有さず、消防法における非危険物扱とすることができる。
反応生成物(A)
【0024】
本発明の水性バインダ組成物における反応生成物(A)は、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)と、場合によりさらに、(c) 式:(R)
4−n−Si−(X)
n[式中、Rは場合により反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Xはアルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す]で示される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物とを付加反応及び/又は加水分解反応させることにより得られるものである。
【0025】
なお、本明細書において、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)との2成分を付加反応及び/又は加水分解反応させることにより得られる反応生成物を「反応生成物(A−1)」と称し、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)と、(c) 式:(R)
4−n−Si−(X)
n[式中、Rは場合により反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Xはアルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す]で示される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物との3成分を付加反応及び/又は加水分解反応させることにより得られる反応生成物を「反応生成物(A−2)」と称することがある。
【0026】
上記反応生成物(A)の少なくとも一部は、シランカップリング剤(a)のアミノ基とシランカップリング剤(b)のエポキシ基との付加反応による化学結合を形成している。エポキシ基は該付加反応において消費され、反応生成物(A)は、シランカップリング剤(b)に由来する未反応のエポキシ基を実質的に有さないことが望ましい。
【0027】
また、反応生成物(A)は、シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)に基づく加水分解性基ならびに存在する場合のアルコキシシラン化合物(c)に基づくアルコキシシリル基の実質的に全てがシラノール基に加水分解されており、500〜20000の範囲内の重量平均分子量を有することができる。特定的には、反応生成物(A−1)は、一般に500〜10000、特に1000〜6000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましく、また、反応生成物(A−2)は、一般に500〜20000、特に1000〜10000の範囲内の重量平均分子量を有することが好ましい。
【0028】
本明細書において、「シランカップリング剤(a)及びシランカップリング剤(b)に基づく加水分解性基ならびに存在する場合のアルコキシシラン化合物(c)のアルコキシシリル基の実質的に全てがシラノール基に加水分解される」とは、核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)において、加水分解性基及びアルコキシシリル基のピークが認められない状態を意味し、通常、加水分解性基及びアルコキシシリル基のうちの少なくとも95%がシラノール基に加水分解された状態である。また、本明細書において、「未反応のエポキシ基を実質的に有さない」とは、核磁気共鳴スペクトル分析(NMR)において、未反応のエポキシ基のピークが認められない状態を意味し、通常、エポキシ基のうち未反応のエポキシ基の割合が5%以下である状態である。さらに、本明細書において、「アルコキシシリル基」と「加水分解性基」との両者を包括して、「加水分解性官能基」ということがある。
【0029】
本明細書において、反応生成物(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)を用いて測定した保持時間(保持容量)を、同一条件で測定した分子量既知の標準ポリスチレンの保持時間(保持容量)に基づいて、ポリスチレンの分子量に換算して求めた値である。ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置としては、「HLC−8120GPC」(商品名、東ソー社製)を使用し、カラムとして、「TSKgel GMHHR−L」(商品名、東ソー社製)を1本使用し、検出器として、示差屈折率計を使用し、移動相:ジメチルホルムアミド(トリエタノールアミン0.5質量%含む)、測定温度:25℃、流速:1mL/minの条件下で測定することができる。
【0030】
シランカップリング剤(a)(以下、「(a)成分」と称することがある)は、1分子中に少なくとも1個、好ましくは1もしくは2個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤である限り、特に制限されるものではない。上記加水分解性基は、特に制限されるものではないが、好適なものとして、珪素元素に直接結合するアルコキシ基、すなわち、アルコキシシリル基を挙げることができる。
【0031】
シランカップリング剤(a)の具体例としては、例えば、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどが挙げられ、なかでもN−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランを好適に使用することができる。
【0032】
シランカップリング剤(b)(以下、「(b)成分」と称することがある)は、1分子中に少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤である限り、特に制限されるものではない。上記加水分解性基は、特に制限されるものではないが、好適なものとして、珪素元素に直接結合するアルコキシ基、すなわち、アルコキシシリル基を挙げることができる。
【0033】
シランカップリング剤(b)の具体例としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどが挙げられ、なかでもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランを好適に使用することができる。
【0034】
また、場合により使用されるアルコキシシラン化合物(c)(以下、「(c)成分」と称することがある)は、式:(R)
4−n−Si−(X)
n[式中、Rは場合により反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Xはアルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す]で示されるものである。上記反応性を有さない置換基としては、例えば、クロル基、フルオロ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられ、炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられる。また、アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシなどの炭素原子数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
【0035】
アルコキシシラン化合物(c)には、トリアルコキシシラン化合物、ジアルコキシシラン化合物及びモノアルコキシシラン化合物が包含されるが、水性媒体中への溶解性などの点から、トリアルコキシシラン化合物を少なくとも80質量%含有するもの、なかでもトリアルコキシシラン化合物のみからなるものが好適である。
【0036】
上記トリアルコキシシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、エチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(メトキシエトキシ)シラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどを挙げることができ、これらのうち特に、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シラン、エチルトリス(メトキシエトキシ)シランが好ましい。
【0037】
上記モノ−もしくはジ−アルコキシシラン化合物としては、例えば、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシランなどのモノアルコキシシラン;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジプロピル
ジメトキシシランなどのジアルコキシシランなどを挙げることができる。
【0038】
反応生成物(A)、すなわち、反応生成物(A−1)及び(A−2)の製造において、シランカップリング剤(a)とシランカップリング剤(b)との配合割合は、シランカップリング剤(b)中のエポキシ基1当量に対し、シランカップリング剤(a)中のアミノ基の活性水素の量が1.0〜5.0当量、好ましくは1.5〜4.0当量、さらに好ましくは2.0〜3.5当量となるような割合とすることができる。
【0039】
例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシランは、1分子中にアミノ基が2個の活性水素を有するので、3−アミノプロピルトリメトキシシラン1モルは活性水素基2当量に相当する。また、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシランは、1分子中に2個の活性水素を有する1級アミノ基と1個の活性水素を有する2級アミノ基を有し、1分子中に合計で3個の活性水素を有するので、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン1モルは活性水素基3当量に相当する。
【0040】
反応生成物(A−2)の製造において、シランカップリング剤(a)、シランカップリング剤(b)及びアルコキシシラン化合物(c)の配合割合は、上記(a)、(b)及び(c)成分の合計量100質量部に基づき、(a)及び(b)成分が合計で30〜95質量部、好ましくは50〜90質量部、さらに好ましくは60〜90質量部であり、そして(c)成分が5〜70質量部、好ましくは10〜50質量部、さらに好ましくは10〜40質量部であることができる。なお、シランカップリング剤(a)は、上記のとおり、シランカップリング剤(b)中のエポキシ基1当量に対し、シランカップリング剤(
a)中のアミノ基の活性水素の量が1.0〜5.0当量、好ましくは1.5〜4.0当量、さらに好ましくは2.0〜3.5当量となるような割合で配合することができる。
