(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体の流路となる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を有するハニカム基材と、前記ハニカム基材の外周に配設された、複数のフランジセルを区画形成する多孔質のフランジ隔壁を有するフランジ部とを備え、
前記ハニカム基材のセルの延びる方向と前記フランジセルの延びる方向とが、同じ方向であり、
前記フランジ部が、前記ハニカム基材の外周から外側に突き出るように形成されたものであり、
前記隔壁と前記フランジ隔壁とが、内部において境界が形成されずに連続的に繋がっており、
前記フランジ部が、前記フランジセルの延びる方向における両端面における前記フランジセルの開口部に配設されたフランジ目封止部を有し、
前記フランジ部における最も内側に位置する前記フランジ目封止部の、前記フランジセルの延びる方向における長さが1.0〜2.5mmであり、前記フランジ部における最も外側に位置する前記フランジ目封止部の、前記フランジセルの延びる方向における長さが3.0mm以上であり、
前記フランジ部の最も内側に位置する前記フランジ目封止部は、前記フランジ部の一方の端面側及び他方の他面側に互いに離間して配置されている集塵用ハニカムフィルタ。
前記フランジ部における最も外側に位置する前記フランジ目封止部の、前記フランジセルの延びる方向における長さが7.0mm以下である請求項1に記載の集塵用ハニカムフィルタ。
前記フランジ目封止部の、前記フランジセルの延びる方向における長さが、前記フランジ部における内側に位置する前記フランジ目封止部ほど短くなっている請求項1又は2に記載の集塵用ハニカムフィルタ。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0021】
(1)集塵用ハニカムフィルタ:
本発明の集塵用ハニカムフィルタの一実施形態は、
図1〜
図4に示すように、ハニカム基材3と、ハニカム基材3の外周4に配設されたフランジ部23とを備えるものである。ハニカム基材3は、流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するものである。フランジ部23は、複数のフランジセル22を区画形成する多孔質のフランジ隔壁21を有するものである。そして、ハニカム基材3のセル2の延びる方向D1とフランジセル22の延びる方向D2とが、同じ方向である。そして、フランジ部23は、ハニカム基材3の外周4から外側に突き出るように形成されたものである。そして、隔壁1とフランジ隔壁21とが、内部において境界が形成されずに連続的に繋がっている。そして、フランジ部23が、フランジセル22の延びる方向D2における両端面(フランジ部の端面25,25)におけるフランジセルの開口部に配設されたフランジ目封止部24を有する。そして、フランジ部23における最も内側に位置するフランジ目封止部24aの、フランジセル22の延びる方向D2における長さが1.0〜2.5mmである。そして、フランジ部23における最も外側に位置するフランジ目封止部24bの、フランジセル22の延びる方向D2における長さが3.0mm以上である。
【0022】
図1は、本発明の集塵用ハニカムフィルタの一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2は、本発明の集塵用ハニカムフィルタの一実施形態を模式的に示す平面図である。
図3は、本発明の集塵用ハニカムフィルタの一実施形態を模式的に示す正面図である。
図4は、本発明の集塵用ハニカムフィルタの一実施形態の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式図である。
【0023】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100は、上記のような構成である。そのため、集塵用ハニカムフィルタ100は、「ハンドリングする際、集塵用ハニカムフィルタ100をコンベアで移動する際など」において、フランジ部23同士の衝突や接触、他の物体との衝突や接触などによる、欠けや、割れの発生を防止することができる。これは、特に、フランジ部23における最も外側に位置するフランジ目封止部24bの、フランジセル22の延びる方向D2における長さが3.0mm以上と長く、衝突等に強い構造になっているからである。また、本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100は、DPFとして用いることができるが、その場合、再生時の熱衝撃による集塵用ハニカムフィルタ100のフランジ部23の付け根部分のクラック発生を、防止することができる。これは、特に、フランジ部23の最も内側に位置するフランジ目封止部24aの、フランジセル22の延びる方向D2の長さが1.0〜2.5mmの範囲であるため、ハニカム基材の最外周と、フランジ部の最も内側の部分との、温度差がつきにくいからである。
【0024】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100において、ハニカム基材3は、流体の流路となる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有するものである。ハニカム基材3の材質は、コージェライト、炭化珪素、ムライト、アルミニウムチタネート、ゼオライト、バナジウム及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種を主成分とすることが好ましい。また、ハニカム基材の材質は、コージェライト、炭化珪素、ムライト、アルミニウムチタネート、ゼオライト、バナジウム及びアルミナからなる群より選択される少なくとも一種である(不可避的に含有される不純物は含んでもよい)ことが更に好ましい。ここで、「主成分」は、全体の中の50質量%を超える成分を意味する。
【0025】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100において、隔壁1の平均細孔径は、5〜100μmが好ましく、8〜50μmが特に好ましい。平均細孔径が5μmより小さいと、圧力損失が大きくなることがある。平均細孔径が100μmより大きいと、集塵用ハニカムフィルタの強度が低くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0026】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100において、隔壁1の気孔率は、30〜80%が好ましく、35〜75%が特に好ましい。気孔率が30%より小さいと、圧力損失が大きくなることがある。気孔率が80%より大きいと、集塵用ハニカムフィルタ100の強度が低くなることがある。気孔率は、水銀ポロシメータによって測定した値である。
【0027】
