(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092842
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】ポリマー系コーティングを有するガラスストランド及びそれを含む網
(51)【国際特許分類】
D06M 13/513 20060101AFI20170227BHJP
D06M 15/333 20060101ALI20170227BHJP
D06M 15/248 20060101ALI20170227BHJP
D06M 11/46 20060101ALI20170227BHJP
D06M 11/44 20060101ALI20170227BHJP
D06M 11/79 20060101ALI20170227BHJP
D04C 1/02 20060101ALI20170227BHJP
D04B 1/14 20060101ALI20170227BHJP
D04B 21/00 20060101ALI20170227BHJP
D03D 15/12 20060101ALI20170227BHJP
D03D 15/00 20060101ALI20170227BHJP
A01M 29/34 20110101ALI20170227BHJP
C03C 25/10 20060101ALI20170227BHJP
D06M 101/00 20060101ALN20170227BHJP
【FI】
D06M13/513
D06M15/333
D06M15/248
D06M11/46
D06M11/44
D06M11/79
D04C1/02
D04B1/14
D04B21/00 B
D03D15/12 A
D03D15/00 E
A01M29/34
C03C25/02 N
D06M101:00
【請求項の数】25
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-501690(P2014-501690)
(86)(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公表番号】特表2014-515062(P2014-515062A)
(43)【公表日】2014年6月26日
(86)【国際出願番号】FR2012050654
(87)【国際公開番号】WO2012131255
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年1月21日
(31)【優先権主張番号】1152636
(32)【優先日】2011年3月30日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507392897
【氏名又は名称】サン−ゴバン アドフォル
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ブランシャール
(72)【発明者】
【氏名】カタルジナ シュダ
【審査官】
佐藤 玲奈
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03922466(US,A)
【文献】
特開昭61−097148(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0224147(US,A1)
【文献】
特開平01−298280(JP,A)
【文献】
特開平08−325479(JP,A)
【文献】
特開昭58−161946(JP,A)
【文献】
特開2008−255549(JP,A)
【文献】
特開2002−254577(JP,A)
【文献】
特開2001−323646(JP,A)
【文献】
特表平09−504344(JP,A)
【文献】
特表2002−536557(JP,A)
【文献】
特表2008−542567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 − 15/715
A01M 29/34
C03C 25/10
D03D 15/00
D03D 15/12
D04B 1/14
D04B 21/00
D04C 1/02
D06M 11/44
D06M 11/46
D06M 11/79
D06M 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含むコーティング層を有するガラスストランド:
酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、及びポリ塩化ビニリデンからなる群より選択されるポリマー、及び
次の式(1)のシラン
