【文献】
NUSBAUMER H. et al,CHEMISTRY - A EUROPEAN JOURNAL,2003年,V9 N16,P3756-3763
【文献】
DAIBIN K. et al,SMALL,2007年,V3 N12,P2094-2102
【文献】
HOLLAND J. M. et al,POLYHEDRON,2001年,V20 N22-23,P2829-2840
【文献】
FELDT SANDRA M.,JOURNAL OF THE AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,2010年,V132 N46,P16714-16724
【文献】
Kuang, Daibin et al.,Journal of the American Chemical Society,2006年,128(24),7732-7733
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の電極は、前記装置の電荷輸送層と対向する表面を含む半導体電極であり、ここで、前記表面上に、前記表面上に層を形成するように吸着された色素が存在しており、前記色素は、前記表面に吸着された場合に電荷を帯びていない色素もしくは正電荷を帯びた色素又は負電荷を帯びた色素から選択される、請求項1又は2に記載の装置。
光電気化学装置、光電子装置、電気化学電池、二重層キャパシタ、発光装置、エレクトロクロミック又はフォトエレクトロクロミック装置、電気化学センサー、バイオセンサー、電気化学ディスプレイ及び電気化学キャパシタから選択される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、遷移金属の錯体及びそれらの電気化学装置での使用を提供する。本発明は、さらに、金属系酸化還元対、特に、金属原子を含む酸化還元活性化合物を含む電気化学及び/又は光電子装置を提供する。本明細書の目的のために、表現「酸化還元活性化合物」は「金属系酸化還元対」と同じであり、用語「酸化還元活性錯体」、「酸化還元化合物」等を包含する。
【0030】
酸化還元活性化合物は、好ましくは、本発明の装置において、特に、本発明の装置が動作しているときに、還元及び酸化される。例えば、用途に応じて、酸化還元活性化合物は、第1の電極、例えば光電極で酸化され、第2電極、例えば対電極で還元されるか、あるいは、逆である。
【0031】
用語「含む」は、本明細書の目的のために、「他のものを含む」を意味することが意図される。この用語は、「のみからなる」ことを意味することを意図していない。
【0032】
一実施形態によれば、本発明は、一つ以上の配位子、例えば本明細書の他の箇所で詳細に説明する配位子La及び/又はXbを含む金属錯体を提供する。この金属錯体は、好ましくは酸化還元活性である。一実施形態によれば、この酸化還元活性化合物は、式(I):
M(La)n(Xb)m (I)
の錯体である。
【0033】
式(I)の錯体において、nは1〜6の整数であり、aは、n個の配位子が存在するように、整数(1、...、n)の組の連続する数である。例えば、nが1である場合、一つのaしかなく、aは1であり、たった1個の配位子La(L1)が存在する。
【0034】
nが2である場合、「a」は、2個の配位子La:配位子L1及びL2が存在するように、整数(1、2)の組の連続する数である。
【0035】
nが3である場合、「a」は、3個の配位子La:配位子L1、L2及びL3が存在するように、整数(1、2、3)の組の連続する数である。nが4である場合、、配位子L1、L2、L3、L4が存在し、nが5である場合、配位子L1、L2、L3、L4、L5が存在し、nが6である場合、配位子L1、L2、L3、L4、L5、L6が存在する。nが2以上である場合、すべての配位子Laは独立に選択され、それらが全て同じであってもよいし、それらのうちの幾つかが同じであってもよいし、又は全てが異なる構造を有してもよい。
【0036】
式(I)の錯体において、mは0又は1〜5の整数であり、m≧1である場合にm個の配位子:X1, ・・・, Xmが存在するように、m≧1である場合には、bは、整数(1, ・・・,m)の組の連続する数である。例えば、もしmが0である場合、例えば、配位子Xbは存在しない。もしmが1である場合、1個の配位子Xb(X1)が存在する。もしmが2である場合、独立して選択される2個の配位子Xb(X1, X2)が存在する。n及び配位子Laについて、上記のものと同じ原則が適用される。
【0037】
配位子Xbが存在しなくてもよい。好ましくは、配位子Xbは、存在する場合、共配位子(複数可)(co-ligand(s))及び/又はスペクテーター配位子(複数可)(spectator ligand(s))である。好ましくは、いずれの配位子Xbも単座配位子から独立に選択される。好ましくは、全ての配位子Xbは、存在する場合、単座配位子である。
【0038】
一実施の形態によれば、錯体は、置換又は非置換の環又は環系を含む少なくとも1個の単座、二座及び/又は三座配位子を含み、前記環又は環系は少なくとも1個の窒素原子を含む。前記配位子は、好ましくは、本発明の金属系錯体中のLa配位子に対応する。
【0039】
別の実施形態によると、錯体は、少なくとも2個のヘテロ原子を含む置換又は非置換の5員複素環及び/又は6員環を含む少なくとも1個の配位子を含む。
【0040】
一実施形態によれば、錯体は、少なくとも1個の窒素原子、特に環窒素原子を含む5又は6員複素環を含む少なくとも1個の単座、二座及び/又は三座配位子を含む。前記配位子は、好ましくは、本発明の金属系錯体中のLa配位子に対応する。一実施形態によると、前記5又は6員複素環は、1個、2個以上の環ヘテロ原子、例えば、3個以上の環ヘテロ原子、例えば4個の環ヘテロ原子を含む。本明細書の目的のために、環ヘテロ原子は、好ましくは、O、N及びSから独立に選択される。
【0041】
一実施形態によれば、前記5又は6員複素環は、2個以上の環窒素原子、例えば3個以上の環窒素原子、例えば4個の環窒素原子を含む。
一実施形態によれば、前記5又は6員の複素環は、2個以上の環窒素原子、例えば3個以上の環窒素原子、例えば4個の環窒素原子を含む。
【0042】
一実施形態によると、上記錯体は、式(I):
M(La)n(Xb)m (I)
(式中、Mは金属原子、好ましくは遷移金属、より好ましくは第1列遷移金属、例えばコバルトであり;
nは、1〜6の整数であり、aは、n個の配位子L1, ・・・, Lnが存在するように整数1からnまでの整数(1, ・・・, n)からなる第1の組の連続する数であり;
mは0又は1〜5の整数であり、bは、0と、m>1である場合にm個の配位子X1, ・・・, Xmが存在するように、1〜mの整数(0, ・・・, m)からなる第2の組の連続する数であり;
ここで、n及びmは金属M上に存在する配位子の適切な数に等しく;
いずれのLa(L1, ・・・, Ln)も、単座、二座又は三座配位子から独立に選択され、ただし、La(L1, ・・・, Ln)のうちの少なくとも1つは、少なくとも2個のヘテロ原子を含み、それらヘテロ原子のうちの少なくとも1個は窒素原子である5員N含有複素環及び/又は6員環を含む置換又は非置換の環又は環系を含み、前記5又は6員複素環はそれぞれ少なくとも1つの二重結合を含み;
Xbは、独立に、単座の共配位子である。
【0043】
別の実施形態によると、特に、テトラシアノボレート([B(CN)
4]
-)及び式Iの陽イオン性金属錯体を含む電荷輸送層を含む電気化学及び/又は光電子装置に関し、任意のLa(L1, ・・・, Ln)は、置換又は非置換の環又は環系を含む単座、二座及び三座配位子から独立に選択され、前記環又は環系は少なくとも1個の窒素原子を含む。
【0044】
錯体の金属原子、例えばMは、好ましくは第1列遷移金属から選択される。従って、金属原子Mは、好ましくは、Sc, Ti, V, Cr, Mn, Fe, Co, Ni, Cu, 及びZnから選択できる。好ましくは、MはFe, Co, Ni, Cuから選択される。最も好ましくは、Mはコバルト(Co)である。本発明の錯体は酸化還元対を形成するため、金属原子Mは、本発明の錯体における様々な酸化レベルで存在してもよい。例えば、金属原子は、+II及び+IIIの酸化状態で存在してもよい。従って、金属原子の可逆的還元及び/又は酸化は、酸化還元活性化合物及び/又は金属系酸化還元対の酸化還元活性のためである。
【0045】
nは1〜6の整数であることができるため、式(I)の錯体は、少なくとも1個、しかしおそらく6個以下の配位子Laを含む。様々な実施形態を、式(II)〜(XXI)の錯体の例で以下に示す:
【0046】
nが1であり、L1が単座配位子であり、mが5である場合:
(II) M L1 X1 X2 X3 X4 X5、ここで、X1からX5は同じであっても異なっていてもよい。
nが1であり、L1が二座配位子である場合(mは4である):
(III) M L1 X1 X2 X3 X4、ここで、X1からX4は同じであっても異なっていてもよい。
nが1であり、L1が三座配位子である場合(mは3である):
(IV) M L1 X1 X2 X3、ここで、X1からX3は同じであっても異なっていてもよい。
nが1であり、L1が四座配位子である場合(mは2である):
(V) M L1 X1 X2、ここで、X1からX2は同じであっても異なっていてもよい。
【0047】
nが2であり、L1及びL2が両方とも単座配位子である場合(mは4である):
(VI) M L1 L2 X1 X2 X3 X4、ここで、L1とL2は同じであっても異なっていてもよく、X1からX4のいずれも同じであっても異なっていてもよい。
nが2であり、L1及びL2が両方とも二座配位子である場合(mは2である):
(VII) M L1 L2 X1 X2、ここで、L1とL2は同じであっても異なっていてもよく、 X1及びX2は同じであっても異なっていてもよい。
nが2であり、L1及びL2がそれぞれ単座及び二座配位子である場合(mは3である):
(VIII) M L1 L2 X1 X2 X3、ここで、L1とL2は異なり、X1からX3のいずれも同じであっても異なっていてもよい。
nが2であり、L1及びL2はそれぞれ単座及び三座配位子である場合(mは2である):
(IX) M L1 L2 X1 X2、ここで、L1とL2は異なり、X1とX2のいずれも同じであっても異なっていてもよい。
nが2であり、L1が二座配位子であり、L2が三座配位子である場合(mは1である):
(X) M L1 L2 X1、ここで、L1とL2は異なる。
nが2であり、L1とL2が両方とも三座配位子である場合(mは0である):
(XI) M L1 L2、ここで、L1とL2は同じであっても異なっていてもよい。
【0048】
nが3であり、L1、L2及びL3が全て単座配位子である場合(mは3である):
(XII) M L1 L2 L3 X1 X2 X3、ここで、L1からL3のいずれも同じであっても異なっていてもよく、X1からX3のいずれも同じであっても異なっていてもよい。
nが3であり、L1、L2及びL3が全て二座配位子である場合(mは0である):
(XIII) M L1 L2 L3、ここで、L1、L2及びL3のいずれも、それぞれ、独立に、L1、L2、L3の任意の他のものと同じであっても異なっていてもよい。例えば、L1からL3は全て同じであってもよい。
nが3であり、L1が二座配位子であり、L2及びL3が両方とも単座配位子である場合(mは2である):
(XIV) M L1 L2 L3 X1 X2、ここで、L1はL2及びL3と異なり、L2及びL3は同じであっても異なっていてもよく、X1及びX2は同じであっても異なっていてもよい。
nが3であり、L1が三座配位子であり、L2及びL3が両方とも単座配位子である場合(mは1である):
(XV) M L1 L2 L3 XI、ここで、L1はL2と異なり、L2とL3は同じであっても異なっていてもよい。
nが3であり、L1が三座配位子であり、L2が二座配位子であり、L3が単座配位子である場合(mは0である):
(XVI) M L1 L2 L3、ここで、L1、L2及びL3は全て異なる。
【0049】
nが4であり、L1が二座配位子であり、L2からL4が単座配位子である場合(mは1である):
(XVII) M L1 L2 L3 L4 X1、ここで、L1はL2からL4と異なり、L2からL4のいずれも同じであっても異なっていてもよい。
nが4であり、L1が三座配位子であり、 L2からL4が単座配位子である場合(mは0である):
(XVIII) M L1 L2 L3 L4 L1、ここで、L1はL2からL4と異なり、L2からL4のいずれも同じであっても異なっていてもよい。
nが4であり、L1からL4が全て単座配位子である場合(mは2である):
(XIX) M L1 L2 L3 L4 X1 X2、ここで、L1からL4のいずれも同じであっても異なっていてもよく、X1及びX2は同じであっても異なっていてもよい。
【0050】
nが5であり、L1が二座配位子であり、L2からL5が全て単座配位子である場合(mは0である):
(XX) M L1 L2 L3 L4 L5、ここで、L1はL2からL5と異なるが、L2からL5は同じであっても異なっていてもよい。
nは5(又は6)であり、mが1(又は0、それぞれ)であるその他の場合では、L1からL5(又はL1からL6、それぞれ)は、全て、同じ又は異なる単座配位子である。
【0051】
以上のことから、本発明の錯体は、ホモレプティック(homoleptic)(同じ配位子Laを含み、mが0である)であってもヘテロレプティック(heteroleptic)(少なくとも2個の異なる配位子を含む)であってもよい。
好ましくは、nは1、2又は3であり、より好ましくは2又は3である。nが2である場合、L1及びL2は、好ましくは同じである。nが3である場合、L1からL3は好ましくは同じである。
【0052】
本発明の錯体の一実施形態によれば、nは2(M L1 L2)又は3(M L1, L2, L3)であり、mは、いずれの場合も0である。
一実施形態によれば、本発明の錯体は、少なくとも2個、又は少なくとも3個の同一構造を有する配位子Laを含む(それぞれL1=L2又はL1=L2=L3)。
一実施形態によれば、nは1〜3の整数、好ましくは2又は3である。
【0053】
なお、nとmは金属M上に存在する配位子の適切な数に等しい。そのため、パラメーターn及びm、ならびにそれらの和は、金属原子と配位子La及びXb(それらが単座、二座又は三座配位子である場合)の原子価に依存する。例えば、金属がコバルトである場合には、一般的には、金属に対して可能な6つの錯体結合が存在し、そのため、例えば、2個の三座配位子が存在する場合には、nは2であり、mは0である。同様に、3個の二座配位子Laが存在する場合に、mは3であり、mは0である。
【0054】
一実施形態によれば、本発明の錯体は、全体的に中性であるか、あるいは全体として正又は負の電荷を有する。本明細書の他の箇所で詳述したように、本発明の配位子から判るように、錯体全体の電荷は、必要に応じて、適切な負電荷を帯びた配位子を選択することにより、酸化又は還元状態で、中性又は負の電荷に調節することができる。本明細書の目的のために、本発明の電気化学装置の他の構成要素に依存して前記電荷を調整するために、錯体の電荷を調整可能であることが有利であると考えられる。特に、装置の他の構成要素、例えば色素などとの帯電相互作用を避けるために、酸化還元対の電荷を中性又は負の電荷に調整することができる。