隔壁1の厚さは、40〜600μmであることが好ましく、150〜400μmであることが特に好ましい。40μmより薄いと、集塵用ハニカムフィルタ100の強度が低くなることがある。600μmより厚いと、圧力損失が高くなることがある。
【0028】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100において、ハニカム基材3の形状は、特に限定されない。ハニカム基材3の形状としては、円筒形状、端面が楕円形の筒形状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角形の筒形状、等が好ましい。
図1〜
図4に示す集塵用ハニカムフィルタ100においては、ハニカム基材3の形状は円筒形状である。
【0029】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100において、ハニカム基材3のセル形状(セルが延びる方向に直交する断面におけるセル形状)としては、特に制限はない。セル形状としては、三角形、四角形、六角形、八角形、円形、あるいはこれらの組合せを挙げることができる。四角形のなかでは、正方形又は長方形が好ましい。
【0030】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100において、ハニカム基材3のセル密度については、特に制限はない。ハニカム基材3のセル密度は、15〜200セル/cm
2であることが好ましく、30〜100セル/cm
2であることが特に好ましい。セル密度が、15セル/cm
2より低いと、排ガスを流通させたときに、短時間で圧力損失が大きくなったり、集塵用ハニカムフィルタ100の強度が低くなったりすることがある。セル密度が200セル/cm
2より高いと、圧力損失が大きくなることがある。
【0031】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100は、ハニカム基材3が、少なくとも一部のセル2の開口部に配設された目封止部を有するものである。更に具体的には、本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100は、一方の端面における所定のセル(第1のセル)の開口部及び他方の端面における残余のセル(第2のセル)の開口部に配設された目封止部5を備えている。そして、上記第1のセルと上記第2のセルとは、交互に並んでいる。そして、それによって、集塵用ハニカムフィルタの両端面に、目封止部5と「セルの開口部」とにより、市松模様が形成されている。目封止部5の材質は、ハニカム基材(隔壁)の材質として好ましいとされた材質であることが好ましい。目封止部5の材質とハニカム基材の材質とは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0032】
本発明の集塵用ハニカムフィルタは、ハニカム基材の一部のセルの「流体の入り口側の」開口部に、目封止部が配設されたものであってもよい。また、本発明の集塵用ハニカムフィルタは、ハニカム基材の一部のセルの「流体の出口側の」開口部に、目封止部が配設されたものであってもよい。また、本発明の集塵用ハニカムフィルタは、目封止部が形成されていなくても良い。目封止部が無いか或いは数が少ない場合、捕集効率が低下することがあるが、圧力損失が低くなるためエンジン出力がアップするという点で好ましい。
【0033】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100は、ハニカム基材3の外周4に配設された、複数のフランジセル22を区画形成する多孔質のフランジ隔壁21を有するフランジ部23を備えるものである。そして、フランジ部23は、ハニカム基材3の外周4から外側に突き出た形状である。また、本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100において、フランジ部23の外形は、円板(円柱)の中央部分がくりぬかれた形状ということもできる。フランジ部23は、
図1〜4に示されるように、ハニカム基材3の外周4の周方向に延びるリング状(連続的なリング形状)に形成されていることが好ましいが、リング形状の一部が欠落した「断続的なリング形状」に形成されていることも好ましい態様である。
【0034】
フランジ部23は、フランジセル22の延びる方向D2における両端面(一方の「フランジ部の端面25」及び他方の「フランジ部の端面25」)における「フランジセル22の開口部」に配設されたフランジ目封止部24を有する。そして、フランジ部23における最も内側に位置するフランジ目封止部24aの、フランジセル22の延びる方向D2における長さが1.0〜2.5mmである。フランジ目封止部24aの、フランジセル22の延びる方向D2における長さが1.0mm未満であると、フランジ目封止部24aが振動などによって使用中に脱落しやすくなるため、好ましくない。2.5mmを超えると、集塵用ハニカムフィルタ100をDPFとして用いた場合に、再生時の熱衝撃による集塵用ハニカムフィルタ100のフランジ部23の付け根部分にクラックが発生するため好ましくない。
【0035】
また、フランジ部23における最も外側に位置するフランジ目封止部24bの、フランジセル22の延びる方向D2における長さが3.0mm以上である。そして、フランジ目封止部24bの、フランジセル22の延びる方向D2における長さは、3.0〜7.0mmが好ましい。フランジ目封止部24bの、フランジセル22の延びる方向D2における長さが3.0mm未満であると、フランジ部23同士の衝突や接触、フランジ部23と他の物体との衝突や接触などにより、欠けや、割れが発生するため好ましくない。また、フランジ目封止部24bの、フランジセル22の延びる方向D2における長さが7.0mmを超えると、フランジ目封止部の形成に長時間を要することがある。
【0036】
フランジ目封止部24の、フランジセル22の延びる方向D2における長さ(フランジ目封止部長さ)が、フランジ部23における内側に位置するフランジ目封止部24ほど短くなっていることが好ましい。つまり、フランジ部23における最も外側に位置するフランジ目封止部24bから最も内側に位置するフランジ目封止部24aに向かって、フランジ目封止部長さが、順次、段階的に減少することが好ましい。これにより、衝撃力や熱応力を分散させることができ、耐衝撃性、耐熱性を向上させることができる。
【0037】
フランジ部23における最も外側に位置するフランジ目封止部24bの、「方向D2」における長さは、フランジ部23における最も内側に位置するフランジ目封止部24aの、「方向D2」における長さより1mm以上長いことが好ましい。また、集塵用ハニカムフィルタをDPFとして用いる場合、ハニカム基材3の目封止部の「方向D1」における長さは、フランジ部のフランジ目封止部の「方向D2」における長さの最も長い値より、1.5mm以上長いことが好ましい。