【0041】
反応生成物(A−1)は、酸中和剤を含有する水性媒体中で、シランカップリング剤(a)とシランカップリング剤(b)とを付加反応及び加水分解反応させることによって得た、或いは有機溶剤中又は無溶剤下で、シランカップリング剤(a)とシランカップリング剤(b)とを付加反応させ、さらに、この付加反応物を、酸中和剤を含有する水性媒体中で加水分解反応させて得たシラン反応生成物(A’−1)の水性液を後述する方法で脱溶剤することにより得ることができる。
【0042】
本明細書において、「水性媒体」とは、水、又は水を少なくとも80質量%含有する水とその他の液体との混和液であって、シランカップリング剤(a)、シランカップリング剤(b)、及びシランカップリング剤(a)とシランカップリング剤(b)との反応生成物を溶解又は分散することができる液体を意味する。上記混和液におけるその他の液体としては、例えば、有機溶剤、中和剤、界面活性剤、これらの2種もしくはそれ以上の混合物などを挙げることができる。
【0043】
上記混和液における有機溶剤としては、水溶性の有機溶剤を好適に使用することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテルなどを挙げることができる。
【0044】
上記混和液における中和剤としては、酸中和剤として、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、2−エチルへキサン酸、乳酸、コハク酸、グルタル酸、クエン酸、メタクリル酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ヒドロキシメタンビスホスホン酸、p−トルエンスルホン酸などの有機酸;塩酸、硫酸、リン酸、硝酸などの無機酸を挙げることができ、塩基性中和剤として、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア水などの無機塩基性化合物;モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、N,N−ジメチルアミノエタノールなどのアミン化合物を挙げることができる。
【0045】
上記混和液における界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、高分子系界面活性剤、反応性界面活性剤等それ自体既知の界面活性剤を使用することができる。
前記水性媒体が含有する酸中和剤としては、上記混和液における酸中和剤として挙げたものを使用することができる。
【0046】
シラン反応生成物(A’−1)の水性液の製造方法において、まず、水性媒体中で反応させる工程を経てシラン反応生成物(A’−1)の水性液を製造する方法について、代表的な製造方法である、製法1と製法2について説明する。
<シラン反応生成物(A’−1)の水性液の製法1>
【0047】
シラン反応生成物(A’−1)の水性液の製法1は、水性媒体中で、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)を加水分解反応させ、ついでこの加水分解反応物と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)を、酸中和剤を含有する水性媒体中で混合し、加水分解反応及び付加反応させて、シラン反応生成物(A’)を生成せしめる方法である。具体的には、水性媒体中に、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)を添加し、シランカップリング剤(a)に基づく加水分解性基を加水分解させた後、酸中和剤を配合し、ついで少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)を添加し、加水分解反応及び付加反応させて、シラン反応生成物(A’−1)の水性液を得る方法である。
【0048】
この製法1において、シランカップリング剤(a)はアミノ基を有し、一般的に水溶性を有するので、上記水性媒体は、水であることができるが、必要に応じて溶解性向上、pH調整などのため、酸中和剤、有機溶剤及び/又は界面活性剤などを含有する混和液であってもよい。
【0049】
上記製法1において、水性媒体中にシランカップリング剤(a)を添加すると、加水分解反応により発熱するので、急激な反応を防止するため、シランカップリング剤(a)の添加を徐々に行うことが好ましい。急激な反応が起こると、加水分解反応によって生じるシラノール基の縮合反応が急激に起こり、粒子化、ゲル化が生じやすくなる。
【0050】
水性媒体中でのシランカップリング剤(a)に基づく加水分解性基の加水分解反応によりシラノール基が生成する。その後、生成する反応物溶液に酸中和剤を配合し、ついで、シランカップリング剤(b)を添加する。生成する反応混合物溶液を酸中和するのに用いられる酸中和剤の量は、中和後の反応混合物溶液中において、シランカップリング剤(a)のアミノ基1.0当量に対して通常0.1〜1.0当量、好ましくは0.1〜0.5当量となる量である。水性媒体中に予め酸中和剤が配合されている場合には、反応物溶液への酸中和剤の配合量を上記中和当量範囲となるよう調整することができる。この酸中和剤の配合により、得られるシラン反応生成物(A’−1)の水性液のpHを通常4〜10、好ましくは5〜10、さらに好ましくはpH6〜10とすることができる。
【0051】
反応物溶液にシランカップリング剤(b)を添加する時点において、シランカップリング剤(a)の加水分解性基の全部又は多くが加水分解されていることが好ましいが、加水分解性基の一部のみが加水分解されていてもよい。
【0052】
ついで、上記酸中和された反応物溶液に、シランカップリング剤(b)を添加し、シランカップリング剤(a)に基づくアミノ基とシランカップリング剤(b)に基づくエポキシ基との間での付加反応、及び加水分解性基の加水分解反応を行い、シラン反応生成物(A’−1)の水性液を得ることができる。これらの反応は、通常20〜100℃の温度で、約0.5〜約20時間、好ましくは40〜90℃の温度で約1〜約10時間行うことができる。
【0053】
このようにして得られるシラン反応生成物(A’−1)の水性液は、シラン反応生成物(A’−1)を固形分として一般に3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲内で含有することができる。
<シラン反応生成物(A’−1)の水性液の製法2>
【0054】
シラン反応生成物(A’−1)の水性液の製法2は、水性媒体中にて、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)の加水分解性基を加水分解させた後、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)を添加して、酸中和剤を含有する水性媒体中で加水分解反応及び付加反応させて、シラン反応生成物(A’−1)の水性液を得る方法である。
【0055】
この製法2において、シランカップリング剤(b)は、一般に水への溶解性が劣るため、酸中和剤を含有する水性媒体を使用する。水性媒体が酸中和剤を含有することによって、加水分解性基の加水分解を促進することができ、反応物の水溶解性を向上させることができる。
【0056】
上記製法2において、水性媒体中にシランカップリング剤(b)を添加する際には、急激な反応を防止するため、シランカップリング剤(b)の添加を徐々に行うことが好ましい。水性媒体中にシランカップリング剤(b)を添加すると、シランカップリング剤(b)中の加水分解性基の加水分解が進行しシラノール基が生成する。生成する反応混合物において、シランカップリング剤(b)の加水分解性基の全部又は多くが加水分解されていることが好ましいが、加水分解性基の一部のみが加水分解されていてもよい。
【0057】
ついで、上記反応混合物溶液に、シランカップリング剤(a)を添加し、シランカップリング剤(a)に基づくアミノ基とシランカップリング剤(b)に基づくエポキシ基との間での付加反応、及び加水分解性基の加水分解反応を行い、シラン反応生成物(A’−1)の水性液を得ることができる。
【0058】
シランカップリング剤(a)添加後の上記反応は、通常20〜100℃の温度で約0.5〜約20時間、好ましくは40〜90℃の温度で約1〜約10時間行うことができる。上記反応混合物溶液にシランカップリング剤(a)を添加した時点において、液中に配合されている酸中和剤の量は、シランカップリング剤(a)のアミノ基1.0当量に対して一般に0.1〜1.0当量、特に0.1〜0.5当量となる量であることが好ましい。この酸中和剤の配合により、シラン反応生成物(A’−1)の水性液のpHを通常4〜10、好ましくは5〜10、さらに好ましくはpH6〜10とすることができる。
【0059】
このようにして得られるシラン反応生成物(A’−1)の水性液は、シラン反応生成物(A’−1)を固形分として一般に3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲内で含有することができる。
【0060】
つぎに、シランカップリング剤(a)とシランカップリング剤(b)とを無溶媒で又は有機溶剤中で反応させる工程を経てシラン反応生成物(A’−1)の水性液を製造する製法3について説明する。
<シラン反応生成物(A’−1)の水性液の製法3>
【0061】
シラン反応生成物(A’−1)の水性液の製法3は、有機溶剤中で又は無溶剤下で、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)とを、アミノ基とエポキシ基との間で付加反応させ、ついで該付加反応物を、水及び酸中和剤を含有する水性媒体中に溶解ないし分散させ、加水分解反応させて、シラン反応生成物(A’−1)の水性液を得る方法である。
【0062】
上記製法3は、まず、シランカップリング剤(a)とシランカップリング剤(b)とを、有機溶剤中で又は無溶剤下で、アミノ基とエポキシ基との間で付加反応させる。この付加反応は発熱反応であり、急激な反応を抑制することが好ましく、例えば、両者を徐々に混合し混合終了後、例えば、約30分間〜約2時間撹拌し、反応が収まってきた段階で、60〜90℃の温度で約1〜約20時間加熱して付加反応を行うことが好適である。有機溶剤中で反応させる場合、有機溶剤としては、水溶性で、かつ後工程での脱溶剤が容易である低沸点水溶性溶剤が好ましく、具体例として、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどの低沸点アルコール溶剤を挙げることができる。
【0063】
