(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1および
図2は、本発明の実施形態に係る調理器10を示す。この調理器10は、調理物である食材を収容する調理鍋(鍋)11と、調理鍋11を着脱可能に収容する調理器本体12と、調理器本体12に開閉可能に配設した蓋体23とを備える。蓋体23は、調理鍋11内と外部とを連通させる排気通路33,42を備え、この排気通路33,42の入口に調理鍋11内を大気圧より高い圧力に昇圧可能とする調圧機構72が配設されている。本実施形態では、排気通路33,42内に溜まった液状物を調理鍋11内へ還流させるために電動式の還流機構98を設け、調理処理中に液状物を還流可能とし、ふきこぼれの抑制を図っている。
【0017】
図1および
図2に示すように、調理器本体12は、有底筒状の胴体13と、胴体13の上端開口に嵌合される肩体14とを有する本体外装体を備える。肩体14は樹脂製であり、背面側(後方側)に蓋体23を回動可能に装着するヒンジ接続部15を備える。肩体14の正面側(前方側)には操作パネル部16が設けられている。ヒンジ接続部15と操作パネル部16との間には、調理鍋11を着脱可能に収容する鍋収容部17が形成されている。この鍋収容部17の正面側には、蓋体23をロックするためのロック部18が設けられている。
【0018】
図7に示すように、鍋収容部17と胴体13との間の内部には、収容した調理鍋11を電磁誘導加熱する加熱部材である誘導加熱コイル19が配設されている。また、鍋収容部17には、調理鍋11の温度を検出する第1温度検出部材である鍋温度センサ20が、鍋収容部17を貫通して調理鍋11の底に接触するように配設されている。また、操作パネル部16の内側には、操作基板(図示せず)が配設され、この操作基板に入力部材である複数のスイッチ21と、表示部材である液晶パネル22とが実装されている。
【0019】
図1および
図3に示すように、蓋体23は、調理器本体12のヒンジ接続部15に回動可能に取り付けられ、調理鍋11の上端開口を含む調理器本体12の上部を覆う。この蓋体23は、閉塞した状態で調理器本体12の上部を覆う下板24と、下板24の上部を覆う上板26とを有する蓋外装体を備える。下板24は樹脂製であり、上部には金属製の補強板25が配設されている。上板26は樹脂製であり、下板24に上側から被せてネジ止めにより固定される。
【0020】
補強板25を含む下板24の背面側には、調理器本体12のヒンジ接続部15に回動可能に接続される一対の蓋体側接続部27,27が形成されている。また、下板24の正面側には、調理器本体12のロック部18にロックされるロック部材28が回動可能に配設されている。上板26には、ロック部材28を回動させて、ロック部18との係合を解除するための操作部材29が配設されている。
【0021】
図1および
図2に示すように、蓋体23において、調理鍋11と対向する下板(面)24には、内蓋セット41を着脱可能に装着する内蓋装着部30が設けられている。この内蓋装着部30は、内蓋セット41の外形と略同一形状で上向きに隆起した第1配設部31と、後述する上側カバー部材51の外形と略同一形状で更に上向きに隆起した第2配設部32とを備える。また、蓋体23には、調理鍋11内と外部とを連通させ、調理鍋11内の排気(蒸気)を外部へ排出するための排気通路33,42が形成されている。そのうち、下流側排気通路33は蓋体23に設けられ、上流側排気通路42は内蓋セット41に設けられている。
【0022】
具体的には、第2配設部32の蓋体側接続部27側に、下流側排気通路33の入口である接続口34が設けられている。
図1および
図3に示すように、上板26には、蓋体側接続部27側に蒸気口ユニット37を着脱可能に配設する蒸気口ユニット配設部35が設けられている。この蒸気口ユニット配設部35には、接続口34上に位置するように挿通孔36が設けられている。接続口34と挿通孔36との間には、パッキンが配設されている。蒸気口ユニット37は、有底円筒状の下容器38と、平面視矩形状の上カバー39とを備える。上カバー39には、蒸気を外部へ放出するための蒸気口40が設けられている。下板24の接続口34から蒸気口ユニット37の蒸気口40までの流路が下流側排気通路33を構成する。