【0038】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100においては、ハニカム基材3のセル2の延びる方向D1と、フランジセル22の延びる方向D2とが、同じ方向である。また、隔壁とフランジ隔壁とが、内部において境界が形成されずに連続的に繋がっている(以下、この状態を「隔壁とフランジ隔壁との連続的な繋がり」と記す場合がある)。これは、隔壁とフランジ隔壁とが繋がっている部分の断面(隔壁からフランジ隔壁に向かう方向に平行な断面)において、隔壁とフランジ隔壁との間に境界がなく、隔壁からフランジ隔壁にかけて、材質として一様な状態であることを意味する。つまり、ハニカム基材3内における隔壁同士が繋がる状態と、隔壁とフランジ隔壁とが繋がる状態とが同じであり、いずれも連続的に繋がり、境界が形成されていないということができる。また、上記のような「隔壁とフランジ隔壁との連続的な繋がり」により、隔壁とフランジ隔壁とが一体的に形成されているということもできる。例えば、まず、押出成形により成形原料からハニカム成形体を形成するときに、隔壁になる部分とフランジ隔壁になる部分とを含むハニカム成形体を形成する。そして、乾燥後又は焼成後に、研削加工を施すことにより、ハニカム基材(隔壁)及びフランジ部(フランジ隔壁)を形成することにより、上記のような「隔壁とフランジ隔壁との連続的な繋がり」を形成することができる。
【0039】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100においては、フランジ部23とハニカム基材3のそれぞれのセル構造が同じであることが好ましい。ここで、セル構造とは、セル密度(セル/cm
2)、隔壁厚さ(μm)、及びセル形状(セルの延びる方向に直交する断面形状)のことを意味する。フランジ部23とハニカム基材3のそれぞれのセル構造が同じであると、フランジ部23とハニカム基材3に相当する部分を含むハニカム成形体を押出成形によって形成し、所定の箇所を研削除去することにより集塵用ハニカムフィルタを作製することができる。そのため、集塵用ハニカムフィルタを容易に製造することができる。
【0040】
フランジ部23の、セル2の延びる方向に直交する断面における厚さ(フランジ部の厚さ=直径方向の長さ)Hは、1〜30mmであり、3〜25mmであることが好ましく、5〜20mmであることが特に好ましい。フランジ部23の、セル2の延びる方向に直交する断面における厚さHが1mm未満であると、フランジ部が薄いため、強度が低下することがある。30mm超であると、配管に組み付け難くなったり、ハンドリングし難くなったりすることがある。尚、集塵用ハニカムフィルタ100に外周コート壁が配設されている場合、「フランジ部23の、セル2の延びる方向に直交する断面における厚さH」は、外周コート壁の表面の位置を基準にした厚さである。
【0041】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ100において、フランジ部23は、セル2の延びる方向における両端面(25,25)が、セル2の延びる方向に直交するものである。このように、フランジ部の端面25,25が、セル2の延びる方向に直交するため、集塵用ハニカムフィルタ100を流体の流路に固定し易く、更に、人手やロボットによってフランジ部23を容易に掴むことができる。また、フランジ部は、セルの延びる方向における両端面がセルの延びる方向と
直交せず、セルの延びる方向における両端面(両端部)が、先端ほど直径が小さくなるテーパー状であってもよい。フランジ部のセルの延びる方向における両端面(両端部)が、テーパー状であることにより、フランジ部の角部(端面と側面とが接する部分)の破損を抑制することができる。
【0042】
ハニカム基材の中心軸を含む平面において、フランジ部の端面とハニカム基材の側面との角度θは、90〜150°が好ましく、90〜140°が更に好ましく、90〜135°が特に好ましい。更に、90〜130°が最も好ましい。尚、フランジ部の端面とハニカム基材の側面との角度θは、フランジ部の端面が、セルの延びる方向に直交する場合、90°である。
【0043】
フランジ部23の幅Lは、集塵用ハニカムフィルタ100のセルの延びる方向の長さの1〜90%であることが好ましく、3〜50%であることが更に好ましく、5〜30%であることが特に好ましい。「フランジ部の幅L」は、フランジ部の、集塵用ハニカムフィルタ100のセルの延びる方向における長さである。フランジ部23の幅Lが上記範囲であることにより、限られた集塵機内のスペースに、集塵用ハニカムフィルタ100を良好に固定することができる。また、フランジ部23が、大き過ぎないため、集塵用ハニカムフィルタ100を軽量化できる。フランジ部23の幅Lが1%未満であると、フランジ部の強度が低下することがある。90%超であると、集塵用ハニカムフィルタ100が大型化して、限られた集塵機内のスペースに、集塵用ハニカムフィルタ100を良好に固定することができなくなるおそれがある。尚、フランジ部の端部がテーパー状である場合、「フランジ部の幅L」は、
図9に示すように、テーパー状の両端部の、両先端の間の距離である。尚、集塵用ハニカムフィルタ100に外周コート壁が配設されている場合、フランジ部23の幅Lは、外周コート壁の表面の位置を基準にした厚さである。
【0044】
フランジ部23は、セル2の延びる方向において、ハニカム基材3のどの位置に配置されていてもよい。例えば、ハニカム基材3の中央部に配設してもよいし、端部に配設してもよいし、
図1に示されるように、ハニカム基材3の中央部と端部との間に配設してもよい。尚、ハニカム基材の中央部は、ハニカム基材の、セルが延びる方向における中央部のことである。
【0045】
図5に示すように、フランジ部23は、中心軸を含む断面において、外側(フランジ部の外周側)の角部が曲線状(R状)であることが好ましい。このような角部を、R状角部26と称する。R状角部26は、円弧状であることが好ましい。そして、R状角部26の円弧の半径は、0.2〜10mmであることが好ましい。R状角部26を有することにより、応力集中を抑制することができ、集塵用ハニカムフィルタの破損を抑制することができる。
【0046】
また、
図5に示すように、フランジ部23は、中心軸を含む断面において、内側(フランジ部の内周側であり、ハニカム基材に繋がっている側)のハニカム基材に繋がる部分が、曲線状に広がった形状であることが好ましい。フランジ部23のこの部分を曲線状裾野部27と称する。曲線状裾野部27は、円弧状であることが好ましい。そして、曲線状裾野部27の円弧の半径は、0.2〜10mmであることが好ましい。曲線状裾野部27を有することにより、応力集中を抑制することができ、集塵用ハニカムフィルタの破損を抑制することができる。
