特許第6092810号(P6092810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092810
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】物品収容容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/22 20060101AFI20170227BHJP
   B65D 1/30 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   B65D43/22 100
   B65D1/30
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-100084(P2014-100084)
(22)【出願日】2014年5月14日
(62)【分割の表示】特願2012-133105(P2012-133105)の分割
【原出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2014-198602(P2014-198602A)
(43)【公開日】2014年10月23日
【審査請求日】2015年6月10日
(31)【優先権主張番号】特願2012-70393(P2012-70393)
(32)【優先日】2012年3月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000135748
【氏名又は名称】株式会社バンダイ
(72)【発明者】
【氏名】黒川 信夫
【審査官】 西堀 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−255916(JP,A)
【文献】 特開平08−185564(JP,A)
【文献】 特開平08−337241(JP,A)
【文献】 特開平10−194312(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3011075(JP,U)
【文献】 米国特許第02899097(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 43/14−43/22
B65D 1/00− 1/48
B65D 23/00−25/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒンジ部で接続された第1容器半体と第2容器半体の開口端同士を突き合わせるように閉じることで第1容器半体と第2容器半体とが組み合って収容空間が形成される物品収容容器であって、
前記第1容器半体に設けた第1係合部と、
組合せ時に前記第1係合部に係合する前記第2容器半体に設けた第1被係合部と、
前記第2容器半体に設けた第2係合部と、
組合せ時に前記第2係合部に係合する前記第1容器半体に設けた第2被係合部と、
を備え、
前記第2係合部および前記第2被係合部は、前記ヒンジ部の反対側に設けられ、
前記第2係合部は、係合孔が設けられた舌片を有し、
前記第2被係合部は、前記係合孔に係合する突起部を有し、前記突起部は、前記第1容器半体の開口端側に外向きの傾斜面を備え、
前記第1係合部および前記第1被係合部は、前記ヒンジ部と当該ヒンジ部の反対側との間に設けられ、
前記第1被係合部は、開口部を有し、前記第1係合部を前記第1被係合部に案内する案内部を前記第2容器半体の内側にポケット状に設けて備え、
前記第1係合部は、組合せ時に前記案内部に挿入されるカギ爪部を有し、
組合せ状態において、前記第1係合部と前記第1被係合部の係合、および、前記第2係合部と前記第2被係合部の係合によって、前記第1容器半体および前記第2容器半体の任意の開口端横断方向への弾性変形が抑制され
前記カギ爪部が前記第1容器半体の内側位置にずらして設けられることで外面に凹部が作り出されており、当該凹部が開ける時に指かかり部として機能し得る物品収容容器。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1容器半体または第2容器半体の一方の容器半体の開口端の内周沿いに立設され、他方の容器半体の開口端内周と摺接するインロー部を備え、