【化2】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、同一であるか又は異なっており、次を表し:
C
1〜C
6アルキル基、C
2〜C
6アルケニル基、C
2〜C
6アルキニル基、C
6〜C
10アリール基、ヒドロキシル基、C
1〜C
6アルコキシ基、C
6〜C
10アリールオキシ基、C
1〜C
6アシルオキシ基、C
2〜C
7アルキルカルボニル基、
ここで、R
1、R
2、及びR
3基の少なくとも2つは、ヒドロキシル基又はアルコキシ基を表しており、かつ
R
4は、次を表す:
少なくとも1つのエポキシ官能基を有する基、置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子又は少なくとも1つのハロゲン原子を有する基、少なくとも1つのアルデヒド官能基を有する基、硫黄原子又はリン原子を含む少なくとも1つの官能基を有する基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイオキシ基、
ここで、前記エポキシ官能基、ハロゲン原子、アルデヒド官能基、硫黄原子又はリン原子を有する基は、少なくとも1つの酸素又は硫黄のヘテロ原子を含むことができるC
1〜C
18の炭素含有基である)
ここで、前記ポリマー系コーティング層は、前記コーティングしたストランドの合計重量の50〜80%に相当し、かつ前記シランは、前記コーティングの合計重量の1〜15%に相当する。
【請求項2】
前記R1基、R2基、及びR3基が、メチル基、エチル基、メトキシ基及びエトキシ基から選択される、請求項1に記載のストランド。
【請求項3】
前記R4基が、
末端部に少なくとも1つのエポキシ官能基を有する基;
アリール基;
ハロゲン原子又は少なくとも1つのハロゲン原子を有する1〜9個の炭素原子を含む脂肪族鎖;
である、請求項1又は2に記載のストランド。
【請求項4】
前記シランが、3−グリシドキシプロピルメチルジ−メトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、又はトリエトキシフロロシランである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のストランド。
【請求項5】
前記ポリマーが、熱可塑性ポリマーである、請求項1〜4のいずれか一項に記載のストランド。
【請求項6】
前記コーティング層が、有機酸エステル、ホスファート、及び石油留分由来のオイルから選択される可塑剤をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のストランド。
【請求項7】
光触媒層、帯電防止層、親水性層、並びに疎水性かつ/又は疎油性層から選択された、前記ポリマー層に積層されている追加の層をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のストランド。
【請求項8】
前記光触媒層が、アナターゼ型のTiO2粒子を含む、請求項7に記載のストランド。
【請求項9】
前記帯電防止層が、ITO層、Sb、Nb、Ta及びWからなる群より選択される金属でドーピングしたSnO2層、Sn、Al、In、Y、Zr若しくはBでドーピングした若しくはドーピングしていないZnO層、又はITOナノ粒子を含むUV架橋性若しくは熱架橋性ポリマーマトリクスに基づく層である、請求項7に記載のストランド。
【請求項10】
前記親水性層が、シリカに基づく、請求項7に記載のストランド。
【請求項11】
前記疎水性かつ/又は疎油性層が、フッ素化した化合物、アルキルシラン、アリールシラン又はヘキサアルキルジシラザンでグラフトとしたシリカのマトリクス(層又はビーズの形態であるマトリクス)で構成されている、請求項7に記載のストランド。
【請求項12】
前記ガラスストランドに堆積しているポリマー系コーティングの量が、前記コーティングしたストランドの合計重量の50〜70%に相当する、請求項1〜11のいずれか一項に記載のストランド。
【請求項13】
ガラスストランドに堆積しているシランの量が、前記コーティングの合計重量の1〜10%に相当する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のストランド。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のガラスストランドで構成されている、格子網、織布、又は編物の形態である網。
【請求項15】
50〜300g/m2の範囲の単位面積重量を有する、請求項14に記載の網。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の網の蚊帳、ブラインド又は日除けとしての使用。
【請求項17】