【0023】
図1および
図2に示すように、蓋体23の内蓋装着部30には、調理鍋11の上端開口を閉塞する内蓋セット41が着脱可能に配設される。この内蓋セット41は、
図4および
図5に示すように、調理鍋11を閉塞する内蓋本体43と、内蓋本体43の上面側に着脱可能に装着される上側カバー部材51と、内蓋本体43の下面側に着脱可能に装着される下側カバー部材57とを備える。内蓋本体43と上側カバー部材51との間には、下流側排気通路33に連通する上流側排気通路42が形成(画定)される。この上流側排気通路42は、調理鍋11との間が内蓋本体43によって仕切られている。
【0024】
内蓋本体43は、受け皿形状に屈曲加工した金属製のベース板44を備える。ベース板44の外周部には、調理鍋11の上端開口の内周面に密着されるシール部材45が配設される。このシール部材45は、ベース板44の外周部に樹脂製の枠体46を配設することにより、これらの間に挟み込んで装着される。枠体46には、蓋体23の内蓋装着部30の第1配設部31に係止される係止部47,47が設けられるとともに、離脱可能に係止される蓋係止部材48がスライド可能に配設されている。また、枠体46には、上側カバー部材51を着脱可能に装着するための上カバー係止受部49が設けられるとともに、下側カバー部材57を係止する下カバー係止受部50が設けられている。
【0025】
上側カバー部材51は、内蓋本体43の上部を覆うように開放可能に取り付けられ、内蓋本体43との間に液状物を収容する空間の役割を兼ねる上流側排気通路42を形成する。この上側カバー部材51は、天板部52の外周縁から側板部53を突設した筒形状である。側板部53の下端には、内蓋本体43に圧接されるシール部材54が配設されている。上側カバー部材51には、内蓋本体43の上カバー係止受部49に離脱可能に係止する係止部材55A,55Bがスライド可能に配設されている。
【0026】
上側カバー部材51を内蓋本体43に装着することにより、これらの間に上流側排気通路42が形成される。内蓋本体43には後述する調圧弁75が配設され、この調圧弁75の通気孔74が上流側排気通路42の入口を構成する。上側カバー部材51には、蓋体23の下流側排気通路33の接続口34に対応するように天板部52に接続口56が設けられ、この接続口56が上流側排気通路42の出口を構成する。
図1に示すように、下流側排気通路33の接続口34と上流側排気通路42の接続口56とは、パッキンによって密閉される。
【0027】
図4および
図5に示すように、下側カバー部材57は、内蓋本体43に対して調理鍋11内を臨む側に着脱可能に配設される。そして、調理(装着)時には、排気通路33,42の入口である通気孔74が食材の繊維や崩れ落ちた食材片等によって目詰まりすることを防止する。この下側カバー部材57は、多数の孔(図示せず)を形成した金属製の下側カバー本体58と、下側カバー本体58の外周部に配設したカバーリング59とを備える。カバーリング59には、内蓋本体43の下カバー係止受部50に係止される係止部60および係止部材61が設けられている。
【0028】
図2および
図3に示すように、蓋体23には、内蓋セット41を通して調理鍋11内の圧力を検出する圧力検出部材である圧力センサ62が配設されている。この圧力センサ62は第2配設部32上に配設されている。圧力センサ62には接続用パッキン63が配設され、この接続用パッキン63が第2配設部32内に配置されている。内蓋セット41の上側カバー部材51には、接続用パッキン63と対応する位置に開口部64が設けられている。
図4および
図5に示すように、内蓋本体43には樹脂製のベース部材65が配設され、このベース部材65に開口部64に向けて突出するダクト66が形成されている。これにより圧力センサ62は、接続用パッキン63、開口部64およびダクト66を通して調理鍋11内に連通される。
【0029】
図2および
図3に示すように、蓋体23には、上流側排気通路42内の蒸気温度を検出する第2温度検出部材である蓋温度センサ67が配設されている。この蓋温度センサ67は、下板24の第2配設部32上に配設され、検出部68が第2配設部32内に配置されている。
