特許第6092843号(P6092843)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6092843
(24)【登録日】2017年2月17日
(45)【発行日】2017年3月8日
(54)【発明の名称】神経障害の治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/201 20060101AFI20170227BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20170227BHJP
   A61K 31/355 20060101ALI20170227BHJP
   A61K 31/07 20060101ALI20170227BHJP
   A61K 31/015 20060101ALI20170227BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20170227BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20170227BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20170227BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20170227BHJP
【FI】
   A61K31/201
   A61K31/202
   A61K31/355
   A61K31/07
   A61K31/015
   A61K9/08
   A61P43/00 121
   A23L2/00 F
   A61P25/28
【請求項の数】30
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2014-501739(P2014-501739)
(86)(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公表番号】特表2014-512351(P2014-512351A)
(43)【公表日】2014年5月22日
(86)【国際出願番号】IB2012000824
(87)【国際公開番号】WO2012131493
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2015年3月26日
(31)【優先権主張番号】61/469,081
(32)【優先日】2011年3月29日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513244177
【氏名又は名称】パルパ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】PALUPA MEDICAL LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】パンザリス・マリオス
(72)【発明者】
【氏名】パトリキオス・イオアニス
(72)【発明者】
【氏名】ルーカイディス・ゲオルギオス
【審査官】 常見 優
(56)【参考文献】
【文献】 特表2001−526908(JP,A)
【文献】 特開平04−368326(JP,A)
【文献】 特表2002−535355(JP,A)
【文献】 特表2009−523414(JP,A)
【文献】 特表2004−531568(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/118761(WO,A1)
【文献】 Nature Clinical Practice Nurology,2009年,Vol.5, No.2,p.82-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−3/80
A61K 9/00−9/72
A23L 2/00
A61P 25/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、リノール酸(LA)およびガンマリノレン酸(GLA)を含む、長鎖ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)フラクション;
一または複数の他のオメガ−3 PUFA;
一または複数のモノ不飽和脂肪酸(MUFA);および
治療的に効果的な量のガンマ−トコフェロール
を含む、神経変性疾患を治療または予防するための液体経口用医薬組成物であって、
アラキドン酸を本質的に含まない、医薬組成物。
【請求項2】
飽和脂肪酸(SFA)をさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ビタミンAおよびビタミンEからなる群より選択されるビタミンをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
EPAが500mg〜5000mgの量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
DHAが1000mg〜12000mgの量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
LAが1000mg〜10600mgの量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
GLAが1000mg〜16000mgの量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
ガンマ−トコフェロールが100mg〜3000mgの量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
ベータ−カロテンをさらに含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
ベータ−カロテンが0.1mg〜5mgの量で存在する、請求項9記載の組成物。
【請求項11】
モノ不飽和脂肪酸が、18:1(オレイン酸)、20:1(エイコセン酸)、22:1(ドコセン酸)、24:1(テトラコセン酸)およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項12】
SFAが16:0(パルミチン酸)および18:0(ステアリン酸)ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
他のオメガ−3 PUFAが18:3(アルファ−リノレン酸)、18:4(ステアリドン酸)、20:4(エイコサテトラエン酸)および22:5(ドコサペンタエン酸)ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
他のオメガ−3 PUFAが100mg〜2500mgの量で存在する、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
他のオメガ−3 PUFAが300mg〜2000mgの量で存在する、請求項13記載の組成物。
【請求項16】
他のオメガ−3 PUFAが600mg〜1000mgの量で存在する、請求項13記載の組成物。
【請求項17】
MUFAが100mg〜3500mgの量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
MUFAが750mg〜3500mgの量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
MUFAが1500mg〜3500mgの量で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項20】
SFAが500mg〜2000mgの量で存在する、請求項12記載の組成物。
【請求項21】
(a)1650mgのEPA;
(b)4650mgのDHA;
(c)3850mgのLA;
(d)5850mgのGLA;
(e)760mgのガンマ−トコフェロール、および
(f)22mgのビタミンE
を含む、神経変性疾患を治療または予防するための液体経口用医薬組成物であって、
アラキドン酸を本質的に含まない、医薬組成物。
【請求項22】
a. EPA 1650mg/用量
b. DHA 4650mg/用量
c. GLA 2000mg/用量
d. LA 3850mg/用量
e. 他のオメガ−3 PUFAであって、
i. アルファ−リノレン酸(C18:3n−3) 37mg/用量
ii. ステアリドン酸(C18:4n−3) 73mg/用量
iii. エイコサテトラエン酸(C20:4n−3) 98mg/用量
iv. ドコサペンタエン酸(C22:5n−3) 392mg/用量
を含む他のオメガ−3 PUFA 600mg/用量
f. MUFAであって、
i. 18:1 1300mg/用量
ii. 20:1 250mg/用量
iii. 22:1 82mg/用量
iv. 24:1 82mg/用量
を含むMUFA
g. SFAであって、
i. 18:0 160mg/用量
ii. 16:0 650mg/用量
を含むSFA
h. ビタミンA 0.6mg/用量
i. ビタミンE 22mg/用量
j. ガンマ−トコフェロール 760mg/用量
を含む、神経変性疾患を治療または予防するための液体経口用医薬組成物であって、
アラキドン酸を本質的に含まない、医薬組成物。
【請求項23】
神経変性疾患を治療または予防するための、
(a)500mg〜5000mgのEPA;
(b)1000mg〜12000mgのDHA;
(c)1000mg〜10600mgのLA;
(d)1000mg〜16000mgのGLAおよび
(e)100mg〜3000mgのガンマ−トコフェロール
を含む液体医薬組成物であって、アラキドン酸を本質的に含まない医薬組成物を含む、医薬。
【請求項24】
一日に一回投与される、請求項23記載の医薬。
【請求項25】
一日に一回、30日より多くの期間投与される、請求項23記載の医薬。
【請求項26】
疾患が多発性硬化症である、請求項23記載の医薬。
【請求項27】
多発性硬化症が一次進行型、二次進行型または進行型再発性の多発性硬化症である、請求項26記載の医薬。
【請求項28】
組成物が
(a)1650mgのEPA;
(b)4650mgのDHA;
(c)3850mgのLA;
(d)5850mgのGLA;
(e)760mgのガンマ−トコフェロール;
(f)22mgのビタミンE;および
(g)0.6mgのベータ−カロテン
を含む、請求項23記載の医薬。
【請求項29】
60日より多くの連続した期間投与される、請求項23記載の医薬。
【請求項30】
疾患の進行の減少をもたらす、請求項23記載の医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本願は2011年3月29日出願の米国仮出願61/469081(その内容を出典明示により本明細書の一部とする)に対する優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は神経障害、すなわち神経変性疾患、自己免疫疾患および多発性硬化症を治療するための新規な処方に関する。
【背景技術】
【0003】
神経障害は中枢または末梢神経系の機能不全である。神経障害は、神経細胞の変性、自己免疫疾患および多発性硬化症などの多くの形態を取りうる。自己免疫疾患は、抗体または活性化リンパ球(T細胞)がそれらを産生する同じ哺乳動物の分子、細胞または組織を攻撃することにより引き起こされる。末梢血からの活性化T細胞は中枢神経系(CNS)に移動し、その後で細静脈周辺の脳実質にあるマクロファージを活性化し、炎症工程と一緒になって、いわゆる多発性硬化症(MS)プラーク(病変)を形成する。B細胞はT−細胞の免疫性異常を反映するが、免疫調節および脳組織破壊に対しても直接的作用を有する。B−細胞はインターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、主要壊死因子(TNF−a)およびケモカインを分泌する。MSにおけるB−細胞は副刺激分子(CD80)を高レベルで発現する。該細胞は特異抗原とうまく焦点が合うため、その結果として、それらは強力な抗原提示細胞(APC)である。新たな明察はオリゴデンドロ細胞のアポトーシス(変性)がミクログリア活性化に付随する主要事象であることを示唆する。MSに関与する重要な病理学的機構として、免疫介在性炎症、酸化ストレスおよび興奮毒性が挙げられる。これらの機構はすべて、オリゴデンドロ細胞および神経細胞の損傷ならびに細胞死にさえ寄与し、それで疾患の進行を促進するかもしれない。
【0004】
多発性硬化症(MS)は、年齢が20〜40歳と相対的に若い患者を襲う、CNSの慢性脱髄および変性疾患である。MS全体の約85%は再発寛解型の該疾患を発症する。乏突起膠細胞、CNSのミエリン形成細胞がMSの発症機序における標的細胞である。現在、MSの正確な病因は不明であるが、T−細胞およびマクロファージが種々の機構を介して脱髄に関与していると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
MS患者の大部分では、該疾患は一連の予測できない再発(神経学的徴候の攻撃)と共にゆっくりと進行する。しかし、該疾患の進行が速い人もいる。再発は歩行障害、筋力低下、言語または視覚障害および他の多くの障害などの高度かつ重度の身体障害に至ることが多い。再発性MS患者の50%以上で、最終的に、該疾患の発症から10〜15年後に重度の障害が生じるであろう。現在のところ、MSを長期的に寛解しうる医薬または他の療法は存在しない。現行の治療薬(インターフェロン、酢酸グラティラメル、フィンゴリモドおよびモノクローナル抗体)はある程度の効果があるに過ぎない。現存する治療薬の長期にわたる有益な効果は確かではなく、有害な副作用が報告されることも多い。例えば、チサブリ(登録商標)などのモノクローナル抗体では、死亡が連想される。したがって、MSおよび他の神経変性疾患の治療について、安全かつ効果的な方法に対する明確な要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一の実施態様において、本発明は、特定のポリ不飽和脂肪酸、すなわち、オメガ−3(エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA))およびオメガー6(リノール酸(LA)およびガンマリノレン酸(GLA))の高用量の、細胞膜中の必須脂肪酸含量の正常化をもたらす特定の割合での使用に関する。より具体的には、本発明は、EPA、DHA、LAおよびGLAの組み合わせに関する。加えて、組成物はさらにビタミンE、ガンマ−トコフェロールおよび/またはビタミンAを含んでもよい。
【0007】
もう一つ別の実施態様において、本発明は、神経変性疾患、自己免疫疾患およびMSを患っているヒト対象を、上記した処方を用いて治療することを含む。一の実施態様にて、本発明の方法は、上記した処方を4ないし6ヶ月用いて前治療して患者の食習慣を調整し、関心のある細胞膜を正常化する。もう一つ別の実施態様において、本発明は、
(a)エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、リノール酸(LA)およびガンマリノレン酸(GLA)を含む、長鎖ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)のフラクション;
(b)一または複数の他のオメガ−3 PUFA(以下に定義されるような);および
(c)一または複数のモノ不飽和脂肪酸(MUFA)
を含む液体経口用医薬組成物を提供する。
該組成物はさらに飽和脂肪酸(SFA)およびビタミンA、ビタミンEおよびガンマトコフェロールからなる群より選択されるビタミンを含んでもよい。EPAは約500mg〜約5000mgの量で配合されてもよい。DHAは約1000mg〜約12000mgの量で配合されてもよい。LAは約1000mg〜約10600mgの量で配合されてもよい。GLAは約1000mg〜約16000mgの量で配合されてもよい。
【0008】
もう一つ別の実施態様において、EPAおよびDHAならびに他のオメガ−3脂肪酸は小腸での吸収を強化するのにトリグリセリドの構造形態にて投与される。例えば、再ミエリン化を強化するのに、モノ不飽和脂肪酸が特定のポリ不飽和脂肪酸(PUFA)およびガンマトコフェロールと組み合わせて使用される。
【0009】
他の目的、特徴および利点は、後記する発明の詳細な説明にて説明されており、その詳細な説明にてある程度明らかであろうし、あるいは本明細書に開示されている実施態様を行うことで理解されてもよい。これらの目的および利点は、書面による記載およびその請求の範囲にて具体的に指摘される方法および組成物により理解および獲得されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】エントリー基線での従前の治療の、治療なしに対する実験の全集団のグラフを示す。
【0011】
図2】エントリー基線での従前の治療の、治療なしに対するオール・タイム・オン・スタディ集団のグラフを示す。
【0012】
図3】実験の終わりでの従前の治療の、治療なしに対する包括解析(ITT)集団のグラフを示す。
【0013】
図4】オール・タイム・オン・スタディ集団におけるエントリーの24ヶ月前の再発の、エントリーの24ヶ月後の再発に対するグラフであって、ここで22、27、16および20の数値は基線前の2年間における個々の群の再発の数を示す。17、8、13および25の数値はエントリー基線の後の2年間(治療中)における個々の群の再発の数を示す。
【0014】
図5】治療中の0−12ヶ月および12−24ヶ月の間での群Bのプラセボに対する再発の数のグラフであって、群Bでは各期間で報告される再発の数は4であるが、プラセボ群では、各期間で、各々、報告される再発の数は10および15である。
【0015】
図6】群Cでの治療の間における再発の分散および頻度(再発/月)を示すグラフである。
【0016】
図7】エントリー前の2年間で報告された再発の回数が27回であるのに対する、群Bでの、エントリー基線から実験を終えるまで、6ヶ月毎に生じた再発の数を示すグラフである。
【0017】
図8】群Aの治療の間の再発の分散および頻度(再発/月)を示すグラフである。
【0018】
図9】群Bの治療期間の再発の分散および頻度(再発/月)を示すグラフである。
【0019】
図10】治療期間中の各群での6ヶ月毎の再発のグラフを示す。各群の一連のカラムにおける第1カラムは0〜6ヶ月の治療期間の再発の回数を示し;各群の一連のカラムにおける第2カラムは7〜12ヶ月の治療期間の再発の回数を示し;各群の一連のカラムにおける第3カラムは13〜18ヶ月の治療期間の再発の回数を示し、および各群の一連のカラムにおける第4カラムは19〜24ヶ月の治療期間の再発の回数を示す。
【0020】
図11】オール・タイム・オン・スタディ集団について、エントリー基線での年間再発率(ARR)x10(エントリー前の2年間のARR)の、治療中の6ヶ月毎のARRに対するグラフである。一連の各カラムの第1カラムは群AのARRを表し;一連の各カラムの第2カラムは群BのARRを表し;一連の各カラムの第3カラムは群CのARRを表し;および一連の各カラムの第4カラムは群D(プラセボ)のARRを表す。
【0021】
図12】オール・タイム・オン・スタディ集団について、異なるタイム・ウィンドウでの群B:プラセボのARRx10のグラフを示す。
【0022】
図13】治療群当たりのオール・タイム・オン・スタディ集団の障害進行度(平均EDSS/月)に関するグラフを示す。障害進行度を縦軸に取り、一番上にあるラインは群A(平均EDSSが2.65から始まり、最後には3.3まで上昇する)を表し、次が群Bのラインであり(平均EDSSが2.4から始まり、最後には2.7まで上昇する)、その次が群D(プラセボ)のラインであり(平均EDSSが2.4から始まり、最後には3.33まで上昇する)、一番下が2.11から始まり、最後には2.76まで平均EDSSが上昇する群Cを表す。群Cを表す。
【0023】
図14】オール・タイム・オン・スタディ集団の障害の持続進行についてのカプラン・マイヤー曲線のグラフを示す。一番上で始まるラインはプラセボを表し、次に続くラインは群Aを表し、その次が群Cに関するラインであり、最後に一番下のラインは障害がわずか10%蓄積して進行するに過ぎない、群Bを表す。
【0024】
図15】一番上にあるラインは群D(プラセボ)を表し、次が群Cのラインであり、つづいて群Aのラインであって、一番下のラインが群Bを表す。
【0025】
図16】群D(プラセボ)の、治療中の再発の分散および頻度(再発/月)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明は種々の形態にて具現化され得るが、以下の数種の実施態様の記載は、該開示が本発明の例示として考慮されること、本発明をその説明されている特定の実施態様に限定することを意図とするものではないこと、の理解の下でなされる。表題は単に便宜のために提供されるに過ぎず、本発明を制限することを何ら意図するものではない。表題の下で説明されている実施態様は他の表題下で説明されている実施態様と組み合わされてもよい。