組合せ状態において、前記第1容器半体または第2容器半体の弾性変形が相互に作用する物品収容容器。
【請求項3】
請求項2において、
前記インロー部は、前記開口端方向に向けて拡幅開口する切欠部を有し、
組合せ時に前記切欠部に対向する前記他方の容器半体の位置にガイド突起を設けて備えた物品収容容器。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記案内部が設けられた前記第2容器半体の端面部分は、内側向きのスロープ状に形成されてなる物品収容容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品収容容器に関する。
【背景技術】
【0002】
「カプセルトイ」と呼ばれるカプセル容器に入った玩具等を販売する自動販売機が知られている。地域やメーカによって呼び名は異なるが「ガチャガチャ(登録商標)」「ガチャポン(登録商標)」「ガシャポン(登録商標)」などとも呼ばれる。消費者が、所定枚数の硬貨を投入して払出操作レバー或いは払出操作ダイヤルを回すと、自動販売機内のカプセル容器が攪拌されその内の一つが払い出される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
こうした自動販売機に使用されるカプセル容器としては、ヒンジで連結された2つの半球ドーム状の容器半体を、ドーム開口端同士を突き合わせるように組み合わせ、留め具により係合させて球形の容器を形成するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−145904号公報
【特許文献2】特開2011−255916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カプセルトイを販売する自動販売機に用いられるカプセル容器には、商品の運搬、補充、販売機内での攪拌など様々な場面で、容器を押し潰そうとする力が作用する。カプセル容器には、そうした力にも耐えて不要に容器が開かないような係合の強さが求められる一方で、いざ消費者が容器を開けようとした時には容易に開けられることが望まれる。また、カプセルトイの生産段階の要望として、カプセル容器にカプセルトイを詰めた状態とするための容器閉じ作業を簡単・確実にすることも望まれる。
【0006】
本発明は、こうした課題に鑑みてなされたものであり、平時は容易に開かず、それでいて消費者が手にして開けるときには容易に開けることのできる物品収容容器を実現することを目的とする。更には、玩具等の物品を容器に入れて閉じる容器閉じ作業をより簡単・確実に行えるように作業性の向上を図った物品収容容器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の物品収容容器は、ヒンジ部で接続された第1容器半体と第2容器半体の開口端同士を突き合わせるように閉じることで第1容器半体と第2容器半体とが組み合って収容空間が形成される物品収容容器であって、前記第1容器半体に設けた第1係合部と、組合せ時に前記第1係合部に係合する前記第2容器半体に設けた第1被係合部と、前記第2容器半体に設けた第2係合部と、組合せ時に前記第2係合部に係合する前記第1容器半体に設けた第2被係合部と、を備え、前記第2係合部および前記第2被係合部は、前記ヒンジ部の反対側に設けられ、前記第2係合部は、係合孔が設けられた舌片を有し、前記第2被係合部は、前記係合孔に係合する突起部を有し、前記突起部は、前記第1容器半体の開口端側に、外向きの傾斜面を備え、前記第1係合部および前記第1被係合部は、前記ヒンジ部と当該ヒンジ部の反対側との間に設けられ、前記第1被係合部は、開口部を有し、前記第1係合部を前記第1被係合部に案内する案内部を前記第2容器半体の内側にポケット状に設けて備え、前記第1係合部は、組合せ時に前記案内部に挿入されるカギ爪部を有し、組合せ状態において、前記第1係合部と前記第1被係合部の係合、および、前記第2係合部と前記第2被係合部の係合によって、前記第1容器半体および前記第2容器半体の任意の開口端横断方向への弾性変形が抑制される構成である。