【0055】
以下、本発明の少なくとも1つの配位子についての好ましい実施形態を示す。一実施形態によると、前記配位子は、少なくとも2個のヘテロ原子を含む5員複素環及び/又は6員環を含む置換又は非置換の環又は環系を含む。これらの実施形態は、式(I)の錯体の配位子La(L1, ・・・, Ln)にも適用される。
【0056】
5又は6員複素環は、置換又は非置換の複素環として独立に提供されてもよい。当該複素環は、別の環又は環系に縮合していてもよく、及び/又は複素環の炭素の/炭素上の2個の置換基が環を形成していてもよく、環を形成する場合に、複数の環のうちの1つが前記5又は6員複素環であるスピロ化合物をもたらしてもよい。さらに、5又は6員複素環は、共有結合により、別の環又は環系、例えば、ピリジン環に、又は1つのピリジン環又はより多くの環を含む多環系に、結合していてもよい。
【0057】
好ましくは、置換又は非置換の5又は6員複素環(少なくとも2個のヘテロ原子を含む6員複素環)は、少なくとも1つの二重結合を含む。より好ましくは、 5又は6員の複素環は芳香族である。
【0058】
好ましい一実施形態によれば、本発明の錯体は、同一又は異なっていてもよく、少なくとも1個、より好ましくは少なくとも2個、さらに好ましくは少なくとも3個の二座配位子Laを含み、二座配位子Laは同じであっても異なっていてもよい。
【0059】
別の、さらに好ましい実施形態によれば、本発明の錯体は、少なくとも1個、好ましくは、少なくとも2個の三座配位子Laを含み、三座配位子Laは同じであっても異なっていてもよい。
【0060】
一実施の形態によれば、前記n個の配位子La(L1, ・・・, Ln)のうちの少なくとも1つは、ピリジン環、あるいは、少なくとも2個のヘテロ原子を含む前記5員複素環及び/又は前記6員環に共有結合により連結された又は縮合したピリジン環を含む環系を含む。ここで、前記ピリジン環又は環系は、さらに置換されていてもいなくてもよいピリジン環を含む。
【0061】
一実施形態によれば、前記5又は6員環は、好ましくは、少なくとも1個のN、O、P及びSの群から選択された少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは少なくとも1個のNを含む。
【0062】
一実施形態によれば、前記5員複素環は2個以上(好ましくは4個以下)のヘテロ原子を含み、前記6員複素環は2個以上(好ましくは4個以下)のヘテロ原子を含む。好ましくは、少なくとも、第1ののヘテロ原子は窒素であり、少なくとも第2のヘテロ原子又はさらなるヘテロ原子はN、O、P及びSから独立に選択される。好ましくは、前記第2のヘテロ原子はNであり、もし該当する場合には、さらなるヘテロ原子(第3、第4など)はN、O、P及びSから独立に選択され、好ましくは、それらはNである。
【0063】
別の実施形態によれば、配位子、特に酸化還元活性化合物の任意の配位子Laは、置換及び非置換ピリジン又はポリピリジン(例えばビ−及びトリピリジン)配位子、置換及び非置換ピラゾール、置換及び非置換ピラジン、置換及び非置換トリアゾール、置換及び非置換テトラゾール、置換及び非置換ピリダジン、置換及び非置換イミダゾールから独立に選択され、ここで置換基は1〜40個の炭素と0〜25個のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン、(-F、-Cl、-Br、-I)、-NO
2、及び-OHから選択される。
【0064】
置換基の前記ピリジン、ポリピリジン、ピラゾール、ピラジン、トリアゾール、ピリダジン及びイミダゾールの置換基は、存在する限り、R
1〜R
8及びR
1〜R
7の好ましい実施形態を含めて本明細書中の別の箇所で定義したとおりのR
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6の置換基のうちの任意の1つとして選択することができる。
【0065】
一実施形態によれば、本発明の錯体の少なくとも1個の配位子は、下記式(1)〜(63)の化合物から独立に選択される。好ましくは、式(I)の錯体の前記n個の配位子La(L1, ・・・, Ln)、又は式(II)〜(XVII)の錯体のいずれも、該当する限り、下記式(1)〜(63)の化合物から独立に選択される:
【0070】
ここで、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8のいずれも、もし該当するならば、H、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、-NO
2、-NH
2、-OHから、及び1〜50個の炭素と0〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素、好ましくは1〜30個の炭素と0〜20個のヘテロ原子を含む前記炭化水素から独立に選択することができ;
R’及びR’’は、置換基-CH
2R
1、-CHR
1R
2及び-CR
1R
2R
3から独立に選択され;
ただし、もし前記化合物が上記式(1)〜(5)のいずれかに従う化合物である場合には、前記置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8のうちの少なくとも1つは、存在する限り、下記式(A-1)〜(G-2)の置換基から独立に選択される:
【0076】
ここで、前記点線は、式(1)〜(63)の化合物に(A-1)〜(G-2)の置換基が連結する結合を表し、置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、存在する限り、H、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、-NO
2、-NH
2、-OHから、及び1〜50個の炭素と0〜20個のヘテロ原子を含む及び/又はからなる炭化水素、好ましくは1〜50個の炭素と0〜15個のヘテロ原子を含む及び/又はからなる炭化水素から独立に選択される。R’及びR’’は、本明細書において先に及び他の箇所で定義したとおりである。
【0077】
しかし、電子受容性置換基(例えばハロゲン、-CF
3、-CNを含む)が好ましい。
「炭化水素」は、本明細書の目的のために、少なくとも1個の炭素原子を含む化合物又は置換基である。置換基-C≡N (-CN)及び-CF
3は炭化水素であると考えられる。
【0078】
化合物(6)〜(63)は、単座配位子の形態で用意することができるのに対し、一実施形態に従う、式(A-1)〜(G-2)に従う少なくとも1個の置換基を含む化合物(1)〜(5)は、一般的に、二座又は三座配位子である。置換基R
1〜R
8(該当する限り)の選択に応じて、化合物(6)〜(63)は、二座又は三座配位子La(L1, ・・・, Ln)の形態で用意されてもよい。
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8並びにR
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のいずれも、各置換基が化合物(1)〜(63)上に存在するか又は化合物(1)〜(42)の群及びそれらの置換基のものである限り、もし該当する場合には、本明細書中の他の箇所で述べた条件の下で、Hから、及び1〜50個の炭素及び0〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素から独立に選択できる。
【0079】
なお、もし本発明の酸化還元活性錯体が、2個以上の異なる配位子、例えば、上記の化合物(1)〜(63)又は本明細書中の他の箇所で定義したとおり化合物(1)〜(42)の群から独立に選択された2個以上の異なる配位子を含む場合には、置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8並びに/又はR
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のうちの任意の所与の置換基は、存在する限り(任意の置換基が所与の置換基数を意味する)、前記2個(潜在的に異なる)の配位子で同じである必要はなく、独立に選択できる。例えば、酸化還元活性錯体が式(66)(下記参照)に従う2個の配位子を含む場合、式(66)のそれらの2個の配位子のうちの1つの上にある任意のR
1は、式(66)の他の置換基上にある置換基R
1と異なっていてもよい。同様に、酸化還元活性錯体が、式(1)〜(67)の化合物から独立に選択された2個の異なる配位子、例えば式(66)の配位子と式(67)の配位子を含む場合には、それらの2個の配位子上に存在する任意のR
1(及び同じ置換基数を有する他の全ての置換基)は独立に選択され、そのため、同じであっても異なっていてもよい。換言すれば、任意の所与の配位子Laについて、各置換基R
1〜R
7又はR
1〜R
8とR
1-6は、別の配位子La上にもしかすると存在する置換基R
1〜R
7又はR
1〜R
8とR
1-6から独立に選択される。これは、配位子Laが同じである実施形態には当てはまらない。
【0080】
テトラシアノボレート([B(CN)
4]
-)と式Iの陽イオン性金属錯体を含む電荷輸送層を含む本発明の装置の好ましい一実施形態によると、式(1)〜(63)の化合物への言及は、特に、化合物(1), (2), (3), (6), (7), (10), (11), (12), (15), (16), (23), (24), (25), (26), (27), (28), (29), (30), (31), (32), (33), (34), (35), (36), (37), (39), (40), (41)及び(42)の群を指し、これは、「化合物(1)〜(42)の群」として特定できる。
【0081】
テトラシアノボレート([B(CN)
4]
-)と式Iの陽イオン性金属錯体を含む電荷輸送層を含む本発明の装置の好ましい一実施形態によると、式(A-1)〜(G-2)の化合物への言及は、より具体的には、化合物(A-3), (A-5), (A-6), (B-5), (B-6), (B-8), (B-9), (B-10), (B-ll), (B-12), (B-13), (B-14
), (B-15), (B-17), (B-21), (B-22), (B-24), (B-25), (B-26), (B-27), (C-2), (C-3), (C-4), (
C-5), (C-6), (C-7), (C-8), (C-9), (C-10), (C-l l), (C-13), (C-14), (C-15), (C-16), (C-12), (C-17), (C-18), (C-19), (C-20), (C-21), (C-24), (C-25), (C-26), (C-27), (D-l), (D-2), (D-3), (E-l), (E-2), (E-3), (F-l), (F-2), (F-3), (F-4), (F-5), (F-6), (F-7), (F-9), (F-10), (G-l)及び(G-2)からなる群のうちの1つ以上の置換基を指し、この群は、好ましくは「(A-3)〜(G-2)」 の群として本明細書において特定される。
【0082】
ヘテロ原子は、好ましくは、Si, N, P, As, O, S, Se, ハロゲン(特にF, CI, Br及びI), B, Beから、より好ましくはSi, N, P, O, S,及びハロゲンから、最も好ましくはN, O, S及びハロゲンから独立に選択される。
【0083】
一実施形態によると、前記置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、R
8、並びにR
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6のうちのいずれも、H, ハロゲン, -F, -CI, -Br, -I, -NO
2, -CN, -OH, -CF
3, 置換又は非置換のC1-C50アルキル、C2-C50アルケニル、C2-C50アルキニル、及びC4又はC5〜C50アリールから独立に選択され、ここで前記置換又は非置換のアルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールにおいて、任意の炭化水素基(好ましくは、もし該当する場合に、非隣接炭化水素基)は、-O-, -S-, -S(=O)-, -S(=O)
2-, -Si-, -Ge-, -NR
A-, -N=, -BR
A-, -PR
A-, -P(=O)R
A-, -P(=O)OR
A-, -C(=O)-, -C(=S)-, -C(=O)O-, -OC(=O)-, -C(=NR
A)-, -C=NR
A-, -NR
AC(=O)-, -C(=O)NR
A-, -NR
AC(=S)-及び-C(=S)NR
A-の群から選択された任意の1つに置き換えられていてもよい。
ここで、もし前記アルキル、アルケニル、アルキニル及びアリールが置換されたものである場合には、置換基、及び前記R
Aは、もし存在する場合に、ハロゲン, -F, -CI, -Br, -I, -NO
2, -CN, -OH, -CF
3, 置換又は非置換のC1-C15アルキル、C2-C15アルケニル、C2-C15アルキニル、、C2-C15アルキニル、C4又はC5〜C18アリールから独立に選択され、ここで前記置換基の任意の炭化水素は、-O-, -S-, -S(=O)-, -S(=O)
2-, -Si-, -Ge-, -NR
A-, -N=, -BR
B-, -PR
B-, -P(=O)R
B-, -P(=O)OR
B-, -C(=O)-, -C(=S)-, -C(=O)O-, -OC(=O)-, -C(=NR
B)-, -C=NR
B-, -NR
BC(=O)-, -C(=O)NR
B-, -NR
BC(=S)-及び-C(=S)NR
B-の群から選択された任意の1つに置き換えられていてもよく、ここで、R
AはHであってもよく;
ここで、もし前記アルキル、アルケニル、アルキニル又はアリールがさらに置換されたものである場合には、前記置換基の置換基、及び前記R
Bは、もし存在する場合に、ハロゲン, -F, -CI, -Br, -I, -NO
2, -CN, -OH, -CF
3, 置換又は非置換のC1-C8アルキル、C2-C8アルケニル、C2-C8アルキニル、C5-C8アリールから選択することができ、ここで、前記置換基の任意の炭化水素基は、-O-, -S-, -S(=O)-, -S(=O)
2-, -Si-, -Ge-, -N=, -BR
B-, -C(=O)-, -C(=S)-, -C(=O)O-, -OC(=O)-の群から選択された任意の1つに置き換えられていてもよく、R
BはHであってもよい。前記のさらなる置換基のさらなる置換基は、好ましくは、ハロゲン、-CN及びC1〜C4アルキル、C2-C4アルケニル及びC2-C4アルキニルから選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル又はアルキニルの任意の利用可能な水素はハロゲンにより置換されていてもよい。