上記付加反応終了後、付加反応混合物を、酸中和剤を含有する水性媒体中に溶解ないし分散させ、加水分解反応させることによってシラン反応生成物(A’−1)の水性液を得ることができる。上記加水分解反応は、付加反応混合物を、酸中和剤を含有する水性媒体中に溶解ないし分散させ、通常20〜100℃の温度で約0.5〜約20時間、好ましくは40〜90℃の温度で約1〜約10時間反応させることによって行うことができる。上記付加反応混合物に配合される水性媒体中の酸中和剤の量は、使用されるシランカップリング剤(a)のアミノ基1.0当量に対して通常0.1〜1.0当量、好ましくは0.1〜0.5当量となる量である。この酸中和剤により、得られるシラン反応生成物(A’−1)の水性液のpHを一般に4〜10、好ましくは5〜10、さらに好ましくはpH6〜10とすることができる。このようにして得られるシラン反応生成物(A’−1)の水性液は、シラン反応生成物(A’−1)を固形分として3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲内で含有することができる。
【0064】
反応生成物(A−2)は、シランカップリング剤(a)、シランカップリング剤(b)及びアルコキシシラン化合物(c)を、加水分解反応、及びエポキシ基とアミノ基との間での付加反応に付し、生成するシラン反応生成物(A’−2)の水性液を後述する方法で脱溶剤することにより得ることができる。その反応は、水性媒体中で反応させる方法、又はアルコール溶剤中もしくは無溶剤下で一部反応させた後、水性媒体中でさらに反応を行う方法などによって行うことができる。
【0065】
上記のシラン反応生成物(A’−2)の水性液の製造方法において、まず、水性媒体中で反応させる方法によってシラン反応生成物(A’−2)の水性液を製造する方法について、代表的な製造方法である製法1と製法2について説明する。
<シラン反応生成物(A’−2)の水性液の製法1>
【0066】
シラン反応生成物(A’−2)の水性液の製法1は、水性媒体中で、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)を加水分解反応させ、ついで、この加水分解反応物に、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)及びアルコキシシラン化合物(c)を反応させてシラン反応生成物(A’−2)を生成せしめる方法である。
【0067】
シラン反応生成物(A’−2)の水性液の製法1の代表的な製法として、水性媒体中で、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)を加水分解反応させ、該加水分解反応物と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)とアルコキシシラン化合物(c)とを、酸中和剤を含有する水性媒体中で混合し、加水分解反応及び付加反応させて、シラン反応生成物(A’−2)を生成せしめる方法を挙げることができる。
【0068】
この製法1において、(a)成分は、アミノ基を有し、一般的に水溶性を有するので、上記水性媒体は、水であることができるが、必要に応じて溶解性向上、pH調整などのため、酸中和剤、有機溶剤及び/又は界面活性剤などを含有する混和液であってもよい。
【0069】
上記製法1において、水性媒体中に(a)成分を添加すると、加水分解反応により発熱するので、急激な反応を防止するため、(a)成分の添加を徐々に行うことが好ましい。急激な反応が起こると、加水分解反応によって生じるシラノール基の縮合反応が急激に起こりやすく、粒子化、ゲル化が生じやすくなる。
【0070】
水性媒体中での(a)成分に基づく加水分解性基の加水分解反応によりシラノール基が生成する。生成する反応混合物溶液に酸中和剤を添加し、ついで、(b)成分及び(c)成分を添加することが水溶解性の向上、安定性の向上の点から好ましい。この場合、生成する反応混合物溶液を酸中和するのに用いられる酸中和剤の量は、中和後の反応混合物溶液中において、(a)成分のアミノ基1当量に対して一般に0.1〜2.0当量、好ましくは0.1〜1.0当量となる量であることができる。水性媒体中に予め酸中和剤が配合されている場合には、反応混合物溶液への酸中和剤の配合量を上記中和当量範囲となるよう調整することが好ましい。この酸中和剤の配合により、得られるシラン反応生成物(A’−2)を含有する水性媒体液のpHを通常4〜10、好ましくは5〜10、さらに好ましくは6〜10とすることができる。
【0071】
上記反応混合物溶液に、(b)成分と(c)成分とを添加する時点において、(a)成分の加水分解性基の全部又は多くが加水分解されていることが好ましいが、加水分解性基の一部のみが加水分解されていてもよい。
【0072】
上記酸中和された反応混合物溶液に、(b)成分及び(c)成分を添加し、アミノ基とエポキシ基との付加反応および加水分解性官能基の加水分解反応を行うことにより、シラン反応生成物(A’−2)水性液を得ることができる。これらの反応は、通常20〜100℃の温度で約0.5〜約20時間、好ましくは40〜90℃の温度で約1〜約10時間にて行うことができる。
【0073】
このようにして水性媒体中において得られるシラン反応生成物(A’−2)水性液は、シラン反応生成物(A’−2)を固形分として一般に3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲内で含有することができる。
<シラン反応生成物(A’−2)の水性液の製法2>
【0074】
シラン反応生成物(A’−2)の水性液の製法2は、水性媒体中で、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)とアルコキシシラン化合物(c)とを加水分解反応させた後、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)を添加して、酸中和剤を含有する水性媒体中で加水分解反応及び付加反応させて、シラン反応生成物(A’−2)を生成せしめる方法である。
【0075】
この製法2において、(b)成分及び(c)成分は、一般に加水分解速度が遅いので酸を触媒として含有する水性媒体、すなわち酸中和剤を含有する水性媒体を使用することが好ましい。水性媒体が酸中和剤を含有することによって、加水分解性基の加水分解を促進させることができ、反応混合物の水溶解性を向上することができる。
【0076】
上記製法2において、水性媒体中に(b)成分及び(c)成分を添加する際には、急激な反応を防止するため、(b)成分及び(c)成分の添加を徐々に行うことが好ましい。水性媒体中に(b)成分及び(c)成分を添加すると、(b)成分及び(c)成分中の加水分解性官能基の加水分解が進行しシラノール基が生成する。生成する反応混合物において、(b)成分及び(c)成分の加水分解性官能基の全部又は多くが加水分解されていることが好ましいが、加水分解性基の一部のみが加水分解されていてもよい。
【0077】
ついで、上記反応混合物溶液に、(a)成分を添加し、(a)成分に基づくアミノ基と、(b)成分に基づくエポキシ基との間での付加反応、及び加水分解性官能基の加水分解反応を行うことにより、シラン反応生成物(A’−2)の水性液を得ることができる。
【0078】
(a)成分添加後の上記反応は、通常20〜100℃の温度で約0.5〜約20時間、好ましくは40〜90℃の温度で約1〜約10時間行うことができる。上記反応混合物溶液に(a)成分を添加する時点において、液中に配合されている酸中和剤の量は、(
a)成分のアミノ基1当量に対して一般に0.1〜2.0当量、好ましくは0.1〜1.0当量となる量であることができる。この酸中和剤の配合により、シラン反応生成物(A’−2)の水性液のpHを通常4〜10、好ましくは5〜10、さらに好ましくは6〜10とすることができる。
【0079】
このようにして水性媒体中において得られるシラン反応生成物(A’−2)の水性液は、シラン反応生成物(A’−2)を固形分として一般に3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲内で含有することができる。
【0080】
つぎに、アルコール溶剤中もしくは無溶剤下で(a)、(b)及び(c)成分の一部を反応させた後、水性媒体中でさらに反応を行う方法によりシラン反応生成物(A’−2)の水性液を製造する製法3について説明する。
<シラン反応生成物(A’−2)の水性液の製法3>
【0081】
シラン反応生成物(A’−2)の水性液の製法3は、有機溶剤中、特にアルコール溶剤中もしくは無溶剤下で、(a)、(b)及び(c)成分のうちの1又は2成分を加水分解反応させた後、水性媒体中で、さらに残りの成分を加えて加水分解反応及び付加反応を行うことによってシラン反応生成物(A’−2)を生成せしめる方法である。
【0082】
シラン反応生成物(A’−2)の水性液の製法3の代表的な製法として、アルコール溶剤中又は無溶剤下で、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)とアルコキシシラン化合物(c)とを加水分解反応させた後、該加水分解反応物を、酸中和剤を含有する水性媒体中に溶解ないし分散させ、ついで、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)を添加して加水分解反応及び付加反応させて、シラン反応生成物(A’−2)を生成せしめる方法を挙げることができる。
【0083】
上記製法3の代表的な製法においては、まず、(b)成分及び(c)成分を、アルコール溶剤中で又は無溶剤下で、(b)成分と(c)成分との合計モル量1に対し、約1〜約5倍モル量の水を添加して加水分解反応させることが好ましい。この加水分解反応は発熱反応であり、急激な反応を抑制することが好ましく、例えば、両者を徐々に添加することが好適である。急激な反応により、この加水分解反応の際に生成するシラノール基の縮合反応も起こり、縮合反応が行き過ぎると、ゲル化が起こるため注意が必要である。上記加水分解反応は、通常20〜80℃の温度で約0.5〜約10時間、好ましくは30〜70℃の温度で約1〜約5時間行うことができる。上記アルコール溶剤としては、水溶性で、かつ後工程での脱溶剤が容易であるものが好ましく、具体例として、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどの低沸点アルコール溶剤を挙げることができる。
【0084】
この加水分解反応の後、得られる反応混合物を酸中和剤を含有する水性媒体中に溶解ないし分散させる。ついで、得られた反応混合物の水性
液に、(a)成分を添加して、加水分解反応、及び(a)成分中のアミノ基と(b)成分中のエポキシ基との間での付加反応を行い、シラン反応生成物(A’−2)を生成せしめる。上記水性媒体中の酸中和剤の量は、反応物の水性
液に配合される(a)成分中のアミノ基1当量に対して通常0.1〜2.0当量、好ましくは0.1〜1.0当量となる量であることができる。この酸中和剤の配合により、得られるシラン反応生成物(A’−2)の水性液のpHを通常4〜10、好ましくは5〜10、さらに好ましくは6〜10とすることができる。
【0085】
上記水性媒体中での加水分解反応及び付加反応は、通常20〜100℃の温度で約0.5〜約20時間、好ましくは40〜90℃の温度で約1〜約10時間行うことができる。
【0086】
このようにして水性媒体中において得られるシラン反応生成物(A’−2)の水性液は、シラン反応生成物(A’−2)を固形分として一般に3〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲内で含有することができる。