図2および
図5に示すように、内蓋セット41の上側カバー部材51には、蓋温度センサ67との対応位置に開口部69が設けられ、この開口部69が金属製の補強カバー70によって覆われている。検出部68が補強カバー70に接触状態で配置されることにより、上流側排気通路42内の温度を検出することができる。なお、補強カバー70には、圧力センサ62および後述する弁(開閉弁)75,88,101との対応位置に開口部71A〜71Dが設けられている。
【0030】
本実施形態の調理器10は、調理鍋11内を大気圧より高い圧力に昇圧するために、蓋体23に電動式の調圧機構72と安全機構85とが搭載されている。また、内蓋セット41の上流側排気通路42内に溜まった液状物を調理鍋11に還流させるために、蓋体23に電動式還流機構98と連動式還流機構111とが搭載されている。
【0031】
図5および
図6(A)に示すように、調圧機構72は、調理鍋11内を設定した調圧値(例えば1.20atm)まで昇圧可能とする。この調圧機構72は、上流側排気通路42の一部を構成する通気孔74と、通気孔74を開閉する調圧弁75と、調圧弁75を開閉駆動する第1駆動部(駆動部)80とを備える。
【0032】
内蓋本体43に配設したベース部材65には第1弁装着部73が形成され、この第1弁装着部73に通気孔74が形成されている。調圧弁75は、第1弁装着部73に装着された第1カバー76と、第1カバー76内に配設された第1弁体77と、第1弁体77の上部に配設した第1作動受部材78とを備える。第1弁体77および第1作動受部材78は、スプリングによって通気孔74を開放する上向きに付勢され、下向きに移動されることにより通気孔74を上方から閉塞する。上側カバー部材51には、第1作動受部材78の対応位置に開口部が設けられ、この開口部がパッキン79によって密閉されている。
【0033】
図3および
図6(A)に示すように、第1駆動部80は、第1作動受部材78上に位置する第1作動部材81と、第1作動部材81上に配置した第1カム部材82と、第1カム部材82を水平方向に移動させる第1ソレノイド(駆動部材)83とを備える。下板24には、第1作動部材81を第2配設部32内に突出可能とする開口部が設けられ、この開口部がパッキン84によって密閉されている。第1ソレノイド83の駆動(通電)により第1カム部材82を後退させ、第1作動部材81を下向きに移動させる。これにより、第1作動受部材78および第1弁体77を下向きに移動させ、通気孔74を閉塞する。
【0034】
図5および
図6(B)に示すように、安全機構85は、調理鍋11内が設定した上限値(例えば1.30atm)を超えると調理鍋11内を脱圧する。この安全機構85は、調理鍋11内と上流側排気通路42とを連通させる連通孔87と、連通孔87を開閉する安全弁88と、安全弁88を開閉駆動する第2駆動部(駆動部)93とを備える。
【0035】
内蓋本体43に配設したベース部材65には第2弁装着部86が形成され、この第2弁装着部86に連通孔87が形成されている。安全弁88は、第2弁装着部86に装着された第2カバー89と、第2カバー89内に配設された第2弁体90と、第2弁体90の上部に配設した第2作動受部材91とを備える。第2弁体90および第2作動受部材91は、スプリングによって連通孔87を開放する上向きに付勢され、下向きに移動されることにより連通孔87を上方から閉塞する。上側カバー部材51には、第2作動受部材91の対応位置に開口部が設けられ、この開口部がパッキン92によって密閉されている。
【0036】
図3および
図6(B)に示すように、第2駆動部93は、第2作動受部材91上に位置する第2作動部材94と、第2作動部材94上に配置した第2カム部材95と、第2カム部材95を水平方向に移動させる第2ソレノイド(駆動部材)96とを備える。下板24には、第2作動部材94を第2配設部32内に突出可能とする開口部が設けられ、この開口部がパッキン97によって密閉されている。第2ソレノイド96の駆動(通電)により第2カム部材95を後退させ、第2作動部材94を下向きに移動させる。これにより、第2作動受部材91および第2弁体90を下向きに移動させ、連通孔87を閉塞する。