【0084】
好ましくは、前記置換又は非置換のC1-C50アルキル、C2-C50アルケニル、C2-C50アルキニル、及びC4又はC5〜C50アリールは、置換又は非置換のC1-C20アルキル、C2-C20アルケニル、C2-C20アルキニル、及びC4〜C20アリールである。
【0085】
本明細書の目的のために、本明細書で特定される任意のアルキル、アルケニル又はアルキニルは、直鎖、分岐及び/又は環状であることができる。この場合に、アルキル、アルケニル及びアルキニルは3つ以上の炭素を有する。4又は5個の炭素を有する任意のアリール基は、芳香環置換基環をもたらすように適切な数の環ヘテロ原子を有する。そのため、「アリール」という表現は、ヘテロアリールを包含する。一実施形態によると、アリールは、ヘテロアリールから及びヘテロ原子を欠くアリールから選択される。
【0086】
好ましくは、R
Aは、H, C1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル, C4-C10アリール, -CNから選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル及び/又はアリールは、-CN, C1-C4アルキル(部分的に又は完全にハロゲン化された)及びハロゲンによりさらに置換されていてもよい。より好ましくは、R
AはH, -CN, C1-C5アルキル, C2-C5アルケニル, C2-C5アルキニル, C4-C6アリールから選択され、-CN又はハロゲンによりさらに置換されていてもよい。
【0087】
好ましくは、R
Bは、H、H、C1-C5アルキル、C2-C5アルケニル、C2-C5アルキニル、C4-C6アリール、-CNから選択され、、ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル及び/又はアリールは、-CN、C1-C4アルキル基(部分的又は完全にハロゲン化された)及びハロゲンによりさらに置換されていてもよい。より好ましくは、R
Bは、H、-CN、C1-C4アルキル基、C2-C4アルケニル、C2-C4アルキニル、C4-C6アリールから選択され、-CN又はハロゲンによりさらに置換されていてもよい。
【0088】
R
A, R
B 及びR
Cのいずれも、前記置換基R
A、好ましくはR
Bの好ましい実施形態を含む、本明細書の他の箇所で定義したとおりのR
Aについて定義した置換基、好ましくはR
Bについて定義した置換基から独立に選択される。
【0089】
好ましい一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7及びR
8のいずれも、化合物(1)〜(63)(又は上述の実施形態に従う化合物(1)〜(42)の群)上に存在する限り、本明細書中の他の箇所で述べた条件の下で、H、ハロゲン、及び1〜20個の炭素と0〜10個のヘテロ原子を含む炭化水素から、好ましくはH及び0〜10個のヘテロ原子を含C1-C10炭化水素から、より好ましくはH及び0〜5個のヘテロ原子を含むC1-C5炭化水素から独立に選択される。
【0090】
好ましい一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5及びR
6のうちのいずれも、上記置換基(A-1)〜(G-2)上(又は上述の実施形態に従う置換基(A-3)〜(G-2)の群の上)及び/又は配位子上、例えばXb上に存在する限り、もし該当する場合には、本明細書中の他の箇所で述べた条件の下で、H、ハロゲン、及び1〜20個の炭素と0〜10個のヘテロ原子を含む炭化水素から、又は1〜15個の炭素と0〜10個のヘテロ原子を含む炭化水素から、より好ましくはH及び0〜5個のヘテロ原子を含むC1-C5炭化水素から独立に選択される。
【0091】
一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8, R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R’及びR’’のいずれも、もし該当する場合には、H, 及びC1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル及びC5-C12アリール(好ましくはC6-C12アリール)から独立に選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル及びアリールにおいて、1個、数個又は全ての利用可能な水素がハロゲン及び/又は-CNに置き換わっていてもよく、ここで、前記R
1〜R
8及びR
1〜R
6のいずれも、さらに、ハロゲンから及び-C≡N (-CN)から選択できる。前記アリールは、さらに、C1-C4アルキル, ハロゲン及び-CNにより置換されていても置換されていなくてもよい。
【0092】
一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8, R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R’及びR’’のいずれも、存在する限り、式(A-l)〜(G-2)の置換基から又は先に定義した置換基(A-3)〜(G-2)の群((A-l) to (G-2)は置換基R
1〜R
8の例であるため、これは、好ましくは、R
1〜R
8だけに当てはまる)、H、及びC1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル、及びC6-C10アリールから独立に選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル及びアリールにおいて、1個、数個又は全ての利用可能な水素がハロゲン及び/又は-CNに置き換わっていてもよく、ここで、前記R
1〜R
8及びR
1〜R
6のいずれも、さらに、ハロゲンから及び-C≡N (-CN)から選択できる。前記アリールは、さらに、C1-C4アルキル、ハロゲン及び-CNにより置換されていても置換されていなくてもよい。
【0093】
一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8, R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R’及びR’’のいずれも、存在する限り、式(A-l)〜(G-2)の置換基から又は先に定義した置換基(A-3)〜(G-2)の群(好ましくはR
1〜R
8の場合、上記参照)、H、及びC1-C6、好ましくはC1-C4、より好ましくはC1-C3アルキルから独立に選択され、前記アルキルは必要に応じて部分的に又は完全にハロゲンにより置換されていてもよく、ここで、前記R
1〜R
8及びR
1〜R
6のいずれか1つは、さらに、ハロゲンから及び-C≡Nから選択できる。
【0094】
一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8, R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6のいずれも、存在する限り、式(A-l)〜(G-2)の置換基から又は先に定義した置換基(A-3)〜(G-2)の群(好ましくはR
1〜R
8の場合、上記参照)、H、ハロゲン、-CN、及びC1-C6、好ましくはC1-C4、最も好ましくはC1-C3アルキルから独立に選択され、前記アルキルはことによるとハロゲンにより置換されていてもよい。一実施形態によると、R
7〜R
9は-CNでない。
【0095】
一実施形態によると、R’及びR’’は、H及びC1-C6直鎖状、分岐状又は環状アルキルから独立に選択され、前記アルキルはことによると及び必要に応じて部分的に又は完全にハロゲンにより置換されていてもよい。
【0096】
一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8(もし該当する場合、ただし、本明細書中の他の箇所で述べた化合物(1)〜(5)に関する条件付きで)は、存在する限り、H、ハロゲン、-CNから、及びC1-C6アルキル及びアルケニル、前記アルキル及びアルケニルから独立に選択され、前記アルキル及びアルケニルの任意の利用可能な水素がハロゲン及び/又は-CNにより置き換えられていても置き換えられていなくてもよい。好ましくは、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8(もし該当する場合、ただし、本明細書中の他の箇所で述べた化合物(1)〜(5)に関する条件付きで)は、存在する限り、H、ハロゲン、-CNから、及びC1-C4アルキルから独立に選択され、前記アルキルは必要に応じて完全に又は部分的にハロゲン化されていてもよい。好ましくは、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8は、存在する限り、H、ハロゲン、-CN、-CF3及びC1-C3アルキルから独立に選択される。
【0097】
一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6は、存在する限り、H、ハロゲン、-CNから、及びC1-C6アルキル及びアルケニルから独立に選択され、前記アルキル及びアルケニルの任意の利用可能な水素がハロゲン及び/又は-CNにより置き換えられていても置き換えられていなくてもよい。好ましくは、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6は、存在する限り、H、ハロゲン、-CNから、及びC1-C4アルキルから独立に選択され、前記アルキルは必要に応じて完全に又は部分的にハロゲン化されていてもよい。好ましくは、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6は、存在する限り、H、ハロゲン、-CN、-CF
3及びC1-C4アルキルから独立に選択される。一実施形態によると、R
7〜R
9は好ましくはハロゲン及び/又はCNから選択されない。
【0098】
H以外の置換基R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8, R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6は、金属錯体の酸化電位を調整するのに好適である。理論に束縛されるわけではないが、かかる置換基はより高いVoc値を有する電気化学装置を得ることを助け、色素の特性に対して酸化還元対の酸化電位を調整すると考えられる。
【0099】
本発明の錯体の一実施形態によると、前記配位子La (L1, ・・・, Ln)のうちの少なくとも1つは、下記式(1-2)〜(3-2)の化合物から独立に選択される。
【0101】
ここで、置換基R
1, R
3, R
5, R
6及びR
8から選択される、前記化合物の少なくとも1個の置換基は、存在する限り、置換基(A-l)〜(G-2)から又は本明細書の他の箇所に定義した置換基(A-3)〜(G-2)の群から選択される。
【0102】
本発明の錯体の一実施形態によると、前記配位子La (L1, ・・・, Ln)のうちの少なくとも1つは、下記式(1-3)〜(3-3)の化合物から独立に選択される。
【0104】
ここで、置換基R
1, R
5及びR
8から選択される、前記化合物の少なくとも1個の置換基は、存在する限り、置換基(A-l)〜(G-2)から又は本明細書の他の箇所に定義した置換基(A-3)〜(G-2)の群から選択される。
【0105】
少なくとも1個の配位子Laが下記式(1-5)〜(3-5)の化合物から選択される、上記請求項のいずれか一項に記載の錯体。
【0107】
ここで、R1は置換基(A-l)〜(G-2)から又は本明細書の他の箇所に定義した置換基(A-3)〜(G-2)の群から選択される。
【0108】
本発明によると、環内に本発明の錯体の金属原子に結合している第2のヘテロ原子が存在することが、酸化還元対としての本発明の錯体の特性及び適切性に正の影響を及ぼすのに好適であることが驚くべきことに見いだされた。
【0109】
従って、少なくとも2個の環ヘテロ原子を有する環を含む配位子(例えばLa)が特に好ましい。この実施形態(「実施形態A」)によると、(10)〜(42), (50)〜(63)から、より好ましくは、配位子(1), (2), (3), (4), (1-2), (2-2), (3-2), (1-3), (2-3), (3-3), (1-4), (2-4), (3-4)を含む錯体から、これらの化合物が(B-l)〜(B-24), (C-17)〜(C-27), (D-l)〜(D-3), (F-l)〜(F-10), (G-l)及び(G-2)から選択された少なくとも1個の置換基を含む限り、選択された1又は2個以上の配位子を含む。
【0110】
別の実施形態(「実施形態A」)によると、正確に2個の環ヘテロ原子を有する環を含む配位子(例えばLa)が特に好ましい。
【0111】
一実施形態(「実施形態B」)によると、少なくとも2個の隣接する環ヘテロ原子を含む配位子(例えば、La)が特に好ましい。従って、本発明の錯体は、(13), (15), (16), (17), (18), (23)〜(34), (40)〜(42), (50)〜(54), (60)〜(63)から、より好ましくは、配位子(1), (2), (3), (4), (1-2), (2-2), (3-2), (1-3), (2-3), (3-3), (1-4), (2-4), (3-4)を含む錯体から、これらの化合物が、(B-l), (B-3), (B-6), (B-8), (B-13), (B-24), (B-25), (B-27), (C-l)〜(C-8), (C9)〜(C-16), (C-18)〜(C-27), (D-l)〜(D-3), (F-l), (F-3), (F-4), (F-6), (G-l), (G-2)から選択された少なくとも1個の置換基を含む限り、選択された1又は2個以上の配位子を含む。
【0112】
一実施形態(「実施形態C」)によれば、5員複素環を含む配位子(例えば、La)が特に好ましい。従って、本発明の錯体は、(6)〜(34), (43)〜(63)から、より好ましくは、配位子(1), (2), (3), (4), (1-2), (2-2), (3-2), (1-3), (2-3), (3-3), (1-4), (2-4), (3-4)を含む錯体から、これらの化合物が、(A-l)〜(A-6), (B-l)〜(B-18), (C-l)〜(C-8), (D-l)〜(D-3), (E-l)〜(E-3), (F-l)〜(F-10), (G-l)及び(G-2)から選択された少なくとも1個の置換基を含む限り、選択された1又は2個以上の配位子を含む。
【0113】
一実施形態(「実施形態D」)によれば、任意のさらなる環に縮合していない5員複素環を含む配位子(例えば、La)が特に好ましい。従って、本発明の錯体は、(6)〜(34)から、より好ましくは、配位子(1), (2), (3), (4), (1-2), (2-2), (3-2), (1-3), (2-3), (3-3), (1-4), (2-4), (3-4)を含む錯体から、これらの化合物が、(A-l)〜(A-6), (B-l)〜(B-18), (C-l)〜(C-8), (D-l)〜(D-3)から選択された少なくとも1個の置換基を含む限り、選択された1又は2個以上の配位子を含む。