図5に示される集塵用ハニカムフィルタ200は、本発明の集塵用ハニカムフィルタの他の実施形態である。本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ200は、フランジ部23の上記形状以外は、上述した本発明の集塵用ハニカムフィルタの一実施形態と同じ構成であることが好ましい。
【0047】
また、
図6に示すように、フランジ部23は、中心軸を含む断面において、外側(フランジ部の外周側)の角部が直線状に面取りされていることが好ましい。このような角部を、直線状角部28と称する。直線状角部28を有することにより、応力集中を抑制することができ、集塵用ハニカムフィルタの破損を抑制することができる。
図6に示される集塵用ハニカムフィルタ300は、本発明の集塵用ハニカムフィルタの更に他の実施形態である。本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ300は、フランジ部23の上記形状以外は、上述した本発明の集塵用ハニカムフィルタの一実施形態と同じ構成であることが好ましい。
【0048】
また、
図6に示すように、フランジ部23は、中心軸を含む断面において、内側(フランジ部の内周側であり、ハニカム基材に繋がっている側)のハニカム基材に繋がる部分が、直線状に広がった形状であることが好ましい。フランジ部23のこの部分を直線状裾野部29と称する。直線状裾野部29を有することにより、応力集中を抑制することができ、集塵用ハニカムフィルタの破損を抑制することができる。
【0049】
集塵用ハニカムフィルタ100は、ハニカム基材3の外周及びフランジ部23の表面に、外周コート壁6を備えることが好ましい。外周コート壁6の厚さは、0.05〜3.0mmが好ましく、0.1〜2.5mmが更に好ましく、0.2〜2.0mmが特に好ましい。0.05mmより薄いと、外周コート壁が薄くなり過ぎて、外周コートハニカム構造体の機械的強度が低下することがある。3.0mmより厚いと、外周コート壁が過剰に厚くなり、例えば、濾過層や触媒担体として実質的に機能するハニカム構造体の大きさに比して、外周コートハニカム構造体が大きくなり過ぎてしまうことがある。
【0050】
外周コート壁6の材質は、「無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料」や「後述する目封止材料と同一のもの」に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに、水を加えて混練したもの等が好ましい。外周コート壁6の材質と、フランジ目封止部24の材質とが、同じ材質であることがより好ましい。更に、外周コート壁6の一部がフランジセル内に突き出した(挿入された)構造になっており、当該フランジセル内に挿入された部分が、フランジ目封止部24であることも好ましい態様である。
【0051】
本発明の集塵用ハニカムフィルタの更に他の実施形態は、
図7に示されるような、セグメント型の集塵用ハニカムフィルタ400である。つまり、本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ400は、ハニカムセグメント基材32及びハニカムセグメント基材32の側面に配設されたフランジセグメント42を有するハニカムセグメント35を、複数個備えた、集塵用ハニカムフィルタ400である。ハニカムセグメント基材32が複数個接合された部分がハニカム基材33である。また、フランジセグメント42が複数個接合された部分がフランジ部43である。尚、
図7に示されるセグメント型の集塵用ハニカムフィルタ400は、外周コート壁を備えていないが、外周コート壁を備えていることも好ましい態様である。
【0052】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ400は、複数のハニカムセグメント35が接合された形状になっていること以外は、上述した本発明の集塵用ハニカムフィルタの一実施形態(集塵用ハニカムフィルタ100(
図1))と同様の構成であることが好ましい。本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ400においても、ハニカムセグメント基材32の隔壁とフランジセグメント42の隔壁(フランジ隔壁)とは、内部において境界が形成されずに連続的に繋がっている。そのため、ハニカム基材33とフランジ部43との繋がりにおいても、隔壁とフランジ隔壁とは、内部において境界が形成されずに連続的に繋がっている。
【0053】
本実施形態の集塵用ハニカムフィルタ400においては、ハニカムセグメント35同士が接合材36によって接合されている。接合材36の厚さは、0.05〜3.0mmが好ましい。また、接合材36の材質は、特に限定されないが、セラミックであることが好ましく、ハニカムセグメント基材32の材質と同じであることが更に好ましい。
【0054】
(2)集塵用ハニカムフィルタの製造方法:
本発明の集塵用ハニカムフィルタは、以下の方法で製造することができる。即ち、本発明の集塵用ハニカムフィルタは、ハニカム焼成体を作製するハニカム焼成体作製工程と、このハニカム焼成体の外周部を切削してフランジ部を形成する切削工程とを有する方法により製造することができる。更に、外周コート壁を備える場合には、ハニカム焼成体の外周部を切削した後に、外周コート壁形成工程を有することが好ましい。「ハニカム焼成体」は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する、セラミック原料が焼成されて形成された多孔質の隔壁を備えるハニカム焼成体である。
【0055】
以下、本発明の集塵用ハニカムフィルタの製造方法について、工程毎に説明する。
【0056】
(2−1)ハニカム焼成体作製工程;
ハニカム焼成体作製工程は、セラミック原料が焼成されて形成された多孔質の隔壁を備えたハニカム焼成体を作製する工程である。ハニカム焼成体を作製する方法は、特に限定されない。以下、ハニカム焼成体作製工程を、段階的に工程に分けて説明する。
【0057】
(2−1−1)成形工程;
まず、成形工程において、セラミック原料を含有するセラミック成形原料を成形して、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁(未焼成)を備えるハニカム成形体を形成することが好ましい。ハニカム成形体は、ハニカム構造の成形体である。
【0058】
セラミック成形原料に含有されるセラミック原料としては、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素−炭化珪素系複合材料、ムライト、チタン酸アルミニウム、ゼオライト、バナジウムからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。尚、コージェライト化原料とは、シリカが42〜56質量%、アルミナが30〜45質量%、マグネシアが12〜16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミック原料である。そして、コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