【0027】
定義
「干渉する」なる語は、MSおよび他の変性疾患についての、活性化、阻害、制御、炎症工程(脱髄)にて関与する病態生理学的機構および/または代謝経路のアップまたはダウンレギュレーション、再ミエリン化、神経保護、アポトーシス、興奮毒性、酸化ストレス、遺伝子活性化、膜受容体リガンド結合のいずれも包含する。
【0028】
「共通する病態生理学的機構および/または代謝経路を共有する」なる語は、変性、自己免疫性、心血管性、神経学性、代謝性および遺伝性疾患または障害を脱髄することをいう。
【0029】
本明細書にて使用される「ポリ不飽和脂肪酸」または「PUFA」もしくは「LCPUFA」なる語は、特記されない限り、2個以上の炭素−炭素二重結合を有する鎖脂肪酸当たり、少なくとも18個の炭素原子を有する長鎖ポリ不飽和脂肪酸またはその供給源をいう。
【0030】
本明細書にて使用される「モノ不飽和脂肪酸」または「MUFA」もしくは「LCMUFA」なる語は、特記されない限り、1個の炭素−炭素二重結合を有する鎖脂肪酸当たり、少なくとも18個の炭素原子を有する長鎖モノ不飽和脂肪酸またはその供給源をいう。
【0031】
本明細書にて使用される「他のオメガ−3脂肪酸」または「他のPUFA」もしくは「他のLCPUFA」なる語は、特記されない限り、EPAおよびDHAを除く、2個以上の炭素−炭素二重結合を有する鎖脂肪酸当たり、少なくとも18個の炭素原子を有し、脂肪酸鎖の末端のメチル基から数えて第3と第4の炭素原子の間に第1の不飽和二重結合を有するポリ不飽和脂肪酸またはその供給源をいう。
【0032】
本明細書にて使用される「オメガ−3脂肪酸」または「n−3」および「ω−3」なる語は、特記されない限り、2個以上の炭素−炭素二重結合を有する鎖脂肪酸当たり、少なくとも18個の炭素原子を有し、脂肪酸鎖の末端のメチル基から数えて第3と第4の炭素原子の間に第1の不飽和二重結合のあるポリ不飽和脂肪酸またはその供給源をいう。
【0033】
本明細書にて使用される「オメガ−6脂肪酸」または「n−6」および「ω−6」なる語は、特記されない限り、2個以上の炭素−炭素二重結合を有する鎖脂肪酸当たり、少なくとも18個の炭素原子を有し、脂肪酸鎖の末端のメチル基から数えて第6と第7の炭素原子の間に第1の不飽和二重結合のあるポリ不飽和脂肪酸またはその供給源をいう。
【0034】
本明細書にて使用される「飽和脂肪酸」または「SFA」なる語は、特記されない限り、炭素−炭素二重結合のない鎖脂肪酸当たり、少なくとも16個の炭素原子を有する、飽和脂肪酸またはその供給源をいう。
【0035】
本明細書にて使用される「短鎖脂肪酸」なる語は、特記されない限り、炭素−炭素二重結合がないか、1、2個またはそれ以上の二重結合を有する鎖脂肪酸当たり、14個よりも少ない炭素原子を有する、飽和および/または不飽和および/またはポリ不飽和脂肪酸またはその供給源をいう。
【0036】
本明細書にて使用される「発明」または「介入」なる語は、特記されない限り、MSおよび/または他の変性および/または自己免疫疾患または症候群の予防および治療のための処方をいう。
【0037】
「治療」なる語は、(a)未だ該疾患に罹患していると診断されていないが、疾患に罹りやすい対象にて該疾患を発症することを妨げること;(b)該疾患を阻害すること、すなわちその進行を阻むこと;または該疾患を緩和すること、すなわち該疾患の退行および/または根絶を生じさせることにまで及び、かつ包含する。
【0038】
処方に利用される活性剤
エイコサペンタエン酸(EPA)
【0039】
EPAは、プロスタグランジン−3およびトロンボキサン−3ファミリーの前駆体として役立つ、海洋植物連鎖の重要なオメガ−3であるポリ不飽和脂肪酸である。メルク・インデックスの3562(2001年、第13版)を参照。EPAはまた、20:5(n−3);チムノドン酸(timnodonic acid);全−シス−エイコサ−5,8,11,14,17−ペンテン酸;および5Z,8Z,11Z,14Z,17Z−エイコサ−5,8,11,14,17−ペンテン酸としても知られている。EPAは無色油として存在する。本発明で用いられる場合、EPAの一日の全用量は約500〜約4000mgの範囲にある。魚類および微細藻類から得られるか、または合成的に生成される。ある実施態様において、EPAは約10%〜30%(w/w)の量でリエステル化トリグリセロール(rTG)の形態をしている。
【0040】
ドコサヘキサエン酸(DHA)
【0041】
DHAは海産魚油および多種のリン脂質に認められるオメガ−3脂肪酸である。それは透明な淡黄色油として存在する。メルク・インデックスの3432(2001年度、第13版)を参照。本発明で用いられる場合、DHAの一日の全経口用量は約1000〜15000mgの範囲にある。DHAはまた、セルボン酸(cervonic acid):全−シス−ドコサ−4,7,10,13,16,19−ヘキサエン酸;22:6(n−3);または4Z,7Z,10Z,13Z,16Z,19Zドコサ−4,7,10,13,16,19−ヘキサエン酸としても知られている。冷水海魚油はDHAに富んでいる。魚のDHAの大部分は光合成および従属栄養微細藻類に由来する。DHAも商業的に微細藻類(Crypthecodinium cohniiおよびSchizochytrium)より製造される。合成で製造することもできる。ある実施態様において、DHAは約30%〜70%(w/w)の量でrTGの形態をしている。
【0042】
リノール酸(LA)
【0043】
LAはオメガ−6必須脂肪酸であり、サフラワー油などの種々の植物油を抽出して得られる。無色ないし明黄色油として存在する。ハンドブック・オブ・ファーマシューティカル・エクシピエント、414−415(2006年度、第5版)を参照。本発明で用いられる場合、一日の全経口用量は約1000〜12000mgの範囲にある。LAはシス,シス−9,12−オクタデカジエン酸としても知られている。細胞膜の脂質中に存在する。多種の植物油に豊富に含まれており、ケシの実、サフラワー、ヒマワリ、コーン油およびルリジサ油の半分以上(重量)からなる。合成により製造することもできる。ある実施態様において、LAのエステル化トリグリセリド含量は約20%〜60%(w/w)である。
【0044】
ガンマリノレン酸
【0045】
GLAはルリジサ油より由来のオメガ−6ポリ不飽和脂肪酸である。それはまた普通に肝臓などの魚、動物の臓器、および特定の植物の種に含まれ得る。それは液体として存在する。本発明にて使用される場合、一日の全経口用量は約1000〜約18000mgの範囲にある。GLAはまた、ガモレイン酸(gamoleic acid);全−シス−6,9,12−オクタデカトリエン酸としても知られている。GLAは、マツヨイグサ(Oenothera biennis)油、ブラックカラント種子油、ルリジサ油、および大麻種子油などの植物および種子油より得られる。GLAはまた、食用大麻種子にてかなりの量で含まれ、およびスピルリナ、シアノバクテリアより見受けられる。合成により製造することもできる。ある実施態様において、エステル化トリグリセリド含量は約30%〜60%(w/w)である。
【0046】
他のオメガ−3PUFA
【0047】
本発明はまた、1または複数の18:3、18:4、20:4または22:5のオメガ−3PUFAを約100〜2500mgの範囲にある一日の全経口用量で含んでもよい。
【0048】
モノ不飽和脂肪酸(MUFA)
【0049】
本発明はまた、1または複数の18:1、20:1、22:1または24:1のMUFAを約10〜3500mgの範囲にある一日の全経口用量で含んでもよい。
【0050】
飽和脂肪酸(SFA)
【0051】
本発明はまた、1または複数の16:0または18:0のSFAを約50〜2000mgの範囲にある一日の全経口用量で含んでもよい。
【0052】
ガンマ(γ)−トコフェロール
【0053】
γ−トコフェロールは可溶性脂肪であり、ビタミンEの天然で存在する形態の一つである。それは淡黄色の粘性油として存在する。メルク・インデックスの9573(2001年度、第13版)を参照。本発明で用いられる場合、一日の全経口用量は約300〜約3000mgの範囲にある。
【0054】
ビタミンE
【0055】
ビタミンEは、典型的には、アルファ−トコフェロールのイソ型をいい、脂溶性ビタミンであって、本発明にて使用される場合、約10〜800mg/日の量で経口投与される。
【0056】
ビタミンA
【0057】
ビタミンAは、C2030Oの実験式を有するビタミンA(レチノール)で主に表される脂溶性ビタミンであり、その側鎖にある4つの共役二重結合はトランス配置にて存在する。レミントン:ザ・サイエンス・アンド・プラクティス・オブ・ファーマシー、1799(2000年度、第20版)の参照。メタノールまたはギ酸エチルなどの極性溶媒からの溶媒和結晶として存在する。メルク・インデックスの10073(2001年度、第13版)の参照。アルファ−カロテン(α−カロテン)はビタミンA先駆体である。α−およびβ−の両方の異性体の最も優れた供給源はニンジン、ヤシ油、および種々の種類の緑葉である。α−カロテンはβ−カロテンを結晶化させた後の母液中に存在する。それは深紫色のプリズム晶として存在する。メルク・インデックスの1865(2001年度の13版)の参照。本発明にて使用される場合には、一日の全体の経口用量は約0.1〜約5mgの範囲にある。
【0058】
他の成分は、リン脂質、セリン、イノシドール、コリン、エタノールアミン、アスコルビン酸、メラトニン、テストステロン、α−、β−およびγ−トコトリエノール、微量栄養素および酸化防止剤、例えばセレン、ギンコ・ビロバ(Ginko biloba)抽出物、コエンザイムQ10、他のPUFA、α−リノレン酸(LNA)、ビタミンD、ビタミンCおよびアルファ−リポ酸を包含しうる。
【0059】
本発明の開示はまた、上記した物の代謝産物を包含する。例えば、製剤はオメガ−6PUFAおよびLNA(アルファ−リノレン酸)のLA代謝産物を含んでもよい。もう一つ別の例にて、該製剤は、GLA、DGLA(ジホモ−ガンマ−リノレン酸)、22:4n−6および22:5n−6必須脂肪酸からなる群より選択される有効量のLAの代謝産物および/または18:4n−3、20:4n−3、20:5n−3、22:5n−3および22:6n−3の必須脂肪酸からなる群より選択される有効量のアルファ−リノレン酸の代謝産物を含んでもよい。
【0060】
製剤およびその使用の総括
【0061】
上記した成分の組み合わせは、予期せぬことに、有意な副作用もなく、(a)年間再発率(ARR)の減少;(b)再発頻度の減少;(c)障害進行の減少(総合障害度評価尺度(EDSS)の評点が1点増加する可能性の減少);および(d)磁気共鳴画像(MRI)スキャンでの脳の新規または増大するT−2病変の成長の減少などの総合的MS病的症状に対して統計学的に有意な陽性作用を示すことにより、MSにおける、脱髄の減少、再ミエリン化の促進および神経保護の促進に至る代謝経路を相乗的に制御、調整、促進および/または開始させることが明らかとなった。本発明の一の目的は、神経変性自己免疫疾患を体験し、障害が徐々に蓄積する患者の身体的状態を改善し、そうしてクオリティ・オブ・ライフを改善することである。
【0062】
理論に捕らわれることなく、EPA/DHA オメガ−3およびオメガ−6リノール酸(LA)/ガンマ−リノレン酸(GLA)は、MS病態生理レパートリーにあるほとんど全ての既知の経路に関与し、それらを調整すると考えられる。例えば、オメガ−3およびオメガ−6PUFAは前炎症性サイトカインの生成を阻害しうる。T−細胞増殖はオメガ−6およびオメガ−3PUFAのいずれかの補足で抑えられ得る。DHAは樹状細胞成熟、T−細胞の刺激および分化(MSなどの自己免疫性と関与する)ならびにT−細胞アポトーシスを予防しうる。食事でのDHAおよびEPAの高摂取は前炎症およびアテローム生成関連の遺伝子発現を減少させうる。EPAおよびDHAは老化した脳にて神経保護作用を有し、レチノイドX受容体(RXR)およびペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)の内因性リガンドであり、核受容体の加齢に伴う減少を反転させ、神経形成を増加させうる。インビトロにて、オメガ−3PUFAは、神経損傷および神経細胞の死に至る破壊的細胞カスケードの事象のトリガーとなりうる、Ca2+の神経細胞蓄積を妨げることが明らかにされた。DHAは発症機構の主たる要素である、興奮毒性、炎症および酸化ストレスに対する神経保護剤である。前駆細胞の成熟ミエリン形成オリゴデンドロ細胞への分化は、新しいオリゴデンドロ細胞膜を広範囲にわたって形成し、脱髄軸索を再び保護することにより達成され、PUFAはこの工程を支持しうる。理論に捕らわれることなく、EPA/DHA/LA/GLA製剤は、神経細胞およびオリゴデンドロ細胞のアポトーシスおよび神経変性のおそらくは原因であり、それに関与する、小胞体「ストレス」(ER「ストレス」)と称される事象を制御および/または停止させることさえできる。
【0063】
ビタミンE(アルファ−トコフェロールであると考えられる)はガンマ−トコフェロールでの遊離基捕捉に有効に関与し、それらは共に酸化窒素遊離基の捕捉に極めて効果的である。ビタミンEおよびガンマ−トコフェロールは共にまた、細胞シグナル伝達の修飾、遺伝子転写の制御(すなわち、細胞外蛋白の制御に関与する遺伝子ならびに接着および炎症と関連付けられる遺伝子)、免疫機能の修飾およびアポトーシスの誘発を含む、非抗酸化特性を発揮する。
【0064】
本発明に係る製剤は、MSを特異的に治療および/または予防するのに使用され得るが、他の神経変性および/または自己免疫疾患および症候群について使用することも可能である。該製剤はまた脊髄損傷の回復にも効果的であり得る。
【0065】
MSの他に、多くの変性、自己免疫性症候群では、その根本原因が、その全てが同じ原因による結果であり得る、共通する機能不全的機構および/または代謝経路にあることがわかる。一般に、これらの共通する機能不全的機構および/または代謝経路は、免疫系機能不全、炎症、脱髄、アポトーシス状態の亢進、非制御的変性酸化ストレス、再ミエリン化および神経保護についての不活化または機能的無力化である。したがって、本発明はかかる疾患の治療に有用であるかもしれない。これらすべての疾患の発症に至るパラメータで高度に共通するいくつかは、それらのすべてを共有する特定の経路に依存する。例えば、リン脂質は神経細胞膜の主成分である。神経細胞膜では、Sn2として知られる、リン脂質の中央炭素原子が、通常、DHA、アラキドン酸(AA)、時にEPAなどの長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LCPUFA)に結合する。LCPUFAは3個以上の二重結合を有する18〜26個の炭素原子を含有する脂肪酸である。神経細胞が活性化される場合、ホスホリパーゼA2(PLA2)として得られる一群の酵素の活性は増加する。PLA2はSn2位置からLCPUFAを放出し、リゾリン脂質(LyPL)として知られるものの一の分子(グリセロール骨格のSn2位置(またはSn−1位置)に結合した脂肪酸のない脱アシル化リン脂質)も放出される。リゾリン脂質は、接着分子、サイトカインおよび成長因子をコードする遺伝子の転写活性化による炎症を維持することに一の役割を果たしうる。これらの分子は共に極めて活性な細胞シグナル伝達物質であり、多種の方法にて細胞機能を変化させうる。加えて、LCPUFAは、神経細胞機能、細胞増殖および成長を調整するプロスタグランジン、ロイコトリエン、ヒドロキシ酸などの短命分子に変換され得る。
【0066】
細胞機能で正常であるためには、この活性化は一時的であり、LCPUFAおよびLyPLが除去されると、該活性化は終わることが重要である。仮にこのことがある理由から可能でないならば、その場合、この工程はLyPLが破壊的であり得るため、膜損傷をもたらす。加えて、遊離LCPUFAは極めて活性な遊離基に容易に酸化され、それで多大な神経および細胞損傷がもたらされうる。これらの膜の損傷が、多発性硬化症、アルツハイマー病、他の認知症症候群、パーキンソン病およびハンチントン病等を含む、多くの神経変性障害に対する主な病理学的理由であるとする確信が高まっている。
【0067】
LCPUFAおよびLyPLの関与するシグナル伝達工程は、LCPUFAがアシル−CoAシンセターゼとして知られる一群の酵素により補酵素A(CoA)に連結されると、その大部分を略終えることとなる。次に、LCPUFA−CoA誘導体は、アシルCoA:リゾリン脂質アシルトランスフェラーゼとして知られる一群の酵素により、LyPLに連結される。このように、このシーケンスは、神経細胞から、LCPUFAおよびLyPLを除去し、シグナル伝達をトリガーする事象が終わり、それで次の刺激に対する神経単位が調製される。
【0068】
神経変性症状では、LCPUFAの酸化に伴う遊離基の形成の増加と結びついたホスホリパーゼのような膜分解酵素の非制御的活性化およびLyPLにより引き起こされる膜損傷があるようである。多発性硬化症、アルツハイマー病および他の認知症についての、パーキンソン病、てんかん、ハンチントン病等における、過剰なホスホリパーゼ活性に伴う膜損傷が詳細に記載されている。
【0069】
したがって、これらすべての状況において、普段通りには終わらない、ホスホリパーゼ活性およびシグナル伝達活性の増加を示すいくつかの証拠がある。したがって、EPAに富む物質が精神障害にて有益であるとのありふれた観察は、EPAがAAとの競合的阻害により主にホスホリパーゼA2を阻害することが分かっているため、ある意味で説明されうる。EPAはAAよりも特定のヒト脳酵素について異常に高いアフィニティを有する。このことはEPAが他のLCPUFAよりもずっと容易にそのサイクルに入り、EPA−CoA誘導体を形成し、LyPLと連結してその工程を終え、遊離LyPLの活性を順次終えるであろうことを意味する。明らかなように、EPAは、他のLCPUFAよりも効果的に、それが開始させた活性化を停止させるであろう。EPAはリン脂質のSn2位置に組み込むことでAAと競合するため、EPAはまた、AAのこの位置への組み込み量を減少させるであろう。EPAはそれ自体が、共に抗炎症分子であるプロスタグランジンPGI3およびプロスタグランジンPGE3などの所望の保護化合物に変換され得るLCPUFAである。EPAより誘導される化合物はAAより誘導される同等の化合物よりも有害な可能性がずっと小さいようである。したがって、AAのEPAとの置き換えは、損傷の少なくとも一部が、プロ炎症性化合物に変換され得るAAを放出する、ホスホリパーゼの過活動によるものであるため、上記したあらゆる神経変性障害で特に価値のある可能性がある。
【0070】
本発明者らがこれまでに検討したように、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病および他の認知症を含む、広範囲に及ぶ神経学的、(神経)変性、精神学的および自己免疫性疾患/障害が、多くの人々で共通する発症機構、膜酸化損傷、酸化ストレスおよびホスホリパーゼの活性化に帰結することが広く示唆される。疾患間の違いは、蛋白の特性に、最も影響を受けた神経細胞の部位に関するが、プロセス全体は類似したものである。可能性として示唆される治療方法のいくつかはグルタメート放出阻害剤および遊離基スカベンジャーを包含する。しかしながら、従来技術は、強抗酸化剤を、同時および相乗的治療効果のために多量の膜構成要素(membrane builing blocks)と関連機構の制御物質とを共同して含む、処方を教示するものではない。本発明はこれらすべての疾患が共有するその共通の機構に影響を及ぼしうる。本発明は同時かつ相乗的に影響を与え、膜を修復し、ホスホリパーゼを阻害し、抗酸化防御を強化しうる。本発明は、これらすべての疾患および症候群に関する一般的な既存薬に対するアジュバントとして使用されてもよい。
【0071】
精神的および神経学的障害を惹起する異常のいくつかが神経伝達物質または受容体レベルでなく、受容体後シグナル伝達レベルであるとする多くの証拠がある。MSの従来薬の作用機構を考えれば、本発明者らは、これらの薬物を服用する患者の鬱病などの副作用は受容体後シグナル伝達の結果である可能性があると結論付けることができる。本発明は、薬物関連の鬱病および/または他の副作用を直に干渉することができ、場合によってその工程を終わらせることのできる特定の分子(例えば、EPAとDHAは、EPAと同様に、鬱病などの精神病理学的障害と関連付けられる、ヒト脳酵素FACL−4について、大きな脳酵素アフィニティを有する活性分子である)を含有する。
【0072】
これら特定の症候群、具体的にはMSの病態生理学的プロセスは共通の特徴を示し、かつその特徴を共有する。理論に捕らわれることなく、共通の特徴はLCPUFAであると考えられる。特定のLCPUFAが欠けていることが明らかにされ、その同じLCPUFAがまた、何らかの方法で、関連するすべての経路にて、陽性または陰性で劇的に干渉しうることも明らかにされた。これらの同じLCPUFAは時に、酵素阻害剤または活性化剤、シグナル促進剤、受容体リガンド、遺伝子活性化剤、経路中間体、神経保護剤、膜構成要素、主要ミエリン成分、抗酸化剤として関連付けられ、アポトーシスおよび興奮毒性機構に関連付けられる。加えて、重要な膜脂質成分である、これらの同じLCPUFAが、これら患者における生理膜内容物と比べて極めて低含量にて認められる。したがって、本発明の対処は相乗的かつ同時に干渉して、治療を完了することである。