【0114】
一実施形態(「実施形態E」)によれば、芳香族性を有する(芳香族である)5又は6員複素環を含む配位子(例えば、La)が特に好ましい。従って、本発明の錯体は、(6), (7), (10)〜(12), (15), (16), (19), (21), (23)〜(28), (31)〜(34), (35)〜(36), (39), (42), (43)〜(48), (50)〜(53), (55)〜(56), (58)〜(60)及び(62)から、より好ましくは、配位子(1), (2), (3), (4), (1-2), (2-2), (3-2), (1-3), (2-3), (3-3), (1-4), (2-4), (3-4)を含む錯体から、これらの化合物が、(A-3)〜(G-2)から選択された少なくとも1個の置換基を含む限り、選択された1又は2個以上の配位子を含む。
【0115】
一実施形態(「実施形態F」)によれば、本発明は、少なくとも1個のピリジン環と少なくとも1個の置換基を含む1又は2個以上の二座又は三座配位子(例えばLa)を含む錯体を提供する。ここで、前記置換基は炭素−窒素結合により前記ピリジン環に結合している。従って、本発明は、式(1), (2), (3), (4), (1-2), (2-2), (3-2), (1-3), (2-3), (3-3), (1-4), (2-4)及び/又は(3-4)の1又は2個以上の配位子を含む錯体を提供する。ここで、前記配位子は、(A-3), (B-8)〜(B-10), (B-23), (B-24), (C-4)〜(C-6), (C-9)〜(C-l6), (C-23), (C-26), (D-2), (E-3), (F-3), (F-4), (F-7), (G-l)から選択された1又は2個以上の置換基を含む。
【0116】
一実施形態(「実施形態G」)によると、本発明の錯体は、少なくとも1個のピリジン環と、置換基(A-l)〜(A-6), (B-l)〜(B-27), (C-l)〜(C-27), (D-l)〜(D-3), (E-l)〜(E-3), (F-l)〜(F-19)及び(G-l)〜(G-2)から選択された少なくとも1個の置換基を含む1又は2個以上の二座又は三座配位子(例えば、La)を含む。
上記実施形態A〜Gは、より特に好ましい実施形態を提供するために可能である限り互いに組み合わせることができる。例えば、好ましい一実施形態によると、錯体は、実施形態A〜Gのうちの2つ以上の定義(切断集合(cut-set)、重複(overlap)、又は共通部分(intersection)
【0118】
)を満たす化合物から選択された配位子を含む。例えば、本発明の錯体は、5員複素環を含む配位子から選択された配位子を含み、当該配位子は、同時に、芳香族性を有する(実施形態CとEの重複)。
【0119】
さらに、特に好ましい実施形態は、実施形態AとB;AとC;AとD; AとE; AとFの重複である。さらに好ましい実施形態は、実施形態BとC; BとE; BとF, BとG; BとFの重複により提供される。さらに好ましい実施形態は、実施形態CとD; CとE; CとF; CとGの重複である。さらに好ましい実施形態は、実施形態DとE; DとF; DとGの重複である。さらに好ましい実施形態は、実施形態EとF; EとGの重複である。さらに好ましい実施形態は、実施形態FとGの重複である。
さらに好ましい実施形態は、実施形態A〜Gから選択された3つの実施形態の重複により提供される。かかる特に好ましい実施形態は、以下の実施形態の重複により提供される:
A, B 及びC; A, B及びD; A, B及びE; A, B及びF; A, B及びG; A, C及びD; A, C及びE; A, C及びF; A, C及びG; A, D及びE; A, D及びF; A, D及びG; A, E及びF; A, E及びF; B, C及びD; B, C及びE; B, C及びF; B, C及びG; B, D及びE; B, D及びF; B, D及びG; B, E及びF; B, E及びG; B, F及びG; C, D及びE; C, D及びF; C, D及びG; C, E及びF; C, E及びG; C, F及びG; D, E及びF; D, F及びG。
【0120】
例えば、実施形態A, B及びC の重複(上記下線部)は、少なくとも2個(A)の隣接(B)するヘテロ原子を含む5員環(C)を有する配位子を含む本発明の錯体に関する。これらの配位子は、化合物(13), (15)〜(18), (23)〜(34), (50)〜(54), (60)〜(63)、及び式(1)〜(5), (1-2), (2-2), (3-2), (1-3), (2-3), (3-3), (1-4), (2-4), (3-4)の化合物(これらの後者の化合物が置換基(B-l), (B-4), (B-6), (B-8), (B-13), (C-1)〜(C-8), (D-1)〜(D3), (F-1), (F-3), (F-4), (F-6), (G-1), (G-2)から選択された少なくとも1個の置換基を含む限り)により表されるものである。
【0121】
さらに好ましい実施形態は、実施形態A〜Gから選択された4つの実施形態の重複により提供される。かかる特に好ましい実施形態は、以下の実施形態の重複により提供される:A, B, C及びD; A, B, C及びE; A, B, C及びF;
A, B, C及びG; A, B, D及びE; A, B, D及びF; A, B, D及びG; A, C, D及びE; A, C, D及びF; A, C, D及びG; A, C, E及びF; A, C, E及びG; A, D, E及びF; A, D, E及びG; A, E, F及びG; B, C, D及びE; B, C, D及びF; B, C, D及びG; B, C, E及びF; B, C, E及びG; B, C, F及びG; B, D, E及びF; B, D, E及びG; B, E, F及びG; C, D, E及びF; C, D, E及びG; C, D, F及びG; D, E, F及びG。
【0122】
例えば、実施形態A, B, C及びGの重複 (上記下線部)は、少なくとも1個のピリジン環(G)と、少なくとも2個(A)の隣接(B)するヘテロ原子を含む5員環(C)を有する置換基とを含む本発明の錯体に関する。これらの配位子は、式(1)〜(5), (1-2), (2-2), (3-2), (1-3), (2-3), (3-3), (1-4), (2-4), (3-4)の化合物(これらの後者の化合物が置換基(B-l), (B-4), (B-6), (B-8), (B-13), (C-1)〜(C-8), (D-1)〜(D3), (F-1), (F-3), (F-4), (F-6), (G-1), (G-2)から選択された少なくとも1個の置換基を含む限り)により表されるものである。
【0123】
上記の実施形態及び好ましい、組み合わされた又は特定の実施形態において、実施形態Aを実施形態A’に置き換えることができ、正確に2個の環ヘテロ原子を有する環が存在する対応する重複がもたらされる。
【0124】
さらに、ヘテロ原子は上記定義の通りであるが、窒素が好ましい環ヘテロ原子であることも特に記す。一実施形態によると、正確に2個又は2個よりも多くの環ヘテロ原子が存在する場合、前記ヘテロ原子は好ましくは窒素原子である。
【0125】
一実施形態によると、本発明の錯体は、式(1), (2), (3), (1-2), (2-2), (3-2), (1-3), (2-3), (3-3), (1-4), (2-4), (3-4)のいずれかの化合物から選択され少なくとも1つの配位子
(La)を含み、前記化合物は、1個、又は、もし該当する場合には、2個又は3個の式B-8の置換基いずれかで置換されている前記該当する場合は、式B-8の2個又は3個の置換基により置換されており、その他の置換基は上述のとおり選択されるが、好ましくはH、ハロゲン、-CN、-CF
3、及びC1-C4アルキル、C2-C4アルケニル及びC2-C4アルキニルから選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル及びアルキニルにおいて、1個、数個又は全ての利用可能な水素がハロゲンに置き換えられていてもよい。
【0126】
一実施形態によれば、本発明の錯体(例えば式(I)の錯体)は、下記式(64), (65), (66)及び(67)の配位子から選択された少なくとも1個の配位子(例えばLa)を含む。
【0128】
ここで、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7は、該当する限り、及びR
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6は、該当する限り、特に、好ましい実施形態に従って本明細書の他の箇所に定義したとおりである。
【0129】
化合物(64), (65), (66)及び(67)において、好ましくは、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7は、該当する限り、及びR
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6は、該当する限り、好ましくは、H、ハロゲン、-CN、-CF
3、及びC1-C4アルキル、C2-C4アルケニル及びC2-C4アルキニルから選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル及びアルキニルにおいて、1個、数個又は全ての利用可能な水素がハロゲンに置き換えられていてもよい。一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7(該当する限り)は全てHであり、置換基R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6(該当する限り)は、本明細書の他の箇所に定義したとおりであるが、好ましくは
H、-CN及び-CF
3から選択される。
【0130】
一実施形態によると、少なくとも1個、少なくとも2個、二座配位子の場合には、3個のLaが、
図8, 9, 10, 11, 12, 13, 14及び/又は15に示した化合物から独立に選択される。従って、1個、2個又はより多くの配位子Laが配位子H-1〜H-31, J-1〜J-26, K-1〜K-33, L-1〜L-4, M-1〜M-15, N-l〜N-20, P-l〜P16, Q-l〜Q-63のいずれかから独立に選択される。
【0131】
一実施形態によると、化合物H-1〜H-31, J-1〜J-26, K-1〜K-33, L1〜L4, Q-l〜Q-26, Q-43〜Q-51において、任意の1個、1個より多く又は全ての利用可能な水素が、R
1〜R
8及び/又はR
1〜R
7並びにH以外であるR
1〜R
8及び/又はR
1〜R
6の好ましい実施形態について先に定義したとおりのH以外の置換基に独立に置き換えられていてもよい。図に示したその他の例示の配位子(M-1〜M-15, N-l〜N-20, P-l〜P-l 6, Q-27〜Q-42及びQ-52〜Q-63)において、利用可能な水素と置き換わる置換基がすでに存在する場合に、これらの後者の例示の配位子は、かかる水素置換置換基(hydrogen replacing substituents)を含む配位子の具体例をなす。
【0132】
さらに、
図8〜15に示した配位子とは別に、本明細書の別の箇所で定義したR’及びR’’に対応する窒素原子上のメチル置換基が存在する(例えばH-2, H-4, H-6, H-8など)。これらのN−メチル置換基は、一実施形態によると、本明細書の別の箇所で、特に上記記載でR’及びR’’について定義した他の置換に置き換えられていてもよい。
【0133】
一実施形態によると、化合物H-1〜H-31, J-1〜J-26, K-1〜K-33, LI〜L4, Q-l〜Q-26, Q-43〜Q-51において、任意の1個、1個より多く又は全ての利用可能な水素が、R
1〜R
8及び/又はR
1〜R
6並びにH以外であるR
1〜R
8及び/又はR
1〜R
6の好ましい実施形態について先に定義したとおりの-F, -Cl, -Br, -I, (ハロゲン), -NO
2, -CN, -OH, -CF
3、置換又は非置換のC1-C50アルキル、C2-C50アルケニル、C2-C50アルキニル及びC5〜C50アリールに置き換えられていてもよい。
【0134】
特に、任意の配位子において、Laは化合物H-1〜H-31, J-1〜J-26, K-1〜K-33, L1〜L4, Q-l〜Q-26, Q-43〜Q-51から選択され、任意の1個、1個より多く又は全ての利用可能な水素が、ハロゲン, -CN, C1-C6アルキル、C2-C6アルケニル、C2-C6アルキニル及びC6〜C10アリールに独立に置き換えられていてもよく、ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル及びアリールにおいて、1個、数個又は全ての利用可能な水素が、ハロゲン、-CN及び-CF
3に置き換えられていてもよい。
【0135】
より好ましくは、任意の配位子において、Laは化合物H-1〜H-31, J-1〜J-26, K-1〜K-33, L1〜L4, Q-l〜Q-26, Q-43〜Q-51から選択され、任意の1個、1個より多く又は全ての利用可能な水素が、ハロゲン, -CN, C1-C4アルキルに独立に置き換えられていてもよく、ここで、前記アルキルにおいて、1個、数個又は全ての利用可能な水素が、ハロゲン、-CN及び-CF
3に置き換えられていてもよい。
【0136】
以下に、さらに好ましい配位子、特に、電荷輸送層中に[B(CN)
4]
- を含む装置の錯体においてさらに好ましい配位子を述べる。
【0137】
一実施形態によると、前記配位子Laのいずれも先に示した式 (1), (2), (3), (6), (7), (10), (11), (12), (15), (16), (23), (24), (25), (26), (27), (28), (29), (30), (31), (32), (33), (34), (35), (36), (37), (39), (40), (41), (42)の化合物、及び下記式(68)
【0139】
の化合物のいずれかから独立に選択される。ここで、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8, R
1, R
2, R
3, R
4, R
5及びR
6のいずれも、存在/該当する限り、Hから、1〜30個の炭素と0 〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン,(-F, -Cl, -Br, -I), -NO
2, -NH
2, -OHから独立に選択され、ここで、R’及びR’’は、もし該当する場合、H及び置換基-CR
AR
BR
Cから独立に選択され、ここで、R
A, R
B及びR