【0087】
また、製法3としては、アルコール溶剤中又は無溶剤下で、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)を加水分解反応させた後、得られる反応混合物を、酸中和剤を含有する水性媒体中に溶解ないし分散させ、ついで、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)及びアルコキシシラン化合物(c)を添加して加水分解反応及び付加反応させることにより、シラン反応生成物(A’−2)を生成せしめる方法を挙げることもできる。
以上に述べた製法1〜3により、水性媒体中に溶解ないしは分散された状態でシラン反応生成物(A’−2)の水性液を得ることができる。
【0088】
本明細書において、シラン反応生成物(A’−1)及びシラン反応生成物(A’−2)を併せてシラン反応生成物(A’)と総称する。
【0089】
以上に述べた方法により得られるシラン反応生成物(A’)の水性液に、以下に述べる酸安定化剤(B)を添加することによりシラン反応生成物の水性液を調製した後、脱溶剤する工程が行われ、バインダ組成物の固形分となる反応生成物(A)を含有する安定な水性バインダ組成物を製造することができる。
酸安定化剤(B)
【0090】
本発明組成物における酸安定化剤(B)は、本発明の水性バインダ組成物の液安定性の向上に寄与する成分であり、水性バインダ組成物や水性バインダ組成物を用いた金属表面処理剤中における反応生成物(A)のシラノール基の縮合反応を抑制し、液安定性を向上させるものである。また、酸安定化剤(B)は、表面処理剤から形成される表面処理皮膜の耐食性の向上に役立つ場合もある。
【0091】
本発明組成物において、酸安定化剤(B)は、リン酸系酸化合物及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも1種の酸である。
【0092】
上記リン酸系酸化合物としては、例えば、リン酸(オルトリン酸)、縮合リン酸、亜リン酸などの無機リン酸系酸化合物;有機ホスホン酸などの有機リン酸系酸化合物を挙げることができる。縮合リン酸にはメタリン酸及びポリリン酸が包含され、メタリン酸は環状のリン酸縮合物であって、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸などを包含し、ポリリン酸は鎖状のリン酸縮合物であって、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸などを包含する。また、有機ホスホン酸としては、例えば、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、ヒドロキシメタンビスホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸などを挙げることができる。
【0093】
上記硝酸系酸化合物としては、例えば、硝酸、亜硝酸などを挙げることができる。
これらの酸安定化剤はそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
酸安定化剤(B)のうち、なかでも、リン酸及び硝酸が好適であり、リン酸が特に好適である。
【0094】
酸安定化剤(B)の配合量は、反応生成物(A)100質量部に基づき、一般に1〜10質量部、好ましくは2〜8質量部、さらに好ましくは3〜7質量部である。
金属表面処理剤用水性バインダ組成物の製造
【0095】
本発明の金属表面処理剤用水性バインダ組成物は、例えば、少なくとも1個の1級又は2級のアミノ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(a)と、少なくとも1個のエポキシ基と加水分解性基とを有するシランカップリング剤(b)と、場合によりさらに、式:(R)
4−n−Si−(X)
n[式中、Rは場合により反応性を有さない置換基で置換されていてもよい炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、Xはアルコキシル基を表し、nは1〜3の整数を表す]で示される少なくとも1種のアルコキシシラン化合物(c)とを反応させることによりシラン反応生成物(A’)を生成せしめ、ついで、シラン反応生成物(A’)に、リン酸系酸化合物及び硝酸系酸化合物から選ばれる少なくとも1種の酸安定化剤(B)を添加することによりシラン反応生成物の水性液を調製した後、脱溶剤することを特徴とする方法により製造することができる。
【0096】
上記シラン反応生成物(A’)は、反応生成物(A)と同様に、シランカップリング剤(a)のアミノ基とシランカップリング剤(b)のエポキシ基とが化学結合しており、シランカップリング剤(b)に基づく未反応のエポキシ基を実質的に有さず、かつシランカップリング剤(a)、シランカップリング剤(b)及びアルコキシシラン化合物(c)に基づく加水分解性官能基の全てが実質的にシラノール基に加水分解されていることが好ましいが、未反応のエポキシ基を少量有していていたり、また加水分解性官能基の一部がシラノール基に加水分解されずに残存したものであっても、脱溶剤工程において反応が進行し、脱溶剤工程後に得られる反応生成物(A)が、未反応のエポキシ基を実質的に有さず、加水分解性官能基の全てが実質的にシラノール基に加水分解されたものとなるものであれば、シラン反応生成物(A’)に包含される。
【0097】
シラン反応生成物の水性液は、例えば、前述の如くして得られるシラン反応生成物(A')の水性液に酸安定化剤(B)を添加し、混合することにより調製することができる。
【0098】
かくして得られるシラン反応生成物の水性液の脱溶剤は、液安定性が悪化しやすい工程であるが、本発明に従い、脱溶剤工程の前に酸安定化剤(B)を混合することによって、液の安定性を保持することができる。
【0099】
この脱溶剤の条件は、シラン反応生成物の水性液中の、加水分解によって生成するアルコールなどの溶剤を除去することができ、液安定性に支障がない限り、特に制限されるものではなく、例えば、脱溶剤は、通常50〜90℃、特に60〜80℃の温度で約0.5〜約20時間、好ましくは約0.5〜約3時間減圧蒸留することにより行うことができる。脱溶剤工程による液pHの変化は小さいが、脱溶剤中や脱溶剤後のバインダ組成物のpHが前記の範囲から外れる場合には、中和剤の添加によってpHを調整することができる。
【0100】
脱溶剤生成物は、そのままで、又は必要に応じて、固形分調整やpH調整のため、水、中和剤などを配合した後、金属表面処理剤用水性バインダ組成物として使用することができる。
【0101】
本発明の金属材料表面処理用バインダ組成物は、一般に4.0〜10.0、好ましくは5.0〜10.0、さらに好ましくは6.0〜10.0の範囲内のpHを有する。また、本発明のバインダ組成物は、固形分濃度が一般に5〜30質量%、好ましくは5〜20質量%の範囲内にあることができ、かつ、有機溶剤量が3質量%以下、特に1質量%以下であって、引火点を有さない非危険物であることが望ましい。また、本発明の金属材料表面処理用バインダ組成物は、測定温度20℃、B型回転粘度計にて60rpmの条件にて測定した液粘度が、一般に2.5cps以下、特に2.4cps以下であることが、液の流動性の点から好ましい。
金属表面処理剤
【0102】
本発明の金属表面処理剤は、以上に述べた金属表面処理剤用バインダ組成物及び防錆剤を含有するものである。
上記防錆剤としては、塗料分野で通常使用されるもの、例えば、マンガン、コバルト、亜鉛、マグネシウム、ニッケル、チタン、バナジウム、ジルコニウム、スズ、カルシウム、珪素、タングステン、モリブデン、ハフニウム及びアルミニウムなどの金属を含有する金属化合物;無機リン酸、有機リン酸などを挙げることができる。かかる金属化合物としては、例えば、かかる金属の炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、フルオロ酸及びその塩、酸化物などが挙げられる。これらの金属化合物は無水物であってもよく、また、存在する場合には水和物であってもよい。上記金属化合物のうち、なかでも、チタン、バナジウム及びジルコニウムを含有する金属化合物が好適である。
【0103】
上記金属化合物の具体例としては、塩基性炭酸ジルコニウム(ZrCO
4・ZrO
2・8H
2O)、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ニッケル、硝酸ジルコニウム、硫酸バナジル、硫酸ジルコニウム、硝酸アルミニウム、酢酸ニッケル、酢酸ジルコニウム、酸化バナジウム、メタバナジン酸アンモニウム;六フッ化チタン酸(H
2TiF
6)、六フッ化ジルコニウム酸(H
2ZrF
6)、六フッ化ケイ酸(H
2SiF
6)、六フッ化ハフニウム酸(H
2HfF
6)、六フッ化アルミニウム酸(H
3AlF
6)、四フッ化ホウ酸(HBF
4)などのフルオロ酸、これらのフルオロ酸の塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、アミン塩、亜鉛塩など)などが挙げられる。
【0104】
防錆剤として使用することができる無機リン酸の具体例としては、リン酸(オルトリン酸)、トリメタリン酸、テトラメタリン酸、ヘキサメタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリンなどを挙げることができ、有機リン酸の具体例としては、アミノトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシメタン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸などを挙げることができる。これらのうち、なかでも、リン酸、ヒドロキシメタンビスホスホン酸及び1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸が好適である。
これらの防錆剤として使用し得る上記金属化合物、無機リン酸、有機リン酸は、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0105】
本発明の金属表面処理剤における上記防錆剤の配合量は、耐食性、導電性及び表面処理剤の安定性の面から、反応生成物(A)の固形分100質量部に基づいて、一般に0.1〜100質量部、好ましくは0.3〜80質量部、さらに好ましくは0.5〜60質量部であることができる。
【0106】
本発明の金属表面処理剤は、前記水性バインダ組成物及び上記防錆剤に加えて、さらに必要に応じ、通常の塗料添加剤、例えば、有機樹脂成分、ワックス成分、充填剤、有機溶剤などを含有することができる。
【0107】
上記有機樹脂成分は、得られる皮膜の耐食性向上などを目的として配合されるものであり、例えば、水溶性又は水分散性のフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂などの有機樹脂を挙げることができる。有機樹脂成分を配合する場合、その配合量は、耐食性、導電性などの点から、金属表面処理剤の全固形分に基づいて、固形分量として、一般に0.1〜30質量%、好ましくは0.2〜25質量%、さらに好ましくは0.3〜20質量%であることができる。