また、本発明の物品収容容器は、ヒンジ部で接続された第1容器半体と第2容器半体の開口端同士を突き合わせるように閉じることで第1容器半体と第2容器半体とが組み合って収容空間が形成される物品収容容器であって、前記第1容器半体に設けた第1係合部と、組合せ時に前記第1係合部に係合する前記第2容器半体に設けた第1被係合部と、前記第2容器半体に設けた第2係合部と、 組合せ時に前記第2係合部に係合する前記第1容器半体に設けた第2被係合部と、を備え、 前記第2係合部および前記第2被係合部は、前記ヒンジ部の反対側に設けられ、前記第2係合部は、係合孔が設けられた舌片を有し、前記第2被係合部は、前記係合孔に係合する突起部を有し、前記突起部は、前記第1容器半体の開口端側に外向きの傾斜面を備え、前記第1係合部および前記第1被係合部は、前記ヒンジ部と当該ヒンジ部の反対側との間に設けられ、前記第1被係合部は、開口部を有し、前記第1係合部を前記第1被係合部に案内する案内部を前記第2容器半体の内側にポケット状に設けて備え、前記第1係合部は、組合せ時に前記案内部に挿入されるカギ爪部を有し、組合せ状態において、前記第1係合部と前記第1被係合部の係合、および、前記第2係合部と前記第2被係合部の係合によって、前記第1容器半体および前記第2容器半体の任意の開口端横断方向への弾性変形が抑制され、前記カギ爪部が前記第1容器半体の内側位置にずらして設けられることで外面に凹部が作り出されており、当該凹部が開ける時に指かかり部として機能し得る構成である。
【0008】
本発明の物品収容容器において、前記第1容器半体または第2容器半体の一方の容器半体の開口端の内周沿いに立設され、他方の容器半体の開口端内周と摺接するインロー部を備え、組合せ状態において、前記第1容器半体または第2容器半体の弾性変形が相互に作用することが好ましい。
【0009】
本発明の物品収容容器において、前記インロー部は、前記開口端方向に向けて拡幅開口する切欠部を有し、組合せ時に前記切欠部に対向する前記他方の容器半体の位置にガイド突起を設けて備えることが好ましい。
【0012】
本発明の物品収容容器において、前記案内部が設けられた前記第2容器半体の端面部分は、内側向きのスロープ状に形成されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、平時は容易に開かず、それでいて消費者が手にして開けるときには容易に開けることのできる物品収容容器を提供することができる。また、玩具等の物品を容器に入れて閉じる容器閉じ作業をより簡単・確実に行えるように作業性の向上を図った物品収容容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】物品収容容器が開いた状態の前方斜め上から見た外観図。
図2】物品収容容器が開いた状態の後方斜め上から見た外観図。
図3】物品収容容器の左右・上下断面による縦断面図であって、(1)閉じた状態の後方側を見た断面図、(2)〜(3)容器が閉じる過程におけるガイド突起周りの拡大図、(4)〜(5)容器が閉じる過程におけるカギ爪部周りの拡大断面図。
図4】物品収容容器の前後・上下断面による縦断面図であって、(1)第1インロー突起部が第2容器半体の内側滑り込んだ容器閉じ動作初期の状態を示す図、(2)容器閉じ動作終了時の状態を示す図。
図5】容器を開ける時の消費者の動作例を示す図であって、(1)上下・左右面の様子を示す図、(2)上下・前後面の様子を示す図。
図6】物品収容容器が開いた状態の上方から見た外観図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
本発明を適用した第1実施形態について説明する。
図1図2は、本実施形態における物品収容容器2を開いた状態の外観図であって、前者は前方斜め上から見た外観図、後者は後方斜め上から見た外観図に相当する。