【0073】
分子の再エステル化形態が本発明にて使用されてもよい。「再エステル化」なる語は魚体油(fish body oil)(FBO)から製造される生成物について使用され、そこではトリグリセリド(TG)内容物はエチルエステルに変えられ、ついで分子蒸留され、短鎖および飽和脂肪酸を除去し、EPAおよびDHA含量を増加させる。次に、エチルエステルをグリセリドに酵素的に再び変換する。酵素的再エステル化操作は当該分野にて周知である。短鎖および過剰量のSFAは、本発明に係る薬剤により標準化されなければならない、代謝経路および/または機構の望ましくない干渉因子であるため、それらは除去されるのが好ましい。一般に、あらゆる側面にて作用を干渉する可能性がある。かかる短鎖および過剰量のSFAの利用性はまた、特にMSの、および/または他の神経変性および/または自己免疫疾患または障害の患者における細胞膜のまだ生理的でない含量を標準化する目的を干渉するであろう。これら特定のrTG型分子の使用は相対的に安定した生成物は別にして高活性を確実なものとする。酵素的再エステル化操作は当該分野にて周知である。
【0074】
一の実施態様において、本発明者らは、この度、予期せぬことに、かつ意外にも、本発明の薬剤のうち、再エステル化トリグリセロール(rTG)EPA、rTG構造中に他のオメガ−3脂肪酸と一緒にしたDHA、TG構造中にMUFAおよびSFAと一緒にしたTG LA、GLA、ガンマ−トコフェロール、ビタミンAおよびビタミンEからなる製剤での治療が、統計学的に、MSのすべての評価治療特性にて有意な陽性結果を提供することを見出した。
【0075】
本発明が、従来の第一選択治療薬(インターフェロン、酢酸ガラティラメル)と一緒になって、従来の治療薬単独でよりもずっと長期にわたって、患者を再発寛解(RR)相に維持しうるとの予期せぬ知見は、よりずっと毒性の高い第二選択治療薬が使用されるところの、疾患の進行の遅れをもたらす。結果として、本発明は患者の治療およびクオリティ・オブ・ライフに価値のある寄与を提供する。
【0076】
かくして、本発明は、MSの予防および/または治療に、神経変性疾患または神経変性疾患に発展する危険のある疾患、精神病または精神病に発展する危険のある疾患、他の変性疾患または変性疾患に発展する危険のある疾患、自己免疫疾患または自己免疫疾患に発展する危険のある疾患、免疫介在性炎症または免疫介在性炎症に発展する危険のある疾患、炎症または炎症に発展する危険のある疾患、心血管疾患または心血管疾患に発展する危険のある疾患、てんかん発生またはてんかんあるいはてんかん発生またはてんかんに発展する危険のある疾患の治療に有用な製剤を提供する。一の実施態様において、発明の経口液体処方は以下のフラクション:
・オメガ−3長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LCPUFA)からなるフラクション(a);
・オメガ−6 LCPUFAからなるフラクションであって、そのフラクションは24個より少なくない炭素の鎖および18個より少なくない炭素の鎖のLCPUFAからなる群より選択される3ないし4種(またはそれ以上)の異なるMUFA分子を含有し、20個より少なくない炭素の鎖および16個より少なくない炭素の鎖を有する長鎖脂肪酸の群より選択される少なくとも1ないし2種の異なる飽和脂肪酸(SFA)分子を含有するフラクション(b);
・ガンマ−トコフェロールからなるフラクション(c);および
・抗酸化剤からなるフラクション(d)
を含む。
【0077】
以下にさらに記載されるように、本発明は、医薬用、滋養用、医療食品用、機能性食品用、臨床滋養用、医療滋養用または食事用製剤とすることができる。本発明はまた、液体、粉末、バー、クッキー、デザート、濃縮体、ペースト、ソース、ゲル、エマルジョン、錠剤、ソフトゲルカプセル、ハードゼラチンカプセル、他の型のカプセルの形態、または他の投与形態とし、単回用量または複数回用量として、生物活性成分の一日用量を提供しうる。化合物はまた、静脈内、腹腔内、筋肉内または皮下経路のいずれかを用いて、直接的に、あるいは種々の油、エマルジョンまたは分散液に処方して非経口的に投与されてもよい。貯蔵の間、生成物を安定に保持し、使用または投与を容易にするために、当該分野にて既知の方法を適用することで該生成物を包装することができる。
【0078】
本発明の投与は、MSの治療および予防を、および神経変性疾患または神経変性疾患に発展する危険のある疾患、精神病または精神病に発展する危険のある疾患、他の変性疾患または変性疾患に発展する危険のある疾患、自己免疫疾患または自己免疫疾患に発展する危険のある疾患、免疫介在性炎症または免疫介在性炎症に発展する危険のある疾患、炎症または炎症に発展する危険のある疾患、心血管疾患または心血管疾患に発展する危険のある疾患、てんかん発生またはてんかんあるいはてんかん発生またはてんかんに発展する危険のある疾患の治療をもたらす。理論に捕らわれることなく、本発明は、MSの発症に含まれる機構の同時干渉を生じさせ、MSについて消散、標準化、修復、脱髄、変性および神経保護に含まれる関連する機構の組織化を生じさせる。特に、発症に関連して含まれる機構は免疫関連性炎症、脱髄、酸化ストレス、興奮毒性、変性、再ミエリン化および神経保護である。
【0079】
フラクション(a)は長鎖ポリ不飽和脂肪酸、好ましくはオメガ−3脂肪酸を含む。
【0080】
フラクション(b)は長鎖ポリ不飽和脂肪酸、例えばオメガ−6脂肪酸を含む。配合しうるさらなる脂肪酸はMUFAおよびSFAである。
【0081】
(EPAおよびDHAの)オメガ−3および(LAおよびGLAの)オメガ−6の長鎖ポリ不飽和脂肪酸(LCPUFA)の混合物は、オメガ−3 LCPUFA:オメガ−6 LCPUFAが約1:1(w/w)の割合で含まれてもよい。
【0082】
一の実施態様は、EPAおよびDHAオメガ−3 LCPUFAと、他のオメガ−3 LCPUFAとの混合物として、オメガ−3 LCPUFAを包含する。もう一つ別の実施態様は、MUFAおよびSFAの混合物との、オメガ−6(LAおよびGLA)を包含する。
【0083】
DHAおよびEPAが、DHA:EPAが、約1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、2:1、3:1、4:1または5:1(w/w)の割合で含まれる場合に、好都合な治療結果が得られる。さらには、存在しうる他のオメガ−3 LCPUFAは18:3(アルファ−リノレン酸)、18:4(ステアリドン酸)、20:4(エイコサテトラエン酸)、22:5(ドコサペンタエン酸)および他のオメガ−3 LCPUFA分子である。
【0084】
一の実施態様において、オメガ−6 LCPUFAはリノール酸(LA)およびガンマ−リノール酸(GLA)である。LAとGLAが、LA:GLAが約3:1、2:1、1:1(w/w)の割合にて含まれる場合に、有利な結果が得られる。存在しうるさらなる脂肪酸は、MUFA 18:1(オレイン酸)、20:1(エイコセン酸)、22:1(ドコセン酸)および24:1(テトラコセン酸)およびSFA 16:0(パルミチン酸)および18:0(ステアリン酸)である。
【0085】
本発明の一の実施態様にて、LAとGLAは、脂肪酸組成物中に、LA:GLAが約1:1から約5:1(w/w)までの割合にて該組成物に存在する。もう一つ別の実施態様にて、脂肪酸組成物中のLA:GLAの割合は、約1:1から3:1(w/w)までである。
【0086】
もう一つ別の本発明の具体的な実施態様において、オメガ−3 LCPUFA、DHA、EPAおよび他のオメガ−3脂肪酸は、EPA、DHAおよび他のオメガ−3脂肪酸の組み合わせを、再エステル化トリグリセリド(最低値60%)、ジグリセリド(約33%)、モノグリセリド(約2%)の構造形態の混合物、および約2%のエチルエステルの構造形態にて含む。グリセリドフラクションはすべてEPA、DHAおよび他のオメガ−3脂肪酸を含有する。EPA、DHAおよび他のオメガ−3脂肪酸を少なくとも60%再エステル化トリグリセロール形態にて含む場合に、有利な結果が得られる。
【0087】
オメガ−3 LCPUFAが、80%より小さくない再エステル化トリグリセロール(rTG)含量でrTG形態であり、DHAおよびEPAが、魚体油(FBO)のLCPUFAトリグリセリド再エステル化の結果として、好ましくは少なくとも約80−96%の範囲にある場合に、有利な結果が得られる。rTGとしての他のオメガ−3の全含量が約4%より小さくなく、20%までの場合に、有利な結果が得られる。
【0088】
一の実施態様において、EPAのrTG含量は約8%(約72mg/gのフラクション(a))ないし26%(234mg/gのフラクション(a))であるか、またはEPAのrTG含量は約17%(153mg/gのフラクション(a))である。好ましいDHAのrTG含量は約24%(216mg/gのフラクション(a))ないし78%(702mg/gのフラクション(a))、より好ましくは約50%(459mg/gのフラクション(a))である。この実施態様では、他のLCPUFAがさらに存在し、18:3(アルファ−リノレン酸)、18:4(ステアリドン酸)、20:4(エイコサテトラエン酸)、22:5(ドコサペンタエン酸)のオメガ−3 LCPUFA分子のうち2、3または4個より少なくないLCPUFAが、EPAおよびDHAと共に、再エステル化トリグリセロールの自由Sn位置を占める場合に、最良の結果が得られる。
【0089】
好ましい全体(EPA+DHA+他のオメガ−3)のオメガ−3のLCPUFAは、rTG値として、約60−85%(好ましくは66%、最低600mg/gのフラクション(a))である。酵素的再エステル化工程が、Sn1位置でEPAおよびDHAの約33%、Sn2位置でEPAおよびDHAの33%、およびSn3位置でEPAおよびDHAの33%であることを意味する、グリセロール上の無作為に位置付けられるEPAおよびDHAでの再エステル化工程である場合に、有利な結果が得られる。
【0090】
本発明の特定の実施態様にて、オメガ−3 LCPUFAは、天然に存するか、あるいは明細書に記載の範囲内にあり、分子構造である分子含有量の成分を有する特定の海産油または化学的に構成される油を個々に添加して、またはその添加を通して供給される自由分子として、エチルエステル、遊離脂肪酸、モノ−、ジ−またはトリ−グリセリド、リン脂質、アミドまたは脂肪酸の塩の形態にて化学的に生成され得る。
【0091】
オメガ−6 LCPUFAが、30%より小さくなく、70%までの含有量のエステル化トリグリセロール(TG)の形態であり、LAおよびGLAが約55−65%である場合に、有利な結果が得られる。TGの約20−60%、好ましくは少なくとも35%は、Sn−1またはSn−3位置にLAを有するべきである。TGの約20−60%、好ましくは少なくとも40%は、Sn−2位置にGLAを有するべきである。全体のLA TG含有量が20−45%(200mg/g〜450mg/gのフラクション(b))、好ましくは少なくとも35−42%(350mg/g〜420mg/gのフラクション(b))、より好ましくは380mg/gのフラクション(b)であり、全体のGLA TG含有量が15−40%(150mg/g〜400mg/gのフラクション(b))、好ましくは少なくとも15−22%(150mg/g〜220mg/gのフラクション(b))、より好ましくは180mg/gである場合に、有益な結果が得られる。さらにMUFAを配合して用いられてもよく、2、3または4個より多くない異なるMUFA分子が18:1(オレイン酸)、20:1(エイコセン酸)、22:1(ドコセン酸)、24:1(テトラコセン酸)MUFA分子および16:0(パルミチン酸)、18:0(ステアリン酸)の両方のSFA分子の群より選択され、TG上の自由Sn位置を占める場合に、有利な結果が得られる。
【0092】
他の実施態様において、TG含有量の10−30%がMUFAであり、ここでオレイン酸が好ましくは少なくとも14−20%である場合に、有益な結果が得られる。他のMUFA(エイコセン酸、ドコセン酸、テトラコセン酸)の含有量が約3−15%、最も好ましくは5−10%であり;およびSFAの含有量、4−16%がパルミチン酸で、1−10%がステアリン酸であり、最も好ましくは8−12%のパルミチン酸および2−5%のステアリン酸である場合に、極めて有益な結果が得られる。
【0093】
一の実施態様にて、EPA+DHA+LA+GLAの全体の一日の経口用量は約3000mg〜22000mgである。もう一つ別の実施態様において、該用量は約4650mg DHA、約1650mg EPA、約2000mg GLAおよび3850mg LAを含んで、12000mg/日である。
【0094】
もう一つ別の実施態様において、18:3、18:4、20:4、22:5の他のオメガ−3 LCPUFAの全体の日用量は、約300mg〜2400mg、または約600−1000mgである。しかしながら、18:3、18:4、20:4、22:5 LCPUFAの全体量の、EPA+DHA+LA+GLAの全体量に対する割合は0.04重量/重量より大きいが、0.10重量/重量より大きくなることはない。約0.06重量/重量で有益な結果が得られた。
【0095】
18:1、20:1、22:1、24:1のMUFA分子の全体の日用量は約1500mg〜3500mgあるいは約2500mgであり、18:1(オレイン酸)が約1300mgで、残りのMUFA(20:1、22:1、24:1)が約500mgである。
【0096】
16:0、18:0 SFA分子の全体の日用量は約500mg〜2000mg、または約1300mgであり、16:0を約650mg〜1000mgで、18:0を約150mg〜450mgで含む。しかしながら、MUFAの全体量のSFAに対する割合は1.0重量/重量より大きくすべきである。
【0097】
18:1、20:1、22:1、24:1の、EPA+DHA+LA+GLAの全体量に対する割合は0.20重量/重量より大きくすべきではなく、16:0、18:0の、EPA+DHA+LA+GLAの全体に対する割合は0.10重量/重量より大きくすべきではない。
【0098】
オメガ−6 LCPUFA、MUFAおよびSFAは、天然に存するか、あるいは明細書に記載される範囲内にあり、分子構造である分子含有量の成分を有する植物油または化学的に構成される油を個々に添加して、またはその添加を通して供給される自由分子として、エチルエステル、遊離脂肪酸、モノ−、ジ−またはトリ−グリセリド、アミド、リン脂質または脂肪酸の塩の形態にて化学的に生成され得る。
【0099】
理論に捕らわれることなく、フラクション(a)および(b)の機能は、対象に、これらPUFAの含有量に関して、あらゆる国の国民の日常の食生活の消費習慣をかるく越える高用量のオメガ−3およびオメガ−6(約1:1重量/重量)を供給することである。一の目的は、対象のPUFA摂取量と、一日に消費される全体のオメガ−3およびオメガ−6脂肪酸の平衡を1:1重量/重量の割合の範囲内で保たせることである。このことは、(オメガ−3および/またはオメガ−6に関連して)国民が食生活を通して行う日常の消費とは別に、約1:1の重量/重量のオメガ−3:オメガ−6の推奨される日々の割合に沿って対象を正常化および適応させるようにする。例えば、先進工業国、具体的には米国では、今日、オメガ−3のオメガ−6脂肪酸に対する割合が正常な割合を大きく越えて1:15重量/重量に達した。食事の正常化はこれら特定のLCPUFAについて細胞膜含有物、具体的にはMSに関連して、関心のある細胞の含有物の正常化を、同時にMS治療と関連付けられるすべての機構での干渉をもたらすであろう。リン脂質の脂肪酸組成は膜の生物物理学的(および機能的)特性(例えば、膜流動性、膜輸送等)を決定し、細胞全体の完全性および細胞内および細胞間の連絡(シグナル伝達)にて重要な役割を果たす。
【0100】
オメガ−3およびオメガ−6 LCPUFAは、その関連する機構およびMS病態生理学に関する生物学的経路:炎症作用、脱髄作用、興奮毒性作用、変性作用、アポトーシス作用、神経保護作用および再ミエリン化作用にて基本的な相乗的役割を果たす。全体として、脂肪酸は異なる作用機序;(a)細胞内シグナル化経路の活性化;(b)脂質ラフト結合蛋白の活性化;(c)トール様受容体(TLR)との結合;(d)遺伝子発現の制御;(e)転写因子の活性化;(f)細胞死の誘発;(g)エイコサノイドの生成;(h)反応性酸素種(ROS)の生成;および(i)反応性窒素種(RNS)の生成、により白血球機能に影響を与えうる。PUFAはまた、通常は、脳神経細胞を保護する、血液脳関門(BBB)の崩壊の原因となりうる特定のマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の生成を干渉する可能性がある。
【0101】
神経保護作用を有するオメガ−3脂肪酸のEPAおよびDHAは、レチノールX受容体(RXR)およびペルオキシソーム活性化受容体(PPAR)の内因的リガンドであり、内因的オリゴデンドロ細胞先駆体の細胞分化および再ミエリン化の陽性制御物質であるRXRガンマを活性化するであろう。DHAの補充はまた、オメガ−3脂肪酸の神経保護および再ミエリン化、および/または神経保護に対するEPA/DHAの陽性作用、および/または再ミエリン化機構、および/または代謝経路の根底にある付加的な機構の結果として、可能性のある受容体発現を増加させるであろう。
【0102】
オメガ−3のPUFAは神経保護と関連付けられるが、酸化ストレス、炎症反応、神経細胞およびオリゴデンドロ細胞の生存および軸索損傷回復を制御する機構とも関連付けられる。脂質過酸化、蛋白酸化およびRNA/DNA酸化はすべてDHAの投与により有意に減少するであろう。かかる場合には、多量のDHAおよび/またはEPAは、過剰量の膜のPUFAの過酸化を妨げるのに、ビタミンA、ビタミンEおよびガンマ−トコフェロールなどの抗酸化分子の存在を必要とする。オメガ−3 LCPUFAの存在下でのシクロオキシゲナーゼCOX−2の誘発は、炎症性サイトカイン、ケモカインおよび接着分子の生成の阻害をもたらす。結果として、マクロファージのリクルートは減少し、神経およびオリゴデンドロ細胞の生存は実質的に増えるであろう。
【0103】
LCPUFAはまた、ミエリン生成を誘発し、促進させるであろうし、このことが脱髄疾患の療法にてLCPUFAを用いる付加的な理由でもある。LCPUFAは、その膜組成、ならびにミエリン化の重要な事象である、オリゴデンドロ細胞でのオメガ−6 PUFAによるミエリン塩基性蛋白の蛋白リン酸化に有利に働く、膜磁性形成に影響を及ぼすことによりオリゴデンドロ細胞の機能を改変するであろう。LCPUFAは再ミエリン化作用に特異的なオリゴデンドロ細胞のミエリン蛋白のmRNAレベルの生成をアップレギュレートするであろう。プロテオリピド蛋白、ミエリン塩基性蛋白およびミエリンオリゴデンドロ細胞蛋白のmRNAのレベルはほとんどすべての脳領域で増加するであろう。LCPUFAは付加的にミエリン化蛋白のCNPaseのレベルを増加させるであろう。
【0104】
通常は、その体部分がDHA LCPUFAにより構成される、病原性神経細胞を標準化するのに多量のDHAが必要とされる。供給されるDHAの大部分がこの作用を標的として使用される結果として、高アルファ−リノレン酸食(LNA)はLNAを増加させるが、乳児期のラットの脳ではDHA含有量は増えない。かくして、脳で多量のDHAが必要とされる場合、LNAではなく、DHAそのものが投与されるべきである。これが本発明の主成分としてLNAを用いないとした理由である。加えて、補充されたDHAのある程度はなおもレトロ変換機構を介してEPAの供給源ともなり得、このことがEPAとの関連でDHAの使用量を増やすもう一つ別の理由でもある。
【0105】