【0059】
また、セラミック成形原料は、上記セラミック原料に、分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤等を混合して調製することが好ましい。各原料の組成比は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の構造、材質等に合わせた組成比とすることが好ましい。
【0060】
セラミック成形原料を成形する際には、まずセラミック成形原料を混練して坏土とし、得られた坏土をハニカム形状に成形することが好ましい。セラミック成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。坏土を成形してハニカム成形体を形成する方法としては特に制限はなく、押出成形、射出成形等の公知の成形方法を用いることができる。例えば、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有するハニカム成形体が形成される「口金」を用いて押出成形してハニカム成形体を形成する方法等を好適例として挙げることができる。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。
【0061】
ハニカム成形体の形状としては、円柱状、楕円状、端面が「正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形等」の多角柱状、等を挙げることができる。
【0062】
また、上記成形後に、得られたハニカム成形体を乾燥してもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではない。例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができる。これらのなかでも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。
【0063】
(2−1−2)焼成工程;
次に、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を作製する。
【0064】
ハニカム成形体を焼成(本焼成)する前に、ハニカム成形体を仮焼することが好ましい。仮焼は、脱脂のために行うものである。ハニカム成形体を仮焼する方法は、特に限定されるものではなく、有機物(有機バインダ、界面活性剤、造孔材等)を除去することができればよい。一般に、有機バインダの燃焼温度は100〜300℃程度、造孔材の燃焼温度は200〜800℃程度である。そのため、仮焼の条件としては、酸化雰囲気において、200〜1000℃程度で、3〜100時間程度加熱することが好ましい。
【0065】
ハニカム成形体の焼成(本焼成)は、仮焼したハニカム成形体を構成する成形原料を焼結させて緻密化し、所定の強度を確保するために行われる。焼成条件(温度、時間、雰囲気等)は、成形原料の種類により異なるため、その種類に応じて適当な条件を選択すればよい。例えば、コージェライト化原料を使用している場合には、焼成温度は、1410〜1440℃が好ましい。また、焼成時間は、最高温度でのキープ時間として、4〜8時間が好ましい。仮焼、本焼成を行う装置としては、特に限定されないが、電気炉、ガス炉等を用いることができる。
【0066】
(2−2)切削工程;
切削工程は、ハニカム焼成体の外周部を切削し、フランジ部を形成する工程である。ハニカム焼成体の外周を切削することにより、ハニカム基材及びフランジ部の形状を造る。つまり、押出成形により「成形原料が連続的に繋がった状態で形成されたハニカム成形体」を作製し、そのハニカム成形体を焼成して得られたハニカム焼成体を切削加工することによりハニカム基材及びフランジ部を形成している。そのため、隔壁とフランジ隔壁とが、内部において境界が形成されずに連続的に繋がったものとなる。
【0067】
ハニカム焼成体を切削する方法は特に限定されない。ハニカム焼成体の外周部を切削する方法としては、従来公知の方法を適宜採用できるが、ハニカム焼成体を回転させながら、ダイヤモンドをまぶした砥石を、押し当てる手法が好ましい。切削工程において「切削される、ハニカム焼成体の外周部」の厚さは、切削後に形成されるフランジ部の厚さと同じになる。
【0068】
尚、切削は、ハニカム成形体の焼成前後のいずれでもよいが、焼成後に行うことが好ましい。焼成後に切削することにより、焼成によってハニカム焼成体が変形した場合でも、ハニカム焼成体の形状を切削によって整えることが可能となる。
【0069】
(2−3)目封止工程;
目封止部を備えるハニカム焼成体を作製する場合には、切削工程の後に、下記目封止工程を行うことが好ましい。この目封止工程において、ハニカム焼成体の、一方の端面における「所定のセル」の開口部及び他方の端面における「残余のセル」の開口部に、目封止部を配設する。以下に具体的に説明する。
【0070】
まず、ハニカム焼成体(ハニカム基材)の一方の端面のセル開口部に目封止材料を充填する。一方の端面のセル開口部に目封止材料を充填する方法としては、マスキング工程と圧入工程とを有する方法が好ましい。マスキング工程は、ハニカム焼成体の一方の端面にシートを貼り付け、シートにおける、「目封止部を形成しようとするセル」と重なる位置に孔を開ける工程である。圧入工程は、「ハニカム焼成体の、シートが貼り付けられた側の端部」を目封止材料が貯留された容器内に圧入して、目封止材料をハニカム焼成体のセル内に圧入する工程である。目封止材料をハニカム焼成体のセル内に圧入する際には、目封止材料は、シートに形成された孔を通過し、シートに形成された孔と連通するセルのみに充填される。
【0071】
目封止材料は、上記セラミック成形原料の構成要素として挙げた原料を適宜混合して作製することができる。目封止材料に含有されるセラミック原料としては、隔壁の原料として用いるセラミック原料と同じであることが好ましい。
【0072】
次に、ハニカム焼成体に充填された目封止材料を乾燥させることが好ましい。
【0073】
ハニカム焼成体の一方の端面において、目封止部が形成されたセルと目封止部が形成されていないセルとが交互に並ぶことが好ましい。この場合、目封止部が形成された一方の端面において、目封止部と「セルの開口部」とにより市松模様が形成されることになる。
【0074】
次に、ハニカム焼成体の、他方の端面における「残余のセル」の開口部に、一方の端面の場合と同様にして、目封止部を配設することが好ましい。尚、目封止材料の乾燥は、ハニカム焼成体の両端面において、目封止材料を充填した後に、行ってもよい。また、ハニカム成形体に目封止材料を充填した後に焼成工程を行ってもよい。
【0075】
(2−4)外周コート壁形成工程;