Cは 、Hから、及び1〜30個の炭素と0〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン,(-F, -Cl, -Br, -I)から独立に選択され、ここで、もしR
B及びR
C がハロゲン、-NO
2, -NH
2又は-OHでない場合には、R
Aは -NO
2, -NH
2及び-OHから選択されてもよい。
【0140】
上記装置の一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8, R
1, R
2, R
3, R
4, R
5及びR
6のいずれも、存在/該当する限り、Hから、1〜30個の炭素と0 〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン,(-F, -Cl, -Br, -I), -NO
2, -NH
2, -OHから独立に選択され、ここで、R’及びR’’は、もし該当する場合、H及び置換基-CR
AR
BR
Cから独立に選択され、ここで、R
A, R
B及びR
Cは 、Hから、及び1〜30個の炭素と0〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン、(-F, -Cl, -Br, -I)から独立に選択され、ここで、もしR
B及びR
C がハロゲン、-NO
2, -NH
2又は-OHでない場合には、R
Aは -NO
2, -NH
2及び-OHから選択されてもよい。
【0141】
上記装置の一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8, R
1, R
2, R
3, R
4, R
5及びR
6のいずれも、存在する限り、H、ハロゲン、-NO
2, -OH, -NH
2, 1〜30個の炭素と0 〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素から、及び先に定義した式(A-3), (A-5), (A-6), (B-5), (B-6), (B-8), (B-9), (B-10), (B-11), (B-12), (B-13), (B-14
), (B-15), (B-17), (B-21), (B-22), (B-24), (B-25), (B-26), (B-27), (C-2), (C-3), (C-4), (
C-5), (C-6), (C-7), (C-8), (C-9), (C-10), (C-11), (C-13), (C-14), (C-15), (C-16), (C-12), (C-17), (C-18), (C-19), (C-20), (C-21), (C-24), (C-25), (C-26), (C-27), (D-l), (D-2), (D-3), (E-l), (E-2), (E-3), (F-l), (F-2), (F-3), (F-4), (F-5), (F-6), (F-7), (F-9), (F-10), (G-l), (G-2)の置換基(「置換基(A-3)〜(G-2)の群」)から独立に選択され、ここで、前記点線は、
上に示した式(1)〜(
68)の化合物に(A-1)〜(G-2)の置換基が連結する結合を表し、置換基R
1、R
2、R
3、R
4、R
5及びR
6は、存在する限り、H、及び1〜20個の炭素と0〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン、(-F, -Cl, -Br, -I)及び-NO
2から独立に選択される。一実施形態において、前記R
1-8及びR
1-6の少なくとも1つは、存在する限り、Hでない。
【0142】
上記装置の一実施形態によると、前記Laのいずれも、先に示した式(2), (3)の化合物、及び先に示した式(68)の化合物、並びに以下に示す化合物(64)及び(66)のいずれかから独立に選択される。
【0144】
ここで、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8, R
1, R
2, R
3, R
4, R
5及びR
6のいずれも、存在/該当する限り、Hから、及び1〜20個の炭素と0 〜15個のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン、(-F, -Cl, -Br, -I)、-NO
2, -NH
2及び-OHから独立に選択される。
【0145】
上記装置の一実施形態によると、配位子Laは、
図8-1から15-4に示した配位子H-l 〜H-31, J-l〜J-26, K-l〜K-33, L-l〜L-4, M-l〜M-15, N-l〜N-20, P-l〜P16, Q-l〜Q-63 、及びそれらの可能な置換基から独立に選択される。
【0146】
上記装置の一実施形態によると、nは3であり、bは0であり、及び/又は配位子L1, L2, L3は、本明細書の他の箇所で定義した式(2), (3)及び(64)の化合物から独立に選択される。
【0147】
上記装置の一実施形態によると、nは2であり、bは0又は1であり、及び/又は配位子L1及びL2は、式(68)及び(66)の化合物から独立に選択される。
【0148】
一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8, 並びにR
1, R
2, R
3, R
4, R
5及びR
6のいずれも、各置換基が化合物(1), (2), (3), (6), (7), (10), (11), (12), (15), (16), (23), (24), (25), (26), (27), (28), (29), (30), (31), (32), (33), (34), (35), (36), (37), (39), (40), (41), (42)及び(68)並びにそれらの置換基上に存在する限り、 H、ハロゲン、-NO
2, -OH, -NH
2及び1〜30個の炭素と0 〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素(R
1〜R
8の場合)又は1〜20個の炭素と0 〜15個のヘテロ原子を含む炭化水素(R
1〜R
6の場合)から独立に選択される。
【0149】
一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7, R
8, 並びにR
1, R
2, R
3, R
4, R
5及びR
6のいずれも、各置換基が化合物(1), (2), (3), (6), (7), (10), (11), (12), (15), (16), (23), (24), (25), (26), (27), (28), (29), (30), (31), (32), (33), (34), (35), (36), (37), (39), (40), (41), (42)並びにそれらの置換基上に存在する限り、 H、ハロゲン、-NO
2, -OH, -NH
2及び1〜20個の炭素と0〜15個のヘテロ原子を含む炭化水素から独立に選択される。ヘテロ原子は本明細書の他の箇所に定義したとおりである。
【0150】
一実施形態によると、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7及びR
8は、存在する限り、式(A-3)〜(G-2)の置換基の群、H、ハロゲン、-CN、並びにC1-C6アルキル及びアルケニルから独立に選択され、ここで、前記アルキル及びアルケニルの任意の利用可能な水素はハロゲン及び/又は-CNに置き換えられていてもよい。好ましくは、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7及びR
8は、存在する限り、H、ハロゲン、-CN、並びにC1-C4アルキルから独立に選択され、ここで、前記アルキルは必要に応じて完全に又は部分的にハロゲン化されていてもよい。好ましくは、R
1, R
2, R
3, R
4, R
5, R
6, R
7及びR
8は、存在する限り、H、ハロゲン、-CN、-CF3及びC1-C3アルキルから独立に選択される。
【0151】
本発明の錯体の他の配位子、特に、式(I)の錯体の配位子Xb(X1, …, Xm)は、例えば、H
2O, Cl
-, Br
-, I
-, CN
-, NCO
-, NCS
-, NCSe
-, NH
3, CO, PR3 (Rは、置換及び非置換C6-C18、好ましくはC6-C12アリール及び/又はアロキシル(例えばフェニル又はフェノキシル); 置換及び非置換のC1-C18、好ましくはCl-10、より好ましくはC1-C4アルキル及び/又はアルコキシル; イミダゾール、置換イミダゾール;ピリジン類、置換ピリジン類;ピラゾール類、置換ピラゾール類;トリアゾール類;ピラジンから選択できる。好ましくは、配位子Xb (X1, ・・・, Xm) はH
2O, Cl
-, Br
-, I
-, CN
-, NCO
-, NCS
-, NCSe
-, NH
3, CO, 及びPR3 (Rは上記定義のとおりであり、好ましくは、フェニル、フェノキシル、アルキル及びアルコキシルから独立に選択される)から選択される。
【0152】
好ましい一実施形態によると、Xbは独立に共配位子、例えばH
2O, Cl
-, Br
-, I
-, CN
-, NCO
-, NCS
-, NCSe
-, NH
3, NR
7R
8R
9及びPR
7R
8R
9であり、ここで、R
7, R
8及びR
9は、アルキル、アルケニル、アルキニル及びアリールから独立に選択される。一実施形態によると、前記アルキル、アルケニル及びアリールは、本明細書の他の箇所で定義した置換又は非置換のC1-C20 アルキル、C2-C20アルケニル、C2-C20アルキニル及びC4-C20アリール、並びに本明細書の他の箇所でR
1〜R
8及び/又はR
1〜R
6について定義したアルキル、アルケニル、アルキニル及びアリールの好ましい実施形態から独立に選択される。さらに、R
7, R
8及びR
9のうちの2つ又は3つ全てが、環式又は多環式配位子を提供するように互いに連結していてもよい。
【0153】
配位子Xbは存在しなくてもよい。好ましくは、配位子Xbは、存在する限り、共配位子及び/又はスペクテーター配位子である。好ましくは、配位子Xbのいずれも、単座配位子から独立に選択される。好ましくは、すべての配位子Xbは、存在する限り、単座配位子である。
【0154】
本発明は、本発明の錯体を含む電気化学又は光電子装置にも関する。一般的に、電気化学装置は、酸化還元プロセスが起こる少なくとも1つの電極を含む装置である。一般的に、電気化学装置は、外部電圧により化学反応が起こる、又は化学反応により電圧が生じる装置である。
【0155】
本発明の錯体は、好ましくは、酸化還元対として使用され、錯体の酸化された及び還元された対は酸化還元対を形成する。酸化還元対は、好ましくは、錯体中の金属原子の2つの酸化状態により形成される。一実施形態によれば、酸化還元対は、好ましくは、単電子酸化還元プロセスに好適である。例えば、Mがコバルトである場合に+I/+IIもしくは+II/+III又は+III/+IVであり、Mが銅である場合に+ I/+IIであり、これらはたんに非限定的な可能性を述べたものにすぎない。
【0156】
本発明の装置は、光電気化学装置、光電子装置、電気化学電池、例えばリチウムイオン電池、二重層キャパシタ、発光装置、エレクトロクロミック又はフォトエレクトロクロミック装置、電気化学センサー、バイオセンサー、電気化学ディスプレイ及び電気化学キャパシタ、例えばスーパーキャパシタであることができる。好ましい実施形態によれば、電気化学装置は、光電子変換装置、特に太陽電池である。
【0157】
本発明の装置は、好ましくは、光起電力装置である。
【0158】
一実施形態によれば、本発明の装置は、光電変換装置、好ましくは色素増感太陽電池(DSSC)又は光電池である。一実施形態によれば、当該装置は、再生型色素増感太陽電池である。
【0159】
本発明の電気化学装置は、好ましくは、再生型装置である。
【0160】
一実施形態によると、本発明の電気化学及び/又は光電子装置は、第1及び第2の電極と、前記第1及び第2の電極の間にある電荷輸送層及び/又は中間層を含む。前記電荷輸送及び/又は中間層は、好ましくは本発明の錯体を含む。
【0161】
一実施形態によると、中間及び/又は電荷輸送層は、有機溶媒を含み、及び/又は1種以上のイオン性液体を含む。
【0162】
一実施形態によると、前記電荷輸送及び/又は中間層は、有機溶媒、1種以上のイオン性液体、導電性の正孔又は電子輸送材料、及びそれらの組み合わせから選択された1又は2つ以上を含む。好ましい一実施形態によると、電荷輸送層は溶媒系電解質である。
【0163】
一実施形態によれば、前記電解質又は前記中間層は、本発明の金属錯体を含む。
【0164】
なお、本発明者らの認識によると、ヘキサフルオロホスフェートアニオンと比べて安定なテトラシアノボレートを対イオンとして使用した。また、加えたテトラシアノボレートアニオンは、例えば、ヨウ化物、三ヨウ化物酸化還元対を使用した色素増感太陽電池が開示されている国際公開第2007/093961 A1号に報告されているように、電気化学装置へのイオン性液体電解質の一部と同じアニオンを含むイオン性液体と混和性である。溶媒を含む装置においてテトラシアノボレートと共に金属系酸化還元対を含む塩の使用は、驚くべきことに、テトラシアノボレートを、イオン性液体中のみだけでなく、これまでこの化合物が使用されてこなかった溶媒系装置でも好都合に且つ有効に使用することを可能にする。
【0165】
一実施形態によると、第1の電極は、光電極、任意のアノード及びカソードの群から選択された少なくとも1つを含む(例えば、特定のフォトエレクトロクロミック装置において)。第2の電極は、好ましくは、対電極である。前記第1の(光など)電極と前記つい電極の間には、好ましくは、前記中間及び/又は電荷輸送層が存在する。前記中間/電荷輸送層は、好ましくは、本発明の錯体を含む。前記第1の電極、中間層、及び第2の電極は、好ましくは、直列に接続される。
【0166】
一実施形態によると、前記第1の電極は、装置の電荷輸送層と対向する表面を含む半導体電極であり、ここで、前記表面上に、前記表面上に層を形成するように吸着された色素が存在しており、前記色素は、前記表面に吸着された場合に電荷を帯びていない色素又は正電荷を帯びた色素から好ましくは選択される。これは、例えば米国特許第6426827号及び米国特許第6067184号に開示されているような色素増感太陽電池及びエレクトロクロミック又はフォトエレクトロクロミック装置の場合に当てはまる。
【0167】
本発明の装置は、さらに、1又は2つ以上の基材層、例えば電極、好ましくは光電極を支持するものを含んでもよい。基材層は、プラスチック又はガラスから製造されたものであることができる。フレキシブルな装置では、基材は、好ましくはプラスチックから製造される。
本発明の電気化学/光電子装置は、一般的に、2つの伝導層を有し、ここで、第1の伝導層は、当該装置から、一般的には第1の電極から発生した電子を移動させるために必要とされ、新たな電子を供給するため、換言すれば正孔を移動させるための第2の伝導層は一般的に第2の電極にある。第2の伝導層は、一般的に、対電極の一部であり、例えば透明ITO(インジウム酸化錫)がプラスチック又はガラスにコートされプラスチック又はガラスを電気伝導性にしたITO被覆プラスチック又はガラスの場合のように、すでに基材層の一部であってもよい。