【0018】
本実施形態の物品収容容器2は、略半球ドーム型の第1容器半体4及び第2容器半体6を、第1容器半体4及び第2容器半体6のドーム開口端部を上に向けた姿勢で並べ、柔軟で湾曲自在な薄膜ヒンジ8で一体に成形した開閉自在な合成樹脂製のカプセル体である。薄膜ヒンジ8は、弾性変形可能なシート状の部材であって復元力を有する。容器を閉じた状態において薄膜ヒンジ8が設けられた側を後方とすると、薄膜ヒンジ8は、第1容器半体4の前部と第2容器半体6の後部とを連結するようにそれら容器半体と一体成形されている。尚、以降の説明において位置関係を説明する場合、第2容器半体6から見て薄膜ヒンジ8が設けられた側を後方、第2容器半体6のドーム開口端の開口方向を上、として前後・左右・上下の位置関係を呼称する(各図中の3軸方向矢印を参照のこと)。
【0019】
[容器の構造の説明]
第1容器半体4と第2容器半体6のドーム開口端部は略同半径を有しており、互いの開口端部同士を突き合わせて組み合わせると、外観上は楕円球体を成し、内部に玩具等の物品を収容する空間が形成される。図1及び図2では、形状の凹凸を理解し易くするために不透明体として図示しているが、実際の物品収容容器2は透明又は半透明な合成樹脂(例えば、ポリプロピレン等)により造られており、内部に収容された玩具等を透かし見ることができる。
【0020】
物品収容容器2は、第1容器半体4と第2容器半体6との組み合わせの際にドームの芯を合わせ、組み合わせの位置決めをし易くするための構造としてインロー部10を備える。
【0021】
具体的には、物品収容容器2は、図1において、第1容器半体4のドーム開口端内周に沿って、前方(薄膜ヒンジ8側)の略半周部分に薄壁状の第1インロー突起部12を備え、また後方左右およそ1/4周の2箇所に薄壁状の第2インロー突起部14を備える。第1インロー突起部12及び後方インロー突起部14の外径は、第2容器半体6のドーム端内径(開口端内径)より僅かに小さく設定されており、第1容器半体4を第2容器半体6に被せるように組み合わせる時に、第2容器半体6の開口部内側に滑り込み摺接することでドームの芯合わせを助ける。つまり、容器半体が半球ドーム型の場合には、ドームの芯を合わせる芯出しが簡単にできるので、容器閉じ作業が容易となる。そして、第1インロー突起部12と第2インロー突起部14は、容器が閉じた状態では第1容器半体4と第2容器半体6との弾性変形を相互作用させる要素として機能する。よって、容器としての高い強度を実現し、消費者が開けようとしない限り容易に開かなくできる。
【0022】
また、インロー部10は、第1インロー突起部12に、ドーム開口方向へ拡幅するように略V字状に切り欠かれた切欠部16を備え、第2容器半体6のドーム開口端寄りの内側には、組み合わせ時に切欠部16に遊嵌するガイド突起18を備える。ガイド突起18は、例えば局所的な肉厚部として成形されており、切欠部16の切り欠き形状に応じた上向きに先細りの形状を有している。
【0023】
これにより、インロー部の一部だけが相手方の容器半体内に挿入された容器閉じ作業の初期段階において、第1容器半体と第2容器半体との相対位置がズレていたとしても、ガイド突起が切欠部に挿入されるに伴い、ガイド突起が切欠部の拡幅開口部の斜面に摺接するため、そのズレが補正される。つまり、容器閉じ作業の作業性が高まる。また、容器を閉じきってしまうと、切欠部内にはガイド突起が嵌入した状態となるので、容器開口部横方向への弾性変形に対する強度を高める効果を発揮する。
【0024】
また、本実施形態の物品収容容器2は、容器を閉じた状態を維持する2種類の係合構造部を有する。
【0025】
第1の係合構造部として、第1容器半体4の左右からドーム開口方向へ延設されたカギ爪部52(第1係合部)と、第2容器半体6の左右に設けられた爪かかり部60(第1被係合部)とを備える。
【0026】