【0037】
図5および
図6(C)に示すように、電動式還流機構98は、調理処理中の設定された工程で、調理鍋11から上流側排気通路42内に流入して、溜まった液状物を調理鍋11へ還流させる。この電動式還流機構98は、上流側排気通路42内の液状物を調理鍋11内へ還流させる第1還流孔100と、第1還流孔100を開閉する第1還流弁101と、第1還流弁101を開閉駆動する第3駆動部(駆動部)106とを備える。
【0038】
内蓋本体43に配設したベース部材65には第3弁装着部99が形成され、この第3弁装着部99に第1還流孔100が形成されている。第1還流弁101は、第3弁装着部99に装着された第3カバー102と、第3カバー102内に配設された第3弁体103と、第3弁体103の上部に配設した第3作動受部材104とを備える。第3弁体103および第3作動受部材104は、スプリングによって第1還流孔100を閉塞する上向きに付勢され、下向きに移動されることにより第1還流孔100を開放する。上側カバー部材51には、第3作動受部材104の対応位置に開口部が設けられ、この開口部がパッキン105によって密閉されている。
【0039】
図3および
図6(C)に示すように、第3駆動部106は、第3作動受部材104上に位置する第3作動部材107と、第3作動部材107上に配置した第3カム部材108と、第3カム部材108を水平方向に移動させる第3ソレノイド(駆動部材)109とを備える。下板24には、第3作動部材107を第3配設部内に突出可能とする開口部が設けられ、この開口部がパッキン110によって密閉されている。第3ソレノイド109の駆動(通電)により第3カム部材108を後退させ、第3作動部材107を下向きに移動させる。これにより、第3作動受部材104および第3弁体103を下向きに移動させ、第1還流孔100を開放する。
【0040】
図4および
図5に示すように、連動式還流機構111は、蓋体23の開放によって上流側排気通路42内に溜まった液状物を調理鍋11内へ還流させる。この連動式還流機構111は、内蓋本体43のヒンジ側中央に設けた第2還流孔113と、第2還流孔113を開閉する第2還流弁114と、第2還流弁114を開閉駆動する第4駆動部118とを備える。
【0041】
内蓋本体43のベース板44には台座112が配設され、この台座112に第2還流孔113が形成されている。第2還流弁114は、台座112に装着された第4カバー115と、第4カバー115内に配設された第4弁体116とを備える。第4弁体116には、第2還流孔113を貫通して調理鍋11側へ突出する作動受部117が設けられている。第4弁体116は、スプリングによって第2還流孔113を閉塞する下向きに付勢され、上向きに移動されることにより第2還流孔113を開放する。
【0042】
第4駆動部118は、第2還流孔113を覆うように内蓋本体43の調理鍋11側に設けた駆動部材カバー119と、この駆動部材カバー119の内部に配設した駆動部材120とを備える。駆動部材120には、第4弁体116を上下動させるためのカム部121が形成されている。駆動部材120は、内蓋本体43の径方向に沿ってスライド可能に配設され、スプリングによって外向きに付勢されている。蓋体23の閉塞により、駆動部材120の外端が調理鍋11に当接して駆動部材120が径方向内側へ移動することにより、第4弁体116で第2還流孔113を閉塞する。蓋体23の開放により、駆動部材120が調理鍋11から離反すると、カム部121で第4弁体116を上向きに移動させて、第2還流孔113を開放する。
【0043】
本実施形態の内蓋セット41には、下側カバー部材57の未装着状態では蓋体23を閉じることができないようにするための干渉部材124が、連動式還流機構111の対向位置に配設されている。具体的には、内蓋本体43の調理鍋11側には、干渉部材配設部123が設けられ、この干渉部材配設部123に干渉部材124が配設されている。干渉部材124は、内蓋本体43の径方向に沿ってスライド可能に配設され、スプリングによって外向きに付勢されている。下側カバー部材57には、干渉部材配設部123を覆うカバー部125が設けられている。下側カバー部材57を内蓋本体43に装着することにより、カバー部125のカム部126が干渉部材124を径方向内側へ移動させる。これにより、干渉部材124を調理鍋11に干渉させることなく、調理器本体12に対して蓋体23を閉じることができる。