【0168】
本発明の装置は、一般的に、対電極(第2の電極)を含み、当該対電極は、装置の内側に向かって中間又は電解質層と対向し、基材が存在する場合には、電池の外側に基材が存在する。対電極は、一般的に、装置の内側に向かって電子を供給する及び/又は正孔を埋めるのに好適な触媒的に活性な材料を含む。そのため、対電極は、例えば、Pt, Au, Ni, Cu, Ag, In, Ru, Pd, Rh, Ir, Os, C, 導電性ポリマー、及び上記のものの2種以上の組み合わせから選択された材料を含むことができる。導電性ポリマーは、例えばポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリベンゼン及びアセチレンを含むポリマーから選択できる。
【0169】
色素増感太陽電池において、光電極の少なくとも一部は電池/装置の内側の方に増感材層を含み、それにより光吸収層を形成しているため、光電極は、少なくとも2つの別個の層、すなわち多孔質半導体層とその上に吸着された増感色素の層を含む。多孔質半導体層は、先行技術(B. O'Reagan and M. Gratzel, Nature, 1991, 353, 373)に記載されている方法によって、半導体ナノ粒子、特にナノ結晶粒子から製造することができる。かかる粒子は、一般的に、約0〜50nm、例えば5〜50nmの平均直径を有する。かかるナノ粒子は、例えば、Si, TiO
2, SnO
2, ZnO, WO
3, Nb
2O
5及びTiSrO
3の群から選択された材料から製造することができる。
【0170】
色素層は、任意の共吸着された化合物、例えば国際公開第2004/097871 A1号に開示されているものに加えて、少なくとも1種の色素又は増感剤、又は2種以上の異なる増感剤の組み合わせを含む。例えば、色素は、有機金属化合物であることができる。有機金属化合物の例には、ルテニウム色素はかかる装置において現在使用されているため、ルテニウム色素が含まれる。好適なルテニウム色素は、例えば国際公開第2006/010290号に開示されている。
【0171】
色素層は、有機増感剤を含んでもよい。例えば、装置は、ルテニウム又は他の貴金属を使用した増感剤を含んでいなくてもよい。
【0172】
一実施形態によると、前記色素は、半導体電極の表面に吸着された場合に、負電荷を帯びた遊離基を欠く。例えば、色素は、固定されていない負電荷を帯びたアンカーリング基を欠く。アンカーリング基は、例えば、ほんの幾つかの挙げると、-COO
-, -PO
3H
-, -PO
4H
-, -SO
3H
-, SO
4H-, -CONHOH
-から選択できる。かかる負電荷を帯びたアンカーリング基は、一般的に、半導体電極に色素を固定するために、色素上に用意される。しばしば、色素は2個又はより多くのアンカーリング基を含み、それにより半導体電極への色素の強固な結合が確保される。
【0173】
理論に束縛されるわけではないが、本発明は、多くの状況において、半導体電極に固定された増感剤上に存在する基があってもよいことを想定している。そのため、基は、固定された色素に負電荷を与えることがある。これは、ひいては、正電荷を帯びた酸化還元種と色素基の間の引力をもたらすことがある。理論に束縛されるわけではないが、本発明者は、これが、国際公開第03/038508号に開示された色素増感太陽電池が不十分な性能を有していたことの理由であると考える。
【0174】
従って、一実施形態によると、色素は、好ましくは、色素一分子当り負電荷を帯びた基を含まない。一実施形態によると、これは、例えば欧州特許第0613466号、欧州特許第0758337号、欧州特許第0983283号、欧州特許第1622178号、国際公開第2006/038823号などに開示されている有機金属化合物、ルテニウム色素などに当てはまる。従って、色素を、アンカーリング基を有するように合成することができるが、最初から増感剤上に負電荷はない。さらなる可能性は、色素が2個以上の負電荷を帯びたアンカーリング基を有する場合に、全て又は重要な大半のアンカーリング基が半導体表面に確実に結合されることである。用語「負電荷を帯びたアンカーリング基」は、好ましくは、しかし、必ずしもではないが、脱プロトン化により陰性になりうるアンカーリング基を包含する。アンカーリング基は、結合しておらず、同時に、脱プロトン化形態で存在する場合に、負電荷を帯びている。
【0175】
本発明の方法は、好ましくは、前記電荷輸送層にテトラシアノボレート([B(CN)
4]
-)と式Iの陽イオン性金属錯体を含む塩を加える工程を含む。特に、テトラシアノボレートは、好都合なことに、酸化還元対として機能する上記錯体との塩として電気化学装置に有利に加えられる。この方法では、機能を持たず及び/又は装置の性能又は安定性に悪影響を及ぼすおそれさえもある(他の)アニオンが避けられるだけでなく、対照的に、化合物の添加は経済的、実際的及び効率的な方法で達成されることに加えて、当該化合物は、かかる装置、例えばテトラシアノボレートが使用されなかった及び/又はさらなる工程なしでは添加できなかった装置などの安定性を向上させる。
【0176】
本発明の装置の中間及び/又は電荷輸送層は、好ましくは、電子の再生成を媒介するという一般的な目的を有する。例えば、DSSCの色素では、電子は、輻射線のために離れ、再生成しなければならない。電子は、一般的に、対電極により与えられ、中間層は対電極から色素への電子の輸送、又は色素から対電極への正孔の輸送を媒介する。電子及び/又は正孔の輸送は、電気伝導性材料自体により及び/又は適切な酸化還元電位を有する電荷を帯びた分子の拡散により媒介することができる。従って、中間層は、例えば、電解質層及び/又は電気伝導性電荷輸送層であることができる。
【0177】
本発明の好ましい一実施形態によると、中間及び/又は電荷輸送層は、溶媒を含んでいてもよく、あるいは、溶媒を実質的に含んでいなくてもよい。これも、本発明の電解質に当てはまる。一般的に、もし溶媒が、この層の質量の0.5%以上、1%以上、5%以上、より好ましくは10%以上、最も好ましくは20%以上となる場合には、溶媒が存在する。
【0178】
好ましくは、中間層又は電解質層は本発明の錯体を含む。錯体は、例えば、塩の形態で加えることができ、あるいは、もし錯体が中性である場合には、例えば任意の単離された又は純粋な形態で加えることができる。
【0179】
一実施形態において、中間層は1又は2種以上のイオン性液体を含む電解質である。
【0180】
主成分としてイオン性液体を含む電解質(イオン性液体系電解質)が、例えば国際公開第2007/093961号に開示されている。共融溶融物から製造された金属溶媒フリーの電解質が国際公開第2009/083901号に開示されており、これらも本発明に包含される。
【0181】
中間層又は電解質は、電子及び/又は正孔が、電荷を帯びた分子の拡散ではなく電子の移動により移動する電気伝導性電荷輸送層であることもできる。かかる電気伝導性層は、例えば、ポリマーなどの有機化合物に基づくものであることができる。そのため、この層は、電子及び/又は正孔伝導材料であることができる。U. Bach et al. "Solid-state dye-sensitized mesoporous Ti0
2 solar cells with high photon-to-electron conversion efficiencies", Nature, Vol. 395, October 8, 1998, 583-585には、色素増感太陽電池におけるアモルファス有機正孔輸送材料2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニル-アミン)9,9'-スピロフルオレン(OMeTAD)が開示されている。国際公開第2007/107961号には、室温で液体である電荷輸送材料及び色素増感太陽電池におけるそれらの利用が開示されている。例えば、本発明の目的のために、これら及び他の材料を使用できる。
【0182】
前記電解質又は電荷輸送層の両方が、装置の性能を向上させるために添加剤、例えば、電荷輸送体の場合にドーパントなどを含んでもよい。
【0183】
一実施形態によると、本発明の錯体は、本発明の電気化学及び/又は光電子装置において、電荷輸送材料、好ましくは有機電気伝導性電荷輸送材料中のドーパントとして使用できる。
【0184】
別の実施形態によると、電解質及び/又は中間層は溶媒系電解質である。
【0185】
溶媒は、もし存在する場合、好ましくは有機溶媒である。有機溶媒の例としては、
、アルコール系溶媒、例えばメタノール、エタノール、t-ブタノール及びベンジルアルコールなど;ニトリル系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル及び3-メトキシプロピオニトリルなど;ニトロメタン;ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム及びクロロベンゼンなど;エーテル系溶媒、例えばジエチルエーテル及びテトラヒドロフランなど;ジメチルスルホキシド;アミド系溶媒、例えばN,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアミド、ホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロピオンアミドなど;N-メチルピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、3-メチルオキサゾリジノン、エステル系溶媒、例えば酢酸エチル及び酢酸ブチルなど;カーボネート系溶媒、例えばジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど;ケトン系溶媒、例えばアセトン、2-ブタノン及びシクロヘキサノンなど;炭化水素系溶剤、例えばヘキサン、石油エーテル、ベンゼン及びトルエンなど;スルホラン;N,N,N',N'-テトラメチルウレア;などが挙げられる。これらの溶媒のうち、ニトリル系溶媒及びアミド系溶媒が好ましい。C1-C5アルキル又はC1-C5アルコキシニトリル溶媒が特に好ましい(実施例参照)。溶媒は単独で又は組み合わせて使用できる。
【0186】
中間層及び/又は電解質は、好ましくは、装置の安定性及び/又は性能特性を改善するように設計された添加剤、例えばN-アルキル-ベンゾイミダゾール(ここで、アルキル基はハロゲン化されていてもよいC1-C10アルキルである)、例えばグアニジニウムチオシアネート、置換ピリジン、及び3〜6のpKaを有する塩基などを含む。
【0187】
本発明の方法は、好ましくは、前記電荷輸送層にテトラシアノボレート([B(CN)
4]
-)と式(I)の陽イオン性金属錯体を含む塩を加える工程を含む。特に、テトラシアノボレートは、好都合なことに、酸化還元対として機能する上記錯体との塩として電気化学装置に有利に加えられる。この方法では、機能を持たず及び/又は装置の性能又は安定性に悪影響を及ぼすおそれさえもある(他の)アニオンが避けられるだけでなく、対照的に、化合物の添加は経済的、実際的及び効率的な方法で達成されることに加えて、当該化合物は、かかる装置、例えばテトラシアノボレートが使用されなかった及び/又はさらなる工程なしでは添加できなかった装置などの安定性を向上させる。
【0188】
本発明を実施例により説明する。これらの実施例は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0189】
実施例1:ビピリジン−ピラゾール配位子の合成
DMSO(80mL)中のピラゾール(1g)の懸濁液にtBuOK(2g)を加え、透明溶液が形成されるまで撹拌した。6-クロロ-2,2'-ビピリジン(1g、HetCat製)を少しずつゆっくり加え、混合物を140℃で14時間加熱した。室温まで冷却した後、水を加え、沈殿物を濾過し、水で洗浄した。この化合物を、溶離液として酢酸エチル/ジエチルエーテルを使用してシリカゲルクロマトグラフィーカラムによりさらに精製すると、オフホワイトの結晶性固形物(450mg、収率39%)がもたらされた。分光分析は、文献(Inorg. Chem. 1991, 30, 3733)に報告されているとおりである。
【0190】
実施例2:CoII錯体[Co(II)(bpy-pz)2](PF6)2の合成
91mg(0.382mmol、過剰)のCoCl
2・6H
2Oを水25mlに溶解させ、一方、別のフラスコで、93mg(0.418mmol)の実施例1のピリジン−ピリジン−ピラゾール配位子を25mLのアセトンに溶解させた。これらの溶液を組み合わせ、55℃に2時間加熱した。次に、 100mLの水に溶解した400mgのNH
4PF
6を混合物に加えた。混合物を、析出のために3℃で一晩保存した。次に、生成物を焼結ガラスフリット上に集め、真空下で乾燥させた。純粋な生成物がオレンジ色固形物として得られ、以下に示す化合物(70)を含んでいた。収量:95mg(0.12mmol、57%)。
1H NMR (400 MHz, アセトン-D6): δ 112.95 (s, 2H, ArH), 91.83 (s, 2H, ArH), 89.23 (s, 2H, ArH), 75.68 (s, 2H, ArH), 69.31 (s, 2H, ArH), 66.22 (s, 2H, ArH), 43.00 (s, 2H, ArH), 40.74 (s, 2H, ArH), 19.01 (s, 2H, ArH), 13.61 (s, 2H, ArH) ppm.
【0191】
実施例3:CoIII錯体[Co(III)(bpy-pz)2](PF6)3の合成
91mg(0.382mmol、過剰)のCoCl
2・6H
2Oを水25mlに溶解させ、一方、別のフラスコで、93mg(0.418mmol)の実施例1のピリジン−ピリジン−ピラゾール配位子を25mLのメタノールに溶解させた。これらの溶液を組み合わせ、55℃に2時間加熱した。混合物を室温に放冷し、次に、コバルトを酸化させるために、H
20
2(1mL, 30%)とHCl(1mL, 25%)を加えた。混合物を1時間撹拌し、次に、100mLの水に溶解した400mgのNH
4PF
6を混合物に加えた。混合物を、析出のために3℃で一晩保存した。次に、生成物を焼結ガラスフリット上に集め、真空下で乾燥させた。生成物がオレンジ色固形物として得られ、65%の所望のCo(III)錯体(化合物(71))及び35%の対応するCo(II)錯体を含んでいた。収量:97mg (0.10mmol, 49%)。
1H NMR (400 MHz, アセトン-D6): δ 9.41-9.26 (m, 3H, ArH), 9.00 (t,
3J
HH = 9.3 Hz, 2H, ArH), 8.47 (t,
3J
HH = 7.6 Hz, 1H, ArH), 7.92 (d
3J
HH = 5.8 Hz, 1H, ArH), 7.84 (s, 1H, ArH), 7.62 (t,
3J
HH = 6.7 Hz, 1H, ArH), 6.86 (s, 1H, ArH) ppm.