カギ爪部52は、係合のための段差部を外向きに向けた姿勢で、第1容器半体4のドーム開口端内周からドーム開口方向へ沿って延設されており、爪先端部54の外側端及び爪胴部53の外面は第1容器半体4の外周面より内側となるように設定されている。つまり、カギ爪部52は、第1容器半体4の容器内側へずれた状態で設けられており、第1容器半体4のドーム開口端部辺縁部は、カギ爪部52の爪胴部53の部分だけ凹部20が形成されることになる。また、カギ爪部52の爪先端部54は、爪かかり部60への挿入が容易となるように当該爪先端部54の外側と内側とにそれぞれ外テーパ部55と内テーパ部56とが設けられている。
【0027】
爪かかり部60は、第2容器半体6のドーム開口部の内側にポケット状に設けられた案内部62の開口端として形成されている。
【0028】
具体的には、案内部62は、第2容器半体6のドーム開口端側から見るとドームの内側に突設されたコの字状の上下方向に伸びる壁部であって、当該壁部に囲まれた空間がカギ爪部52の挿入路63となる。案内部62が設けられた第2容器半体6の開口端面部分は、挿入路63内側向きのガイドスロープ66が形成されている。そして、挿入路63が第2容器半体6の外周面に達した開口端面が、カギ爪部52の爪の折り返し面と係合する爪かかり部60となる。
【0029】
本実施の形態によれば、案内部を第2容器半体の内側に設けるとともに、第1係合部のカギ爪部を第1容器半体の容器内側にずらして配置させることで、第1係合部及び第1被係合部が容器外観に突出しないようにできる。よって、商品の運搬、補充、販売機内での攪拌など様々な場面で容器を押し潰そうとする力が働いたとしても、第1係合部及び第1被係合部に直接的に外力が作用して係合が解けてしまうといった事象を防止することができる。
【0030】
また、第1被係合部の開口部や、第1係合部のカギ爪部を容器内側にずらして配置したことにより容器外観上に生まれる凹部は、物品収容容器を持つ際の指かかり部として機能し容器を持ち易くできる。また、そうした指かかり部は、容器開け動作における力点として有効であり、容器開け動作中に指が滑って容器を落とす事象を防止できる。また、容器を開ける動作の力をかけ易くなるので容器開けをし易くなる。
【0031】
なお、図6に示すように、案内部62において、壁部68を設けることにより、挿入路63と、挿入路63とは別の強度保持部69を設けてもよい。つまり、案内部62とガイドスロープ66と壁部68で囲まれた空間である挿入路63と、案内部62とガイドスロープ66と壁部68で囲まれた空間である強度保持部69とを有していてもよい。図6において、強度保持部69は、挿入路63に隣接した片側のみに図示しているが、挿入路63に隣接した両側に設けてもよい。強度保持部69を有することにより、物品収容容器2の強度をより向上させることができる。なお、強度保持部69は、一例として壁面で囲まれた空間部としたが、これに限られることはなく、空間部も樹脂等で埋めた状態の肉厚部としてもよい。強度保持部69を肉厚部とすることにより、より物品収容容器2の強度を向上させることができる。
【0032】
また、第2の係合構造部として、第2容器半体6の前端部がドーム開口方向へ部分的に延設された有孔舌片72(第2係合部)と、第1容器半体4の後端側(薄膜ヒンジ8の反対側)の平坦窪み74内に突設された係合突起76(第2被係合部)とを備える。
【0033】
係合突起76のドーム開口端側には、外向きの傾斜面78が形成されている(図2参照)。第1容器半体4と第2容器半体6の互いの開口端部同士を突き合わせて組み合わせようとすると、有孔舌片72の先端部が傾斜面78で摺接しつつ弾性変形して反り、有孔舌片72の先端部が係合突起76を乗り越えると、係合孔73へ係合突起76が嵌入・係合し係合が完了する。そして、容器が開くのを防ぐ留め具として機能する。
【0034】
第2容器半体6の有孔舌片72より下側の外側面には、係合孔73から繋がるようにして舌片方向に沿った溝75が凹設されている(図1参照)。また、第2容器半体6の有孔舌片72より下側の内側面には、溝75の底部を形成する壁部77が突設されている(図2参照)。
【0035】