切削されたハニカム焼成体の外周(ハニカム基材の側面及びフランジ部の表面)に、外周コート材を塗布して外周コート壁を形成し、集塵用ハニカムフィルタを作製することが好ましい。外周コート壁を形成することにより、フランジ部が欠けてしまうことを防止できる。外周コート材としては、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子等の無機原料や目封止材料と同一のものに、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等の添加材を加えたものに水を加えて混練したものなどを挙げることができる。外周コート材を塗布する方法は、「切削されたハニカム焼成体」をろくろ上で回転させながらゴムヘラなどでコーティングする方法等を挙げることができる。
【0076】
また、外周コート材を塗布した後に、フランジ部のフランジセルの開口部上に塗布された外周コート材を、ヘラ等を用いて押圧することにより、フランジセルの開口部内に押し込んで、フランジ目封止部を形成することが好ましい。この場合、フランジセルの開口部内に押し込む分だけ、フランジ部の端面(フランジセルの延びる方向における端面)上に外周コート材を厚く塗布することが好ましい。このとき、フランジ部の端面に塗工するコート材の厚さと、ヘラ等による押圧の大きさを調整することによって、フランジ目封止部の長さ(フランジセルの延びる方向における長さ)を調整することができる。
【0077】
本発明の集塵用ハニカムフィルタが、
図7に示されるような、セグメント型の集塵用ハニカムフィルタ400である場合、以下のようにして集塵用ハニカムフィルタを作製することが好ましい。まず、複数のハニカムセグメント焼成体を作製し、
図8に示されるように、得られた複数のハニカムセグメント焼成体12を接合材13で接合して、ハニカムセグメント接合体11を得ることが好ましい。そして、ハニカムセグメント接合体11の外周を切削加工することによりハニカム基材及びフランジ部を形成し、目封止部を形成して集塵用ハニカムフィルタを作製することが好ましい。また、切削加工され、目封止部が形成されたハニカムセグメント接合体に、外周コート材を塗布して外周コート壁を形成し、集塵用ハニカムフィルタとすることも好ましい態様である。また、外周コート材を塗布した後に、フランジ部のフランジセルの開口部上に塗布された外周コート材をフランジセルの開口部内に押し込んで、フランジ目封止部を形成することが好ましい。
図8は、本発明の集塵用ハニカムフィルタを製造する方法において、製造過程で作製されるハニカムセグメント接合体を模式的に示す斜視図である。
【0078】
ハニカムセグメント焼成体は、上述した「ハニカム焼成体」を作製する方法で作製することができる。また、接合材13の材質は、特に限定されないが、無機繊維、コロイダルシリカ、粘土、SiC粒子やコージェライト粒子などのセラミック粒子に、有機バインダ、発泡樹脂、分散剤等を加え、更に水を加えて混練したスラリー等が好ましい。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を、実施例により更に具体的に説明する。本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0080】
(実施例1)
セラミック原料としてコージェライト化原料を用いて集塵用ハニカムフィルタを作製した。まず、コージェライト化原料100質量部に、分散媒である水を25質量部、造孔材であるコークスを10質量部、有機バインダを5質量部添加して、成形原料を得た。コージェライト化原料として、シリカ、タルク、及びアルミナを使用した。有機バインダとしてはメチルセルロースを使用した。そして、成形原料を、混合、混練して円柱状の坏土を調製した。混合装置としては、レーディゲミキサーを使用し、混練装置としてはニーダー及び真空土練機を使用した。
【0081】
得られた坏土を押出成形して、円柱状のハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を、マイクロ波乾燥した。
【0082】
乾燥させたハニカム成形体を、最高温度1420℃、100時間の条件で焼成してハニカム焼成体を得た。
【0083】
次に、得られた円柱状のハニカム焼成体の外周部分を、ハニカム基材及びフランジ部が形成されるように切削した。これにより、ハニカム基材とフランジ部とが形成された。ハニカム焼成体の外周部分を切削する方法としては、ハニカム焼成体を回転させながら、ダイヤモンドをまぶした砥石を、ハニカム焼成体の外周部に押しあてる方法とした。
【0084】
得られたハニカム焼成体のハニカム基材について、所定のセルの一方の端部と、残余のセルの他方の端部とに目封止部を形成した。尚、所定のセルと残余のセルとは、交互に(互い違いに)並ぶようにして、両端面に、セルの開口部と目封止部とにより市松模様が形成されるようにした。目封止用の充填材には、ハニカム焼成体と同様の原料を用いた。
【0085】
その後、切削されたハニカム焼成体の外周(ハニカム基材の側面、及びフランジ部の表面)に、外周コート材を塗布して外周コート壁を形成し、集塵用ハニカムフィルタを得た。外周コート壁を形成する際に、フランジ部の端面をヘラで押して、外周コート材をフランジセル内に押し込み、フランジ目封止部を形成した。
【0086】
得られた集塵用ハニカムフィルタのハニカム基材は、セルの延びる方向に直交する断面における直径が160mm、セルの延びる方向における長さが210mmの円柱状であった。また、ハニカム基材の一方の端面と、当該ハニカム基材の一方の端面と同じ方向を向くフランジ部の端面との距離(ハニカム基材の一方の端面を基準とする、フランジ部が形成された位置)Xは、65mmであった。フランジ部の、フランジセルの延びる方向における長さ(フランジ部の幅)Lが、20mmであった。フランジ部23の、セルの延びる方向に直交する断面における厚さ(フランジ部の厚さ;直径方向の長さ)H(
図3を参照)は、10mmであった。また、隔壁厚さ及びフランジ隔壁厚さは、いずれも180μmであった。また、セル密度及びフランジセル密度は、いずれも62セル/cm
2であった。また、ハニカム基材に形成された目封止部の、セルの延びる方向における長さは、2.5mmであった。また、ハニカム基材のセルの、セルの延びる方向に直交する断面の形状は、正方形であった。また、フランジ部における最も外側に位置するフランジ目封止部の、フランジセルの延びる方向における長さ(「フランジ外周部」の「目封止部厚さ」)は3.0mmであった。また、フランジ部における最も内側に位置するフランジ目封止部の、フランジセルの延びる方向における長さ(「フランジ内周部」の「目封止部厚さ」)は1.0mmであった。また、フランジ部におけるフランジ目封止部の「フランジセルの延びる方向における」長さは、フランジ外周部に近いほど長いものであった。また、隔壁とフランジ隔壁とは、内部において境界が形成されずに連続的に繋がったものであった。尚、フランジ部の端部がテーパー状である場合、距離Xは、