R4が表わす前記ハロゲン原子又はR4が表わす基が有する前記少なくとも1つのハロゲン原子が、フッ素原子である、請求項1に記載のストランド。
【請求項18】
前記エポキシ官能基、ハロゲン原子、アルデヒド官能基、硫黄原子又はリン原子を有する基は、少なくとも1つの酸素又は硫黄のヘテロ原子を含むことができるC1〜C8の炭素含有基である、請求項1に記載のストランド。
【請求項19】
末端部に少なくとも1つのエポキシ官能基を有する前記基が、そのアルキレン基が1〜8個の炭素原子を含むグリシドキシアルキル基であり、前記アリール基が、フェニル基であり、前記ハロゲン原子が、フッ素原子である、請求項3に記載のストランド。
【請求項20】
前記グリシドキシアルキル基が、グリシドキシプロピルである、請求項19に記載のストランド。
【請求項21】
前記コーティングは、前記コーティングしたストランドの合計重量の55〜65%である、請求項12に記載のストランド。
【請求項22】
前記シランは、前記コーティングの合計重量の3〜7%である、請求項12に記載のストランド。
【請求項23】
70〜200g/m2の範囲の単位面積重量を有する、請求項15に記載の網。
【請求項24】
前記ポリマーが、エラストマー的性質を有する熱可塑性ポリマーである、請求項5に記載のストランド。
【請求項25】
前記光触媒層が、メソポーラスシリカのマトリクス中にアナターゼ型のTiO2粒子を含む、請求項8に記載のストランド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、網(screen)を製造するためのポリマー系コーティングを有するガラスストランドに関し、特に蚊帳として用いることができる格子網(grid)、織布、又は編物の形態の網を製造するためのポリマー系コーティングを有するガラスストランドに関する。
【背景技術】
【0002】
住居に入る虫を防ぐために、ストランドのネットワークを含む網が、窓及びドアに通常配置される。このネットワークのメッシュのサイズは、空気及び光の通路を妨害することなく、虫、特に蚊を通さないためのおおよそのサイズとなる。
【0003】
このような網は、ポリマー系コーティング、例えばポリ塩化ビニル(PVC)コーティングを含むストランドから通常製造され:このストランドは、適切な形態(格子網、織布、又は編物)に構築され、そしてこの構築した部分を、加熱チャンバー内で、ポリマーが溶融する温度で処理し、そして周囲温度に冷却される。これにより、ストランドの交点において、ポリマーの固化及びストランドの結着を与える。
【0004】
ストランドで形成された組立部分(格子網、織布、又は編物)を製造し、これをポリマー系コーティング組成物で処理し、そして最終的に、上述のような熱処理に付すことによって、交点でストランドを結合して、この網を得ることもできる。
【0005】
しかし、取り巻く環境から由来するチリ及び汚染物質が、これらの網に付着する傾向があり、完全に又は部分的にメッシュを塞ぎ、これは定期的に網を清浄化する必要を与える。
【0006】
蚊帳の閉塞を抑え、そして一定期間での洗浄回数を減らすための解決法が知られている。
【0007】
特許文献1に記載の解決法は、網をフレームに組み込むこと、そして機械的洗浄手段、例えばブラシをそれと組み合わせることに本質を有する。
【0008】
特許文献2は、光触媒性を有する酸化チタン粒子か、低い表面エネルギーを網に与える(この表面は「超疎水性」と呼ばれる)ナノ粒子かを含むコーティンを有するストランドのメッシュの形態である、自己洗浄性の網を与えている。
【0009】
特許文献3も、酸化チタンに基づく光触媒層となるバリア層を上に形成するための、有機表面の処理、例えばPVCで作られた有機表面の処理を行うための方法を開示している。この方法は、大気圧で、イオン化したガスの存在下で行われ、酸化チタンに基づく膜へのより高い接着性を有する膜、特にSiO
2膜の形成を可能とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】中国実用新案第2237104号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0224147号
【特許文献3】仏国特許出願公開第2908137号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、ポリマー系の層でコーティングされたガラスストランドを得ることであり、これは特に汚染物質への高い抵抗性を示す網の製造を可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、コーティング層を形成するポリマーに、次の式(I)のシランを添加することによって達成される:
【化1】