係合突起76に外向きの傾斜面78が形成されていることにより、第2係合部が第2被係合部との係合をよりスムーズに行うことができるようになる。つまり、容器閉じ動作の作業性を一層向上させることができる。
【0036】
また、本実施の形態において、案内部を設けていることにより、第1係合部と第1被係合部との係合をスムーズに案内することができる。しかも、その案内自体が、第2係合部を第2被係合部との係合位置に案内することを兼ねる。よって、容器閉じ作業の作業性が向上する。
【0037】
また、第2係合部と第2被係合部との係合位置をヒンジ部の反対側とし、第1係合部と第1被係合部との係合位置をそれらの中間位置とすることで、物品収容容器の開口部全周をほぼ均等に配された複数のポジションで係合させることができる。よって、第1容器半体および第2容器半体の任意の開口端横断方向への弾性変形をより効果的に抑制できる。
【0038】
尚、第1容器半体4の係合突起76近傍には、適宜容器を開けるときの操作箇所を案内する案内表示部80が設けられる(図2参照)。図の例では、消費者が爪を入れるべき箇所と入れる方向とを示す矢印型の浮き出しとして設けられている。また、本実施の形態において、第1容器半体4と第2容器半体6とを組み合わせたとき、薄膜ヒンジ部8が第1容器半体4と第2容器半体6の球の外周からはみ出さないように設けられている。これにより、引っかかり部分が生じず、持つ際に持ちやすく、販売時にも薄膜ヒンジ部8が邪魔になることがない。
【0039】
本実施の形態の物品収容容器によれば、第1係合部と第1被係合部、および、第2係合部と第2被係合部の互い違いで且つ2重の係合により、第1容器半体および前記第2容器半体の任意の開口端横断方向への弾性変形が抑制される。よって、商品の運搬、補充、販売機内での攪拌など様々な場面で、容器を押し潰そうとする力が作用しても、容器自体が変形して容器が開いてしまう事象を防ぐことができる。
【0040】
[容器の開閉についての説明]
次に、物品収容容器2の開閉について説明する。図3は、物品収容容器2の左右・上下断面による縦断面図であって、(1)閉じた状態の後方側を見た断面図、(2)〜(3)容器が閉じる過程におけるガイド突起18周りの拡大図、(4)〜(5)容器が閉じる過程におけるカギ爪部52周りの拡大断面図である。図4は、物品収容容器2の前後・上下断面による縦断面図であって、(1)第1インロー突起部12の一部が第2容器半体6の内側に滑り込んだ容器閉じ動作初期の状態を示す図、(2)容器閉じ動作終了時の状態を示す図、に相当する。
【0041】
容器を閉じる前に、物品収容容器2の第2容器半体6に玩具等の内容物(非図示)を入れる。容器を閉じるには、薄膜ヒンジ8を曲げながらドーム開口端同士を突き合わせるように第1容器半体4を被せる。このとき第1インロー突起部12が先ず最初に第2容器半体6の内側に入り、組み付け位置の位置決め作用を発揮し始める(図4(1))。
【0042】
更に容器閉じ動作を継続すると、次に第1インロー突起部12の切欠部16の開口部にガイド突起18の先端が嵌入する。仮にこのとき第1容器半体4と第2容器半体6のドームの芯が左右方向にズレていたとしても、切欠部16とガイド突起18の嵌合によりズレが修正され芯出しがなされ、組み付け位置の位置決めが補正される(図3(2)〜(3))。従って、更に容器閉じ動作を継続すると、カギ爪部52の爪先端部54が、挿入路63にすんなりと案内される。
【0043】
仮に、カギ爪部52が挿入路63の入口に近接したタイミングで、第1容器半体4と第2容器半体6のドーム型の芯が左右方向にズレていたとしても、爪先端部54の外テーパ部55又は内テーパ部56と、挿入路63の入口のガイドスロープ66との当接により、組み付け位置の位置決めが補正される(図3(4)〜(5))。つまり、カギ爪部52が挿入路63にスムーズに挿入される。カギ爪部52が挿入路63に挿入されると、両者の嵌合により組み付け位置の位置決め効果が更に高まり、第2インロー突起部14を第2容器半体6の内側へスムーズに導き入れる作用をもたらす。
【0044】