図9に示すように、ハニカム基材の一方の端面と、当該「ハニカム基材の一方の端面」側の「フランジ部の端面」とハニカム基材の外周との交点との、距離である。
【0087】
得られた集塵用ハニカムフィルタについて、以下に示す方法で、「スートマスリミット試験」及び「衝突試験」を行った。結果を表1に示す。
【0088】
表1において、「H」の欄は、フランジ部23の、セルの延びる方向に直交する断面における厚さ(mm)を示す。「L」の欄は、フランジ部の、フランジセルの延びる方向における長さ(mm)を示す。「α」の欄は、フランジ部の端面の傾斜角(°)を示す。αは、ハニカム基材の一方の端面側と他方の端面側の両方において同じ角度としたが、異なる角度としても良い。また、「目封止部厚さ」の「フランジ外周部」の欄において、数値の横に「(全長)」と記載されているものについては、「フランジ外周部」においてフランジセルの全長に亘って目封止部が配設されている(詰まっている)ことを意味する。つまり、「フランジ外周部」のフランジセルの両端部(フランジセルの延びる方向における両端部)に形成された目封止部の厚さが、それぞれ「フランジ外周部」の長さの0.5倍の厚さであることを意味する。そして、「フランジ外周部」のフランジセルの両端部のそれぞれの目封止部が、フランジセル内で繋がった状態になっていることを意味する。
【0089】
(スートマスリミット試験)
集塵用ハニカムフィルタに煤(スート)を堆積させて再生(煤の燃焼)する操作を、煤の堆積量を増加させながら繰り返し行い、クラックが発生する煤量を確認する。まず、得られた集塵用ハニカムフィルタの外周に、把持材としてセラミック製の非熱膨張性マットを巻き、ステンレス鋼(SUS409)製のキャニング用缶体に押し込んで、キャニング構造体とする。その後、ディーゼル燃料(軽油)の燃焼により発生させた煤を含む燃焼ガスを、集塵用ハニカムフィルタの一方の端面より流入させ、他方の端面より流出させることによって、煤を集塵用ハニカムフィルタに堆積させる。そして、一旦、室温(25℃)まで冷却する。その後、集塵用ハニカムフィルタの上記一方の端面より、680℃の燃焼ガスを流入させて煤を燃焼させる。そして、煤が燃焼することにより集塵用ハニカムフィルタの圧力損失が低下したときに燃焼ガスの流量を減少させることによって、煤を急燃焼させ、その後の集塵用ハニカムフィルタにおけるクラックの発生の有無を確認する。この試験は、煤の堆積量がハニカム構造体の容積1リットル当り4g(4g/リットル)から始め、クラックの発生が認められるまで、0.5(g/リットル)ずつ増加して、繰り返し行う。クラック発生時の煤量(g/リットル)を、SML(スートマスリミット)とした。各実施例、比較例の集塵用ハニカムフィルタを5個ずつ作製し、当該5個の(N=5)測定結果の平均値を、SMLの値とした。表1の「スートマスリミット試験」の欄において、「A」は、基準ハニカムフィルタのSMLに対して、SMLが、増加したか、又は0.5(g/リットル)未満の低下量で低下したことを意味する。また、「B」は、基準ハニカムフィルタのSMLに対して、SMLが、0.5(g/リットル)以上の低下量で低下したことを意味する。「基準ハニカムフィルタ」とは、スートマスリミット試験の対象となる集塵用ハニカムフィルタから、フランジ部を取り除いた構造の集塵用ハニカムフィルタを意味する。「基準ハニカムフィルタ」のスートマスリミット試験のデータは、予め採取しておく。
【0090】
(衝突試験)
衝突試験の対象となる集塵用ハニカムフィルタと同じものをもう1つ作製する。そして、同じ構造の2つの集塵用ハニカムフィルタを衝突させて欠け及びクラックの発生の有無を確認する。集塵用ハニカムフィルタの衝突は以下のようにして行う。まず、集塵用ハニカムフィルタを静置させる「静置用のローラーコンベア」と、当該「静置用のローラーコンベア」上に集塵用ハニカムフィルタを移送することができるように配置された「移送用のローラーコンベア」とを準備する。そして、一方の集塵用ハニカムフィルタを「静置用のローラーコンベア」上に静置させる。このとき、「静置用のローラーコンベア」上の集塵用ハニカムフィルタから「移送用のローラーコンベア」の一方の端までの距離を50cmとする。そして、他方の集塵用ハニカムフィルタを「移送用のローラーコンベア」の、上記「一方の端」(「静置用のローラーコンベア」側の端)から150cm離れた位置に載置する。そして、「移送用のローラーコンベア」を傾けて、「移送用のローラーコンベア」上に載置した集塵用ハニカムフィルタを、移動させ、「静置用のローラーコンベア」上に静置させた集塵用ハニカムフィルタに衝突させる。このとき、集塵用ハニカムフィルタ同士が、1.5m/秒で衝突するように「移送用のローラーコンベア」の傾きを調整する。また、2つの集塵用ハニカムフィルタは、「静置用のローラーコンベア」の上で、中心軸が平行な状態(互いの端面同士が平行な状態)で衝突させる。2つの集塵用ハニカムフィルタの衝突箇所は、フランジ部である。表1の「衝突試験」の欄において、「A」は、集塵用ハニカムフィルタに損傷がないことを意味する。尚、打痕を視認できても、欠けやクラックが発生していない場合は「A」に該当する。また、「B」は、フランジ部に、欠け及び/又はクラックが発生していることを意味する。ここで、「欠け」は、破損により破片が脱離した(又は、脱離し得る状態になった)ことを意味する。また、「クラック」は、亀裂が入ったことを意味する。
【0091】
【表1】
【0092】
(実施例2〜23、比較例1〜11)
表1に示すように条件を変更した以外は、実施例1と同様にして集塵用ハニカムフィルタを得た。「実施例2及び比較例1」以外の集塵用ハニカムフィルタのフランジ部の傾斜角αを0°を超える値とした。尚、傾斜角αは、
図9に示されるように、「フランジ部23の端面とハニカム基材3側面との角度θ」から90°を差し引いた角度である。
図9に示される集塵用ハニカムフィルタ500は、実施例3の集塵用ハニカムフィルタを模式的に示す正面図である。得られた集塵用ハニカムフィルタについて、上記方法で、「スートマスリミット試験」及び「衝突試験」を行った。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例24)
SiC粉末80質量部と、金属Si粉末20質量部とを混合してセラミック原料とした。得られたセラミック原料に、造孔材、バインダ、界面活性剤、及び水を加えて、坏土を作製した。造孔材としては澱粉を用いた。また、バインダとしては、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルメチルセルロースを用いた。界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウムを用いた。各原料の添加量は、セラミック原料100質量部に対して、造孔材5質量部、メチルセルロース3質量部、ヒドロキシプロポキシルメチルセルロース3質量部、界面活性剤1質量部、水32質量部とした。得られた坏土を、ハニカム成形体成形用口金を用いて押出成形し、マイクロ波及び熱風で乾燥してハニカム乾燥体を得た。