(式中、R
1、R
2、及びR
3は、同一であるか又は異なっており、次を表し:
C
1〜C
6アルキル基、C
2〜C
6アルケニル基、C
2〜C
6アルキニル基、C
6〜C
10アリール基、ヒドロキシル基、C
1〜C
6アルコキシ基、C
6〜C
10アリールオキシ基、C
1〜C
6アシルオキシ基、C
2〜C
7アルキルカルボニル基、
ここで、R
1、R
2、及びR
3基の少なくとも2つは、ヒドロキシル基又はアルコキシ基を表しており、かつ
R
4は、次を表す:
少なくとも1つのエポキシ官能基を含む基、置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子又は少なくとも1つのハロゲン原子を有する基、特にフッ素原子又はフッ素原子を有する基、少なくとも1つのアルデヒド官能基を含む基、硫黄原子又はリン原子を含む少なくとも1つの官能基を有する基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイオキシ基、
ここで、前記官能基を有する基は、少なくとも1つの酸素又は硫黄のヘテロ原子を含むことができるC
1〜C
18の炭素含有基、好ましくはC
1〜C
8の炭素含有基である)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
好ましくは、R
1基、R
2基、及びR
3基は、メチル基、エチル基、メトキシ基及びエトキシ基から選択される。
【0014】
また好ましくは、R
4基は、
末端部に
少なくとも1つのエポキシ官能基を有する基、特にそのアルキレン基が1〜8個の炭素原子を含むグリシドキシアルキル基、有利にはグリシドキシプロピル;
アリール基、特にフェニル基;
ハロゲン原子又は少なくとも1つのハロゲン原子を有する1〜9個の炭素原子を含む脂肪族鎖、特にフッ素原子又は少なくとも1つのフッ素原子を有する1〜9個の炭素原子を含む脂肪族鎖;
である。
【0015】
特に好ましい上記シランは、3−グリシドキシプロピルメチルジ−メトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、及びトリエトキシフロロシランである。
【0016】
コーティングの組成物中に含まれるポリマーは、熱可塑性ポリマーであり、随意にエラストマー的性質を有する熱可塑性ポリマーである。例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル又はポリ塩化ビニリデン等のビニルポリマー、及び(メタ)アクリルポリマーについて言及がなされてもよい。ポリ塩化ビニルが好ましい。
【0017】
適切であれば、可塑剤を用いて、上述のポリマーに高い柔軟性を与えることができる。一般的には、可塑剤を、有機酸エステル、好ましくは2つのカルボキシル基を有する有機酸エステル、例えばフタル酸アルキル及び/又はアリール並びにアジピン酸アルキル、ホスファート、並びにベジタブルオイル、特に大豆油又はヒマシ油、又は石油留分由来のオイル、特にパラフィン留分由来のオイル、芳香族留分由来のオイル、ナフテン酸由来のオイルから選択する。
【0018】
PVCと混合するために好ましい可塑剤は、フタル酸アルキル及び/又はアリール、例えばフタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジフェニル、及びフタル酸ベンジルブチル、アジピン酸アルキル、例えばアジピン酸ジ(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、並びにホスファートである。
【0019】
ポリマー及び可塑剤の混合物は、プラスチゾル又はペーストの形態で与えられる。
【0020】
ポリマー、シラン、及び随意の可塑剤の混合物は、さらに通常の添加剤、例えば熱安定剤、滑剤、難燃剤、有機及び/又は無機顔料、シリコーン等のスリップ剤、及び光線からポリマーを保護することができるUV防止剤を含む。
【0021】
本発明のポリマー系コーティングを有するストランドを、網、例えば格子網、織布、又は編物の形態の網を製造するために、そのまま用いることができる。
【0022】
このストランドは、さらに上記のポリマー層に積層される少なくとも1つの追加の層を有することができ、この追加の層は、ストランドに特定の特性を付与することができる。
【0023】
このような層としては、以下を言及できる:
メソポーラスシリカのマトリクス中に通常は存在するアナターゼ型のTiO
2粒子を含む光触媒層。通常は、特にシリカで作られたバリアサブ層を、PVC層と上記光触媒層との間に位置させて、光触媒層と組み合わせる。これは、TiO
2粒子によるPVCへのダメージを防ぐためのものである、