【0044】
この調理器10は、操作パネル部16の内側の調理器本体12内に制御基板が配設され、この制御基板に制御手段および調理手段の役割を兼ねるマイコン127が実装されている。
図7に示すように、マイコン127は、スイッチ21の操作によりユーザが所定の調理処理を選択すると、内蔵したROM(記憶手段)128に記憶されたプログラムに従って、誘導加熱コイル19およびソレノイド83,96,109を制御して調理処理を実行する。
【0045】
調理処理は、一定圧力メニューと可変圧力メニューとを備える。一定圧力メニューは、昇温プロセスと、加圧プロセスと、排圧プロセスとを備える。
図8(A),(B)に示すように、可変圧力メニューは、昇温プロセスと、下ゆでプロセスと、煮込み(昇降圧)プロセスと、排圧プロセスとを備える。これらのメニューは、ユーザが昇温プロセス後の実行時間(調理時間)tcを設定し、その時間tcが経過すると終了する。
【0046】
各メニューの共通プロセスである昇温プロセスは、各弁75,88,101を閉弁(各孔74,87,100を閉塞)し、誘導加熱コイル19によって調理鍋11を加熱する。そして、圧力センサ62による検出圧力Pが設定圧力Pr(例えば1.20atm)に昇圧するまで実行される。なお、圧力の代わりに、鍋温度センサ20による検出温度Tが設定温度Tr(例えば100℃)に昇温するまで実行する構成としてもよい。
【0047】
他の共通プロセスである排圧プロセスは、各弁75,88,101を閉弁し、誘導加熱コイル19による加熱を停止する。そして、設定時間teが経過するまで待機し、自然降圧によって調理鍋11内を大気圧に戻す。また、設定時間teが経過すると、第1および第2ソレノイド96への通電を遮断し、調圧弁75および安全弁88を開弁(各孔74,87を開放)して、排圧プロセスを含む調理処理を終了する。なお、設定時間teは、調理する容量に拘わらず、自然降圧によって大気圧に戻せる十分な時間(例えば5分)に設定される。
【0048】
一定圧力メニューの加圧プロセスおよび可変圧力メニューの下ゆでプロセスは、各弁75,88,101を閉弁した状態を維持し、誘導加熱コイル19によって調理鍋11を加熱(温調)する。これにより調理鍋11内を大気圧より高い設定圧力Pp,Pbに維持する。一定圧力メニューの加圧プロセスは、調理時間tcから排圧プロセスの設定時間teを減算した設定時間tpが経過するまで実行される。また、可変圧力メニューの下ゆでプロセスは、食材の芯まで熱を通すことが可能な設定時間tb(例えば5分)が経過するまで実行される。なお、一定圧力メニューの加圧プロセスの設定圧力Ppと、可変圧力メニューの下ゆでプロセスの設定圧力Pbとは、同一に設定してもよいし、異なるように設定してもよい。
【0049】
可変圧力メニューの煮込みプロセスは、昇圧工程、降圧工程および還流工程を1サイクルとして、設定時間tsが経過するまで繰り返し行う。設定時間tsは、調理時間tcから、下ゆでプロセスの設定時間tbおよび排圧プロセスの設定時間teを減算した時間に設定される。なお、下ゆでプロセスの終了直後は、調理鍋11内が大気圧より高い設定圧力Pbになっているため、煮込みプロセスは降圧工程から開始される。
【0050】
図8(A)および
図9に示すように、昇圧工程では、各弁75,88,101を閉弁し、誘導加熱コイル19によって1200Wのフルパワーで調理鍋11を加熱する。これにより調理鍋11を大気圧より高い圧力に昇圧させる。この昇圧工程は、圧力センサ62による検出圧力Pが設定圧力Pu(本実施形態では1.20atm)に昇圧するまで実行される。
【0051】