【0192】
【化16】
【0193】
実施例4:二座配位子を有するCoII錯体[Co(II)(py-pz)3](PF62)の合成
ピリジン−ピラゾールを、Chemishe Berichte, 1996, 129, 589に開示されているように得た。
225mg(1.55mmol, 3.1当量)のピリジン−ピラゾール配位子を20mLのMeOHに溶解させ、次に、119mg(0.5mmol, 1当量)のCoCl
2・6H
2Oを固形物として加えた。混合物を加熱して2時間還流した、室温に冷却後、MeOHに溶解した過剰のKPF
6 を混合物に加えた。混合物を、析出のために3℃で保存した。3時間後、生成物を焼結ガラスフリット上に集め、真空下で乾燥させた。純粋な生成物がオレンジ色結晶として得られ、化合物(72)を含んでいた。収量:246mg(0.33mmol, 66%)。
【0194】
実施例5:二座配位子を有するCoIII錯体[Co(III)(py-pz)3](PF63)の合成
218mg(1.5mmol, 3.0当量)のピリジン−ピラゾール配位子を10mLの水に溶解させ、完全な溶液が生じるまで75℃に加熱した。次に、無色溶液に119mg(0.5mmol, 1当量)のCoCl
2・6H
2O を加えた。ピンク色の溶液にH
2O
2(1mL, 30%)及びHCl(1mL, 25%)を加えてコバルトを酸化させた。10分後、10mLの温水中に溶解した460mg(2.5mmol, 5当量)のKPF
6を混合物に滴下添加した。析出が起こり、混合物を室温に放冷した。生成物を焼結ガラスフリット上に集め、真空下で乾燥させた。純粋な生成物がオレンジ色固形物として得られ、化合物(73)を含んでいた。収量:259mg(0.28mmo1, 56%).
1H NMR (400 MHz, アセトン-D6): δ 9.56-9.53 (m, 3H, ArH), 8.73-8.64 (m, 6H, ArH), 8.01-7.81 (m, 9H, ArH), 7.27-7.23 (m, 3H, ArH) ppm.
【0195】
【化17】
【0196】
実施例6:有機色素(Y123)の合成
図16に示したスキームに従って、有機色素(3-{6-{4-[ビス(2',4'-ジヘキシルオキシビフェニル-4-イル)アミノ-]フェニル}-4,4-ジヘキシル-シクロ-ペンタ-[2,l-b:3,4-b']ジチフェン-2-イル}-2-シアノアクリル酸)を調製した。
【0197】
実施例7:錯体系酸化還元対を使用した色素増感太陽電池の作製
文献(Yum, J. H.; Jang, S. R.; Humphry-Baker, R.; Gratzel, M.; Cid, J. J.; Torres, T.; Nazeeruddin, M. K. Langmuir 2008, 24, 5636)に従って、2.5〜3μmの透明層
(直径20nmのアナターゼ粒子)であるTi0
2電極を作製した。TiO
2電極を、tert-ブタノール/アセトニトリル混合物(1:1v/v)中の実施例6で得られた有機色素(
図16)の0.1mM溶液に浸漬し、室温で15時間維持した。
【0198】
用いた電解質は、アセトニトリル中の0.17〜0.2Mの[Co(II)(bpy-pz)
2](PF6)
2, 0.04〜0.05Mの[Co(III)(bpy-pz)
2](PF6)
3、0.1MのLiClO
4、及び0.25Mのtert-ブチルピリジン
からなる。
【0199】
色素吸着TiO
2電極と熱的に白金めっきされた対電極を、ホットメルトアイオノマーフィルムSurlyn(25μm, Du-Pont)のギャップを有する密封サンドイッチ型の電池に組み立てた。着色TiO
2層のガラス電極の端部からの散乱光を減らすために、遮光マスクをDSC上に使用したため、DSCの活性領域は0.2cm
2に固定された。DSCの光起電力測定のために、照射源は、フィルタ(Schott 113)を備えた450Wキセノン光源(Osram XBO 450、ドイツ)であった。この光源の出力は、シミュレート光とAM 1.5Gとの間で350から750nmの領域におけるミスマッチを4%未満に減らすために、カラーマッチングされたフィルター(KG-3, Schott)を備えた参照Si光ダイオードを使用してAM 1.5G太陽光標準に調節した。Gemini-180ダブルモノクロメーター(Jobin Yvon Ltd.)により集光された300Wキセノンランプ(ILC Technology, 米国)からの入射光を使用することによって、入射光子電流変換効率(IPCE)の測定値を励起波長の関数としてプロットした。
結果を下記表1にまとめた。
【0200】
【表1】
【0201】
表1中の結果から、Co
2+/Co
3+の開放電圧(Voc)は全て、10%の光強度の下で900 mVを超え、それらは全太陽光条件下で1000mV超に増加したことが判る。特に、Co
2+/Co
3+の三座系(
図2)は、電力変換効率の点で有望な結果を示した。二座系で得られた電流 −電圧結果を
図1に示す。2.7μmのTiO
2をにより支持された色素増感太陽電池は、10.4mA/cm
2の短絡電流(Jsc)、1020mVのVoc、0.70のフィルファクター(ff)及び7.42%の対応する電力変換効率(PCE)をもたらした。1060mVのVocが、酸化還元濃度を調整することにより実現可能であることは注目すべきである(表1を参照のこと)。
【0202】
別の例において、5.5μmの透明ナノ結晶TiO
2層と4μmの散乱層(400nmのサイズの粒子)からなるTiO
2層二重層をフォトアノードに使用した。表1の結果(最後の3行)と
図3から、高いVoc(1010mV)を維持しつつJscの13.5mA/cm
2まで増加したことが判る。全体では、PCEは、全太陽光下では9.52%に向上し、51%太陽光下では10%を超えた。AM-1.5太陽光放射での入射光子電流変換効率(IPCE)(
図4に示す)の積算は、13.4mA/cm
2のJsc値を与え、I-V測定値とよく一致した。約550nmの最大値付近で85%を超える高いIPCEに達した。
【0203】
比較のため、トリスビピリジンのCoII錯体[Co(II)(bpy)
3](PF6)
2 (Feldt, S. et al., J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 16714-16724)は、920mVをもたらした。これは、新規の電解質よりも140mV低い。
【0204】
これらの結果から、本発明の酸化還元対は、酸化還元メディエーターの酸化電位を調整すること、特に、増加させ、それにより太陽電池の開放電圧を増加させることに好適であり、それによって太陽電池の開放電圧を増加させることが判る。これは、ヨウ化物/三ヨウ化物系酸化還元対についての重要な利点であり、その酸化電位は実質的に変化しえない。I
-/I
3-酸化還元対に基づいて得られたかかる高い(Voc)はこれまでなかった。試験した系のさらなる最適化なしに10%を超える優れた変換効率(PCE)が得られたことは特に驚くべきことである。
【0205】
実施例8:Co(bpy)3[B(CN)4]2, Co(bpy)3[B(CN)4]3コバルト錯体の合成
CoCl
2・6H
2O(0.25g)を5mlの水に溶解させ、これに2,2'-ビピリジン(0.55g)のメタノール溶液を攪拌しながら滴下添加した。5分間の撹拌後、水中のカリウムシアノボレート(1.2g)を加えた。析出した錯体を濾過し、水で洗浄し、真空下で乾燥させて、Co(bpy)
3[B(CN)
4]
2を単離した。CoCl
2・6H
2O(0.25g)を5mlの水に溶解させ、これに、2,2'-ビピリジン(0.55g)のメタノール溶液を滴下添加した。5分間の撹拌後、メタノール中の1モル当量の臭素溶液を撹拌しながら加えた。さらに5分間撹拌した後、溶液を濾過して析出物を除去した。次に、ロタベーパー(rotavapor)を使用して真空下で溶媒を蒸発させ、メタノール溶液(15ml)に再溶解させ、濾過した。濾液に、水中のカリウムテトラシアノボレート(1.2g)を加えた。析出した錯体を濾過し、水で洗浄し、真空下で乾燥させて、Co(bpy)
3[B(CN)
4]
3を単離した。
【0206】
実施例9:電解質の調製と吸収スペクトル
バレロニトリル/アセトニトリル(15:85 v/v)の混合物中の実施例8の0.22MのCo(II)及び0.05MのCo(III)を使用してコバルト系電解質を調製した。添加剤は、0.1MのLiClO
4及び0.2Mのtert-ブチルピリジンである。
【0207】
比較のために、Z960のコードが付いた高性能のヨウ化物系電解質を調製した。この電解質は、1.0Mの1,3-ジメチルイミダゾリウムヨージド(DMII)、0.03Mのヨウ素、0.1Mのグアニジニウムチオシアネート、0.5Mのtert-ブチルピリジン及び0.05MのLiIを、バレロニトリル/アセトニトリル(15:85 v/v)の混合物中に含んでいた。N1電解質はZ960のとおりであったが、本発明のCo
2+/Co
3+含有配合物と同じ濃度のtert-ブチルピリジン及びLi
+を含んでいた。
【0208】
図5は、本発明の錯体系電解質の吸収スペクトルと、実施例6に記載したように有機色素を用いたヨウ化物系電解質とを比較し(測定は、アセトニトリル中に200倍に希釈した電解質を使用して実施した)、350〜480nmの波長範囲で本発明の電解質の吸収が少ないことを示している。
【0209】
実施例10 :さらなる太陽電池の作製
フォトアノードは、400nmのサイズのTiO
2(アナターゼ)粒子から成る5μmの厚い光散乱層により覆われた2μmの薄い透明ナノポーラスTiO
2(アナターゼ)フィルムからなっていた。Yum, J. H.; Jang, S. Pv.; Humphry-Baker, R.; Gratzel, M.; Cid, J. J.; Torres, T.; Nazeeruddin, M. K. Langmuir 2008, 24, 5636)に開示されているように、白金めっきFTOガラスを対電極として使用した。
【0210】
TiO
2フィルムをtert-ブタノール/アセトニトリル混合物(1:1 v/v)中のO.lmM色素溶液に7時間浸漬することにより、TiO
2フィルムを有機色素(実施例6)により着色した。
【0211】
DSCの光起電力測定のため、照射源は、フィルタ(Schott 113)を備えた450Wキセノン光源(Osram XBO 450、独国)であった。この光源の出力は、シミュレート光とAM 1.5Gとの間で350〜750nmの領域におけるミスマッチを4%未満に減らすために、カラーマッチングされたフィルター(KG-3, Schott)を備えた参照Si光ダイオードを使用してAM 1.5G太陽光標準に調節した。Gemini-180ダブルモノクロメーター(Jobin Yvon Ltd.)により集光された300Wキセノンランプ(ILC Technology, 米国)からの入射光を使用することによって、入射光子電流変換効率(IPCE)の測定値を励起波長の関数としてプロットした。
【0212】
表2と
図6に示した結果から、Co
2+/Co
3+の性能は、I
-/I
3-系酸化還元電解質の性能よりも優れており、Voc値及びJsc値はそれぞれ100mV及び1mA/cm
2増加した一方、フィルファクター(ff)はほとんど影響を受けなかった。ヨウ素からコバルト系酸化還元系に変えることによって、効率は7.2%から8.8%まで向上した。この検討ではかかる薄いTiO
2フィルムを使用したのに、全体的には、効率は、DSSCとしては著しく高い。コバルト系電解質を有する我々の最も優れたDSSCは、1太陽光強度の下で効率が9.6%にも達し、これは、装置の性能が良好であることを示している。
【0213】
【表2】
【0214】
図7は、本発明の一実施形態による装置のIPCEスペクトルを、I
-/I
3-系電解質(Z960)を使用した装置と比較したものである。
図7から、Co
2+/Co
3+酸化還元メディエーターの場合に、IPCEスペクトルは、I
-/I
3-系電解質の場合に観察されたものに関し、青及び赤領域で著しく強まることが判る。400〜450nmの間の光電流の増加した青応答は、
図5中の吸収スペクトルにより示されるように、この波長ドメインで、I
-/I
3-系電解質と比べてCo
2+/Co
3+酸化還元メディエーターの光吸収がより少ないことに起因する。しかし、Jsc(表2)の増加に対する主な寄与は、約600nmで始まるIPCEスペクトルのレッドシフトに起因する。この興味深く有益な効果の原因は驚くべきことであり、本発明者はこれらの結果についての端的な説明は持っていない。
【0215】
実施例11:CoII錯体及びCoIII錯体Co(bpy-pz)2[B(CN)4]2及びCo(bpy-pz)3[B(CN)4]3の合成
91mg(0.382mmol、過剰)のCoCl
2・6H
2Oを水25mlに溶解させ、一方、別のフラスコで、93mg(0.418mmol)の実施例1のピリジン−ピリジン−ピラゾール配位子を25mLのアセトンに溶解させた。これらの溶液を組み合わせ、55℃に2時間加熱した。5分間の撹拌後、水中のカリウムテトラシアノボレート(1.2g)を加えた。混合物を、析出のために3℃で一晩保存した。析出した錯体を濾過し、水で洗浄し、真空下で乾燥させて、Co(bpy-pz)
2[B(CN)
4]
2を単離した。
【0216】
91mg(0.382mmol、過剰)のCoCl
2・6H
2Oを水25mlに溶解させ、一方、別のフラスコで、93mg(0.418mmol)の実施例1のピリジン−ピリジン−ピラゾール配位子を25mLのアセトンに溶解させた。これらの溶液を組み合わせ、55℃に2時間加熱した。5分間の撹拌後、メタノール中の1モル当量の臭素溶液を撹拌しながら加えた。さらに5分間撹拌した後、溶液を濾過して析出物を除去した。次に、ロタベーパー(rotavapor)を使用して真空下で溶媒を蒸発させ、メタノール溶液(15ml)に溶解させ、濾過した。濾液に、水中のカリウムテトラシアノボレート(1.2g)を加えた。析出した錯体を濾過し、水で洗浄し、真空下で乾燥させて、Co(bpy-pz)
2[B(CN)
4]
3を単離した。
【0217】
実施例12:実施例11の錯体系酸化還元対を使用した色素増感太陽電池の作製
実施例10に記載したように太陽電池を作製した。
本発明に関連する発明の実施態様の一部を以下に示す。
[態様1]
下記式(I):
M(La)n(Xb)m (I)
(式中、Mは第1列遷移金属、例えばコバルトであり;
nは、1〜6の整数であり、aは、n個の配位子L1,・・・, Lnが存在するように1〜nの整数(1, ・・・, n)からなる第1の組の連続する数であり;