帯電防止層、特にゾル/ゲル法によって得られる帯電防止層、例えばITO(インジウム/スズ酸化物)層、金属でドーピングしたSnO
2層、特にSb、Nb、Ta又はWでドーピングしたSnO
2層、Sn、Al、In、Y、Zr若しくはBでドーピングした又はドーピングしていないZnO層、及びITOナノ粒子を含むUV架橋性又は熱架橋性ポリマーマトリクスに基づく層、
例えば仏国特許出願公開第2908137号に記載されているような大気圧プラズマによって、又はゾル/ゲル法によって堆積させた親水性層、特にシリカに基づく親水性層、
疎水性かつ/又は疎油性層、特に、フッ素化した化合物(特定的にはトリアルコキシフルオロアルキルシラン)、アルキルシラン、アリールシラン又はヘキサアルキルジシラザンでグラフトとしたシリカのマトリクス(層又はビーズの形態であるマトリクス)で構成されている疎水性かつ/又は疎油性層。
【0024】
ガラスストランドに堆積しているポリマー系コーティングの量は、コーティングしたストランドの合計重量の15〜80%に通常相当し、好ましくは50〜70%に相当し、有利には55〜65%に相当する。
【0025】
ガラスストランドに堆積しているシランの量は、コーティングの合計重量の0.5〜15%に相当し、好ましくは1〜10%に相当し、有利には3〜7%に相当する。
【0026】
本発明によるストランドは、ポリマー及びシランを含む組成物を、複数のガラス繊維を含むガラスストランドに適用することによって得られる。
【0027】
本発明によるガラスストランドは、多数のガラス繊維から構成されるストランド(又はベースストランド)若しくは複数のベースストランドをロービングに組み立てることによって得られるストランド、緊密に混合したガラス繊維及び熱可塑性繊維から構成される混合ストランド、又は組み立てられたガラス繊維及び熱可塑性繊維から構成される混合ストランドである。ベースストランド、及びガラス繊維とポリエステル繊維から構成されるストランドが好ましい。上記のストランドのうち、ガラス繊維は、1以上のストランドの形態にそれらを組み合わせる前で、かつそれを引き延ばす間に、それらに適用されるサイズ剤で通常コーティングされる。サイジング剤は、ストランドを製造するために必要な様々なものと接触する際に、摩耗のリスクから繊維を特に保護することができ、かつ繊維を共に結合することもできる。
【0028】
上記のストランドは、撚っていない糸又は撚糸であることができ、例えば1cm当たり0.4〜1回転の撚り数を有する撚糸であることができる。
【0029】
ストランドの組成中に組み入れるガラスは、どのような種類であってもよく、例えばEガラス、Cガラス、Rガラス、又はARガラスであることができる。Eガラスが好ましい。
【0030】
ストランドを構成するガラス繊維の直径は、広い範囲で様々にすることができ、例えば3〜30μm、そして好ましくは5〜20μmとすることができる。同様に、ストランドに線密度も広範であり、10〜100テクス、そして好ましくは20〜50テクスの範囲とすることができる。
【0031】
ガラスストランドに、ポリマー層を保持させ又は与えることができ、好ましくは本発明による式(I)のシランを含むコーティング層のポリマーと同じ化学的性質を有するポリマー層を保持させ又は与えることができる。
【0032】
本発明のガラスストランドは、上述のガラスストランドに上記コーティング組成物を当業者に公知の任意の手段によって適用することによって得られる。例えば、含浸(ディップコーティング)、特にブッシング(bushing)の通過若しくは浴槽での含浸、又は押出しによって適用することができる。好ましくは、ブッシングを通過させることによって適用を行い、ここでこのストランドは、コーティング組成物を含む環(loop)を通り、そして加熱チャンバーを通過し、最終的に包装体の形態でこのストランドは収集される。チャンバーの温度は、用いるポリマーの性質によって変化し;それはポリマーの軟化温度より高く、いずれの場合にもポリマーの分解温度より大きく低い。ポリ塩化ビニルの場合には、この温度は100〜250℃の範囲で様々である。
【0033】
得られたガラスストランドは、格子網、織布、又は編物の形態の網、特に蚊帳として用いることができる網を製造するために用いる。
【0034】
通常、格子網は、一方向に向けられた平行なガラスストランドの第一のウェブと、他の1つの方向に向けられた平行なガラスストランドの第二のウェブとを重ね合わせることによって形成され、好ましくは大まかに90℃程度の角度の向きで重ね合わせることによって形成される。
【0035】
ガラスストランドの織布及び編物は、当業者に公知の任意の方法によって得ることができる。
【0036】