理論に捕らわれることなく、フラクション(a)および(b)のEPA、DHA、LAおよびGLAに加えて、さらに加えたLCPUFA、MUFAおよびSFAの機能および役割は、それらが新たな生理的ミエリン、その上に他の細胞膜の構成要素であるから、ミエリンの再構築、再ミエリン化および神経保護のために、神経細胞リン脂質の直の供給源を提供することである。これらの分子のフラクションはまた、その一部が正常な細胞形成および正常な機能に必要とされるエネルギー源として使用されるであろう。細胞膜の二層は、これらの細胞膜が異常に高い流動性で特徴付けられ、該細胞は、二層内でPUFAの鎖が飽和し、その構造配置が変化する結果として、破裂するであろうことを理由として、PUFAで独占的に構成されないし、形成され得ない。MUFAおよびPUFAの割合に沿った制限量のSFAは、新たに形成される生体膜の生理学的組成物の含有物と、利用可能なコレステロールおよび構造蛋白との平衡を保つであろう。リン脂質の一部として正常な生体膜にある通常のSFAは:ステアリン酸およびパルミチン酸である(その2種の脂肪酸のうち一つはリン脂質骨格上に見られるからである)。再びリン脂質の一部として正常な生体膜に見られる最も有用なMUFAはオレイン酸である。生理学的な流動性、移動性および一体性を有し、生理学的および正常な機能を示すためには、異なるLCPUFA、PUFA、MUFAおよび少量のある種のSFAからなる、新たなミエリンの形成が必要である。これら分子の利用性はまた、存在する神経細胞中、および他のすべての細胞膜中でのその含有量を正常化することにより、発明の製剤の予防能を支持するであろう。ある意味、それらは神経保護剤を助成し、神経保護剤として機能するのに必要な薬剤であると考えられ得る。これらの付加的な分子は、リン脂質の一部、ならびにLCPUFAのDHA、EPA、LAおよびGLAであろう。その原因となる病理学的機構が部分的に細胞膜成分の生理学的でない含有量によるものである病態にて、その原因を処置することなく、これらの病態が反転することを期待するのは現実的ではない。かかる病態では、生理学的な細胞膜の脂質−脂肪酸の成分は病理学的機構にて、およびその反転に利用可能でなければならない。膜の脂質−脂肪酸含有量の標準化に必要とされるこれら分子のいくつかは異なる代謝経路を介して生成され得るが、それでも適切な原料が供給され、側面から提供されなければならず、消費される食事を標準化する以外に、他の条件ではこのことは保証され得ない。加えて、必要とされる場合、特に関連付けられる分子成分が欠乏する結果、問題を抱えている生物内でミエリンなどの生理学的に機能する構造の再形成のための利用性は、保証され得ない。脂質代謝作用の特定の酵素もこれらMS患者では不足しているかも知れず、結果として、必要とされる分子は、生物により必要とされる場合に、形成される代わりに、食事を通して消費されることが要求される。結局は、正常な流動性、移動性および生理学的機能を有する細胞膜を形成するために、限定かつ平衡した量の特定の長さの炭素鎖のSFAも必要とされる。
【0106】
上記されるように、フラクション(c)はガンマ−トコフェロールを含む。ガンマ−トコフェロールの日用量は約100mg、約200mg、約500mg、約1000mgまたは約1500mgであってもよい。約760mgの天然ガンマ−トコフェロールイソフォームが本発明の製剤にて使用された場合に、有益な結果が得られる。ガンマ−トコフェロールはまた、化学合成された、遊離ガンマ−トコフェロール、塩またはエステル化された形態にて、あるいは天然のガンマ−トコフェロールをエステル化形態にて、または塩として供給され得る。
【0107】
フラクション(d)は抗酸化特性を提供し、抗酸化剤として、ビタミンAを、好ましくはベータ−カロテンの形態にて、およびビタミンE(アルファ−トコフェロールイソフォーム)を含む。ビタミンAの日用量は約0.1mg〜0.5mg、約0.6mg〜1.5mg、または約0.6mgである。ビタミンEの日用量は約15mg〜50mg、または約22mgである。他のいずれのカロテノイドまたはリポ酸も使用され得る。ビタミンCおよびセレン塩も含まれうる。
【0108】
本発明は、天然におよび/または化学的に、および/または分子的におよび/またはいずれか他の方法にて調製および/または合成されたインターフェロンおよび/または酢酸ガラティラメルおよび/またはミトキサントロン、および/またはナタリズマブおよび/またはダクリズマブ、および/またはアレムツズマブおよび/またはリツキシマブ、および/または他のモノクローナル抗体および/またはクラドリビン、および/またはフィンゴリモドおよび/またはBG−12および/またはフマル酸ジメチルおよび/またはテリフロノミドおよび/またはアンチリンゴおよび/または神経トロフィンおよび/または神経ステロイド・デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)および/またはビタミンDおよび/または抗生物質および/または免疫抑制剤、および/またはMSおよび/またはいずれか他の変性、自己免疫疾患/症候群の治療のための、他の化学的に、分子的におよび/または他のいずれかの方法にて調製および/または合成された物質を含む、さらに単一または異なる併用剤を含有し得る。
【0109】
液体組成物のPUFAおよび/またはMUFAおよび/またはSFA成分は、具体的に記載されているEPA+DHA+LA+GLAのLCPUFA、および上記されている18:3+18:4+20:4+22:5の他のオメガ−3および18:1+20:1+22:1+24:1のMUFAおよび16:0+18:0のSFA成分に加えて、経口用滋養および/または医薬製剤の使用に適した他のいずれかの脂質および/または脂肪酸をさらに含んでもよい。液体組成物での使用に適するこれら他の脂質および/または脂肪酸は、18:1、20:1、22:1。24:1以外のMUFA、18:3、18:4、20:4、22:5以外の異なるオメガ−3 PUFA、DGLAなどのLA以外の異なるオメガ−6 PUFA、および/または18:0および16:0以外のSFA、または短鎖(6個より少ない炭素原子)、中程度(6〜16個の炭素原子)または長鎖脂肪酸(少なくとも18個の炭素原子)の添加を含んでもよく、あるいは上記したFAの代替品として使用されてもよい。
【0110】
処方例1−10
【0111】
他の実施態様において、組成物は以下の実施例の処方に従って調製される。
【表1-1】

【表1-2】
【0112】
他の実施態様において、以下の処方例に従って、組成物を調製する。オメガ−6およびオメガ−3の代替品および代謝産物が利用され得る。オメガ−6の代謝経路は次のとおり:18:2 LA(リノール酸)→18:3 GLAガンマ−リノレン酸→20:3 DGLA(ジホモ−ガンマ−リノレン酸)→関係のないアラキドン酸(炎症作用)である。オメガ−3の代謝経路は次のとおり:18:3 アルファ−リノレン酸→18:4 ステアリドン酸→20:4 エイコサテトラエン酸→20:5 エイコサペンタエン酸→22:5 ドコサペンタエン酸→24:5 テトラコサペンタエン酸→24:6 テトラコサヘキサエン酸→22:6 ドコサヘキサエン酸である。
【0113】
例えば、本発明は、神経変性疾患、自己免疫疾患またはMSの患者における不飽和脂肪酸不足を治療する方法であって、これらの患者に:
(a)有効量の18:3n−6(ガンマ−リノレン酸(GLA))および20:3n−6(ジホモ−ガンマ−リノレン酸(DGLA))からなる群より選択される、18:2n−6の代謝産物;
(b)有効量の18:3n−3(アルファ−リノレン酸(ALA))、18:4n−3(ステアリドン酸(SA))、20:4n−3(エイコサペンタエン酸(ETA))、20:5n−3(エイコサペンタエン酸(EPA))、22:5n−3(ドコサペンタエン酸(DPA))、24:5n−3(テトラコサペンタエン酸(TPA))、24:6n−3(テトラコサヘキソエン酸(THA))および22:6n−3(ドコサヘキサエン酸(DHA))必須脂肪酸からなる群より選択される、18:3(アルファ−リノレン酸(ALA))の代謝産物;
(c)有効量のガンマ−トコフェロール;および/または
(d)有効量のビタミンA(アルファ−またはベータ−カロテン)および/またはビタミンE
を投与することを特徴とする方法に関する。
【0114】
例えば、SFAは14:0および/または20:0であり得る。上記した物質はすべて、天然に存するか、あるいは本明細書に記載の範囲内にあり、分子構造である分子含有量の成分を有する植物油または化学的に構成される油を個々に添加して、またはその添加を介して供給される自由分子として、リン脂質、モノ−、ジ−、トリ−グリセロールの遊離脂肪酸、メチルまたはエチルエステル、あるいは化学的に製造される脂肪酸塩の形態であり得る。
【0115】
オメガ−3およびオメガ−6のPUFAは脂肪代謝作用に対して強い付加的な効果を有し、体内のインスリン濃度を50%以上低下させることができる。インスリンは蓄えられた脂肪のエネルギーを作るための代謝作用を阻害するため、これはかなりの体重喪失をもたらしうる。インスリンは脂肪の貯蔵を促進することが知られている酵素の活性を増加させる。インスリンは、貯蔵された脂肪の破壊に関与し、エネルギーとして用いるために調製される、ホルモン感受性リパーゼの作用を阻害する。インスリンはまた、脂肪酸合成と共に、炭水化物を脂肪に変換するのに関与する酵素を活性化する。高濃度のインスリンは、体が貯蔵された脂肪を燃料源として使用するであろう可能性を小さくする。インスリン濃度の降下はより多くの脂肪をエネルギー供給のために使用することを可能とする。
【0116】
本発明はまた、老化防止、リビド増強、養毛、月経前症候群、喘息、関節リウマチ、他の型の関節炎、糖尿病、癌および皮膚疾患に使用され得る。
【0117】
ここで提案されている薬剤以外に、以下のものが製剤の一部として、またはあるものは代替品として使用され得る:リン脂質、ホスファチジル・エタノールアミン、ホスファチジル・セリン、ホスファチジル・イノシトール、ホスファチジル・コリン、セリン、イノシドール、コリン、エタノールアミン、「他の」PUFAおよびMUFA、モノおよび/またはポリヒドロキシルオメガ−3および/またはオメガ−6および/または「他の」モノおよび/またはポリヒドロキシルPUFAおよびMUFAおよび/またはモノおよび/またはポリヒドロキシルSFA、モノおよび/またはジPUFAおよび/またはMUFAおよび/またはSFAおよび/またはオメガ−3および/またはオメガ−6および/または「他の」PUFAおよびMUFAおよび/またはSFAホスホリピッドおよび/または脂質骨格としてのそれらの組み合わせ、PUFAおよび/またはMUFAおよび/またはSFAダイマーおよび/またはポリマー、モノおよび/またはポリヒドロキシルPUFAおよび/またはMUFAおよび/またはSFAダイマーおよび/またはポリマー、および/またはモノ−、ジ−またはトリ−グリセロール、および/または遊離脂肪酸、および/または塩、および/またはメチルまたはエチルエステルとして、ビタミンD、ビタミンC、メラトニン、テストステロン、微量栄養素および抗酸化剤、例えばセレン、ギンギョ・ビロバ(Gingko biloba)抽出物、コエンザイムQ10、アルファリポ酸、グルタチオン、チオールを基礎とする抗酸化剤、フラボノイド、クルクマ・ロンガ(curcuma longa)(ジフェルロイルメタン)、α−、β−、γ−、δ−トコトリエノール、β−、δ−トコフェロール、N−アセチルシステイン、ジヒドロリポ酸、アルファ−カロテン、クエルセチン(フラボノイド・フィトエストロゲン)、アピゲニン、ケンプフェロール、ナリンゲニン、エストロゲン、ルテオリンおよびカンナビス、エキウム(Echium)油、短鎖オメガ−3ポリ不飽和脂肪酸に富む天然植物油(パープル・ビペール・ブグロスまたはパテルソン・コースとしても一般に知られるエチウム・プランタギネウム)、または魚油もしくは他の供給源から由来の短鎖オメガ−3ポリ不飽和脂肪酸抽出物、あるいはルリヂサ油または植物もしくは他の供給源から由来の短鎖オメガ−6ポリ不飽和脂肪酸抽出物。
【0118】
本発明者らが提案する薬剤および上記した他の薬剤は、製剤の全体にて、または一部として、ある程度が代替品として、リポソーム、ミセルの形態にて、あるいは二層シートとして使用され得る。
【0119】
本発明の製剤は、ある患者では、精神学または精神医学の分野にて使用される他の薬物と一緒に投与されるのが有利である。かかる薬剤は、とりわけ、クロルプロマジン、ハロペリドール、チオキサンテン、スルピリド、ピモジドなどの種類の典型的な神経安定薬;セルチンドール、ジプラシドン、クエチアピン、ゾテピンおよびアミスルピリドを含む種類の非典型的な神経安定薬;関連性抗うつ剤、ノルアドレナリン再取り込み阻害剤、セロトニン再取り込み阻害剤、モノアミンオキシダーゼ阻害剤を含む抗うつ作用を有する薬物;および非典型的な抗うつ作用を有する薬物;とりわけ、睡眠障害、不安障害、パニック障害、社会恐怖症、人格障害用の薬物;アルツハイマー病、血管および多発梗塞性認知症、レビィー小体疾患および他の認知症を含む、いずれかの形態の認知症に使用される薬物;パーキンソン病、ハンチントン病および他の神経変性障害を含む、いずれかの神経疾患の形態の薬物を包含しうる。
【0120】
上記した各場合にて、本発明の化合物および他の薬物は、その製剤中で各々、分離して投与されてもよい。それらは別々に包装されてもよく、または全体として同じパッケージに配合されてもよい。また、当該分野にて周知の方法を用い、本発明の製剤用量および他の薬物を一緒に処方し、上記した本発明の製剤の日用量が他の薬物の通常の日用量と一緒に提供される。
【0121】
本明細書に記載の組成物は種々の形態にて調製され、上記した成分を越える成分を願有しうる。
【0122】
医薬用賦形剤
所望により、種々の実施態様は、一または複数の医薬上許容される賦形剤を包含しうる。本明細書にて「賦形剤」なる語は、自体は治療剤ではなく、治療剤を対象に送達するために担体またはベヒクルとして使用されるか、あるいはその操作または保存特性を改善するために、もしくは投与単位の組成物の形成を可能に、または容易にするために、医薬組成物に添加される物質を意味する。賦形剤は、限定されるものではなく、例示として、稀釈剤、崩壊剤、結合剤、吸着剤、湿潤剤、滑沢剤、流動促進剤、界面修飾剤、許容されない味または臭いをマスクするか、解消するために添加される物質、フレーバー、色素、香料および組成物の外観を改善するのに添加される物質を包含する。かかる賦形剤はいずれも、本発明の開示に従って、液体、固体または半固体投与形態を含む、いずれかの投与形態にて使用され得る。
【0123】
種々の実施態様にて所望により使用されてもよい賦形剤は、固体、半固体、液体あるいはその組み合わせであり得る。賦形剤を含む、該開示の組成物は、賦形剤を薬物または治療薬と一緒に混合するなどの、種々の医薬操作により調製され得る。
【0124】
種々の実施態様にて、組成物は、所望により、一または複数の医薬上許容される稀釈剤を賦形剤として含んでもよい。適切な稀釈剤は、例示として、限定されるものではなく、無水ラクトースおよびラクトース一水和物を含むラクトース;直接圧縮可能な澱粉および水和澱粉(例えば、セルタブ(登録商標)およびエムデックス(登録商標))を含む澱粉;マンニトール;ソルビトール;キシリトール(例、セレロース(登録商標)2000)およびデキストロース一水和物;二塩基性リン酸カルシウム;シュークロースを基剤とする稀釈剤;粉砂糖;一塩基性硫酸カルシウム一水和物;硫酸カルシウム二水和物;粒状乳酸カルシウム三水和物;デキストレート;イノシトール;加水分解背得セレアル固体;アミロース;微結晶セルロース、食品等級源のアルファおよび非晶質セルロース(例、レクセル(登録商標))および粉末セルロースを含むセルロース;炭酸カルシウム;グリシン;ベントナイト;ポリビニルピロリドン等を、個々にまたは組み合わせて包含する。かかる稀釈剤は、配合されるとすれば、組成物の総重量の、合計で約5%〜約99%、約10%〜約85%、または約20%〜約80%を構成する。種々の実施態様にて、選択される稀釈剤(複数も可)は適切な流動特使を示し、錠剤が望ましいならば、圧縮特性を示してもよい。
【0125】
顆粒外微結晶セルロース(すなわち、乾燥工程の後で湿式顆粒組成物に添加される微結晶セルロース)は、硬度(錠剤の場合)および/または崩壊時間を改変または調節するために使用され得る。
【0126】
種々の実施態様にて、組成物は、錠剤製剤にあるように、一または複数の医薬上許容される崩壊剤を賦形剤として含んでもよい。適当な崩壊剤は、限定されないが、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン USP/NF)、カルボキシメチルセルロース(ナトリウムCMC)、キチン、キトサン、澱粉グリコール酸ナトリウム(例、ペン・ウェストのエクスプロタブ(登録商標))およびアルファ化トウモロコシ澱粉(例、ナショナル(登録商標)1551、ナショナル(登録商標)1550およびコロコーン(登録商標)1500)、クレイ(例、ベーガム(登録商標)HV)、精製セルロース、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどのセルロース、クロスカルメロースナトリウム(例、FMCのAc−Di−Sol(登録商標))、アルギン酸塩、ならびに寒天、グア、キサンタン、ローカストビーン、カラヤ、ペクチンおよびトラガカントガムなどのガムを包含する。
【0127】
崩壊剤は、組成物を調製する間のいずれの適当な工程で、特に造粒工程の前、または圧縮前に潤滑油を注入する工程の間に添加されてもよい。かかる崩壊剤は、配合されるとすれば、組成物の全重量の、全体として約0.2%〜約30%、約0.2%〜約10%、または約0.2%〜約5%を構成してもよい。
【0128】
一の実施態様において、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドンUSP/NF)は錠剤またはカプセル崩壊用の任意の崩壊剤であり、配合されるとすれば、所望により、組成物の全重量の約1%〜約5%を構成してもよい。
【0129】
もう一つ別の実施態様において、キチンは錠剤またはカプセル崩壊用の任意の崩壊剤である。
【0130】
さらにもう一つ別の実施態様において、キトサンは錠剤またはカプセル崩壊用の任意の崩壊剤である。
【0131】
さらにもう一つ別の実施態様において、カルボキシメチルセルロース(ナトリウムCMC)は錠剤またはカプセル崩壊用の任意の崩壊剤である。
【0132】
もう一つ別の実施態様において、クロスカルメロースナトリウムは錠剤またはカプセル崩壊用の崩壊剤であり、配合されるとすれば、所望により、組成物の全重量の約0.2%〜約10%、約0.2%〜約7%、または約0.2%〜約5%を構成してもよい。
【0133】
本願明細書に記載の種々の実施態様は、所望により、賦形剤として、特に錠剤のために一または複数の医薬上許容される結合剤または粘着剤を含んでもよい。かかる結合剤および粘着剤は、サイジング、潤滑油の注入、圧縮および包装などの通常の処理操作を可能とするように錠剤化される粉末に十分な凝集性を付与するが、それでも該錠剤が崩壊すること、および該組成物が摂取で吸収されることを可能としうる。適当な結合剤および粘着剤は、限定されるものではなく、個々にまたは組み合わせるかのいずれかで、アカシア;トラガカント;シュークロース;ゼラチン;グルコース;限定されないが、アルファ化澱粉(例、ナショナル(登録商標)1511およびナショナル(登録商標)1500)などの澱粉;限定されないが、メチルセルロースおよびカルメロースナトリウム(例、タイロース(登録商標))などのセルロース;アルギン酸およびアルギン酸塩;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;PEG;グアガム;ポリサッカリド酸;ベントナイト;ポビドン、例えばポビドンK−15、K−30およびK−29/32;ポリメタクリレート;HPMC;ヒドロキシプロピルセルロース(例、クルセル(登録商標));およびエチルセルロース(例、エトセル(登録商標))を包含する。かかる結合剤および粘着剤は、配合されるとすれば、組成物の全重量の、全体として約0.5%〜約25%、約0.75%〜約15%、または約1%〜約10%を構成してもよい。
【0134】
本明細書に記載の組成物は、所望により、一または複数の医薬上許容される湿潤剤を賦形剤として含んでもよい。種々の組成物中に湿潤剤として使用され得る界面活性剤の例として、限定されないが、四級アンモニウム化合物、例えば塩化ベンズアルコニウム、塩化ベンズエトニウムおよび塩化セチルピリジニウム、ジオクチルナトリウムスルホスクシネート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、例えばノンオキシノール9、ノンオキシノール10およびオクトオキシノール9、ポロキサマー(ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー)、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび油状物、例えばポリオキシエチレン(8)カプリル酸/カプリン酸・モノ−およびジグリセリド(例、ラブラゾール(登録商標)、Gattefosse)、ポリオキシエチレン(35)ヒマシ油およびポリオキシエチレン(40)硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばポリオキシエチレン(20)セトステアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、例えばポリオキシエチレン(40)ステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンエステル、例えばポリソルベート20およびポリソルベート80(例、ツゥーン80、ICI)、プロピレングリコール脂肪酸エステル、例えばプロピレングリコールラウレート(例、ラウログリコール(登録商標)、Gattefosse)、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸およびその塩、例えばオレイン酸、オレイン酸ナトリウムおよびトリエタノールアミンオレエート、グリセリル脂肪酸エステル、例えばグリセリルモノステアレート、ソルビタンエステル、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテートおよびソルビタンモノステアレート、タイロキサポールおよびその混合物を包含する。かかる湿潤剤は、配合されるとすれば、組成物の全重量の、全体として約0.25%〜約15%、約0.4%〜約10%、または約0.5%〜約5%を構成してもよい。