【0108】
上記ワックス成分は、形成される皮膜表面に潤滑性を付与するための成分であり、例えば、ポリオール化合物と脂肪酸とのエステル化物である脂肪酸エステルワックス、シリコン系ワックス、フッ素系ワックス、ポリエチレンなどのポリオレフィンワックス、ラノリン系ワックス、モンタンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックスなどを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して使用することができる。ワックスを配合する場合、その配合量は、成型加工性、耐食性などの点から、金属表面処理剤の全固形分に基づいて、固形分量として、一般に0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜7.5質量%、さらに好ましくは0.3〜5質量%であることができる。
【0109】
金属表面処理剤に必要に応じて配合し得る充填剤としては、例えば、ジルコニアゾル、アルミナゾル、シリカゾル(コロイダルシリカ水分散液)などを挙げることができる。
【0110】
また、本発明の金属表面処理剤の水性媒体は、通常水であることができるが、例えば、乾燥速度を調整したり、金属表面処理剤の塗工性をよくするためなどの目的で少量(例えば、水性媒体の全量に基づいて5質量%以下)のメタノール、エタノール、プロパノールのような低級アルコールなどの有機溶剤を含有していてもよい。この有機溶剤は、水性バインダ組成物を得る際に行う脱溶剤工程において残留するアルコールなどの有機溶剤であってもよく、また、金属表面処理剤を調製する際に後添加するものであってもよい。
【0111】
本発明の表面処理剤は、建浴用組成物(濃縮液)及び作業用組成物(希釈液)の両方を包含する。建浴用組成物における全固形分濃度は通常10〜40質量%、好ましくは15〜30質量%であることができ、作業用組成物における全固形分濃度は通常1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%であることができる。
【0112】
本発明の表面処理剤を作業用組成物として用いる場合、該表面処理剤は、表面処理剤の塗装性の面から、B型回転粘度計を用い、温度20℃及び回転数60rpmの条件にて測定した粘度が、2.5mPa・s以下、特に2.4mPa・s以下であることが好適である。
【0113】
また、本発明の表面処理剤は、一般に5.0〜10.0、特に6.0〜9.0の範囲内のpHを有することが好ましい。その際、pH調整剤として、pHを上げるためのpH調整剤としては、例えば、アンモニア水、アミン化合物、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属炭酸塩などを用いることができ、また、pHを下げるためのpH調整剤としては、例えば、酸中和剤として前記で例示した酸を用いることができる。表面処理剤のpHが低すぎると、基材表面との反応性が過多になり、形成される皮膜の成膜性、導電性が不良になる傾向にある。また、表面処理剤のpHが高すぎると、表面処理用組成物の安定性が低下し、形成される皮膜の耐食性が低下する傾向がある。
【0114】
本発明の金属表面処理剤は貯蔵安定性に優れている。その理由は正確にはわからないが、2種以上の互いに反応する反応性基を有するシランカップリング剤の混合物をバインダ成分に用いた組成物においては、貯蔵中に、反応性基同士が反応して貯蔵安定性を低下させることがあるが、本発明の表面処理剤においては、シランカップリング剤が有するアミノ基とエポキシ基とを予め反応させ、未反応のエポキシ基が実質的に残存しない反応生成物を用いるため、貯蔵中にアミノ基とエポキシ基とが反応して貯蔵安定性を低下させることがないこと;バインダ成分が、安定化剤(B)によって安定化されており、加水分解により生成するシラノール基の縮合が抑制されていることなどによるものであると考えられる。本発明者らは、シラノール基が、安定化剤(B)に配位して安定化し、シラノール基同士の反応が抑制されるものと考えている。
金属材料の表面処理方法
【0115】
本発明に従えば、また、上記金属表面処理剤を金属材料表面に塗布し、乾燥させ、該金属材料表面に乾燥皮膜重量が通常0.05〜3.0g/m
2、好ましくは0.1〜1.0g/m
2、さらに好ましくは0.2〜0.8g/m
2の表面処理皮膜を形成せしめることを特徴とする金属材料の表面処理方法が提供される。乾燥後の皮膜質量が0.05g/m
2未満の場合、金属材料を十分に被覆することが困難で、被覆金属材料の耐食性が不十分になり、また、乾燥後の皮膜質量が3.0g/m
2を超えると、表面処理皮膜の導電性が低下する傾向がある。
【0116】
金属材料表面に上記金属表面処理剤を塗布する方法は、特に制限されるものではなく、それ自体既知の塗装方法、例えば、浸漬法、スプレー法、ロールコート法などを用いることができる。金属材料表面上に形成される表面処理剤層は加熱乾燥することが好ましく、その際の加熱乾燥の条件は特に制限されるものではないが、通常約50〜約250℃、特に約100〜約250℃の温度で約1〜約60秒間、特に約2〜約30秒間加熱することにより乾燥させることが好ましい。
【0117】
本発明の金属表面処理剤を塗布することができる金属材料は、特に制限されるものではなく、例えば、鉄板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛合金(例えば、鉄−亜鉛、アルミニウム−亜鉛、ニッケル−亜鉛合金など)めっき鋼板、スズめっき鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、アルミニウム合金板等が挙げられ、なかでも亜鉛めっき鋼板及び亜鉛合金めっき鋼板が好適である。また、該金属材料の寸法、形状などにも特に制限はない。
【0118】
本発明の金属表面処理剤が塗布された金属表面を加熱し乾燥すると、反応生成物(A)中のシランカップリング剤のシラノール基同士の脱水縮合によりシロキサン結合を有する連続皮膜が形成される。生成するシロキサン結合を有する化合物は、水に難溶性のものであり、それを含む形成皮膜は、水に対するバリアー効果を発揮し、その結果、金属材料の耐食性が向上するとともに、シロキサン結合に基づく皮膜であるため、導電性の低下を抑制することができるものと考えられる。また、シランカップリング剤の加水分解で生じるシラノール基は、金属材料表面と反応してオキサン結合を形成し、形成皮膜の密着性を向上させる。さらに、本発明の金属表面処理剤は、シランカップリング剤中のアミノ基とエポキシ基を予め反応させた反応生成物(A)をバインダ成分としており、耐食性の向上に寄与する。
【実施例】
【0119】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により何ら限定されるものでない。実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、特に断りがない限り、いずれも質量基準によるものである。
水性バインダ組成物の製造
実施例1
【0120】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン57部を配合し、これにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61部を撹拌下にて3時間かけて滴下した。滴下により発熱したが、40℃以下となるよう保持し、滴下終了後、1時間、撹拌下にて熟成、放冷し、ついで加熱し80℃で5時間反応させた。1H−NMR測定結果から、この反応後の内容物にはエポキシ基は残存していないことを確認した。ついで、酢酸28部及び脱イオン水1000部を添加して30分間攪拌して反応後の内容物を溶解させ、シラン反応生成物(A’)の水性液を得た。酢酸によるシラン反応生成物(A’)の中和当量は0.9である。
【0121】
このシラン反応生成物(A’)の水性液に、89%リン酸水溶液6部を加えてさらに30分間攪拌し、脱イオン水250部を加えて溶解させた後、60〜70℃での減圧蒸留により1000部となるまで濃縮し、加水分解で生じたメタノールを水分とともに留去し、ついで、200メッシュのフィルターでろ過し、水溶液である水性バインダ組成物A1を得た。水性バインダ組成物A1において、全酸のうち、リン酸による中和当量は0.1である。
【0122】
水性バインダ組成物A1の固形分は10%、pH6.5であった。ガスクロマトグラフによって測定した水性バインダ組成物A1中のメタノール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。水性バインダ組成物A1の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3当量である。水性バインダ組成物A1の樹脂固形分の重量平均分子量は約4500であり、脱溶剤工程の前後での分子量変化は認められなかった。
実施例2
【0123】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、脱イオン水1000部を配合し、氷浴で冷却しながらN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン57部を徐々に投入し溶解させた。ついで、この内容物に酢酸12部を配合した後、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61部を投入し、30分間攪拌して溶解させ、ついで加熱し80℃で5時間反応させシラン反応生成物(A’)の水性液を得た。1H−NMR測定結果から、このシラン反応生成物(A’)にはエポキシ基は残存していないことを確認した。酢酸によるシラン反応生成物(A’)の中和当量は0.4である。
【0124】
ついで、このシラン反応生成物(A’)の水性液に89%リン酸水溶液6部を配合して30分間攪拌し、脱イオン水250部を加えて溶解させた後、60〜70℃での減圧蒸留により1000部となるまで濃縮した。このようにして加水分解で生じたメタノールを水分とともに留去した後、200メッシュのフィルターでろ過し、水溶液である水性バインダ組成物A2を得た。水性バインダ組成物A2において、全酸のうち、リン酸による中和当量は0.1である。
【0125】
水性バインダ組成物A2の固形分は10%、pH7.1であった。ガスクロマトグラフによって測定したメタノール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。水性バインダ組成物A2の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3当量である。水性バインダ組成物A2の樹脂固形分の重量平均分子量は約4000であり、脱溶剤工程の前後での分子量変化は認められなかった。
実施例3