第2インロー突起部14が第2容器半体6の内側へ滑り込めば、当該突起部による芯出し作用により、有孔舌片72の係合孔73に係合突起76がスムーズに導かれる(図4(1)〜(2))。このとき、有孔舌片72の先端部が傾斜面78で摺接しつつ反り、有孔舌片72の先端部が係合突起76を乗り越えると、係合孔73へ係合突起76が嵌入・係合して係合が完了する。つまり、傾斜面78により円滑な係合が促進される。その際、係合突起76の端面(図4(2)では下端面)が、壁部77の端面(図4(2)では上端面)に当接して容器閉じ動作の行き過ぎを規制し、係合突起76と係合孔73との相対位置を適切に保つように作用する。
【0045】
物品収容容器2が閉じた状態では、係合孔73と係合突起76との係合による係止作用により閉じた状態が維持される。カギ爪部52の爪先端部54の段差部は、爪かかり部60の開口端64とは、僅かに間隙を有しており近接した状態で係合している。この結果、係合孔73と係合突起76との係合、および、カギ爪部52と爪かかり部60との係合によって、第1容器半体4及び第2容器半体6が互い違いに係合している状態となり、第1容器半体4及び第2容器半体6の任意のドーム開口端横断方向への弾性変形を強固に抑制する。また、インロー部10も第1容器半体4と第2容器半体6との間で弾性変形を相互に作用させて、弾性変形させようとする外力を分散し変形を抑制するように作用する。
【0046】
この様に、本実施形態の物品収容容器2によれば、商品の運搬、補充、販売機内での攪拌など様々な場面で、容器を押し潰そうとする力が作用しても、容器自体が変形することにより容器が開いてしまう事象を防ぐことができる。
【0047】
また、第1容器半体4と第2容器半体6とのドームの「芯出し」「芯合わせ」、つまり組み付けの位置決めが容器閉じ動作の随所で補正されるので、スムーズな容器閉じ作業が可能となり、作業性・生産性を高めることができる。
【0048】
こうした芯出しを効果的に補正する構成は、ヒンジ構造を簡素化し美観を高める点でもメリットを生む。ヒンジ構造自体が十分な強度を有する構成であるならば、当該ヒンジ構造での左右へのブレが小さい。したがって、第1インロー突起部12が第2容器半体6の内側に滑りこみさえすれば、第1容器半体4と第2容器半体6の芯合わせもスムーズに行われるであろう。しかし、ヒンジ構造自体に芯出しに十分な強度を確保させると、ヒンジ構造が大型化したり屈強な間接部を備えることとなり、物品収容容器2を閉じた時に外側にヒンジ構造部が突起状に飛び出たりして楕円球体としての美観を損ねる。また、そうした場合、ヒンジ構造部が不要に消費者の目に付くため、消費者が物品収容容器2を開けようとした場合に最初にヒンジ構造部に目をやり指を持ってゆくことになる。しかし、実際にはそこは容器開け動作をする場所ではなく、消費者に無駄な動作をさせてしまうことにもなる。
【0049】
しかし、本実施形態では上述のように、第1容器半体4と第2容器半体6の芯出しが、容器閉じ動作の随所で補正されるので、薄膜ヒンジ8のように、芯出しに十分な強度をヒンジ構造に持たせなくとも良い。ヒンジ構造が薄く且つ小さくて済むので、容器を閉じてもヒンジ構造部が飛び出ることもなく楕円球体としての高い美観を保つことができる(図4(2)参照)。また、消費者の目を不要に惹き付けることもないので、容器開け動作で上述のような無駄な動作をさせることもない。
【0050】
図5は、容器を開ける時の消費者の動作例を示す図であって、(1)上下・左右面の様子を示す図、(2)上下・前後面の様子を示す図である。
【0051】
物品収容容器2を開けようとした消費者は、案内表示部80を参考にして、有孔舌片72と平坦窪み74との間に指爪を刺し入れて有孔舌片72を外側へ反らせて、有孔舌片72に係る係合を解除する(図5の右手)。このとき、物品収容容器2をしっかり保持しないと、上手く有孔舌片72を反らせる力をかけられない。消費者が大人であれば、一見してどのように物品収容容器2を保持すれば良いか認知し得るが、子供の場合は必ずしも心得があるとは言えない。つまり、上手く物品収容容器2を保持できない場合もあり得る。
【0052】