格子網、織布、及び編物は、続いて熱処理に付され、これはストランドの接触点又は交点で接着して結合させて、それにより格子を強化することを目的とする。その温度は、用いるポリマーの性質によって変化し;それはポリマーの軟化温度より高く、いずれの場合にもポリマーの分解温度より大きく低い。ポリ塩化ビニルの場合には、この温度は100〜250℃の範囲で様々である。
【0037】
適切な場合には、格子網、織布、及び編物に、上述のゾル/ゲルから追加の層を適用することができる。このゾル/ゲルを、含浸によって、スプレーによって、ローラを用いて、又はカーテンを用いて、適用することができ、そして、熱処理の工程、例えば高温空気チャンバーにおける熱処理、又は1以上の赤外線ランプでの熱処理の工程が続く。
【0038】
本発明によるガラスストランドを組み込んでいる格子網、織布、及び編物は、非常に大きな範囲で様々となる単位面積重量を有し、例えば50〜300g/m
2、好ましくは70〜200g/m
2の範囲の単位面積重量を有する。
【0039】
本発明による網は、蚊帳として用いることができるが、屋内若しくは屋外に設置するブラインド又は日除けとしても用いることができる。
本発明に態様としては、以下を挙げることができる:
《態様1》
以下を含むコーティング層を有するガラスストランド:
酢酸ビニル/塩化ビニルコポリマー、ポリ塩化ビニル、及びポリ塩化ビニリデンからなる群より選択されるポリマー、及び
次の式(I)のシラン
【化1】
(式中、R1、R2、及びR3は、同一であるか又は異なっており、次を表し:
C1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C2〜C6アルキニル基、C6〜C10アリール基、ヒドロキシル基、C1〜C6アルコキシ基、C6〜C10アリールオキシ基、C1〜C6アシルオキシ基、C2〜C7アルキルカルボニル基、
ここで、R1、R2、及びR3基の少なくとも2つは、ヒドロキシル基又はアルコキシ基を表しており、かつ
R4は、次を表す:
少なくとも1つのエポキシ官能基を含む基、置換されていてもよいアリール基、ハロゲン原子又は少なくとも1つのハロゲン原子を有する基、特にフッ素原子又はフッ素原子を有する基、少なくとも1つのアルデヒド官能基を含む基、硫黄原子又はリン原子を含む少なくとも1つの官能基を有する基、アクリロイルオキシ基又はメタクリロイオキシ基、
ここで、前記官能基を有する基は、少なくとも1つの酸素又は硫黄のヘテロ原子を含むことができるC1〜C18の炭素含有基、好ましくはC1〜C8の炭素含有基である)。
《態様2》
前記R1基、R2基、及びR3基が、メチル基、エチル基、メトキシ基及びエトキシ基から選択される、態様1に記載のストランド。
《態様3》
前記R4基が、
末端部にエポキシ官能基を有する基、特にそのアルキレン基が1〜8個の炭素原子を含むグリシドキシアルキル基、有利にはグリシドキシプロピル;
アリール基、特にフェニル基;
ハロゲン原子又は少なくとも1つのハロゲン原子を有する1〜9個の炭素原子を含む脂肪族鎖、特にフッ素原子又は少なくとも1つのフッ素原子を有する1〜9個の炭素原子を含む脂肪族鎖;
である、態様1又は2に記載のストランド。
《態様4》
前記シランが、3−グリシドキシプロピルメチルジ−メトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、又はトリエトキシフロロシランである、態様1〜3のいずれか一項に記載のストランド。
《態様5》
前記ポリマーが、エラストマー的性質を有してもよい熱可塑性ポリマーである、態様1〜4のいずれか一項に記載のストランド。
《態様6》
前記コーティング層が、有機酸エステル、ホスファート、及び石油留分由来のオイルから選択される可塑剤をさらに含む、態様1〜5のいずれか一項に記載のストランド。
《態様7》
光触媒層、帯電防止層、親水性層、並びに疎水性かつ/又は疎油性層から選択された、前記ポリマー層に積層されている追加の層をさらに含む、態様1〜6のいずれか一項に記載のストランド。
《態様8》
前記光触媒層が、アナターゼ型のTiO2粒子を含み、好ましくはメソポーラスシリカのマトリクス中にアナターゼ型のTiO2粒子を含む、態様7に記載のストランド。
《態様9》
前記帯電防止層が、ITO層、金属でドーピングしたSnO2層、特にSb、Nb、Ta若しくはWでドーピングしたSnO2層、Sn、Al、In、Y、Zr若しくはBでドーピングした若しくはドーピングしていないZnO層、又はITOナノ粒子を含むUV架橋性若しくは熱架橋性ポリマーマトリクスに基づく層である、態様7に記載のストランド。
《態様10》
前記親水性層が、シリカに基づく、態様7に記載のストランド。
《態様11》
前記疎水性かつ/又は疎油性層が、フッ素化した化合物、アルキルシラン、アリールシラン又はヘキサアルキルジシラザンでグラフトとしたシリカのマトリクス(層又はビーズの形態であるマトリクス)で構成されている、態様7に記載のストランド。