【0126】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、脱イオン水1000部と酢酸19部を配合し、攪拌しながら、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61部を徐々に投入し、10分間攪拌して溶解させた。ついで、この中にN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン57部を徐々に投入し30分間攪拌して溶解させた後、加熱し80℃で5時間反応させシラン反応生成物(A’)の水性液を得た。1H−NMR測定結果から、このシラン反応生成物(A’)にはエポキシ基は残存していないことを確認した。酢酸によるシラン反応生成物(A’)の中和当量は0.6である。
【0127】
このシラン反応生成物(A’)の水性液に89%リン酸水溶液6部を配合して30分間攪拌し、脱イオン水250部を加えて溶解させた後、60〜70℃での減圧蒸留により1000部となるまで濃縮した。このようにして加水分解で生じたメタノールを水分とともに留去し、200メッシュのフィルターでろ過し、水溶液である水性バインダ組成物A3を得た。水性バインダ組成物A3において、全酸のうち、リン酸による中和当量は0.1である。
【0128】
水性バインダ組成物A3の固形分は10%、pH6.7であった。ガスクロマトグラフによって測定したメタノール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。水性バインダ組成物A3の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3当量である。水性バインダ組成物A3の樹脂固形分の重量平均分子量は約4000であり、脱溶剤工程の前後での分子量変化は認められなかった。
実施例4
【0129】
実施例1において、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランの配合量57部を62部に、及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの配合量61部を56部に変更し、酢酸の配合量28部を30部に変更する以外は、実施例1と同様の操作を行い、固形分10%、pH6.5の水性バインダ組成物A4を得た。水性バインダ組成物A4において、全酸のうち、酢酸による中和当量は0.9であり、リン酸による中和当量は0.1である。
【0130】
水性バインダ組成物A4は、ガスクロマトグラフによって測定したメタノール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。水性バインダ組成物A4の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されており、また、1H−NMR測定結果から、エポキシ基は残存していないことを確認した。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3.5当量である。水性バインダ組成物A4の樹脂固形分の重量平均分子量は約4000であり、脱溶剤工程の前後での分子量変化は認められなかった。
実施例5
【0131】
実施例1において、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランの配合量57部を45部に、及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの配合量61部を73部に変更し、酢酸の配合量28部を25部に変更する以外は、実施例1と同様の操作を行い、固形分10%、pH6.5の水性バインダ組成物A5を得た。水性バインダ組成物A5において、全酸のうち、酢酸による中和当量は0.9であり、リン酸による中和当量は0.1である。
【0132】
水性バインダ組成物A5は、ガスクロマトグラフによって測定したメタノール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。水性バインダ組成物A5の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されており、また、1H−NMR測定結果から、エポキシ基は残存していないことを確認した。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は2.0当量である。水性バインダ組成物A5の樹脂固形分の重量平均分子量は約5300であり、脱溶剤工程の前後での分子量変化は認められなかった。
実施例6
【0133】
実施例2において、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン57部を3−アミノプロピルトリエトキシシラン65部に変更し、酢酸の配合量12部を7部に、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの配合量61部を70部に、及び89%リン酸水溶液の配合量6部を3部に変更する以外は、実施例2と同様の操作を行い、固形分10%、pH7.1の水性バインダ組成物A6を得た。水性バインダ組成物A6において、全酸のうち、酢酸による中和当量は0.4であり、リン酸による中和当量は0.1である。
【0134】
水性バインダ組成物A6は、ガスクロマトグラフによって測定したアルコール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。水性バインダ組成物A6の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されており、また、1H−NMR測定結果から、エポキシ基は残存していないことを確認した。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、3−アミノプロピルトリエトキシシランのアミノ基の活性水素の量は2.0当量である。水性バインダ組成物A6の樹脂固形分の重量平均分子量は約3000であり、脱溶剤工程の前後での分子量変化は認められなかった。
実施例7
【0135】
実施例1において、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランの配合量57部を61部に、及びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの配合量61部を64部に変更し、酢酸28部を60%硝酸水溶液11部に変更し、89%リン酸水溶液を配合しない以外は、実施例1と同様の操作を行い、固形分10%、pH9.0の水性バインダ組成物A7を得た。水性バインダ組成物A7において、硝酸による中和当量は0.2である。
【0136】
水性バインダ組成物A7は、ガスクロマトグラフによって測定したメタノール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。水性バインダ組成物A7の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されており、また、1H−NMR測定結果から、エポキシ基は残存していないことを確認した。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は2.0当量である。水性バインダ組成物A7の樹脂固形分の重量平均分子量は約3000であり、脱溶剤工程の前後での分子量変化は認められなかった。
実施例8
【0137】
実施例3において、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61部をγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン72部に変更する以外は、実施例3と同様の操作を行い、固形分10%、pH6.7の水性バインダ組成物A8を得た。水性バインダ組成物A
8において、全酸のうち、酢酸による中和当量は0.6であり、リン酸による中和当量は0.1である。
【0138】
水性バインダ組成物A
8は、ガスクロマトグラフによって測定したアルコール濃度が1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。水性バインダ組成物A8の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されており、また、1H−NMR測定結果から、エポキシ基は残存していないことを確認した。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は2.0当量である。水性バインダ組成物A8の樹脂固形分の重量平均分子量は約4000であり、脱溶剤工程の前後での分子量変化は認められなかった。
実施例9
【0139】
実施例1において、酢酸28部を35%塩酸水溶液11部に変更した以外は、実施例1と同様の操作を行い、固形分10%、pH8.6の水性バインダ組成物A9を得た。水性バインダ組成物A9において、全酸のうち、塩酸による中和当量は0.2であり、リン酸による中和当量は0.1である。
【0140】
水性バインダ組成物A9は、ガスクロマトグラフによって測定したメタノール濃度が1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。水性バインダ組成物A9の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されており、また、1H−NMR測定結果から、エポキシ基は残存していないことを確認した。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3.0当量である。水性バインダ組成物A9の樹脂固形分の重量平均分子量は約3000であり、脱溶剤工程の前後での分子量変化は認められなかった。
実施例10
【0141】
実施例2において、脱イオン水1000部を864部に変更し、実施例2と同様にしてシラン反応物の水性液を得た。シラン反応物の水性液における酢酸による中和当量は0.4である。ついで得られたシラン反応物の水性液に89%リン酸水溶液を添加、撹拌後、脱イオン水を添加せず、かつ減圧蒸留を行わない以外は、実施例2をと同様の操作を行い、固形分10%、pH7.1の水性バインダ組成物A10を得た。水性バインダ組成物A10において、全酸のうちリン酸による中和当量は0.1である。
【0142】
水性バインダ組成物A10は、ガスクロマトグラフによって測定したメタノール濃度が5.0%であり、引火点は76℃であった。水性バインダ組成物A10の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されており、また、1H−NMR測定結果から、エポキシ基は残存していないことを確認した。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3.0当量である。水性バインダ組成物A10の樹脂固形分の重量平均分子量は約3500であった。
比較例1
【0143】