【0135】
本明細書に記載の組成物は、所望により、賦形剤として、一または複数の医薬上許容される滑沢剤(抗粘着剤および/または流動促進剤を包含する)を含んでもよい。適当な滑沢剤は、限定されないが、個々に、あるいは組み合わせるかのいずれかにて、グリセリルベハペート(例、コンプリトール(登録商標)888);ステアリン酸およびマグネシウム(ステアリン酸マグネシウム)、ステアリン酸カルシウムおよびナトリウムを包含するその塩;硬化植物油(例、ステロテックス(登録商標));コロイド状シリカ;タルク;ワックス;ホウ酸;安息香酸ナトリウム;酢酸ナトリウム;フマル酸ナトリウム;塩化ナトリウム;DL−ロイシン;PEG(例、カルボワックス(登録商標)4000およびカルボワックス(登録商標)6000);オレイン酸ナトリウム;ラウリル硫酸ナトリウム;およびラウリル硫酸マグネシウムを包含する。かかる滑沢剤は、配合されるとすれば、組成物の全重量の、全体として約0.1%〜約10%、約0.2%〜約8%、または約0.25%〜約5%を構成してもよい。
【0136】
適当な抗粘着剤は、限定されないが、タルク、トウモロコシ澱粉、DL−ロイシン、ラウリル硫酸ナトリウムおよび金属ステアレートを包含する。タルクは、製剤の装置表面への粘着性を減少させるのに、またブレンド中の静電気を減少させるのに使用される抗粘着剤または流動促進剤である。タルクは、配合されるとすれば、組成物の全重量の約0.1%〜約10%、約0.25%〜約5%、または約0.5%〜約2%を構成してもよい。
【0137】
流動促進剤は固体製剤の粉末流動性を促進するのに使用され得る。適当な流動促進剤は、限定されないが、コロイド状二酸化ケイ素、澱粉、タルク、三塩基性リン酸カルシウム、粉末状セルロースおよび三ケイ酸マグネシウムを包含する。
【0138】
本明細書に記載の組成物は、一または複数の矯味矯臭剤、甘味剤および/または着色剤を含み得る。本発明の実施態様において有用な矯味矯臭剤は、限定されないが、アカシアシロップ、アリターム、アニス、アップル、アスパルターム、バナナ、ババロア、ベリー、クロフサスグリ、バター、バター・ピーカン、バタースコッチ、クエン酸カルシウム、カンフル、カラメル、チェリー、チェリークリーム、チョコレート、シナモン、シトラス、シトラスパンチ、シトラスクリーム、ココア、コーヒー、クールチェリー、クールシトラス、チクロ、チラメート、デキストロース、ユーカリ、オイゲノール、フルクトース、フルーツパンチ、ジンジャー、グリチルリチネート、グリチルリザ(甘草)シロップ、グレープ、グレープフルーツ、蜂蜜、イソモルト、レモン、ライム、レモンクリーム、マグナスィート(登録商標)、マルトール、マンニトール、メープル、メンソール、ミント、ミントクリーム、ミックスベリー、ナッツ、オレンジ、ピーナッツバター、洋ナシ、ペパーミント、ペパーミントクリーム、プロスィート(登録商標)粉末、ラズベリー、ルートビア、ラム、サッカリン、サフロール、ソルビトール、スペアミント、スペアミントクリーム、ストロベリー、ストロベリークリーム、ステビア、スクラロース、シュークロース、スイスクリーム、タガトース、タンゲリン、タウマチン、トゥッティフルッティ、バニラ、クルミ、スイカ、セイヨウミザクラ、ウェインターグリーン、キシリトールおよびそれらの組み合わせ、例えば、アニス−メントール、チェリー−アニス、シナモン−オレンジ、チェリー−シナモン、チョコレート−ミント、蜂蜜−レモン、レモン−ライム、レモン−ミント、メントール−ユーカリ、オレンジ−クリーム、バニラ−ミント等を包含する。
【0139】
本発明の実施態様にて使用され得る甘味剤は、一例として、限定されないが、アセサルフェームカリウム(アセサルフェームK)、アリテーム、アスパルテーム、チクロ、チラメート、デキストロース、イソモルト、マグナスィート(登録商標)、マルチトール、マンニトール、ネオヘスペリジンDC、ネオターム、プロスィート(登録商標)粉末、サッカリン、ソルビトール、ステビア、スクラロース、シュークロース、タガトース、タウマチン、キシリトール等を包含する。
【0140】
上記した賦形剤は複数の役割を有し得る。例えば、澱粉は充填剤ならびに崩壊剤として供しうる。本明細書に列挙される崩壊剤の分類はいかなる場合でも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0141】
医薬剤形
本発明は、医薬用、滋養用、医療食品用または食事用製剤とすることができる。本発明は、液体、粉末、バー、クッキー、デザート、濃縮体、ペースト、ソース、ゲル、エマルジョン、錠剤、カプセル等の形態とし、単回用量または複数回用量として、生物活性成分の一日用量を提供しうる。化合物はまた、静脈内、腹腔内、筋肉内または皮下経路のいずれかを用いて、直接的に、あるいは種々の油、エマルジョンまたは分散液に処方して非経口的に投与されてもよい。貯蔵の間、生成物を安定に保持し、使用または投与を容易にするために、当該分野にて既知の方法を適用することで該生成物を包装することができる。
【0142】
種々の実施態様において、組成物は経口用固体、液体または半固体の剤形として処方され得る。一の実施態様にて、かかる組成物は別個の剤形、用量単位または投与単位(例、錠剤、カプセル)の形態である。本明細書中、「剤形」、「用量単位」および/または「投与単位」は、単回投与に適し、一の治療効果を提供する一定量の治療剤を含有する医薬組成物の一部をいう。かかる剤形は、一日当たり1ないし少数(すなわち、1〜約4回)の回数にて、あるいは治療応答を惹起するのに必要ならば多くの回数にて投与されてもよい。特定の剤形は所望の投与頻度を蓄積し、特定の日用量を達成するように選択され得る。典型的には、一の用量単位、または少数(すなわち、約4回まで)の用量単位は、所望の応答または効果をもたらすのに十分な量の活性剤を提供する。
【0143】
もう一つ別の実施態様にて、単回投与単位は、固体または液体であり、治療的および/または予防的に効果的な量の活性剤を含む。本明細書にて使用される「治療的に効果的な量」または「治療的および/または予防的に効果的な量」なる語は、個々の治療が事情に応じて要求しうる、必要とされるか、望ましい治療的および/または予防的応答を惹起するのに十分である、化合物または薬剤の量をいう。
【0144】
対象にとって薬剤の治療的および/または予防的に効果的な量は、とりわけ、対象の体重に依存することが理解されよう。治療剤またはその組成物が投与され得る本明細書に記載の「対象」なる語は、性別がいずれであって、あらゆる年齢のヒト対象を包含し、ヒト以外の動物、特に家畜またはペット、例えばネコ、イヌまたはウマも包含する。
【0145】
固体剤形
種々の実施態様にて、開示されている組成物は、固体剤形または投与単位の形態である。適当な固体剤形の例は、限定されるものではなく、液体充填カプセル、錠剤(例、サスペンジョン錠、バイトサスペンジョン錠、即時分散錠、咀嚼錠、発泡錠等)、カプレット、カプセル(例、ソフトまたはハードゼラチンカプセル)、散剤(例、包装散剤、分散粉末または発泡散剤)、ロゼンジ、サッシェ、カシェー、トローチ、ペレット、顆粒、微粒、カプセル化微粒、粉末アエロゾル製剤あるいは経口投与と合理的に適合する他のいずれかの固体剤形を包含する。
【0146】
もう一つ別の実施態様において、本発明の組成物は成形品、例えばペレットの形態である。本明細書における「成形品」なる語は、圧縮、押し出しまたは他の同様の操作により形成され得る別個の剤形をいう。一の実施態様にて、成形品は成形可能である。本明細書中の「成形可能」なる語は手動で成形または成型され得ることを意味する。したがって、本明細書で使用される成形可能な製品は、通常の医薬錠よりも硬度が低いであろう。かかる成形品はまた、患者によって咀嚼され得るであろう。
【0147】
かかる製品は、活性剤に加えて、本明細書に記載の他の賦形剤、充填剤、甘味剤および矯味矯臭剤を含み得る。押出し成形は、ダイスまたは他の立体の形状の開口部を介して物質を強制的に押し出すことで形成する工程である。押し出された材料はダイス開口部と実質的に同じ外形を有する細長い製品として現れる。
【0148】
液体剤形
もう一つ別の実施態様において、本明細書に記載の組成物は液体剤形または投与単位の形態とすることができる。適当な液体剤形の例として、限定されないが、溶液、懸濁液、エリキシル、シロップ、エマルジョンおよびゲルが挙げられる。
【0149】
一の実施態様にて、経口用液体剤形は、以下の処方に従って調製された:
実施例11
【表2】
貯蔵安定性
一の実施態様にて、組成物は最終的に対象に投与される液体の形態である。開示の組成物は貯蔵安定性の改善を示すと考えられる。
【0150】
投与および生物学的利用能
一の実施態様にて、開示されている組成物は即時的吸収および治療の作用に適する。本発明の製剤は、具体的にはMSの治療および/または予防に使用され得るが、他の神経変性および/または自己免疫疾患または症候群についても使用されることが可能である。脊髄損傷の回復およびミエリン形成の刺激についても有益である可能性がある。
【0151】
獣医学的用途
動物にて一連の治療を求める障害が生じた場合に、ヒトの医薬および治療の観点から第一に記載しているが、本発明は獣医学の分野でも等しく適用可能であることが理解されよう。
【0152】
神経障害および自己免疫疾患の治療
本明細書にてさらに記載されるように、本発明は、とりわけ、EPA、DHA、LAおよびGLAの経口的同時投与を用いる。製剤はさらにビタミンA、ガンマ−トコフェロールおよびビタミンEを含んでもよい。理論に捕らわれることなく、GLA成分はリン酸化を促進し、DHAを細胞膜に組み込むことはミエリン生成を助成すると考えられる(DHAがミエリン構成の主な脂肪酸である)。その組み合わせは免疫細胞膜におけるPUFA濃度およびその機能の正常化を促進する。加えて、LAはジホモ−ガンマリノレン酸(DGLA)に変わり、それはプロスタグランジン生成をアップレギュレートする。プロスタグランジは周知の抗炎症特性を有する。LAはレシチン(ジ−LA−ホスファチジルコリン)の構成要素であり、ミエリン組成に不可欠なもう一つ別の分子である。
【0153】
本明細書に記載の薬剤を高用量で用いることにより、本発明は過剰量のアラキドン酸(AA)が細胞膜に組み込まれることを妨げると仮定される。AAが細胞膜よりそれほど放出されないと、炎症工程はそれほど誇張されることはない。加えて、本発明の過剰量の特定のPUFAは、AAがその炎症特性を発揮するのに使用している酵素経路を競合的に阻害するであろう。
【0154】
特定のPUFAとガンマ−トコフェロールとの組み合わせは、ガンマ−トコフェロールがROSで、および炎症工程を制御する遺伝子で作用するため、PUFAの活性を最適化する。実際に、本発明のその治療的な組み合わせはガンマ−トコフェロールの細胞膜への取り込みを容易にする。これにより、ガンマ−トコフェロールの体内からの排出が遅くなるため、その広範囲に及ぶ作用が得られる。
【0155】
該製剤の成分は、相加的または相乗的に作用し、MSおよび他の神経変性疾患における脱髄作用の減少、再ミエリン化作用の促進および神経保護作用の促進に至る代謝性カスケードを促進し、および/またはトリガーになると考えられる。一の成分だけでもMSおよび/または慢性脳脊髄静脈機能不全(CCSVI)による血液循環が乏しい結果として生じる鉄分の脳での沈着などの他の神経変性疾患の発症過程を予防し、および/または積極的に影響を及ぼし、および/または治療することが可能であるため、本明細書に記載の薬剤を高用量で用いることにより、その製剤の成分のあらゆる相乗的および/または相加的能力を介して、本発明は従来の治療法よりも優れていると仮定される。本発明はまた、初期事象としてCCSVIを予防し、それに影響を及ぼすことが可能であり;その構成成分および組成物の製剤の能力を介して、(a)リポ蛋白の組成、接着分子および他の炎症因子の発現、およびアテローム性硬化症の発症に伴う血栓形成に影響を及ぼし、および/または予防し、および/または制御し;(b)慢性静脈機能不全(CVI)の進行に至る持続性炎症プロテイナーゼ活性、および持続的静脈高血圧、炎症、サイトカインおよびマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)活性化、および細胞機能の改変の複合的相互作用より由来の潰瘍形成に影響を及ぼし、および/または予防し、および/または制御し;(c)血液脳関門のレベルで、さらに炎症および神経変性の亢進に至る鉄分誘発の内皮障害を予防および/または制御し;(d)炎症および神経変性に至る病理学的鉄分沈着をもたらす中枢神経系における静脈流出障害および静脈逆流を予防し、および/または制御し;(e)鉄分不足および鉄分の過剰負荷は共にBおよびTリンパ球の増殖に影響を及ぼす可能があるため、血中の鉄分レベルを制御する機構を阻害し、順次、免疫系にて影響を与えうる炎症関連性蛋白(サイトカイン)を予防し、および/または制御し;(f)血小板の活性化を抑え、血漿中トリグリセリドおよび凝集因子を低下させ、および/または血管緊張を減少させることにより、および/または複数の遺伝子の転写制御に、おそらくは対象に依存する方法にて関係する凝血因子および脂質因子に対する食事の作用により、動脈疾患の減少を助成し、かつプロ血栓状態を正常化し;および(g)特定のMUFAの使用による、高密度リポ蛋白コレステロールレベルの上昇、および低密度リポ蛋白コレステロールレベル、低密度リポ蛋白の酸化に対する感受性、細胞酸化ストレス、血栓形成およびアテロームプラーク形成の改善、および特定のPUFAの使用による、高密度リポ蛋白コレステロールレベルの上昇、および血栓形成、アテロームプラーク形成および血管平滑筋細胞増殖の低下によってアテローム性動脈硬化症を予防し、および/または調節する。
【0156】
MS患者に投与された場合、該組成物は、何ら有意な副作用なしで、年間再発率の統計学的に有意な減少、再発頻度の減少、障害の進行の統計学的に有意な減少(すなわち、総合障害度評価尺度(EDSS)が1点増加の可能性の減少)、および核磁気共鳴画像(MRI)スキャンでの悩の新規または増大するT−2病変の進行の減少をもたらす。
【0157】
実際に、本発明は、従前技術に比べて、MSにて優れた治療をもたらす。該発明は、該疾患に罹りやすいが、未だに診断されていない対象における該疾患の発症を予防することができ;その進行を阻み;および該疾患またはその症候群の退行を生じさせ、該疾患等を取り除くことさえできる。
【0158】
種々の実施態様にて、該開示は種々の疾患および障害の治療法を提供する。かかる疾患および障害は、とりわけ、神経障害、特に多発性硬化症(MS)などの神経変性疾患を包含する。加えて、該開示は自己免疫疾患の治療法を提供する。さらには、本発明は精神疾患、炎症性疾患または障害、心血管疾患、てんかんおよびてんかん発生を治療するのに有用でありうる。
【0159】
本明細書に使用される「治療法」なる語は、神経障害または自己免疫疾患などの障害または疾患の治療および/または予防をいう。
【0160】
本明細書で使用される「治療する」または「治療」なる語は障害または疾患の治療をいい、限定されないが、障害または疾患に罹りやすいが、未だに該障害または疾患であると診断されていない対象にて該障害または疾患を発症することを予防すること;該障害または疾患を予防、例えば該障害または疾患の進行を阻止すること;該障害または疾患を緩和、例えば該障害または疾患の退行を生じさせること;または該障害または疾患により生じさせることにより症状を軽減すること、例えば該障害または疾患の徴候を停止させることを包含する。
【0161】
障害または疾患に関連して、「予防する」または「予防」なる語は、何も発生していないならば、障害または疾患の発症を妨げることを、障害または疾患が既に発生しているならば、障害または疾患のさらなる進行を妨げることを意味する。
【0162】
開示されている組成物は経口的に送達可能な投与単位の形態とすることができる。本明細書中の「経口投与」または「経口的に送達可能な」なる語は、患者の口中に入れられ、咀嚼されるか、またはされない、治療剤または組成物を対象に送達する形態を包含する。
【0163】
上記した障害または疾患の一覧は、例示であり、完全でないことを意図とするものであり、それで当業者は開示の実施態様にて治療および/または予防しうる別の障害または疾患のあることを理解するであろう。
【0164】
一の実施態様にて、治療的に効果的な量のEPA、DHA、GLAおよびLAを含む医薬組成物を投与することにより障害または疾患を治療および/または予防する方法を提供する。
【0165】
さらにもう一つ別の実施態様にて、治療的に効果的な量のEPA、DHA、GLAおよびLAを含み、所望により、ガンマ−トコフェロール、ビタミンEおよびビタミンAを含んでもよい、医薬組成物を経口投与することにより障害または疾患を治療および/または予防する方法を提供する。
【0166】
もう一つ別の実施態様にて、上記に例示した製剤の一つを含む、医薬組成物をその必要とする対象に経口投与することにより、障害または疾患を治療および/または予防する方法を提供する。
【0167】
本明細書で使用される「相乗作用」、「相乗的」、「相乗効果」または「相加効果」は、単独で使用される場合の各薬剤の個々の効果と比べて、一緒に使用される2またはそれ以上の個々の薬剤の作用または効果が向上することをいう。理論に捕らわれることなく、本発明の製剤の成分は対象の疾患または障害の治療にて相乗作用を発揮すると考えられる。
【0168】
これらすべての疾患および症候群用の通常の既存薬に対するアジュバントとしての本発明の使用は、転帰の改善を提供すると考えられる。したがって、本発明は他の医薬と同時に投与され得る。
【0169】
本明細書に記載の製剤は、活発な疾患の進行速度を減少させ、再ミエリン化を活性化するが、ないとすれば、MSにて特に有意に減少され得る重要な膜脂質成分をも維持することが可能であり、このことは既存および/または利用可能な治療法で効果的に治療されない代謝障害の修正を示唆する。
【0170】
第一治療にて単剤療法として、または神経疾患が進行している適応症がある(前駆期である)ならばすぐに、この特異的介入を用いることが可能である。
【0171】
かかる製剤は、病変形成の阻害に、および病変の修復および再ミエリン化に、すなわちMSについてこれまでに提供された医薬で達成されなかったことに必要とされる状況を作り出すことに利益がある。
【0172】
臨床例
導入
無作為の二重盲検プラセボ制御試験を行い、MS(再発寛解型(RR))患者でのプラセボに対する3種の製剤の安全性および効能を評価した。MSは中枢神経系(CNS)の慢性炎症疾患である。通常、20〜40歳の個体で、男性よりも女性にて多くの数が(2人に対して3人)MSに侵される。MSでは、ミエリンを覆う神経軸索の喪失は神経軸索が活動およびシナプス電位を効果的に伝導することを妨げる。オリゴデンドロ細胞(ミエリン産生細胞)が損傷した結果として、その後の軸索脱髄はこの疾患の特徴である。瘢痕組織(プラークまたは病変)が脳および脊髄にて脱髄が生じている場所で形成される。MS免疫病理学に、異なる病理学的機構、例えば、免疫介在性炎症作用、酸化ストレスおよび興奮性毒性が関連付けられる。ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)および抗酸化物質の欠乏が、細胞性抗酸化物質防衛機構の低下と共に、MS患者にて観察されている。さらには、アレルギー性脳脊髄炎(EAE)実験、MSの動物実験にて、抗酸化物質およびPUFAでの処置は臨床徴候を和らげた。低分子量の抗酸化物質は、ラジカル捕捉、遺伝子転写の干渉、蛋白発現、酵素活性および金属のキレート化およびクエンチ化を含む種々の方法にて、細胞性抗酸化物質防御機構を支持するかもしれない。PUFAは、その免疫細胞に取り込まれることを介してCNS内での細胞機能にも影響を及ぼす可能性があるが、免疫介在性炎症作用を制御しうる。食事での抗酸化物質およびPUFAは共に、MSに特異的な病理学的機構を標的とし、その回復(再ミエリン化)を支持することで、徴候の重度および活性を軽減する可能性がある。
【0173】
本発明の実験は次に示す理由:(a)MS患者にて、特定のPUFAをγ−トコフェロールと一緒に含む製剤を試験する唯一の研究であること;(b)使用される製剤の成分の量/特性がこれまでに報告されるいずれの研究とも有意に異なること;(c)すべてのドロップアウトも臨床的に追跡が続けられていること;(d)実験の設計が基準の包除でこれまでに報告されているPUFAの実験とは全く異なること;(e)実験のコンセプトは薬物臨床試験に関する米国食品医薬品局(FDA)の基準および調和国際会議(ICH)のガイドラインおよびヒト用医薬品委員会(小さな個体群における臨床試験でのガイドライン)に従うこと;(f)その設計が可能性のあるすべてのバイアスを小さくすること;(g)結果を分析し、より優れた結論を得るために、新規の2種以上の統計的方法を使用すること;(h)疑似結果を最小にし、統計学的に結果に検出力を付与するのに、複数の評価項目分析および複数の比較分析を行うこと;(i)MS患者の再発および障害進行の分析のために一般的に使用される方法も用いられること;および(j)該設計がCONSORT2010(チェックリスト)に示されるMS治療の効能の臨床的プロジェクト規則の国際的に許容されるガイドラインを満足し、医薬品の臨床試験の実施の基準(GCP)のガイドラインと一致していること、から独特なものである。それはシステム生物学および滋養システム生物学の視点を介してシステム医学により構成される疾患の複合的多元的特性に基づく介入を評価する第一の公知の実験である。