しかし、本実施形態の物品収容容器2は、カギ爪部52を第1容器半体4の内側位置にずらして設けることで外面に凹部20(図1図2参照)を作り出している。また、爪かかり部60周りについても第2容器半体6の内側に案内部62を設け、挿入路63の開口部を容器外面に貫通させている。つまりは、ここにも凹部が形成されている。
【0053】
これらの凹部は、物品収容容器2を持つときに自然と指に触れ、大人ならずとも容器を保持するための丁度よい指かかり部として感じさせる。つまり、容器を開けようとした時に自然と、これらの凹部を指かかり部として保持するように促す。しかも、これらの凹部は物品収容容器2の楕円球体の左右直径方向に対向するように設けられているため、ここに指をかけて持つと、力の加減で物品収容容器2が滑って抜けると言ったこともなく確実に保持することができる。
【0054】
そして、これらの凹部に指をかけて物品収容容器2を保持すると、それ自体が、物品収容容器2に対して左右方向から挟圧をかけることとなる(図5の左手)。容器を開ける動作において消費者が有孔舌片72を反らせて係合を解除させると(図5の右手)、第1容器半体4及び第2容器半体6が互い違いに係合している状態が解かれ、互いの弾性変形を抑制する力が急減する。結果、挟圧により第1容器半体4及び第2容器半体6が左右方向に狭くなるように弾性変形(前後に細長くなるように変形)する。すると、物品収容容器2は半開きの状態となる。すなわち、物品収容容器2を持つ手(図5の左手)による挟圧は、主に第1容器半体4に作用して第1容器半体4を弾性変形させ、第1容器半体4の第2インロー突起部14が第2容器半体6のドーム開口端部を押し出す力として作用する。この力で、第2容器半体6のドーム開口端部が第2インロー突起部14の外面を滑り、第2容器半体6が自然と第1容器半体4から離間して容器がスムーズに開く。よって、消費者が簡単に物品収容容器を開けられるようになる。
【0055】
また、物品収容容器2を保持する指が凹部20を押す力は、カギ爪部52を容器内側に向けて押すように作用し、爪かかり部60との係合も円滑に解除されることになる。
また、物品収容容器2を保持する際の左右方向からの挟圧がかかっていない状態では、上述した物品収容容器2を開くように促す効果は働かない。すなわち、容器開け動作以外で有孔舌片72に係る係合が不慮に解除された場合には、カギ爪部52と爪かかり部60との係合が作用し、物品収容容器2が開いてしまう事態を確実に防止する。
【0056】
以上、本実施形態を詳細に説明したが、本発明が適用可能な形態は上述した実施形態に限られるものではない。
例えば、インロー部10を第1容器半体4に設けるとして説明したが、第2容器半体6に設けるとしても良い。その場合、ガイド突起18は第1容器半体4に、切欠部16は第2容器半体6に設けることとなる。
また、第1容器半体4に、カギ爪部52を2箇所設けるとして説明したが、この数は任意である。1箇所のみとしてもよいし、4箇所としてもよい。好適な位置としては、薄膜ヒンジ8と当該薄膜ヒンジ8の反対側との中間である。勿論、対となる爪かかり部60、案内部62、及びガイドスロープ66は、カギ爪部52に対応する位置に設けることとなる。
また、ガイド突起18を2箇所設けることとして説明したが、この3以上としてもよいし、1箇所のみとしてもよい。勿論、対となる切欠部16は、ガイド突起18に対応する位置に同数設けることとなる。
【符号の説明】
【0057】
2…物品収容容器、4…第1容器半体、6…第2容器半体、8…薄膜ヒンジ、10…インロー部、12…第1インロー突起部、14…第2インロー突起部、16…切欠部、18…ガイド突起、20…凹部、52…カギ爪部(第1係合部)、53…爪胴部、54…爪先端部、55…外テーパ部、56…内テーパ部、60…爪かかり部(第1被係合部)、62…案内部、63…挿入路、66…ガイドスロープ、72…有孔舌片(第2係合部)、73…係合孔、75…溝、76…係合突起(第2被係合部)、77…壁部、80…案内表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6