実施例2において、89%リン酸水溶液を加えない以外は実施例2と同様に操作して水性バインダ組成物AC1を得た。シラン反応生成物の水性液は、減圧蒸留中に白濁し、最終的に得られた水性バインダ組成物AC1には大量の沈殿物を生じた。そのため、この水性バインダ組成物AC1については、以下、試験を行わなかった。
比較例2
【0144】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、脱イオン水874部を配合し、氷浴で冷却しながらN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン57部を徐々に投入し溶解させた。ついで、この内容物に酢酸12部を配合した後、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61部を投入し、30分間攪拌して溶解させ
、80℃に昇温して5時間反応させシラン反応生成物(A’)の水性液を得た。1H−NMR測定結果から、このシラン反応生成物にはエポキシ基は残存していないことを確認した。酢酸によるシラン反応物の中和当量は0.4である。得られたシラン反応生成物の水性液をそのまま200メッシュのフィルターでろ過し、水性バインダ組成物AC2を得た。
【0145】
水性バインダ組成物AC2の固形分は10%、pH7.4であった。ガスクロマトグラフによって測定したメタノール濃度は8%であり、引火点は65℃であった。また、1H−NMR測定結果から、エポキシ基は残存していないことを確認した。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3.0当量である。水性バインダ組成物AC2の樹脂固形分の重量平均分子量は約4000であった。
比較例3
【0146】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、脱イオン水864部を配合し、氷浴で冷却しながらN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン57部を徐々に投入し溶解させた。ついで、この内容物に酢酸12部を配合した後、反応溶液の温度が10℃を超えないようにγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61部を1時間かけて滴下し、さらに30分間攪拌して溶解させた。1H−NMR測定結果から、このシラン反応生成物にはエポキシ基は初期の30%が未反応で残存していた。シラン反応生成物の水性液における酢酸による中和当量は0.4である。そのまま、200メッシュのフィルターでろ過し、水溶液である水性バインダ組成物AC3を得た。
【0147】
水性バインダ組成物AC3の固形分は10%、pH7.4であり、また、ガスクロマトグラフによって測定したメタノール濃度が5.0%であり、引火点は76℃であった。水性バインダ組成物AC3の固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3当量である。水性バインダ組成物AC3の樹脂固形分の重量平均分子量は約1500であった。
比較例4
【0148】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン61部を配合し、酢酸28部と脱イオン水15部を加えて30分攪拌して加水分解した後、留分を除去しながら100℃まで昇温した。さらに100℃で1時間維持して縮合を進め、無色透明の粘調な水溶液を得た。この粘調な水溶液にN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン57部を撹拌下にて1時間かけて滴下した。滴下終了後、1時間撹拌した後、加熱し80℃で5時間反応させた。1H−NMR測定結果から、この反応後の内容物にはエポキシ基は残存していないことを確認した。ついで、脱イオン水833部を配合して30分間攪拌して反応後の内容物を溶解させようとしたが、液は白濁し、完全に溶解させることはできなかった。
【0149】
得られた水性バインダ組成物AC4の樹脂固形分の重量平均分子量は10000を超えていた。この水性バインダ組成物AC4については、以下、試験を行わなかった。
下記表1に実施例1〜10及び比較例1〜4における水性バインダ組成物の配合、性状などを示す。表1においては水の配合量は省略する。
【0150】
【表1】
水性バインダ組成物の貯蔵試験
【0151】
実施例1〜10ならびに比較例2及び3で作製した水性バインダ組成物を、20℃、30℃、40℃及び50℃の各温度で30日間貯蔵し、液の貯蔵安定性を液外観及び液粘度に基づき下記基準で評価した。その結果を下記表2に示す。初期の液状態も併せて記載する。液粘度は、B型回転粘度計を用いて、測定温度20℃および回転数60rpmの条件で測定した。
○:液外観は無色ないし
淡黄色透明であり、かつ粘度は2.5mPa・s以下である。
△:液外観はわずかな濁り、沈殿物もしくは浮遊物が見られ、粘度は2.5mPa・sを超えるが、著しい増粘やゲル化は認めらない。
×:液外観はかなりの濁り、沈殿物もしくは浮遊物が見られ、著しい増粘もしくはゲル化が認められる。
【0152】
【表2】
金属表面処理剤の調製【0153】
実施例11〜22ならびに比較例5及び6
金属表面処理剤の成分及びその配合割合ならびに液安定性を下記表3に示す。下記表3に示す配合割合となるように各成分を混合し、酢酸又はアンモニア水を用いてpH7.0に調整して各金属表面処理剤を得た。得られた金属表面処理剤の貯蔵安定性を下記の方法で評価した。その結果も合わせて下記表3に示す。
貯蔵安定性【0154】
所定の温度で1週間貯蔵した後の液外観及び液粘度に基づいて下記基準で評価した。液粘度は、B型回転粘度計を用いて、測定温度20℃および回転数60rpmの条件で測定した。
○:液外観は透明、粘度は2.5mPa・s以下。
△:液外観はわずかな濁り、沈殿物もしくは浮遊物が見られ、粘度は2.5mPa・sを超えるが著しい増粘やゲル化は認めらない。
×:液外観はかなりの濁り、沈殿物もしくは浮遊物が見られ、著しい増粘もしくはゲル化が認められる。
【0155】
【表3】
表面処理板の製造【0156】
実施例23〜40ならびに比較例7及び8
板厚0.6mm両面電気亜鉛めっき鋼板(EG材、片面の目付量20g/m
2)の表面を、アルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル社製、商品名「ケミクリーナー561B」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して、温度60℃の条件で2分間スプレー処理することにより脱脂し表面に付着しているゴミや油を除去し、水洗したのちに乾燥した。得られた脱脂処理した亜鉛めっき鋼板に、前記実施例及び比較例で得た各金属表面処理剤を下記表4に示す指示に従いロールコート法により塗布し、素材到達温度が100℃になるようにして20秒間焼付けて表面処理板を得た。金属表面処理剤は、製造後、初期のもの及び20℃で7日間貯蔵後のものを使用した。
【0157】
各実施例及び比較例で調製した金属表面処理剤を用いて作製した各表面処理板について、下記の試験方法に基づき耐食性及び導電性の試験を行った。その試験結果を下記表4に示す。また、各表面処理板について、後記密着性試験を行った結果は、いずれの表面処理板においても表面処理皮膜の剥離が認められず良好であった。
【0158】
【表4】
試験方法:【0159】
耐食性:
得られた各表面処理板の端面部及び裏面部をシールし、JIS Z 2371による塩水噴霧試験(SST)を行った。試験時間120時間及び240時間後の錆の発生程度下記基準により評価した。
a:錆発生が認められない。
b:錆発生が全面積の5%未満。
c:錆発生が全面積の5%以上でかつ10%未満。
d:錆発生が全面積の10%以上でかつ50%未満。
e:錆発生が全面積の50%以上。
【0160】
導電性:
三菱化学アナリテック(株)製ロレスタGP、ASP端子を用いて、表面処理板の任意の10箇所の表面抵抗値を測定し、10
−4Ω以下を示す回数で評価した。
a:10回全て
b:6〜9回
c:1〜5回
d:0回
【0161】
密着性試験:
各表面処理板の表面処理皮膜面に、カッターナイフにて素地に達するように、10mm四方に1mm×1mmの正方形が100個となるよう碁盤目を作製した。この碁盤目部が外側に押出されるように、エリクセン試験(7mm押し出し)を行った後、押出された加工部にセロハン粘着テープを密着させ、瞬時に剥離させた時に、表面処理皮膜の剥離の程度を評価した。
水性バインダ組成物の製造
実施例41
【0162】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、脱イオン水850部を配合し、氷浴で冷却しながらN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン53部を徐々に投入し溶解させた。ついで、この内容物に酢酸23部を配合して中和した後、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン66部とメチルトリメトキシシラン16部との混合物を投入し、30分間攪拌して溶解させた後、80℃で5時間反応させてシラン反応生成物(A’)の水性液を得た。1H−NMR測定結果からこのシラン反応生成物(A’)にはエポキシ基は残存していないことを確認した。
【0163】
ついで、このシラン反応生成物(A’)の水性液に89%リン酸水溶液10部及び脱イオン水300部を加えて溶解させた後、60〜70℃で、減圧蒸留にて1000部となるまで濃縮した。このようにして加水分解で生じたアルコールを水分とともに留去した後、200メッシュのフィルターでろ過し、水溶液である水性バインダ組成物A11を得た。水性バインダ組成物A11の固形分は10%、pH6.1であった。ガスクロマトグラフによって測定したアルコール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。水性バインダ組成物A11の樹脂固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3.0当量であり、このアミノ基に対する酸中和当量は1.0である。水性バインダ組成物A11の樹脂固形分の重量平均分子量(GPC測定による)は約7.0×10
3であった。
実施例42〜49及び比較例11
【0164】
実施例41において、配合組成を表5に示すとおりに変更する以外は、実施例41と同様にして水性バインダ組成物A12〜A19及びAC6を調製した。水性バインダ組成物A12〜A19及びAC6は、いずれもガスクロマトグラフによって測定したアルコール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。酸中和当量、エポキシ基1当量に対するアミノ基の活性水素の当量、固形分、pH、重量平均分子量等の特数値は表5に示すとおりである。
実施例50