【0174】
介入処方A
経口用溶液が約19.5ml/日の一日用量で30ヶ月間服用される。該溶液は、およそ:
EPA 1650mg/用量
DHA 4650mg/用量
GLA 2000mg/用量
LA 3850mg/用量
アルファ−リノレン酸(C18:3n−3) 37mg/用量
ステアリドン酸(C18:4n−3) 73mg/用量
エイコサテトラエン酸(C20:4n−3) 98mg/用量
ドコサペンタエン酸(C22:5n−3) 392mg/用量
を含む他のオメガ−3 PUFA 600mg/用量
18:1 1300mg/用量
20:1 250mg/用量
22:1 82mg/用量
24:1 82mg/用量
を含むMUFA
18:0 160mg/用量
16:0 650mg/用量
を含むSFA
ビタミンA 0.6mg/用量
ビタミンE 22mg/用量
シトラスエキス 19.5mlまで適量
を含有する。
介入処方B
経口用溶液が約19.5ml/日の一日用量で30ヶ月間服用される。該溶液は、およそ:
EPA 1650mg/用量
DHA 4650mg/用量
GLA 2000mg/用量
LA 3850mg/用量
アルファ−リノレン酸(C18:3n−3) 37mg/用量
ステアリドン酸(C18:4n−3) 73mg/用量
エイコサテトラエン酸(C20:4n−3) 98mg/用量
ドコサペンタエン酸(C22:5n−3) 392mg/用量
を含む他のオメガ−3 PUFA 600mg/用量
18:1 1300mg/用量
20:1 250mg/用量
22:1 82mg/用量
24:1 82mg/用量
を含むMUFA
18:0 160mg/用量
16:0 650mg/用量
を含むSFA
ビタミンA 0.6mg/用量
ビタミンE 22mg/用量
ガンマ−トコフェロール 760mg/用量
シトラスエキス 19.5mlまで適量
を含有する。
介入処方C
経口用溶液が約19.5ml/日の一日用量で30ヶ月間服用される。該溶液は、およそ:
ガンマ−トコフェロール 760mg/用量
純粋なバージンオリーブオイル 16137mg
シトラスエキス 19.5mlまで適量
を含有する。
介入処方D(プラセボ)
経口用溶液が約19.5mlの一日用量で30ヶ月間服用される。該溶液は純粋なバージンオリーブオイル(16930mg)およびシトラスエキスを含有する。
【0175】
方法
患者
治療するにふさわしいRR MSのキプロスにおけるMS全体集団の約20%を表す80人の患者を、2007年7月に、キプロス・精神学および遺伝学学会での、この四回(4)並行治療の群設計臨床実験(シングル・センタード・スタディ)に参加させた。すべての患者が書面によるインフォームド・コンセントを受けた。参加から2007年12月31日までの期間を標準化期間(下記される期間)に使用し、2009年12月31日まで該実験を延長した。
【0176】
該実験プロトコルは研究者により開発され、欧州連合(EU)ガイドラインに従ってキプロス国家生物学委員会により承認された。実験データは研究者により収集され、該実験のブラインドコピーをも保持する、ニコシア大学のヘリックス・インキュベーター・オーガニゼーション(政府認定の法的権限のある組織)により保管された。統計解析は、ギリシャ、医科大学、キプロスおよびヨアニナ大学の統計学者により盲目的に解析された。
【0177】
参加は、年齢が18〜65歳であり、RR MSと診断され;0から10までの範囲の等級に分けられ、より高い評点がより重度の疾患を示す、総合障害度評価尺度(EDSS)が0.0〜5.5の評点であり;多発性硬化症と一致する病変を示す核磁気共鳴画像(MRI)を受け;該実験を開始する前の24時間内に少なくとも1の医学的に確認された再発を示し;および略同じ医学治療を受けているか、または参加する前の2年間、治療を全く受けていない、男性および女性に限定された。従前に受けた免疫抑制剤またはモノクローナル抗体療法、妊娠または看護、進行性多発症の存在、あるいは多発性硬化症以外の重度の疾患は器官の機能を危険にさらすため、そのような患者は排除された。付加的な排除基準は以下の事項:実験の間の、付加的な食品補助製剤、いずれかの型のビタミン、またはいずれかの形態のPUFA(オメガ−3またはオメガ−6)の摂取を包含した。新薬またはアルコール中毒の病歴のあることが知られている患者も排除した。(完全な欠測データの)追跡できない患者は、包括解析からプロトコルにより排除された。実験の間に、疾患の型が変化した、すなわちRR MSから第二の進行性MSに変化した患者も、プロトコルにより解析から排除され、再発なしで障害の増加する現象の劇的変化を除外した。もし、だれかが該実験中のどの時点でも何らかの型の別の補助剤を用いているならば、それは該実験を恒久的に中止する理由であった。ドロップアウトした残りもすべて(上記した3つのカテゴリーを除く)、その目的を医学的に追跡することを続け、解析した。いつ何時のドロップアウトした者でも、指定された介入を全く受けずにドロップアウトした者であっても、他のすべての参加者と同様に追跡された。患者は、仮に指定された実験介入を中断したとしても、フォローアップ評価のために該実験に残ることを強く働きかけられた。
【0178】
実験設計および無作為化
無作為化
患者は、コインをはじき、性別(女性:男性、3:1)で分類することにより1:1:1:1の割合で等しく無作為に4つの介入群(介入群については3群、およびプラセボの1群)に割り当てられた。無作為化スキームを作成し、ニコシア大学のヘリックス・インキュベーター・オーガニゼーション(HIONU)で厳重に保管した。
【表3】
【0179】
上記した介入処方Aの組成物を群Aに19.5mlの用量で913日間(30ヶ月間)投与した。上記した介入処方Bからなる組成物(PLP10)を群Bに19.5mlの用量で913日間(30ヶ月間)投与し;上記した介入処方Cの組成物を群Cに19.5mlの用量で913日間(30ヶ月間)投与し;および上記した介入処方Dの組成物を群D、対照群に19.5mlの用量で913日間(30ヶ月間)投与した。すべての処方のシロップをシトラスエキスアロマで芳香を付けた。すべての異なる処方およびプラセボは液体であり、外観および臭いは同じであった。シロップを含有するボトルに患者ならびに研究者により同定され得ない医薬品コード番号で(該実験についても盲目的である薬剤師により)標識化した。
【0180】
実験の実施に関与したすべての実験要員ならびに統計学者および研究者はその実験を通して治療の割り当てに気づかなかった。群AはRR MSの20人の患者(女性が15人および男性が5人)から構成された。平均年齢が37.95歳であり、疾患の平均期間が9.00年であり、年間再発率(範囲)が1.17(1〜6)で、平均(範囲)基線総合障害度評価尺度(EDSS)の評点が2.52(1〜5.5)であり、55%が通常の治療(疾患修飾治療(DMT))であり、45%がDMTなしであった。群BはRR MSの20人の患者(女性が15人および男性が5人)から構成された。平均年齢が36.90歳であり、疾患の平均期間が8.55年であり、年間再発率(範囲)が1.21(1〜7)で、平均(範囲)EDSSの評点が2.15(1.0〜4.0)であり、45%が通常の治療(DMT)であり、55%がDMTなしであった。群CはRRMSが関与する20人の患者(女性が15人および男性が5人)から構成された。平均年齢が37.65歳であり、疾患の平均期間が8.55年であり、年間再発率(範囲)が1.16(1〜6)で、平均(範囲)基線EDSSの評点が2.42(0.0〜5.0)であり、60%が通常の治療(DMT)であり、40%がDMTなしであった。
群DはRR MSの20人の患者(女性が15人および男性が5人)から構成された。平均年齢が38.10歳であり、疾患の平均期間が7.65年であり、年間再発率(範囲)が1.05(1〜4)で、平均(範囲)基線EDSSの評点が2.39(1.0〜4.0)であり、50%が通常の治療(DMT)であり、50%がDMTなしであった。
【表4】
疫学データに関する4つの群間で統計的有意差はなかった(表1のp−値を参照)。すべての治療群間の通常の治療データの間で違いの存在は見いだせなかった。
【0181】
実験の設計
EPAおよびDHA必須脂肪酸は大部分の細胞膜および神経単位の構成要素であることが明らかにされており、上記されるように異なる細胞および分子の生理学的機能にとって重要であるが、MSなどの自己免疫神経学的障害の患者にて劇的に減少していることがわかる。本発明者らの目的は、EPAおよびDHAの分子が、特定の割合の量および質で、処方介入にて、医学的使用のための医薬製剤/滋養成分として用いられる場合に、LA、GLAならびにビタミンAおよびEの存在下であるが、ガンマ−トコフェロールと共に、またはなしで、該分子の可能性のある有益な効果を試験し;MS患者にてアジュバント療法として、単剤療法として使用された場合に、再発率についての特定の主要評価項目および障害進行についての第二評価項目での効能の臨床試験に焦点を当てることでこれら患者のEPAおよびDHAレベルを標準化することである。該実験は標準化(前処理)期で構成された。患者は2007年7月の参加の時から2007年の12月31日まで標準化されている状態にあった。この期間は、患者の標準化/キャリブレーションのための間隔で、順応期間であると考えられる;というのも、(a)食事療法でのPUFAの免疫系への取り込みは長期に及ぶ工程であること、(b)成人期にはTリンパ球は非常にゆっくりと産生され、さらに年配の方ではさらにゆっくりと産生されること、(c)補給臨床試験では、実験対象はその全く異なる食習慣を矯正するのに4−6ヶ月を必要とし、味、臭い、および摂取する時間に慣れるのに時間を要すること、(d)食事療法でのPUFAは、サイトカインおよびエイコサノイドに対して、ならびにMS患者の末梢血単核細胞(PBMC)中の腫瘍壊死因子−アルファ産生および血清中可溶性IL−2受容体に対して影響を、およびIL−1ベータおよびTNF−アルファのレベルの有意な減少を示すには4−6ヶ月を有すること、(e)PUFAの経口による食事療法での補給は静脈内投与とは異なり神経学的作用を示すのに4−6ヶ月を必要とするとの報告があるため、たとえ医学的治療下にある患者が4種の治療群内で何ら有意な違いがなく無作為化されたとしても、介入の結果として、その効能を正確に記録できるように、可能性のあるPUFAの欠損をできる限り修正し、標準化したいこと、最後に(f)プラセボ効果および平均値への回帰を除くこと、で示される理由があるからである。
【0182】
PUFAのRBC膜への取り込みを確認するのに使用される方法は標準的プロトコル(ロンドン・メトロポリタン大学、Fatty Acid Analysis Protocol, 2003, Institute of Brain Chemistry and Human Nutrition)に基づいた。PUFAのRBC膜への取り込みはガスクロマトグラフィー(GC)で評価された。血液サンプルを、参加時に、3ヶ月毎に、およびエントリー基線から実験の終わりまで、予定された臨床評価を行う毎に、参加した患者より採血した。血液は再発の間も収集された。この実験の結果は、ヘリックス・インキュベーターが評価のために利用可能であり、盲検が台無しとならないように、研究者に対しては実験の終了後に公にされた。PUFAの単離、特徴付け、および定量化は上記した標準プロトコルを用いて実施された。脂肪酸分析と並行して、安全性を評価する解析のために、慣用的な血液学および生化学の血液試験解析を一定間隔で行った。PUFAの不足は是正される必要があり、薬物の作用を得る前に、できる限り標準化されることであることが示唆される。
【0183】
参加する前の2年間のデータを患者の医学ファイルの記録より集めた。2008年1月1日〜2009年12月31日までの24ヶ月を実質的な治療期間と定める。特定のPUFAの食事より由来の陽性作用(再発率の改善および免疫系およびCNSに対する実際の作用)は一の効果を示すまで4−6ヶ月を要する。
【0184】
4つの介入処方が医学的使用のための滋養剤のカクテル療法として使用され、経口投与された。この研究は、包括解析を含め、概念実証のプロトコル前の効能に特異的な実験である。
【0185】
二つの連続する臨床評価の間で患者のEDSS点が少なくとも1.0悪くなっている場合、障害は悪化しており;同じあるいはEDSS点が0.5増大または減少している場合には安定しており;EDSS点が1.0減少しており、それが24週間持続される場合には改善している(再発の間に進行は確認され得なかった)と考えた。障害進行に関するEDSS評点は進行性事象である(将来のすべての事象は先の評点に(正にまたは負に)付加された値を有する)。
【0186】
いずれの時点のドロップアウトであっても、割り当てられた介入を一切受けていないドロップアウトであっても他のすべての参加者と同様に追跡した。実験は体重、特性結果を付与するように設計され、該結果の解釈に至る異なる方法を実施した。該実験は参加から30ヶ月で終わるように設計され、臨床的評価は治療でのエントリー基線、3、9、15、21および24ヶ月でなされるように予定された。新たに神経学的徴候を発症した後の48時間以内に、関係のある神経学者が、患者をまた臨床的に評価した。神経学者が有害作用または副作用を精査し、患者を検査し、あらゆる医療上の決定を行った。その同じ精神学者がEDSSの評点を決定した。
【0187】
患者は、再発が疑われる場合、仮に何らかの有害事象、副作用またはアレルギー反応があるならば、いつでもクリニックを訪れるか、または該精神学者に連絡することができた。この特定の実験はプラセボ群と別の3つのバイ−サイド(並行)群を含むため、一人の精神学者が結果に対してバイアス効果を有するであろう可能性は現実的ではなく;精神学者は患者の各々がその参加しているいずれか1つの群でどのように試験がなされるかの治療について知ることはできなかった。
【0188】
主要評価項目は、再発全般、エントリー基線から実験終了まで6ヶ月毎の患者当たりの再発の平均数、およびARRであった。再発は、少なくとも24時間続き、新たな神経学的兆候を伴う、発熱または感染に付随しない新規または再発性精神学的徴候として定義される。再発は、メチルプレドニゾロンを用い、一日当たり静脈内に1gの用量で、3日間治療し、プレドニゾロンを経口的に一日当たり体重1kgに付き1mgの用量で3週間にわたり漸減スキームにて治療した。2年での鍵となる第二評価項目は、6ヶ月後に確認される、障害の進行(EDSSが1.0以上増大したものと定義される)が確認されるまでの時間であった(再発の間に進行は確認され得なかった)。実験が終わってから6ヶ月経過した後に最終のEDSS評点を確認した。事後解析を行い、最も効果的な介入に対してプラセボを受領する群のプロトコル当たりの参加者について実験の最後に、脳MRIスキャンでの新たなまたは拡大するT2病変のない患者の割合を評価した。参加した日の3ヶ月前までの既に利用可能な保全されているMRIスキャンに対する比較を行った。MRIスキャンを実施し、MRI評価センターで盲目的解析を行った。実験が終了した後も付加的に12ヶ月間、患者での追跡を続け、再発を記録した。患者は、たとえ割り当てられた実験介入処方を中断したとしても、追跡評価のために実験を維持するように強く促された。
【0189】
安全性測定を参加の時点から実験が終了した後の12ヶ月まで評価した。腎機能および肝機能試験、コレステロール、トリグリセリド、グルコースおよび電解質を含む、血液学および生化学試験を参加の時点および12ヶ月毎に行った。
【0190】
実験では予め特定された時点で目的とする評価項目があった。プロトコルに従って6ヶ月毎の間隔で、再発およびEDSSの数を記録した。具体的には、該実験は各治療群のEDSSが第二評価項目に従って、プラセボに対して解析されるが、さらに、治療前の24ヶ月の期間での、治療期間の間の障害の進行に対する、各治療群内での障害の進行を比較することによって解析されるように設計される。同じ概念により、各治療群の再発は主要評価項目に従って、プラセボに対して解析されるが、また治療前の24ヶ月の期間での各治療群内の再発およびARRの数を、治療期間の間の再発およびARRの数に対して比較することによって解析されるように設計される。
【0191】
実験の終了後(実験後)に付加的に12ヶ月間(2010年12月31日まで)患者を追跡し、再発の発生率を記録した。群内の患者の通常の薬物治療は略均等に分配された(上記の実験設計および無作為化を参照)。
【0192】
結果
実験集団
これは、高用量の特異的製剤を用いることで、MSにおけるオメガ−3PUFA/オメガ−6PUFA、「他の」オメガ−3、MUFA、SFA、ビタミンA、ビタミンEおよびγ−トコフェロールの、および上記した組み合わせにおける、特異的構造形態により構成される3種の異なる介入処方の通常の治療に対して可能性のある治療および/またはアジュバント療法を説明しようとする、臨床評価項目を詳細に規定する、制御された二重盲検の無作為の臨床実験である。80人の患者のうち、3群の各々に20人の患者が割り当てられて、指示介入A:オメガ−3PUFA/オメガ−6PUFA、「他の」オメガ−3、MUFA、SFA、ビタミンA、ビタミンE、B:オメガ−3PUFA/オメガ−6PUFA、「他の」オメガ−3、MUFA、SFA、ビタミンA、ビタミンEおよびγ−トコフェロール、C:γ−トコフェロールと、ビヒクルとしての精製されたバージンオリーブオイルを受け、20人がプラセボ−精製されたバージンオリーブ油を受けた。治療群の間の基線特性にて有意な違いはなかった(表1)。また、30ヶ月の実験を終える(オール・タイム・オン・スタディ)患者について、治療群の間の基線特性にて有意な違いはなかった(表2)。
【表5】
統計解析にてすべてのパラメータ(変数、共変数)を計数し、該パラメータは結果が絶対に偽陽性に暴露されないように統計的に調整された。実験の設計指示に従って、種々の間隔で結果を解析するのに使用されるデータを、以下の表3〜11に示す。
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【0193】
実験治療の期間にかかわりなく、故障寿命(包括解析)は患者のすべてを包含する(下記の表12および13)。
【0194】
【表15】
【表16】
【0195】
主要評価項目が明確に決定される前には全体でわずか5人の患者が追跡から外れるにすぎず、その意図するところで、実験設計に従って解析の処理をすることは不可能であった。ドロップアウトした患者のうち2人は後になって追跡実験している年でRRMSから二次進行型MS(SPMS)に変わった患者であり、その意図するところで、設計の排除基準に従って解析の処理をすることも排除された(患者が二次進行型MSの段階に突入する場合には、MS患者を予め値付ける方法はない)。これが該実験に参加する前提基準が表明されている理由であった。
【0196】
合計41人(51%)の患者が30ヶ月のすべての実験を完了し、合計39人(49%)の患者が取りやめる(ドロップアウト)か、または追跡を外れた。群Aでは10人の患者、群Bでは10人の患者、群Cでは9人の患者、およびプラセボでは12人の患者が該実験を終えた。追跡を完全に外れた5人の患者、および二次進行型MSとなった2人の患者を除いて、取りやめられた患者はすべて実験の終わりまで追跡を完了した。これらの32人の患者(7人のプラセボ受容者、群Aのうち8人、群Bのうち7人および群Cのうち10人)は追跡および評価が続けられ、その結果としてのデータ(再発およびEDSS)は、その意図するところで、統計解析の処置が包含された。群とプラセボの間のペアード・ワイズ(paired wise)統計解析(その結果は意図されるように検出力を維持する)ならびに各軍のプラセボに対する個々の比較は次のとおりである。
【0197】
効能
年間再発率は次のように計算した:いずれかの時点での年間再発率では、その期間での患者の再発数をその特定の期間の治療日数で割った。この解に365(日数)を掛けた。年間再発率は多くの著者が広く報告している。これは該分野では標準的であるが、この方法は患者が第一の再発に至るまでの時間が、患者の第一の再発からその第二の再発までの時間とは独立している(すなわち、他の患者よりも本質的に高い再発率の患者はいない)との仮定を前提とする。しかしながら、該方法は文献にて広く用いられているため、他の刊行物に記載のデータと比較可能とするために該年間再発率を含める必要があった。年間再発率はまた、すべての患者について、上記されるように、実験中のあらゆる時間を用いて、(再発した平均数を用いることで)計算された。表3〜9は、主要および第二評価項目に従って、異なる実験前および実験中の間隔で、ドロップアウトした患者のデータを除外した後の再発数および年間平均再発率を示す。実験の設計(上記)は、エントリー基線で通常の治療を受けているまたは受けていない、実験した集合全体のパーセンテージを示す。図1は実験した集合全体の通常の治療の、エントリー基線での治療を受けていない割合を示す。