降圧工程では、安全弁88および第1還流弁101を閉弁し、調圧弁75を繰り返し開弁および閉弁し、誘導加熱コイル19による調理鍋11の加熱を停止する。これにより昇圧した調理鍋11内を、一点鎖線で示す通気孔74を開放し続けた自然降圧による下降勾配より、緩やかな下降勾配で徐々に降圧させる。この降圧工程は、昇圧工程の終了後に引き続いて実行され、圧力センサ62による検出圧力Pが設定圧力Pd(本実施形態では1.00atm=大気圧)に降圧すると終了する。また、調圧弁75は、設定時間td1(例えば5秒)が経過するまで閉弁した後、設定時間td2(例えば2秒)が経過するまで開弁するステップを繰り返す。
【0052】
還流工程では、安全弁88を閉弁し、調圧弁75および第1還流弁101を開弁(第1還流孔100を開放)する。これにより降圧工程にて上流側排気通路42内に浸入して溜められた液状物を、調理鍋11内へ還流させる。また、基本的に誘導加熱コイル19による加熱を停止する(非加熱ステップ)一方、途中で一時的に誘導加熱コイル19によって加熱する(加熱ステップ)。これにより調理鍋11内の食材温度が低下し過ぎることを抑制する。また、調理鍋11から上流側排気通路42へ流入する蒸気を一時的に増やし、上流側排気通路42内において流体移動が少ない部分に溜まった液状物を第1還流孔100へ導いて、還流させる。
【0053】
この還流工程は、降圧工程の終了後に引き続いて実行される。即ち、還流工程は、昇圧工程の終了後において、降圧工程によって調理鍋11内が大気圧(設定圧力Pd)まで降下したことを、圧力センサ62の検出値に基づいて判断して実行される。また、還流工程は、設定時間tf(例えば130秒)が経過すると終了する。具体的には、還流工程に移行すると、誘導加熱コイル19への通電を遮断して、非加熱ステップを第1設定時間tf1(例えば60秒)が経過するまで実行する。ついで、誘導加熱コイル19へフルパワーで通電して、加熱ステップを第2設定時間tf2(例えば10秒)が経過するまで実行する。その後、再び誘導加熱コイル19への通電を遮断して、非加熱ステップを第3設定時間tf3(例えば60秒)が経過するまで実行して、終了する。
【0054】
次に、マイコン127による可変圧力メニューの調理処理について具体的に説明する。
【0055】
図10に示すように、マイコン127は、操作パネル部16の操作により可変圧力メニューが実行されると、ステップS1で設定された調理時間tcを読み込む。そして、この調理時間tcに基づいて、下ゆでプロセスの設定時間tb、煮込みプロセスの設定時間tsおよび排圧プロセスの設定時間teを設定した後、ステップS2からステップS4の昇温プロセスに移行する。
【0056】
昇温プロセスでは、ステップS2で各弁75,88,101を閉弁させた後、ステップS3で誘導加熱コイル19への通電を開始する。ついで、ステップS4で圧力センサ62による検出圧力Pが設定圧力Prに昇圧するまで待機し、設定圧力Prまで昇圧するとステップS5からステップS7の下ゆでプロセスに移行する。
【0057】
下ゆでプロセスでは、設定時間tbを計測するために計時タイマ(計時手段)129をリセットしてスタートした後、ステップS5で各弁75,88,101を閉弁させる。ついで、ステップS6で誘導加熱コイル19の電力制御を行って調理鍋11内を温調する。この温調は、ステップS7で計測時間tが設定時間tb以上になるまで実行される。計測時間tが設定時間tbになると、ステップS8からステップS11の煮込みプロセスに移行する。
【0058】
煮込みプロセスでは、設定時間tsを計測するために計時タイマ129をリセットしてスタートした後、ステップS8で計測時間tが設定時間ts以上になるまで、ステップS9の降圧工程、ステップS10の還流工程、ステップS11の昇圧工程を繰り返し行う。計測時間tが設定時間tsになると、ステップS12からステップS14の排圧プロセスに移行する。即ち、昇圧工程、降圧工程および還流工程を1サイクルとした昇降圧プロセスを、設定時間tsが経過するまで繰り返し実行する。そして、設定時間tsが経過すると、いずれの工程を実行していても、また、工程中のいずれのステップを実行していても、終了して排圧プロセスに移行する。
【0059】