【0165】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、脱イオン水850部と酢酸21部を配合し、攪拌しながら、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン61部とメチルトリメトキシシラン30部との混合物を徐々に投入し、10分間攪拌して溶解させた。ついで、この内容物にN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン49部を徐々に投入し30分間攪拌して溶解させた後、80℃で5時間反応させてシラン反応物の水性
液を得た。1H−NMR測定結果からこのシラン反応物にはエポキシ基は残存していないことを確認した。
【0166】
ついで、このシラン反応物の水性
液に89%リン酸水溶液10部及び脱イオン水300部を加えて溶解させた後、60〜70℃で、減圧蒸留にて1000部となるまで濃縮した。このようにして加水分解で生じたアルコールを水分とともに留去し、200メッシュのフィルターでろ過し、水溶液である水性バインダ組成物A20を得た。水性バインダ組成物A20の固形分は10%、pH6.1であった。ガスクロマトグラフによって測定したアルコール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。水性バインダ組成物A20の樹脂固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3.0当量である。このアミノ基に対する酸中和当量は1.0である。水性バインダ組成物A20の樹脂固形分の重量平均分子量(GPC測定による)は7.2×10
3であった。
実施例51
【0167】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
49部を配合し、これにγ−グリシドキシプロピルトリ
エトキシシラン
61部を3時間かけて滴下し、滴下終了後、1時間攪拌した後、80℃で5時間反応させた。1H−NMR測定結果から、この内容物にはエポキシ基は残存していないことを確認した。この内容物に酢酸21部を配合して中和した後、脱イオン水850部を配合して溶解させ、ついでメチルトリメトキシラン30部を投入して60℃で30分間攪拌して加水分解させてシラン反応生成物(A’)の水性液を得た。
【0168】
ついで、このシラン反応生成物(A’)の水性液に89%リン酸水溶液10部及び脱イオン水300部を加え、60〜70℃で、減圧蒸留にて1000部となるまで濃縮して、加水分解で生じたアルコールを水分とともに留去し、200メッシュのフィルターでろ過し、水溶液である水性バインダ組成物A21を得た。水性バインダ組成物A21の固形分は10%、pH6.1であった。ガスクロマトグラフによって測定したアルコール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。水性バインダ組成物A21の樹脂固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3.0当量である。このアミノ基に対する酸中和当量は1.0である。水性バインダ組成物A21の樹脂固形分の重量平均分子量(GPC測定による)は7.0×10
3であった。
実施例52
【0169】
実施例41において、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、酢酸、メチルトリメトキシシランの配合量を表5に示すとおりに変更し、さらに酢酸の投入と同時に60%硝酸水溶液9部を加える以外は実施例41と同様にして、水性バインダ組成物A22を調製した。水性バインダ組成物A22の固形分は10%、pH8.0であった。ガスクロマトグラフによって測定したアルコール濃度は1.5%未満であり、引火点は観測されなかった。水性バインダ組成物A22の樹脂固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3.0当量である。このアミノ基に対する酸中和当量は0.4である。水性バインダ組成物A22の樹脂固形分の重量平均分子量(GPC測定による)は3.0×10
3であった。
比較例9
【0170】
還流冷却器、温度計及び攪拌機を取り付けたセパラブルフラスコに、脱イオン水826部を配合し、氷浴で冷却しながらN−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン62部を徐々に投入し溶解させた。ついで、この内容物に酢酸33部を配合して中和した後、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン78部を投入し、30分間攪拌して溶解させた後、80℃で5時間反応させてシラン反応生成物(A’)の水性液を得た。1H−NMR測定結果からこのシラン反応物にはエポキシ基は残存していないことを確認した。
【0171】
ついで、このシラン反応生成物(A’)の水性液に脱イオン水300部を加えて溶解させた後、60〜70℃で、減圧蒸留にて1000部となるまで濃縮した。このようにして加水分解で生じたアルコールを水分とともに留去した後、200メッシュのフィルターでろ過し、水溶液である水性バインダ組成物AC4を得た。水性バインダ組成物AC4は濃縮工程において沈殿物を生じ、200メッシュのフィルターでろ過した後も白濁が進行した。バインダ水溶液として使用できないため、この後の評価は行わなかった。
比較例10
【0172】
比較例9において、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランとγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランとを反応させて得たシラン反応生成物(A’)の水性液に、脱イオン水を添加せず、かつ減圧蒸留を行わないこと以外は比較例9と同様にして水性バインダ組成物AC5を得た。水性バインダ組成物AC5の固形分は10%、pH6.1であった。ガスクロマトグラフによって測定したアルコール濃度は5.2%であり、引火点は76℃であった。水性バインダ組成物AC5の樹脂固形分は、アルコキシシリル基を有しておらず、アルコキシシリル基は加水分解されていた。使用されたγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランのエポキシ基1当量に対する、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランのアミノ基の活性水素の量は3.0当量である。このアミノ基に対する酸中和当量は1.0である。水性バインダ組成物AC5の樹脂固形分の重量平均分子量(GPC測定による)は4.0×10
3であった。
【0173】
【表5】
水性バインダ組成物の貯蔵試験【0174】
実施例41〜52ならびに比較例10及び11で作製した液を、20℃、30℃、40℃及び50℃の各温度で30日間貯蔵し、液の貯蔵安定性を液外観及び液粘度に基づき下記の基準で評価した。その結果を下記表6に示す。初期の液状態も併せて記載する。比較例
9については初期の液状態のみ記載する。液粘度は、測定温度20℃、B型回転粘度計にて60rpmの条件で測定した。
○:液外観は無色〜淡黄色透明で、かつ液粘度2.5mPa・s以下。
△:液外観はわずかな濁り、沈殿物もしくは浮遊物が見られ、液粘度が2.5mPa・sを超えるが著しい増粘やゲル化は認めらない。
×:液外観はかなりの濁り、沈殿物もしくは浮遊物が見られ、著しい増粘もしくはゲル化が認められる。
【0175】
【表6】
金属表面処理剤の調製【0176】
実施例53〜66ならびに比較例12及び13
金属表面処理剤の配合及び液安定性を下記表7に示す。下記表7に示す配合組成となるように、各成分を配合し、酢酸又はアンモニア水を用いてpH7.0に調整して各金属表面処理剤を得た。
【0177】
【表7】
【0178】
上記表7における貯蔵安定性は、所定の温度で1週間貯蔵した後の液外観及び液粘度に基づいて下記基準で評価した。液粘度は、測定温度20℃、B型回転粘度計にて60rpmの条件で測定した。
○:液外観は透明で、かつ液粘度2.5mPa・s以下。
△:液外観はわずかな濁り、沈殿物もしくは浮遊物が見られ、液粘度が2.5mPa・sを超えるが著しい増粘やゲル化は認めらない。
×:液外観はかなりの濁り、沈殿物もしくは浮遊物が見られ、著しい増粘もしくはゲル化が認められる。
表面処理板の製造 (表面処理方法)【0179】
実施例67〜86ならびに比較例14及び15
板厚0.6mm両面電気亜鉛めっき鋼板(EG材、片面の目付量20g/m
2)の表面を、アルカリ脱脂剤(日本シービーケミカル社製、商品名「ケミクリーナー561B」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して、温度60℃の条件で2分間スプレー処理により脱脂することにより表面に付着しているゴミや油を除去し、水洗したのちに乾燥した。得られた脱脂処理した亜鉛めっき鋼板に、下記表8に示すように前記実施例及び比較例で得た各金属表面処理剤をロールコート法により塗布し、素材到達温度が100℃になるように20秒間焼付けて表面処理板を得た。金属表面処理剤は、製造後、初期のもの及び20℃で7日間貯蔵後のものを使用した。
【0180】
各実施例及び比較例で調製した金属表面処理剤を用いて作製した各表面処理板について下記試験方法に基づき耐食性、脱脂後耐食性及び導電性の試験を行った。その試験結果を下記表8に示す。また、各表面処理板について、後記密着性試験を行った結果は、いずれの表面処理板においても表面処理皮膜の剥離が認められず良好であった。
【0181】
【表8】
試験方法:【0182】
耐食性:
得られた各表面処理板について、各表面処理板の端面部及び裏面部をシールし、JIS Z 2371による塩水噴霧試験(SST)を行った。試験時間120時間及び240時間での錆の発生程度を下記基準により評価した。
a:錆発生が認められない。
b:錆発生が全面積の5%未満。
c:錆発生が全面積の5%以上でかつ10%未満。
d:錆発生が全面積の10%以上でかつ50%未満。
e:錆発生が全面積の50%以上。
【0183】
脱脂後耐食性:
得られた各表面処理板を、アルカリ脱脂剤(日本パーカラ
イジング(株)製「FC−4460」)を溶解した濃度2%の水溶液を使用して、60℃、2分間スプレー処理の条件で脱脂し、ついで水洗、乾燥して脱脂後表面処理板を得た。この脱脂後表面処理板の端面部及び裏面部をシールし、JIS Z 2371による塩水噴霧試験(SST)を行った。試験時間120時間での錆の発生程度を上記耐食性におけると同じ基準により評価した。
【0184】
導電性:
三菱化学アナリテック(株)製ロレスタGP、ASP端子を用いて、表面処理板の任意の10箇所の表面抵抗値を測定し、10
−4Ω以下を示す回数で評価した。
a :10回全て
b :6〜9回
c :1〜5回
d :0回
【0185】
密着性試験:
各表面処理板の表面処理皮膜面に、カッターナイフにて素地に達するように、10mm四方に1mm×1mmの正方形が100個となるよう碁盤目を作製した。この碁盤目部が外側に押出されるように、エリクセン試験(7mm押し出し)を行った後、押出された加工部にセロハン粘着テープを密着させ、瞬時に剥離させた時に、表面処理皮膜の剥離の程度を評価した。