【0198】
図2はエントリー基線で従来治療を受けているか、受けていないオール・タイム・オン・スタディ集団の割合を示す。群Aにて、60%が従来治療を受けており、40%が治療を受けておらず、群Bにて、40%が従来治療を受けており、60%が治療を受けておらず、群Cにて、67%が従来治療を受けており、33%が治療を受けておらず、および群Dにて、50%が従来治療を受けており、50%が治療を受けていない(有意差なし、p=0.799)。表13は集団全体(ドロップアウトを含む)、包括解析に対するものである。図3は実験の終わりに従来治療を受けているか、受けていない包括治療の集団の割合を示す。群Aにて、78%が従来治療を受けており、22%が治療を受けておらず、群Bにて、59%が従来治療を受けており、41%が治療を受けておらず、群Cにて、74%が従来治療を受けており、26%が治療を受けておらず、および群Dにて、79%が従来治療を受けており、21%が治療を受けていない。図3より、本発明者らは、すべての群に適用された従来治療がITT解析(ペアード・ワイズ解析)で有意な効果を有し、代償に群Bのプラセボに対するITT効能評価に影響を及ぼしうることが明確に理解され得る。
【0199】
治療から1年した後、プラセボを除くすべての試験群は年間で計算される再発率を減少させた(表3)。治療した最初の年では、群Aは0.8の年間再発率を示し、群Bでは年間再発率が0.4であり、群Cでは年間再発率が0.8であり、それらと比べてプラセボ群(群D)では再発は一年に付き0.8回であった。治療した次の年では、群Aは0.9(最初の年と比べて+12.5%)の年間再発率を示し、群Bは年間に0.4回の再発の年間再発率を維持し(最初の年と比べて0.0%の増減);群Cは年間に0.7回の再発の年間再発率を示し(最初の年と比べて−12.5%)、プラセボでは、次年の年間再発率が1.25に上昇した(最初の年と比べて+56.3%増)。介入処方Aは、プラセボと比べて、最初の年に0.0%の年間再発減少率(ARRR)を示し、次の年では28%であり;介入処方Bは、プラセボと比べて、最初の年に50%のARRRを示し、次の年では68%であり;介入処方Cは、プラセボと比べて、最初の年に0.0%のARRRを示し、次の年では44%であった。
【0200】
患者当たり1回以下の再発の割合は、介入処方Bの群Bにてプラセボ群よりも、2年間の実験で、90%:42%と有意に高かった。群Aでは、50%:42%で、群Cでは44%:42%であった。介入処方Bはプラセボと比べて48%の絶対リスク減少率(ARR)を示した。これは、介入処方Bが、プラセボと比べて、2年間で1回の再発と同じまたはそれより少ない可能性を114%まで増加させることを意味する。群Bは、基線で、再発が2回より少ない患者は2人だけで、2人の患者で2回の再発があり、6人の患者で4回以上の再発があったと述べることで、この観察はさらに説得量が増す。2年間の試験期間の間に、群Bでは9人の患者が1以下の再発で終了しており、1人の患者が2回の再発を有した。プラセボ群では、基線で、各々、1回以下の再発の患者が6人、各々、2回の再発の患者が2人、3回以上の患者が4人いた。治療の間に、プラセボ群で、各々、5人の患者が1以下の再発で終了しており、1人の患者が2回の再発を有し、6人の患者が、各々、3回以上の再発を有した。
【0201】
実験前の2年の間に、2以上の再発のあった患者は、群Aで10人中7人(70%)、群Bで10人中8人(80%)、群Cで9人中6人(67%)、およびプラセボ群で12人中6人(50%)であった。実験の終わりで、2以上の再発のあった患者は、群Aで10人中5人(50%)、群Bで10人中1人(10%)、群Cで9人中4人(44%)、およびプラセボ群で12人中7人(58%)であった。介入処方Bは、エントリー前の2年間と比べて、2以上の再発を有する患者で70%の絶対リスク減少率を示した。2年間の実験で、1の再発の患者の割合は、群Bでプラセボ群よりも高かった(90%:42%)。介入Bは2年間で患者が>1回の再発を有する危険性をプラセボと比べて83%まで減少させた(p=0.019)。
【0202】
上記した群の特性に従い、およびMS患者で将来の再発に関連して再発歴がどのように働くかの現存する情報から、小さな疾患活動性(1以下の再発の6人の患者、2回以下の再発の2人の患者、および3回以上の再発の4人の患者)で該実験に参加したプラセボ群の患者は、群Bの患者(1以下の再発の患者は2人だけ、2回以下の再発の2人の患者、および3回以上の再発の6人の患者)とは対照的に、治療の間に最も低い疾患活動性を示すであろうと考えられた。
【0203】
上記の記載とは逆に、群Bの患者は、プラセボと比べて患者当たりの再発の基線が高く、年間再発率が高いが、治療後に、上記とは逆の結果(正反対)を示すことが明らかにされた。この結果は介入処方Bによる強力な効能を示す(表9)。
【0204】
群Bで治療する間の、プラセボと比べた、6、12、18および24ヶ月の間隔当たりの年間再発率(ARR)は、最初の6ヶ月で0.80:0.67(プラセボとは+19.4%の違い)であり、0〜12ヶ月の間で0.40:0.83(プラセボとは−51.8%の違い)であり、0〜18ヶ月の間で0.33:0.89(プラセボとは−62.9%の違い)であって、0〜24ヶ月の間で0.4:1.04(プラセボとは−61.5%の違い)であった(表4)(図7、6ヶ月当たりの再発数)。プラセボと比べた群Aでは、最初の6ヶ月で0.60:0.67(プラセボとは−10.4%の違い)であり、0〜12ヶ月の間で0.80:0.83(プラセボとは−3.6%の違い)であり、0〜18ヶ月の間で0.80:0.89(プラセボとは−10%の違い)であって、0〜24ヶ月の間で0.85:1.04(プラセボとは−18.3%の違い)であった(表4)。プラセボと比べた群Cでは、最初の6ヶ月で0.22:0.67(プラセボとは−67.2%の違い)であり、0〜12ヶ月の間で0.77:0.83(プラセボとは−7.2%の違い)であり、0〜18ヶ月の間で0.82:0.89(プラセボとは−7.9%の違い)であって、0〜24ヶ月の間で0.72:1.04(プラセボとは−30.7%の違い)であった(表4)。プラセボと比べた群Bでの治療の間の6ヶ月の間隔当たりの年間再発率は、最初の6ヶ月で0.80:0.67(プラセボとは+19.4%の違い)であり、次の6ヶ月で0.00:1.00(プラセボとは−100%の違い)であり、第3の6ヶ月で0.20:1.00(プラセボとは−80%の違い)であり、最後の6ヶ月で0.60:1.50(プラセボとは−60%の違い)であった(表5、6)。対照と比べた群Aは最初の6ヶ月で0.60:0.67(プラセボとは−10.4%の違い)を示し、次の6ヶ月の間に1.00:1.00(プラセボとは0%の違い)を示し、第3の6ヶ月の間に0.80:1.00(プラセボとは−20%の違い)を示し、最後の6ヶ月には1.00:1.50(プラセボとは−33.3%の違い)を示した(表5、6)。群Cを対照と比べ、最初の6ヶ月で0.22:0.67(プラセボとは−67.2%の違い)を示し、次の6ヶ月の間に1.33:1.00(プラセボとは+33%の違い)を示し、第3の6ヶ月の間に0.89:1.00(プラセボとは−11%の違い)を示し、最後の6ヶ月には0.44:1.50(プラセボとは−70.6%の違い)を示した(表5、6)。
【0205】
実験前から1年までの年間再発率を、実験を終えた集団の実験的再発率と比較して、表7に示す。群Aは−27.3%の減少を、群Bは−70.4%の減少を、群Cは−12.5%の減少を、プラセボは0.0%の違いを示した。表8は実験前2年から2年までの年間再発率を実験を終えた集団の実験的年間再発率と比較したものである。群Aは−22.7%の減少(参加前の2年間で再発が22回あったことから、実験にて2年以内に再発が17回に減少)p=0.391、CI 95%を示し、群Bでは−70.4%の減少(参加前の2年間で再発が27回あったことから、実験にて2年以内に再発が8回に減少)p=0.0006、CI 95%を、群Cでは−18.2%の減少(参加前の2年間で再発が16回あったことから、実験にて2年以内に再発が13回に減少)p=0.303、CI 95%を、プラセボでは+25.3%の増加(参加前の2年間で再発が20回あったことから、実験にて2年以内に再発が25回に増加)p=0.510、CI 95%)を示した(図4)。
【0206】
年間再発率の増加は、群Bと比べて有意な差でプラセボ群で示されており、再発率は6ヶ月間で劇的に下落し、その物自体が安定化した(図4、5)。この現象に、PUFAがその臨床効果を発揮するまでに4−6ヶ月を要するという科学的知見が反映しているのはほぼ確実である。これが制御を基礎とする試験であり、4群が並行して試験されるため、プラセボ効果ではこれらの結果を説明できないのは明らかであり;この試験にて最初の6ヶ月は標準化/検定のために用いられるため、プラセボ効果が一定の効果を有する、実験の最初の6ヶ月は、発明の効果とすることはできない。これらのプラセボバイアス効果は、対照がなく、標準化期間がない、単一群の試験で説明されうるに過ぎず、ここでは有効ではない。この時点で、もう一つ別の理由から、バイアスは何ら存在しない:というのも、他に並行して治療される該試験に関与する3種の群が存在し、ペア統計解析にも用いられるからである。各群の対象の数に関する限り、本発明者らは該実験の80人のMS患者(一群に付きn=20)がキプロスのDMT治療の候補者であるRRMS集団全体の20%を示し、このことが該実験の統計的検出力の強力なパラメータであることを検討する必要がある。試験が適切に設計され、すべての化学的臨床実験パラメータ(FDAおよび欧州医薬品庁(EMA)が提案するパラメータ)が追跡される場合、その時には該結果の力は極めて価値のあるものである。加えて、この実験で3種の並行した群は、該群とプラセボの間の動的比較を付与する。
【0207】
結果解析を行う種々の方法で得られる主な結論は、介入処方BがMSに対して明確な陽性活性を有して価値があり、統計的に有意なことである(参加する2年前の値をプラセボと関連して比較した場合には、p=0.0006、95%の信頼区間であり、実験に入って2年でプラセボと比較した場合には、p=0.014、95%の信頼区間であった)。介入処方Bで治療した患者で再発が有意に少ないのは明らかである。群Bと同様に結果を解析すると、群Aは参加する2年前の値とプラセボと関連して比較した場合、p=0.391であり、実験に入って2年の値をプラセボと比較した場合、p=0.486であり、群Cは参加する2年前の値とプラセボと関連して比較した場合、p=0.303であり、実験に入って2年の値をプラセボと比較した場合、p=0.175であった(表8、9)。
【0208】
患者が試験、特に群Bにある場合には、プラセボに対して最大の再発率の減少が、(a)該実験に入って6〜12ヶ月の間に(100%減少);(b)6〜18ヶ月の間に(90%減少);および(c)実験に入って6〜24ヶ月の間に(75%減少)が観察された(表6)。群Bにおけるこれらのタイム・ピリオド・ウィンドウは、各々、0.00、0.10および0.30の年間再発率を示した。このことは、6〜12ヶ月の期間の間に、群Bにて、すべての患者が再発がなく、6〜18ヶ月の期間では、10人の患者のうち1人だけが1の再発を有し、プラセボでは、6〜12ヶ月の間に患者の各自が1の再発を有し、6〜18ヶ月の期間では、患者の各自がもう一度1の再発を有し、6〜24ヶ月の間では患者の各自が1.2の再発を有することを意味する。他の2種の並行する群(群AおよびC)は一つもこの長期にわたる再発のない区間を示さなかった。これらの結果解析は処方Bが実験に入って最初の6ヶ月を経過した後に最大の効果を有し、その時から終わりまで最大効果がある;すなわち、年間再発率が安定化されるとの結論を付与する。
【0209】
プラセボは、最初の6ヶ月の間は0.67の年間再発率を示し、その次の6ヶ月の期間で1.00に上昇した。次に、いくらかマイナーな変動であるが、常に80−100%の違いをもって、Bと比べて年間再発率にて、1.2の年間再発率が報告された(表6、図10、12)。表9は24ヶ月の治療の間の各群での年間再発率およびプラセボとの違いを%で示す。群Aでは年間再発率は0.85であり、プラセボと比べて18.2%減少しており(p=0.486、95%信頼区間)、群Bでは61.5%の減少と共に0.40(p=0.014、95%信頼区間)、群Cでは30.8%の減少と共に0.72(p=0.175、95%信頼区間)であった。
【0210】
図6、8、9および16は、各群での、再発の時間に対するグラフであって、群Bは再発が長期にわたって存在しないウィンドウでほとんど規則的な周期性/頻度を示すのは明らかである。この現象は重要である;というのも、患者の疾患が漸進的に変化する中で、MSについて例外であるというよりもむしろ規則的であることが極めて異質であるため、これはMS疾患に対して強力な陽性作用を示し得るあらゆる薬物の指標だからである。
【0211】
他の群はすべて再発が不規則に分散し、2年間にわたって再発が分散すると共に、最大の活性を示すため、群Bのこの特性は独特なものである。群Bでは、すべての患者は再発頻度の改善を示した。そのうちの、参加前に年に4回より多くの再発を示し、かなり活性であった4人の患者は、結果として、3人の患者が1の再発、および1人の患者が2の再発を示した。重要なことは、参加前にはその大部分の患者が3および4の再発を示した群Bの患者が、基線で1.35の年間再発率を示し、参加前にはその大部分の患者が1または2の再発を示したプラセボの患者が、0.83の年間再発率を示すことである。上記したように、再発の蓄積を示す患者は、通常、再発の発生率の低い患者とは反対に、再発の大きな活性を示す。例えば、2年で再発が1回であった患者の場合、次に2年で発作がないことはよくあるが;それは既存の医薬では一般的な現象ではなく、過去の2年にて3回以上の再発のあった患者が、次の2年で再発が0または1回とすることは疾患の漸進的変化である。結局、介入処方Bはかなり活性な疾患に対して強力な陽性効果を有した。上記した臨床効果は、これまでに、より活性な疾患の患者にてより明白な効果が認められることを示す、MSの初期PUFA実験で仮説として取り上げられた。すべての群の、参加した集団全体は、エントリー基線で、ほぼ同じ年間再発率を有したため、基線での群Bの活動が最大である再発の結果は独占的にドロップアウトの結果であった。
【0212】
活動の小さな患者は、その何人かは処方の味が望ましくないことが分かるとの理由から、試験を取りやめる明確な選択肢を有した。他方で、プラセボ群におけるドロップアウトの多さは再発が多いことの結果であり、それは特定の群で治療効果がないことを意味すると仮定することができる。プラセボ群では、治療の間に、上記されるように、患者当たり3回以上の再発を意味する重度の再発率を経験した患者が60%を越えた(12人の患者のうち7人)。プラセボ群の患者のうち2人はより積極的な従来の医薬に切り換えた。群Bでは、1人の患者だけが2回の再発を経験し、残りの90%は再発がないか、または再発が1回だけであった。患者はすべて正常な一般的薬物療法の下にあり、上記したように特定の治療指針プロトコルに従った。すべての群を治療する間の6ヶ月毎の再発の数を図10に示す。エントリー前のすべての群のARR:6ヶ月経過毎のARRを図11に比較して示す。群Bの異なるタイム・ウィンドウにおけるオール・タイム・オン・トリートメント集団のARRを図12に示し、それでは6ヶ月と18ヶ月の丸一年の間、群Bで年間再発率が0.1で1回だけ再発があったと明確に観察できる。
【0213】
2010年1月1日から2010年12月31日までの実験後評価(12ヶ月):実験終了後の4群すべての患者を、実験終了した後に付加的に12ヶ月(2010年1月1日から2010年12月31日まで)追跡した。すべての再発の発生率を集めて評価した。群Aでは5回の再発、群Bでは6回の再発、群Cでは5回の再発および群D(プラセボ)では19回の再発が報告された。この12ヶ月の延長期間の間に、再発のなかった患者は:群Aで70%であり、群Bで70%であり、群Cで55%であり、プラセボでは7%(実験終了後の患者のうち93%では再発が続いた)に過ぎなかった。この期間の間に、群Aから2人、群Bから2人、群Cから1人、およびプラセボ群Dから4人の患者が第二選択MS薬(タイサブリ(登録商標))に変更された。これらの結果は非常に興味深いものと考えられ、臨床試験の効能の全体の評価結果を付加的に追認するものである。a)これが介入による長期持続作用の結果であるかもしれないこと、b)患者がおそらくは何年にもわたって質の向上した生活を獲得するであろうこと、c)より活動的な第二選択薬に変更する必要がないこと、d)これが可能性のある再ミエリン化および神経保護の付加的な証拠であるかもしれないこと、e)DMT治療だけの患者とは異なり、その介入により患者が長期に及ぶ寛解工程にある可能性のあること、最後にf)該生成物が現存するすべての治療に対して新規であり、その中断後に、再発および疾患の速やかな進行に対して既知のリバウンド効果がある、などの付加的な成果はこれらの結果に起因する。
【0214】
包括解析
包括解析は、得られた利用可能なデータに基づき、介入の効能を評価するための一次解析と考えられる。該解析方法は実際の臨床診療を反映する従来の方法である。たとえ本発明の目的が介入の効能を明らかにすること(コンセプトの証明)であるとしても、本発明者らは同様に包括解析に従ってその結果を解析する。その結果が明確に理解され得るように、本明細書にて十分に説明されている。
【0215】
上記されるように、たとえ、その臭いおよび風味をシトラスアロマでマスクしようとしても、この試験ならびにこれまでに報告されているすべてのオイル関連試験にて、その不快な風味と臭いのため、オイル含有の介入による臨床試験にて多数の患者がドロップアウトする現象が繰り返された。この現象は決して重度の有害作用または副作用と関連付けられなかった。群A(n=8)におけるドロップアウトした患者を再発について解析した場合、参加する前では20回であるのに対して、14回の再発が報告され(ARRは、各々、0.88:1.25、p=1.000 CI 95%)、群B(n=7)では、参加する前では14回であるのに対して、14回の再発が報告され(ARRは、各々、1.00:1.00、p=1.000 CI 95%)、群C(n=10)では、参加する前では27回であるのに対して、26回の再発が報告され(ARRは、各々、1.30:1.35、p=0.890 CI 95%)、プラセボ群(n=7)では、参加する前では20回であるのに対して、13回の発作が報告された(ARRは、各々、0.92:1.42、p=0.226 CI 95%)(表12)。群A(n=18)の集団全体(ドロップアウトを含む)の年間再発率は、参加前は1.17で、実験の終わりでは0.86(26.5%減)で、p=0.200、CI 95%であり;群B(n=17)の年間再発率は、参加前は1.21で、実験の終わりでは0.65(46.3%減)で、p=0.019、CI 95%であって、群Bについては統計的に有意なARR減であり;群C(n=19)の年間再発率は、参加前は1.13で、実験の終わりでは1.03(8.8%減)で、p=0.579、CI 95%であり;プラセボ(n=19)では、参加前は1.06で、実験の終わりでは1.00(5.7%減)で、p=0.443、CI 95%であった(表13)。2年の実験期間で、プラセボと比べて、群Aは年間再発率の14%減(p=0.537、CI 95%)を示し、群Bは年間再発率の35%減(p=0.104、CI 95%)を示し、群Cは年間再発率の3%減(p=1.000、CI 95%)を示した。
【0216】
3種の群のドロップアウトした患者の結果の総合的見通しは、該患者が極端または予想されない転帰を示さないというものである。プラセボ群でドロップアウトした大部分は、おそらくは再発の数の減少をもたらす、従来の治療を受けて開始する必要があった。群A、BおよびCには、妊娠している患者がいた。上記したように、該患者はシロップ処方の臭いおよび味に不快を感じ、ドロップアウトする主な理由が、その処方の味または臭いにあり、他の重度の有害な事象または副作用の結果によるものではないと認められた。見れば分かるように(表13)、特にプラセボ群の解析に含まれる場合のドロップアウトした患者で、治療前と比べて、また他の治療群と比べても、治療期間の間に再発の数は減少する。この転帰のありそうな理由としてはプラセボ群のドロップアウトした患者が最も高い頻度で従来の治療を開始したとの事実がある。群Bのドロップアウトした43%はエントリー基線で従来の治療を受けており、実験が終わるまでその同じ状態を維持した。他方、プラセボ群のドロップアウトした57%はエントリー基線で従来の治療を受けており、この割合は実験の終わりには86%に上昇した。インターフェロンおよびモノクローナル抗体は再発度を調整することが明らかにされているため、これら薬物の効果、特にプラセボ群のドロップアウトにおける薬物の効果が、ITTデータ解析に劇的に影響したことを容易に結論付けることができる。
【0217】