排圧プロセスでは、設定時間teを計測するために計時タイマ129をリセットしてスタートした後、ステップS12で各弁75,88,101を閉弁させる。ついで、ステップS13で設定時間teが経過するまで待機し、設定時間teが経過すると、ステップS14で調圧弁75および安全弁88を開弁させて、可変圧力メニューの調理処理を終了する。
【0060】
図11に示すように、ステップS9の降圧工程では、ステップS9−1で誘導加熱コイル19への通電を遮断(OFF)した後、ステップS9−2で各弁75,88,101を閉弁させる。ついで、ステップS9−3で設定時間td1が経過するまで待機し、設定時間td1が経過すると、ステップS9−4で調圧弁75を開弁させる。ついで、ステップS9−5で設定時間td2が経過するまで待機し、設定時間td2が経過すると、ステップS9−6で調圧弁75を閉弁させる。その後、ステップS9−7で検出圧力Pが設定圧力Pdまで降圧したか否かを検出する。設定圧力Pdまで降圧していない場合にはステップS9−3に戻る。これにより、調圧弁75の開閉を繰り返し行い、徐々に調理鍋11内を降圧させる。そして、設定圧力Pdまで降圧すると、降圧工程を終了して還流工程に移行する。
【0061】
図12に示すように、ステップS10の還流工程では、ステップS10−1で調圧弁75を開弁し、安全弁88を閉弁し、第1還流弁101を開弁した状態とする。ついで、ステップS10−2で設定時間tf1が経過するまで待機し、設定時間tf1が経過すると、ステップS10−3で誘導加熱コイル19への通電を開始(ON)する。ついで、ステップS10−4で設定時間tf2が経過するまで待機し、設定時間tf2が経過すると、ステップS10−5で誘導加熱コイル19への通電を遮断する。その後、ステップS10−6で設定時間tf3が経過するまで待機し、設定時間tf3が経過すると、還流工程を終了して昇圧工程に移行する。
【0062】
図13に示すように、ステップS11の昇圧工程では、ステップS11−1で各弁75,88,101を閉弁させた後、ステップS11−2で誘導加熱コイル19への通電を開始する。そして、ステップS11−3で検出圧力Pが設定圧力Puに昇圧するまで待機し、設定圧力Puまで昇圧すると、昇圧工程を終了して降圧工程に移行する。
【0063】
この煮込みプロセスでは、昇圧工程および降圧工程を繰り返し行うため、その圧力差(Pu−Pd)によって調理鍋11内で調理物(食材および液状物)の撹拌作用を得ることができる。そのため、調理鍋11内の食材に満遍なく液状物(煮汁または調味汁)を行き届かせることができる。また、圧力低下により温度が低下することで食材に液状物を浸み込ませることができる。よって、良好な味付けを実現できる。また、降圧工程の終了後に、上流側排気通路42内に溜まった液状物を調理鍋11内へ還流させる還流工程を実行するため、ふきこぼれを大幅に抑制できる。しかも、食材の旨み成分を含む液状物が調理鍋11内へ戻されるため、調理物の美味しさ(仕上がり)を向上できる。
【0064】
また、降圧工程では、調圧弁75を開閉させ、自然降圧による下降勾配より緩やかな下降勾配で降圧されるため、調理鍋11内の蒸気が通気孔74を通して勢いよく排出され続けることを抑制できる。よって、上流側排気通路42内に溜められた液状物が蒸気口40からふきこぼれることを抑制できる。また、還流工程は、圧力センサ62の検出値に基づいて調理鍋11内が大気圧まで降下すると実行されるため、第1還流孔100を通して調理鍋11から上流側排気通路42へ液状物が流入(逆流)することなく、確実かつ効率的に上流側排気通路42から調理鍋11へ液状物を還流させることができる。
【0065】
また、還流工程は調理鍋11を加熱する加熱ステップを有するため、この加熱ステップにて調理鍋11内の排気圧を高め、この排気圧によって上流側排気通路42内の液状物を移動させ、第1還流孔100から液状物を調理鍋11内へ確実に還流させることができる。しかも、調理鍋11内の調理物の温度低下を抑制できるため、ユーザが調理中に一時停止して味見した際に違和感を与えることを防止できる。しかも、調理処理は、最後に排圧プロセスを実行するため、煮込みプロセスが昇圧工程中または降圧工程中に終了しても、調理鍋11内を確実に大気圧に戻した状態で調理処理を終了できる。よって、製品の安全性を確保できる。