mは0又は1〜5の整数であり、bは、0と、m>0である場合にm個の配位子X1, ・・・, Xmが存在するように、1〜mの整数(0, ・・・, m)からなる第2の組の連続する数であり;
ここで、n及びmは金属M上に存在する配位子の適切な数に等しく;
いずれのLa(L1, ・・・, Ln)も、単座、二座又は三座配位子から独立に選択され、ただし、La(L1, ・・・, Ln)のうちの少なくとも1つは、少なくとも2個のヘテロ原子を含み、そのうちの少なくとも1個が窒素原子である5員N含有複素環及び/又は6員環を含む置換又は非置換の環又は環系を含み、前記5又は6員複素環は、それぞれ、少なくとも1つの二重結合を含む;
Xbは、独立に、単座の共配位子である)
の錯体。
[態様2]
前記n個の配位子La(L1, ・・・, Ln)のうちの少なくとも1つは、ピリジン環、あるいは、少なくとも2個のヘテロ原子を含む前記5員複素環及び/又は前記6員環に共有結合により連結された又は縮合したピリジン環を含む環系を含み、ここで、前記ピリジン環又はピリジン環を含む環系はさらに置換されていてもいなくてもよい、上記態様1に記載の錯体。
[態様3]
前記n個の配位子La(L1, ・・・, Ln)のいずれも、下記式(1)〜(63)の化合物から独立に選択される、上記態様1又は2に記載の錯体:
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
ここで、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8のいずれも、もし該当するならば、H、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、-NO2、-NH2、-OHから、及び1〜50個の炭素と0〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素から独立に選択することができ;
R’及びR’’は、置換基-CH2R1、-CHR1R2及び-CR1R2R3から独立に選択され;
ただし、もし前記化合物が上記式(1)〜(5)のいずれかに従う化合物である場合には、前記置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8のうちの少なくとも1つは、もし該当する場合には、下記式(A-1)〜(G-2)の置換基から独立に選択される:
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
ここで、前記点線は、式(1)〜(63)の化合物に(A-1)〜(G-2)の置換基が連結する結合を表し、置換基R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、存在する限り、H、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、-NO2、-NH2、-OHから、及び1〜50個の炭素と0〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素から独立に選択される。
[態様4]
前記配位子La (L1, ・・・, Ln)のうちの少なくとも1つが下記式(1-2)〜(3-2)の化合物から独立に選択される、上記態様1〜3のいずれか一つに記載の錯体:
【化10】
ここで、前記配位子は、上記態様3において定義した置換基(A-l)〜(G-2)から選択された少なくとも1つの置換基R1, R3, R5, R6, R8を含む。
[態様5]
前記配位子La (L1, ・・・, Ln)のうちの少なくとも1つが下記式(1-3)〜(3-3)の化合物から独立に選択される、上記態様1〜4のいずれか一つに記載の錯体:
【化11】
ここで、前記配位子は、該当する場合は、上記態様3において定義した置換基(A-l)〜(G-2)から選択された少なくとも1個の置換基R1, R5, R8を含む。
[態様6]
R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8, R1, R2, R3, R4, R5, R6, R’及びR’’のいずれも、もし該当する場合には、Hから、及びC1-C10アルキル、C2-C10アルケニル、C2-C10アルキニル、及びC5-C12アリール(好ましくはC6-C12アリール)から独立に選択され、ここで、前記アルキル、アルケニル、アルキニル及びアリールにおいて、1個、数個又は全ての利用可能な水素がハロゲン及び/又は-CNに置き換わっていてもよく、ここで、前記R1〜R8及びR1〜R6のいずれも、さらに、ハロゲンから及び-C≡N (-CN)から選択できる、上記態様2〜5のいずれか一つに記載の錯体。
[態様7]
nが2(M L1 L2)又は3(M L1, L2, L3)であり、mが0である、上記態様1〜6のいずれか一つに記載の錯体。
[態様8]
少なくとも2個又は少なくとも3個の同一構造を有する配位子La(それぞれL1=L2又はL1=L2=L3)を含む、上記態様1〜7のいずれか一つに記載の錯体。
[態様9]
全体的に中性であるか、あるいは全体として正又は負の電荷を有する、上記態様1〜8のいずれか一つに記載の錯体。
[態様10]
少なくとも1個の配位子Laが、下記式(1-5)〜(3-5)の化合物から選択される、上記態様1〜9のいずれか一つに記載の錯体:
【化12】
ここで、R1は、上記態様3において規定した置換基(A-1)〜(G-2)から選択される。
[態様11]
R1, R2, R3, R4, R5, R6のいずれも、H、ハロゲン、C1-C6直鎖アルキル、C3-C6分岐又は環状アルキル、及び-C≡Nから独立に選択され、ここで、前記直鎖、分岐又は環状アルキルのいずれも完全に又は部分的にハロゲン化されていてもよく、特に-CF3であってもよい、上記態様1〜10のいずれか一つに記載の錯体。
[態様12]
上記態様1〜11のいずれか一つに記載の錯体を含む電気化学又は光電子装置。
[態様13]
前記錯体及びその還元又は酸化された対応物が酸化還元対として使用される、上記態様12に記載の装置。
[態様14]
光電気化学装置、光電子装置、電気化学電池(例えばリチウムイオン電池)、二重層キャパシタ、発光装置、エレクトロクロミック又はフォトエレクトロクロミック装置、電気化学センサー、バイオセンサー、電気化学ディスプレイ及び電気化学キャパシタ(例えばスーパーキャパシタ)から選択される、上記態様12及び13のいずれか一つに記載の装置。
[態様15]
第1及び第2の電極と、前記第1及び第2の電極の間にある電解質及び/又は中間層を含み、前記電解質又は前記中間層が上記態様1〜11のいずれか一つに記載の金属錯体を含む電気化学装置。
[態様16]
第1及び第2の電極と、前記第1及び第2の電極の間にある電荷輸送層を含み、前記電荷輸送層が、テトラシアノボレート([B(CN)4]-)と、式(I):
M(La)n(Xb)m (I)
(式中、M、n、m及びXbは上記態様1において定義したとおりであり;
いずれのLa(L1, L2, ・・・, Ln)も、置換又は非置換の環又は環系を含む単座、二座又は三座配位子から独立に選択され、前記環又は環系は少なくとも1個の窒素原子を含み;
いずれのXbも、独立に、共配位子である)
の陽イオン性金属錯体を含む、電気化学及び/又は光電子装置。
[態様17]
いずれの配位子Laも、置換及び非置換ピリジン又はポリピリジン配位子、置換及び非置換ピラゾール、置換及び非置換ピラジン、置換及び非置換トリアゾール、置換及び非置換ピリダジン、置換及び非置換イミダゾールから独立に選択され、ここで置換基は1〜40個の炭素と0〜20個のヘテロ原子、ハロゲン、(-F、-Cl、-Br、-I)、-NO2、-NH2及びOHを含む炭化水素から独立に選択される、上記態様16に記載の装置。
[態様18]
前記電荷輸送層が、有機溶媒を含み、及び/又は1種以上のイオン性液体を含む、上記態様16に記載の装置。
[態様19]
前記第1の電極は、前記装置の電荷輸送層と対向する表面を含む半導体電極であり、ここで、前記表面上に、前記表面上に層を形成するように吸着された色素が存在しており、前記色素は、前記表面に吸着された場合に電荷を帯びていない色素又は正電荷を帯びた色素から好ましくは選択される、上記態様16〜18のいずれか一つに記載の装置。
[態様20]
前記色素は、前記表面に吸着された場合に、負電荷を帯びた遊離(固定されていない)のアンカーリング基を欠く、上記態様19に記載の装置。
[態様21]
前記色素は、前記色素を前記表面に付着させるために1個のアンカーリング基を含む、上記態様19又は20に記載の装置。
[態様22]
光電気化学装置、光電子装置、電気化学電池(例えばリチウムイオン電池)、二重層キャパシタ、発光装置、エレクトロクロミック又はフォトエレクトロクロミック装置、電気化学センサー、バイオセンサー、電気化学ディスプレイ及び電気化学キャパシタ(例えばスーパーキャパシタ)から選択される、上記態様16〜21のいずれか一つに記載の装置。
[態様23]
光電変換装置、好ましくは色素増感太陽電池又は光電池である、上記態様16〜22のいずれか一つに記載の装置。
[態様24]
nが1〜3の整数、好ましくは2又は3である、上記態様16〜23のいずれか一つに記載の装置。
[態様25]
前記配位子Laのいずれも、上記態様3に示した式 (1), (2), (3), (6), (7), (10), (11), (12), (15), (16), (23), (24), (25), (26), (27), (28), (29), (30), (31), (32), (33), (34), (35), (36), (37), (39), (40), (41), (42)の化合物、及び下記式(68) の化合物のいずれかから独立に選択される、上記態様16〜24のいずれか一つに記載の装置:
【化13】
ここで、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8, R1, R2, R3, R4, R5及びR6のいずれも、存在/該当する限り、Hから、1〜30個の炭素と0 〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン,(-F, -Cl, -Br, -I), -NO2, -NH2, -OHから独立に選択され、ここで、R’及びR’’は、もし該当する場合、H及び置換基-CRARBRCから独立に選択され、ここで、RA, RB及びRCは 、Hから、及び1〜30個の炭素と0〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン,(-F, -Cl, -Br, -I)から独立に選択され、ここで、もしRB及びRC がハロゲン、-NO2, -NH2又は-OHでない場合には、RAは -NO2, -NH2及び-OHから選択されてもよい。
[態様26]
R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8, R1, R2, R3, R4, R5及びR6のいずれも、存在する限り、H、ハロゲン、-NO2, -OH, -NH2, 1〜30個の炭素と0 〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素から、及び上記態様3において定義した式(A-3), (A-5), (A-6), (B-5), (B-6), (B-8), (B-9), (B-10), (B-11), (B-12), (B-13), (B-14), (B-15), (B-17), (B-21), (B-22), (B-24), (B-25), (B-26), (B-27), (C-2), (C-3), (C-4), (C-5), (C-6), (C-7), (C-8), (C-9), (C-10), (C-11), (C-13), (C-14), (C-15), (C-16), (C-12), (C-17), (C-18), (C-19), (C-20), (C-21), (C-24), (C-25), (C-26), (C-27), (D-l), (D-2), (D-3), (E-l), (E-2), (E-3), (F-l), (F-2), (F-3), (F-4), (F-5), (F-6), (F-7), (F-9), (F-10), (G-l), (G-2)の置換基から独立に選択され、
ここで、前記点線は、上記態様25に記載の式(1)〜(63)の各化合物に(A-1)〜(G-2)の置換基が連結する結合を表し、置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7は、存在する限り、H、及び1〜20個の炭素と0〜20個のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン、(-F, -Cl, -Br, -I)、及び-NO2から独立に選択される、上記態様25に記載の装置。
[態様27]
前記Laのいずれも、上記態様3に示した式(2)、(3)の化合物、及び上記態様25に示した式(68)の化合物、並びに以下に示す化合物(64)及び(66)のいずれかから独立に選択される、上記態様16〜26のいずれか一つに記載の装置:
【化14】
ここで、R1, R2, R3, R4, R5, R6, R7, R8, R1, R2, R3, R4, R5及びR6のいずれも、存在及び/又は該当する限り、Hから、及び1〜20個の炭素と0〜15個のヘテロ原子を含む炭化水素、ハロゲン、(-F, -Cl, -Br, -I)、及び-NO2から独立に選択される。
[態様28]
nが3であり、bが0であり、及び/又は配位子L1, L2, L3が上記態様25〜27において定義した式(2)、(3)及び(64)の化合物から独立に選択される、上記態様16〜27のいずれか一つに記載の装置。
[態様29]
nが2であり、bが0又は1であり、及び/又は配位子L1及びL2が、式(68)及び(66)の化合物から独立に選択される、上記態様16〜28のいずれか一つに記載の装置。
[態様30]
電気化学装置の製造方法であって、
第1及び第2の電極を用意する工程;
電荷輸送層を用意する工程;
前記電荷輸送層に、テトラシアノボレート([B(CN)4]-)と式I:
M(La)n(Xb)m (I)
(式中、M、n、m及びXbは上記態様1において定義したとおりであり;
いずれのLa(L1, L2, ・・・, Ln)も、置換又は非置換の環又は環系を含む単座、二座又は三座配位子から独立に選択され、前記環又は環系は少なくとも1個の窒素原子を含み;
いずれのXbも、独立に、共配位子である)
の陽イオン性金属錯体を含む塩を加える工程;
を含む電気化学装置の製造方法。