集団全体のITT解析にて、群Aの平均障害進行はエントリーの2年前では18.2%増加し、試験期間中は16.2%増加し(10.9%減);群Bでは、エントリーの2年前では35.2%増加し、試験期間中は14.9%増加し(57.7%減);群Cでは、エントリーの2年前では22.8%増加し、試験期間中は15.3%増加し(32.9%減);および群Dでは、エントリーの2年前では19.5%増加し、試験期間中は24.1%増加した(24.1%増)(表13)。これらの数値は、疾患の緩やかな段階(低再発率)にある、試験群の人々が、味または臭いが好きでなかった、あるいは妊娠しているとの理由だけでドロップアウトしたとする上記の記載を支持するのは明らかである。群Bで、7人のドロップアウトした患者はエントリー前は14回の再発があったに過ぎず(穏やかな状態)、次の2年間(実験期間内)に同数の発作が報告され示されている。群Bで、実験を開始したばかり(標準化期間を首尾良く終える前)の時点で、ドロップアウトした患者の2人は、後になって、二次進行型となり、該結果の解析より除外された(除外基準)。1人の患者は追跡調査することを逃れた。上記されるように、プラセボ群のドロップアウトした患者の有意な割合が従来の薬物療法を受けた(プラセボ群のドロップアウトした86%がインターフェロンまたはタイサブリ(登録商標)を受けた)。タイサブリ(登録商標)はARRを68%まで減少させることが知られており、障害蓄積の可能性を43%まで減少させる。この事実はITT解析に陽性の効果を及ぼし、プラセボに有利に働く。プラセボと治療介入の間のこれらパラメータおよび条件は、ITT解析にて説明されないとすれば、強力な治療効能の介入に誤った価値を与えうる。プラセボ群では妊婦は報告されなかった。
【0218】
ITT解析にて、群Aの障害平均進行度は、エントリー前の2年で18.2%および試験期間内に16.2%増加し(10.9%減);群Bでは、エントリー前の2年で35.2%および試験期間内に14.9%増加し(57.7%減);群Cでは、エントリー前の2年で22.8%および試験期間内に15.3%増加し(32.9%減);および群Dでは、エントリー前の2年で19.5%および試験期間内に24.2%増加した(24.1%増)(表13)。これらの数値は、ドロップアウトについてのもっともらしい理由;処方介入の味および匂いのよさ、患者の身体条件に限定する理由に基づく、上記した記載を支持するのは明らかである。より具体的には、エントリー前の−24ヶ月のITT患者の平均EDSS評点は、群Bで1.59で、プラセボで2.00であった(表13)。エントリー基線では、平均EDSS評点は群Bで2.53であり、プラセボで2.39であった(表13)。エントリー前の数年についてエントリー基線に至るまでの%増加は群Bで35.2%であり、プラセボで19.5%であった(表13)。2年の治療実験の終わりで、群BについてのEDSSは2.47であり、プラセボについては2.97であった。治療の間の%増加は群Bについては14.9%であり、プラセボについては24.2%であった(表13)。エントリー前の2年間の群BのEDSS進行をプラセボ群DのEDSS進行と比較した場合、群Bの患者のEDSSの悪化の増加が観察される。2年間の治療の間の群BのEDSSの進行をプラセボ群DのEDSSの進行と比較した場合、本発明者らは介入処方Bを用いる障害進行コースの劇的な減少を理解し得る。群Bについての−24ヶ月(実験前の2年間)の障害進行を、+24ヶ月(実験の間の2年間)の障害進行と比較した割合の違いは57.7%減であり、プラセボでは24.1%増であり、ITT解析にとって有意な違いである。
【0219】
各群の集団全体(ITT)の障害進行では、数種の因子は、ドロップアウト特性の結果として(従来の治療および第二選択薬、タイサブリ(登録商標)にある患者の数の増大)、結果に良い影響を及ぼしうると結論付けることができる。上記に十分に検討されているこれらのパラメータはすべて、プラセボに有利に、かつ介入処方Bに拮抗して、治療の効能結果を評価するのに狡猾で見事な役割を果たした。たとえ、これらのパラメータがすべて、ITT解析にて、プラセボに有利であったとしても、ITTについて、介入Bはプラセボに比べて強い有意な活性を有することが明らかにされる。
【0220】
オール・タイム・オン・スタディ集団の治療前および治療間のEDSS障害進行度
2年に及ぶ障害の持続的進行度(2年の第二評価項目)はプラセボ群に比べて介入処方B群にて有意に低下した(図13−15を参照)。2年での、EDSSで1点進行する累積的可能性(カプラン・メイヤー解析に基づく)は、処方B群では10%(1/10)で、プラセボ群では58%(7/12)(P=0.049、95%信頼区間、統計学的有意性)であり、それは介入処方Bを用いて持続する障害進行の危険性の48%ポイントの減少(絶対リスクの減少)または相対的83%減(相対リスクの減少)を表す(表11)。群Aでは、累積的に進行する可能性は40%(4/10)(P=0.301、95%信頼区間)であり、それは持続する障害進行の危険性の19%ポイント(絶対リスクの減少)または相対的31%減(相対リスクの減少)を表す(表11)。群Cでは、累積的に進行する可能性(カプラン・メイヤー解析に基づく)は22%(2/9)(P=0.143、95%信頼区間)であり、それは持続する障害進行の危険性の36%ポイント(絶対リスクの減少)または相対的62%減(相対リスクの減少)を表す(表11)。
【0221】
実験の終えた患者のエントリー前の−24か月での平均EDSS評点は、群Aでは2.05で、群Bでは1.70で、群Cでは2.11であり、プラセボでは2.08であった(表10)。エントリー基線での平均EDSS評点は、群Aでは2.65で、群Bでは2.40で、群Cでは2.11であり、プラセボでは2.16であった(表10)。2年間の実験の終わりで、EDSSは、群Aでは3.30で、群Bでは2.70で、群Cでは2.72であり、プラセボでは3.33であり;治療の間の増加%は群Aで24.5%、群Bで12.5%、群Cで28.9%、およびプラセボでは54.2%であった(表10)。実験前の2年間、群BのEDSSの進化(41.2%増加)をプラセボ群のEDSSの進化(3.8%増)と比較すると、本発明者らは群Bの患者のEDSSの劇的な悪化を明確に理解しうる。実験での群BのEDSSの進行(12.5%増)を実験でのプラセボ群のEDSSの進行(54.2%増)と比較した場合、本発明者らは仲介処方Bでの群Bの進行過程の劇的な減少を理解しうる。群Aでの障害の進行は29.3%(エントリー前)から24.5%(エントリー後)に減少し、群Cでは0%(エントリー前)から28.9%(エントリー後)に増加した。群Aについて−24カ月(エントリー前)の+24カ月(エントリー後)の障害進行の違い(%)は16.4%減であり、群Bでは69.7%減であり、群Cでは28.9%増であり、プラセボでは1326.3%増である。群Aの10人の患者のうち、4人の患者はEDSSの評点が1ポイント増加し、6人は安定を維持した。群Bの10人の患者のうち、9人は安定を維持し、1人はEDSSが1ポイント悪化した。群Cの9人の患者のうち、2人の患者は悪化し、7人は安定を維持し、プラセボでは、12人の患者のうち、7人が悪化し、5人が安定を維持した。2年(臨床試験の期間)で、介入処方Bはプラセボと比べて、群Bでは患者のわずか17%が障害の悪化する危険が増加し、約83%の患者が安定を維持した。
【0222】
MRI
重みづけの新たなまたは増大した病変のMRIスキャンは、患者の実験の最後でのMRIスキャンとの関連で、実験への参加の時点で(その通常の医学的フォローアップの結果として)既に最新のMRIを有する同じ患者に対する二次評価項目として含まれた。該結果は、群Bの患者のわずか28%が、プラセボ対照群Dでは患者の67%であるが、新たなまたは増大したT−2病変(約50%ポイントのデファレンス(deference))を生じさせたに過ぎず、58%の相対的リスクの減少を示すため、介入Bが疾患活性に対して陽性効果を有するとの、実験の全体としての結論を支持する。加えて、MRIでの知見は、新規または増大する病変の進行がARRと障害の蓄積差の知見と相関することを示す。
【0223】
安全性
30か月の実験において、有意な有害事象はいずれの群からも報告されなかった。質問者の操作によれば、ドロップアウトの原因は処方製剤の味および臭いだけであった。吐き気が2人の患者で報告された。生物化学的および血液学的血液試験のいずれにおいても異常な値は観察されなかった。アレルギー反応は何ら報告されなかった。
【0224】
統計的解析
小型臨床試験の統計的解析の指針によれば、結果の有効性を確認するためには、2以上の統計的方法を適用する必要がある。本発明では、再発を解析するのに、3種の統計的方法、ポアソン、クアッシ・ポアソン回帰および%差が適用され、EDSS評点を解析するのに、3種の統計的方法、進化度の割合(カプラン・マイヤー)、平均集団変化EDSS(ウィルコクソン・ランク試験)および後にハーバード・リサーチャーのグループにより示唆され、我々の統計学者(2007年、ミカ・マンデルら)の仕事に言及する、精巧なシリーズ方法が適用される。さらに具体的には、尤度法を用い、ガウス−−−エルミート求積法を利用することによって、ロジスティック回帰モデルを利用する。EDSSの進化についても%差の測定がなされた。用いられる方法はすべて、介入Bと約80%、α=0.05統計的検出力(事後解析)で、ほぼ同じ転帰、統計学的に有意な効能(p<0.05、CI 95%)を付与する。
【0225】
考察
多発性硬化症(MS)は、病因が不明の、ミエリン、オリゴデンドロ細胞(CNSのミエリン形成細胞)および軸索を破壊する、中枢神経系(CNS)の炎症性脱髄性疾患である。一旦確立されると、該疾患は、免疫細胞が神経細胞のミエリン鞘を攻撃する、免疫介在性であると考えられる。T細胞およびマクロファージは種々の作用機構を介して脱髄作用に関与していると考えられる。B細胞は免疫制御および悩細胞破壊に直接的作用を有する。B細胞はインターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、腫瘍壊死因子(TNF−a)およびケモカインを分泌する。B細胞はまた、MSを再発している患者にて高レベルの副刺激分子(CD80)を発現する。B細胞は特異抗原とうまく焦点が合うため、結果として強力な抗原提示細胞(APC)である。新たな明察はオリゴデンドロ細胞のアポトーシスがミクログリア活性化に付随して生じる主要事象であることを示唆する。その後で、T細胞およびマクロファージは活性化されるようになり、病変部位に移動する。MSに関与する重要な病理学的機構として、免疫介在性炎症、酸化ストレスおよび興奮毒性が挙げられる。これらの機構はすべて、オリゴデンドロ細胞および神経細胞の損傷ならびに細胞死にさえ寄与し、疾患の進行を促進するかもしれない。
【0226】
介入処方B(頭字語「PLP10」で示される)は、EPA、DHA、LA、GLA、他のオメガ−3 PUFA、MUFA、SFA、ビタミンA、ビタミンEおよびγ−トコフェロールを含有し、従前の治療に比べてかなりの程度まで統計的に有意な治療の改善が得られる点でこれまでの処方と異なる。該処方は、プラセボとの比較で、患者の障害が83%までEDSSで1点悪化する可能性を減少させた。これは、その可能性を18%まで減少させる、DMTなどの従前の治療剤と比べて有意な進歩である。
【0227】
多発性硬化症を再発する患者では、介入処方Bは障害の進行する危険性および2年間の治療にわたる年間再発率を有意に減少させた。介入処方Bの陽性作用は、従前の穏やかな治療剤よりも大きく、毒性の高い第二選択剤と同じまたはそれ以上であるが、重度の副作用がない。介入処方Bの作用は治療の6ヶ月後に記録され、実験の間を通して維持された。疾患を修飾する治療剤が、過去20年間、多発性硬化症を再発する患者用の治療の基礎となっている。現在利用可能な治療剤(インターフェロンベータ製品および酢酸ガラティラメル)の2年の試験は、これらの薬剤が年間再発率を約3分の一に減少させることを示した(PRISMS Study Group、1998、OWIMS 1999、Yong VWら、1998、Beck RWら、1992)。加えて、フェーズIVの、市販後実験は、約10〜25年間、年間再発率の減少が30%のままであることを示し、今日まで、EDSSの進行に対して大した衝撃はない。よって、多発性硬化症の再発に対してより効果的な治療に関する要求がなお存在する。
【0228】
この特異的な介入Bは、特に該介入が疾患の初期段階から使用される場合に、クオリティ・オブ・ライフを何年も維持する。本発明者らの実験は、介入処方Bが、再発性多発性硬化症の患者にて:
(a)プラセボ対照と比べて、EDSSを1点、83%までの、障害が進行する危険のある疾患の可能性(プラセボとの関連で、83%が安定したままであった);
(b)再発性多発性硬化症の患者における臨床での再発(プラセボに対して約61.5%およびエントリーの2年前の年間再発率と比べて70.4%以上の減少);および
(c)新規または増大するT−2病変の出現(脳MRIによればプラセボと約40%ポイントの違い)
を有意に減少させる、強力な証拠を提供する。従来の観察および本発明者らの結果に基づいて、本発明者らは介入処方Bの疾患の初期段階での効果がMSの治療における大きな進歩であると考える。
【0229】
介入処方Bは再ミエリン化および神経保護の改善をもたらし、それにより本発明の試験におけるEDSS評点の改善に寄与しうる。その上、本発明のデータは、効能が補充した後の早期に観察され、治療期間を通して持続することを示す。この試験の30ヶ月の評価期間(標準化期間を含む)内で、介入処方Bは、重度の有害事象なしで、優れた安全性転帰を有した。安全性は、治療とは別に要求される重要な主要特性であり、本発明の処方がその他諸々の副作用のない唯一の処方であることの証明はこれで確実である。
【0230】
この臨床実験の結果より、年間再発率が特定の介入Bの処方で有意に減少することはさらに決定的である。介入処方Bを用いる長期の治療を持続して評価することで、再発性多発性硬化症の治療手段におけるその地位をさらに確立されるであろう。処方B(および該明細書を通して記載されるそれと同様の処方)が、限定された現存するMSの治療剤の中から、最も優れた選択肢であることは明らかである。
【0231】
他に類似する介入が存在せず、MSの食事に関する、代謝的、免疫学的、および神経生物学的態様の間を関連付ける強力な証拠が公開して未だに提供されていないため、この臨床試験の結果はその有用性が高く、したがって、本発明者らが、初めて、健康の点から、特に食事の脂肪との関連で、MSと関係のないことが明らかな態様を利益のあるようにすることができる。2年の実験の終わりに、本発明の処方はプラセボとの比較で61.5%まで再発を減少させる。
【0232】
本発明の処方は、プラセボとの比較で、患者の障害が83%までEDSSで1点悪化する可能性を減少させた。本発明の処方はまた、意外にも、その効能がプラセボと比較して再発のない期間が長いこと(周期的かつ規則的な頻度)でも特徴付けられることを示すため、従来の処方とも区別される。
【0233】
長期持続的作用があり、MSのアジュバントとして、第二選択薬として用いられる場合に、ほとんど同じまたはより大きな効能を有する。このことはデータの収集を(実験後)12ヶ月延長することで証明される。再ミエリン化および神経保護作用の大きな可能性がある。ITT解析は該結果を支持する。該試験は、合計で5年(実験する2年前の評価+実験の2年間+実験した1年後の評価)より長い評価の他に、該試験に関連して患者を追跡し、その結果の評価および決定に対する該実験の動力学および検出力を得る。
【0234】
介入Bは2年間にわたって1回または1回より少ない再発の可能性をプラセボと比べて114%増加させる(図11、12を参照)。2年にわたる障害の持続的進行はプラセボ群よりも介入処方Bで有意に小さかった。
【0235】
プラセボと比べて、障害の持続的進行の83%の相対的な危険性の減少があった。これは、介入Bで治療したわずか17%の患者で障害の悪化する危険性があり、患者の約83%がプラセボと比べて安定したままであることを意味する。したがって、これらの結果は、特定の処方による治療法が、副作用がなく、従前の治療法よりも優れた強い治療効果を有することを確認し、証明するものである。
【0236】
本発明者らは、この度、MSの治療用製剤であって、関連する全体の病態生理学的経路の機能および神経保護機構に対して同時かつ効果的な活性を提供し、同時に広範な神経変性疾患および自己免疫疾患/障害の病因および発生に影響を及ぼすために重要である、回復および神経保護経路の活性化を組織化することを理由として、効果的である製剤を見出した。本発明は、複雑な多元性疾患およびMSの、より安全な新規な手段およびより効果的な治療のために、システム医薬のコンセプトに従い、システム生物学および滋養システム生物学のアプローチモデルを介して、疾患の複雑な多元的特性および事象と因子の相互接続ネットワークを初めて考慮する、MSの治療用製剤である。
【0237】
その上、介入Bは、他の型のMS(一次進行型、二次進行型、進行型再発性MS)の治療に効果的でありうる。
【0238】
本明細書にて引用される、刊行物、特許出願および特許を含む、文献はすべて、各文献が個々におよび具体的に出典明示によりそのすべてが本明細書の一部に組み込まれることを示す程度にまで、出典明示により本明細書の一部とされる。
【0239】
本明細書(添付する特許請求の範囲の記載を含む)における「一の」および「その」ならびにその類似する指示対象の使用は、特記されない限り、または文脈から矛盾することが明らかである場合を除いて、単数形および複数形の両方を含むものと解釈される。本明細書に記載の方法はすべて、特記されない限り、または文脈から矛盾することが明らかである場合を除いて、いずれか適当な順序で実施されうる。本明細書にて提供される実施例あるいは例示的用語(例えば、等、好ましい、好ましくは、特に)の使用は、単に開示の内容をさらに説明することを意図とするものであり、特許請求の範囲に限定を課すものではない。明細書にない用語は、請求に係る発明の実施に不可欠であるが、特許構成要素以外の構成要素を示すものと解釈されるべきである。
【0240】
発明を実施するための発明者に公知の最良の形態を含む、請求に係る発明の別の実施態様が本明細書に記載されている。これらのうち、上記の開示を読むことで、開示されている実施態様の変形が当業者に明らかになるであろう。本発明者らは当業者がかかる変形を適宜実施することを考慮し、本発明者らは請求に係る発明としてここに具体的に記載される以外に実施される発明も意図する。
【0241】
従って、請求に係る発明は、適用される法律によって容認されるような、添付した特許請求の範囲に示される発明特定要件のすべての修飾および均等を包含する。その上、その可能なすべての変形における上記した構成要素のいずれの組み合わせも、特記されない限り、または文脈から矛盾することが明らかである場合を除いて、請求に係る発明に包含される。
【0242】
個々の数値は、その数値の前の「約」または「およそ」なる語が置かれるように、近似値として使用される。同様に、本明細書に記載の種々の範囲にある数値は、特記されない限り、特定される範囲にある最小および最大値にて「約」または「およそ」なる語が共に前に置かれるように、近似値として示される。これと同様にして、特定されている範囲より上のおよび下の変数を使用しても、その範囲内の数値と実質的に同じ結果が達成され得る。本明細書で使用される「約」および「およそ」なる語は、数値に言及する場合には、その開示されている構成要素が最も密接に関連する分野の、または問題になっている範囲または要素に関連する分野の当業者に明らかで、通常使用される意義を有する。厳格な意味での数値境界から広がる値は多数の因子で変わる。例えば、考慮されうる因子として、該要素の臨界性および/または請求に係る発明特定事項を実施する際の所定量での変数の効果、ならびに当業者に公知の他の検討事項が挙げられる。本明細書に使用されるように、異なる数値について有効数字の異なる値の使用は、「約」または「およそ」なる語の使用が個々の数値をどのように広げるかに供するかを限定することを意味するものではない。かくして、一般的事項として、「約」または「およそ」は数値を広げる。また、範囲の開示は、最小値と最大値の間にあるあらゆる値と、「約」または「およそ」なる語の使用により付与される範囲の広がりを加えた値を含む、連続範囲として意図される。かくして、本明細書における数値範囲の記載は、特記されない限り、その範囲内にある個別の値に個々に言及する簡単な方法として供することを意図するに過ぎず、個別の値も、それが個々に本明細書に記載されているかのように、本明細書の一部とされる。
【0243】
本明細書に開示のデータより形成され、または誘導され得る、いずれの範囲、割合および割合の範囲も本発明の開示のさらなる実施態様を形成し、それらがあたかも明確に記載されているかのように開示の一部として包含されることを理解すべきである。これは、上限および/または下限を含んで、または含まないで形成されうる範囲を包含する。従って、個々の範囲、割合または割合の範囲と最も密接に関連する分野の当業者は、かかる値が本明細書に記載のデータから一義的に誘導されうることを認識するであろう。
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