【0066】
(第2実施形態)
図14は第2実施形態の可変圧力メニューの調理処置における煮込みプロセスの降圧工程を示す。この第2実施形態では、ステップS9−7’に示すように、圧力センサ62による検出値の代わりに、降圧工程の開始後に設定時間tdが経過すると、降圧工程を終了するようにした点で、第1実施形態と相違する。
【0067】
このようにした第2実施形態では、降圧工程の開始後に設定時間tdが経過すると、引き続いて還流工程が開始される。そのため、設定時間tdを、例えば調理鍋11内を大気圧まで降圧するために必要な最大時間に設定することで、大気圧まで調理鍋11内が降圧した状態で確実に還流工程を開始できる。また、圧力センサ62による検出、および、マイコン127が読み込み可能とするための信号変換が不要であるため、制御に関するプログラムを簡素化できる。
【0068】
(第3実施形態)
図15は第3実施形態の可変圧力メニューの調理処置における煮込みプロセスの還流工程を示す。この第3実施形態では、設定時間tfが経過するまで、調理鍋11内が設定温度Tfを維持するように、誘導加熱コイル19をオンオフ制御(温調)するようにした点で、第1実施形態と相違する。なお、設定温度Tfは、例えば95℃から100℃の範囲内で設定される。
【0069】
具体的には、ステップS10−1で、調圧弁75を開弁し、安全弁88を閉弁し、第1還流弁101を開弁した状態とする。ついで、ステップS10−2’で鍋温度センサ20の検出温度Tが設定温度Tf未満であるか否かを判断する。そして、検出温度Tが設定温度Tf未満である場合にはステップS10−3’に進み、誘導加熱コイル19をオン(加熱ステップ)してステップS10−5’に進む。また、検出温度Tが設定温度Tf以上である場合にはステップS10−4’に進み、誘導加熱コイル19をオフ(非加熱ステップ)してステップS10−5’に進む。ステップS10−5’では、設定時間tfが経過したか否かを検出する。そして、設定時間tfが経過していない場合にはステップS10−2’に戻り、設定時間tfが経過している場合には還流工程を終了して昇圧工程に移行する。
【0070】
この第3実施形態では、調理鍋11内が設定温度Tfに温調されるため、調理鍋11内の排気圧を高め、この排気圧によって上流側排気通路42内の液状物を第1還流孔100から確実に還流できる。また、調理物の温度低下を抑制できるため、ユーザが味見した際に違和感を与えることを確実に防止できる。
【0071】
なお、本発明の調理器10およびその調理方法は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、前記実施形態では、内蓋本体43の上部に上側カバー部材51を配設することにより、区画した上流側排気通路42を形成したが、上側カバー部材51がなく、内蓋本体43の装着により下板24との間に上流側排気通路42が形成される構成であってもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、降圧工程で大気圧まで降圧させた後、還流工程に移行するようにしたが、大気圧までは降圧していない大気圧近傍の圧力まで降下すると、還流工程に移行するようにしてもよい。ここで、大気圧近傍とは、第1還流弁101を開放した際に、調理鍋11内の液状物が負圧によって上流側排気通路42内に浸入しない程度の圧力のことである。このようにしても、前記と同様の作用および効果を得ることができる。
【0074】
また、前記実施形態では、還流工程は、調理鍋11の加熱を停止した非加熱ステップと、調理鍋11を加熱する加熱ステップとを有するようにしたが、加熱ステップがない非加熱ステップのみとしてもよい。このようにすれば、還流工程中の調理鍋11の温度降下により、食材に液状物(調理汁)を染み込ませることができる。また、煮込みプロセスにて、昇圧工程、降圧工程および還流工程を1サイクルとして繰り返し行う場合、最後のサイクルの還流工程だけ加熱ステップを有する構成としてもよい。
【0075】
また、降温工程の構成を変更した第2実施形態と、還流工程の構成を変更した第3実施形態とを組み合わせて、煮込みプロセスを実行してもよい。