《態様12》
前記ガラスストランドに堆積しているポリマー系コーティングの量が、前記コーティングしたストランドの合計重量の15〜80%に相当し、好ましくは50〜70%に相当し、有利には55〜65%に相当する、態様1〜11のいずれか一項に記載のストランド。
《態様13》
ガラスストランドに堆積しているシランの量が、前記コーティングしたストランドの合計重量の0.5〜15%に相当し、好ましくは1〜10%に相当し、有利には3〜7%に相当する態様1〜12のいずれか一項に記載のストランド。
《態様14》
態様1〜13のいずれか一項に記載のガラスストランドで構成されている、格子網、織布、又は編物の形態である網。
《態様15》
50〜300g/m2、好ましくは70〜200g/m2の範囲の単位面積重量を有する、態様14に記載の網。
《態様16》
態様14又は15に記載の網の蚊帳、ブラインド又は日除けとしての使用。
【0040】
以下の実施例は、本発明を例証することを可能としているが、本発明を限定していない。
【実施例】
【0041】
例1〜4
95重量部のPVCプラスチゾルと、5重量部の以下のシランとを容器に入れた:
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン:例1
フェニルトリエトキシシラン:例2
トリエトキシフロロシラン:例3
【0042】
用いたPVCプラスチゾルは、66.5重量%のPVCと33.5重量%のフタル酸ブチル又はフタル酸ベンジルを含む。
【0043】
得られた組成物を、成膜機(film drawer)を用いてガラスプレート上に堆積し(厚み:200μm)、そしてプレートを160℃で5分間オーブンに置く。
【0044】
同じ条件の下で、シランを含まないPVC組成物(参照)をガラスプレートに堆積する。
【0045】
このガラスプレートを、雰囲気制御チャンバー(40℃;相対湿度:95%)に置く。3μlの水をこのプレートに堆積させて、室温で維持し、張力計を用いて異なる期間後の接触角を測定する。得られた測定結果は、次の表1である。
【0046】
【表1】
【0047】
本発明による例1〜3は、接触角を低下させることができる、すなわち参照と比較して高い親水性を有するということが分かる。
【0048】
実施例5及び比較例6
a)ガラスストランドの網の製造
30〜35テクスの線密度を有するEガラスのストランドを、例1による95重量部のPVCプラスチゾルと5重量部の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとを含む含浸浴に通過させることによって、ガラスストランドを連続生産する。得られるガラスストランドは、85〜90テクスを有し、PVCコーティングの平均厚みは305μmである。
【0049】
同じ方法で、ガラスストランドを、上記のシランを使わずにPVCプラスチゾルを用いて製造する(比較例6)。
【0050】
上記のストランドを用いて、1000μm×1500μmの寸法の平均メッシュ孔を有する織布を製造する。この織布を、165℃のオーブンでPVCが溶融するのに十分な時間で処理し、その後冷却し、交点でストランドを固定する。
【0051】
b)スクリーンへの汚染試験
a)の下で得た網の四角形のサンプル(辺長11cm)を、垂直に対して10°の角度で後ろに傾いているイーゼルの中心に置いた。スプレーノズルを、サンプルから30cmに置いて、サンプルの表面に垂直で、かつその表面の全体にわたって、ジェット噴射する(合計100ml)。
【0052】
スプレーした溶液は、最も一般的に接触する汚染物質を代表している。この溶液は、以下の化合物を、g/Lで表されている次の濃度で含有する水/アルコール溶液(重量比51:26.5:22.5の水:エタノール:イソプロパン−2−オール)である:
ステアリン酸 0.735
アジピン酸 2.940
グラファイト(d50=2.5μm) 0.147
硝酸カルシウム 0.235
硝酸銅 0.044
硝酸亜鉛 0.044
硫酸カリウム 0.117
硫酸ナトリウム 0.088
硫酸カルシウム 0.088
塩化ナトリウム 0.088
【0053】
6カ所の測定領域(各4cmの辺長を有する四角形)を、各網サンプルについて画定し、各領域について、汚染試験前後のメッシュの開孔に対応する表面積を測定する。この測定を、フーリエ変換画像処理を用いて行う。これは、白い画素(清浄表面)と黒い画素(汚染表面)とを集計することによって行う。この試験を5つのサンプルについて行う。
【0054】
透明度の喪失度は、百分率として次のように計算される:
(黒画素数/画素の合計数)×100
【0055】
結果は以下の通りである。
【表2】