【0094】
次に、得られたハニカム乾燥体について、大気雰囲気にて約400℃で脱脂した。その後、脱脂したハニカム乾燥体を、アルゴン不活性雰囲気にて約1450℃で焼成して、SiC結晶粒子をSiで結合させて、ハニカムセグメント焼成体を得た。
【0095】
得られたハニカムセグメント焼成体は、セルの延びる方向に直交する断面が一辺50mmの正方形であり、セルの延びる方向における長さが210mmであった。また、セラミックハニカムセグメントは、セル密度が62セル/cm
2であり、隔壁厚さが180μmであった。
【0096】
上記方法で、ハニカムセグメント焼成体を14個作製した。そして、そのなかの2個のハニカムセグメント焼成体のそれぞれについて、セルの延びる方向に直交する断面が二等辺三角形のハニカムセグメント焼成体が2つ得られるように、二等分した。
【0097】
得られた16個のハニカムセグメント焼成体について、それぞれの側面同士を接合材で接合し、乾燥させて、
図8に示されるような、中心軸に直交する断面の形状が八角形の、ハニカムセグメント接合体11を得た。接合材としては、アルミナ粉にシリカファイバー、有機バインダ及び水を添加したものを用いた。尚、各セグメント間の接合材の厚さは約1mmとなるようにした。
【0098】
次に、得られた円柱状のハニカムセグメント焼成体の外周部分を、ハニカム基材及びフランジ部が形成されるように切削した。これにより、ハニカム基材とフランジ部とが形成された。ハニカムセグメント焼成体の外周部分を切削する方法としては、ハニカムセグメント焼成体を回転させながら、ダイヤモンドをまぶした砥石を、ハニカムセグメント焼成体の外周部に押しあてる方法とした。フランジ部の端面には、傾斜角をつけなかった。
【0099】
その後、切削されたハニカムセグメント焼成体の外周(ハニカム基材の側面、及びフランジ部の表面)に、外周コート材を塗布して外周コート壁を形成し、集塵用ハニカムフィルタを得た。外周コート壁を形成する際に、フランジ部の端面をヘラで押して、外周コート材をフランジセル内に押し込み、フランジ目封止部を形成した。
【0100】
得られた集塵用ハニカムフィルタのハニカム基材は、セルの延びる方向に直交する断面における直径が160mm、セルの延びる方向における長さが210mmの円柱状であった。また、ハニカム基材の一方の端面と、当該ハニカム基材の一方の端面と同じ方向を向くフランジ部の端面との距離(ハニカム基材の一方の端面を基準とする、フランジ部が形成された位置)Xは、65mmであった。フランジ部23の、フランジセルの延びる方向における長さ(フランジ部の幅)L(
図3を参照)が、20mmであった。フランジ部23の、セルの延びる方向に直交する断面における厚さ(フランジ部の厚さ;直径方向の長さ)H(
図3を参照)は、10mmであった。また、隔壁厚さ及びフランジ隔壁厚さは、いずれも180μmであった。また、セル密度及びフランジセル密度は、いずれも62セル/cm
2であった。また、ハニカム基材に形成された目封止部の、セルの延びる方向における長さは、2.5mmであった。また、ハニカム基材のセルの、セルの延びる方向に直交する断面の形状は、正方形であった。また、フランジ部における最も外側に位置するフランジ目封止部の、フランジセルの延びる方向における長さ(「フランジ外周部」の「目封止部厚さ」)は3.0mmであった。また、フランジ部における最も内側に位置するフランジ目封止部の、フランジセルの延びる方向における長さ(「フランジ内周部」の「目封止部厚さ」)は1.0mmであった。また、フランジ部におけるフランジ目封止部の「フランジセルの延びる方向における」長さは、フランジ外周部に近いほど長いものであった。また、隔壁とフランジ隔壁とは、内部において境界が形成されずに連続的に繋がったものであった。また、フランジセル及びフランジ目封止部の、「フランジセルの延びる方向における長さ」は、フランジ部がテーパー状である場合、フランジセルの延びる方向における「両端面」間の距離の中で、最も短い距離とした。また、フランジ部の、フランジセルの延びる方向における長さは、フランジ部がテーパー状である場合、フランジ部の最も内側における長さとした。
【0101】
得られた集塵用ハニカムフィルタについて、以下に示す方法で、「スートマスリミット試験」及び「衝突試験」を行った。結果を表2に示す。
【0102】
【表2】
【0103】
(実施例25〜46、比較例12〜22)
表2に示すように条件を変更した以外は、実施例24と同様にして集塵用ハニカムフィルタを得た。実施例45の集塵用ハニカムフィルタについては、
図10に示すように、フランジ部23に、セルの延びる方向に平行な平面状の平面部51を形成した。平面部51は4つ形成し、互いに平行な一対(2つ)の平面部51を2対形成した。片方の「一対の平面部51」と、もう片方の「一対の平面部51」とにより形成される角度は、90°とした。つまり、セルの延びる方向に直交する断面において、外周方向(中心軸を中心とした回転方向)に90°毎に平面部51が形成されるようにした。また、平面部51とハニカム基材3との間の距離は、10mmとした。「平面部51とハニカム基材3との間の距離」は、「フランジ部23の、平面部51における厚さ」ということもできる。
図10に示される集塵用ハニカムフィルタ600においては、ハニカム基材3の隔壁及びセルは省略されている。
図10は、実施例45の集塵用ハニカムフィルタ600を模式的に示す平面図である。また、実施例46、比較例13及び20の集塵用ハニカムフィルタについても、実施例45の集塵用ハニカムフィルタ600と同様の4つの平面部を形成した。
【0104】
得られた集塵用ハニカムフィルタについて、上記方法で、「スートマスリミット試験」及び「衝突試験」を行った。結果を表2に示す。
【0105】
表1より、実施例1〜23の集塵用ハニカムフィルタは、比較例1、2及び6〜8の集塵用ハニカムフィルタに比べて、衝突の際に、フランジ部が損傷し難いことが分かる。また、実施例1〜23の集塵用ハニカムフィルタは、比較例1〜5及び8〜11の集塵用ハニカムフィルタに比べて、DPFとして用いた際の、「再生時の熱衝撃」によるフランジ部の付け根部分のクラック発生が、抑制されていることが分かる。
【0106】
また、表2より、実施例24〜46の集塵用ハニカムフィルタは、比較例12、13及び17〜19の集塵用ハニカムフィルタに比べて、衝突の際に、フランジ部が損傷し難いことが分かる。また、実施例24〜46の集塵用ハニカムフィルタは、比較例12〜16及び19〜22の集塵用ハニカムフィルタに比べて、DPFとして用いた際の、「再生時の熱衝撃」によるフランジ部の付け根部分のクラック発生が、抑制されていることが分かる。これらの結果より、セグメント型の集塵用ハニカムフィルタも、一のハニカム成形体から作製された集塵用ハニカムフィルタ(接合部を有さない集塵用ハニカムフィルタ)も、同様の評価結果が得られていることが分かる。